2024/02/23 のログ
ご案内:「児童養護施設『方舟』」にポーラさんが現れました。
■ポーラ >
居住区に堂々と建てられた教会。
ご近所からは他の教会と区別するように『方舟教会』と呼ばれているが、『方舟』は正しくは併設された児童養護施設の名前である。
教会は未だ多く存在する、十字教の教会だ。
飾り気のない門扉を通れば、教会と養護施設それぞれの玄関がすぐに目に入る。
そして敷地に入れば、元気そうな子供の声が聞こえてくるだろう。
『うわぁー!
また負けたぁっ!』
『もぉっ、せんせー強すぎるよぉ!』
楽しそうな声が『方舟』から溢れており、中では何らかの遊戯が楽しまれているのだとすぐにわかるだろう。
ご案内:「児童養護施設『方舟』」に風花 優希さんが現れました。
■風花 優希 >
「…ここかな?」
いつかの食堂で受け取った名刺を片手に、たどり着いた教会の前で門を見上げる。
中へ入らずとも聞こえてくる子供たちの陽気な声に、朗らかに笑みが零れる。
ともあれ、ひとまずは目的の相手と合流しようと門扉を潜る。
彼女がいるとすれば、養護施設の方だろうか。
先生を呼ぶ子供の声も聞こえるが故、そう推測して歩を向けた。
■ポーラ >
少年が玄関に近寄っていくと、また子供たちの声が聞こえてくるだろう。
『あーっ!
せんせー、また勝ち逃げかよぉー!』
『ちがうわよ!
きょう、おきゃくさまがくるって言ってたでしょっ』
そんな子供たちの声が聞こえて、間もなく。
木製のクラシック扉がゆっくりと開かれるだろう。
「いらっしゃい、ゆーちゃん。
遊びに来てくれて嬉しいわ」
和装の女が、扉を出て微笑みかける。
後ろに広がる廊下の影から、小さな子供たちがこっそりと様子を伺ってるが自然と視界に入るだろう。
■風花 優希 >
「どうも、話に聞いた以上に賑やかなとこですね」
戸を開き現れた和装の女性に軽く手を上げて挨拶を返す。
後からこっそりと此方を覗く子供にも、ちらりと視線を向けて。
ひらひらと小さく手を振る仕草を見せつつ、傍まで歩む。
なるほど、事前に話は通していたらしいと。
聞こえてくる子供たちの声に、そんな思考を巡らせながら。
■ポーラ >
「そうでしょう?
みんなとっても元気な子ばかりで、大変なのよ」
着物の袖で口元を隠しながら楽し気に笑う。
その後ろで、手を振られた子供たちは慌てて頭をひっこめてしまった。
『だれアレ!
せんせーのカレシかな!?』
『ううんっ、とっても綺麗だもの!
きっとせんせーのカノジョよっ!』
などと、反応に困る声が漏れ聞こえてくる。
「……ごめんなさいね、ちょっとおませな子たちも多くて」
少しだけ困ったように微笑んで、少年を玄関の中へと招き入れるだろう。
■風花 優希 >
「あははは…年頃の子は、そういう話が好きですから」
聞こえてくる揶揄の声に苦笑を浮かべて。
件の相手にはそうしたごくごく自然な言葉を告げる。
「でも、本当に好かれてるんですね」
そうして玄関の内へと招かれながら、軽い世間話がてらに。
子供たちの顔触れや、施設の様子に軽く目を通しながら感想を零す。
■ポーラ >
「あら、それを言うなら、ゆーちゃんだって年頃の子でしょう?」
そう返しつつ、少年にスリッパを出して、自分も廊下に上がる。
「そうねえ、好かれてると良いのだけど。
わたし、いつもゲームでいじわるしちゃうから、嫌われてるかもしれないわ?」
くすくすと笑いながらそんな冗談を言いつつ。
廊下を上がってすぐの扉には、『せんせーのおへや』と可愛らしいネームプレートが掛けられている。
「さて、ゆーちゃん。
来てもらって早速だけれど……とっても可愛いお着物があるんだけど、着てみない?」
そう妙案を思いついたかのように、手を合わせて訊いてくるだろう。
『可愛い』と冠詞がつくあたり、間違いなく女性ものだろう事が伺える。
■風花 優希 >
「それはまあ、その通りですけどね」
口にしたつもりの年頃、よりは一回り上のつもりだが。
とはいえ、否定するほどでもない言葉に苦笑を返し。
「あの感じなら好かれてると思いますよ。
……まあ、ちょっと意地悪するイメージは付いてるかもですけど」
そんな軽口を交えながら、どうやら目的の部屋に辿り着いたらしい。
なるほどいきなり私室、かぁ…などとぼんやり思いつつ。
とはいえこうした施設でゆっくり話をするなら、他に場所も無いかと納得する。
「しかしほんとに早速ですねぇ。
……いや、まあ…着るのは構いませんけれども…」
ああ、本当に着せるつもりなのかと、ちょっとだけ息を呑む。
それも恐らくは女性もの、躊躇いはあまり感じられなかった。
■ポーラ >
「そうよー?
