2022/10/29 のログ
■笹貫流石 > 「…成し遂げた者…かぁ。」
何か、それが小さな事でもデカい事でも。挑戦して掴み取る者。
――自分はどうだろうか?少なくとも、現状は挑むモノすらないのが正しいだろう。
―――世界を破壊するなんて大それた事はそもそも考えた事は無いなぁ。
――響歌姉さんみたいに歌に対する情熱も…いや、聞くのは勿論好きだけどおそらく熱意が違う。
――廬山の旦那は…いや、この旦那底が読めなさすぎてもう何か達成してる感があるな。
――追影の旦那は――『全部斬る』とか本気で実行しそうだから一応挑戦者?
――朱鷺子ちゃんは――何ていうか、俺には無い真っ直ぐさを持ってるし。
――特級のアレは――あぁ、もう面倒臭い!!!
「――そうだな、俺はぬるま湯の現状に浸かっててそれも良いと思ってたんだよ、正直さ。
…でも、決めたわ。今、この瞬間から俺も”挑戦者”になる。ヒーロー?知らねぇよ。それはそれ、これはこれ!!」
キモチイイくらいにすっぱり踏み出す隣の姉さんには及ばないウダウダっぷりだが。
ピッと、ノーフェイス、次いで会場の誰か(みんな)を指差して小さく笑う。
「――笹貫流石、今は取るに足らない”挑戦者”見習いだ。けど、何時か――成し遂げて見せるさ、覚えとけ。」
そう、不敵に笑った。そして後で死ぬほど後悔するんだろう。
(俺は何を啖呵切ってんだーーーーーーー!?!?!?)
と。だが、賽は振られたのだから、もう踏み出して”挑戦”するしかない。
■言吹 未生 > ノーフェイスの視線を追う。
描かれた塔。リドルの基底が一。
老ブリューゲルが象牙に仮託した、神に挑み――打ち崩される定めのジグラトの雄姿。
それを建てた――建てんとした者も、ある意味ではヒーローなのだろう。
神学上は神をも恐れぬヴィラン。哲学上は定理の天井を貫かんとしたパイオニア。
物事には多面性がある。
慣習を恐れぬ果断は、時に叡智をもたらしもするだろう。
しかし――神は怒り、言葉は千々に別たれ、塔は瓦解した。
混沌だけが、そこに残った。聖しき書物はかく語る――。
少女は教条主義者などではない。しかし、そこに災厄があるならば。
壊される平穏があるならば。乱される秩序があるならば。
「その行いが、その果てが、より多くの災いを招くのであれば――」
熱狂の気流に、狂犬はその無慈悲な牙を立てる。
これは、徹頭徹尾、空気など読まない。
衆を欺く技官時代の装束は、今やさながら憲兵の如き冷酷さを帯びて。
「ヒーローとても、審かれるべきだろう――?」
それは奇しくも誰かが言い表した“子供の我儘”を嗜めるような、静かで冷たい声で。
ヒーローに成り得ぬ己の行く末を、覆し難き道行を呪いつつも、嚥下するように。
カオスとアニマの解放をこそ寿ぐこの場に於いて、それは無粋極まりもない宣戦布告に等しかった――。
■ノーフェイス >
「"くだらない話だ"って」
理央の言葉を、聞きとがめた。
――訳では無い、筈だ。
その距離の独り言を、聞き咎められる筈もない。
「言うヤツもいるだろう。まずは、ソコさ。
他人にくだらないと言われてへこたれるような覚悟なら、
どの道なんも成し遂げられない。お帰り(Fxxk off!)だ。
恥をかくのが恐くて。 失敗する姿を見せられるのが恐くて。
格好悪い姿を晒すリスクを負わなきゃ――どの道なんも掴めない。
キミたちは掴み取れてるか?
何もかもがルーティンワークになるような生活をしていないか?
