2021/10/21 のログ
O RLY >  
「ここ」

唐突に呟くと駆け出す。その一瞬後炸薬がその機能を全うした。
盛大に巻き上がる土煙と轟音の中、まるで爆発そのものに巻き込まれに行くようにように飛び込んだ先は別の開けた空間。
そこでは突然の爆発に巻き込まれたと思しき三人が各々転がっていた。

轟音がまだ収まりもしない中、ただ一人事態を把握している者の”目”が相手を捉えた。
吹き飛ばされた場所から半身を起こしてこちらを眺めている大柄で軽装備の男と
巻き込まれたまま何が起こったかいまだに把握していないであろう二人。
三人ともフルフェイスマスクと軽戦闘用のスーツを身につけているが骨格からして一人は女だろう。
二人とも軽機関銃を所持しているが反応できていない。
反応速度や位置からして大柄な男が主格。無力化はこいつからだ。

「……」

突然の爆発の閃光と衝撃が抜けきっていないであろう相手に立て続けに発砲。
相手からすれば土煙で姿も見えないどころかまるで壁を貫通してきたかと錯覚するような状態だった。
それでも咄嗟に防御の姿勢をとったことは称賛に値するだろう。
並みの銃弾であればそれだけで致命傷は防げたかもしれない。
軽装備でこんな場所に来る位だ。近接戦闘には自信があるのだろう。
こちらに反応を見せている辺り反応速度も悪くない。けれど

「ぇ」

常駐型の防護壁も、盾として構えた武器もガラスの様に砕け
それら全てを嘲笑う様に銃弾が男の体を穿って行った。
本当に思いもしない結末だったのだろう。驚愕に目を見開いたまま、あっけなく男は床に沈んだ。
それを確認することもなく銃口は次の獲物へと向かう。
戦闘能力で言えば中背の男がより高いだろう。しかし、

「次」

迷わず女に発砲。
まともに反応すらできていなかった相手に避けられるはずもなく
轟音と共に閃いた閃光は地下道にまた赤い花を咲かせた。
その時になってようやく向けられた銃口を認め、襲撃者の口の端が吊り上がる。
そしていくつかの光が地下道を一瞬照らした。

ご案内:「◆違反組織群地下廃道」にエボルバーさんが現れました。
O RLY >  
直ぐに止んだ発砲音を追う様に小さな水音が二つ響く。
一つは投げ捨てられた拳銃の音。もう一つは……切断された軽機関銃の半身が落ちる音だった。
ただ一人、銃弾に襲われなかった男は再びの暗闇の中、荒い息を吐きながら
ただただカチカチとトリガーを引いていた。

「惜しかった」

何処か感心したような声が反響の鳴りやまない地下道に響く。
爆破の瞬間から無力化までほんの二呼吸程度の時間。
平和ボケした奴らにとってはあまりにも短すぎる時間だがしっかり撃ってきた。
状況の把握というよりも反射で撃ったのだろう。よく訓練されている証拠だ。

「あんたもそこそこ強い方なのかもね。
 まぁ猟犬なんかやってればそうか」

暗闇の中、視界も武器も失い半狂乱になった男の前で太刀を手にした女は
銃身を断ち切った姿勢のままゆっくりと体を起こすと僅かに踏み込み振り上げていた太刀を再び閃かせる。
地面に転がり虫の息となっていた大柄な男は今度こそ物言わぬ物体となった。
次に女を確認するが女の方はすでにこと切れている。この女だけ暗視ゴーグルをつけていなかった。つまりこいつが案内役で、目だ。
殺意高めで撃った事もあるが、反応が追い付いていなかったのでしっかり急所に着弾していた。
生き残っているのは血振いの音に反応して体を震わせる一人だけ。

「というわけで、ご褒美たーいむ」

楽し気にそう口にすると震える男のマスクを切り落とし、
ゆっくりと身を寄せながら腕を首にからめた。

暗闇の中、湿った水音が響く。
そしてそのまま藻掻くような音が暫く響いた後、
その場で生きているのは一人になった。

「うーわ、口の中に血が入った。ぺっぺ」

唾液と共に入り込んだ血液を吐き出しながら首をかき切ったナイフを投げ捨てる。
からんと乾いた音と共に死体が倒れる音には目もくれなかった。

「契約じゃなかったらキスなんかしないんだけどなぁ……
 あーもうマジ、抜きたくなかったわ」

吐き捨てながら手で口元をぬぐい遺体の服で吹く。
全く、代償行為もなしに異能を揮える方々が羨ましい限りだ。

エボルバー > 落第街の地下とは正に掃き溜めだ。
光に一切照らされない分、様々なものが潜むことになる。
それは表立って動けない弱者かもしれないし、
組織に所属する構成員、あるいは・・・。

