2015/06/22 のログ
東雲七生 > ………。

(少女の言葉には、必要であれば呼吸すら止める事も辞さない覚悟で黙ったままでいる。
 たとえ意識が逸らせなくとも、一瞬でも遅らせる事さえ出来れば。それだけで十分逃げ切れる自信はあった。
 ──あったのだが。)

この状況で逃げられるかよ……。

(ピリピリとした緊張感にうんざりとした表情で呟いた。)

戮意 鞠栖 > 「ふふ。そう、寂しいわね。」
今回は言葉通り、表情に影を落としてぽつりと小さくつぶやいた。
「アナタたちは、そうやっていつもいつも仲間外れを作って。」
「幽霊だからだめなのね。そう。」
一歩、二歩。後ろに跳んだ距離を詰めようと、ゆるりとした足取りで迫った。
走ったら振り切るのは簡単だろう。
だが、まるで逃げろと言わんばかりの足取りだ。>頸城

「もう、本当にシャイなんだから。」
彼女が頸城と距離を詰めれば、東雲との距離は離れる。
段々と彼にとっては逃げやすい状況になっているのかもしれない。
二兎追うものは一兎も得ず、という言葉があるが、
それでも彼女は、逃がす気はなさそうで。
「けれど、シャイな子って素敵よ。」
「私、そういう子も好きなの。ねぇ、お友達になりましょう?うふふ。」
無言を貫く彼に、一方的に言葉を投げた。>東雲

頸城 陸 > 「……いやまぁ、幽霊っていうか、いきなり斬りかかってくる子は遠慮したいかな……って」
息を吸って、吐く。
一旦落ち着こう。
……彼女の全速力がまだわからない。背中を見せてぐさり、は避けたい。
なら、正面突破だ。

「……うん、ごめんね」
呟いた少年の体から、黒い霧が吹き出す。
彼の体を覆ったそれは、即座に鎧の形状を取り、硬質化。
己の異能で生み出した装甲を纏った少年はゆるりとした足取りで迫ってくる幽霊へと殴りかかった。

東雲七生 > ………。

(最高にシャイって奴だ。
 緊張を持続し続けた所為か、そんな言葉が脳裏を過る。
 ぷくくっ、と漏れそうになる笑いを抑え込んだが一度緩んだものは中々戻らない。少なくとも、呼吸は乱れた。)

……んなっ。

(少女と少年のやりとりを見つつ、隙があれば逃げようと思っていたが。
 少年の発動した能力を見て思考が止まる。何だあれ、格好良いじゃねえか。
 ──も、もうちょっとだけ見てこ。
 いざとなったら窓を破って逃げれば良い、そんな言い訳をしつつ、見守る。)

戮意 鞠栖 > 「寂しいわ。こうでもしないとお友達が出来ないもの。」
幽霊少女、半泣きである。めそめそと。
嘘くさいけれど、何処か真実めいた寂しさが混じっている。
「来たわね。異能か魔術か知らないけれど―――"キャンセレーション極式"」
超常的な現象。一瞬で鎧をまとった様に見える。
それは、一体何故か。だが、少なくとも科学の力ではないだろう。
あれで殴られたら数十メートルは吹き飛ぶに違いない。
だから、抑え込む。
最大の阻害術を以って、異能をある程度抑え込もうと―――だが、間に合わない。
「ひゃん…っ。」
多少とも抑え込めたかもしれないが、しっかりと殴りつけられ、吹き飛ぶ。
幸いにもこちらとて、異能の力がある。痛くはない。だが、衝撃は受ける。
真っ黒な髪が揺れ、吹き飛ばされる。後方に、後方に―――

―――後方と言えば。丁度、東雲が居る方向だ。
「あら。」
にこり、目が合ったのかもしれないし、合っていないのかもしれない。
隠れたままならやり過ごせるだろうか、偶然にも鉢合わせるだろうか?
何にしても、何事もなかったかのようにむくりと起き上がった。
ぶるりと黒い髪が揺れる。
死んでも死んでも生き返る。
その様は、幽霊宛ら。

東雲七生 > ──げ。

(吹き飛ばされた少女と目が合った。
 もうちょっとちゃんと隠れるか、さっさと逃げ出してしまえば良かったと後悔するが後の祭りである。
 最悪自分も何かしらの手を打たなければならないのか、と考え、

 攻撃を受けてなお起き上がる姿を見て。)

──うん、こりゃ無理だな。

(割と早い決断だった。)

頸城 陸 > 「……うわ。意外と何とかなった」
己の一撃で吹き飛んで行く少女を見ていると、ふと、考えが思い浮かぶ。
殴れるのであれば、倒せるのでは?
よし、殴ろう。
「……今度は、こっちが追い詰める番だ。あと数発は、ぶん殴ってやる」
異能の作用によって攻撃的に変化した思考は、逃走よりも追撃を優先する。
自らが吹き飛ばした少女目掛け、鎧は駆け出していく。

ご案内:「廊下」に稲葉聡美さんが現れました。
稲葉聡美 > 「ひゃっ……わっ……!」

(幽霊少女のものとは別の、か細い少女の声。東雲の位置から周囲を見回せば、へたり込んだ少女が見えるはずである)
(この何の変哲もない女子生徒は、ピアノの不快音に驚きすくんでから、今の今まで声を出すことすら出来ずにずっとここに座って震えていた。)

