2020/09/25 のログ
ご案内:「常世学園付属常世総合病院・個室」に角鹿建悟さんが現れました。
角鹿建悟 > 入院して2週間近くがそろそろ経過するだろうか?何人かから予想外の見舞いを貰い、彼ら彼女らと言葉を交わし、少しずつだがどん底からは持ち直してきた。
――それでも、まだまだ精神的にはどん底よりマシという程度…それに比べて、肉体の方はすっかり健康体に戻りつつあった。

今日のリハビリもしっかりこなし、今まで疎かだった食事も出来るだけきちんと3食摂りつつ。
――しかし、やる事が無い…こういう手持ち無沙汰の時間は苦手だ。趣味らしい趣味が無いというのもある。

「――……。」

なので、こうしてぼんやりと今は窓の外を眺めていたりと、無為な時間を過ごしている。
”ゆっくり”これからの事を考えていけばいい、とアドバイスはされたが…その”ゆっくり”というのが慣れない。
何もせず、全く動かず、こうして静かに過ごすのは初めてだからどうにも違和感が拭えない。

「……とはいえ、やる事が無いからな…。」

仮に退院しても、仕事は謹慎――下手すればクビだ。能力も異能封印装置(リストバンド型)できっちり封印されている。
左手首のソレを窓の外の景色から視線を向けて一瞥する。今まで頼りきりだったツケでもある。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院・個室」に看護師さんが現れました。
看護師 >  
「こんにちは、角鹿さん。お加減はいかがですか?」

病室に入ってきた女はにこやかに話しかけてくる。
見覚えはないが、確かに看護師のはずである。

「痛いところとか、ありませんか?」

じっとそちらを伺うように見てくるだろう。

角鹿建悟 > 「……あ、はい…体の方は順調です。リハビリもかなりこなせていますし…。」

病室に入ってきた女性――看護師…いや、看護師だよな?見覚えは無い気がする。
まぁ、この病院に看護師は沢山居るだろうから、見覚えの無い看護師が居ても別に変ではない…のだが。

「…なので、肉体的に痛い所は特には。看護師さんや医師の人たちには感謝しかないです」

無表情だが、言葉に嘘は無い。軽く会釈するようにささやかな礼の意味合いを込めて緩く頭を下げつつ。

――じっとこちらを窺うような視線には、「?」と、やや不思議そうではあるが。
少なくとも、寝癖があるとか顔色が悪い、とかそういうのは無い筈だ。

――まぁ、強いて言うなら、まだ目に覇気や生気が薄いということくらいか。

看護師 >  
「そうですか、そうですか。それはよかったです。」

にこやかなまま、看護師は一通りのチェックを行っていく。
見慣れた光景で、なにもおかしなところはない。

「順調なようであれば、退院も目の前ですよ。良かったですね、角鹿さん。
 ところで」

作業をしながら、振り返ってそちらを見る。
手は小器用に動いたままである。

「"肉体的に"、ということは、なにかご不安でもあるのでしょうか?
 予後のこともありますから、今のうちにお話いただければよいのですが」

やや小首をかしげて問いかけてくる。

角鹿建悟 > (――俺の気のせいか……やっぱり”こっち”はまだまだか…)

内心の微かな違和感は胸に仕舞い込む。一通りのチェックは何時もの光景でおかしな所は無い。

「――そうですね…退院した”後”が問題ではありますが…。」

何せ謹慎は確定しているし、その間に何をやればいいのか、どうすればいいのかが分からない。
やれる事は多いのかもしれないが、今まで直す事を最優先にしてきた弊害であろう。

と、手元は器用に動かしたままこちらを見遣り問い掛けてくる看護師。
その問い掛けに、僅かに逡巡と沈黙…とはいえ、看護師さん相手に誤魔化してもしょうがあるまい。

「――精神的には、我ながら全然ですね…友人や知人の見舞いと、病院で知り合ったあるシスターとの会話で、色々とありがたい言葉も頂きました。
…けど、もう”以前の俺”には戻れないと思います。…いや、俺は多分”変わらないと”いけない。…ただ、まだ…立ち上がる力が俺には無い、です。」

火種は貰い、言葉を貰い、薫陶を貰い、それでも一度強烈に圧し折れた心が、たかが2週間程度で回復する筈も無い。

…それは、一番自分がよく分かっている。

『―――脆いな』

あの言葉がふとまた記憶に過ぎる。

(……あぁ、その通りだよ本当に)