何が潜んでいるかもわからないこの湿っぽく薄暗い下水道。
そんな所で、発された音や光はソレをおびき寄せることになる。
それも戦いが起こっている事を予見されるようなものは特に。

何らかの組織の構成員であっただろう複数の転がっている死体と
その真ん中に生き残ったであろう一人の女性。
彼女はこの場において戦いを制し生き残った者、強者だ。
そんな強者の元にソレは現れる。

ソレは音もなくそして唐突に。
異変は何気ない壁面から現れる。
何の変哲もない何処までも続く下水道の壁。
先程までただ薄汚れていただけであったその壁に
黒く大きくくっきりと異様なシミが現れていた。
もし、生き残った強者が気付いたならばこう書かれている。

”今からキミを”ーーー

”攻撃する。”

O RLY >  
「……で、あんたは何なのかな?」

こちらに向けられる視線のような感覚。
大きさからするとおおよそ人位のサイズだろうか。
しかしそれは何かの集合体の様に蠢いていて、一言で形容するなら”気持ちが悪い。”
ある程度広範囲を”視て”いるつもりだったが地下で見誤ったか。

「これだけ近づかれるとか前だったらお説教物なんだけどぉ。
 やーだねぇ。鈍ったかな?」

場合によっては相手方の組織の関係者の可能性がある。というよりその可能性が最も高い。
なにせこの三人は、地下で連絡が取れなくなった一員の捜索兼口封じに来た猟犬だ。
この三人がこいつの姿を見ていたとしたら攻撃した可能性が高い。
……が、戦闘音は聞こえずこいつらは油断しきっていた。

「で、一応正当防衛なんで無罪でーすって通じたりするぅ?」

にへら、と笑いながらゆっくりと立ち上がると同時に片手でこぶし大の黒い物体からピンを抜いた。

エボルバー > シミを形作っていたのは奇妙な黒い砂のような物体。
それは組み上がるように堆積してゆき
人間のような姿へ、最終的には小綺麗なスーツを纏った
細身の男の姿を取る。
その右手には先程の構成員が持っていたと思われる軽機関銃、
ベルト給弾方式の大重量のソレを軽々と片手で持っている。

<僕は、進化を求める。>

振り返った女に男はそう呟く。
そして軽機関銃の銃口を彼女へと向けて

<君は、強者だ。
僕は君の力が知りたい。>

女の言葉など意に介することなく。
男は周りの死体を見渡した後に、女に対して虚ろな瞳を向ける。
その声は脳に直接響くような心地の良くない奇妙なもの。
そしてその男は躊躇なく引き金を引き
長い銃身から鉛弾を一発、女の足に向けて放つ。
砂塵と乾いた銃声が小部屋に響き渡る。

O RLY >  
「ウォーモンガーかよ……だっる」

足元を穿つ衝撃に軽口をたたきながら戦況の把握。
相手の武器と形状からして逃げ場のない直線は不利。蜂の巣にされるのがオチだ。
十分に漁れていないので物資も若干心もとない。真っ向からやり合うのは消耗が激しい。
それは酷くめんどくさい羽目になるので極力避けたい。
五感に関してはない物と推定。見え方はこちらと同じと考えたほうが良い。
点の攻撃は集合体である以上あまりにも効果が薄い。
嗚呼厄介なタイプの相手に捕まった。そう呟く口元はひどく歪に笑っていた。

「ああこれそこそこ高いのに。
 ……ふぁっきん。”奔レ雷光!”」

片手の封呪弾筒を開放する。
それは一瞬にして地下道中の地面と床を這う紫電を吐き出した。
勿論近くにいる本人にも被害は出るが……

「ちっくしょ、ストック減るだろがぁ!」

口から飛び出すのは痛みの悲鳴ではなく経済的な文句だった。
間髪入れずその場から飛び跳ねるように側転すると同時に地面の拳銃を拾い上げる。
回転しながら弾数確認、数発。牽制程度にしか使えないと判断。即座に発砲しながら横穴に。
なにせ相手は染み出してきた。壁自体も壁の用法を成さない可能性がある。
ならば……