それは社会の歯車になるおりこうな生活でだって変わらないんだぜ。
キミの舞台が日常でも、平和でも。
そこで何かに挑まなきゃ、それはホントに生きてるって言えるかな」
そこで。
指をさされたら、きょとん、と微笑んだ。
「素晴らしい」
ハンドクラップ。
乾いた音が立つと、周囲が流石を囃し立てる。
無謀をからかうもの。やれやれ、と煽り立てるもの、賞賛を叫ぶもの。
「その"我こそは"と言える度胸が最高なんだよ。
でもな……」
「言ったからには、"やれ"よ。口だけが最悪だ。
たしかにいまキミは度胸を張ったヒーローだが――」
■ノーフェイス > 「"ヒーローになれるのは、その一瞬だけ"だ」
「栄光を掴んだ一瞬だけだ。
ステージから降りた瞬間、そいつは凡人に成り下がる。
むしろ、栄光を一回味わってしまったらより悲惨だ――そうだよな」
声を張り上げた少女を。
見下ろした。
その微笑みは、そう。
嘲笑っていた。
「そこで満足してしまったり。
降りた先を自分の現在地と定義した者は。
真っ赤な果実に歯を立てたときのの悦びを、くちのなかで反芻するしかないまま――
他者の栄光を、羨むしかなくなる。
地の底で、惨めにな。
ヒーローになる条件は、成し遂げること。
ヒーローでいる条件は、成し遂げ続けることだ」
断言する。
今の自分が何かを成し遂げても、今日が終わればただのひとり。
挑戦は終わらない。終わる筈もなかった。
ヒーローでいたければ、茨の道を歩み続けるしかない。
■ノーフェイス >
「文句があるヤツがいるぅ?」
誰に向けたことではない。
指を立てて、振ってみた。
摂理を口にした、白黒の隻眼に向けて言ったのか。
「ボクはここだぜ。
"成し遂げて"みせろよ。
さっきも言ったな。
我こそはと声を上げ、意志を貫けるようなヤツじゃなきゃ、
――"ボクの敵じゃない"」
たとえ自分がお前の敵でも、その逆にはなりえない、と。
鼻でせせら嗤う。
布告するのは、こちら側。
審判すら、人が"成し遂げること"なのだ。
「百年に一度の最高な日(エピック・デイ)は常に今だ。
波は高けりゃ高いほどいい。実感が湧かないなら"やって"みな。
……成し遂げた瞬間は、何もかもがブッ飛ぶくらいキモチイイよ」
こめかみに指を当てて、ぐりぐり。と。
極限の快楽と法悦の予感に、甘ったるい吐息がマイクに吹き込まれた。
「――こっちには」
指先が顎から喉元へ滑り降りる。
白い膚、超絶の歌声を発したその喉に。
"こっち"。
それが"何処"を指しているのかなど、言うまでもない。
「観たこともないような"挑戦"が待ってる。
弱肉強食、適者生存の世界が。
どうぞ、飛び込みたければどんどん来な」
弱者は、落第街には要らない。
それを激しく告げた女は、まっすぐに、
風紀委員の少年を見据えた。
秩序を預かる者がやるべきは、"秩序なしでは生きられない弱者を救う/掬う"ことだ。
――邪魔だ、すっこんでろ、と。
女は弱者を嗤う。そして、在るべき場所へ導くのだ。
"生きられる"ように。
「じゃあ、前座は終わり」
マイクの電源を切って、放り投げた。
客席に。
真詠響歌のほうに、だ。
■北上 芹香 >
マイクが放り投げられる。
その先にいたのは。
「響歌ちゃん!?」
声を上げてしまう。
あ、やば。
今、私はここにいないはずの人間。
でも、いいか。エピックデイは今日なんだ。
「きょ・う・か! きょ・う・か!」
声を張り上げる。マスクも邪魔だ、外してしまえ。
熱気に触れる顔は。それに負けないくらい熱い。
■真詠 響歌 >
自分が表立って活動した期間は一番の盛り上がりの途中に蓋を閉じた。
二年半の月日、それは人によっては長くもあり短くもある。
路上で折り目正しく許可を得て歌っていた頃に、
興味本位で申し込んだオーディションをきっかけに私という存在に火が付いた。
一年前に、アーティストとしての私という花火は咲き誇って消えた。
それが周囲の、世間の評価だ。消えたアーティスト。
「――!」
ふざけるな。
ラストソングなんて言葉で自分たちのシングルが飾られるのを、痛みも無しに受け止められるものか。
北上ちゃんに言った言葉を、私は忘れていない。
歌いたかっただけだ。そんな私に、誰が許可を得てラストだなんて〆をくれるっていうの?
