2015/07/21 のログ
ご案内:「保健室」に蓋盛 椎月さんが現れました。
蓋盛 椎月 > 養護教諭にして、保健課協力員。
それが蓋盛の肩書だ。
最初はどこの委員会組織にも属するつもりはなかったが、
応急処置と所持異能の関係から保健課への所属を強く奨められ、
なし崩しに名前を連ねることになった。
組織運営は生徒主導である常世学園に置いて、
ただの教員でしかない蓋盛に大した権限はない。
保健課緊急出動のさい、経験の薄い保健委員の
引率や補佐を求められることが稀にあるぐらいだろうか。

そんな、生活委員会の下っ端の更に下っ端という立場である蓋盛にも、
独自の力というのはある。
保健室業務で培った人脈だ。
もっとも、それを活かして何かをしたことはないが。

それをつい先程使った。
得られたのはささやかな情報だ。

シキミの花を一輪。
花瓶の用意がなかったので、洗ったビールの空き瓶で代用。
“枯れない薔薇”の隣に置く。
軽く手を合わせた。

蓋盛 椎月 > 本当に大したことはない。
その筋のものなら誰もが知っているようなこと。
得られたのは、今朝のニルヤカナヤでの一件。
そして、ミラノスカラ劇場での惨劇。
その主犯が同一人物であるという、確たる情報。

「……運が良かった」
目を伏せて、ひとりごちる。
自分が殺され、消し炭にされずに済んだ、ことではない。
自分の力で、ささやかとはいえ、悪意に弄ばれた犠牲者を助けられたこと。
居合わせた客の中には、以前この保健室を利用した生徒も混じっていた。

万能の回復《イクイリブリウム》でさえ、死んだ人間だけは、助けられない。
それが厳然たる世界のルールだ。

お湯を沸かす。茶の用意をする。自分のために。

蓋盛 椎月 > 茶の用意が済めば、戸棚を開き箱を引っ張り出してくる。
黒糖まんじゅう。ここを訪れた生徒がくれたものだ。
一口食べれば、しっとりとやわらかな甘みが口中に広がる。

『先生は、すごくすごく優しいんですね』

これを差し入れた生徒が、自分をそう評した。
本当にそうだろうか。
救えない命を手前勝手に判断して、切り捨ててきた薄情な自分が。
本来誰にも決められないはずの、命の選別を行ってきた、傲慢な自分が。
果たして優しいと、本当に言えるのか。

所詮自分は、常世学園という大きな舞台の脇役にすぎない。
あらゆる事件の部外者だ。
だから弔いも、こうして、自己満足的に済ませるのがちょうどいい。

ご案内:「保健室」に蒼穹さんが現れました。
蒼穹 > (がらん、と戸を開ける音と共に能天気にやってくる蒼髪。
サボり半分の休憩、と言ったところ。退屈な授業を出席するフリだけしといて
後はお休みしようという相変わらずの魂胆だった。)

…やっほ、御邪魔するよ。こんばんは。
本当に御邪魔しちゃったかな?

(今朝のフェニーチェ絡みの一件は風紀の言伝では一応聞いてはいる。
さて、入ってすぐに目に入るのは、御存知保険医の蓋盛先生。お茶をしているのだろうか。
おまんじゅうに熱々の御茶の組み合わせは和風の匂いが漂う。

しかし、それ以上にしんみりとしているのは気のせいだろうか。
何となく、なのだが、或いは哀愁に浸る中お邪魔してはいけないと一応の気遣い。)

蓋盛 椎月 > くる、と事務椅子を戸のほうへと向ける。
湯のみを片手に、まんじゅうをもぐもぐ。
何が面白いのかへらへらとした、気楽な笑みを向ける。
蒼穹が何かしら感じ取った雰囲気など、気のせいだと言わんばかりの。

「よお、破壊神様。サボタージュかな?
 別に邪魔なんてないぜ、暇してるし。
 あ、まんじゅう食う?」

手をひらひらと振る。

蒼穹 > (気のせいか。そうでなくても己が関与することではあるまいか。
そう察した。返すようにひらーっと手を振りながら気楽な様を見せる。)

おーおー。分かってるねーしづちゃん。
特に様付けするなんて分かってる分かってる。
(うんうんと頷くのである。)
そうそう、サボりだよ。
お、貰っちゃっていいのかい?
(であれば是非ご同伴しようかと御茶中の席に御呼ばれしよう。)