「そのまま吹っ飛べ!」

投げつけた炸薬をノータイムで着火。

エボルバー > 放った小銃弾は側転した彼女を横切り
コンクリートの床へ火花を発生させながら着弾する。

<なるほど、興味深い。>

彼女の持つ弾筒から発された紫電の光。
その瞬間に女は普通の人間とは思えない機動力で
拳銃を拾い上げ、正確な照準で男に向けて放つ。
飛んできた数発の9ミリ弾は男を貫き弾痕を開ける。
そこから地面に漏れ出るのは血液ではなく、黒い砂。

<・・・!>

銃撃の後に飛んできたのは所謂爆薬。
その形状を視認する時間も無いまま着火されたそれは
空気を押し出しながら激しい爆炎と衝撃波を放つ。
思い切り巻き込まれた男の身体は裂かれるように
身体の部位をバラバラに吹き飛ばされながら
やがて黒い砂となって宙に舞う。

<やはり、君もこの街の強者だ。>

正確な判断、強力な能力、そして度胸。
彼女もまた落第街に潜む強者の一人として揺るがない。
男だった塊が地面が落ちる。
小部屋に黒い砂場が広がってゆく。
しかし、その淡々と不気味な声は途絶える事無く、
彼女へと届くだろう。

O RLY >  
爆発の勢いを利用してバックステップをしつつ距離をとる。
確かに吹き飛んだが声が聞こえる。
雷耐性在り。生物の集合体ではないと仮定。少なくとも蛋白質を基とするものではない。
流動性の割に連結性も想定以上。群体の癖に意思が統一されている。
呪術性のものかはたまた微細機械か。飛び散り方を見る限り後者の可能性が若干高いか。

「こりゃプランBだぁ……」

ひっじょーに面倒だがこの流動性では当初の案は使えそうにない。すぐ突破されるだろう。
これは物資が飛びそうだ。相性は決して悪くはなさそうだが出来るだけ異能は使いたくない。
なにせキスも出来なさそうな相手だ。というかそんなもんしたら浸食されかねない。

「ちっきしょ。大盤振る舞いだかんなぁ!」

そうと決まれば実行するまでだ。
サイドバックから爆発物を取り出すと立て続けに投げる。
自分とかつて男だったもののパーツとの間に、床に、天井に放ったそれを前に一息大きく吸い込むと

「”燃えろ”」

日輪印を組み、口元に当て大きく息を吐き出した。
それは瞬く間に爆炎となり爆発物を巻き込みながら前方へと殺到していく。

エボルバー > <豊富な手段を保有しているようだ。>

彼女が潜んだ横穴から様々な爆発物が次々と投げられる。
機械にとって未知の手段で着火されたそれらは、
誘爆を重ねて、砂場に支配される小部屋を爆炎で包み
構成員の死体や男の残骸もろとも凄まじい勢いで吹き飛ばす。
細い下水道が衝撃波の通り道となり、爆音を響かせる。

爆発が収まった後には一瞬の静寂が支配する。
コンクリート壁に囲まれた小部屋は激しい爆発で
全てを焦がし、真っ黒く染まっていた。
黒い砂場もその面積を大きく減らし、
部屋の隅に残るのみとなっている。


<・・・腕に紋章が無い。キミは風紀委員会ではないのか。>

隅に残るだけであったはずの黒い砂は異様な速度でその数を増やし始め
黒焦げになった部屋の床をもう一度覆いつくさんばかりの勢いで。
しかし、その数を増やしただけで特に目立った動きを見せる様子は無い。
相変わらずの淡々とした調子の声は唐突に彼女へ質問を行った。

O RLY >  
巻き起こった大きな爆発に背を向け地面に伏せながら
酸素缶を取り出してマスクにつなぐと一呼吸。
地下の戦いにおいて爆発物を利用した戦法が有効な理由は熱以上に衝撃波と酸素濃度だ。
もし相手が人間なら爆発に耐えても酸素不足で瞬く間に意識が消し飛ぶのだが……