「リクエスト、ありがとー!」
嘲笑うようなその笑みに、挑戦的な笑みを返す。
投げ渡されたマイクに電源を入れ、熱気に応えて人混みをかき分けていく。
マイクってこんなに暑かったっけ――違うか、これは私の温度だ。
前座からマイクを渡されたなら、やる事なんて一つだ。
誰のステージかなんて関係ない、観客の時間はおしまい。
「『Anthem』! イケる?」
キャスケット帽を投げ捨てて。
スカートの丈も気にせず檀上に跳ね上がってライオットのメンバーに吼える。
当然、とサムズアップするメンバーにマイクを掲げる。
「アガッた人いたら、いつでも来てよ。
ダンスでもベースでも、やりたい人は――やろう」
やるんだよ。
観客席の皆に目を向けて指を鳴らしてカウントを始めると、長いイントロが始まる。
――50秒。
「『Anthem』!」
第二級監視対象『叫喚者』は歌唱を禁止されている、その禁を犯す。
監視対象たる所以に、触れる。
■神代理央 >
「……………」
同意は出来ない。元々、同意を求められている訳でも無いのだろうが。
此方の独り言が届いた訳も無し。あちらの言葉も、此方に向けられたものでは無いのだろうし。
"交わらない"
それが、落第街と学園都市のあるべき姿だ。
極論、落第街が学園都市の生徒達に悪影響を及ぼさず、其処だけで成り立つスラム街であるのなら、別に手出しする必要は無い。
落第街は、明確に学園都市に取って悪影響を及ぼす場所であるから。違反部活の巣窟と化しているから。
だから、刈り取るだけなのだ。
とはいえ。この熱気。あの発言。その狂乱に同調してしまう生徒が居る事も事実。
気持ちは、分からなくもない。人は誰もが望むものなのだ。
特別な存在でありたい、と。自分だけは、他者とは違うと。
『ヒーロー』になりたい、と。
その気持ちを否定するつもりはない。
だが、それを成し遂げる為に落第街へ誘おうと言うのなら。
それは、明確に『風紀委員会』の敵だ。
「……私だ。突入の準備を急げ。混乱が予想される。間違えても一般生徒には手を出すなよ。…見分け方?反撃する連中は敵だ。暴徒鎮圧の訓練くらいしているだろう」
短く、通信を飛ばして
ステージの上で歌う少女に。
叫ぶ生徒達に。
煽り立てた女に。
「……成し遂げた者こそが、ヒーロー/英雄の証であるならば」
「狭い執務室で、机の上で、軍を動かし民を殺す独裁者ですら」
「ヒーロー足り得るのだろうよ」
自分は、そう成り得ないのか?
浮かび上がる自問自答は押し殺して。
風紀委員として為すべき事を為す為に、動き出した。
■笹貫流石 > 「あーあ、ちっくしょ!”こういう事”になるって自分で薄々思ってたけど!!」
サングラスを放り捨てる。誰も彼もそれぞれの思いや主張がぶつかりあうようで、あぁハロウィンらしいといえばらしいか。
普段閉じたままの瞳を開く。『そこに死の形は見えない』。
「――いいね、最高じゃねぇか。」
誰にともなく呟きながら、早速というか、マイクを受け取った響歌姉さんが”舞台に上がる”。
「んじゃーー早速”挑戦”しようかな!!音楽サッパリだけどダンスとかならたぶんイケる!フィーリングで!!」
真っ先に少年は右手を突き上げて応じれば、身軽にひょいっと、舞台に上がる。
マイクを握る『共感者』と、ライオットのイカした面子に笑顔を向けながら。
「よーーし、まずはここが俺の【死線―デッドライン―】ってやつだ!!」
そして、『Anthem』に合わせて、楽器や歌の代わりに即席のバックダンサーとして”舞台に上がろう”。
■言吹 未生 > 「ああ――」
それは、挑戦的に誘う声への返事か。
あるいは、いざなう白い指先にあてられた狂喜の吐息か。
どちらでもよい。――どうでもよい。
自己の開放。レゾンデートルの確立。ぬるま湯から飛び出さんとする産声。
客席のそこここから感受されたそれらは今や些事に過ぎない。
最も追うべき敵手が。焦がれた【煽動者】が。目の前にいるじゃあないか――!!
