2024/11/24 のログ
■紫陽花 剱菊 >
「……殺すのは人よりも難い物だ。
獣には獣の、人には人の機敏がある。
……此度の世界の人々は、実に泰平を教授している」
常に戦が起き得る世界では無い。戦術さえ知らぬ人々もいる。
ある種、此度においては獣のが脅威成り得るのやも知れない。
何よりも此れは物怪。間合いを誤れば此方の身が呪われる。
然れど、あるべき姿は戦のみ非ず、此度の姿が正解やもしれぬ。
語りし剱菊の表情は、得も言えぬものであった。
「…………」
徐ろに隻手が音なき静寂が揺らぎに伸ばした。
払わぬのであれば、冷たき鉄の如き温もりが頬を撫でる。
何くれど、顔を近づけ虚:うろが見る。視る。
斯様、彼女の言葉を信じぬに非ず。己が目で確かめているのだ。
其の身に移ろわぬものがあるか否か、見極めんと。
至近距離。鼻先掠めんとするような距離感。
男の不器用さ、無遠慮さが在り在りと出ているのだ。
■霞流 周 > 「……人と獣の…それぞれの領分は…違いますからね…。
…泰平かどうかは…私には何とも…言えませんけど…。」
こちらの世界の生まれ育ちだが、泰平であるかと問われてそうです、と答えるには世間知らずという自覚はあり。
そもそも、少女はこの世界の事もあまり”知らない”。だからこそ、あちこち歩き回っているのかもしれない。
そして、少女は戦術も駆け引きも多分殆ど無知に等しい。
何故か優れた剣の腕はあれど、それを誇る事も奢る事も無い。
自分に出来る事をやっているだけで…まだまだ知らぬ事が膨大にある。
「―――」
虚ろに敵意も殺意も無ければ、ソレに無意識に反応する少女はただ冷たい鉄を頬に感じる事になる。
以前、公園の時は無意識に迎撃してしまったが、ソレとは違う何かがあるのだろう。
そうでなければ、あの時と同じように少女の手は刀を意識もせずに”自動的に”抜いていただろう。
茫洋とした、覇気も活力も無い、死者の如く目に光の無い銀の双眸を覗き込まれる。
そこに翳りも無ければ曇りもない。ただただ透徹、透明な…鏡写しのような視線があるのみ。
ややあってから、小さく首を傾げて。
「…”検分”は…済みましたか…?」
少女は何時も通り。何も変わらず揺らげど惑わず何時もの自然体。
少なくとも、黒く汚染された様子も…それ以外の何かに影響を受けた様子も見られない。
あるとすれば、初めて対峙する汚染物質に侵食された獣との対峙で若干気力が削がれたくらいか。
■紫陽花 剱菊 >
殺意も無くば気配も無く、寄り添うのみ。
虚を映す銀雪の世界。
虚とは違った虚構が映し出されている。
無知とは即ち、何者にも染まらずと謂う。
何を起こすわけも無く。只々銀と虚が交錯し合う。
瞬きすることもなく、永劫の如く静寂ばかり。
「……純一無雑。美しかった」
何くれと思う事を口に出す。
斯様に思うほどの雪景色であった。
ゆるりと手を離しては、音も無く距離を取る。
「……疲れているようだな。
戦慣れ……では無く、獣相手には慣れんと見える」
気疲れ、疲弊。
如何なる人に付き纏おう。
かくも、魑魅魍魎の影響も無くば一安心だ。
何処となく剱菊は胸を撫で下ろしたようにも見えよう。
「獣の気配は、未だせず。
……そろそろ戻るか?其方も疲れているだろう」
引き際を見誤るべからず。
誤りは即ち、刹那の死。
■霞流 周 > 「――美しい…ですか…?…よく分かりません…が…ありがとうございます…。」
僅かに瞬きをしながら、不思議そうな面持ちを微かに浮かべて。
ただ、誉められたのだろうという認識は出来たので、一先ず小さくお礼は述べる。
霞のように霧のように。揺らぎ曖昧なれど惑わず。心象は無音の銀世界の如く。
音もなく、距離をスッと取る彼を眺めつつ…こういう時、一般女子はどういう反応をするのかなぁ、と思いながら。
「…対人には…それなりに…慣れていますけど…恥ずかしながら…獣相手には…経験が足りない…みたいで…。」
初めて対峙した訳ではないが、あちらが汚染されているというのも含めて不慣れた部分は散見されただろうか。
少なくとも、獣狩りに慣れた者から見れば粗は少々伺えるかもしれない。
彼の気遣いに改めて感謝しつつ、流石にそろそろ一度引き上げるべきだと少女の感覚も告げている。
「…そうですね…一朝一夕で…どうにかなる規模でも無いですし…他の方々も…色々動いているでしょうし…。」
目の前の彼も含めて、この汚染区域に入っているのは自分だけでは無い。
己に出来ない、及ばない事は他の長けた誰かに素直に任せて今は休息が少々必要。
故に、少女は引き際を見誤る事は無く、素直に彼の言葉に首肯してみせた。
「じゃあ…引き揚げましょうか…紫陽花さん…。」
帰りの道中での襲撃も有り得るので、気は抜かずとも心強い知己が居るのは精神的には有難い。
どちらかともなく、音もなく歩き出して此度はここで終幕としようか。
■紫陽花 剱菊 >
音もなく艶黒の糸がざっくばらんと揺れる。
灰に撒かれて風と共に踊っている。
淀んだ景色とは思えぬほど風流を嗜める。
「……私が初めに受けた褒め言葉だ。
この髪をな、美しいと褒められた。
私は此れを"人らしさ"と思っている」
「認められること、人の意義を見出していると言っても良い」
存在を認められるのは、即ち死だ。
神も物怪も人も、認知されてこそ意義を成す。
雑言による呪物が欲しいのではない。
清らかな人生こそ、歩むべき人生也。
風と流るる黒糸を指に絡ませる剱菊の顔は、あどけない。
斯様な迄に、自らの髪に意義を持ち得ているのだ。
「……何れ其方の"揺らぎ"も、戦術も教えよう。
今は休むべき時。……食事も用意してある」
「其方を放っておくと何を拾い食うか分からぬ」
今は帰るべき場所も互いにある。万妖の地へと帰るとしよう。
珍しくも軽口を叩き、音もなく歩み始める。
淀み波乱の地より去りて、共に向かうはまた、万妖の地へ─────。
ご案内:「Free5 未開拓地区 汚染区画-東側区域-」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ご案内:「Free5 未開拓地区 汚染区画-東側区域-」から霞流 周さんが去りました。