蓋盛 椎月 > 「破壊の神だけにサボタージュってわけね。
 あたしもサボり中みたいなものだし」

もう一つ湯のみを用意して、それに茶を注いで差し出す。

「独り占めもいいけど、
 誰かと食べたほうが食べ物ってのはおいしいものさ。
 それが美少女ならなおさらさ。遠慮無く食べたまえよ」

蒼穹 > 互いにサボりばっかりの局面で会うねー。
んでも久方ぶり。元気してたー?
(口振りは友人に向けるのと同じような気楽な口調。
どうもどうもと半笑いながら差し出されたそれを見ては小さく頭を何度か下げる素振り。)

ほうほう、分かってるねー。
私もこの頃誰かと食事する喜びをかみしめてきたばっかりでさー。
んじゃ、頂きまーす!
(おやつでも両手を合わせるのはお行儀です。
それから黒いおまんじゅうを一つ頂く。暑いお茶で過剰な黒糖の甘みを流せば、
後に残るのは程よいほろ苦さと幽かな甘み。…ふぅ、と吐く息は暖かい。)

蓋盛 椎月 > 「まああたしに関しては常にサボりみたいなもんだから……
 この間ちゃんと仕事したら慣れてなさすぎてブッ倒れちゃったよ」
冗談めかして笑う。

「元気元気。そっちはどーよ。
 誰と食事したの? 彼氏? 彼女?
 やっぱ破壊神ともなれば彼氏は1000000人位いるんだろうなー。
 あこがれちゃうなー」
もそもそとまんじゅうを頬張りながら、死ぬほどいい加減なことを口にする。

蒼穹 > あんたそれで保険医って言えんのかまじでそれ。
(がたんと御茶が置いてある机を揺らしてびしりとツッコミ。サボり過ぎだろういくらなんでも。)
ありゃ、そりゃビックリ。仕事したのね。何したの?
(結構興味本位な問を。)

おー、なら良かった。私?見ての通りだね。
あ、それとそれと、海行った?海。

んー。御友達。
ってか間違いだからねそれ。勝手に憧れられたら破壊神様困るから。
そだねぇ…私の覚えてる限りだと…3人くらいかなあ?
もう全員大分前から音信不通で消息不明だけど。
(それでも十分でしょうがと言われかねない。だが少なくともそんなにいる訳はないのである。
おまんじゅうの重く甘い風味が良い。やはり和菓子には緑茶が合う…。)

蓋盛 椎月 > 「だってさー保健室でこうやってお茶飲んでるだけで
 常駐業務になって給料になるんだよ? めっちゃラクで困る。いや困らない。
 来世も養護教諭になりたいわ~
 保健室にロクに顔を出さない保健医とかもいるし、実はマシなほうなんだよこれでも」
机を揺らされて、ひょいと湯のみを持ち上げる。

「いやあ何っていうか、この間まで試験期間だったじゃん。
 運ばれてくる怪我人とか体調不良の子がめちゃくちゃ増えてさあ。
 実習区にも駆り出されてマジで大変だよね~」
ほとんど深刻さを感じさせないような調子で、肩をすくめる。

「3人か~マジ少なくない?
 仮にも神って名前がついてるんだからさ~壮大なことして神格高めてこ?
 油断してると零落して破壊キングとか破壊大統領とかになっちゃうよ?
 というかみんな音信不通なんだ。恋しくなったりしないの?」
矢継ぎ早に自分勝手にいい加減なことを垂れ流し続ける……。

蒼穹 > …ああうん、私も来世は…って私に来世何かあるのかなぁ。
ま、兎角破壊神ってのも良いよ?
働く喜びを感じられるからね。うん。…サイエルさんかそれ。
(ナイス緊急回避であったと手を叩く。)

ん、そだね。
ああー…成程。そりゃお疲れ。
ってか今の主流回復魔法だろうけど珍しいよね、しづちゃんの回復のそれってさ。
(軽々と世間話のタネにするのもなんだが、そういうものなのだろう。)

おいおい。勝手に言うけど邪神様ってのは神格下がんないよ?
ってか人の恋愛沙汰をあーだこーだ言うんじゃない。
さぁねぇ、もう大半は"忘れた"から、今もし会っても誰だか分かんないよ。
(ちょっとだけしんみりとしたが、別に嘘を吐いた様もなく。)