普通なら思春期真っ盛りでしょう?
はぁ、思春期……素敵ねえ」
どこか悩ましげに、もしくは羨ましそうにため息のように零した。
「ふふ、先生、手加減するのって苦手なの。
でもゆーちゃんから見てもそう見えるなら、よかったわ」
自室の扉を開ければ、部屋の中からは優しく甘い香りが漂い出る。
ポーラが普段纏っている香りの大本なのだろう。
部屋の中を見れば、和室に畳まれた布団、大きな桐箪笥、クローゼットなどがあるが、装飾などはなく、最低限の生活感だけが感じ取れる質素な部屋だった。
「あらほんと?
ゆーちゃんに来てもらおうと思って、色々用意した甲斐があったわ」
そう言いながら大きなクローゼットを開けると、色鮮やかな着物が型崩れしない様に掛けられている。
様々な色や装飾の着物がびっしりと、それこそ、シンプルな和装から正装になるもの、カジュアルなもの、近年産まれたフリルの着いたものまで。
「貰いものとか、わたしのおさがりになっちゃうけど、ゆーちゃんのサイズに直しておいたのよ。
気に入るものがあればいいのだけど」
そう言いながら、好きに眺めて選んでとばかりに、クローゼットの近くへと手招きして少年を呼ぶだろう。
■風花 優希 >
「生憎、そう言うのとはこれまで無縁で」
肩を竦めつつ、羨まし気な彼女の顔を見やる。
相槌を打つように返しながら、未だにそうした憧れでもあるのだろうか…
などと、そんな邪推をしつつ室内へと視線を移す。
女性らしい部屋の香り、とでも言うべきなのか。
甘いそれに小さく鼻を鳴らし、質素な室内に軽い親近感を覚える。
こうした施設だからこその質素さ、なのだろうか。
「うわぁ…これは中々…。
やっぱり女の子って、これくらい服を持ってるモノなんですかね」
しかして、そんな思考を巡らせていたのも束の間。
大きなクローゼットが開かれれば、その着物の数に息を呑む。
好きだとは聞いていたが、なるほど本当に好きらしい。
子供の頃からならば、この量になるのも必然なのだろうけれども。
■ポーラ >
甘い香りの元を探せば、小さな文机の上に、香炉があるのに気づくだろう。
お香を焚く趣味があるのかもしれない。
「あら、驚いた?
でもどうかしら、わたしはむしろ少ない方だと思うけれど……うーん」
少し考えると、浮かんでくるのは幼馴染たちの顔であり。
「ふふ、そう言えばめーちゃん……焔城(えんじょう)先生は私服がとっても少ないわね。
着飾る事にはあんまり興味がないみたいなの。
それに比べたら、それなりに多いかも?」
人差し指を顎に当てて、宙を眺めながら考える。
「どれも、お気に入りだったものだから、捨てるに捨てられなくてこんなになっちゃったのよね。
本土の『方舟』には、多分この倍くらいはあるかも?
