2024/10/02 のログ
ご案内:「常世公園」に霞流 周さんが現れました。
霞流 周 > 「……疲れた…なぁ…。」

ぽつり、と呟くのは白黒二色の髪色を持つ銀瞳の少女。
傍らには、鞘に納めた刀が一振り。

二級学生――”訳あり”で正規の身分で入学出来なかった者の一人がこの少女だ。
学費を稼ぐ為に、色々と非合法な仕事をする事もある――かもしれない。
少女の場合、多少は過酷かもしれないがそこまでどん底…ではない、今はまだ。

それでも、疲労は人間だから溜まるもの。ベンチに座ったまま先の呟きが漏れた。
ここから、最近入居が決まった万妖邸まで帰るのは少々距離がある…それが、少し…いやかなり億劫で。

霞流 周 > あちこちを気儘にフラフラするのはとても好きだ。
何も考えなくても”何処か”に勝手に辿り着くから。
それでも、人だから疲れるしお腹も空くし喉も乾く。

「……飲まず食わずで…半日も歩き回ったのは…やっぱり…失敗だったかな…。」

ぽつり、ぽつりとやや途切れがちの声はその瞳と同じく覇気がさっぱり感じられない。
快活や明朗さとは無縁、と言わんばかりの態度でベンチに座したまま茫洋の視線を彷徨わせ。

ご案内:「常世公園」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
涅槃の揺らぎ、揺らぎの地平。
景色一つ揺らげば、眼の前には人影一つ。
忽然と表し男。艶やかな黒糸を揺らし、
(うろ)の双眸が静かに少女を見下ろす。

「……随分と参っていられるようだな。悩み事でも?」

静寂より現れし武人が、静かに言問う。
くぐもりし声の正体は、口元。
もそ、もそ、もそ。パンを……食ってる……!

「入居時よりも、些か覇気が感じられぬ」

もそ、もそ。
食べながら……喋ってる……!
でもパンカスは溢れない。器用だね。

霞流 周 > 茫洋とした、まるで死者のように光の無い銀の双眸が虚ろの双眸と対峙する。
…緩やかに瞬きを一度してから、ああ…と息を小さく漏らした。先日お世話になった管理人さんだ。

「…どうも…紫陽花さん…。…悩みではなく…単純に疲労…ですね…。」

かなり緩慢な仕草で、一礼をゆるりとしながら答える言葉は矢張り途切れ途切れ。
それよりも……この人、何でパンを食べながら登場してるんだろう…?

「…自分で言うのも…滑稽ですけど…私は元々…覇気?とかそういうのは…無いですよ…?」

だが、先日に万妖邸で会話した時に比べれば、確かに疲労感が滲んでいるかもしれない。
……あと、食べながら喋るのは……私も人の事は言えないけれど…なので、そこは沈黙を決める。

紫陽花 剱菊 >  
生気無き眼差し、(うろ)の底。
差し詰め根の底。交わっているはずなのに
些か定まらぬ錯覚さえ覚える互いの双眸。

「……疲れか。卒爾(そつじ)乍、帰路は未だ(なかば)……」

斯様体たらくでは、野垂れ死ぬのも致し方なし。
もそ、もそ……喋りながらもパンは口へと消えていく……。

「霞。風吹けば飛ぶようなか弱さだ。
 然れど、万妖と契約を交わす度胸はある」

一つ撫でれば手折るのも容易くも見える手弱女。
人を見る目は定かでは無くとも、霞の中に光るものを感じる。
ふと、ゆるりと懐から取り出したるは一袋。
『チョコチップスティック~120%チョコ増量中~』
の文字が此れでもかと描かれた大衆向けの実際スナックパン。

「食べるか?」

もそ…もそ…。
まだ、食ってる。
なんなら新しいパンになってる……!

