2016/05/10 のログ
ご案内:「教室」に鞍吹 朔さんが現れました。
■鞍吹 朔 > 「……………。」
少女は本を読んでいた。
紙をめくる音だけが教室に響く。早すぎず遅すぎず、しかし一定のペースで。
時の流れるままに、無心に、無為に。静寂の中で、延々と。
■鞍吹 朔 > 「………。」
少女の名は、鞍吹朔。この常世学園に通う、普通の生徒である。
成績平均、運動平均。中の中、目立たない。
顔も体型もそこそこに整い、男子が彼女について美人かどうか聞かれたら、少し唸って美人と答える程度。
趣味は読書、日課は読書。人付き合いは悪くはないが、目立った友人というのも居ない。
新入生の中でもいざこざも起こさず、かと言って誰かとつるむこともない。そんな女子であった。
強いて言うなら、目が悪いのかたまに眼帯を付けている程度が特徴であった。
■鞍吹 朔 > 「……。」
最近、少し噂が広がっていた。
この学園では噂など無い日のほうが少ないのだが、最近落第街で生徒が殺されただの、犯されただの。
そんな噂が、耳に入っていたのだった。
ぱたんと本を閉じる。そして、目を瞑る。
■鞍吹 朔 > 「…『人間には幸福より不幸のほうが二倍多い』。」
どこぞの詩人の言葉を口に出す。嫌な言葉なのか、そうでないのか。
そういうものだ、と割り切れというのか、希望は捨てるな、と言いたいのか。
「杞憂だといいのだけど。ホメロスもネガティブ思考だったのかしら。」
そう言って、本を鞄に仕舞って新しい本を取り出し、読み始める。
ご案内:「教室」から鞍吹 朔さんが去りました。
ご案内:「教室」に鞍吹 朔さんが現れました。
■鞍吹 朔 > 「ふぅ。」
ぱたん、と本を閉じる。
気付けばかなりの時間が経ってしまっていた、どれくらい読み続けていたのやら。
まあ、どうせ使える時間などいくらでもあるのだから関係はないのだが。
■鞍吹 朔 > 「…動こうかしらね、そろそろ。」
首をくるりと回すと、こきこきと小気味いい音がする。
肩も凝ったし目も疲れた。そろそろ帰って休んでも、バチは当たるまい。
そう考えると、再び本を鞄に適当に仕舞って立ち上がる。
所作も、良くも悪くもなくといった所であった。
ご案内:「教室」から鞍吹 朔さんが去りました。
ご案内:「教室」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 講義の終了を告げるチャイムが鳴り、慌ただしくなる教室
「……ふぅ」
そんな中で、席の1つについた凛霞もまた、テキストやノートをバッグに仕舞い、片付けをする
今より放課後、
帰りに友人達と商店街や歓楽街で遊んで帰るのも良い
大抵、講義が終われば馴染みの、数人の決まった顔が現れて───
『さよなら、伊都波さん』
『また明日ねー』
「うん…」
皆の態度が余所余所しいのは、きっと気のせいじゃない
■伊都波 凛霞 > 保険課や、公安で話した内容は必ず秘密を守ると言われた
でも、自分の周りの様子は肌で感じて理解るほどに変化している
「あはは、無理もないかー…」
誰もいなくなった教室で力なく笑う
立て続けに落第街周りで騒動に巻き込まれれば、
自分の身を守るためにも距離を置くのは必然だった
■伊都波 凛霞 > 「………」
あの夜、スラムの一角、その地下で
少なくとも自分を囲った少年達は全員死体が確認されたと聞いた
自身の感情もあり、それを聞いて"酷い"とは思わなかったが、
帰らは二級生徒なんかではなく、れっきとした学園に学籍を持つ一般生徒だった
…親兄弟がいた少年も、中にはいたことだろう
それだけが胸に突き刺さる
■伊都波 凛霞 > 自分があんなところに行かなければ、死ぬことはなかったんじゃないだろうか
違法行為を行っていた以上、いずれ露見し学園から処分はされただろうが、
それでも、命を落とすことはなかっただろう
「…はぁ」
机に突っ伏して、再び溜息をつく
ご案内:「教室」にルギウスさんが現れました。
■ルギウス > 「おやおや、もうこの教室は使わないと思ったのですが」
そんな事を言っているのに立っている場所は壇上。
いつもの生徒にモノを教えるスタイルの立ち方である。
いや、いつもより芝居がかった動作が目立つ。
■伊都波 凛霞 > 「ん……あれ」
声が聞こえて、顔をあげる
壇上にはいつかの、ルギウス先生の姿が見える
いつの間に?という疑問もそのままに
「あれ…もしかして次の講義で使う、とかだったり…?」
もしそうならば移動しなきゃ、と少し慌てた様子を見せる
■ルギウス > 「いえ、今日はもうこの教室は使いませんよ。
好きなだけ机と親睦を深めてくださって結構です」
笑顔のままで、そうとだけ答える。
そして堂々と細葉巻を取り出して、なに恥じることなく火を点けた。
紫煙をゆっくりと吐き出す。
「言いたくないなら構いませんが、懺悔するなら引き受けますよ。
これでも本職は神に仕えているものですから」
■伊都波 凛霞 > 「そんな趣味ないです。あと全席禁煙っ」
仕方ない先生だなぁ、と笑って
「懺悔、うーん…懺悔?