ちなみに、今、普段着ているのは、こっちの箪笥の中ね。
……肌着も入ってるから、見せてあげられないけど」
そう唇に指を当てて、悪戯げに少年を上目遣いで見上げて微笑む。
「こっちのは、ほんとにお古を仕立て直したものだから。
もし気に入るのがあったら、貰ってくれてもいいのよ。
ゆーちゃんなら、なにを着ても似合いそうだけども」
そう楽しそうに言う様子は、大人の女性と言うより、もう少し子供っぽい無邪気さが現れていただろう。
先日の言動もそうだが、普段から子供たちを相手にしているのもあり、そういうクセなのかもしれない。
■風花 優希 >
なるほど、香炉の香りか…と文机の上を一瞥し。
続く彼女の言葉に、なるほど他はもっと多いのかなどと頷きつつ。
「あぁ、まあ興味がない人はそういうものじゃないかなと」
思案する彼女に向けて、そう返す。
かく言う少年自身も、服の数が多い方ではない。
明確に興味があるわけでもない為、バリエーションはそこまでだ。
「…って、倍以上…!?
つまりここに在るのは選りすぐりの衣装だと」
そんな驚きで目を見開き、つづく悪戯交じりの言葉に苦笑する。
「流石に見たいなんて言いませんって」
ちょっとした揶揄いのようなものだろうか。
子供っぽさのある言動に、ほんの僅かに空気が緩む。
「…貰う、ってまではちょっと申し訳ない気もしますけど…
でも、ここまで数があると自分じゃ決められないですよ」
■ポーラ >
「そうみたいよねえ。
はーあ、とっても美人さんなんだから、少しくらい着飾ればいいのに」
そう残念そうにため息一つ。
どうやら件の保体の教員は、彼女から見ても見目がいいらしい。
「ふふっ、えりすぐりのお気に入りたちかしら?
あとは本土から、子供たちの七五三や初詣の為に時々送ってもらってるのもあるけど」
そう言いつつ、少年の苦笑に『あら、残念』なんて本気か冗談かわからない言葉で笑って。
「嫌じゃなければむしろ貰ってほしいくらいなのよ?
自分じゃなかなか手放せないんだもの」
と、クローゼットの中を眺める視線には懐かしさが籠っているだろう。
「でもそうよねえ……。
ゆーちゃんなら何でも似合うでしょうけど。
好きな色とか、生地とか、装飾とか……。
ゆーちゃんのお好みは、なにかあるかしら?」
■風花 優希 >
「あぁ、子供たち用のやつもあると…」
その量の多さも少しは納得。
それにしたって数が多いのは違いないが。
「……嫌だなんて言いませんよ。
持ってる服も少なかったですし、丁度いいのもありますし」
ちょっと躊躇いはありますけどね、なんて言いながら。
じっと並ぶ多量の衣服に視線を流していく。
「んー……そこまでハッキリ、好みがないですからねぇ。
似合うならなんでもというか…、ああでも多少は動きやすい方が…?」
■ポーラ >
「そうよー。
まあここの子たちのは別のお部屋にしまってあるけどね。
ほら、やっぱり七五三って大事な思い出じゃない?
それに、成人式には振袖や袴を着せてあげたいもの!」
あなた、十字教の人じゃないんですか?
と言いたくなるような、和の世界への染まりっぷりだ。
「あらあら、こだわりはないのね。
うーん……動きやすいのだと、丈が短いのがいいかしら?