蓋盛 椎月 > 「破壊神って仕事なの? どういう業務内容なんだろ。
 壁殴り代行とかビルの解体とか?」

蒼穹の言葉にはいいや、と首を振る。
「《イクイリブリウム》ならほとんど使わなかったよ。
 回復魔術にしてもあたしの異能にしても
 合わなかったり使えなかったりみたいなことが多いからさー。
 緊急を除けばほとんどは前時代的で原始的な治療で治すことになるよ。
 だれでも出来る治療法でもって治す、っていうのは重要なんだ」

まんじゅうを一つ食べ終え、もう一つ手に取る。
二つに割って、その片方を口に。

「まあ邪神については全然詳しくないからなー。
 若い子の恋愛事情って気にならない? いや若くはないのか?
 あたしは何人居たっけなー10人ぐらいだったかなー。
 やっぱ全然あたしも覚えてないんだけどさ」
事も無げに。

蒼穹 > 安くない?破壊神。規模ちっさすぎるよそれ。
強いて言うなら気の向くままぶっ壊せばいい。それだけ。
っていうか、どっちかというと私は勝手に破壊神って呼ばれてただけだからなぁ。
適当に平行世界を粉々にぶっ壊してましたっと。
(もう一つおまんじゅうを摘み上げて。)

ふーん…ああ、包帯とか止血剤とかその辺かな。
あらら、適性なり何なりがあるかな。
私の回復魔術も殆ど自分にしか使えないしねー…。
ってか割と真面目に語るんだね。

(むぐむぐと口に含む。さて、この一口を食べた後お茶を飲めば飲み干すか。)

そりゃま、そうだろうね。
事もあろうに地球の邪神様ってのとは別物だからさ。
おいおい、そんなにいるのか…結構不埒だねしづちゃん。
一体何年生きてきて10人なの?私は2億程で3人だよ?たったの。
(3本指立ててほんの僅かにだが顔を顰める。まぁそういう人もいるのだろうとは思うが。)

蓋盛 椎月 > 「いやああたしってば小市民だからさ。
 世界を壊したって言われても今ひとつ想像ができなくてさ。
 ビルの解体とかのほうが身近でわかりやすいんだよ、許せ」
悪びれずに目を細め。
「真面目? まあそうかもね。あたしは仕事は真面目だよ。
 サボるのも真面目だし」
やや意味の掴みづらいことを口にして、
くい、とお茶でまんじゅうの半分を流し込む。

「はは、邪神様に不埒って言われるとは思わなかったな。誇っていい?
 20数年、かな。一応。
 つってもあたしはそう不道徳なことをしてるって認識はないんだけど。
 どういう相手と末永く付き合っていけるか、なんてわからないじゃん?
 だから恋愛に関してはいろいろと試したいわけよ」

その結果が、彼氏10人、ということらしい。

「あたしにとってはさ、最初に出会った一人を、運命の相手だとか言ってさ、
 ほかの誰にもなびかずに、一途に尽くし続ける……
 みたいなののほうが、よほど不誠実に感じるんだけど」

わかんないかな? と首をかしげた。

蒼穹 > 許す。…じゃなくて。
そだねぇ…ううん、世界壊してもさぁ、何を壊しても、結局こわせりゃ良いんだよね。
ただ掛ける力の規模の問題。全力で暴れられるって楽しいでしょ?
まぁまぁ、ビルの解体なんか日常茶飯事だからね…。
(苦笑い。物騒なものである。)
それを真面目と言うかどうかわからないけどね…。

誇ると良いさ。誇って何になるかは分かんないだろうけど。
ああー…まぁその…。
言いたい事は分かるけどね。世の中色々いるってことさ。
キミがそう思うならそれも正しいんじゃないかな。
一度きりの人生だし、或いはそれも良いかもしれない。
私が言えたことじゃないけど、言いたい事は分かるさ。
恋だの愛だのなんて熱病みたいなものとも言われるからね。
実際どうだかは結局のとこ分かんないけど。
(要は積極的に否定も肯定もするつもりはないらしい。)

