2017/07/14 のログ
宵町 彼岸 >   
生徒が多く往来するロビーの一角、
勝手口付近に小さめの影がふらふらと姿を現した。
その足はまるで夢遊病患者のように時折ふらりと揺れ
その目は傍目にも現実を写しているのか怪しく見えるほど虚ろ。
その様子を見たほか生徒は少し遠巻きながらその異様な雰囲気を避けるように
少しだけ遠巻きにしながら彼女に道を開けていた。

最も彼女自身そんな事は気が付いてすらいない。
ただただぼんやりと歩いていたらこの場所にたどり着いた。それだけの事。
むしろ挙動が怪しいのは日常茶飯事だったりもする。
普段はここを利用しないが、気が付けば近くにいた上に少し喉が渇いたので
何かないかとぼんやりと辺りを見渡し……
目についた自販機に近寄り、そっと指を伸ばした。

「んぅ―……、なんかちょ-し悪いなぁ」

ぼんやりとした頭を支えるように自販機の前に立ち、ココアのボタンを押す。
カップの落ちる乾いた音に機械の駆動音。注がれるお湯の音
生徒たちの喧騒の中に混ざるその音に耳を傾けながら
眼鏡の弦に手を添え、瞳を閉じた。
……どうにも体の調子があまりよろしくない。
研究や実験で最近あまり良い生活もしていない事からか、はたまた周期か。
何にせよ体機能が低下している事が明確に自覚できた。
そろそろ交換時期かもしれない。

「……」

そんなとりとめのない思考を遮るように
注文した飲み物が取り出せることを知らせるブザーが鳴り
はっと思考を引き戻された。

雪城 氷架 >  
「(なんだ、あれ…)」

辺りを見回していて見つけたのは…ロボット?
小さい、なんだか変身ヒーローモノに出てきそうなサイズだ
様子を観察していると……何をしたいのかは、わかった

「何がほしいんだ?」

気がつけばテーブルを立って、イチゴウの横に
足首近くまで垂れるツインテールが揺れている

チラリと隣の自販機を見やればそこにもまた、なんだか調子の悪そうな…

「…アンタは大丈夫?保健室いったほうがいいんじゃないか…?」

イチゴウ > 「ん?」

必死に前右足を伸ばしていると
横から一人の少女に声をかけられた。
反応してそちらの方に顔を向けると

「上段にある右から2番目の「おしるこコーラ」
って飲み物を購入したいんだが
あいにくこの様でな。助けてくれると有難い。」

まことに情けない様子で銀髪の少女へ
助けを求める。しかもロボットの重量で
自販機が傾き負担をかけているため
早く何とかした方が良さそうだ

雪城 氷架 >  
「おしるこコーラな …凄いモノが入ってるなこの自販機…」

苦笑しつつボタンを押そうとして

「ん、おいおい倒れるぞ、ちゃんとボタン押してやるから」

人語も解すると理解れば特に物怖じもせずにそう言い聞かせるように言葉を向ける
やれやれ、と代わりにボタンを押してやるのだった

「にしても、この学園はいろんなヤツがいるけどお前みたいなのは初めて見たよ」

宵町 彼岸 >   
そういえば氷が落ちる音が全く聞こえなかったような気がする。
いくらなんでもこの暑い中温かい飲み物はちょっと厳しい。
そういえばこの型の自販機ってよく奴がうじゃうじゃしてるっていうけど
これはどうなんだろう?
……そもそも何注文したっけ?

微かに指先の震えている左手を伸ばてカップを引き出し……
投げかけられた声にぴくりと肩を震わせる。
その拍子に力のあまり入っていない手からコップが滑りぬけ
この夏日に有難い温かさの湯気を存分に振りまきながら
服と床に着地する。

「……えすとーとみぁらぃど
 んーっと、多分へーきかなぁ。ごめんね、濡れてない?
 あとそこのキミ、自販機倒れたら警備の人に怒られるよぉ」

ふにゃりと笑いしゃがみこんでコップを拾い上げながら
声をかけてくれた少女と何処か見覚えのありそうなロボットに謝罪を投げる。
立ち込める甘い香りと肌の質感がそれがココアだという事を教えてくれていた。

