2019/08/14 のログ
■モルガーナ >
「この島の治安が悪い理由の一端が良ーくわかった」
なんだかんだ言ってお目こぼしをされているのだろう。働け風紀委員。
スラムや違法部活を焼き払うより先にこういった細かい事をしないから
その地域の治安が良くならんのじゃと苦々しく吐き捨てるも
この場所には他に人もいないので悲しいかな、取り締まられる側にしかその言葉は届かない。
「……妾には妾の事情がある。
それだけの事じゃ」
大魔術領域の撃ち合いを指先一つで制していた経験者であれば
あの程度は不意打ちどころか牽制にもならないだろう。
それに大気中の水分を集めた程度で本来はコップ一杯ほどの水量だった筈だ。
……明らかにバケツの水でも浴びせたのかといった量を被っているが。
「喧しい。焦げた布切れごと燃えて火傷したくなければ
つべこべ言わずに働くが良い。
元女帝のために働けるのであれば光栄じゃろう。
……あと見過ぎじゃ。性に目覚めたばかりの童でもあるまいに。」
本当にこの教師は視線が分かりやすい。
■暁 名無 > 「流石にそれは風評被害ってやつさ。
彼らも彼らなりに頑張ってるよ、うん。」
普通は一度か二度の収監で懲りる筈である。
というか、それ以上は生徒として常世島に在籍し続けられるかどうか、という話になってくる。
その点、教員という立場は悪評こそ広まれど学園の運営側が動かなければ変化はしないのだ。
休憩所感覚で放り込まれてくる教師を相手する風紀委員を労ってあげて欲しい。
「ふぅん……?
まあ、それだけの事ならそういう事なんだろ。」
色々と腑に落ちない事があったが言及は避ける。
事情、とやらを話したければ話しているだろうし、話さないのだからそういう事なのだろう、と妙な所で気を回す男だ。
「おおっと?
元女帝様ともあろうお方が下民の視線に気恥ずかしさを覚えると?
普通もっと毅然とした態度を保てるものじゃあないかねえ。本当に元女帝様?」
どうせ拝観料として働かされるのだから、見れるだけ見ておこうというのが本音。
だがそれはそれで面白くないので多少の揶揄も込めて返す。
俯瞰だと顔を見ろ時にどうしても視界に入って来ちゃうのだからしょうがないじゃない、と。
■モルガーナ >
「努力は結果が伴って初めて意味あるものじゃろうに。
”がんばりました”で事が進むなら苦労はせん。
統治ともなれば尚更じゃ。
事実主の様な戯けが野放しになっておる。
野放図と言わずしてなんというのか教えてもらいたいくらいじゃな」
大方犯人側が悪いのだが、元統治側からすると対処が悪いとも言いたくなる。
本来開放するという事は次の犯罪を犯さないと判断したという事なのだが
どうもその辺りの自覚が足りないのではないか。
「その事情がある相手に悪戯を仕掛けたのは何処の誰じゃったかな」
だから何で他人事なんだこいつはと流石に呆れた声で呟く。
こういった男というのは本当に質が悪い。
「己惚れるな。
主らの視線よりも妾の品性の問題じゃ。
戯けた事を言う暇があれば足を動かせ足を。」
■暁 名無 > 「まあ、そこは学生主体の団体なんでな。
お叱りは御尤もだが、あくまで本分は学業ってことでひとつ。」
そもそも学生に追わせるには分不相応な重責だと名無は思う。
彼らはあくまでも学生、数年で卒業しなければならない身なのだから。
それはそれとして俺の評価辛辣過ぎない?と名無は小首を傾げる。
「だからこそ根掘り葉掘り聞こうとしないんじゃないの。
それとも実は身の上を語りたい?そういうタイプの構ってアピールだったり?」
変に聞き分けが良いところを見せればこれだもの、と肩を竦める。
話したければ自分から話せば良いのに、と小さく溜息も零して。
「もちろんちゃーんと歩いてますよ。
嬢ちゃんの品性ったって、水引っ被らせたのは俺だし、
見てるのも俺だけだし、敢えて非を挙げるならノーブラでゆっさたゆんさせっぱなくらいでは……?」
軽口を叩きながらも言葉の通り歩くスピードは一切落とさない。
モルガーナと名無では歩幅の違いもある為か、むしろ合わせてるくらいのペースだからというのもあるだろうか。
■モルガーナ >
「……そういう意味ではこの島は平和なのかもしれんなやはり。
学生に治安維持の片棒を担がせるとは。