蓋盛 椎月 > “全力で暴れられるって楽しい”
その言葉に、何かを思い出したのか――ほんの僅かに反応して、眉を動かした。
しかしたった一瞬のことだったために、気づくには難しいかもしれない。

どこか諦めか呆れの混じった蒼穹の言葉に、
くつくつと笑い声を漏らす。
「物分かりがよくて嬉しいよ。
 あんなことは言ったが、あたしも個人の恋愛観について
 どうこう口を差し挟むつもりはないさ。
 そんなものに正解はないしね」

まんじゅうのもう半分を口に放り込む。

「ふー、食った食った。なんだかんだで三個も口にしちゃった。
 お腹いっぱいだ」

満足気な緩んだ笑み。

蒼穹 > …?
(気付いたか、気付かなかったか。これでも邪神、洞察力は自負しているが、
少なくとも疑問に思ったような様子を見せるにとどまるのだった。気のせいかな、と。)

そういうことだよね。
って事で誠実どうこうも各々の考え方それぞれになるかなぁ。
ま、楽しけりゃいいよねって話さ。楽しけりゃ、ね。

(二つ目のおまんじゅうを平らげたところで。)

私も二つほど食べたかなぁ、そろそろ腹ごなしでもしよっかな。
(んー、と伸びをすれば、ごちそーさまーっと元気よく挨拶して。)

んじゃ、そろそろ御暇しよっかな。お邪魔しましたっと。
(くるん、と入ってきた方向へと向き直った。呼び止められる事もなければ、そのまま立ち去るだろうか。)

蓋盛 椎月 > カラになった湯のみに新しく茶を注ぐ。出がらしだ。

「うん、じゃあね。
 怒られない程度に授業には出なよー」
その去る姿を、ひらひらと手を振って見送る。

蒼穹 > ん、りょーかい。
(後ろ手を振って、案の定そのまま立ち去った。)

ご案内:「保健室」から蒼穹さんが去りました。
蓋盛 椎月 > 戸が閉められる。湯のみを口に運ぶ。

「まあ、わかんねーだろーなー」

小さくぼやく。まあ、仕方ない。慣れている。
自分の思想を漏らして微妙な表情をされることなどいつものことだ。
むしろ微妙な表情で迎えられるだけマシなほうである。

こんなズレた倫理観を理解してくれる人間なんてほとんどいなかったので、
自分で肯定してやるしかなかった。

まんじゅうの箱に蓋をして、しまう。

蓋盛 椎月 > 煙草に火をつけ、フェニーチェに思いを馳せる。
演劇のために暴力、薬物、悪徳を厭わない犯罪集団。
彼らをかばうつもりはない。
しかしおそらく彼らは自分の信ずるものに
誠実すぎたのではないか、とぼんやり考える。
どうしてだか、他人のようには思えない。

会って話をしたかった、と思う。
会って話をしたい、ではない。
もう賽は転がされ、止まった後の段階。
保健課が仕事をする時、それはすべてが終わってから。

「……仕事する、か」

ご案内:「保健室」から蓋盛 椎月さんが去りました。
ご案内:「ロビー」にサリナさんが現れました。
サリナ > 「暑い……」

授業が終わり、帰るでもなくロビーにいた。
まだ日も高いので、今日はこれから開拓村に行って商いでもしようと思っていたが…
実の所、最近私はとんでもない額のお金を預かった。それは獅南先生に研究協力を要請された時に同時に頂いたその研究資金の一部だった。

今日まで、今までのように商いをする意義を失っていたが、流石に自分の生活費の足しにするのは悪かろうと思ってまた再開しようと思ったのだが…。

こうも暑いとやる気がでない。ハンカチで額に浮いた汗を拭いつつソファーに深く腰をかけた。

サリナ > なるべく日陰にいるものの、まるで暑さを凌げないのは湿気が高いからなんだそうだ。
私が居た世界の国ではここと気温が似たり寄ったりではあったが、湿気が少なかったので夏場でも日陰に入れば暑さを凌ぎやすかった。

その暑さのせいか、最近は食欲もそんなに湧かず、家に帰ったらシャワーを浴びて泥のように眠る事が多い。
こういうのを夏バテ、というらしい。最近その言葉を知った。

喉が渇いた。何か飲もうか……
立ち上がって自販機の前にまでゆったりとした足取りで歩く。

サリナ > コーラにしようと思ったが、今はそんなに気分がよろしくない。
じゃあ、スポーツドリンクにしようと手を伸ばすが……

「全部売り切れ……」

夏場だから私と同じ考えに至る人は大勢居るのかもしれない。
そしてその大勢と言う枠組みに入れなかった私はもれなくコーラを選ぶ選択肢しか残されてなかった。

"ガコン"   "──プシュッ"