戮意 鞠栖 > 「あら。こんばんは。」
にっこりと、東雲に笑いかける。目が合った。
「シャイな少年君。御話できてうれしいわ。」
頸城より、そちらへと向き直った。
「ねえ、あっちの人はお友達になってくれないらしいから?」
包丁を―――何でも斬れる包丁を向けて。

「ふふふ、ばっかじゃないの?さっき見たでしょう?私の魔術。」
彼女の得意とする範囲は、近距離戦。
そして、最高にいやらしい転移魔術を持っている。
「甚振ってあげるわ。"いやらしい転移魔術"」
横目で向かってくる頸城に夜に似つかわしくない小うるさい水音が聞こえるだろう。
その魔術により、転移するは深海の水。
彼へと向かう指向性を持った、水の塊―――ここでは、水圧の爆弾と言って間違いない―――が追撃を試みる彼を迎え撃たんと、廊下の地面を掠め、迫って行く。
これが、いやらしい転移魔術である限り、水の魔術も炎の魔術も代用が効く。
何処から何が転移して来るかなど本人以外、誰も全く持って分からない。

そうして、三つ目の生きた人間の気。
「あら。あらあら。…ふふ。」
東雲の近くに居るならば、この幽霊少女にも見える範囲にいるだろうか?
それとも、上手く隠れているだろうか。
どちらにしても、何処にいるかは分からずとも、近くに居ることは分かる。
「もう一人、いるのね?」
誰に向けるでもない呟きを一つ。

東雲七生 > あの異能……良いな、ああいうの。
格好良いしな。

(少年の纏う鎧を見て呑気に呟いていたが、別の少女の声に気付くと其方へと目を向ける。
 少女が一人。いつから居たのだろうか。全く気付かなかった。
 東雲は小さく舌打ちする。この幽霊少女は底が知れないし、見境も無さそうだ。そしてへたり込む少女に何かしらの対抗手段がある様にも─)

──1つ訊くけど、その“友達になる”ってのは死ななきゃ駄目?

(背中に嫌な汗を感じる。
 しかし極力表情には出さず、いっそ笑みさえ浮かべて幽霊少女へと尋ねる。
 出来る限り意識を自分に向けさせておかなければ。)

頸城 陸 > 何か、変な音がなっている気がする。
まぁでも今は関係無い、殴る。だから殴るために走る、足を動かす。
……そのつもりだったが、眼前に現れた物を見て、思わず足を止めた。
「……は?」
呆然と、声をだす。目の前に突如水の塊が現れれば、こんな声も出るだろう。
「……グッ!?アァァァ!?」
なすすべもなく、水圧の爆弾に流されていく。

稲葉聡美 > (ぞくり。)

(ほとんど場の動きを把握できていない少女――だが、"もう一人"という言葉が自分を指していることは直感的に理解した)

「た、たた、助けて……くだしゃ……」

(東雲に向かって手を伸ばし、出ない声を振り絞る。か細い声はおかしな激流の音にかき消され――目をやれば、その助けを求めるジェスチャーだけが見えるだろう)

戮意 鞠栖 > 「あらまぁ…。そうねぇ、出来れば死んで幽霊になって欲しいわね。」
妥協案でも出してくるのだろうか。
「だって、私夜にしかここに来れないの、それに、私だって何時成仏しちゃうか分からない。」
「そんなのイヤなの。私は…そんなの、イヤなのよ。」
物悲しそうに、しかめっ面を浮かべる。
心なしか、包丁を握る手の力が強くなった。
「あ、でも、そうね。…和菓子を頂けるのならこの場だけはそういうお友達で見逃してあげるわ。」
割かし、御茶目なのかもしれない。

「ふふ…。」
鎧を付けど、一撃であった。
このまま流れる彼を追い、トドメを刺し、"こちら"に引きずり込もうかと思うたが―――やめた。
何故って?
だって―――

「ここに、二人いるものね?」
東雲へと伸びた、大凡可愛らしいと形容して間違いのないだろう、少女の手が見えた。
それは、東雲に向けたものだろうが、不幸にも覚知されてしまったらしい。
遠い方の一人を取るか、近い方の二人を取るか。そんなの決まっている。
ましてや頸城の方は流されたといえど、私を吹き飛ばすくらい強力な異能を持っている。
この状況で追いかけるのは愚の骨頂だ。
故に、標的は自然とそちらに移り変わる。

頸城 陸 > 「……くそっ!無しでしょ、あんなの!」
激流に流され、場所は壁際。しかも壁で背中を一度打った。
異能の鎧を身にまとっているとはいえ、痛いものは痛い。
この分の仕返しもする。殴る。

……とはいえ、無策で行けばさっきの様にまた流されるだけだ。どう動くか。
考えながら、ゆっくりと幽霊の方へと、距離を詰めていく。

東雲七生 > ──ばっ、さっさと逃げろ!

(こちらへと手を伸ばす少女を見て声を荒げた。
 が、既に遅い。幽霊少女が勘付いたのを見ると溜息を吐いてゆっくりと少女との間に割って入る様に移動する。)

だってよ、ここで俺らが死んだとしても……すぐに成仏しねえって保証はねえしさ。
そもそもお前が成仏する時だって、一緒に成仏するとも限らねえだろ。
……だったら、お互い今のままで友達になっとく方が得なんじゃねえの?

