2015/06/18 のログ
■雪城 氷架 > 「あっ…」
腕が軽くなる
ひょい、と本を持ち上げられてしまった
なんのつもりだ
お前に助けてもらわなくたって
いろんな思考が頭のなかを巡るが…
最初に自分が感じたことを、信じてみよう
「……なんか、お前雰囲気変わった…な……ありがとう、助かるよ」
少なくとも、あの時の
女子生徒に暴行を加えて、それを止めに入った自分を容赦なく殴ったあの時と同じとは思えなかった
「あ、あっちの机まで運んでくれりゃいいからっ」
指差す方向には勉強中のノートが広げられ、椅子にカバンが置かれたテーブル
■犬飼 命 > 「別に……変わってねぇよ……」
変わっているのだと思う。
変えられたのだと思う、面倒くさいネコミミに。
望んでいない方に変わったのだと思う。
凶犬はあの頃よりも弱くなった。
「なんだ後ろのテーブルだったのか」
物理の参考書をテーブルの上に置く。
開かれたノート、コイツも勉強中かと。
しかしこの参考書の量、明らかに効率の悪そうな勉強の仕方だと顔に出る。
■雪城 氷架 > 「変わってないなら変われよな…。まだ風紀委員やってんだろ?
私ら一般生徒は身の安全を風紀に頼るしかないんだ」
口をついて、つらつらと恨み事混じりの言葉が出てしまう
括流先生に治してもらったから痣ももう綺麗に消えたのに、
やっぱり残るものだ、ショックというのは。
「…さんきゅ」
本を運んでもらえたことに対してはしっかりと礼を言う
なんとなく気まずさから、眼は合わせられなかったが
■犬飼 命 > 「あぁ、どうにも風紀委員会が手放してくれなくてな。
頼るんだったらレイチェルとかまともな奴に頼め。
俺みたいなクズじゃなくてよ……」
背中を向けて言葉を交わす、後ろのテーブルには氷架が座る。
犬飼は風紀委員会でも特別な存在である。
いわゆる戦力としての存在だ、求められているのは戦う力なのだ。
戦うしか脳がない、だから自らをクズと自嘲する。
「……」
魔術書の翻訳版を参考にしてテスト対策の実用理論を書き上げる鉛筆の音。
背後からも鉛筆の音が聞こえる。
本来の図書館の風景ではあるが気まずさが漂う。
■雪城 氷架 > 「………」
気まずい空気
実に静かだ
ブ厚い参考書をぱらぱらとめくってノートにうつしていく
……集中できるわけがない
はーっと大きなため息をついた
「……お前さ」
小さな声でぽつりと呟く
「さっきの言い方だと、嫌々やってるのか、風紀委員」
シャープペンの走る音が止まる
■犬飼 命 > 犬飼の鉛筆の音も止まる。
「そうだな……嫌々だな。
無理矢理に風紀委員に入れられた時は、何度も抜けるといったんだがな。
実力行使で蓋盛先生のお世話になりっぱなしだったな。
そんな割には戦力としても使われることもほとんどねぇ。
最悪な気分だったぜ……『首輪』を付けられるのはよ。」
首元の首輪、これがあるかぎり風紀委員会には逆らえないのである。
問には答えた。
余計なことを喋ったかもしれない。
勉強の続きだ。
鉛筆の音が鳴り響く。
■雪城 氷架 > 「ふーん……」
犬飼の言葉を聞きながら、椅子を傾けて揺らす
色々理由なんてのはあるものだ
風紀委員だからっていっしょくたに考える、
それは一般生徒という立場への甘えなのかもしれない
「でもお前、その首輪がなかったらとっくに追放されるか死ぬかしてるよな」
それは単純に思ったこと
凶暴な野獣は捕獲されて遠くへ放たれるか
射殺されるか、そんなところだ
首輪をしてさえいれば飼い主を探しこそすれ、放逐や殺処分はない