まぁ若干領分から足を踏み出して居るようにしか見えぬでの。
真似をしようとは思えぬが。
……辛辣?自分の言動を見直して言うてほしい物じゃな。」
評価が現在進行形で下降中じゃからの。と肩をすくめる。
そもそもそういった役目は教師ら大人が背負うべきではないかと思うのだが
そういう点も割と人任せらしい。
「主はよくよく面倒な性格じゃなぁ……
良く生徒に言われておるじゃろう。
主には反省しろと言うておるのじゃ。
誰が物わかりの良いふりをして余計な詮索をしろというた。
……その様子では望むべくも無さそうじゃが」
まぁ最も、そういった女学生が多い事は確かだ。
その点だけは教師という人種に同情する。
自分だったらバッサリと切り捨てる自信しかない。
まぁこの教師、ある方向にはばっさり行き過ぎな点が多々あるが。
「もともと此処まで豊かではなかったのでな。
こちらに来てから急に育った分やりにくくてかなわん。
……あれは窮屈すぎる。もっと着やすいものがあればよいのじゃが」
まぁ多分提示されても着ないと思う。
■暁 名無 > 「ホントにねえ、俺ももう少しやりようがあるんじゃないかとは何かと口出しちゃあ居るんだけどさ。
財団の方針だから、こればかりはどーにも。
……言動ねえ。変に気負わず向き合える気さくなおにーさんでしょう?」
そういうタイプ嫌い?といけしゃあしゃあと言うあたり大変図太い。
実際のところ、他者からの評価を気にしない男だから、好かれようと嫌われようと自己を改めようとしない節がある。
「だから反省して詮索を避けてたじゃないか。
そしたらそれはそれで他人事みたいに言うなだなの何だのってもー。
ツンデレか!判り難いタイプのツンデレか!」
どないせえっちゅーねん、と口を尖らせる。
良かれと思ってが裏目に出るのもまあ、いつもの事なので深くは気にしないのだが。
捨て鉢と言うほどではないにしろ、どこか振り切れてるのは未来から来ている故かはたまた。
「こちらに来てから、ねえ。食が合ったのかね。
まあ何にせよ。俺がどのような目で見たところで、嬢ちゃんの品性は貶められない気はするけどねえ。
むしろ凛として気品に満ちている気すらするが、とは言っておく。」
本来の水量ならこうして歩いているうちには乾く算段だったが。
想定よりだいぶ多い量を被った所為か、一向に服が乾く気配を見せない事にすこしばかりバツが悪くなったり。
■モルガーナ >
「まぁ妾としては目の前の放蕩教師を
取り締まる気風さえあれば大方は許容するがの。
気さくと軽薄を取り違えておる辺りが実に芳しい。
か弱き一生徒としては何時襲われるか気が気ではないわ
……好き嫌い以前の問題じゃな主は。」
この男、気を使っているような態に見せてはいるものの……
その実いつも目の前を見ていない。
心ここにあらずといったところか。
「反省すべき点を間違っておるからこういっておるのじゃが……
自分を顧みろと言うておるのにだーれが余所見をしておる。
つんでれ?なんじゃそれは」
また奇怪な言葉を使い始める教師に呆れた声を上げる。
こうやって軸をずらすタイプというのは妙に一部に人気があるが
この教師はそれが癖になっているのだろうか。
生来の気質か願望か……まぁ何方でも大して気にはならないのだが。
「大方原因は判っておるがどうしようもないでな。
不便ではあるが一々気にしてはおらん。
……主絶望的に人をほめるのが下手じゃの」
■暁 名無 > 「失敬な。
こう見えて俺だって手を出す相手くらい選びますよーだ。
そもそもそんな不埒な理由で収監されたりしてないですー。」
ぶーぶー、と不服そうに口を尖らせ反論する。
とはいえ同等のしょうもない理由から一晩お世話になったりもするので強くは否定しないが。
「顧みたとこでなあ……って思う時ない?
そもそも教員として働くよりは学者として引き籠ってる方が性に合うと思うんだあ俺は。
とはいえ研究内容がアウトドア派なんだけど。
……おや、ツンデレはご存じない?じゃあ帰ったら辞書で調べてみると良い。調べなくても良いけど。」
今この場で説明したら憤慨されそうだから黙秘権を発動する。
のらりくらりとした態度は如何なる考えに因るものか。
それは彼自身以外に知る者は無いのだろう。今のところは。
「原因は判ってるって?