(刃物を持った相手と対峙して、怖くない訳がない。
 油断すればすぐに震えそうになる声を、腹筋に力を込めて真っ直ぐ、普段と同じ様に相手へと投げる。
 それが現状、この幽霊に対して東雲が出来る精一杯だった。)

稲葉聡美 > (少女の意識の動きを受けて、伸ばした手が固まる。)
(包丁――彼女のような一般人にとって、最も身近な凶器を携える少女の姿)

(その姿は、間に割って入った東雲の姿によって見えなくなる)

「はっ、はいっ……!」

(なんとか体を動かそうとする。座ったまま後ずさり……しかしそこは壁だ)

(友達?幽霊の友達。死ななければなれない?)
(回らない頭で、東雲と幽霊少女の会話から単語を拾う)

戮意 鞠栖 > 「ふふ、しつこい男は嫌われるのよ。知らなかったかしら。」
横目で、再びこちらに向かってくる頸城の姿が見える。
御大層な真っ黒な鎧。いやでもその動きは目に映る。
「あ、それとも、私の魔術、もう一回見たい?」
すっと、そちらに向き直らず、指だけ向ける。
因みに、意味はない。指が向いていなくとも、魔術は使える。
だが、それだけでも警戒心を煽ることにはなるだろう。

「あら、勇敢なのね、少年君。」
口元に片手を宛がってくすくすと笑う。
「小さなナイト、と言う事かしら。…ふふ、何にも分かっちゃいないわね。」
「確かに、アナタの言う通りだけれど―――。」
そういって、焦らすように言葉を切って。
「―――ちょっぴり私、殺人欲もあってね。勿論、お友達も欲しいのだけれど。」

「折角なのにごめんなさい、その御提案は、今のところは却下させて頂くわね。」
にこりと笑って。
「嫌と言うなら、抵抗なさい。日が明けるまで、ね。」
体を傾けて、彼に庇われている、追い詰められたと言うべき状況の少女の方に目を向けて、また、にこりと笑った。
「遊んでくれたら、考えないでもないわ。」
結局、戦闘狂に近しい思考回路なのかもしれない。

東雲七生 > ──せめて殺すか友達作るかどっちかにしろよ……。

(溜息混じりに呟く。
 交渉は決裂、小さく溜息を吐いて背後の少女の様子を振り返らずに窺う。
 今、この少女を逃がすにはどうすればいいか。そもそもさっきの少年は何をしているだろう、考える事は色々あれど実行に移せることはそれほど多くも無い。)

頸城 陸 > 「……いやぁ、できればやめて欲しい、かな」
幽霊の言葉に、こちらに向けられた指に、思わず足を止める。
また流されるのはごめんだ。
そう心のなかでつぶやき、言葉を返す。
落ち着け。どうすれば殴れるか考えろ。深呼吸し、視線と思考を巡らせる。
「……あ」
ここで漸く、自分と幽霊以外にも誰か居ることには気づく。
……視界の隅に少年が一人。そして、恐らくもう一人。
とはいえ、今の状況では助けに行くことはできない。
……どうすべき、だろうか。

稲葉聡美 > (この異常な状況を物ともしない――ように聞こえる――東雲の声に、少し恐怖が緩み、尻もちをついた姿勢から起き上がろうとする)

(だが……相手は彼の話に応じるつもりはないらしい。視界の端に現れた少女の笑顔からは、思わず目をそらす。)

(もう一人の男もいる――目の前の少年と少女の仕草からそれは分かる)

戮意 鞠栖 > 「私って欲張りなのよ。殺してお友達ってね。それでも、どうしてもどっちかにしろって言うなら、殺しちゃおうかしら。」
焦らすように包丁を、ゆっくりと東雲の方に向け、彼を見据える。
行動をしないのなら、こちらから行動を起こすと言わんばかりの脅迫めいた視線。

「ふふ、ごめんなさいね、私も結構ひねくれ者で、止めて欲しいなんて言われたら逆にやりたくなっちゃうわ。」
包丁は東雲、人差し指は頸城に。
そして、やがて視線は移り―――

「なぁに?二人してシャイなのね?寂しいわ。」
目は、たった今起き上がった稲葉に、逃げて行ったそれを追う様に向けて。
「こっちの世界で、お話、しましょうよ?」
仕草は幽霊の手招き、それそのものだった。

東雲七生 > ──っとに、タチ悪いなお前……。

(頬が引き攣るのを自分でも感じながら笑みを浮かべる。
 自分一人だけで逃げるのなら出来ない事も無いだろうが、その背後には少女が居た。この少女を連れて逃げるのは少々骨が折れるだろう。
 庇いながら戦うのも、また同等かそれ以上に難しく思えた。)

はっはー……参っちゃうね。どーも。

頸城 陸 > 「……駄目だ」
考えが纏まらない。近づけない。少しでも走れば、音で気づかれる。異能を解除しても同じだろう。
ゆっくり動いても、気まぐれに振り向かれたら終わりだ。