看護師 >  
「なるほど、なるほど。精神的な問題ですか。
 困りましたね、それはとても困りました。」

困った困った、といいながら女はいまだにこやかに言の葉を紡ぐ。

「お辛いですね。では、"立ち上がる"こともやめてゆっくりお休みなさいますか?
 いっそ、その方が気楽かもしれませんよ?」

にこやかに女はいう。
もう手の動きは止まり……いつの間にやら近くまできてじっとそちらを見つめていた。

「"お仕事"も"約束"も、いっそなかったことにして、なにもかも忘れてゆっくりしたら……いかがですか?」

女はにこやかに口にした。

角鹿建悟 > 「…困った、と言いながら何か楽しそうに見えますが…?」

もしかして、いわゆるサドっ気がある看護師さんなんだろうか?と、首を緩く傾げて。

「―――…そう、ですね。最初の方は実際無気力というか何もやる気が起きませんでしたし」

にこやかに彼女は口にする。何時の間にかその手の動きは止まっており――じっと、こちらを見つめている。

「……仕事については、クビになっても仕方ないとは思っている。今まで我武者羅に、脇目も振らずにやってきた清算だと思えばいい。……だけど)

そう、だけど。ひたり、と銀色の瞳で真っ直ぐ看護師を見つめて。

角鹿建悟 > 「――あの”約束”を違える気は無い。どん底だろうが何だろうが、そこだけは曲げられない」
看護師 >  
「……そうですか」

女は変わらぬ笑みを浮かべて言葉を聞いていた。

「それは力強いお言葉ですね……予後の見解を変える必要はないみたいです。
 "上"にはそのようにお伝えしておきますね。」

かたり、と何か堅い音がしたような気がした。
それは気のせいかもしれないし、現実かもしれない。

「ああ、予後、というのは"見通し"のことです。
 その調子なら、近い内に退院できますよ。頑張ってくださいね。
 では、そろそろ失礼します。」

そういって女は出ていこうとする。
しかし、扉の前でピタリと止まり、振り返った。

「そうでした。お一人、面会に来られている方がいますよ。
 お通ししますね?」

それだけ言って、女は病室を後にする。

看護師 >  
「……ええ、ほんとうに、よかったですよ」

ご案内:「常世学園付属常世総合病院・個室」から看護師さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院・個室」に園刃 華霧さんが現れました。
角鹿建悟 > 「――そうか。…ついでにその”上”に伝えておいて欲しい。…角鹿建悟は”約束”を忘れていない。だからちゃんと”見ていろ”と」

看護師――を装った”誰か”に対して、敬語もかなぐり捨てて静かにそう言伝を頼んでおこうか。
肉体的にはほぼ復調しているし、どのみち退院はそう遠くないだろう。

あくまで問題なのは精神――今だ折れている己をどう立ち直らせるか。
その”見通し”は残念ながらさっぱりだが、彼ら彼女らに言われた言葉は蔑ろにしたくない。

看護師が出て行くのを黙って見送る――”上”がどういうものかは全く知らないし心当たりは無い。
けれど、”誰かは何となく分かる”――自分でも上手く表現できないが確信できる。

(―――悪いな、”シエル”…今はまだこんな有様だが、必ずまた立ち上がってみせる)

心の中でその名を口にしつつ、看護師さんが不意に動きを止めてん?と、そちらに意識を戻し。

「――見舞い?……誰だろう?」

悪友や姐さんとはもう話したし、他に知人なども居るが見舞いに来るかどうかは微妙だろう。
そもそも、自分が見舞いしてるなんてそんな知ってる人は居ない筈だが。

――気が付いたら看護師は既に退室しており。

(いや、本当誰だ…?予測しようもないんだが)

園刃 華霧 >  
「よー、大将おヒさ! ……ってイうか久しブりすギて覚えテないカね?」

入ってきたのは白い女。
正確には、白をまとった女だった。

ただ、見た目と口調が完全にちぐはぐで違和感は凄まじかっただろうか。

「ヤー、たまタまエイジとかの見舞いで見ッケてサ―。
 なー二やってンだよ、アンタさー。
 どーせ働きスぎだロー?」

無遠慮に入り込んできて、その女は手近な椅子に座り込んだ。

角鹿建悟 > 「―――…どちら様……いや、待った、その呼び方は……園刃先輩、か?」

大将、そう自分を呼ぶ奇特な人は自分が覚えてる限りは一人しか居ない。
…が、私服姿なのと、何かイメージがこう…いや、喋り方やノリは自分の記憶にある先輩で間違いないのだけど。

「…英治…ああ、そういえば二人とも風紀委員だから面識あってもおかしくないのか。
……倒れたのは肉体的な限界もあったが…ちょっと、風紀の先輩に精神的に”折られて”な…このザマだ」

