2026/02/28 のログ
ご案内:「常世公園」に佐々木伊織さんが現れました。
ご案内:「常世公園」にセツリさんが現れました。
■佐々木伊織 >
深夜の常世公園。
充電が半端な携帯デバイスと、電子データで買った自販機の缶コーヒー。
眠れない。
眠れば朝には新たな被害者が出る妄想に取り憑かれている。
だって僕はカタストロアなんだ。
誰かを傷つけてしまう。
いや、アイツは僕をいつも覗き込んでいるからそんな抵抗すら虚しい。
気まぐれに僕の体のコントロールを奪い。
気まぐれに何かを壊してから戻る。
空には煮えきれない表情の月。
いっそ破壊的な景色であればよかった。
携帯デバイスを取り出そうとして、同じポケットに入れていたペンが見当たらないことに気づいた。
探すのも億劫だけれど、公園に放置すればゴミになってしまう。
■セツリ > 深夜。
人なんてほとんどいないような時間。
しん、と静まり返った空気に、布を裂くかのような亀裂が走る、ような錯覚。
一足踏むたびに砂利が整備され、
地面が砕ける。
暗がりの中、先客がいたようだった。
普通なら声をかけずに通り過ぎるだろう。
それこそ、逃げるように。
だが、その人物は何かを落とし、それに気づかないまま、どっかで歩いてポケットを弄ろうとしていた。
「……待って」
挙手のポーズ。
奇しくもかけた声はあの時と同じものだった。
けれど柔らかい雰囲気を感じる、かもしれない。
「もしかしてこれ、落としたんじゃないかな?」
手に持ったのは、小さなペン。
それを彼に差し出しながら、桜色の毒々しいほど鮮やかなまなざしを向ける。
■佐々木伊織 >
ふと、呼び止められる。
どこかで聞いたような。
そんな声に。
振り返れば、鮮やかな瞳の色をした少女。
持っているのは、僕のペンだ。畜産科に入った時の記念品。
「ありがとうございます、探そうとしていたところでして…」
受け取ると、どこかで見たかな?と彼女を見る。
月明かりに柔らかく照らし出される花の髪飾り。
ふと、風が穏やかに吹けば。
彼女の優しい香りが鼻腔をくすぐった。
僕のは……藁が陽に当たったような、いつもの匂いがしているだろうか。
「結構、大事にしていたペンなので、無くしたらショックなところでした」
■セツリ > セツリの香りは、桜の花のようで、
さわやかだが、嗅いでいるだけで毒々しさを感じるようなものだった、かもしれない。
桜の花びらを模した飾り付きの帽子をかぶった小柄な少女。
「……?」
近づいた瞬間に、不思議な違和感が襲った。
ごく最近、とても特徴の似た香りを、嗅いだ。
藁の匂い。
乾燥した草の香ばしさ、
太陽の温かさ、
そして土の香りが混ざり合った、
ノスタルジックで心落ち着く温かい香り――
だが、少し心がざわつくようだった。
「……。」
大事なペンだったと。
そう聞いた矢先に、手渡したそれはガラス部分にヒビが入って、壊れ始めていた。
「……ごめん……。」
その顔は、とても居心地が悪そうで。
一歩後ずさり、この場から逃げてしまいたそうにすら、感じられるか
■佐々木伊織 >
夜の公園でそれは起きた。
「!」
ペンにヒビが入っていた。
いや、わざわざ拾ってくれた相手をがっかりさせないように、
大事なものだと言っただけであまりにもどうでもいい普段使いの記念品だったけれど。
「これは……あの時の…」
暗くて判断が遅れたけれど。
彼女はカタストロアと戦って、お互いに大きなダメージを負った。
「忌み嫌われる者、の…」
その言葉を口にして気付いた。
これでは彼女を知っていることを口にしたに等しい。
嫌な汗をかく手のひらの上で、ペンは朽ちて崩れ落ちた。
■セツリ > (忌み嫌われる、者……?)
「……え」
なぜ。
知っている。
公安委員会?
監視者?
情報削除担当?