……いっそ、あそこの人達を見殺しにして自分だけ逃げてしまおうか。
そんな考えが、頭をよぎる。

稲葉聡美 > 「こ、殺さないでぇ……生き残りたい、まだ生きてたいっすぅ」

(ようやく口が回るようになった。観念したように追い来る視線に半泣きの目を合わせる。)

(感情のままに目の前の少年の腕に抱きつきたいところだが、そんなことをしたら彼が動けなくなってやられるのは明白だ。)
(奇妙に冷静な自己判断が下る中、腕のやり場を失ってひたすらまごまごしている)

戮意 鞠栖 > 「タチが悪くてごめんなさい。幽霊ってこういう物よ。」
ぺこん、と本気かどうかも分からぬ謝罪の旨。
「それじゃ、そろそろ行くわよ。大分、隙は見せたし、抵抗しなさいとも言ったけれど。」
「それが出来ないなら仕方ないわよね。」
勿論、むちゃぶりも良い所だ。
たかが忘れ物をしただけの学生に幽霊と抵抗しろ等と。
「ふふ、それでは行くわよ。」
だが、そんな勝手を押し通して、包丁を東雲に突き立てんと振りかざした。
或いは、他から見れば隙が見いだせるかもしれない。
しかし辺りは、少年も少女も諦めのムード。
落ちる士気、無い抵抗。
隙を多少見せたとしても、きっと何もないだろうと、タカを括っている様相。
要は、慢心していた。

頸城 陸 > 「……そんな事、やっぱりできない」
咄嗟に窓へと手を伸ばす。ガラスを破り、フレームを壁から引き剥がす。
ぐるり、体を水平に回し、ハンマー投げの要領で幽霊に向かってフレームを投げつける。
当たらなくても、注意はこちらに引けるはずだ。

東雲七生 > 生憎、幽霊との実戦経験なんて無いもんで……ッ!
……けど、勿体無えなあ。普通にしてりゃ可愛いのに。

(振りかざされた包丁、その一瞬を真紅の双眸は見逃さない。
 鋭い呼気と同時にやや無理に思われる体勢から少年の蹴りが繰り出される。狙うは包丁の柄、あるいはそれを握る手。
 失敗しても一瞬怯ませるくらいの事は出来るだろう、その為に抵抗する意思の無いフリまでしたのだから。
 
 同時に動くなら今だ、と全身が告げる。
 振り返りもせず背後の少女へと手を伸ばし、大体の位置を予測してその腕を掴もうとする。)

──逃げるぞッ!

(掴めればそのまま、力任せに引っ張り。
 その場から走って逃げだすだろう)

稲葉聡美 > 「あっ……うっひゃああああ!?」

(少女が動く――その時)

(突然のガラスが砕けて粉微塵になる不快音。さらに一瞬の風を切る音――そして大きな金属音が響き渡る)

(音に気を取られて赤髪の少年が繰り出した一瞬の動きを見落とす――)

(気がつけば腕を引っ張られている。もつれそうになる脚をなんとか回して必死についていく)

「わっ!わっ!ひえええええ!?」

戮意 鞠栖 > 「なっ…?!」
東雲からの予想外の反撃。
そして、横目に映ったガラス窓のフレーム。
あと普通にしてりゃ可愛いって言われたのは嬉しい。
いや、それはさておいて。

―――どっちをどう対応したらいい?
だが、もう遅い。
行き交う視線は露と消え、二兎追う者は一兎も得ず。

握った包丁は手放すことは無い。けれど、蹴りあげられれば、
突き刺そうとしたその手も弾き上げられる。
そうして、怯んだその間にフレームが飛んでくる。
あれを喰らったら、まずいか…?凄い勢い。何としてでも逸らさねば。

「"いやらしい転移魔術"」

何とか、逸らす。転移させる場所などこの際どこでも良い。
あれを逸らすならそれでいい。それが、何処に転移したかは誰も知らない。
けれど、その幽霊少女から逸れたことは、この場にいる誰もが知る。
だが必然的に彼女の気も、逸れる。そうしているうちに、東雲と稲葉は逃げ出し始めた。

「…やられたわね。」
夜も、もうすぐ明けてしまうだろうか。
忌々し気に、苦虫を食い潰したような表情を残った頸城に向けた。

頸城 陸 > 「……ねぇ、悔しい?」
彼らは無事に逃げ出せた様だ。幽霊の表情からなんとなく察する。ざまあみろ。心のなかで罵声を吐く。

……さて、次は残った自分の番。さっさと逃げよう。殴るのはまた今度。我慢だ、我慢。
自分に言い聞かせ、先ほどフレームを引き剥がした窓枠をくぐろうとする。目的は、勿論脱出。

東雲七生 > ──そんなに長い距離じゃねえ、頑張れよ!