無遠慮な言動も気にしない。手近な椅子に座り込む彼女を眺めつつ。

「――まぁ、見舞いに来てくれたのはありがとう先輩。…何かこう言うと失礼なのは承知だが、私服姿なのは意外だった」

園刃 華霧 >  
「はいハい、園刃だヨー。
 ッテか、いま一瞬マジで忘れカけてタろ!!」

落第街で仕事手伝う……っていうか、警護したことは何回かあったと思うんだけどな。
かぎりん寂しい、なんて感じにやってみる。

「風紀の先輩……? そンなこトするヤツいたッケ……?
 ってカ、"折る"ってナにアったンだそレ」

はてな、と首をかしげる。
わざわざそんなちょっかいかける暇人みたいなのいたっけ……

「ァー……制服でも良いカなって思ったンだけド……まァ、色々、アって、な……」

まさか、同居人に滾々と説教された、とも言えない。
言ったところでなんのことやら、だろうし……

角鹿建悟 > 「――いや、まぁ………すまない、正直私服姿だと一瞬誰か分からなかった」

実際に仕事で何度か身辺警護などもして貰っている。彼女の事を勿論完全に忘れていた訳ではない。
ただ、そういう所も”人とまともに向きあってこなかった”…今ならそれが分かる。

(…落ち着いてこうして考えてみると、少し前の俺がどれだけバカだったか分かるな)

首を傾げる先輩を眺めながらそう思っていたが、あぁ…と、一息零して。

「――月夜見真琴、という先輩に仕事中に偶然出会ってな。まぁ、最初は普通に会話してた…つもりだ。ただ、俺の態度か言動が…先輩の何かに触れたんだろう。
彼女からすれば”何もしていない”のかもしれないが、その言葉と…幻覚?を見せられて…自分の限界と無力さを突き付けられた」

そのお陰でこのザマという訳だ、と肩をゆるく竦めてみせる。

「――そうか。まぁ似合ってると思うしいいんじゃないのか?…そういうの疎い俺が言っても説得力ないだろうが」

実際、この男には未だにまともな私服の一着すらないのだから。

園刃 華霧 >  
「ァ―……ま、そりゃ、ソうかァ……」

基本制服しか着てなかったしなー、と思い返してみる。
やっぱり戻したほうが良いのかなあ

「ってカさー、大将サー。
 アタシ言ったじゃーン。おっさんくサいし、アオハルとかシろってサ―。
 そンなだカら、メンタルやらレんだ……って、マコトぉ?!」

あれ、ちょっと予想外の名前が出てきた。
……あー、でもなんか納得。アイツ、やる時はマジでやるからなあ……

「"限界"と"無力さ"ねェ……そりゃ、大将。
 根本的にナんか間違ってタんだナー。」

ぺちぺちと、無遠慮に身体を叩く。
ちょっと痩せたか?

「大将、そウいう言葉は言エんだヨなー……
 なーンでもうちょット方向転換デきンのだろーナ。」

やれやれ、と肩をすくめてみせる。

角鹿建悟 > 「――いや、別に戻さなくていいと思うが」

彼女の思考を読んだ訳ではないが、何となく彼女がそう思っていると察したのか、ぼそり、とそう口にしておく。
確かに、直ぐには先輩と一致しなかったが、こうして話しているとやっぱり園刃先輩だな、とちゃんと実感できる訳で。

「――今ならその言葉も身に染みるが、あの頃の俺は…まぁ、直す事に”逃げていた”からな…一度圧し折られてやっと”周りと向き合おう”と思えるようになったよ」

圧し折られた事と、その時に見せられた生々しい幻覚は正直トラウマになりかけている。
だが、それはそれ――自分の今までの行いのツケなら受け入れるしかない。

「――先輩は知己なのか。…まぁ、別にあの先輩を恨んでたりとかそういうのは一切無いけどな。
…ああ、やる時はやるって事は――多分、俺の態度とかが矢張り気に障ったんだろう。
俺はあの先輩とはそれっきりだから、人となりは正直よく知らないが」

むしろ、園刃先輩のほうがよく知ってそうだ。ゆっくりと一息…じわじわあの時の幻覚を思い出しそうになる。

「――悪友…英治や、この病院で出会ったシスター、あと知己の女性と話していて…少しずつだけど分かってきた気はする。
――月夜見先輩は言ってた。幻覚を見せる前に、”お前はここで止まれ”と。…確かに、仮に圧し折られた無くても、どっちにしろ限界だっただろうからな」