「んぐっ、んぐっ、んぐっ…… ふぅ」

これが枠組みから外れた者の味か…些か甘い、甘いがおいしい。しかし、今の状態にはやや辛かった。

ご案内:「ロビー」にコゼットさんが現れました。
サリナ > 今日はもう外に出るのをよしとしないので日が落ちるまで学園に居よう。
コーラを飲みつつソファーに戻れば、鞄から本を取り出した。

最近は魔術書ばっかり読んでいる。例に漏れずこれも魔術書だ。
獅南先生と共同研究という名目で資金を託された今、普通の魔術書から怪しげな魔導書まで揃える事ができる。
きっと、私は他の学生と比べて、とても恵まれていると思う。今しがたロビーにやってきたあの人よりも、そこを道行くあの人より、も

ぺらり、ぺらり、ぺらり、項を進める音が静かに響く。

コゼット > 「ひー、暑い…。」

授業が終わり、何時ものように涼みに行こうとする途中。
流石に学園では氷魔術で手元を遊ばせて涼む、なんて事は出来ない。
それを他の生徒が真似して色々と問題になりそうだからだ。
そうゆう時大体の責任は教師に行くのだ。理不尽な話であるが。

紅茶好きとはいえ流石にこんな時期に熱いものは飲んでいられない。
堪らず自動販売機に吸い寄せられるように歩を進め、目的の飲み物が無いか物色する。

「冷たい紅茶………ない!」

よりにもよって売り切れている。いつもはあるのに。
これも暑い夏の仕業か。
仕方ない表情でコインを投入し、コーラのボタンを押す。
これだけ無駄に何列も陳列してあるのである。生徒はこうゆうのが好きだからなんだろうか。

音を立てて開封し、乾いた喉に流し込む。
刺激のある炭酸が心地良いが…かなり甘い。おまけに炭酸というのは油断をしているとげっぷが出るのだ。それを見られるのは恥ずかしいものだが──。

そんな事を考えながらロビーを見渡すと、後姿ではあるが覚えのある生徒が目に留まる。
何かを読んでいるようだが…。後ろから恐る恐る近付いて見る。そっと覗き込んだ所、魔術書のようだが…。
大きな帽子が大きな影を作る。気配を察知するのは容易だろう。

サリナ > …突然、影が覆い被さったような感じがした。窓の外を見ても太陽に雲がかかった様子はない。
と、なると…?誰かが後ろに立っているのかもしれない。それにしては影が横に広い気もしたが…私は振り返って、そこで納得した。

「…先生、どうも」

コゼット先生だった。いつものように帽子を被っている。影の正体はこの帽子だった。
よく見れば私と同じくコーラを買っているようだ。そういえば先生はこの時期よく冷たい紅茶を飲んでいた気がする。

「もしかして…紅茶もなかったですか?」

恐らくは自分と同じ目にあったのではないのかと思い、自分の分のコーラのペットボトルを見せつつそう聞いた。

コゼット > 「や、お疲れ様。」
サリナが振り返れば手を挙げて挨拶して。

「そうなのよ。うーん、補充のタイミングの前だったかもしれないわね…。」
回り込んで、隣に座り込む。
見れば同じコーラが置かれている。先程の口ぶりから、彼女も同じく欲しい飲み物が無かったのだろう。
実際、売り切れの文字がいつもより多く点灯していたのだから。

「それ、魔術書でしょう?テストも終わったというのに勉強熱心ね。」
今の時期なんかは試験に開放され、悠々と遊びに行く生徒も多い。
しかしそんな中読書に耽るサリナの姿は、なんだか親近感を覚えるのだ。

サリナ > 「そうですね…」

開いていた本の表紙を上にしてそれを見せる。題は【地の訓え】、地属性の魔術、地占術の本だ。
先生も、こういう本は読むだろう。仮にも元素魔術の先生なのだから……

「テストが終わると皆さん遊びにばかり行ってるようで、授業にも人が少ない事ありますよね。正直、勿体無い気もします。
 私の元居た世界と比べて、学問のレベルが違いますから尚更そう感じます。」

