未開拓地区の半分以上を占める未開拓の荒野が「転移荒野」である。
何故転移荒野と呼ばれるかというと、異世界から様々なモノが転移してくる荒野だからである。
基本的に荒野が広がるものの、異世界の遺跡や建造物、草原や湖なども点在する。
世界の変容後、この区域の時空が不安定になり、異世界の魔物・怪異などが現れるようになった。そのため危険な区域である。なお世界中にこのようなスポットがいくつか確認されている。
異世界の研究のために残しておきたいという思いがあり、常世財団側は開拓に積極的でないようである。
住民の出入りは禁止されていないものの、現在は学園の直接管理する場所ではないため、中で何が起こっても自己責任となる。
ただ、そのかわり異能や魔術などの使用は全面的に認められている。訓練のためにやってくる生徒もいるという。
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Time:02:11:00 更新
ご案内:「転移荒野」から銀の狼さんが去りました。
■銀の狼 >
やがて、時が過ぎ、身体の熱が取れれば。
銀色の巨狼は、再び走り出す。
向かう先は、学園都市。
一時の野性に還る時の、終わり。
明日からはまた、ヒトの枠組みの中での生活が待っている。
その中で生きる事を選んだのは己だ。
そうでなければ――生きていける場所は、ないから。
それでも、野性の匂いと其処に惹かれる性は断ち難く。
銀色の風の速度は、ほんの少し。ほんの少しだけ。
荒野を思う侭に駆け抜けた時よりも、鈍かった。
■銀の狼 >
……どれ程の時間を、ただ走り続けていたのか。
走り続け、熱を持った身体に、冷たい風が寧ろ心地よくさえ感じてしまう。
草の匂い。
気が付けば、巨狼は荒野の中の草原に立っていた。
脚を止め、草の匂いを嗅ぎ。
一時、身体を休める。
座りながら天を向き、星空を見上げる。
人工の光は、此処には少ない。
無論、ある所にはあるのだが――こんな荒野に村を造り、住もうという物好きたちの
住処からは、随分と離れていると分かる。
地上の光に邪魔をされる事なく、夜の空を見上げる事が出来る。
大きいもの、小さいもの。幾多あれど、その光は此処から眺めるにはとても小さい。
まるで粒のようにしか見えない星は、此処からどれだけ離れているのか。
そういう視点で見れば……太陽よりはあまりにも控えめな自己主張だが、
未だ夜空の真ん中に真円を描き、光を放つ月は、最も近しい隣人なのかも知れない。
――月はいつも、其処に在る。
ただ、光が届かず、見えないというだけで。
新月の日も、満月の日も、月は変わらずに其処にある。
難儀をする事が多い日ではあるが、それでも月が見えない日よりは、こうしてよく見える日の方が好きだった。
巨狼は、静かに月の浮かぶ空を見上げている。
■銀の狼 >
まだ真冬と言っていい季節。
吹きつける風は冷たく、鋭い。
だが、それがいい。その鋭さが、その厳しさが、人の世で過ごし続ける中で
忘れてしまいそうになる、野性の厳しさを思い出させてくれる。
風と共に走り続ける事で、己が野性を未だに忘れていないのだと、思い知らせてくれる。
――重く、煩わしく、時にどす黒い、ニンゲンの世を、一時とは言え、置き去りにさせてくれる。
走る。
走る、走る。
走る、走る、走る。
そうすれば――何もかもを置き去りにして、厳しくも懐深い、自然の理の中に、
一時であっても帰れるのだと……そう、信じて。
巨狼は、銀色の風となって、荒野を駆ける。
■銀の狼 >
空に真円を描く月が上る夜。
駆ける。
駆ける。
獣の影が、疾風の如く、荒野を駆け抜ける。
知恵ある獣は、疾駆する影にあるいは退き、あるいは身を隠す。
異なる世界からの獣であっても、牙を剥こうとするものは少ない。
警戒を抱き、敵意を見せるモノはあっても、それを「実行」に移す事はしない。
駆ける。
駆ける。
銀の影が、満月の夜を駆けていく。
転移荒野を駆け抜けるのは、全長3メートルにも達する、巨大な銀色の狼。
他の獣に牙剥くでもなく、牙無き獣を狩るでもなく。
ただ、巨狼は、風の如く荒野を駆ける。
ご案内:「転移荒野」に銀の狼さんが現れました。
ご案内:「転移荒野」からルメルさんが去りました。
■ルメル >
「……いやいや、ヒトデみたいに干乾びるなんてまっぴらよ!
人の気があるところを探って進むわ! 太陽になんて負けないんだから!」
自分の頬を叩いて喝を入れる。
乾いた肌がヒリヒリと痛い。少し強く叩いてしまった。
「水が恋しいわ……。」
気を取り直した人魚は、再び転移荒野を彷徨い始めた。
■ルメル >
「乾きそう……。」
とは言え、ここは未開の荒野。
浮きながら移動する手段は会得したものの、日照りで身体が乾く。
寒さは平気だが、大気もそこそこに乾燥していて少しつらい。
「人間はこんな過酷なところで生きているのね……。
……このままじゃ乾きすぎてかつおぶしになっちゃうわ……。」
人の気配か、水のある場所を見つけなければ。そう考えて尾を進める。
歌って人を誘う手段も考えたが、喉も乾いて歌う気分にもなれない。
■ルメル >
ぴちぴち、ぴちぴち。
ふわぁ……。
「あ、なんか浮けたわ!」
その場で跳ね続けること30分。
跳ねたまま落下せず、地面から1cm程浮いた所で身体が止まる。
水面を泳ぐように、ふわふわと浮いている。
■ルメル >
「……思ってたより寂れているわね。
私の記憶だともうちょっと賑やかだったのだけれど……」
見渡す限りの荒野。
思っていたものと違う──少々のがっかり感に肩を落とす。
人類は滅びたのだろうか? まさかそんな……。
……いやいや、住処を変えただけかもしれない。
気を取り直しながら、進もうと思った所──一つの問題にぶちあたる。
「どうやって動けばいいのかしら……。」
勢いで陸に上がった。
水のない所での動き方がわからない。
■ルメル >
ばしゃーん!
未開拓地域の端っこの海岸。盛大な水しぶきをあげながら何かが揚がる。
「えいやってしたら、なんか陸に上がれたわ!」
青い髪に白い肌に赤い瞳。それだけ見れば人形のようないでたちだが──下半身が魚だ。
「で……ここが人間の島ね!」
ぴちぴち跳ねさせて、喜ぶ人魚が一尾。
ご案内:「転移荒野」にルメルさんが現れました。
ご案内:「転移荒野」からセロさんが去りました。
■セロ >
それから泣きながら震え続ける男子生徒を遠くで見ながら。
手に入れたばかりの“けいたいでばいす”で各委員に連絡を取った。
彼が安全な場所に行くのを見守ってから。
私は事情を風紀委員のメンバーに話し始めた。
私は孤独であろう。
今、そういう星巡りにあることは間違いない。
ただ、人を助けることが私を孤独にするのなら。
私は孤独であり続けよう。