「考え方の問題かもな」
最後にぽつりとそう呟く
■犬飼 命 > ぐさりと刺さるものがある。
これまでにも大怪我を負うことは多かった。
これ以上踏み込んだた命が危ない。
それでも踏み込もうとした時に首輪の『制裁』が下った。
結果的に命を救われているのだ。
この首輪は犬飼の暴走を止める最後のストッパーなのである。
それはうすうす気がついていた事だ。
目的のためならどんな危険な場所でも行く。
情報を求めて違反生徒に殴りかかっていた、命の危険にさらされた。
その時に捕まったことを思い出す。
「……そうだな」
鉛筆を走らせながらそう返すのが精一杯であった。
理論をまとめあげ、魔術書を閉じる。
立ち上がって振り返る。
「悪かったな、勉強の邪魔になっちまった……と思う。
あと、その勉強法だとヤマカン当たらん限りボロクソだぞ」
■雪城 氷架 > 意外だな肯定の返事に驚く
逆に調子が狂うじゃないか
「………」
なんでこんなことを言ってしまったのか
つい口をついて出てしまったのだが……
なんとなく、理解する
やっぱりコイツは前の時とは違うけど、
もしかしたら根っこは最初から同じだったのかもしれない
「う…い、いいんだよ…これはテスト前の提出用のノートの課題だ…、
テスト勉強は……一夜漬けで頑張る」
典型的な落ちこぼれの返答だった
■犬飼 命 > 「おいおい、ここの先生共はテストで嫌らしい問題ばかり出してくるからな。
一夜漬けだとヒデェ目に遭うってことだけは教えておいてやるぜ。
じゃあぁ、課題もがんばれよな」
流石に手伝う義理まではないと、図書館を後にした。
レイチェルのネコマニャンのぬいぐるみを忘れないためにゲーセンへ向かって。
ご案内:「図書館」から犬飼 命さんが去りました。
■雪城 氷架 > 「お、おう…」
なんとなくその背中を目で追ってしまう
…そんなに長い時間がたったわけじゃない、
でもなんだか、以前会った時よりも大きく見えた気がした…
■雪城 氷架 > 視線を机に戻す
あと数ページだ、がんばろう
───途中惰眠なども貪り、結局終わったのはギリギリの時間だったそうな
ご案内:「図書館」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「図書館」にライガ・遠来・ゴルバドコールさんが現れました。
■ライガ・遠来・ゴルバドコール > 浅黒い顔の大柄の男が、自習席の椅子に窮屈そうに座り、何かを書いている。
傍らには履修科目要綱、教本の束、参考書など。
「あ゛ーーぁ、めんどくさいなあ」
入ったばっかで試験とは間が悪い。
おかげで、科目の選択から授業内容の把握まで、その辺の学生よりも遅れている分を短期間で挽回しなければいけないのだ。多少緩和はされるだろうが、それでも量が多いのは変わらない。
■ライガ・遠来・ゴルバドコール > 「それにしてもこの時間割表、すげー見っづらいんだけど。
何とかなんないかなこれ」
ただでさえ多い科目数に、やけに『講義時間帯:不規則』の文字が多い教師陣。
そもそも学内にいるかどうかもバラバラなので、質問するにしても探し出すのが一苦労である。
「……さっき校内案内してもらったけど、広すぎるよな。
通信教育とかないかなー」
■ライガ・遠来・ゴルバドコール > とりあえず、選択した科目の確認をする。
基礎教育課程…は既に高卒なのですっ飛ばして。異能はもってない、となるとあとは、異世界についての講義と、武術科と魔術関係か。膨大な魔術関連参考書を恨めしい目で眺める。