茫洋としかけた視界の隅で放られるマイク。
前座は終わり。歌い手は客席の――魁に叫んだ少女へと入れ替わる。
それがあたかも合図であるかのように、一歩を踏み出す。
「《道 を 開 け ろ》」
【圧魄面説】による発声。
バベルの次は、モーセの昔語りの如く。
少女と、マイクを手放した前座とを繋ぐ直線上の人垣が、紅海がそうなったようにして、ざざと割れた。
波音代わりにどよめく不審、混乱の声も意に介さぬままに、一歩一歩また一歩。
次の歌い手を託された彼女が、賛美歌を謳い始めるならば、それは差し詰めタイタントロンの挿入曲――。
「皇国技官、言吹 未生。汝が往く手の鉄塞となり――」
秩序を唱えながら混沌を振り撒く、狂爛獰悪の走狗が、
「汝を討つ手の闊剣とならん――」
狂輝を秘めた一つ眼も――眼帯奥の義眼をも閃かせ、無貌の女神を、カオスの朋たる者を狙い、静かに動く――。
■ノーフェイス > 「わかってるじゃん」
その声は。
あまりにまっすぐ、神代理央に向けられた。
その通りだ、と嗤った。
独裁者が、独裁者にたどり着くまでの歩み。
そこにヒーローたりえる"挑戦"があったのなら。
その瞬間はヒーローだった筈である。
「キミはキミで、ヒーローという言葉に幻想を抱いてるんだな。
……"弱いもの虐め"じゃ、絶対につかめない感覚だからだよ。
"挑戦"しろよ。 キミ自身が知らない、キミの限界へ。
見たことのない景色を見に行くことを諦めてる奴は、独裁者にだってなれやしないぜ?」
かつてどれだけ栄華を誇っても。
"今"何もしなければ、それは落語者なのだと。
女はそうステージ上で静かに笑い、その言葉は確かに届いた。
"振動"の魔術だ。こういう芸当も、これだけの環境だとかなりノイジーな音質になるが…できる。
さて、とコートの裾を払うとともに。
ステージに仕込まれた激しい花火が上がる。
闇を照らす火花は極上の演出。
現れたフロントマンの"EV"は――
アドリブも得意なほうだ。
新たに舞台が上がろうと、そう。
"ステージ上に設置された結界と転送魔術が終わるまで"という、ほんの短い間のステージを全うするだけ。
神代理央の行動開始を受け、多くの生徒に紛れた違反部活生、スタッフたちは。
"堂の入った避難訓練"の成果で、ばらばらに、一般生徒たちに紛れるように逃げていく。
半数を捉えるのが関の山か――はたまた。
「フフフ」
その花火に紛れ、仕掛け人の女は二階通路へ。
軽々と壁を蹴り駆け上がった先で、軽く手招きをした。
誰に?
そのまま、血の色の髪をなびかせて、二階通路から続くスタッフ用の通路の扉の奥へ消えていく。
一先ずの挑戦を終え、次の舞台へと。
ご案内:「《ライブ配信中》『IVORY』メインホール」からノーフェイスさんが去りました。
■言吹 未生 > ステージを荒らそうかとまで肉迫した狂犬は、
「――――」
仕掛け人に手招かれるまま、直向きにそれを追った。
狂騒の渦に、その異質な余韻を一つも残す事なく、静粛に――しかして颯爽と――。
ご案内:「《ライブ配信中》『IVORY』メインホール」から言吹 未生さんが去りました。
■北上 芹香 >
うひゃう。さっきまで隣にいた袖なし外套の人も情熱的。
でも、今は………
「いっせーのっ」
声を張り上げる。
「L! O! V! E! オーレーたちのっ 響歌ちゃーん!!」
わー!! このコール一度やってみたかった!!
風紀の人がなだれ込んできてるみたい!!