「風紀委員に見えるなら状況認識能力が足りてないんじゃね?
 オママゴトに現抜かしてるやつらが無警告でぶっ放したらアウトだっつの」

残った熱と運動によって浮かんだ汗が爆風に煌めき、肌に髪を張りつかせる。
全く、地下でこんなに爆発物は使うものじゃない。

「にしてもかったいなぁ。
 ぱっと見成果ゼロじゃん」

床の砂の群れにため息一つ。
攻撃してこないなら追撃を行うべきなのだがプランBの為手を緩める。

「んで、一応確認なんだけどぉ
 お眼鏡にかなったってことでいーのかな?
 そうじゃないならトンズラこくけど。」

両手を掲げてお手上げポーズ。
それはある意味攻撃を誘っているかのようにも見えたかもしれない。

エボルバー > 黒い砂が再び塊を形成していき男の姿を取る。
先程、銃弾や爆発でバラバラになったはずのそれは
傷など一切ない新品のスーツを身に纏う。
生気の感じられない表情を彼女の方向へと向ける。

<風紀委員会には強力な能力を持つ者が多いようだ。
僕はそれらに興味がある。>

この落第街で治安を守っているらしい彼らは
それを行うだけの力を持っている。
ゆえに恐れられ、憎まれ、時に利用されているのだが。

<であれば、君は何者だ?>

風紀委員会でなければまた別の話になってくる。
男の前に居る強者はいったい何者なのか。
男の傍から、黒い砂場から複数本の触手が形成され
その先端から漆黒の針のような物体が横雨の如く彼女の方向に向け放たれる。
当たれば鋭利な針は皮膚を破るだろう。しかし致命的な部位を狙ってはいない。
それは彼女を殺そうというよりは試しているようにも見える。

増殖し一見、無敵に見える黒い砂群。
黒焦げになった小部屋の壁や天井を見れば
一部が深緑色に染まって溶けたように、削られたような穴が開いている。
まるで食べられたように。それがこの男の、怪異のメカニズム。

O RLY >  
「あっそ。おおむね理解。」

予想していた結果ではあったものの
あれだけ消費して無傷の姿をさらされると少々損した感が否めない。が、判断材料としては十分だ。
どうやら風紀委員に執着しているのは純粋に力としてか。と納得できる部分に頷く。
しかしいやにイケメンに化けるなこいつ。なんかちょっと癪かもしれない。

「あたし?アタシは只の”悪い子”だよ。
 風紀委員と違ってね。」

成程、周囲の物質を取り込んで自身の構成要素に変換できるのか。
こいつは”包んで殺しつくさないと”死なないタイプだ。殺しきるには骨が折れる。
等と分析していればこちらに向けられる無数の針。
黒曜石のような切っ先が残り香の炎を反射して煌めいた。

「キヒ」

少女の形をしたそれは押し寄せる驟雨のようなそれを避けようともしなかった。
避けず、全身を刺し貫かれながらも笑っていた。
殺意がなかったから?避けなくても死にそうになかったから?
そんなこと理由の一つにもなっていなかった。
唯一僅かに口元をかばったのは只次に繋げる言葉を吐くためだけ。

「面白いことを思いついてるんだけどさぁ、乗る気ない?」

エボルバー > <悪い子、抽象的な表現だ。>

虚ろな瞳で相も変わらず女を見つめ続ける男。
傍から見れば活力に欠けるものの
整っている風貌と言われればそう見えるかもしれない。

彼女の自信を表す表現についてはアバウトなものを感じる。
自分の所属を濁していることに、男は気づいている。
男が深堀する前に針の雨が彼女へと到達する。

<なるほど、興味深い。>

但し彼女が防御手段を取る事は無かった。
その人間とは、生物とは思えない挙動に男は関心を示す。
直後に無数の針が彼女に突き刺さる。
ダメージに、痛覚に彼女が取ったのは笑う事。
そして男に何かを提案した。

<それは、何だ?>

”面白いこと”ーー
それが男にとって進化の糧になり得るのか、
それだけが問題なのである。

O RLY >  
「簡単。アタシと手を組め。進化したいなら尚更ね」

俯き、手で口元をかばったままそれはくつくつと嗤う。
それと同時に刺さっていた棘がパラパラと抜けていくかもしれない。
棘の切っ先はまるで何万年もの時間に晒されたかのように風化した塵にまみれていた。

「情報共有に関してはあんたの一部を小瓶にでも入れて持ち歩けばいい。
 あんたが小群体でも活動可能な事はさっきの一連の流れで確認した。
 一定距離を離れると壊死するとかそういう特性があるなら別だけどね。」