懺悔って、あんまりぴんとこないトコありますけど…」
■ルギウス > 「まぁ、懺悔というと大げさなんですけれどね。
要するに愚痴ですよ、愚痴」
禁煙については聞かなかった事にするようだ。
「優等生な答えだけが感情というわけでなし。
後ろ暗いドロドロしたものや出来事を誰かにぶつけて昇華できるなら、それに越したことはないでしょう?」
大げさに頭を振る。
「ああ、実は机に突っ伏して溜息をつくという行為に何かしらの快楽を見出しているのでしたら、そう仰ってくださいね?」
■伊都波 凛霞 > 「あるわけないでしょ」
最後の、冗談めかしたセリフには苦笑して答える
それはともあれ…
「ん……もしかして、先生。何があったかとか、知ってたりします…?」
新任といえど先生は先生
耳に入っていてもおかしくないな…なんて思ったりシて
■ルギウス > 「おや、新しい扉を開いたのだと思っていましたよ。
魔術師は奇行に走る方も大勢いますので」
偏見です。
「貴女の様子から何かあったというのを想像するのは実に容易いですが。
私は貴女の担任でもありませんし、プライバシーがどうとかは割りと厳しい環境でして」
当然のように全部知っている。
なにせ全部“視て”いたのだから。
「貴女の年頃なら、異性関係か厳しい現実を突きつけられたかってところが相場ですかねえ?」
■伊都波 凛霞 > 「魔術は勉強してるけどまだ魔術師じゃありませーん」
クスクスと笑って
「んっ、鋭いですねー先生~。
なんかどっちも半分正解半分外れ、みたいな!」
■ルギウス > 「早くも実践の場に出ているとは、聞いているんですがねえ」
紫煙を再び吐き出す。
「……では、大穴狙いで当ててみましょうか。
貴女の悩み」
■伊都波 凛霞 > 「まだ見よう見まね、応急処置程度の魔術しか使えないですけど。
人手不足なんですよーせんせーも手伝ってくださいよー」
あはは、と冗談めかして…ただ、続く言葉に唇を結い直して
「……どうぞー?」
言い当てられることへの、僅かな不安感が立ち上ってくる
だめだ、顔に出すな、笑顔笑顔、と内心の抵抗がはじまる
■ルギウス > 「私が出張ると、碌な事になりませんよ」
死人が増える。
もしくは、死んだ方がマシなのではないかという後遺症を残す。
「では、“最初から”いきましょうか。
傷の手当に呼ばれ、現場に向かったところ偶々居合わせたサツジンキに殺されかかったところから」
■伊都波 凛霞 > 「!」
ぴくん、と体が震える
漠然とした不安
やっぱり、知っているのでは?という───
いや、知っていてもおかしくはないのだ
生徒に聞かれて、ぼかしただけであって
当時遭ったことは全て…細部こそ省略したものの、報告義務を果たしているのだから
■ルギウス > リアクションに関わらず、喋り続ける。
舞台役者のような、大仰な演技をつけて。
「協力者のおかげで、九死に一生を得たのでしたか。
いやはや、貴女は運がいい。いや、それとも悪いのですかねぇ?