おいおい、胸が大きくなるメカニズムなんて解析出来てたら、割と高く売れるぞ?」
半信半疑で首を傾げつつ。
「そいつはどーも。褒めて伸ばすタイプじゃないんでね。」
かと言って叱りつける訳でも無い。
基本生徒には自由にやらせて、成功したら讃え、失敗したら諭す。そういうスタンス。
■モルガーナ >
「……主は説得力という言葉を知らんようじゃな。
うわさでは聞いておるが?少なくとも二、三人ほど手を出しておるそうではないか。
本来であれば収監対象だと思うのじゃが?」
運が良かったというべきかそういう相手を選んで手を出しているのか……
まぁ何方にせよ大した違いはない。
真剣な交際なら法律上はセーフだというが、遊びもまた必要なモノらしい。
特に人間種の雄には。
「過ぎた自嘲は愚か者の現実逃避じゃが
自省が無いのはそれ以下じゃな。
客観性は研究職であれば尚更必要じゃろうに。」
まぁぬしの将来にはあまり興味が無いがと続けながら髪をかき上げる。
月明かりに水滴が散り、ぽたぽたと水が滴る。
明らかに乾くどころか水量が増していた。
「……残念ながら妾限定での。
世間一般の婦女子が真似をするには
一度産まれ直す必要があると伝えておくれ。」
それを物憂げに眺めながら手を離すと僅かに首を振る。
嗚呼、本当に面倒な体質になったものだ。
「何、多少は技術で挽回できよう。励むが良い。
……さて」
言葉を交わしながら抜けた丘の先に銀色の月を映す大きな湖畔が広がっていた。
なだらかに下っていく道と草原の先には牛舎と一軒の小屋のみ。
人気が無いそこはこの辺りでも土地勘がある者しか知らないような道からかなり外れた場所だった。
■暁 名無 > 「噂はあくまで噂。流言飛語に惑わされちゃいけないぞ☆っと。
とはいえまあ、そうだなあ。その噂が本当ならきっと碌な死に方はしないだろうさ。」
へらりと笑ってから夜空へと視線を転じる。
既に星が瞬き始め、少しだけ眩しそうに目を眇めてから視線を下ろす。
「はっはっは。
それでもまあ今現在なんとかやってこれてるんでね。
このままが通用しなくなった時に、その時また考えるさ。」
まさしく彼女の与り知るところでは無いだろうと名無も肯く。興味を持たれても困る。
そしてモルガーナの髪から水気が一向に引かないのを見れば、いよいよ訝しげな表情になる。
とはいえ、彼女が詮索を拒む以上、余計な口を出す気は無いが。
「そいつは残念。
まあ、何だ、お大事にな……ってのはまた違うか。違うな。」
何と言えば良いのやら、と滴がしたたり落ち続ける故に乾かないブラウスへと目を向ける。
月明かりの下、モルガーナの肌が白い事も相俟ってか夕暮れ時よりも透過が増したようにすら錯覚するほどだった。
「はいはい、がんばりますよっと……お。
目的の場所はあそこで相違ないよな?」
これ以上歩くのはそろそろ骨だぞ、とさほど疲れた気配も見せず呟く。
歩きつつも視覚から気力を回復するという器用な事を続けていた賜物である、とは本人談。
■モルガーナ >
「まぁ生き物の大半が碌な死に方などせんよ。
……いずれも多少苦しんで死ぬものじゃ。
そう考えると主のように奔放に生きるのも正解なのかもしれぬな。」
風の噂に聞いた程度にすぎない為実際どうかは知らないが
色恋についての女学生の噂というのは案外正確だったりする。
……しかも失恋した的な話の場合は。
「嗚呼……ほんに厄介じゃ。
主も災難よの。」
月明かりの下、ぼんやりと瞳が光を帯びる。
今やほとんど体に張り付いた制服は体の線を月下に曝け出し、
歩く度に地面へと雫がしたたり落ちる。
「うむ、場所が非常によいでの。
滅多に誰も近づかん上に風の流れも良い。
落ち着くにはよい場所じゃて」
それを一瞬顧みながら歩を進め、小屋の入り口までたどり着くと
するりと指先でドアノブを撫でる。
かちゃりと解錠の音を確かめると後ろを振りかえり
「ひとまず中で待っておれ。
灯の火は机の上に置いてある。
……主よ、その鞄に着替えは入っておるの?