「…まずは、四大元素魔術、現代魔術概論、現代魔術応用論。
薬草学、あと東洋魔術思想と実践…祝詞作文に魔導工学?これも一応とっとこう。魔法剣は、い…るよな。コミュニケーション学?なんだこりゃ。伝承文学研究は…要るか?」
項目を上げていく。さすがに多い。何が多いって魔術が多い。
■ライガ・遠来・ゴルバドコール > 「武術科目はシンプルでいいよなー。体術と、あと太極拳くらいしか…へー、ジークンドーも教えてんのか。あとで観に行こう」
やっとのことで科目一覧をまとめ終える。
こんなことなら教師になったほうがよかったのかも。魔拳教えてる奴いなさそうだし。
■ライガ・遠来・ゴルバドコール > まあ、今さら言ってもしょうがない。
教本や参考書などを鞄に入れ、忘れ物がないか確かめる。
「さーて、あとは委員会と部活動の見学かあ、今日一日で回れるか…無理だな」
がっくりと肩を落とし、とぼとぼと帰る。
ご案内:「図書館」からライガ・遠来・ゴルバドコールさんが去りました。
ご案内:「図書館」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
■谷蜂 檻葉 > 図書館に、疲れた足取りで一人の少女が入っていく。
「あ~……おわっ、ったぁ~~~~……」
鞄を置いて既に前任は席を外していたカウンターにどっかりと腰掛ける。
「はー、これで一段落ねぇ。後でレポートやって中間も終わりかー……」
安らいだ顔でカウンターにくてりと倒れこむ。
■谷蜂 檻葉 > 檻葉の成績は悪くない。
良くもない。
日々の努力によって積み重なった点数で単位を取得している檻葉にとって中間は大きなストレスで――それらが終わり、数日は遊び呆けるのが彼女にとって学園生活の中でも指折りの悦楽だった。
「ちょっと読み渋ってた小説、読もうかな……」
遊ぶと言っても、彼女はどちらかと言えば本の虫なので静かに図書館に篭もるのが彼女にとっての主な「遊び」だったが。
■谷蜂 檻葉 > 「取り敢えず―――」
ちら、と視線を横に移す。
前任者が整理だけして放っておいた本の山がカートに積まれている。
そして、前任者が居ない間に返された整理されていない本もカウンターに積まれている。
「これ、終わらせますか。」
フンス、と拳を握ると、手際よくカウンターの書籍をまとめていく……。
■谷蜂 檻葉 > 【本を纏めては、カートに積んでいる……。】
ご案内:「図書館」に夜香さんが現れました。
■夜香 > さら、と髪をかき上げながら図書館にやってきた。
ん、と微かに歩みが遅くなる。
図書委員、という腕章を認めたからだ。
……。少し黙考。
しれっと禁書庫へ脚を向ける。
許可とかそういうのは、とっている様子はない。
作業中だからどうにかなるだろう、という雰囲気。
■谷蜂 檻葉 > 「……よし、っと。」
夜香がちょうど禁書庫に足を向けた頃。
一通りカートに積み終わり檻葉が顔を上げた。
(それじゃ後は帰りに―――)
「あれ、すいませーん。そっち禁書庫ですよー。アブナイですよー。」
そこでようやく夜香が禁書庫へ向かって進んでいくことに気付き、声をかける。
■夜香 > 呼ばれてようやく脚を止める。
ちらっ、と様子を見た。
そのまま少し。
…くるっと背を向けてやっぱり禁書庫へと向かおうとする。
どう見ても理解してやろうとしている様子。
直接引き止めれば間に合うだろう。
■谷蜂 檻葉 > (ああもう、久々に来るとこういう事になるんだから……!)
