2021/02/22 のログ
芥子風 菖蒲 >  
「……!」

流石に折れた剣先では届かない。
即座に胴を大きく逸らして、その剣先を避けようとするが間合いに近さ。
切っ先がわき腹を裂き、再び霧は赤く染まる。

「……アイツ、結構速いなぁ……、……!」

間合いを離し、気だるそうにぼやいた。
今のままでは届かない。折れた刀では、届かない。
溢れる血液を抑えようとはしない。血が溢れるが、まだ動けるし、致命傷じゃない。
さて、どうしようと思った矢先、先ずは足元から迫りくる根っこ。
考えてる前より、体が動く。"今のままじゃダメだ"。
全身より薄らと、青白い光が僅かに漏れる。
瞳孔が開き、筋肉が軋む。身体強化の異能。

「……!」

背中に迫る根を地を蹴り、宙返りで迫る木の根を回避する。
黒衣の裾が貫通し、周囲に黒い布が紙吹雪の様に舞う事に成った。
脚を狙ったそれは、折れた刃を突き立て逆に足場にするが……。

「……何……?」

鼻腔を劈く、悪臭。
付近に突き刺さった大剣からまろびでる獣の異形。
悍ましく、本来ならば精神を削られるような悍ましき猟犬を一瞥しようとも。

「気持ち悪いなぁ……」

不快感を覚えても、"揺らぎさえしない"。
風紀委員としての以上、それはある種機械的であり
"平和を乱すもの"を討滅せしと刻まれた鉄の精神は揺るがない。
牙を向く獣に、突き立てた刀剣で木の根を切り裂き、獣へと蹴り飛ばした。
強靭な蹴りにより飛んだ木の礫は、銃弾とはいかないが並の獣には十二分なダメージとなりえるものだが、さて……。

シャンティ > 鉄拳を受け、異形の獣の姿が煙のように拡散する。再び、元の姿に戻り……改めて、マディファへと襲いかかる。
まるで、獲物はそれだけだ、と言わんばかりに他の二名は歯牙にもかけない。

姿の通り、獣じみた素早さと動き。
狙いは、腕。殴られたことを恨みに思ったのか、それとも別の意図か。それとも本能であろうか。


その間に、背後から、もう一匹が現れマディファの首筋へと迫る

花菱刃 >  
「速さと手数だけが取り柄だからな」

 それ以外は本当に苦手なのだ。魔力を使えばいいが。その分消耗が早い。
 視界の端に応援部隊を発見する。もし合流されれば流石の蛇でも持たない。
 でも眼前の敵が簡単な攻撃など通してくれるわけがない。はぁと溜息を吐き出す。

「本当はもっとでかい場面で使う技なんだが。四の五の言っていられる状況じゃねぇなこりゃ。おいまきこまれんなよ」

 上方のシャンディ、そして獣に指示を飛ばす。
 向こうの猟犬に気を取られたなら好都合だ。
 周囲の霧が晴れる。それを続ける余裕はない。
 シャンディに目線を向けもせず声を発する。

「機械女はそっちの犬に任せる。撤退まで時間稼げ。応援部隊は……こっちで掃除する」

 目から光が消える。ランランと鈍くともるは深蒼の魔力。
 ユルリと口が開かれる

「我は陰陽の統治者にして五行を収めし魔術の体現者なり。我が纏うは自然の力。全てを、癒し包み込み、そして支え飲み込む植物の息吹を纏う木の王者。汝古の契約に従いて我が命を受け、眼前に立ちふさがる全てを飲み込め」

 初めて行われる完全詠唱の魔術。自身の行える最大魔術。
 一気に体から暴力的なまでの魔力が吹き上がるとそれが青い竜の形を成す。

「青龍咆哮ッ!!」

 その声はそのまま青き光の濁流となりて。
 応援に駆け付けた風紀部隊。そして眼前の芥子風を狙い放たれる。
 芥子風に関しては別に当たらずとも良いだが後ろの応援部隊だけは何があっても仕留める。
 全魔力を放出する1撃。眼前の芥子風に関してはこれで剣術だけで挑まなくてはならなくなるだろうしマディファに関しては手も足も出なくなる。
 だが、それでも倒さなくてはならない。あの応援部隊だけは……!!