霞流 周 > 少女は確かに男を見ている…けれど、同時に何も見ていないような…そんな不可思議な差異。
交わっているのに交わっていない。意思も声も届いているし、会話に不自然も特には無い。
それでも、心ここに非ずとばかりの吹けば飛ぶような曖昧さは拭えず。

「…半日ほど…島のあちこちを…歩き回ってたので…。」

それが趣味なのかどうかは分からないけれど、好きなのは間違いない。
――だって、歩き続ければ必ず”何処か”には辿り着けるのだから。
もし、半ばで野垂れ死ぬとしても…それが”何処か”の果てなら是非も無し。

「…度胸…と、いうほどのものでも…ないかと…。」

入居の理由が家賃と面白そうな、という何とも俗っぽい理由でしかなく。
度胸があるというより――単純にそこにある事実を淡々と受け入れているだけに過ぎない。

――【無私透徹(とうめい)】な少女はどの色にも馴染み、そして交わる事が無い。

「……紫陽花さん、そんなパンを…食べるんですね…。」

少々意外だった。【チョコチップスティック~120%チョコ増量中~】…増量前を知らないので何とも言えないが。
僅か、貰うか否かを検討する――前に小さく腹の虫が鳴った。
何せ、半日の道程を呑まず食わずで過ごしていたのだ…当然、空腹にもなる。

「……じゃあ…お言葉に甘えて…頂きます…。」

緩やかにまた一礼をしてからパンを受け取ろうと。
…何時の間にか、別のパンを食べてるけどこの人は奇術師なんだろうか?

紫陽花 剱菊 >  
ゆるりと手渡し、隣へと座る。
衣擦れの音も無く、波紋も無く、
瞬きすれば隣にいる。揺らぐ霞とは違い、影。
つと、足音に交わるやも知れぬ仄暗い所作。

「……散歩が趣味か?或いは、鍛錬を?」

広い島。当て所無く彷徨うには丁度良い。
如何様にでも思うも思案に余る。
静寂に波紋を描かぬ虚の声音は言問うた。

「うむ」

自信満々と頷いた。うむではないが?

「……此の島に流れて数年は経つ。
 当時、食事は私にとって詮無き事に過ぎなかった。
 ……が、甘露。甘露な物々が私を食の興味をもたせた」

「そのパ↑ン↑も中々のお味……」

要するに超甘党になったらしい。
おまけにイントネーションもなんか怪しい。
そんな甘党チョイスのパンだ。
齧れば濃厚なチョコとジャンキーなスナックパンの味が出迎えてくれる。

霞流 周 > 相変わらず、音も無ければ風の動き一つ感じられない静かな影の如き動作。
少女にはとても出来ない…ただ、流れる霞の如くフラフラふわふわしているだけ。
影と霞の明確な違いと…力量の差がそこに現れているのだろうか。

「…鍛錬は…あまりした事…ないですね…。
趣味…か、どうかは自分でも分からないですけど…。
ただ…あちこち見て回るのは…好きだと思います…。」

ずっと同じ景色ばかりだと飽きてしまうから。
だから、違う景色を見たいし感じたい。
そして、仮にも刀を振るう者であるのに鍛錬の経験は殆どない。
…だから、少女は決して”武芸者”ではないのだ。

「…甘露…あぁ…つまり…甘い物が気に入ったんですね…。」

それは分かる。少女も甘党…かは分からないが甘い物は割と好きだから。
パンのイントネーションの奇妙さも、何となく彼らしいなと思わなくもない。
取り敢えず、袋を開けてパンを一口…もくもくと、食べ方もゆったりと静かだ。

「…ん…増量しているからか…想定していたより…味が濃い…ですね。
…でも、こういう味は久しぶりです…。」

濃厚チョコにジャンキーなパンの合わせ技は美味。
普段はあまり口にする事も無いので、偶にはこういう味がとても恋しくなる。
無心でもくもくと食べれば、あっという間に平らげてしまうかもしれない。