無視して進む人間は大凡2種類。
解らずにやる馬鹿か、解ってやる狂人の二種類だ。
―――先方はこちらを見て、見た上で進んだので恐らく後者だろうと見当をつける。
……この手の輩は止めても無駄だと経験則で判ってはいるものの心の天使が引き止めねばなるまいと先ほどから片耳を引っ張り続けている。
(………うーん。)
『「そっちの”異臭”がする方、許可がないと進んじゃいけないんですよー?」』
言葉とともに、風もないのに図書館のカーテンがゆらりと揺れる。
そして夜香の行く手―――禁書庫の方面から腐った卵と、日の過ぎた酢の物を混ぜたような激臭が立ち込めた……。
■夜香 > 「…っ。」
こほっ、と咳をした。
感覚はまともと解る動作。
仕方ない、と足を止めてくるりと引き返してくる。
臭いの無い場所まで来ると、禁書庫の方を改めて眺めた。
訝しげな様子。
それに…。と、くるりと振り返る。
「……。」
金の瞳が図書委員を見た。何か考えている様子で。
■谷蜂 檻葉 > (うん、風さえ操れるなら私の"異能"、一気に扱える範囲が広がる……)
足を止めた夜香に確かな実感を得ながらも、それを顔に出さないようにカートを押して書架に本を戻していく。
「御用の方は事務方の方で許可、もらってきてくださいね。
禁書庫に入る許可を受けている図書委員の人が承認書書いてくれますから」
夜香の方を見ないまま、作業を続ける。
禁書庫の異臭は変わらず漂い続けている……。
■夜香 > 「……ふぅん。」
図書委員の言葉を聞いているのか、聞いていないのか。
言葉を発した少女をじっと見つめる。
おもむろに宙に手を伸ばし、何かに触れるような動作。
淡い燐光が手にまとわりついている。
「…精霊。………いや、妖精、か。」
くすっと唇を笑みの形に歪めた。
今度は視線を切った少女に方にゆっくりと歩み始めた。
■谷蜂 檻葉 > 「……………。」
(ま、そこはバレるか………)
妖精達は自由に其処に居て、自由に力を貸す。
―――彼らに敵も味方もいないのだから。 好きと嫌いとそうでもないぐらいか。
けれど、彼女が頼んだ事は異臭を含めた『風を動かす事』
既にその仕事を終えているのであれば、問題はない。
後はしらを切って禁書庫に行きたがる彼女が諦めてくれれば御の字というわけだ。
(限界まで不快度を高めた臭気を撒いて ”静止に乗った” ポーズさえくれれば檻葉にはもう言う事はない)
■夜香 > コツン。
ヒールが音を立てて、図書委員の後ろで停止する。
「…今のは、あなたね?」
その思惑を知らず、特に遠慮することも無く声をかけた。
振り返れば、面白そうに微笑む女の姿が目に入るだろう。
「魔女の卵、という所かしら。」
様子はどうあれ、言葉を続ける。
■谷蜂 檻葉 > 「ええ、声をかけたのは私ですね。」
振り返らずに、丁寧に本を収めていく。
「そのまま進んでいってしまいましたけど……空耳か何かと思われてましたか?」
はぁ。とわざとらしくため息を付いて振り返り、カートを押して夜香の横の本棚へとまた本を収めていく。
「……魔女よりも、魔法にかけられるお姫様のほうがいいですね。」
そういって、『西洋建築の基礎―礎となる技術者とは』なる分厚い本を本棚へ背伸びしながら押し込んだ。
■夜香 > なかなか肝が据わっている、というか。
それも面白い、と笑みが少し深くなった。
「…ふふ、謝るわ。あなたは他の子よりは手ごわいわね。」
わざとスルーしたのと認め、素直に賞賛した。
書架に軽くもたれ、仕事を続ける様子を眺めている。
「けれど、あなたからは魔術の匂いがする。
……まぁ、お姫様が魔法を使っていけないというルールはないけれど。」
背伸びをする様子を見て、横から手を出した。分厚い背表紙に手をかけて一緒に押し込む。
■谷蜂 檻葉 > 「どーも……。」
む。とか ぐ。とか言いながら押し込んでいた本を手伝ってもらうと簡素な礼を言って
非常に、非常にわかりやすい胡散臭そうな視線を寄越す。