マディファ=オルナ > 殴った獣の姿がかき消え、元の姿に戻り襲い来る。
そして後方にも獣が現れて。

「ち、厄介じゃ──マジかい」

暴力的な魔力を感知すれば、敵の男が大魔術を放つ様相。
ならばと獣二匹に噛みつかれるが、それを気にするでもなく推進機を吹かし応援部隊への斜線を遮るように躍り出る。

「ぬおおぉぉーっ!!」

噛み付いた獣を盾に……無論多少軽減されれば御の字。
そして己の力を防御に集中して、応援部隊の盾となる。

「ぐ……むむ……墳っ!!」

裂帛一喝、光の濁流を抱き潰す。
だが、今ので相当消耗してしまい、膝をつく。
これほどの消耗を強いられたのは、この世界に来て初めてだ。

シャンティ > 「……あ、らぁ……向こ、う、も……大詰、め……いえ……幕、間……か、しら、ぁ……?」


ぽつり、とつぶやく。


「……そ、う……で、も……ふふ。そん、な……命令、の……余裕、ある、なら……平気、かし、ら……ねぇ? じゃ、あ……サービ、ス……すこ、ぉし、だけ……魔力、追加……ね」


遠く、この場より離れたところへ……もはや気休め程度ではあるが偽神に力を送る。これで、後少し。彼も働いてくれることだろう。流石に其れ以上の助力は、ここからでは難しい。

ご案内:「護送車移動ルート」にふぇんりるさんさんが現れました。
ふぇんりるさん >  
光ったり大きな声が聞こえたりした方向からやってくる着ぐるみ白狼なふぇんりるさん。
たっぷり詰まったお肉を担いで、たたたたたっと足早に。
なんかこっちも煩いただ中を小走りでとても素早くつっきっていくのでした。

ご案内:「護送車移動ルート」からふぇんりるさんさんが去りました。
花菱刃 >  
 魔力を全て使い切ってもまだ。届かない。
 だが、直後バスから聞こえた声。”煙”が来たという情報。最後の望みがつながった。
 ポケットから取り出した黄色い錠剤―Spider―を服用する。

「男の方を止めてくれ! 蛇は強制突入! 後ろは俺が抑える!」
 
 そうシャンティに頼むと一気にかける。
 一気に援軍の風紀へと距離を詰める。
 あの応援部隊だけでも始末できればこちらの勝ちなのだから。

「今だやれ!!」

 どこかにいる”煙”に指示を飛ばす。
 その直後この戦場を覆う煙。機械を狂わせ機能不全にさせるその煙が戦場を覆う。
 応援部隊に到着するにはマディファの横を抜ける必要がある。
 だからこそ必要なのがジャミング。別にこのまま破壊などはしなくても良い。横を抜けるコンマ数秒。その数秒の時間があればすり抜け、応援部隊を切り裂くだろう。
 そして疲弊した今ならばジャミングが刺さる可能性は……十分にある。
 文字通り最後の賭け。最短距離を進み防御すら捨てたその身体には数多の銃弾が食い込む。それでも足は止めない。
 薬によって痛覚を殺したその体は止まらない。ただ仲間を救うため。命など二の次に。

シャンティ > 戦闘そのものに加わらない分、こちらには余裕がある。あちらとこちらの戦況を確認し……


「デウス・エクス・マキナ、は……好み、では、ない、わ……ね、ぇ……? ここ、は、もう……」


つぶやいたところで、『骸』の指令が飛ぶ。そこにおそらくは、自分に向けた依頼。


「あ、ら……ご指名、ねぇ? さ、て……うー、ん……」


止めろ、というならば……するしかないだろうか。といっても、あんな手練に正面切って戦うなど……ただの舞台装置に叶う道理もない。これだから、あまり表立って行動しないのだけれど今回は……仕方ないか。


「……じゃ、あ……一瞬、だけ……よ、ぉ……?」

手に持つ二冊の書。其のうちの一つが不気味に輝く。


「地に伏せ、腐り堕ち、静寂を守りし者。汝ら、立つべし。目の前には汝らの仇敵ありし。起ちて、それを討つべし。汝ら、敗北者なれば……歴史に今一度、爪をたてん。これ、我が書に記されし……真実の一つなり」

ぼこり、と……菖蒲の近くの地面が沸き立つ。そこからは、腐臭を撒き散らす蠢く死者たちが起き上がってきた。彼らは、もはや持たぬ目で菖蒲を見つめ……立ちふさがろうとする。

芥子風 菖蒲 >  
獣に攻撃が当たれども、すぐに形は戻った。
こっちに迫ってこないならいいや。対処は狙われた傭兵に任せるとしよう。
それよりも狙うは──────。

「勝手に滅茶苦茶な事言って、都合が良いなぁ」

四の五の言ってられないのはこっちの方だ。
相手の狙いは自分……じゃない、後ろの応援部隊。
吹き上がる青、天にも昇る深蒼の龍が立ちふさがる。
肌をびりびりと刺激する威圧感。其れでも尚、不退転の覚悟を以て龍を睨む。

「…………」

自分はいい。
だが、"後ろがやられたら"終わりだ。
アッチの傭兵が構えているし、受け止めれるならソッチに任せておく。
向こうから"守りに行ったんだ"。仕事で雇われているなら出来ると判断し、全て任せておく。
あれが終われば後は……。

「アンタだけだ……!」

既に少年は、"獲物"を定めた。
龍の本流を受け止めているマディファの傍らで、地面を蹴り飛ばし突き刺さっていた大剣を引き抜いた。
自分を一度守った大剣、頑丈さならきっと折り紙付きのはずだ。
身体強化の異能により、少年の細腕であっても軽々と持ち上げれる。
土煙を巻き起こし、その数秒の時間に食い込まんと青白い閃光が迫りくる。

死者が立ちふさがろうと、関係ない。
それこそ獲物は"一つ"だけ。
腐臭をまき散らす死者に群がられ、傷つけられ、呪われても。
"命を二の次"として、"一点"を通すために刃を向ける。

「────貫け!」

強化された肉体が悲鳴を上げ、肉が軋み、骨が擦り切れる。
巨刃の刃を勢いのままに、花菱のどてっぱらへと突き出すが……。
此の障害の多さ、刹那の合間の攻防────間に合うか?