少なくとも爆散して複数の意識が発生するなどの現象は見られなかった。
問題なく集合意識として機能しているが、行動に規則性……良くも悪くも機械じみた法則が多い。
この個体が”最も効率的な情報収集”を行っていないところからも何らかの制約が設けられていると推察できる。

「あんたの目的は情報収集。今の所主に戦闘に関わる情報でしょ?
 少なくともアタシ”達”は風紀委員じゃない。けど一般人(いい子ちゃん)でもない。
 故に風紀のと衝突することが予想される。
 あたしと組めば衝突が起きる場所の予想情報も増えるし
 もしアタシが戦うなんてなれば、あんたはアタシのデータに加えてその風紀委員の戦闘データを収集できる。
 アタシが本気で戦うかもしれないし。あんたとしても悪い話じゃないよね。」

こちらとしても益となる部分は多いが語る必要もない。
何より一番の理由はそんな益ではないのだから。

「あんたなら手を組んでも良い。
 ニンゲンじゃないアンタなら。」

エボルバー > <急速な劣化。なるほど。>

彼女に突き刺さっていた針は未知の手段で劣化されられ朽ちていた。
針も黒い砂から形成されたもの、ゆえに本質的には男と同じ。
劣化する過程を分析し、学ぼうとしている。

<内容は理解した。僕を構成するキャトムは
距離によって機能を停止することは無い。
より大きな集団から破棄命令を出されない限りは。>

男にとって自分の構造は秘匿でも何でもない。
隠し事があるであろう彼女やもっと言えば人間達とは違う。
機械は人間の全てを知っているわけではないが
人間ではない男は客観的に人間を見ることが出来る。

<しかし君の提案には、君自身の利益の提示が不足している。>

すなわち「お前にとって何のメリットがある?」という事だ。
人間が交渉を持ちかけるとき、必ず自身に対して有益な事があるから提案する。
男が、機械がこの島で学んだことの一つだ。

O RLY >  
「んー?お堅いね。
 まーそういう生き物なんだろうけどさぁ?
 アタシがどんなメリットを得るかとかどうでも良くない?まいっか。
 誠実ついでに教えてあげる」

くつくつと笑いながら黒曜の針を払い落としていく。
傷跡も瞬く間に消えていき、穴だらけで無残な格好だった顔もあっという間に元の顔。

「一つ。単純にアタシは極力自分の情報を表に出したくない。
 アタシの戦い方見てわかると思うけど。
 一つ。あんたと協力体制を敷ければ此処のマップ情報を無駄にせずに済むし、アタシもあんたから情報を得られる。
 再確認とかめんどくさいし、少なくともあんたがいるとわかってるところでは多少の優位性を維持できるってことになる。
 一つ。報告とかするのが死ぬほど面倒。
 協力してしまえば敵とは遭遇していない。よって報告義務も義理も無い。
 ……まぁこんなとこかなぁ?ありていに言えば正確な情報が欲しいのはアタシもってこと。
 その点人間なんかよりあんたは信用できそうだからさぁ。」

下より彼女としてはほぼボランティアに近い感覚で働いて差し上げているのだから。
ニンゲンなんぞの為に。

「要は効率的に事を運びたいのさぁ。わかるでしょ?」

エボルバー > <僕は生物ではない。機械だ。>

お堅い機械は彼女の言葉に律儀に反応する。
ナノマシンの微弱な電気信号の集合によって発生した知性は
決して高尚なものなどではない。
それは原理的には人間の脳も同じである。

<君に内包する事情は僕には理解できない。>

機械にとって行動原理は学び、進化する事。
何処かの組織の犬というわけでもなく誰かに飼い慣らされる訳でもない、
人間達の思惑や利害関係などは気にも留めない。
ただ、彼女の持つ能力や明らかになっていない部分も含めば・・・

<しかし、君には価値がある。>

機械はそう判断した。
彼女の足元へ黒い砂場が伸びてゆく。
そしてそこから触手が伸びてゆく。
その先には何か黒いリストバンドのような形状の物体が引っかかっていた。

<僕は君を利用する。ゆえに君も僕を利用すると良い。
その物体は鋭利な近接武器にも身を守る盾にもなるだろう。
攻撃し、攻撃を受ける事でその経験は僕に蓄積される。>

どうやら、その機械の一部は腕に巻いて、ある程度使用者の言う事を
聞いてくれる代物のようだ。
装着するか否かはもちろん彼女の自由である。
別に装着し機能させなくても彼女が持っているだけで周りの情報を入手できる。
どうせなら有益に使えという事だろう。