イチゴウ > 少女がボタンを押してくれると
自販機の下の排出口から缶が出てくる。
そしてロボットは前両足を話して四足状態に戻ると
前右足のマニピュレーターで缶を取り出す。

「助かったよ、買ってこいという任務を与えられていてな。
こちらこそ銀髪と碧眼とは珍しいな。名前を聞いてもいいか?」

目の前の珍しい少女に興味を示したのか
ロボットは名前を尋ねる。

それと同時に床へとぶちまけられた液体、
香り等からココアを判断するのは容易であった。
そしてそちらの方へと視線を向ければ
1人の危なげな少女。こちらには面識がある

「カナタじゃないか、相変わらず危なっかしいな。」

イチゴウは彼岸を見上げて軽く声をかけてみる。

雪城 氷架 >  
「そうか?調子悪いんだったら言えよ。保健室ぐらい連れてってやるし」

零してしまったのを見て若干心配そうに、

と…ガタン、と缶の落ちる音
無事奇妙な飲料は落ちてきたようだ

「ああやっぱり自分で飲むんじゃないんだよな、そりゃそうか。
 ん、三年の雪城氷架だ。髪と眼は、お父さんのほうの血かな」

言いつつ前髪を指でつまむような仕草をしつつ

「何だ、知り合い?」

二人…というか一人と一台を交互に見る

宵町 彼岸 >   
「きにしないきにしなーぃ。いつもの事だからぁ。多分
 あ、でもちょっと熱かったかもぉ?
 でもへーき。怪我治すのは得意だからぁ。
 むしろこの気温の方が問題かもぉ……
 二酸化炭素排出する企業滅べ」

ゆらりゆらりと揺れながらマイペースの言葉を返す。
白衣は一部美味しそうな色になってしまっているものの
火傷などの後はもう見当たらないだろう。
そっと取り出したハンカチで押さえながら
そちらに顔を向けたままぼんやりと思考を巡らせて……

「んー、カナタ……カナタ?
 あ、そっか。ボクの事だった。
 そっちはえっと、イチロー……、イリコ?
 あ、イチゴー君だったねそーだねぇ
 元気してたーぁ?何だか随分ぶりな気がするねぇ
 昨日ぶりだっけ?それとも去年?……どっちでもいっかぁ」

親し気に投げかけられた声に
聞き覚えのあるワードを認識し、目の前の彼が
知り合いだという事を思い出した。
きょとんと小首を傾げながら半分独り言の様な言葉を並べると
汚れている事を気にかけることなくゆっくり立ち上がる。

「それで―……キミはボク会った事あったっけ?
 あったらごめんねぇ?それともいちごー君の知り合いかなぁ?」

心配そうに此方を覗き込む瞳に応えるように微笑むと
二人に……一人と一台が正しいかもしれないが……交互に顔を向ける。
少女の方はなんというか……感性を擽る容姿をしている。
身長も同じくらいで触り心地というか抱き心地がよさそう。
なんだかんだ誤解されがちだが彼女は基本綺麗なものや可愛い物が好きだ。
例えば……そう目の前のこの子みたいな。

雪城 氷架 >  
「ならいいけど…白衣にその汚れは目立つなぁ…よし、ちょっとじっとしてて」

すすっと彼岸の目の前にしゃがみこんで、丁度白衣がココア色になってしまったところに手を翳す
ちょっとだけ集中、手を翳した先に意識を送れば汚れの分子構造へと働きかけ、それを分解してゆく
手を退ければそこは新品同様の驚きの白さが、自身の異能を知り勉強していく中で得た使い方である

よいしょっと立ち上がって

「いや初対面だよ、名前は…カナタって呼ばれてたな、それでいいのか?
 で、コイツはイチゴウっていうのか……まぁ、今会ったばっかり」

相手にどんなことを思われているかなどはつゆ知らず

イチゴウ > 「雪城・・・氷架・・・。」

機械らしい合成音声で目の前の少女の名前を
ゆっくり呟くとしばらくの間動きが止まる。
このロボットは氷架という名前に見覚えがあった
正確にはデータベース上でだけだが。
過去に発生した「炎の巨人」事件に関与していた
能力者だったはずだ。事件発生当時は
イチゴウはこの島には居なかったため
詳しい事はわからないが。

