2019/02/09 のログ
天導 シオン > 「つまり私は魔術の面では足し算も分からないレベルだと。そりゃ理解出来ないわけだ。
もういい、これからも護符なんて頼らない」

そのレベルか。それならバカにされるのも仕方がないとすんなり納得を見せた。
この手のアイテムは、自身が詐欺被害に会いかねないと悟った為、理解は諦める事にした。その割にショックを受けた様に悔しげな表情だが。
どうせ、ある程度のモンスターなら対抗手段あるし、何も悔しくはないし…

「いやいやいや、教師が生徒を見てそんな事言うの駄目でしょ、学長に訴えるよ!」

明らかに感情の籠っていない棒読みぶり、思わず声が上擦っていた。
取り敢えず困った時の権力者頼り。

「分かってるけど…。あ、その講義良いかも…。
座学は寝てても良いよね、駄目か?」

ほう、と興味深そうだ。主に野外活動も出来ると言うところだけだが。
彼の言い分は正しいが、一番の敵は睡眠欲。寝る子は育つという屁理屈の下、それだけには従順になりたいという無謀な交渉へ。

暁 名無 > 「そこまで言ってねえって。足し算はあくまで物のたとえ。
 まあ数学よりよっぽどややこしいけどな、魔術とかってのは。」

まあ、信頼できる誰かに見繕って貰うってんなら大丈夫だろう。
そういう相手が出来るか否かは、まあ、天導次第だけども。

「今は放課後も過ぎてるし、ここは学校じゃないので良いんですー超セーフ。」

どう考えてもアウトです本当にありがとう以下略。
こうして上手い事やって忘れろと言われた事は流してしまうのだった。

「寝てても良いけど、あんま甘く見てると大変な目に遭うぞ。こんな風に。」

俺は何処からともなく薄桃色のスライムを天導へと放る。
どこにでもいるような、戦闘力を持ちすらしないタイプのスライムだ。人間が転生したものでも、多分ない。
傍目に見ればただのスライムだが、俺は知っている。
こいつはいわゆる、服を溶かす系のスライムだ、と。

はてさて、天導はそれを知ってるかどうか。
ちなみにうちのクラスの連中には初日の授業で紹介したから、多分知ってる。

天導 シオン > 「何にせよ、難しいなら嫌だ。掛け算や割り算が出来る位が丁度良いんだ…ッ。
いや、そうでもないな…。」

彼女からすれば基礎的な計算さえ出来ればそれで上等らしい。
数学の重要さ、魔術の偉大さは今まで痛感して尊重もしているが、それはそれ。頭脳労働はやりたくない。

「何それ、先生のペット?ピンクは良いけど、スライムじゃん!なんかもっと犬とか猫とか良いのあるでしょ?」

放課後すぎてるし、学校終わってるからセーフ。そんな超暴論にぐぬぬと歯を食いしばって悔しそうに。いいように丸め込まれている。

さて、ふとその教師が取り出したのはピンク色の液体。ふるふると揺れているそれが生物だとわかった途端鼻で笑う。
と、共に彼女が初日も居眠りした事が浮き彫りになる。と言うのが、顔色一つ変えず、鮮やかな色をしたスライムを前に興味を示している上に、指で触れようともしている。

暁 名無 > 「なるほどな、そういうタイプの人間か天導は。」

ふんふん、よーく分かった。
分かったと同時になんだかひどく懐かしい気持ちになる。
俺も昔はこうだったなあ、なんて。

「ペットというか、まあそんなとこだ。
 犬も猫もいいけど、こいつはこいつで良い仕事してくれるんだよな。」

知っていれば一目で忌避しそうなところ、むしろ興味を示している。
ということは、まあ、そういうことなのだろう。
少しばかりの悪戯心と下心から真実を告げる事を止めた俺は天導とスライムの様子を微笑ましく見守る。

案の定、天導に指でつつかれたスライムは、ぷにょん、と震えた後天導へと飛び掛かった。
攻撃力はほぼ0。ただし、特殊な魔術防御が施されていない服は溶ける。

天導 シオン > 「何よ…!私はごちゃごちゃ考えるのは嫌いなの」

見透かされた視線と分かりきったような口調に、ムッと眉を釣り上げる
相手もこの短時間ではっきりと分かっただろう。尋常ではない脳筋娘だと…。

「おっ、跳んだ!
……って、わー!!先生!これっ!私のグローブ溶かしてる!!ちょ!」

人の手から出されただけあって、性格は非常に温厚らしい。
弾むように飛び跳ねたスライムを、優れた動体視力で難なくわしりと掴み取る。ここからが恐怖。
ふと、手の平の風通しが良くなったかと思えば、自身のグローブが綺麗に侵食されていた。
悲鳴を上げながらぺしゃりと床に叩き付けて、そいつを指差しながら訴える。