上だけで良い。貸せ」
■暁 名無 > 「さあねえ。
少なくとも俺自身は、俺みたいな生き方は死んだ後に苦労すると思うけどな。」
ゆるりと肩を竦め、それとなく否定する。
自分の様な生き方が間違っているとは思わないが、正解とも思わない。
ただ、同じ様な生き方をする者が居れば、間違いなく止めはするだろう。そういう生き方なのだと言う自覚はあるらしい。
「さあ?案外これくらいで丁度良いもんさ。
災難だと思った事は、こっちに来てからは一度も本気で思ったことは無いよ。」
ある意味自分で選んだ道なのだから、と瞑目して胸中で呟く。
そして目を開けば、辛気臭いったらありゃしないなあ、と嘯いて裸体よりもある種扇情的な状態の少女へと目を向けるのだった。
「なるほど、確かにここまで来るのは用向きがあるか余程の物好きだな。
少なくとも生徒は来ない。うん、街の喧騒を忘れるには最適だ。」
さてそれではこの濡れ透けブラウスともお別れか、とトランクをその場に下ろし、モルガーナが中へと入っていくのを見送ろうとすれば。
逆に中へと促され、へぁ、と気の抜けた声を上げて。
「え、普通逆でしょ?
嬢ちゃんが中で、俺が外で、着替えるのを待つもんじゃないのか?
あとその、ええと……上着は無いんだけども……」
着替えを寄越せと言われれば慌ててトランクを開く。
その中から取り出したのは男物のタンクトップ。今着ているアロハシャツのインナーとして持って来たものだ。
体格差からモルガーナが着るにはだいぶ大きい気もするだろうか。
■モルガーナ >
「死んだ後など多くの者は気にもせんよ」
ただ一言だけ返すとゆっくりと首を振る。
其々生き方はその数だけある。
それ自体は否定するつもりはない。
……かどなはらすめんとにさえならなければ。
「今妾は水の魔気を帯びておる。
故に”妾の魔素を帯びているもの”は全て濡れる。
乾いた服を着ようと思うと今しばらく他人が処理したものしか着られぬ」
多少は対応するが今夜の月だと暫くかかりそうじゃなと
空を見上げ何処か熱の籠った息を一つ吐いた。
瞳に宿る光は先程よりも強くなりつつある。
「入っておらぬのか。
はぁ……まぁ良い。暫くかかるでな。
終わるまで付き合ってもらうぞ。
……暫く中で待っておれ。覘くでないぞ」
そう告げると振り返らず、湖へと歩き出した。
いつしかその足は素足になっており、足を踏み出すたびに水音がしている。
■暁 名無 > 「まあ、違いない。」
死んだ後の事など大抵は遥か未来の話だからな、と名無は笑った。
まるで自分自身の身近には存在しているかの様な口振りだが、
普段の軽口と大差無いと人に思わせるほどには、軽薄であった。
「ははあ、なるほど。
そういう事なら俺も似たような体質だから理解出来る。
どうやって発散させるのか、気になるっちゃ気になるが……
ま、着替えが要るってんなら一応これでも何かの足しにはなるだろ。」
まあ、そういう事ならばと、取り出したタンクトップをその場に置いてそそくさと山小屋へと退散する。
荷物は運ぶのが億劫なのでそのまま放置し、小屋の中へと滑り込む。
中をぐるりと一望すれば、さて何をして時間を潰そうかと灯りを点けた後、タブレットを取り出して……
「……あ。」
手の内に広がる湖の光景。
トランクに据え付けた盗難防止用のカメラが捉えるものであった。
少女の後ろ姿も、確りと映り込んでいる。
■モルガーナ >
「どれだけ足掻いても所詮、過去にしかなれぬでな」
その軽薄な口調を受けて、返した言葉もまた
何処か乾いた軽い口調で……
けれど、僅かに首を振り、まとわりつく思考を振り払う。
「……その辺りに適当に置いておくといい。
終われば声をかけるでな。」
教師が小屋の中に入るのを見届けると
ゆっくりと湖に向かいながら、服を脱ぎ捨てていく。
スカートのフックを外し、ブラウスのボタンを外し……
まるで自重が存在しないように水面に立つ。
月明かりの下、いつ着替えたのか浴衣に似た
けれど体の線がはっきり見て取れるほどの薄衣だけを纏い
両手両足首には鈴。足元には筈かな波紋。
「……」
トンっと水面を蹴り、鈴の音が響くと共に
ゆったりとした動きで月明かりの下、浮かれたような
上気したような表情で舞い始めて。
■暁 名無 > 「あー、えーと……」