我に戻ったようにもう一度氷架の方を見上げる。
その時に一瞬だけだが
イチゴウの目にあたるカメラレンズが
彼女の蒼い瞳を貫くように鋭く見つめた。
一体このロボットは氷架に対して何を思ったのだろうか。

「ボクの名前はHMT-15。カナタの言う通りイチゴウって
呼んでくれればいい。それと彼女とは
何度か会ったことの知り合いだ。
あの通り中々ボクの事をハッキリと覚えてくれないが。」

特に何事もなさそうに自分の名を名乗ると
氷架とカナタの方を交互に目を向けながら
そんな事を口走っていく。

宵町 彼岸 >   
「君の事をなかなか覚えられないんじゃないよぉ?
 ボクは全員例外なく顔と情報が一致しないだけだもぉん。
 判別付かないけどぉ
 ん、ボクはカナタであってるよぉ。
 ごめんねぇ。自分の事ってつい忘れちゃう」

間延びした声でヘヴィな事情をあっさりぶちまけつつ
しげしげと目の前の少女の全身に視線を巡らす。
珍しくこちらに警戒心をあまり見せない辺り
この島での時間が長いかこういった人物が身近にいるのかもしれない。
何にせよ経験値はそれなりに多いものと想定される。
体運びからは戦闘系には見えない事から風紀その他に該当する組織の構成員との関係性がある可能性が高い?
そういえば何だかこの島愉快な事件がちょくちょく起こってるんだっけ?
……そんな事を考えている間に白衣が新品のように綺麗に漂白されていく。
綺麗になったそれを纏ったままくるりと一回転すると

「わー、きれーになったぁ。
 おどろきの!しろさ!
 ありがとーだよぉ?
 某部屋干し安心洗剤みたいになんかこうあれだね!
 お礼にホールドしていいですか。むしろさせて?」

……後半はほとんど願望というか欲望に近いかもしれない。
そんな言葉とは裏腹に満面の実に良い笑顔を浮かべながら
おいでと言わんばかりに両手を広げて迎え入れる準備は万端。
最も普通の感覚なら何言ってるんだろう子の人状態かもしれないけれど
生憎それを気にするタイプでもなかった。

雪城 氷架 > 「?」

機械音声で自分の名を繰り返すイチゴウに不思議そうな顔
当然、イチゴウが風紀委員だとは知らないのである

「知り合いかぁ。
 顔の判別がつかない…って大変そうだな…」

顔っていう問題なのだろうかと一瞬思いつつイチゴウを見る
再びカナタへと視線を戻して

「いや、こっちが声かけたせいで零したのかなとも思ったし…?
 お礼?いいよそんなの、適当に異能使っただけだし…。
 させて、って言われても…ホールドって何?」

意味がわからなかったようで、片眉下げたちょっと困ったような反応を返す
きっと嫌がりはしないのだろうけれど

イチゴウ > 「ボクもキミの記憶構造に関しては
理解しかねる。そのような状態では
人間として人格を保つなど不可能だろう。
全くキミはつくづく不思議だな。」

顔の判別がつかないという割と洒落にならない
事を暴露した彼岸に対してうなずいたように
顔を動かす。

「それとさっきキミが彼岸の服に使ったやつ。
あれが君の異能なのか?
中々強力なものを持っているようだが
制御出来ているようで安心した。」

再び氷架の方を見上げればそんな事を言う。
彼女から検出される異能パターンが
彼を反応させていた。

宵町 彼岸 >   
「まぁ大変だけど皆慣れちゃったというか
 ”ボク”はもうそういうモノだって認識されてるみたいだしぃ。
 住めば都?あれ?ちょっと違うねぇ。
 人格維持に関してはそれはもうよく言われるよぉ?
 まぁそれはともかくぅ、
 ちょっとしたじょーだんも兼ねてホールドって言ってみましたぁ?
 この国ではホットなジョークって聞いてたけど違ったみたぁぃ。
 むしろ気温がホット過ぎて頭湧きそう。あ、手遅れだった」

本気か冗談かわからないほどふわふわとした口調は徒然と言葉を紡ぐ。
よくそれで会話が成立すると言われるものの独特のゆったりとして間延びした喋り方は
人の心にゆっくりと染み入るような口調で……
本人的には無意識かつ無自覚にやっているのだから
色々な意味でわりと質が悪い。