いや。
違う。
待て。
これは。
……そうか。
「……キミは。」
「キミは、……凶悪犯の。竜人、カタストロア……!?」
理解してしまった。
論理的には破綻しているが、この島で論理など気にする必要は今更ない。
繋がらない点と点が繋がった。
ペンが砕ける。
幾星霜を経たかのように朽ち果てる。
逃げようとしていたその体は、一瞬でこわばり、
毒々しい目が見開かれる。
「……何を、しに来たの。」
もっと色々と聞くべきことはあったかもしれない。
いや、あの時いきなり殺しに来たカタストロア相手には、何も聞かずに逃げるべきだったかもしれない。
ただ、それだけを零した。
■佐々木伊織 >
相手の表情が変わる。
これは…終わった、のか?
何故かカタストロアが出てこない。
いよいよ僕の表の顔がどうなってもいいと判断しているのか。
それともこの道化の出し物をどこかで笑いながら見ているのか?
「何、を……って」
鼓動が早鐘を打つ。
僕の小さな世界が破れそうだ。
「君こそ……僕を、僕の中のカタストロアを捕まえに来たんじゃ…」
バレた。バレた。バレたバレたバレた!!
また僕は幻視する!!
僕の体のどこかから赤い砂が流れ出る虚妄に惑わされる!!
「ど………どうして…」
口の中が乾く。何をどうすれば正しかった?
■セツリ > 「――そう、やっぱり。キミは、カタストロア……なんだね。」
毒々しい眼差しが彼を睨む。
空気が淀む。
砂利が舞う。
そっと指先を向け――
「……?」
「なかの?」
よくわからない言葉が出てきた。
仮に目の前の存在がカタストロアそのものであれば、
恐らくすぐに攻撃を仕掛けて殺しに来ただろう。
だが、そうしない。
何故だろうか。
「どういう、事かな」
「……そうだ、覚えてるよね。」
「君がこの場で悪意を晒さないのなら、ボクは君に何もしない。」
「ボクは、不必要な損傷は、望んじゃいないんだ。……誰も傷ついて欲しくない。」
理解はできない、
だが、どういうわけか彼は攻撃をしてこなかった。
これは彼が悪意を持って振る舞わないならば、何もしないという意思表示でもあり、
悪意を晒した時点で、それに応えるという意味でもある。
なんて格好つけてるが、
足元は震えあがり冷や汗を垂らしている。
怖いものは怖い。
「話し合いを、しよう。」
「大丈夫、公平な話し合い、だから。」
「そうだ、こうしよう。キミが聞きたいことがあればボクに聞いて良い。だからボクからもキミに聞きたいことを聞かせて。」
上ずった声で早口気味に。
それでもハッキリとした、イヤに空気に澄み渡る、毒のような声で彼に語る。
■佐々木伊織 >
こうして見ればただの女の子だけれど。
あの時と同じだ。
毒のように染み込んでくるような、言葉。
「壊して、殺して、終わらせることに」
コーヒー缶に残った黒い液体を飲み干した。
喉が乾く。喉が。
「……なんの意味もないって…」
僕の中にいる魔物はなんの干渉もして来ない。
本当に眠っているのだろうか?
「僕の……中には」
「違う人格がいるんだ、カタストロアっていう凶暴な人格が」
「彼は夜、肉体の主導権を握ると…爬虫類の遺伝子情報を創り出す異能、真人類で暴れ出す」
話せば。告解を待つ罪人の心境にもなる。
断罪されるのなら、話は別だけれど。
「それで……君は、一体……?」
お互い、名前も知らないまま。
探り合いが始まったと感じた。
■セツリ > 「……すーぱー、なちゅらる……?」
「そうか、……カタストロアは、キミであって、キミじゃない。キミの異能、そのものによって作られる遺伝子……。」
「キミは。」
聞いたことがない。
いや、それは当たり前だろう、この島にどれだけの異能があると思っている。
だが、目の前の彼の持つその異能は、それはもう、酷い物だった。
(ボクのコレとどっちが酷いんだろうね。……比べるもんじゃないか。)
けど。
段々と理解出来てくる。
どうやら、人格が乗っ取られているらしい。
二重人格か、そもそもそういう厄介な異能なのか。遺伝子情報を作り出す異能というからには、後天的に植え付けられたような気もする。
「……?」
「……待って。」
「今は真夜中、だよね。肉体の主導権を握るっていうのに、今キミが普通に話しているのは変じゃないかな?!」