「……………。」
どう対応しようか。というような困ったような表情から
「………。」
適当にしらでも切ったままでいいか。というような不遜と呆けが混ざったような表情になり
「あぁ、昨年末の映画でもやってましたね、プリンセスが魔法を使ってる映画。なんでしたっけ、『サリナと密林の女王』」
前半の言葉をスルーしながら、ぐいーっとカートを引っ張って隣の書架へと移動を始めた。
■夜香 > その視線を笑顔で受け止めた。
もっとも明るい笑顔という印象はしなかっただろう。
…面白そうなものを見つけた、という笑顔だ。
「とても面白い映画と評判は聞いているわ。」
ふふふ、と笑いながらついてくる。こつこつとヒールを鳴らしながら。
喋る声はそれほど大きくない。
書架の間なら邪魔にはならないだろう。…図書館の静寂を破るつもりはあまりないらしい。
これはここ?とカートの中の書を無造作に一冊とった。
当たり前のように書架に戻す位置は、何故か間違わない。
■谷蜂 檻葉 > 「……………はい、あってますよ。」
どうすんだコレ。というような実に味のある表情で夜香に『あっちいけメンチビーム』を送るが、
効果が無いことを確認して深く深くため息をついた。
「一体、禁書庫に何の用があるんですか?」
無視してもいい、彼女に必要な手続きを独断でやってしまってもいい。
しかし、檻葉はその内心に秘めた実に面倒で奇っ怪な心根故にそう尋ねた。
それがまた、毎度の如く厄介事を引き寄せてはいるが、それが性根であれば致し方無い。
■夜香 > どうやらビームは反射されて疲労を与えた様子だった。
涼しげな微笑で受け流した本人は勿論そのことには気づかない。
「…あそこには面白い本がたくさんあるもの。
読むだけでも楽しい。…それだけよ。」
あっさりと白状する。
あぁ、と一つ断りを入れる。
「持ち出したり、位置を変えたりはしていないわ。ただ、読むだけよ。」
危険な書物を読んでいる、という事を当たり前のように言っている。
「…まぁ、今日は面白い子を見つけたから、少しあなたの事を見せてもらおうと思った。それだけの事。」
またカートから2冊手に取ると、それを正しく元の位置に戻す。
■谷蜂 檻葉 > (………うーん、まぁ……つまり”そういう人”なんだろうなぁ……)
『本当の本当に危険な人物』なら、まず檻葉を"どうにかする"かあの異臭自体をさっさと抜けてしまうなりするだろう。とは檻葉も理解はしていた。
―――かといって自分をどうこうさせるつもりも毛頭なかったが―――
「読むだけなら、それこそ普通に許可取って進んでくださいよ……。ざるって言っても規則はあるんですから、適当に扱われてしまっては困ります。」
わざわざ静止する身にもなってください。と本を戻して行かれる事には突っ込まずに自分も本を戻していく。
■夜香 > 「ふふ、そうね。…『あなたが』そういうなら、次からは気をつけましょう。」
静止するのも仕事の内。と涼しげに言う。
危ないというのはわかった上でやっているらしい。
「ざるなのは認めるのね。私は適当には扱った覚えはないけれど…警備の強化はしないの?」
むしろその方が危ないでしょう?と面白そうに言う。
先日も男子生徒が迷い込んできていたことだし。
■谷蜂 檻葉 > 「もう………。」
不愉快と不機嫌と疲れと面倒が入り混じった複雑な しかめっ面でもう一度だけ
メンチビームを放つが、直ぐにMP(メンチポイント)が足りなくなって打ち止めになる。
「警備の強化、ですか。」
今度は、少し困ったような表情で続ける。
「実際私も顧問に何度かそうは言いましたけど、『禁書のガス抜きも要る』からこのままが一番最適なんだー……とか言って取り合ってくれなかったんですよねぇ。」
署名でも集めるべきですかねこれ、等と言いながら、最後の一冊を収め終わった。
―――檻葉は、顧問の言いくるめの為の屁理屈と理解したが実際はそうではない。