「挨拶のハグみたいな?
 この国ではあんまりこうメジャーじゃないんだっったっけ?まぃぃやぁ。
 なんというか、抱き心地よさそうでしょぉ?
 何だかふわーっとしてるっていうかこう、フィット感ありそう?
 自慢じゃないけど、ボク抱き心地すっごい良いらしいから
 お互い幸せと言いますかお礼兼ボク得の名案だと思うんだけどぉ」

一方でその内容は割と自分に正直だった。
両手を広げたまま小首を傾げるさまは実に無邪気に見える笑顔としぐさで
傍から見れば微笑ましい光景かもしれない。
……その発言内容が残念でなければ。

雪城 氷架 >  
「うん、異能。
 といっても応用だけどな」

特にそれを指摘されたことにも驚いた様子は見せない
この島で不思議な力といえばやはり異能力者である
シミも残さず汚れを分解してみせればそんな推測くらいは容易に立つ

「制御…は、うん。今はできてるかな」

そこに言及されれば僅かに苦笑で返す
ついこの間までだったら、こんな真似はしていなかっただろう

それは兎も角──だが

「基本がホットホットなのにハグしようって中々根性あるな…。
 あ、でも待てよ……」

こんな暑い日、以前ならどうしてたっけ…と思い出して、
いつもやっていたように──自分の周囲の大気中、目に見えないほどの水分の分子運動を鈍らせてゆく
結果、まるで氷架の周りだけが涼快な気温になってゆく──

「それじゃ、はじめましての挨拶だな」

にっと笑って彼岸へと抱きついてみる
これなら大丈夫、暑苦しくありません
ちょっと細すぎるかなという体躯、でも一応柔らかいみたいです

イチゴウ > 「まあそうだろうな。
それに制御出来てるのは”今”の所なのか。」

それ以前はどうだったかというのは
恐らく言うまでもない事なのだろう。
加えて異能者である事を指摘しても動じない所を見ると
色々な意味で手慣れている事は間違いないか。
その後に彼岸がハグしようと提案すると
氷架の周りの気温が突然下がったのを感知した。

「なるほど詳しい原理までは特定しきれないが
温度変化に関する能力か。」

抱き合う二人の美少女を尻目に四足ロボットは
1人納得したようにそっと呟く。
この妙な構図を周りは一体どう見るだろうか?

宵町 彼岸 >   
「……珍しーねぇ。
 ほんとの意味で”制御出来てる”なんてなかなか言えないよぉ
 あ、ボクね、これでも医療術式では結構ゆーしゅーなんだよぉ?
 全然そう見えないって言われるけどねぇ
 いのーで怪我したら治してあげるから保健室においでよぉ
 機械も治せるからイチゴー君も安心だよぉ」

彼女の名前自体は何度か記録上で認識している。
クリアランス開示が成されていた記録の中ではいくつかに該当するものの
……特に今は何かを探るわけでもなし。
彼女にとって興味があるのはとある目的に沿うか否かなのだから。
それよりも大事な事がある。抱き心地とか。

「わーぃ、はじめましてぇ。
 カナタ、だよぉ。忘れちゃうけどよろしくねぇ?ゆっきーぃ。
 嗚呼いいなぁ……やっぱり環境干渉できるいのーは便利だよねぇ
 はー……すーずし―……」

許可が出たなら躊躇わないタイプ。
実に無邪気に見える笑みを浮かべながら殆ど力の入っていない体で抱き留める。
暑苦しさ皆無の上に適度な柔らかさと滑らかさ
絹糸の様な髪の毛に細い腰回り……実にジャストフィット。
やはり抱き心地は良好。自称美少女センサーは狂っていなかった。
というかこの子意外と着やせするタイプだという嬉しい発見もあったりする。
自分の抱き心地は恐らく相当良い筈だ。そういう風に作られているのだから。
ひんやりとした印象すら与える程体温が低いという点を除けば。

「んーぅ♪
 よそーどーりすっごい良い抱き心地ぃ……
 きれーで触り心地が良くていい匂いってもう最高じゃないですかぁ
 あ―……持って帰って好きにしたぁぃ」

若干物騒な事を言いながらまるでガラス細工を扱うかのように優しく
そしてとても楽しそうに抱きしめている様は
何処か安心した猫のような雰囲気を醸し出していた。

雪城 氷架 >  
「私の異能に興味ある?
 じゃあそのうち機会があったら教えるよ」

別に守秘義務があるわけでもない
学園から一部危険視されている…ということも本人は知らないだろう
分子運動を操作し温めたり冷やしたり、汚れを分解したり
制御さえできていれば単なる便利な力でもあるのだった