覗くな、と言われたが果たしてこれは覗きの内に入るのだろうか。
入るか、入るな、入っちゃうだろうな。
そんな事を口走りながらも視線は確りと手元のタブレットに向けられている。現金なものである。
「もしかしたら俺も多少は魔力の吸収癖を抑えられるかも、だしな。」
そんな言い訳を誰にするでもなく呟いて。
モルガーナの姿をそっと見守っていたが、纏っていた服を脱ぎ出せば少し離れた姿をそっとズームにしてみたりする辺り名無である。
そのまま月明かりの下、水面上で舞い始めるモルガーナを見つめて、
はたしてこれがどの様な意味を持つのかと考え始める。
再現?水の上に立つあたりで諦めました。
■モルガーナ >
水面に足をつけるたび、月に照らされて波立つ水面下に
まるで月光を固めたような薄い真珠色の蓮に似た花が咲いては散り
爪先が水面を撫でる度、水面に波紋が幾重にも広がり消えていく。
「リーァ、————……
(空に朽ち羽と散ろうとて
海に淀みと留まれど)」
手首を返し、響き渡る鈴の音とその舞に呼応するように水面は波立ち、
空中を水龍のように踊り狂う。
精霊使いがもしも近くにいたならば、そこに水霊の姿を見たかもしれない。
「――――……
(御空を駆ける荒神の、龍の処女の身に堕ちて
人の姿に宿かれば やがて世界の尽を視る)」
母国語の祝を呟きながら、人の形をした其れは
僅かに吹く風に衣と髪を靡かせ、浮かれた様に唯々不乱に踊る。
その瞳は紫色の光を煌々と湛え、涙のように周囲にまき散らしながら
ただ月を見上げ艶然とした色を宿していた。
ご案内:「離島東側農業区 山中放牧地」からモルガーナさんが去りました。
ご案内:「離島東側農業区 山中放牧地」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「離島東側農業区 山中放牧地付近山中湖」にモルガーナさんが現れました。
ご案内:「離島東側農業区 山中放牧地付近山中湖」に暁 名無さんが現れました。
■暁 名無 > 「なるほど、異邦の祝詞か。」
一方で山小屋の中。
モルガーナの様子を出歯亀している名無は、モニター代わりのタブレットPCを片手に手頃な椅子に腰を下ろした。
初めこそ手持無沙汰に、薄い衣一枚になった少女の肢体を眺めようと目論んでいたものの。
彼女が湖上で舞を始めれば、邪な思いは一度脇に置かれる。
「祭祀局の方で似たような事をする奴らは居るが、
ふーむ……なるほど。
近しいものを感じるが、やっぱりどこか異質だな。」
魔術よりは巫術に近いような。
そんな感想を抱きながら、最初の頃とは異なる好奇の視線をモルガーナへと向けている。
■モルガーナ >
「(やがて一つの種は落ちて、龍は褥に眠れども
蝶の惑いに揺蕩いて)」
見た目よりもかなりの熱量になっているのだろうか。
周囲はその熱で陽炎のように揺らぎ
踊り手の額には玉のような汗が浮かんでいる。
それでも、踊り手は唯々浮かされた様に踊り続ける。
凪いだ水面の上、光をまき散らしながら。
辺り一面にまるで目に見えそうなほどの濃度の魔力が満ち、
時折独特の淡い光の人魂のように宙に浮かび上がると
踊り手と水面を照らしながら揺らめき消えていく。
そうしていくつかの鈴の音が水面を走った後
「……---
(神子の腕の夢を見る)」
……ゆっくりと舞が終わる。
体を覆っていた薄い光が蛍のようにゆっくりと霧散していき
それを合図にするように周囲に漂っていた水塊は水面へとおちていった。
その真ん中で肩を上気させ目を瞑ったまましばらくその姿勢を保っていた龍は
まるで支えを失ったようにふらりと水面へと倒れこんだ。
ばしゃりと湖の水面に水しぶきが上がり……静寂の中
いつしか戻ってきた虫の声だけが辺りに響く。
■暁 名無 > 「ほほう……」
結局終始を出歯亀し、呼吸を思い出したかのように大きく息を吐いて。
なるほどああやって舞を奉じる事で躰に篭った魔力を発散させたのかと一人納得する。
祝詞の意味は解らなかったが、巫術の一つであればその目的は神霊や精霊といった超常なるものたちとの交信だろうと目星を付けて。
まあ答え合わせはモルガーナが戻って来た時にでも聞けばいいか、と。
「と……
戻って来るよな、アレ。」
力尽きて倒れた様に見えたが、湖上で倒れたら往く先は水中では?