脚を出したりはあまり抵抗ないほう?」
クローゼットに並んだ和服や和服(?)を一つ一つ、少年と見比べつつ訊ねてみる。
「あとはそうねえ。
普段着みたいなのがいいとか、おしゃれ着がいいとか、あとはそれこそ振袖がいいとか?」
そう訊ねつつ、少年に特に似合いそうなものを見比べながら探して、時折、むずかしそうに唸っていた。
■風花 優希 >
「…人生に一度しかないですもんね、そういう日」
七五三は三回ありますけど、なんて冗談交じりに。
教会でそうした話をしているのも、まあ日本だとそういうものだろうと。
そも、好き好んで和服を着ているのだから、大らかなのも当然か。
「そこまで抵抗は無いですね。
動きやすさもまあ、その方が着やすいなってくらいで」
強い希望というわけでもなし。
ふむりと思案しながら、衣服を眺める。
「ああでもそうだなぁ……。
おしゃれ着?あんまりないからそういうのでも」
■ポーラ >
「ええ、本来なら一生に一度の思い出だもの。
大事にしてほしいし、大事にしてあげたいの」
そう言いながらどことなく幸せそうに笑う様子は、先生と言うよりも、母親のような慈愛があったかもしれない。
「あらー、ゆーちゃんはホントに容姿に自信があるのね。
ふふ……裸に剥いちゃおうかしら」
なんて冗談で有って欲しいような事を、ワントーン音を下げて言うのだから、困った教員である。
「おしゃれ着ね。
好きな色とかはある?
ゆーちゃんに似合う色、たくさんあるから迷っちゃうわ」
■風花 優希 >
「…本気でそれ言ってるなら、流石にちょっと逃げたくなりますね」
冗談ですよね?と小声で。
言葉を魔に受けているわけでは無いが、念のため。
肩を竦めて返すのだった。
「好きな色…まあ、白とか水色とかは…馴染みがある色ですけど」
特に好き、という程のものでもなし。
少年が言うように馴染みのある、身近な色がそれ、と言う位であるが。
■ポーラ >
「いやねえ冗談よ。
……本気だったら、部屋に連れ込んだ時点で剥いてるもの」
なんて楽しそうに言うあたり、やりたくなったら本当にやってしまいそうだ。
とはいえ、性欲の対象と言うよりは、愛でるような意味合いではありそうだが。
「白に水色……たしかにゆーちゃんのカラーイメージはそうよねえ。
でも、お着物もそれに合わせると、ちょっと淡くなり過ぎちゃうかしら……」
うーんと悩みながら、青系統が入っている着物をいくつか選び、その中でもミニ丈でちょっとしたおしゃれ着になりそうなもの探す。
「……うーん、これはどうかしら。
黒で印象を少し引き締めて、でも袖の緩さとスカート風の裾で可愛らしさも合わせて。
これに合わせるなら、足元はニーハイの白足袋かしらねー」
そう言いつつ、本格的な和装に比べればカジュアルな、けれどちょっとしたお出かけに使えそうな塩梅の着物を一つ選んでみるだろう。
■風花 優希 >
「それはそれで末恐ろしい事実なんですけど」
事実をただ口に出しているような物言いに、苦笑しか浮かばない。
そうなってしまったらどうなってるやら、想像もできないが。
そんな会話を交えている最中、どうやら着物が選ばれたらしい。
じっとそちらに視線を移し、ふむりと唸る。
「なんというか、ちょっとクッキリした色合いの、かっこかわいい感じですね。
かなり現代感があるというか、カジュアルな感じですし」
■ポーラ >
「ふふふ、大丈夫、優しくしてあげるわ」
なんて苦笑に不敵な笑みで返した。
クローゼットから出した着物を少年の前に会わせてみて、うん、と頷く。
「ええ、ゆーちゃんって線が細くて印象が儚げでしょう?
だから存在感のある色でメリハリをつけてあげると良いのかなって思ったの。
現代感、はわからないけど、ミニ丈の着物が流行ったのは比較的最近らしいわ。
カジュアル寄りで動きやすい、気分を変えてお出かけするのによさそうなのを選んでみたけれど」
少年の身体に軽く合わせて色合いを見てみると、思った通り、儚さを残したまましっかりと存在感を主張出来ている。
「うん、いいと思うわ。
どうかしら、兎にも角にも、着てみない?