禁書として集められた本の中には『餌』を欲するものも居る。
故に、"彼ら"はその保持した魔力を薄く薄く伸ばして、外から『餌』をおびき寄せるのだ。
さながら食虫植物が甘い香りで虫達を口元、口内にまで誘いこむように。
それらを、知って止めるものがいては良くない。
『餌』が枯渇すれば、禁書達はもう一歩”段階を踏んだ”手段に出てしまうから。
他にも所以は幾らかあるが、ともあれ禁書庫への道は”ざる”のままなのである。
■夜香 > 「魔女の卵なんてそうそう会えるものではないもの。」
最後のにらみつけるに対してはそう答えを返す。
…実際、面白そうな表情はここまで全く変わらなかった。
魔術師・魔女である事言う事も。
「…ガス抜き、ね…。」
事実困っているのだろう、という事は容易に想像ができる。
だが、その本当の意志を知ってか知らずか、それだけを呟いた。
…それに、署名を集めても無駄ではないだろうか。
そもそも禁書庫の危険性を正しく理解しているものがどれほどいるだろうか。
「苦労するわね。リトルウィッチ。」
■谷蜂 檻葉 > 「目下苦労の続行中ですけど……はぁ、どの辺で解るものなんですかね……。」
とはいえ、仕事も幾分早く終えられて礼を言うかもう少し文句を継ぎ足しておくか悩み、
「まぁ、行けばいいんじゃないですか禁書庫。
後付で手続きしておきますから……あ、名前教えてもらってもいいですか?」
ないと書けませんし、と。憮然とした表情でそれだけ告げた。
■夜香 > 「それは魔女の事? それとも、私の面の皮の話かしら。」
ニヤニヤとか、くすくすとか、愉快げな様子でそう言った。
「3年生。夜に香ると書いてヨスガ、よ。」
苗字はないの、と足しておく。
「…ちなみに年間フリーパス、というのは無いのかしら?」
しれっとそんな事を追加で聞いてきた。
■谷蜂 檻葉 > 「どっちもですよ、どっちも。」
愉快げな表情にうんざりとしたように首を傾けて肩をすくめる。
「夜香《ヨスガ》さんですね……了解しました。」
携帯のメモ帳にささっとメモして、カートの上に載せてカウンターへ戻っていく。
「相手の確認とかパスの使い回し防止の為に無し、って聞いてますよ。」
カラカラと音を立てながら、振り向かずにそう答えた。
【禁書庫への行く手を阻んでいた異臭は消え、古びた本の香りだけが残っている……。】
■夜香 > なるほど。そういう理由なら仕方が無い。
一つ頷くと、うっすらと笑みを浮かべた。
「えぇ、ありがとう。」
だが、その様子では面の皮は貫けなかったようだ。
禁書庫の方へと足を向けようとして、止まる。
「あぁ、そうだ――。」
ちょっといい?という風に軽く声をかける。
■谷蜂 檻葉 > 「……まだ何か?」
今度は、ただ不思議そうに。
■夜香 > 「貴女の名前、教えてもらえる?」
金の瞳が、小さく揺らめいた。
一瞬、意識を持っていかれるような感覚があるかもしれない。
■谷蜂 檻葉 > 意識のフラつき、思考に靄がかかったような感覚。
遠くで合わさった視線と共に急速に体のコントロールを失うような状態になり―――
「檻葉です。……苗字は音が好きではないので、教えないでおきますね?」
すぐさま、体内で創りだした【気付け薬】でしっかりとした視線を取り戻した。
ともあれその交錯に意味はなかったのだろうけれど。
■夜香 > 「そう。檻葉、ね。…じゃあ、また。」
すぐ立て直した様子を少し満足そうに微笑んだ。…ように見えた。
そして身を翻すと、何事も無かったかのように禁書庫へと向かう。
ご案内:「図書館」から夜香さんが去りました。
■谷蜂 檻葉 > 「……不思議な人だったなぁ……」
そういって、今日も終わりまでカウンターで作業に入る。
先ずは、彼女の手続きからだ――――
ご案内:「図書館」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
ご案内:「図書館」に苗羽 寧々さんが現れました。