───と、講義時間の切り替わりを知らせるチャイムが鳴り響く

「…はーい、挨拶おわりっ」

なんだか色々言われて照れくさくなったのか、ほんのり頬を染めて、
安心しているような表情にほんのり罪悪感を感じながらも身体を離す

「もう時間か、行かないと」

少し慌てたようにテーブルに置いてあった自分のショルダーバッグを回収、走って元の場所に戻ってくる

「あ、でもカナタのほうが忘れちゃうんだっけ?
 ハグすれば思い出したりするのかな…ま、いいや!二人ともまたなー」

広い学園、また会えるかはわからないけど今日出会った二人を記憶しつつ、結構な俊足でその場から走り去っていくのでした

ご案内:「ロビー」から雪城 氷架さんが去りました。
イチゴウ > ロビーにチャイムが鳴り響く。

「そうかキミは行かなくちゃならないのか。
次会ったらキミの異能についてでも聞かせてくれ。」

軽い足取りで走っていく氷架を見送りながら
そう声をかける。
そして彼岸の方へと向いて

「キミは医療技術にも精通しているようだが
ボクを治すというのならそれは機械工学だろう。
どちらにせよ正規でないメンテナンスを受けるのは
現状では無理だ、だから遠慮しておくよ。
それと講義時間が切り替わったようだが
キミは行かなくていいのか?」

顔を傾けつつ彼女の奥底が見えないような
翡翠色の瞳を見つめてそう言う。

宵町 彼岸 >   
「うんー。次もまた初めまして、からだと思うけど……
 それは些細な事だよねうん。
 だから、じゃぁね。」

去っていく背中にゆっくりと手を振る。
鳴り響くチャイムが煩わしい。次の授業は……
思い出せないので保健室でひと眠りする事にしよう。
先ほどからほとんど体に力が入っていない。
授業に向かってもどうせ鞄も持てないだろう。
さっさと交換してしまえばいいのに、何故か最近
できるだけ引き延ばす癖がついてしまっているような気がする。

「ボクは天才だからねぇ。
 機械製の義手とかこのご時世珍しくないもぉん
 取り付けからメンテまで一通りできるしぃ、それに……
 ”くっつけるのなんて簡単だからね”
 まぁ気が向いた時で良ーんじゃないかなぁ」

笑顔の奥の何処までも空虚な瞳のまま
けらけらと、けれど穏やかに笑う。
種は適切な時に刈り取るもの。急いでも見過ごしても意味がない。

「ん―……保健室でお休みするぅ……
 どーせ授業免除されてる授業だと思うしぃ……多分
 いちごー君乗せて―……歩くの、面倒臭……い」

一応目の前のロボットは戦車なのだけれど
まるでタクシーのように気軽に行き先を告げてもたれかかる。
告げている端から瞳を閉じ、眠りかけているようにすら見えるかもしれない。

イチゴウ > 「・・・やはりキミは面白いな。」

彼の面白いという言葉は一体どういった意味で
放たれたものなのだろうかはわからない。
少なくともこの彼岸という一人の少女が
イチゴウにとって興味深い対象である事は
間違いないだろう。異能者とも魔術師とも
取れない人間の皮を被った”何か”。
彼は兵器として数々の異常存在を見てきたが
目の前の存在は全く見当もつかない。
だからこそ彼は知りたいのだ。

「・・・またボクをタクシー扱いする気か。
いい加減運賃を取るぞ?
でもまあキミ程度の重量なら大して
エネルギーも使わないし保健室までなら
全然問題はない。」

もたれかかった一人の少女を
イチゴウは保健室へと送っていくことだろう。
何気ない日常を送る好奇心旺盛なロボットか
任務だけを重視し対象を無慈悲に叩き潰す戦車か
果たしてどちらが彼の本当の姿なのだろうか。

ご案内:「ロビー」から宵町 彼岸さんが去りました。
ご案内:「ロビー」からイチゴウさんが去りました。