ああちゃんと肌着も用意してあるから、安心して。
着付けは……ゆーちゃん、自分で出来る?」
特に変な意図はない言葉なのだが、先ほどの剥くだの剥かないだのの後では、なにかたくらんでいるように感じられてしまうかもしれないが……。
■風花 優希 >
全く冗談に聞こえない。
肩を震わせて苦笑を返すことで、今は流すことにする。
「なるほど、メリハリ……
たしかにうん、クッキリしたイメージになりそうですね、これ」
動きやすさも恐らくは問題がない。
丈の短さは…人によって印象は色々ありそうではあるが。
「ああうん、試着は必要ですよね
……い、一応一人で着れますよ? たぶん」
ともあれ、試着してみる事に異論はなかった。
ないのだが…さっきの発言の後では、ちょっと疑ってしまうのだ。
■ポーラ >
「ええ、そうでしょう?
もっと儚さを強調するって方法もあるのだけど、おしゃれ着、おでかけ着なら、こういう方向性の方がいいかと思ったの。
あ、でもあんまり走りまわったりすると、裾が捲れちゃうから気を付けるのよ?」
『とっても需要がありそうだし』なんて不穏な言葉まで付け足してくる。
実際、太ももの半ばほどまでのミニ丈では、大きく動けば裾の下が見えてしまう可能性は高いだろう。
とはいえ、その辺りは動きやすさとトレードオフになってしまうだろうが。
「あらぁ残念、ふられちゃった」
語尾が跳ねるように楽し気に言うと、白いニーハイ丈の足袋と、ガーターベルト、少年用に用意した白い肌着をクローゼット下の引き出しからだしてくる。
「それじゃあ、これで一式ね。
上手く着れないところがあったら教えて頂戴?
ああそれとも……ゆーちゃんの生着替え、眺めていてもよかったりするかしら」
などと言いながら、少年を見上げながら半歩、身体と顔を近づけて、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
■風花 優希 >
「あはは…それはまあ、動き過ぎたらこの丈だと」
簡単に中身が見えてしまうのは想像に難くない。
当然、動きやすさと引き換えなのは承知の上なのだろうが。
「がっちりとした和服だったら頼りましたけどね」
カジュアルな衣装なら、一人でも切れるだろうと思案の上。
選ばれた和装を受け取り、着替える場所を軽く見渡す。
「ええ、じゃあええと…着替えようと思うんですけど…
……流石にこう、隠せる場所ありません?」
当然、その笑みには何とも言えない苦笑を返すのだった。
■ポーラ >
「うふふっ、大丈夫よ。
この部屋を使ってちょうだい?
わたしは部屋の外で待ってるわ」
そう言って、ひと揃いの衣装を少年に渡して、部屋の外に出ていこうとする。
「部屋の前にいるから、むずかしいところあったら教えて頂戴?
帯も簡単なものだから大丈夫だと思うけど、自分じゃ上手く締められなかったりするしね」
などと言い残して、一度部屋の外へと出るだろう。
そして彼女が部屋から出た直後、扉の向こうから。
『なあなあせんせー!
今の人、せんせーのカレシか!?』
『だから違うわよ、カノジョさんよっ!