だが、話していて疑問が生まれる。
彼自身も、不思議に思っている事だろう。
パリン、と空気が歪み、割れたかのような音が鳴った。
「ボクはセツリ。」
「またの名を、忌み嫌われる者」
「ボクに深く関わったものが軒並み終わって行くから、そういう名前を付けられたみたい。」
「抑えてはいるし、終わらないものもあるんだけどね。」
軽い自己紹介の末に。
「……あ、聞きたいのはそう言う事じゃないよね。」
「キミが今知りたいのはボクがキミを罰するだとか、捕まえてどうにかするかだとか、そういう立場にあるかどうか、かな?」
「結論から言っちゃうとボクはキミに何もしない」
「というよりできないというのが正しいかもしれないけど」
「兎に角、安心して!」
きっと、一番気になって仕方ないのは。
自らが凶悪犯と同一とバレた現状の、処遇だろうから。
■佐々木伊織 >
「僕は異能は持っていなかった……」
「牧畜が好きなだけの学生だよ」
「ただ、ある日……夢を見たんだ」
どうせなら、言ってしまえばいい。
僕が死んでも彼女が僕のことを覚えているだろう。
「神を名乗る何かに、異能が欲しいかって聞かれて」
「ないよりはいいかな…って曖昧に答えたら」
「次の日、僕の中に違う人格が存在していたんだ」
夜になるとカタストロアが肉体の主導権を握るはずなのに、という疑問は当然だ。
だから僕も詳らかにする必要がある。
「最近、カタストロアは風紀に追い詰められているんだ」
「冷凍弾で徹底的に弱点を突かれてね」
「だから、風紀を翻弄する活動になってきて…毎晩僕の肉体を奪ったりもしなくなった」
「それでも、恐怖で不眠気味だけどね……」
自嘲気味に言って缶コーヒーをゴミ箱に入れた。
ゆっくりと、音が鳴らないように入れたはずなのに。
僕の心を脅かすように甲高い音が響いた。
「セツリ、セツリさん」
「僕は佐々木伊織、畜産の二年だよ」
安心して、と言われるとベンチに座り込んで。
終わらなかった。
けど、終われなかった。
「よかった……のかな、これで」
■セツリ > 「……酷いね。それ。」
奇妙ないきさつで異能を押し付けられたらしい。
なんだか、よく物語に出て来る迷惑な悪魔に似ているような気がした。
神を名乗りながらに、相手の失言に付けこんで押し付ける態度。
ずっと話している間、黙り込んで聞いた後、
呟けるのは一言だけだった。
だけどそれは、酷く同情的な雰囲気だった。
他人事だと思えないような。
「つまりキミは、……破壊も殺しも望んじゃいないのに、勝手に成されるようになっちゃった、訳だね。」
「……望まない破壊を齎すところは、ボクと同じかも。」
「ある程度、意識があってコントロールしていて、それで。出たりでなかったりもするのか……。」
「いつ目が覚めてあんな凶行に走るともわからないなら……そう、だよね。」
「キミの中のカタストロアが、風紀委員に追い詰められて大人しくなってる……か。」
「あはは、あの大男がそんなことになってるなんて、ちょっとおかしいね。」
眠れなくなるのだって、よくわかる。
「不安で不安で仕方なくなったりするし、眠れなかったりするし、不可抗力なのに自分がやった事だと思うと嫌で嫌でたまらなくなって。」
「次は何が起こるのかなって考えると、不安に塗りつぶされそうになったりする。」
「無意味に起きちゃうと次第に生きる意味とは何かとか、死んじゃったらどうなるのかとか、そういう事考えて。」
よくわかるから、それは鮮明に思い浮かぶ。
自分が体験したような、不安を抱えて生きていた日々を零す。
「取り返しのつかない過去を想起して、知りようのない未来を夢想するんだ。」
彼が座ったところから、凡そ2mほど離れた位置に腰を落とした。
それは心理的な距離を示すのではなく、
単にこの距離を取る事が当たり前になっちゃってるから。
「ボクは公安のお手伝いをしてるけど、ボク自身が誰かを裁くなんて、そんな大層なヒトじゃない。……それに、ボクがキミを『悪党』だって決めつけちゃったら、――後味が悪すぎるもん。」
「佐々木伊織くん。」
「ああ……道理で。お日様と草の匂いがしたわけだ。」
足元の影が、ゆらりと揺れる。
「良いんだよ。」
「今は、これで。」
「キミもボクも、ただの学生。今はきっとそうだから。」