マディファ=オルナ > 「……!!」

(くそ、この煙……動けぬ!)

敵の狙い通り、戦場を満たした煙はマディファの動きを止める。
電気の代わりに魔力を流すよう変質した躯体ではあるが、本質は変わらない。
この煙が晴れるまで、マディファにできることは肩を並べて戦っていた風紀の男が、護送車に向かった特務広報部生と風紀委員たちが事を成してくれることを祈るだけだ。

花菱刃 >  
 シャンティの稼いでくれた一瞬。その一瞬は文字通り命運を分ける。
 本来ならばその横腹に芥子風の刃を打ち込まれ自身の命はここに散っていただろう。
 だが、その一瞬のおかげで自らの横腹からわずかにそれ……背中側を深く引き裂かれるだけにとどまった。
 鮮血が舞う。しかし命までは届かない。
 そして煙はマディファの動きを止めてくれた……即ち。

「ッラァアア!!」

 応援部隊に届けばそのまま応援部隊を切り裂く。いくら魔力がないとはいえただ銃で武装しただけの相手に負けるような訓練はしていない。
 その直後バスから聞こえるH確保の声。試合で言えば魔力を使い果たしその上こちらは瀕死。その上ドラッグまで飲んで尚トドメを刺せない時点でこちらの負けかもしれない。だが勝負としては……勝利した。

「撤収だ! 全員引け引け!」

 窓から”蛇”の隊員が捕虜を連れだして飛び出していく。はじめは数名いた精鋭は今や3名しかいない。
 一瞬飛びかけた意識を剣で自身を斬りつけ覚醒させる。

「……また作戦練り直しだ。次は試合でも勝たせてもらうぞ機械女。それと優男……!!」

 飄々としたいつもの様子は消える。もうそんな余裕もない。そして自身もエアースイムを起動させ空へと撤収する。

「応援感謝する……おかげで助かった。お前も早く逃げろよ」

 帰り際シャンティに声をかける。
 そうして飛び立つ。羅刹に通信。大損害を受けるも焔の救助に成功せりと。

シャンティ > 「ん……ま、ぁ……幕、引き……よ、ねぇ……」

ぱたり、と片方の本を閉じる。閉じれば、本は跡形もなく消えた。
それとともに、死者も、異形も姿を消す。

「夜、の、闇、で……私、を……包、め……」


ぽそりと一言。其の言葉で、女の姿は闇に溶けていった

芥子風 菖蒲 >  
「────ッ」

手応えが"浅い"。
亡者はまさに枷であり、刹那の見切りには届かない。
そのままバランスを崩し、血に伏せる少年は顔を上げる。
血に這いつくばる形で、むざむざと違反集団をとり逃す……?

「させ……、……!?」

もう、体が"限界"だった。
亡者に蝕まれた体が、ダメージの許容限界を迎えていた。
如何なる鉄の意思を以ても、それ以上の動くことはできない。
歯痒さに奥歯を噛みしめ、去り行く花菱たちを睨みあげる。

「…………」

返事は返さなかったが、ただ"皆"を倒したあの男を赦す事は出来ない。
次があるならば、確実に仕留める。
追い打ちする余力もない以上、此方も素直に引き下がるほかは無く
最期までその後姿を目に焼き付けていたという。

マディファ=オルナ > 煙が晴れるまでの間で、戦況は決してしまった。

「……やられたのう」

深く、ため息。
生き残った特務広報部生達や風紀委員達を眺めながら。

「風紀の、何某か。
 此度は救援、とても助かった。
 捕虜は奪われてしもうたが、お主らが来なければ、彼処まで奴らに痛手を負わせられなんだろうて」

あの煙の妨害がなければ、などとは言うまい。
今回は、布陣の時点で相手が有利だった。
こちらが甘く見てしまった結果か、人手不足の結果か。
果たして、この敗北がどう尾を引くかは神ならぬ身では知る由もなかった……。

(ところであの着ぐるみはなんじゃったんじゃろう)

ご案内:「護送車移動ルート」から花菱刃さんが去りました。
ご案内:「護送車移動ルート」から芥子風 菖蒲さんが去りました。
ご案内:「護送車移動ルート」からマディファ=オルナさんが去りました。
シャンティ > 「……これ、にて……閉幕……次の、講演、を……お楽、しみ、にぃ……」
ご案内:「護送車移動ルート」からシャンティさんが去りました。