ぺちぺち、と体を無遠慮に叩かれる。リハビリで持ち直してきてはいるが、筋肉等は前より衰えているし痩せた、のは間違いではないかもしれない。

「――だから、見舞いに来てくれた人たちや、病院で知り合った人とも話していて思ったんだよ。
――俺は人と向きあってこなかった…会話はしていても、その言葉の意味を深く考えず、直す事にばかり傾け過ぎていたんだって」

そう言って、左手首の黒いリストバンドをそちらに軽く掲げてみせる。

「まぁ、結局。俺の無茶、というか独断専行が過ぎるせいで仕事は暫く謹慎。これで能力も封じられてる」

園刃 華霧 >  
「ンー……いヤー……どーダろな。
 いや、”周りと向き合おう”ってノはまァ、間違っちゃイないと思うけどサ。
 アタシ的には、そーダな。"自分と向き合"ったラ?って思うけド。」

なるほど、確かにアタシもごちゃごちゃ言ってたしそいつをスルーしてたのは確かだ。
そんならそれと向き合うってのはまあ悪いことじゃないんだろうけど。
それ以前の問題があるような気がするんだよなあ。

「……ァー、まァ……」

なんとなく、大将の話からカンに触った理由を察せられないこともない。
とはいえ、それを此処で話してもしょうがないし流すことにする。

「エイジ……アイツ、友だち、いたンだな……
 っと、さておイて。」

だいぶ酷いことをさらっと言った気がする。
いやだって、アイツさあ、独りでふわふわしてるイメージ強いし。
それはそれとして、気になる、というか……よく見慣れたヤツの亜種を目の前に突きつけられれば思うことがないわけでもない

「制御装置、ナー……大将、よっっっっっっっっぽド、馬鹿シたんダなー。
 まったクさー」

やれやれ、と肩をすくめる

「で? さっきから、”周りと向き合おう”ってコト言ってるケどさ。
 ビジョンとか、あンの?」

ふと気になって聞いてみた。

角鹿建悟 > 「――今後の事は”ゆっくり”考えていけばいい、とかは言われたけどな。…ただ、俺は…それが自滅の道と分かっていても走り続けてきた…ゆっくり考える、というのは正直落ち着かないというか…。」

なんと言えばいいのだろうか。あの先輩に”止められて”圧し折られたし、今も立ち直れては全然いないけれど。
最初こそ無気力で何にもやる気は起きなかったし、食事もまともに食べなかった。
だけど、少しずつ持ち直してきて――やっぱり思う。”ゆっくり”と過ごすのはこう、必要だとは分かっていても落ち着かない。居心地が悪い。

「――園刃先輩は思い当たるフシでもありそうだな……まぁ、別に聞かせてくれ、とは言わないが。
あと、アイツは俺より交友関係や人当たりは全然マシだろう――アイツも色々抱えてそうではあるが」

悪友と己で決定的に違うのは社交性。人当たりやユーモア、そういうものが大きいと思っている。
少なくとも、アイツはコミュ障とかそういう訳ではまず無いだろうし。

「…いや、後で聞いた話だが圧し折れて俺はそのまま気絶してしまってな。
まぁ、精神が折れたから肉体も限界を迎えたんだろう。その時に月夜見先輩がまぁ、通報してくれたらしいが。
――後で聞いたが、俺の独断専行や、生活委員会の俺の管理について問題が無かったか、の調査などを提案されたらしい。あと、病棟への”禁錮”と…能力の封印措置、だな」

勿論、その時は気絶していたので後で生活委員会の役員から又聞きしただけだが。
さて、問題はそこだ――それについては、もうお手上げだ、と言わんばかりに両手を挙げてみせる。

「それが全然。この島に来て6年間、ずっと直す事に費やしてきたからな…それ以外をロクにやってこなかったからさっぱり。
…どのみち、直す仕事は暫くはお預けだし…一般の生活委員としての活動を地道にしていくしかないだろう。
直す仕事に付いては、また能力で無茶をしかねないという理由で力の封印と合わせての謹慎処置だ。独断専行、というか”やりすぎ”たのも事実であるし。

「――もっとも、一番の問題は対人関係の諸々だが。…正直、どうしたらいいか分からん。相手の話をちゃんと聞く、という当たり前で基本的なそれをしっかりやるしかない」

――青春や交流を犠牲にしてきたのだ。ビジョンなどが明確に浮かんでいるはずも無いし、どれもこれも曖昧だ。
それに、まだ精神的に立ち直れていない。先程から先輩と目を合わせているが、その瞳にはオーラ、というか覇気や生気が薄い。