生き残ったばかりに……次の悲劇に出会ってしまう。
次の救護要請は、実に軽いものでした。
ええ、怪我そのものは実に軽い。
……ただただ、運が無かった。
『“バケモノ”に出会わなければ!』
『逃げる方向を間違わなければ!!』
『逃げた先で警戒心を無くさなければ!!!』
“あんなこと”は起きなかったでしょうに」
■伊都波 凛霞 > 自分の顔から、表情から血の気が失せていくのを感じる
いつもの笑顔が、作れない
「…やっぱり、知ってて、とぼけたんだぁ…ひどいなぁ……」
視線を泳がせる
なんだかまともに相手の顔すら見ることがd型なくて
■ルギウス > 「知っていたもなにも、視てましたからねぇ」
対照的に笑顔が濃くなる。
「いやぁ、強いですねぇ貴女は。
あんな事の後でよく笑えるものです。私もよく仮面のようだなんて言われますが、貴女の仮面もなかなかですよぉ?」
懐から仮面を取り出してつけるジェスチャー。
「ああ、視ていたついでですが……今現在で生き残っている方の所在地は全て掴んでいますよ?
風紀や公安に報告する義務がないので放置していますが」
■伊都波 凛霞 > 視ていた?どこで?何を?
疑問には思うだけ、本当はわかっている
どうやって、という疑問だけは残り続けるのだが───
「や、やだなー…先生。冗談がすぎるっていうか…。
別に、仮面とか……あんなコト?とか…」
嫌な汗がじっと背中を伝う感覚
ダメだ思い出すなと精神が警告を告げる
しかし、思い出すなというほうが…無理であろう
「………なんで…それんなことを、私に…」
象法提供するならば公安や風紀にするのが当然なのだ
なんのために自分に、とますます混乱が深くなる
■ルギウス > 「復讐……してみたくは ありませんか?」
先ほどまでと違い、落ち着いた声音になる。
しかし、その声は静かな教室によく通った。
「貴女をそんな目にあわせた犯人達に 正義の鉄槌を直接降したくはありませんか?
彼らはきっと他にも悪事を働いて、“貴女のような誰か”にも同じ事をしている。
野放しにしていては被害者が増えるだけです……。
後始末は、私が請け負いましょう。
貴女は、貴女の望むままに彼らに報復をすればいい」
■伊都波 凛霞 > ざわり
復讐、その言葉に何か、背筋を昇る
「やだ…なぁ……」
ぎゅ、と
先生からは見えない、机の下で手を握りしめて
「私は望んでませんよ、そんなこと」
顔をあげて、はっきりとそう言葉にした
「もちろん、過ちに気づいて償ってほしいなーとは思いますが…」
えへへ、と誤魔化すように笑う
■ルギウス > 「本当に?」
静かに質問を投げかける。
「では、その言葉に偽りがないか。
ゲストに入っていただきましょうかねぇ」
指を鳴らす。
明かりが消え。スポットライトのように三点を照らす。
一つは、凛霞。
一つは、ルギウス。
最後の一つは……
『バラ撒かれたくなきゃ喋んなよ~?』
そう言って携帯カメラで何度も何度も撮影した少年だった。
少年は、うつむいてただ立っている。
スポットライトが当たっているのに、その表情を伺うことができない。
そして、凛霞のいる机の上に ナイフが目立つように置いてあった。
「さぁ、ご自由に どうぞ。
私が人払いをしています。今ならナニをやっても、誰にもわかりませんし、バレません」
■伊都波 凛霞 > 「ぇ───」
凍る
言葉も、背筋も、表情も
そんなはずはない
そんなはずはあるわけがなかった
だって、その少年は───
「………」
机の上に置かれたナイフを手にとる、そして…
シャッ、と
素早い動きで、自分自身の掌を浅くて斬った
白い手のひらに赤い線がスウッと浮かび…
「……どうしてこんなことをするんです?ルギウス先生」
悪い夢ならば、これで醒めて欲しいと願った
■ルギウス > 「私はねぇ、自由が好きなんですよぉ」
面白そうに笑っている。
「だから、抑圧された貴女を視ているのは面白くないんですよぉ」
張り付いたままの笑顔で笑っている。
「心の底に凝り固まった、黒くて昏くて邪魔なもの すっきりと開放して自由になってみませんか?