でもこの鼓動の高鳴りは。
この心音は。
新しい。
■神代理央 >
「……っ…」
よもや、よもや。余りに真直ぐに此方に向けられた言葉に、僅かに目を見開く。
弱いもの虐め…であることは否定しない。そう見られている事を、否定しない。
しかし、それを諦めているだろう──と評される事は。
「……不愉快だな。ああ、全く不愉快だ」
自分は、ヒーローにはなれない。
なってはいけない。学園都市、という社会を守るべきシステムの守護者で無ければならない。
それは、永遠に為しえぬ課題だ。社会を守る、という目標にゴールなど存在しない。
それこそ、圧倒的な武力と絶対的な恐怖で支配する独裁者でも無ければ……。
その思いを振り払って。
腰のホルスターから引き抜いた拳銃を、二発。天井に向けて発砲する。
「……風紀委員会だ!全員、その場に伏せろ!」
流石に、異能は使えない。
この島では、拳銃一丁など場合によっては護身用の武器にもなり得ない。
しかし、それでも武力と権威を象徴する風紀委員会の制服と共にあれば。
細やかな暴力装置は、ヒーローの卵を喰らう死神の鎌と成り得る。
「…抵抗する者は捕えろ。一般生徒も場合によっては補導対象だ。"植え付けられた"連中は、社会を乱す」
次々と突入してくる風紀委員の同僚達。
とはいえ、何処迄一般生徒で何処からが違反部活生なのか、など。
この狂騒の中で100%判別出来る訳も無い。
故に、抵抗すれば敵。大人しくしていれば…と言った対処しか出来ない。
まあ、捕まえてから聞き出せば良いのだ。聞き出せれば、の話だが。
「……この機に乗じて、落第街でも違反部活の活動が活発化する可能性もある。暴徒鎮圧くらいは、貴様たちでも可能だな?」
乱闘騒ぎの様な無様な醜態。避難誘導が辛うじて上手くいっている事は救いだが、果たしてあの中に何人…いや、良い。
此方に駆け寄って来た現場の指揮官である風紀委員に不機嫌そうに声をかければ、はぁ、と気の抜けた返事が返って来る。
彼も、このライブの熱気に当てられたのか。はたまた。
舌打ちしそうになるが、一応同僚だ。軽く睨みつけるだけで、言葉を続ける。
「…特務広報部を動かす。私も、其方の指揮に当たる。この現場はお前に任せる。あの乱痴気騒ぎを大人しくさせろ」
忌々し気に言葉を吐き出して、慌てて頷いた同僚を放って。
その視線は、女が消えていった通路の先を見上げる。
「………アナーキスト気取りか。革命ごっこか。それとも…」
分かるものか。少なくとも、彼女と───いや、此の場で熱狂する全ての者達と異なる思想の自分には。
この熱気は、理解出来ない。
僅かな溜息と共に、狂乱のホールを後にする。
自分の仕事は、卵から孵化した英雄達を刈り取ること。
……それが『Heldenjagd/英雄狩り』の務めなのだから。
ご案内:「《ライブ配信中》『IVORY』メインホール」から神代理央さんが去りました。
■真詠 響歌 >
響くギターリフ。
オリジナルの打ち込み音源よりもずっとお腹に響く音が心地いい。
「そこにいるの? 自分に問いかけ
映る水面 崩れてブレて消えていく」
声が出ないなんて事は起こらない。
あの地下の自室で発声練習を絶やした事なんて一度も無い。
あがったり日和ったりするくらいの心持ちなら、ステージになんて登らない。
モノクロの少女が人の川を割って、スタッフ用の通路の扉の奥へ消えていったノーフェイスさんを追っていく。
少女が駆け抜けた後、ぞろぞろと雪崩れ込んできた風紀委員の存在で人の流れが変わった。
堰き止められていた物が動き出して、一般生徒と違反部活がないまぜになった人の群れ。
後ろの方から順次取り押さえられていくけれども、それくらいで歌い出した歌は止まらない。
「傷つかない事が幸せなの?