紫陽花 剱菊 >  
「……虚仮威しの刀ではあるまいな。
 不確かであれど、刀は如何様に扱えよう」

握る姿を、振るう姿を見たわけでもく、
斯様、勘に等しく思案の末。
刀を携える"慣れ"とも言えよう。

「すずろのまま、赴くままに流離の身……。
 逍遙(しょうよう)と興じるのは一興。
 私も此の島の景色は、気に入っている」

乱世とは違いし摩訶不思議、
転変と姿を返し常世の果て。
乱世と違う泰平の世、夕暮れの有る此の地を愛した。
ほんのりと、剱菊の表情は微笑む。

「……然れど、身の振りは弁えるべきかと。
 髑髏(しゃれこうべ)と花咲く必定成れど、
 今や其方は、万妖の住民……野垂れ死には、些か寝覚めが悪い」

流離う果てが根の国成れば、必定。
戦人成れば言わずとも心意気は理解する。
然れど、此度は乱世に非ず。故に、諌言也。

「……、……余程腹を空かせていたか。
 ……其方、食事はしかと取れているのか?」

霞流 周 > 「…虚仮脅しかどうかは何とも…ですね…。」

首を緩く傾げながらも、もくもくとパンは食べている。
少女の剣は、己の”意”が全く介在しない無私透徹の剣。
誰を斬っても、何を斬っても、そこに彼女の意志は無い。

…だから、刀の扱いに自負も自信も無く、慣れはあれど武芸者に括られるのは厭う。

「…まぁ…ただでさえ…肩身の狭い…二級学生の身分ですから…ね。」

学園でも、偶に”そういう視線”で見られる事もある。
彼女自身は波風立てる気は無く、勉学も手を抜いたり怠けたりはしていない。
それでも、二級学生の烙印というものは――そこから抜け出さぬ限りは消えはしない。

「…取り敢えず…次からは…きちんと…食事と水分補給は…するようにします…ね。」

散策を辞める気は無いらしい。ただ、今回は完全に自業自得の空腹故にそこは静かに首肯する。
万妖の住民――ああ、確かにあそこは面白い。部屋でも普通に怪現象が起こるのも含めて。

「…食事は…最低限はきちんと取ってます…ただ…あまり贅沢出来る身でも…ないので…。」

学費を稼がなければいけない上に、二級学生の稼ぎとなると非合法なものや過酷なものが多い。
少女はまだ”マシ”な方であろう。二級学生とはいえきちんと学業はこなしている。
非合法な稼ぎも偶にしかしていない…が、正規の身分ではない故の弊害は多い。

紫陽花 剱菊 >  
二級学生。
常世の地にも陰るもの有り。
草分け辿るや幾星霜。
こと、須らく仄暗き身分。
学生としての地位は在れど、
安寧無き偽り故自ら選ぶものはそういない。
故に、秘匿である。言わんや、知れば誰もが奇異の目で見よう。

「…………」

ゆるりと秋風、黒糸をざんばらに散らす。
夏の残り香もあと僅か。ひっそり閑と、静寂が再び。
自ら麦菓子を飲み下し、並び佇み影と霞。

「──────何故(なにゆえ)、自ら影に身を落とす?」

自らの不便を承知でその身を落とした。
在り在りとその一端は見えた。
死にたがりとは違う。
生きるが故に、此処に在り。
故に、問う。影から(うろ)が、かそけきの霞に。

霞流 周 > 「……一言で…答えるのは…難しい質問…ですね。」

自ら影に身を落とすのか。何一つ…とは言い切れぬまでも良い事などほぼ無い。
それでもここに留まり続けているのは、偏に何の為なのか?

理由はある――けれどそれを語る気は無く。
今後もお世話になるであろう万妖の管理者の一角であろうとも。

(…そもそも…大した理由でも…無いし…ね…。)

とはいえ、完全に黙秘というのも些か礼儀に失するだろうか。
少し考えるように茫洋とした視線を宙に走らせて。

「…正規の身分だと…誰かに迷惑を掛けてしまうので…勿論…二級学生の身分でも…変わらないかも…しれませんけど…。」

少女は霞のようにふわふわしていて頼りないし不安定だ。
同時に――何処か機械的だ。
何時、誰を無意識の内に斬ってしまうか分からない
――だったら、正規より二級の身分の方がまだ迷惑は掛かるまい。

己の意が存在しない剣を振るう故に、己の意に反して斬る事も”出来てしまう”。
…理由の一端はそんなものだ。少女は少女なりに己の剣の悪しき所を理解している。

「…まぁ…杞憂とか…そういう事もあるかもしれません…。
けど…私は……いえ、だからこそ…今はまだこのままでいいです…。」

後ろ指をさされても、蔑まされても、疑心暗鬼の目で見られても。己が選択した茨の道だ。