(流石に少女一人抱えて走れるだけの腕力は無い、が。
 少女一人引いて走るだけの脚力はあると自負している。廊下を全力疾走。そうそう体験できることじゃないな、と妙に冷静な頭で考えた。
 
 ──助かった。

 窓のフレームが飛んできたのは視界の端で見えた。
 逃走の成功が決定したのはその乱入もあったお陰だろう。心の内で少年へと感謝しつつ今は走る事だけに専念する。)

ご案内:「廊下」にジョージさんが現れました。
ジョージ > 「あン?」

東雲と稲葉が走ってる側の廊下
猫に乗りながらオッサンが呟いた。

今日は授業もあったし当番というかボランティアで、夜の学校の見回りをしている。
テストの答案の盗難もあったので、厳重にという学校側の方針らしい。

で、こんな時間になにやら物音……いや、足音がする。

稲葉聡美 > 「はっ!はいっ!はいっ!」

(たまに振り返ってずっこけそうになるも、何とか追いすがる。)

(幽霊はついてこないのか?数度振り返った後に走るのに集中するようになる)

戮意 鞠栖 > 「うっさいわよっ!このバカっ!!死んじゃえーっっ!!」
むっかー、と両手に力を込めて、空気を殴りつける。
先程の大人しく静かな様相はどこへやら、声を荒げて反抗的な言葉を並べた後、
最初の如く水の弾を窓くぐる彼の背向けて打ち込む。
それが、当たるか当たらないかは分からないが、そのまま脱出するなら多分当たらないだろう。

「ああーっ!!もうっ、信じられない。」
気が付けば、最初は三つもあった生きた人間の気は、
次々と彼女が覚知できる範囲から消えて行く。

「―――はあ、油断しすぎたわね。ああもう、次会ったら絶対ぶっ殺すから。」
ふん、と今は誰もいない廊下に負け惜しみを一つ溢す。
今から追っても無駄だろう。ついでに朝になったらそれこそおしまいだ。
「"いやらしい転移魔術"」
そうして、幽霊は転移魔術で何処へともなく去って行く。
去り際、立っていた場所に"シロツメクサの花束"を廊下に残して。
けれど、皆が逃げ出した今、それは誰も拾うことは無いだろう。
後日、誰かの手に渡るか、それとも誰にも拾われずに枯れるか。
それは、あの世の幽霊すらも知らない出来事。

ジョージ > 走ってくる人影が見える。二人ほど。
何やら切羽詰まってるらしいが、そんなことよりも――

「おいてめェらァ!こんな時間にここで何してんだ!!
 今何時だと思ってんだ!!!」

メガホンで怒鳴る。もともとの声量が低いので、メガホンを使ってようやく人と同等の声が出せる。

ご案内:「廊下」から戮意 鞠栖さんが去りました。
頸城 陸 > 「え、えぇ……っ」
突然の幽霊の豹変に、少し面食らう。
が、すぐに我に返り窓枠を飛び越える。その背をくぐり抜けていく水の弾丸。思わず、安堵の息を吐く。
「……あっ、ぶな」
呟いて、鎧を纏ったまま少年は走り去っていく。

ご案内:「廊下」から頸城 陸さんが去りました。
稲葉聡美 > 「だわわわあああああーーっ!?また幽霊っす!!おっさんの幽霊っす!!?」

(突然響いた声に驚き、走りながら涙声の絶叫。)
(視界の端に猫のような何かは見えたが、その上のメガホンを持った小人には気づかなかった。)

(――そして、とうとう脚が絡まって盛大にずっこける。)

ジョージ > 「おっ、おい!大丈夫か!」

流石にそこは心配する、なにせずっこけ方が盛大だったものだから。
猫に乗ったまま駆け寄る。メガホンは手放さずに

東雲七生 > っと、先生……へ?

(少女の物とは違う、大人の男の声に僅かに安どの表情を浮かべ、その足を緩めようとしたところで。
 背後の少女の足がもつれた。手を引いて走っていたためその勢いに巻き込まれる様に転倒する。その最中にあっても、余計な怪我を与えないようにと少女を支えんと腕を伸ばした。)

──ったく。とんだ災難だ、ぜ。

ジョージ > 「……まァいい、てめェら、いろいろ聞きたいことあるんだが……いいな?」

心配していたのもつかの間、すぐにご立腹教師モードへと豹変する。
懐中電灯らしきものを咥えた猫の上で手を組み、煙草を咥えている小さいおっさんの姿が見えるかもしれない。

「今、深夜……だよな?」

稲葉聡美 > 「あうあう……あう、ごめんなさいっす……」

(東雲の配慮により、派手な転び方の割に体を強く打つことなく済んだ。)

(転んだ衝撃と、目の前の小さいオッサンと――未だ繋いだ手のぬくもり。)

(急激に非日常が日常の――あまりよろしくない状況に戻っていく)

「あ、あっ、先生?えーと、えへへ……」

(安堵と、どう説明したものかという感情が混じった笑顔を浮かべる)

東雲七生 > ……いてて、まあ良いって良いって。

(少女に怪我がない事を確認すると身を起こし。流石にその際に手は離してしまう。
 そして猫と小さな男へと視線を遣る。これはこれで面倒臭い事になったなあ、と思いつつ。)

えーと、ジョージ先生すね。お疲れ様です。
深夜に……なってますよねえ、ええ。

ジョージ > 「おう、その通り、異能学担当のジョージだ。
 まさか深夜に授業やってた教師がいる……だなんてこたァあるまい。
 少なくとも俺はしらん。」

仁王立ちを崩さず

「……こんな時間に何やってたんだ?え?」

小さいせいであまり威厳とかが感じられないが、睨む。
しかも、期末テストを控えたこの時期だから、更に怪しむ。

稲葉聡美 > (小さいジョージ先生。普段の聡美ならば驚き騒ぐところだが、生命の危機を脱したばかりで、割とすんなり受け入れた)