私はテストが終わっても、あまり変わるところがない。羽を伸ばすにしろ時間が余った時にする感じではあったが。
もしかしたら、私と同じで先生もそんな感じなのだろうか…

コゼット > 本の表紙を見て、成る程と。
暇さえあれば図書館に足を運び、片っ端から魔術書を読み漁るコゼットだが、それはまだ読んだ事の中本だった。
勿論図書委員の顧問としてそれらの業務も真面目にやっている。決してサボりではない。

「それにこの暑さだものね…。今なんかは海に行く生徒も沢山いるでしょう。そうゆう私も、この間少し泳ぎに行ったけれど。」
海って広いのねー、と当事を振り返りながら感想を言う。
特に海に関する事となると、少し楽しそうに話していた。

「そうね、確かにレベルが高い気がするわ。設備も教養も。
私も貴女位の歳だった頃はそれはもう勉強ばっかりだったから気持ちは良く判るわ。殆ど遊びにも行かなかったし。」

サリナ > 海について語る先生はなんだか楽しげだ。私が元居た世界では海に面しては居たが、泳ぐ事はなかったし、どう楽しいのかまではわからなかったが…

「その様子を見ると結構楽しんだようですね。私もこの前水着を買いましたが、結局行けてませんね…」

この前、水着を買いに行ったが、結局まだ海にも川にもいけていない。
とはいえあの水着は少し露出が激しいというかなんというか水着は露出が激しいものであって……
うん、考えるのはよそう。よした方がいい。別の話題でも振ってみよう。

「…先生はこの世界の人が言う所の異世界人、と聞いた事があります。どういう所でした?」

私は先生の事が少し気になっている。どういう場所から来たのだろう、とかそんな事も知らないし。

コゼット > 「久々に遊んだって気になったわね。海はここに来るまで見た事がなかったから前から気になっていたんだけど、この暑さもあって…ね。
その為に水着も用意したし。サリナさんも水着を買ったのなら、気分転換がてら遊びに行くといいと思うわ?」

それは勿体無い、と言わんばかりに海を薦める。
実際私も海についてからは泳いで休んでの繰り返しだった。恥ずかしさはあったものの、泳いでる時はそれを上回る気持ち良さがあったから。

「うん?そうねぇ、異世界人…が正しいかしらね。
ここからは大分離れた、城壁に囲まれた城砦都市のような所から来たのよ。その街全体が魔術師を育てる所で、私は生徒時代から教師になるまで、そこでずっと勉強していたわ。」

長く住んでいた所なので、今でも風景は容易に思い出せる。
都市自体は良い所だった。一部の問題を除いては。

サリナ > 人は暑いから海に行くのだろうか。私の世界ではもっぱら危険なので海に近づかなかった、という背景があるが……
先生の勧めもあるし、行ってみようかな……

と、先生の世界の話に耳を傾ける。こういった先生の話はほとんど聞いた事がないから私としては嬉しい。
きっと、この世界とも、私の居た世界とも違う。そういう話は人によって様々で、いつでも新鮮な気持ちになれる。

「なるほど…街全体となると魔術というものがかなり普及した世界のようですね。
 そんな場所で勉強したから今の先生が居るんですね……」

コゼット先生の顔が少し暗くなった気がした。今の話をしている時にそうなったような…
もしかしたら思い出したくも無い過去があったのかもしれない。
私からそれを聞く事はないが、思い出してしまったのならば、きっと私のせいだ。

「…何か、悪い事でもありましたか?思い出させてしまったのならば、ごめんなさい」

コゼット > 「そりゃあ街全体で取り組むのだから、それに関する情報も知識も集まってレベルも高いし。
…まぁ私は特別才能があった訳じゃ無かったから、その分勉強頑張ったけども。」

もしその時期に私がこの島に学びに着ていたらどうだっただろうか。
海には目もくれなかっただろうか…。

「…うん?あ、いえ、いいのよ。良い所なのは本当よ?…良い先生も居たし。」

顔に出てしまっただろうか。
言葉に嘘は無いのだが、それも仕方ない位の事があったのも事実なのだが。

「ただちょっと魔物の数が多くて、ね。それが唯一の悩みだったかしら。」