だんそーのにあう、すてきなおねーさま!』
「あらあら。
ふふふ、どうなのかしらねえ?」
なんて、少年が何者かと言う話で質問攻めにされている様子が聞こえてくる事だろう。
■風花 優希 >
「あはは…じゃあ、ちょっとの間だけ部屋を借りますね」
流石に冗談だったらしい。
ホッと一息ついて、外に出ていくのを軽く見送る。
そうして着替えに取り掛かりながら、外から聞こえる声に耳を傾けて。
「……うーん、マセてる子、意外と多いのかな」
そんな言葉を零しながら、否定もしてない彼女に苦笑する。
勘違いされてもめんどうだろうに。
まあ、そういう所を含めて愉しんでいそうな気もするが。
ともあれ、和装には慣れているのもあり、着るのは恐らく問題なく。
程なくして着替え終われば、「着替えました~」と声をかけるのだ。
■ポーラ >
「……あら、早いのね」
慣れてたのかしら、なんて思いつつ。
子供たちをなだめながら扉を開けるだろう。
すると。
『わ……』
『はぅ……』
「あらあら」
彼女の腰くらいまでの背丈の少年少女が、それぞれ、顔を赤らめて謎のお客様を見上げ。
彼女は自分の目が間違っていなかったと、満足げに頷いた。
「よかったわ、やっぱり似合ったわね。
どうかしらゆーちゃん、着心地は悪くない?」
そう言いながら、少しだけ依れているところや、帯の具合などを確かめるように触れて直し。
「お着物にも慣れてるのねえ。
ゆーちゃんは多芸なのね」
素直に驚いたという様子で、ちゃんと着付け出来ているのを褒めるのだった。
■風花 優希 >
「どうも、和服はそれなりに着こなした経験があるので」
はらりと、青と黒の袖を揺らして和装を纏った少年が顔を出す。
ふわっと見惚れたような子供たちに、くつりと笑いながら手を振って。
「ん、着心地は大丈夫そうです。
動く分にも問題なさそうだし」
軽く手足をひらひらしながら、動きや乱れを確かめる仕草。
殆ど細かなところを除けば、問題は無さそうで在った。
なにより、その容姿と合わさったその姿は梅に鶯といったところか。
白い素肌が黒の布地でより引き締まって、映えていた。
■ポーラ >
「うんうん、とっても素敵よ、ゆーちゃん。
うちの子たちがすっかり見惚れちゃってるもの」
彼女の言う通り、男の子と女の子はそれぞれ、感嘆の声を上げながら少年に見惚れていた。
そんな子供たちの前で、パンパン、と手を叩くと。
「ほら、カイル、ユミ、見惚れちゃうのもわかるけど、お客様にお茶の準備しなくちゃね。
みんなの分のお茶とお茶菓子、ちゃんと皆で協力して用意して頂戴ね」
『あっ、はい!』
『うんっ、おねーさま、また後でね!』
ぎくしゃくと男の子が小走りで談話室へ走っていくと、追いかけて女の子が少年に手を振り返していった。
「……ふふっ、おねーさま、だって。
そうねえ、今のゆーちゃん、とっても素敵な女の子にしか見えないものね?」
子供たちをお茶の準備に向かわせると、じっくりと少年の姿を頭からつま先まで眺めて。
「ほんとに素敵だわ。
その恰好でお出かけしたら、きっと男の子なんてイチコロよ」
くすくす笑いながら、女性服をしっかり着こなす少年を褒める。
「ああ、あとはお化粧の一つもさせてもらえたら完璧なのに。
ゆーちゃん、どうかしら。
紅のひとつでも、塗ってみない?」
なんて、少年の唇に触れるように人差し指を伸ばした。
■風花 優希 >
カイルにユミ、そう呼ばれた子供たちの名前をひっそり脳裏にメモ。
見惚れてこっちをじっと見ている視線に、ちょっとだけ悪いことをした気がして苦笑する。
「一応、ボク男~…って、この格好で行っても説得力無いか」
小走りでかけてく男の子と、それを追いかける女の子に手を振り返してそうぼやく。
それに対する彼女の感想にも、まあ笑いを返すしかない。
「男の子をイチコロしても嬉しいような複雑なような。
…って、へ? 化粧まで?」
そんな何とも言えない感慨を感じている最中に告げられた言葉に、
少年は少しだけ意表を突かれて、伸ばされた指が伸ばされるのも止められなかった。
すこしひんやりとした体温と、潤った唇が、仄かに指と触れる。
■ポーラ >
「女の子もメロメロに出来ちゃいそうだし、大丈夫よ。
ゆーちゃんの恋愛対象が、どっちかなのか、どっちもなのかにもよるけどね?」
くすくす笑い。
そして、触れた少年の唇の感触に少しだけ目を丸くして。
「あら……ゆーちゃん、体温低いのね?