「あっ、あうあう。さとみは、その……忘れ物を取りに来て」

(東雲に"だってあんなことが"と言わんばかりの視線を移す。)

東雲七生 > (この見下ろしながら説教を受ける図と言うのは正しいのだろうか、とぼんやり考えながらも神妙な面持ちになる。)

俺は、補習明けにそのまま寝こけて起きたら夜で。
帰ろうと思ったら幽霊に遭遇して。先生知らないっすか、包丁持った女の子の幽霊。

(ハイを通り越して冷静なままの頭で説明する。
 共に怒られている少女に説明させるのは流石に酷だろうと思った。)

ジョージ > 煙草を持ち、口から煙を吐きながら

「は?幽霊?……今どきそんなもんいるかよ。
 非現実的じゃねぇか。……ああいや、ここならありえるんか。」

と、上を見ながらぶつぶつ言ってるが、すぐに向き直り

「まァいい、幽霊が本当に出ようがなんだろうが、そんなことは今はいいんだ。
 ……あんたらももしかしたら知ってるかもしれねぇが
 もうすぐ期末試験だ。んでもって、少し前にだが……テストの答案のが盗まれる事案があった。
 犯人はわかってねェが、おそらく深夜の犯行だと思われるらしい。」

淡々と

「俺がこの時間、ここを徘徊してるのはそのせいだ。
 まァ、別に特別手当も出るし、暇だったからいいんだけどよ。
 そんなことはいいんだ、問題はお前さんら。
 普通こんな時間に学校にゃぁ来ねぇよなぁ?
 忘れ物だって、明日の朝とりにくりゃいいじゃねぇか。明日は月曜だし。」

くどくどと、しゃべる。それはまるでお説教。
教師特有の長ったらしい言葉の羅列を淡々と吐き出していく。

東雲七生 > ………はあ、答案が。
物好きな奴も居るんすね、答案なんて盗むなんて。

(日頃赤点常習犯である東雲は怪訝に思う。
 そんなものを盗んで点が上がったら逆に怪しまれるだろう、何の得があるというのか。
 なお、そんな開き直りにも似た考えを生徒誰もが持っているとは限らない点には気付いていない。)

だから襲われたんすよ。包丁持った……幽霊なのか分かんないっすけど。
とにかく、包丁持った女の子でした。そいつに足止め食ってたんですってば。

稲葉聡美 > (しょんぼりと廊下に正座。それでも延々と言葉を吐いていく教師は見下ろす小ささだ)

「はい……はい……ごめんなさいっす」

(申し訳無さそうにして相手の言葉を粛々と肯定する。割と慣れた怒られ方。)

ジョージ > 「……ま、こんなところで説教垂れるのは好きじゃない。
 昼ならともかく、今は夜だ。
 お前ら、もうさっさと帰って寝ろ。
 その代わりだ。明日、弁解と反省の文章を書いてこい。原稿用紙二枚分以上でいいぞ。」

睨むのをやめ、煙草を携帯灰皿に捨てる。

「幽霊の話は信じてやる。お前らも疲れたろ。
 だから身体を休めろ。怪我はしてなさそうだし、夜道に気をつけろよ。」

説教を終えると、普通の、愛想の良さそうなおっさんの顔になる。しかしやっぱり小さい。
猫は退屈そうに自分の顔を撫でている。

東雲七生 > ──うげ。

(ありのままを説明したのにこの上反省文まで書かされるとは。
 流石に理不尽さに八つ当たりをしそうになったが、それは走って帰って発散させよう。そう心に決める。)

はぁい。んじゃ失礼しまーっす。
……あ、そういや名前。

(ふと思い出して少女へと目を遣る。
 同じ学年だったことは知っていたが、名前までは記憶に無い。)

稲葉聡美 > (話が終わる気配に少し顔を明るくするが、原稿用紙の立ち並ぶ白マスを想像して瞬時に青くなった。)

「はう……了解っす」
「じゃあ、ジョージ先生、失礼しまっす。」

「じゃあ、帰りましょっか…………あ」

(ジョージの名を呼んでこちらも気づく……少年とはお互いに名乗っていない)

「えーと……今更、って感じですけど……わたし、1年のいなばさとみっす。今日はその……ありがとうございました」

(今夜一番の笑顔を向け、そう言った)

ジョージ > 「……そうだ、名前」

そういえば、という顔になって

「えっと、一年の稲葉聡美、と……そっちは?」

なにやら端末に打ち込んでいる。

東雲七生 > 東雲七生、一年。

(ジョージ、稲葉の両方に名乗った後、稲葉を見て)

稲葉ね、たまに授業で見かけたけどちゃんと話したのは初めてだなー。
……う、ま、まあ良いって良いって。気にすんなよ。

(少女の笑顔に気恥ずかしくなったのか、赤くなった顔を隠す様にさっさと玄関の方へと向かって歩いて行く。)