大丈夫、貴女は何も悪くない。
鉄槌を降す先にいるのは悪人だ。感謝されるだけでしょう?
貴女だとバレたくないのなら―――」
カラン。
凛霞の足元に仮面が落ちた。
笑いながら泣いている道化の仮面。
「別の誰かの仕業にしてしまえばいい。」
そして、背中を向けて大袈裟に天を仰ぐようなポーズをとった。
「おお神よ、この子羊を許したまえ……」
首だけ傾けて凛霞を視る。
「もう一度だけ、聞きますよ。
貴女の本心は……どうしたいですか?」
■伊都波 凛霞 > 「………」
無言で、俯く
震える肩を抑えこむように、自分で自分を抱くようにして
「…見損なわないでくれますか」
小さく振り絞った言葉は、強く、確かなもの
キッとした視線に光を取り戻して、顔を上げる
「憎い気持ちがないわけじゃない。
裁かれなければならないって、そう思う。
だけど、仮面をつけてまで鉄槌を下すような真似はしない。
私は───」
"自慢の、お姉ちゃんだから"
頭のなかに残る、その声を重なるように
「妹に恥ずかしいような生き方はできない。
自慢の、お姉ちゃんだから!」
■ルギウス > 「ああ、そうですか」
予想していた、とばかりにいつもの教室に戻る。
ただし、人物は変わらず三人で。
「では、この方は用済みですねぇ。消えてもらいましょうか。
食べていいですよ」
ポーズはそのままで、袖からビー玉サイズの何かが飛び出る。
それは、一瞬で大きな口のついた黒い球体になり うつむいたままの少年に噛り付いた。
「それでは、是非ともその矜持を曲げぬようお願いします。
……私は貴女が挫折する様を見て楽しむことにいたしますので」
あらかた食事が終わったのだろう、最初の立ち位置に戻り何事もなかったかのように扉に向かって歩き出す。
■ルギウス > 去り際に、扉の前で思い出したかのように声をかけた。
「ああ、そうそう……。
今の出来事を誰かに喋った場合。
貴女のご家族に非常に色々な出来事が起きてしまいますのでお気をつけて。
妹さん、大変かわいらしい方ですねぇ?」
言うだけいうと、普通に立ち去った。
ご案内:「教室」からルギウスさんが去りました。
■伊都波 凛霞 > 「………」
少年の形をしたそれが捕食される様を見続けはできなかった
視線を落とし、終わるのを待つしかできない
ある意味では、これも見殺しなのかな…などと思いながら
「──なっ!」
ガタ、と音を立てて立ち上がる
既にルギウスの姿はそこにはなく…追いかけようにも…
「あ……はぁ、足…震えてるや」
諦め、再び席に座る
「……ヒドい脅し」
家族に何をするつもりなのか、まるで想像もつかない
それよりも、良い先生だと思っていただけに、ショックが大きかった
いつもそうだ
恵まれた環境に恵まれた才能、他人のことを買い被りすぎてしまう
「いたーい……」
薄く切れた手のひらに簡単な治療魔術を施しながら、ぼうっと天井を見上げる
■伊都波 凛霞 > 『おーい、伊都波ー』
そんな風に佇んでいると、教室の入り口から声がかかる
「え」
意外だった
今の自分にこうやって声がかかることが
入り口にいる少年達数名は、それなりに長い付き合いの友人達
男女関係なく話し、笑い、ゲームをしたり、カラオケにいったり…
自分に何かあっても、変わらない友人関係にほっとして、嬉しさを感じる
「何、どこか遊びにいくの?」
リフレッシュも大事かもしれない
慌ててバッグを担いで、小走りで駆けていく
少年達の手元のスマホに、再び不幸に潜んでいることは知らずに
ご案内:「教室」から伊都波 凛霞さんが去りました。