ああでも、ぷにぷにの若い唇で羨ましいわ。
お手入れしているの?
天然でこれなら、先生もちょっと嫉妬しちゃうわ」
なんて冗談交じりに言うだけだった。
しかし、その唇と触れた指先を不思議そうに眺めてはいたが。
■風花 優希 >
「どうなんでしょ、ボク自身は普通に男子のつもりですけど」
曖昧に、誤魔化すように。
あるいは純粋に、自覚がないのか定まっていないのか。
触れられた指先の感触に、少し眉を動かして。
「体温はまあ、元からこんな感じ何で。
お手入れとかは、実のところ特には」
けれども、一見すれば変わらぬ対応。
意識しているのかしていないのかも分からない。
ただ、少しだけこれまでと違う緊張が其処にはあった。
■ポーラ >
「普通に男の子……じゃあ、先生にもチャンスがあるのかしら?
……なんちゃって、ね。
ゆーちゃんみたいな子は、とっても好みだけれど」
『流石に生徒に手を出しちゃ、ね?』とくすくす笑って言った後。
少年に一歩近づいてその耳元に顔を近づけていき――
「……なにか心配ごとがあったら、なにかある前に相談してね。
必要なら手助けするし、もちろん、わるいようにはしないから」
そう、小さく囁くような声で少年に告げる。
すっと離れた顔はいつもと変わらぬ笑み。
そして、いつもと同じ、深淵のような青い瞳。
「はーぁ、いいわねえ。
お手入れしなくてぷにぷになんて。
先生なんて、乾燥しちゃうとパリパリになっちゃうのにー」
よよよ、と袖で目元を抑えながら、とても大げさに悲しんで見せるのだった。
■風花 優希 > 「それ、受け入れたらどっちも大問題なんじゃ?」
なんて、当たり前で常識的な言葉を返す。
無論、それが冗談交じりな言葉なのはわかっているけれど。
けれど、続く耳に囁かれたその言葉に、少年は瞳を薄く細めた。
「……まあ、そういう何か、相談事があったら言いますよ」
自分の淡い色とはどこか対称的な、深淵を移したかのような青瞳。
それをみつめて、嘯くように小さく返す。
「あはは…そこはほら、若さの特権という奴で。
先生も十二分に、お綺麗だと思いますよ?」
■ポーラ >
「ええ、普通の学校だったら大問題ね。
でもこの学園なら、案外平気かも、とは思うけれどね」
ふふふ、と笑って少年と数舜の間視線を交えると、ふんわりと柔らかく微笑んで、ゆっくりと頷いた。
「あらあら、ゆーちゃんってばそんな本当の事言われちゃうと、先生だって嬉しくなっちゃうのよ?
それとも……先生のことゆーわくしてるのかしら?
もう、悪い子ねえ」
口元を袖で隠しながら、からからと笑う。
若さと言う意味では、一回りも離れていないのだろうが。
十代と二十代では、絶対的な壁が存在するのは事実だった……。
「さてと、そろそろお茶の準備が出来た頃かしら。
ゆーちゃん、談話室に行きましょう?
きっとうちの子たちが、ゆーちゃんが何者なのかって話で大盛り上がりしてるわよ」
そう言いながら、廊下を半歩踏み出して、エスコートするように右手を少年に差し出すだろう。
■風花 優希 >
「…治外法権、というかまあ…
ここは意外と”なんでもあり”ではありますけど」
何処までが、彼女の本音であるのか。
否、そこを気にしてしまっているのが、なんだか少しおかしいのではあるが。
ともあれ、今はそんな思考を奥へと仕舞いこんで取り繕う。
「これで誘惑してるんだったら、なんでもお誘いになっちゃいますよ」
瞳を閉じ、やれやれといったポーズを見せて。
あぁそういえば、今日来た本題はそっちだったな、などと思い直し。
「さっきの二人も、いろいろ言ってましたもんね。
声が大きいものだから、着替え中にも聞こえてましたよ」
今はひとまず、差し出された右手を握り返すのだった。