んじゃ、ジョージ先生。また明日ー。

ジョージ > 「一年、東雲七生っと……おっけ。
 そんじゃ気をつけて帰れよー、寄り道や夜遊びはすんじゃねぇぞ。」

そう言うなり猫に乗って、二人とは反対方向、つまり事件があった場所へと向かう。
その際、また煙草を一本取り出して、火をつけた。

ジョージ > ――その後、事件の現場にて
フレームが取れ、破られたガラス窓を見ては

「なんじゃこりゃぁ!!!」

と思わず叫び、深夜の見回りの強化を教員各位に提案することとなったのは別の話。

稲葉聡美 > (危機を切り抜けたばかりなのに、二人との邂逅を経てどこか晴れやかな気分があった。)

「ジョージ先生、ななみ先輩!またーっす!」

(少年の感情の機微には気づかない鈍い少女は、前後にキョロキョロと手を振りながら東雲に少し遅れて玄関へ向かって行った――)

ご案内:「廊下」から稲葉聡美さんが去りました。
ご案内:「廊下」からジョージさんが去りました。
東雲七生 > あ~もう。
そういや、あの変身するあいつ、ちゃんと逃げれたんかな。

(まあカッコ良い格好してたし大丈夫か、なんて無責任な信頼を寄せつつ)

なんか……どっと疲れたな。こんな時は朝までどっかうだうだしよ……。

(ついさっき寄り道するなと言われたのを忘れ、ぶらぶらと何処かへ)

ご案内:「廊下」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「廊下」に戮意 鞠栖さんが現れました。
戮意 鞠栖 > 時間は、深夜。草木も眠る、なんていうが、本当にそれくらい静かな時間。
いつだって、変わることは無い。
今日もまた、幽霊は廊下に顕れる。
「…ふふ、今日は、誰が来るのかしら。」
事務室の連絡事項を思い出して、口を歪める。
生徒だけではない、教師が見まわっている可能性があるのだ。
自然、愉悦と、それから幾許かの殺気が彼女の体に過る。
数は多い方が良い。狩るのが楽しみだ。
けれど、この間の様に慢心し過ぎてはいけない。
匙加減はどうしたものかしら、なんて考えるのも一興。
どれをとっても愉快愉快。
私はこの廊下を彷徨し、輝く命を探すのみ。

ご案内:「廊下」に矛海 遼さんが現れました。
矛海 遼 > かつり、かつり

足音が闇に沈んだ廊下に、静かに響き渡る。
音の間隔、大きさからして推定されるは男性と言った所だろうか。
何をしに来たのか、理由は知るわけではないが、何者かが通りかかっているという事は確かだろう。

戮意 鞠栖 > 「何かいるわね。」
わざわざ音を聞くまでもないのだが。
取り敢えず、そこに何かいるのは分かる。
「今日は如何料理しようかしら。」
結構殺気立ってるっぽい。

矛海 遼 > 静かに足音は響き渡ると一度停まり、車輪を転がすような音と足音を鳴らして廊下を通過して行く。

ただ、淡々と、静かに夜風で窓の揺れる音と共に。

戮意 鞠栖 > 「無限回廊。」
要はいやらしい転移魔術。因みに無詠唱。
脅かすのは幽霊の基本で。
それを擦れ違い様にかけるのだった。
対象は彼。転移位置は先程歩いてきた道の向こう。
宛ら、無限回廊の演出。

矛海 遼 > 「……………む?」

数分経過し、違和感を感じ取った。
先ほど歩いてきた位置に戻ってきているではないか。
まさか、無限ループ?

「…………試してみよう」

一言静かに呟くと、先ほどまでの車輪の音の主――――――台車に乗り――――

「………………」

ものすごい勢いで廊下を疾走し始める。
明らかに遊んでいる。教師ともあろうものが。
その様子はまごうことなき変態である

戮意 鞠栖 > 「あらあら。」
ガラガラガラ。きっと、そんな音が廊下に響いたのではないだろうか。
廊下を滑走する台車。
それに乗るアロハシャツの男と、それを眺める和服の女。
混沌ここに出現せり。
「ちょ、早…。」
しかし、この行動は予想外。
「無 限 回 廊 。」
もう一度、同じ様にいやらしい転移魔術を擦れ違い様にかける。
しかし…驚かないとは、何事か。
ただの"変な感覚"として処理されてしまったか?
なら、もう一度同じことを繰り返すのみ。
驚かせ、冷静さを欠かせよう。
現場で冷静さを欠いたら終わり。
特に、幽霊が絡む現場では。

「―――幽霊見たり枯れ尾花、ね?」

矛海 遼 > 「………………なんだかだんだん楽しくなってきたな」

再び、ループの起点に飛ばされると先ほどの勢いに更に加速をつけ、台車の上に正座をしながらWピースをしている。
まるで危機感が無い。

…………ダメだこの教師、早く何とかしないと

戮意 鞠栖 > 「無 限 回 廊 。」
三回目の転移魔術。あれ、あの男何か調子乗ってないか。
擦れ違い様にもう一度。
そろそろ何が原因かも分かっても良いものだと思うのだが。
これでは冷静さを欠かないか。
「…ピアノやりましょうか。」
独りでになりだすピアノも、幽霊の定型文。
先日地面に叩き付けたピアノを、転移魔術を以って、もう一度地面に叩き付ける。
ダァーン、と嫌な音が夜の静けさをぶち壊した。