暁 名無 > 「だろうねー、まあ良いんじゃないか、快活なのも。
 俺は嫌いじゃないねえ。」

けらけら笑いつつ非難がましい視線を華麗にスルー。
これはまた厄介なのが転入して来たなあ、なんて半ば他人事のように思いつつ。

「そりゃあそうさ、そういうスライムだもんよ。
 座学もちゃんと聞いてれば、一目で見分けがつくようになるもんだぜ?」

勿論、身を以て覚えるという事も出来る。
今回はこれくらいにしといてやろうか、と未だ威嚇状態のスライムを素手で拾い上げながら、天導を見て。

「な?勉強も役に立たないって訳じゃないだろ。
 少なくとも幾つか真面目に聞いといた方が良い授業があるということは分かって貰えただろうか。」

天導 シオン > 「まあ、こんな感じで講義はお手柔らかにお願いするわ。
ほんと、魔術はからっきしでよく分からないんだから…」

嫌いじゃないなら良いのだが、魔術が絡むとこの通り鈍臭い人物である。
講義はとびっきり分かりやすくして、…貰えないのなら居眠りするまで。

「はえー…、油断した。
まあ、生物学っての?覚えるに越した事はないわね。あはははー!」

ぼろっと手首から下の部分が重力に従うようにくたびれたグローブ、放心するようにそれを見詰めながら空笑い。
これがおふざけだから済んだものの、生前は一応この手の生物の駆除を担当していた身である。
生態を知る事は、今後自身の活動の助けになるだろうと痛感し、多少は懲りたみたいだ。

暁 名無 > 「まあ俺の授業じゃ魔術に関するあれやそれやは取り扱ってねえからさ。
 もし興味が沸いたなら幻想生物学研究所まで一度来てみたらいい。」

勧誘勧誘、お仕事お仕事。
なんせ生徒一人で若干のお給料の変動が見込めたりするのだから、多少は真面目になる。
あとおまけ程度に受講者に女生徒が増えてくれりゃこっちのやる気も増すかなと。

「これがグローブだけで済んでなかったらと思うと笑い事じゃないだろ?」

夜の山の、それも初対面の男の前であられもない姿に成る事の恐ろしさ、と考えれば少しは危機感を持ってもらえるだろうか。
なお俺としてはそれはそれで見てみたかった気もするけど。

「さて、そんじゃ本格的に夜も更けて来る前に寝床の確保かね。
 あっちの方見てたって事は集落見つけたんだろ?知り合いが居るし、寝れる場所借りれないか訊いてみるよ。」

ほら、ついて来な、と先を切って歩き出す。
途中天導を敵と認識していたスライムが再び襲いかかったりしたが、それはまた別の話という事で。

天導 シオン > 「まあ、気が向いたら…。
危険地帯とか探索するなら呼んでよ。一応その手の仕事とか経験あるからさ」

視線が泳ぐ、あたり感触の無い返答。そう、学習意欲はない。
そこで実践が好きな彼女の案は、フィールドワークの護衛。
この世界の生物を知る機会と、自身の技能を向上させる事が出来るだろう。

「こんな場所で痴女になるのは堪らないな。ってか、そんなもの持ち歩くな!」

こくこくと何度も頷いた。肢体を晒すのは浴場だけにしたいものだ。
それより、そんな物騒な代物を平然と持ち歩いている彼に今更ながら指摘する。

「やった、それは助かるなー!先生様々だよ」

どうやら幸運にも、寝床は確保出来るみたいだ。
その上、先陣を切るという事は、この道は先程見通した集落へと間違いなく導いてくれるのだろう。
怪しい人物では無いと分かった以上は、素直に相手に従って付いて行く。

と同時に、こちらを敵と認識する憎きスライムは襲いかかる度に、グローブを失った右手のみで千切っては投げを繰り返し、追い払った。

ご案内:「青垣山」から天導 シオンさんが去りました。
ご案内:「青垣山」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「青垣山」に天導 シオンさんが現れました。
天導 シオン > 「何か私に出来る事はない?」

彼女は昨晩そのように意気込んでいた。
無事たどり着いた集落で、丁重にもてなしを受け、寝室を確保する事も出来た。
その親切心にただ甘んじるようでは冒険者失格。加えて、魔物の討伐を生業としていた身として、何か役に立てぬのかと自身の専門分野を猛アピールした。
結果…

「作物を食い荒らす獣ね……。よく聞く話だなぁ」

農業を営んでいる老夫からの依頼だった。
夜な夜な畑に現れては、手当たり次第一帯を食い荒らすのだという。農村ならばよくある悩みである。育ちが田舎出身である彼女なら尚更共感出来る案件だった。
息を殺して、極力音を立てず草を掻き分けて現場に到着すれば、手頃な木に飛び乗って見下ろすように監視を始めた。

天導 シオン > さて、あたり一面を見張って数十分。昨晩の続きというように景色を眺めては、その空気を堪能していたが、変化のない光景にはものの数分で飽きが生じ、無意識に欠伸をかいていた。

喜んで様子見を引き受けはしたのだが、実物を発見するには極めて情報不足であった。考えの足りない自身に呆れていたが

「んっ?」

風に揺れる木々の音以外、物陰からがさがさと不自然な音が聞こえた。それは次第にこちらへ向かっているのが伺える。
神経を研ぎ澄まして音のする位置を目で追えば、草を掻き分けて踏み潰し立派な魔猪が姿を現した。
彼女の知る個体よりも、一回り大きく、逞しい肉付きをしている。