誰かの為の 自分であれる事
楔の先のこの道は 全てが自分次第
その手を伸ばして」
オリジナルよりちょっと早いBPM。
でも大丈夫、ノレる。
眩しいくらいのステージライトに向かって手を伸ばして――
サビへと駆け抜けていく。
「Show me your essenece!
思うがままに 振舞おう自分らしく
Just step forward today!
繰り返す日々 全てを投げ出して
握りしめた 言葉が嘘じゃないなら
此処に居ること 歌って!」
汗が浮かぶ。
ステージライトが喉を焼くほどに熱い。
それでも、気持ちいい。
ただ歌いたい、その心が満たされている充足感が心臓を強く鳴らす。
風紀委員の隊列も迫ってくるけど、二番が来る。
大きく息を吸って、艶めかしいくらいのブレスがマイクに乗ったその刹那。
ガコン、と音を立ててホールのブレーカーが落とされる。
熱いくらいの熱量を持っていた光を失って、視界はゼロ。
「あちゃー、時間切れ?」
熱くなっていたコールが、悲鳴に変わる。
まだまだ物足りない、けどこれ以上は"ここで"続けるのは良くない。
「みんなー! "私はまた歌うから"!」
「この世界で、この島で、歌うから!」
「探して見せてよ」
電気を失ったマイクをステージにそっと置いて。
それでも端まで響く声で、次回予告をしてのける。
「さてっと……それじゃ笹貫くん?」
くらやみの中でのアイコンタクト。
「にっげろー!」
楽し気に、羽搏く鳥のように。
少女は飛び立つその後を、濁しに濁してホールから駆け出していく。
■笹貫流石 > 取り合えず、こういう時は周りを気にせず思いっきり踊るに限る!!
音楽のテンポ、リズム、歌詞に合わせて踊る踊る。型なんて無いし、洗練されても居ないけれど。
踊り、というのはそういうものでいいと少年は思っている。そもそもド素人だし。
――と、どうやら風紀の方々のお出ましらしい。ただ、挑戦している以上は”まだ”舞台から降りない。
彼女やライオットの面子に付き合って、ギリギリまでひたすら踊り続ける。
――が、急に視界がブラック・アウトする。ありゃ?能力の異常か?と思うが視界は『正常』だ。
一番が終わり、二番に突入するその直前。どうやら、ここまでらしい。
ライオットの面子に、「ほら、アンタ等もさっさと巻き込まれない間にトンズラした方がいいぜ?」と、声を掛けつつ。
「あぁ、歌ってみせろよ『共感者』。出来るならまた生でイカしたステージで聞きたいけどな!!」
笑いながら、アイコンタクトに頷いて。「逃げ足なら俺に任せろ!!」と、無駄な事を誇りながらダッシュ!
今夜の事は、少年の中で何かが”変わった”一夜でもあり、また面倒な事になる瞬間でもあり。
「いやーー!この後でペナルティー山盛りだけど、楽しかったぜ、ありがとな響歌姉さんも、他の連中も!!」
その後に、ペナルティで四苦八苦する事になるのは織り込み済みだ。
ともあれ、【叫喚者】と【死線】の、監視対象同士の”挑戦”は――まだ始まったばかりだ。
■北上 芹香 >
せっかく丼器法廷に行ったんだからサイリウムを買ってくれば良かったなぁ。
「わー!!」
「そーのー手ーを! 伸ばしてー!!」
大声を張り上げてジャンプ。
やっぱり、響歌ちゃんの歌は最高。
最高なのに。
どうしてこう、涙が出るようなフィーリングを感じるんだろう。
この感動を。
この感情を。
この感激を。
帰ったら歌にしなくちゃ!!
銃声、そしていよいよカオスになる会場。
「あはははははっ」
笑いながら逃げ出していく。
反体制を歌ってもいいが、反体制であってはならない。
伝説のギタリスト、エドワード・ステイクンの言葉。
今日はちょっとだけ破るねっ!
ご案内:「《ライブ配信中》『IVORY』メインホール」から北上 芹香さんが去りました。
ご案内:「《ライブ配信中》『IVORY』メインホール」から笹貫流石さんが去りました。
ご案内:「《ライブ配信中》『IVORY』メインホール」から真詠 響歌さんが去りました。