いや水中に倒れ伏したところで戻ってくる余力くらいは残しているのだろうが、と様子を見て。
椅子から立ち、そして座り、もう一度立ち上がって。
「………行った方が良いのかな。」
■モルガーナ >
この湖は結構な深さがある。
ゆっくりと沈んでいきながら水面を仰ぐ。
肺の中から零れていく空気が水面へと昇っていき、
月明かりに反射してキラキラと輝く。
穏やかになっていく水面越しに見る世界は光に満ちていて……
朦朧とした意識で特に今宵の月がとても綺麗だなと思う。
「……」
呼吸の苦しさや疲労は感じない。
それらは何処か他人事で唯々感じるのは眠気だけ。
ふとこのまま意識を手放せば暫く眠れるのかと思う。
厳密に言えばこのままでも死ぬことはない。
暫く泥の中で眠りにつくだけだ。
蓮の花のように、目が覚める環境が揃うまで。
その日は明日かもしれないし、数年先かもしれない。
……それはなんだかとても魅力的に想える。
そうした場合あの教師はしばらく待ちぼうけになるだろうが……
「(別段問題もなかろうて)」
まぁ別に問題ないだろうとも思う。
所詮一生徒に過ぎないのだから。
■暁 名無 > 「浮いてくる気配なし、と。」
結局椅子から腰を上げてタブレットの液晶画面を睨むように見ていたが。
一向に水面にモルガーナが浮上する気配が無いのを確認すると急いで小屋から飛び出してくる。
器用にタブレットをトランクの中へと放り込み、着の身着のまま、スニーカーだけ脱ぎ捨てれば湖岸へと駆けて。
「───…っ!」
すぅ、と大きく息を吸い込むと水中へと飛び込んだ。
辺りにはモルガーナが発散させたと思しき魔力がまだ漂っており、
それらが否応にも月明かりで過敏になっている体質を刺激する。
束ねた赤褐色の髪が鮮やかな朱へと色が変わる中、
ぐんぐんと湖底へ向けて泳ぐうちに沈んでいる少女を見つければ、案の定と言いたげに顔を顰めて其方へと向かう。
無事に辿りつければ、そのまま抱えようとするだろう。
■モルガーナ >
先程までの舞で逃げていたのだろう。
月明かりを遮るように魚影がゆったりと真上を横切っていく。
ああ、そういえば私の世界にもそんな魚がいた。
夜空を泳ぎ、唯漂うだけの空を泳ぐ魚が。
その姿が急に慌ただしく動き始めると同時に、
凪ぎ始めていた水面が乱れ視界に紅が飛び込んできた。
それはどこかで見たような色で……
「……!」
そこでふと我に返ると同時にごぼりと口から空気が零れた。
肺に水が流れ込む鋭い感覚に思わず胸元を抑える。
痛みは感じない。けれど酷く重たいその感覚に
やっと自分が水中に沈んでいるのだと認識して。
疲労か、はたまた魔力不足か殆ど力が入らない体を
朱の髪の持ち主は抱え上げ水面へと引き上げていく。
「……っ!っほ!がっ……げほ、げほっ」
そのまま水上に顔を引き上げられ、新鮮な空気を吸い込もうとして
肺の中の水に阻まれ、自分を引き上げた男の肩に顔を埋める様にして咳き込んだ。
■暁 名無 > 「まぁったく!
人を待たせといて湖の中で居眠りとは大層な御身分ですな!」
水面から顔を出し、肺の空気を入れ替えながら腕の中のモルガーナへと嫌味を飛ばす。
パンパンと咳き込む背中を叩きながら、額に貼り付く己の前髪を鬱陶しげに払う。
すっかり朱に染まり月明かりで淡く輝いてすら見える髪は結い紐が水中で外れたのか解けて水面に広がっていて。
「水音がしたから何事かと思ったら……
ったく、入水自殺未遂なんて大昔の文豪か何かか。」
オーバードーズも試したりしないだろうな、とやや疲れた様子で湖岸へと泳ぎ出す。
着てるのが薄手のアロハシャツとハーフパンツで良かった、とごちりながら、着替えなんて無い事を漠然と思い出したり。