■苗羽 寧々 > ここ常世学園図書館には開架の書棚が立ち並ぶ領域とは別に、自習専用のフロアが存在する。
自習専用であるからそこには机と椅子ばかりが整然と並んでいて、
他の階層に対して防音が効いているために、過度に騒がなければ私語が許されていた。
故に何人かで集まって勉強会をするとかいったニーズに応える形で、放課後はいつもなかなかの賑わいを見せている。
他にはむしろ少しは環境に音がないと勉強できないといった人種もちらほらとおり、一人でここに来ている人間はおおむねその類であった。
かくいう寧々も後者の側であって、窓辺に向けていかにもおひとり様用と設けられた座席に教科書を積み上げて座っている。
何しろ期末試験の近づいてくるシーズンであって、
授業料の減免に奨学金にと、何かと評定平均を気にする寧々には一定の点数を獲得する必要があり、
実際のところ死活問題であるので、手を抜くわけにはいかないのだが。
「……ほんとにこんなとこやったかな?」
と。思わず呟くほどに、平素の睡眠学習の効果は覿面とは言い難かった。
■苗羽 寧々 > 現代文の漱石のこころでKが死ぬとか死なないとか、その時の心情はどうだとか。
数学のなんとか関数がどうとかなって漸近線がうんぬんかんぬんとか。
英語の……なに?その、関係代名詞じゃないの?これ?ほわっとえばー?であるとか、仮定法過去?過去完了?であるとか。
世界史でアイユーブ朝のサラディンがうんぬんかんぬんずんばらりとか。
化学でホモカップリングがどうとかこうとか、なに?かけざんすればいいの?
その他常世学園特有の、異能、魔術、異世界に関する様々な科目が、
さながら餓狼の群れと化して寧々を追い詰めにかかっているかに感じられる。
「追い詰められた!」
そんなこんなで頭から煙を吹きそうになっている。独学ではどうにも厳しい。
■苗羽 寧々 > 寧々は深呼吸をした。
落ち着こう。脳に酸素を送ろう。私はやれば出来る子。
酸素と糖分さえあれば私の灰色の脳細胞は唸りをあげて一騎当千サラディンなうだ。
彼がそんな武闘派だったかは寧々には知る由もない。
大抵の偉人英雄のひととなりに関しては教科書に書いていないからである。
さておき、寧々の脳みその働き具合はイマイチであった。
いくら酸素を送っても、燃料たる糖分がなければ火が着かない。
頭脳のエンジンは回転を始めず、いくらアクセルを踏み込んでも、公道最速は夢のまた夢であった。
ところでこのフロア、図書館の内部であるにも関わらずなんと自販機がある。
ここは一息入れて、燃料を補給しよう。
寧々の懐にも、今この時点に限っては、幸いにしてそのくらいの余裕はある。
金勘定の科目があれば寧々はきっと満点を取れる。自信に足るだけの知識は実際ない。
「にじゅうにせいきにうまれたわったっしー♪」
買わんとするのはコーラである。
つめた~いの白抜き文字を従えて、堂々たるコカ・コーラの500ml缶が、俺がお得だぜとその威容を示している。
■苗羽 寧々 > 開架の領域であれば蓋の出来ない飲料は禁止されているが、
この自習専用スペースではそのようなレギュレーションは存在しない。ためらわずボタンを押す。
しゃりーん、という電子マネー決済特有の効果音が鳴り、
コカ・コーラの500ml缶 ――実際人気はないので売り切れていることはほぼない――が吐き出される。
長さに若干苦戦しながらよく冷えて結露した缶を取り出すと、
悠々自席に戻って、軽快にプルキャップを開栓して、きゅーっと一口。
「ぷは。いやたまりませんな」
仕事上がりのビールをキメたおじさんめいた台詞をひとつ。
山積する未踏破のテスト範囲群を不味い肴に、束の間の休息を決め込んだ。
ぷはー、どうしよっかなー、ちょっとまだきゅうけいー、あーコーラおいしい、の不毛なPDCAサイクルをくるくると回して、
この先延ばし野郎、訂正、先延ばし乙女と罵られても言い訳不能の有様を露呈しながら、寧々の休息は長期に渡ってゆく。