矛海 遼 > 「ふむ…………これはこれで酔狂だな」

次に戻ってきた時には何処かからギターを持ち込み、台車に乗って滑走しながら激しく弾き鳴らす。
近所迷惑ここに極めり。

「これは良い………やはり音楽は良いなぁ」

戮意 鞠栖 > 「…えっ。」
何だかよく分からないが。
色々とダメな気がしてきた。
無限回廊もピアノも通じないとなると。
後は、人魂くらいだろうか?というか、ギターが五月蠅い。
性懲りもなく滑走している。っていうか、無限回廊せず放っておいたらそのまま事故りそうだ。
試しに、放っておいてみよう。

矛海 遼 > そのままギターを鳴らしながら滑走、音がしばらく止んだ後――――――天井を台車ごと走りながらUターンして戻ってくる。

「まさか壁にぶつかりそうになるとは。
こんな事もあろうかとスケボーを習っておいて正解だったな。」

重力とはなんだったのか、少なくともここに居るのは狂人かアホの二択である。

戮意 鞠栖 > 「…なにあれ。」
幽霊が言えたことではないだろうが、超常現象だった。
「ああもう、面倒だわ。」
さっさと手を下そう。何をやっても無駄だろう。
適当に、禁書庫より廊下のど真ん中へと、三級の禁書を転移させた。
幽霊に纏わる、心霊現象が示された禁書。それも、暴発寸前の。
あのタイプは、幽霊が出ても意味がないだろう。
魔力の渦が巻き起こり、禁書から怪異が、顕れる。
三級と言えど、禁書は禁書。それなりに脅威的な怪異が、導き出された。

白い人魂「…燃…エ…テ…シマエ…。」

夜の色に相反する、真っ白な炎。怪異。
戻ってくる彼の前に、立ちはだかった。
滲む魔力。そして、死してなおも消えぬ、生への渇望。
それは、死者の持つ邪気他ならない。何処かゾクリとさせる様な悍ましさを持っている。

「さぁ、こればっかりはどうしようもないわよ。…どう出るか、見せてもらうじゃないの?」
もっとも、あの男がこれでどうにかなるとは思わないが。

矛海 遼 > 「………む?」

器用に天井から台車ごと綺麗に着地し、現れた白い人魂に視線を向ける。
しばらくそれを見つめると――――

「火事になったら危ないからな。消火しておこう」

懐から水の入ったペットボトルを取り出して一口含み、人魂に向けて手を掲げ【熱】を奪う。
魔力に寄る物ならば、魔力が尽きるまで炎を消火せんとするか。
なお、少女の霊には気が付いていないようだ。

戮意 鞠栖 > 段々と、小さくなりゆく、が。
白い人魂「消エテ…タマルカ…。」
風きり、水から横にずれての抵抗。
そのままくいっとカーブしつつ、柱に白い体をぶつけ、燃やしながら、奪われた熱を増幅させる。
あくまでも、消えるつもりはないらしい。必死の抵抗。
三級と言えど、禁書の片割れ。中々にしぶとい。

矛海 遼 > 白い人魂の様子を一度見て、確信する。
一度能力で触れて見て分かった。これは術や魔力に寄る物だ。
故に、何かスイッチに、起点になる物があるはず。

「さて………あれを癒すのは難しいが、眠らせることはできる………【スイッチ】を探すとしよう」

手を人魂に向け熱を適度に奪いながら周囲を見回し、何か怪しい物が無いかと探りを入れる。

戮意 鞠栖 > スイッチと言えば、でかでかと廊下中央に三級の霊能禁書がおっぴろげて有るが。
白い人魂「………。」
柱を燃やし尽くせば、次の柱へと向かい。
どんどんと廊下の一つが老朽化していく。
熱を得ねば、燃え尽きてしまう。最悪、床板を燃やすという手もあるが。
恒久的に熱を奪われるのは厄介である。

矛海 遼 > 「恨みや妬みがあるのはわかるが――――眠ってもらうぞ」

中央部、不自然に浮かぶ霊能禁書を見つけると近付いて行き――――両手の甲に魔法陣を浮き上がらせながら禁書を閉じようと両手を差し伸ばす。

「流石に被害はおっぴろげに出来ないからな」

戮意 鞠栖 > 白い人魂「ア…アァァアァアァ…。」
あれほどに抵抗していた人魂。
閉じられるなら、全く連携しているように白い人魂もまるで閉じられるように消えた。
「…はぁ、これは、手詰まりね。」
ああ、今日は良くない日だ。
あの手この手で驚かせるが冷静に対処される。
きっと出て行って驚かせたって何の意味もなさないだろう。
戦略的撤退。
本が閉じられたその少しあと、何処へやら、姿を消した。
負けではない。断じて、と内心負け惜しみをしながら。
幽霊に強い人間もいるのね…と、心中にて独り言ちて。

ご案内:「廊下」から戮意 鞠栖さんが去りました。
矛海 遼 > 静かになった夜の廊下、手元の本を閉じて一言呟く

「出来る限り、安らかに眠れよ」

本に優しく語りかけるようにして、霊能禁書を片手に台車を押しながらゆっくり。
車輪と足音を響かせながらその場を後にする。

少女の存在、それに気づくことなく。
後日都市伝説に知ることになるが。

ご案内:「廊下」から矛海 遼さんが去りました。