O RLY >  
「おーけい。契約成立。
 助かるよ。アタシもさぁ、もう少しだけニンゲンで居ることを楽しみたいんだよね
 じゃ、ここであったことはお互い他言無用ってことで。
 特に”時間経過”についてはねぇ」

信用とわずかな威嚇のために片鱗を見せたというのに
とてもそうとは思わせないような笑みを浮かべてそれは笑う。
それとしても目前の彼がどう思おうとあまり気にしていないのだろう。
いつか裏切られるかもしれないという事も踏まえてこんな提案をしているのだから。

「いーね、好きに利用して利用される都合の良い関係でいよーよ」

だからこそ差し出される機械にも躊躇なく腕を通す。
それこそプライバシー含め、四六時中監視されると同義だとしても
その表情には面白そうという感情しか浮かんでいない。

「お、便利そうじゃん。やーさしー。
 こういう手段はいくらあっても困らないねー。知恵だねー。
 あ、事情でつけれないときは小鬢にでも入れて胸元に入れておくわ。」

その事情の9割がお洒落なのだがそれは口に出さない。言っても伝わらないだろうし。

エボルバー > <君は純粋な人間ではないようだ。>

彼女の口ぶりは未知の本質を垣間見せる。
しかし、彼女の思惑も目の前の機械にとっては取るに足らないものだ。
只、己の目的のために利用するだけの事。
彼女を利用し、彼女に利用される。それだけの関係。
それこそ機械の一部を好きな時に破棄してしまっても構わない。
ただそれだけの関係。

<君の生体電流に反応して、形を変えることを実現できる。
君の思う”便利”に使うと良い。それが僕の糧になる。>

勿論、お洒落などこの機械が理解できるはずもない。
ただ貴方にとっての実益を話す。
事実と数字で理解するのが機械なのだから。

そして焦げた小部屋を覆ていた黒い砂は一斉に移動を始める。
それは男の足元へ集まってゆくものもあれば、
下水道の開いた穴へ入ってゆくものもある。
時間を掛けずにに部屋から漆黒の砂場は跡形もなく消滅した。
この場には女と男のみ。

<キミは面白い。良い経験を期待している。>

無表情で口だけを動かしてそう告げる。
男の形が崩れてゆく。やがて本質的な漆黒の砂塵と変わっていけば
宙を巡るように漂っていき、壁の隙間から地上へと上がっていくだろう。

O RLY >  
「別にお風呂とかそういうときにまで身に着けてろって言わんでしょ。
 疑似人格に人類の性欲とかがインストールされてるなら兎も角。
 あったとしても何の役に立つのか知らないけどそんな機能。
 まぁそれが無くてもスリーサイズ測定して公開とかしだしたら即溶鉱炉にぶん投げるけどさ」

そんな映画あったわなーと笑いながらよいしょっと立ちあがる。
あれだと別の相方はサムズアップして飛び込まないといけないわけだけれど、それはずいぶん暑くて怠そうだな……

「あ、ちなみに別にアタシ以外は普通に襲っていいから。
 十全に好奇心を満たしてもろて」

それで死ぬような相手の情報はいらない。目下の所こちらとしてもターゲットは潜在的脅威と風紀なのだから。
自分と違ってこういった相手に和平や協力を持ち出すような救い難いお人良しは居ないだろう。
……まぁ例の”お姫様”みたいなのはあり得るか。少し眉をひそめる。
ああいう甘さは虫唾が奔るが結果的に同じ行動にならないよう願っておこう。同類だと思われたくない。

「人を知りすぎて人にならないようにね
 どうせ人にはなれないんだからさ」

そういえばかつてそんな奴がいた。
あいつも確か、機械だったっけ。
結果、ただ使うだけ使われて廃棄されただけだった。

「そっちもねー。せいぜい沢山殺し合ってくれたまへよぅ?」

さて、そうと決まれば次だと言わんばかりに立ち上がり伸びをして踵を返す。
そろそろ蟻がマッピングしながらこっちに来る頃合いだ。一緒にいるのを察知されるのはあまりよろしこばしくない。

「じゃーね。フレンズ」

そう上機嫌に口にすると片手を振って猫のようにするりと脇道へとまた溶け込んでいった。

ご案内:「◆違反組織群地下廃道」からO RLYさんが去りました。
ご案内:「◆違反組織群地下廃道」からエボルバーさんが去りました。