2015/07/24 のログ
嶋野陽子 > ここで時計の鐘が鳴る。
陽子は自分が思ったより長くここに居た事に気付き、
「打ち明け大会も面白そうですが、残念ながら私は今
日は時間切れです。ドラコさんの食欲や、私の性欲
の話はまた今度にしましょう。それでは失礼します」
と言って、席を立とうとする陽子。

ルフス・ドラコ > 「ええ、今度が有りましたら、きっと。」
鐘の音を聞きながら、まだ空にある太陽を見る。
夕暮れにはまだ早い。

「……食欲だけとは、限りませんけどね。」
苦し紛れの弁明ともつかぬそれを、おそらくは誰にも聞こえぬように呟いた。

鈴成静佳 > (間近で、燃えるような瞳を見る。ぞくり、と背筋に鳥肌が立つのを感じる)
(殺意を……いや、これは捕食者の気配か。かつて話した少年剣士の背中に感じたソレとは異なる、熱くて獰猛な殺気……)

(すぐにそれは収まるが、冷や汗は収まらない。しかし、頬を拭う指はまさしく、優しい人間の柔らかなそれで)
……アハハ、アハハハ……。いや、やっぱり、パクパク食べるのはよしてほしいかなー。うんうん。
味見程度で抑えてくれるなら大歓迎ッスけどねー。アハハハ……。
(「食べたいのかな?」なんて口を滑らせるのではなかった、と後悔。この学校にはどんな人がいるか分かったものではないのだ)

(離れていくルフスさんの後ろ姿は、やはりただの少女だ。いま感じた、強大な捕食者の気配はなんだったのか……首を傾げる)
んー、じゃあお互いに悩みを告白してみるッスか。アタシのほうがきっと大したことない、というか、漠然としてるから、アタシからね。

(俯きながら喋る。それでも、静佳の声は通りがよい)
……えーとね。なんか、嫌われちゃったかも、って人がいるの。アタシはそんなつもりじゃなかったけどね。
その人の好きなコトや楽しいコトを知りたかっただけなのに、聞き出そうとしたら「聞くな」って言われて。
そういう人と仲良くなるにはどうしたらいいか、その人の悩みを聞くにはどうしたらいいか、ってのが分からなくなってね。
ま、そういうわけッスよ。(顔を上げながら)…悩みに乗れるか自信がない、ってのも、そういうわけでさ。>ルフスさん

ご案内:「大時計塔」から嶋野陽子さんが去りました。
鈴成静佳 > あ、またねー陽子さん。お体はお大事にね~。
(手を振って見送る。性欲……まぁそりゃあるだろう、人間であれば。とはいえ、効率的に処理する方法を探すは彼氏を見つけるよりも難儀かもしれない)
(残念ながら、静佳ではとっさに救いの手を差し伸べることはできなかった)>陽子さん

ルフス・ドラコ > 一歩下がった分だけ、少し頭が冷えて。
だからこそ、肩を貸しながら、ただ同情して共感するにはもう遠すぎる。
「……多分ですけれど。」
「これは私の感覚での話ですから、理屈も何も通ってるとは思いませんし、
この悩みも解決できるかわからないんですけれど。」
自分の手を、お腹の前で重ねて。背は柵にもたれかかったまま。
遠目には逃げ出したいような様で、少女は答えを述べる。

「その人は……静佳さんを嫌っているというよりは怖がっているんじゃないかと思います。」
焦げ茶の瞳はまっすぐに向けられないまま、言葉だけが述べられていく。
「何かをあなたに伝えたら、自分が変わってしまいそうな気がする。」
「……もしも受け容れられようものなら、それこそ、決定的に。」
「そういうことを、怖がっているのではないかと思います。…そのひとは。」

鈴成静佳 > 怖がってる……。
(その言葉に、口をぽかんと開けながら呆けたようにルフスさんを見つめる静佳。考え事をすると、傍目にはアホ面になるようだ)

(……自分に罵声を浴びせたときの彼……日恵野ビアトリクス。彼の姿を呼び起こす)
(憎しみのこもった、刺すような視線。嫌っているように見えた。でも確かに、怖がっていたと取れなくもない)
(少なくとも自分に興味がない者の視線ではない、何かしらの強い感情が込められた態度であった。またその時彼は、「鈴成はいい奴だと思う」とも言っていた)
(「でも」という言葉に続いたわけだが)

……ううん、理屈は通ってると思うよ。
自分の弱い所とか、辛かったこととか、そういうのを誰かに言ったら……いや、口に出しただけでも、取り返しの付かないことになるかも。
そう思えるコトっていうのはある気がする。
でもさ、それをいつまでも自分の中に抱えていたら、解決は遠いと思う。だからアタシ、聞こうとして……。

(詰まっていた息を、フゥ、と吐き出し)
……うん、まぁ、それは赤の他人が急かして聞き出すことでもないッスよね。言いたくなったら言えばいいッスよね。
もう少し、仲良くなってから……。実際、あまり仲良しじゃなかったッスからね、その人とは。フフッ。
(自嘲ぎみに小さな笑い声を漏らす)

まぁ、アタシは仲良しのつもりではいたんスけどね。嫌いじゃない人は大体好きだし。
悩みを聞いてくれたルフスさんもね。アタシはルフスさんの悩みも聞いてみたいッスよ。
(顔を上げ、苦々しい微笑をルフスさんに向ける)

ルフス・ドラコ > 「それこそ、墓の中まで持って行きたいことだって…
世の中にはいくつか有りますから」
「……弱音やおぞましい事を伝えられないからって友達でないわけじゃないでしょう。」
「聞かないほうがいいことだって、有りますよ。きっと。」

灰が降る西極の天険。あの日二人で見た夕焼け。……聞くべきでなかった言葉。
ふるふると首を振る。胸の中にそれは仕舞いこむ。

「私の悩みは、いま殆ど言ってしまったようなものですけどね。」
悩みを聞こう、なんて。静佳が、そんなことを言える状態のようにはルフスには見えていなかったが。
「それなら、聞いてください。」
肩を貸すには、遠すぎる。


「静佳さんは保健課と聞きましたし、ウィルスで例えましょう」
「私の中に潜伏期のウィルスが居るとしまして」
「私が死ぬとウィルスはばらまかれます。そしてウィルスは地球の人口を0人にするまで働き切ることでしょう。」

「逆に。ウィルスを治療できる方法が見つかったとして。
……それが上手く行っても、私の遺伝子の中に潜むウィルスがいずれまた復活するとしたら。」
「……静佳さんはどうします?」
平坦で、無表情で。目を伏せて語る様は無感情で、
しかしぎゅっと握った手も、縮こまるようにした体も、一様にルフスの、目の前の少女への感情を表していた。

鈴成静佳 > うん、そうッスよね……ずっと胸に閉まっておきたい悩みや記憶も。アタシには……たぶんないけど。
(たぶんないと思う。感電事故の記憶でさえ、「その事実」のみを語る分には抵抗はさほどない)
(とはいえ、自分も気付いてない何かがあるかもしれない。ゼロだとすっぱり言い切れるほど、人間の記憶は単純ではない)
……だったら、嫌なことよりも好きな事や楽しい事の話をしてたいッスねー。アハハー……。
彼の前で、その時はそれができなかった。きっとそれが、アタシの悪いところの1つッスね、うん。
(頷く。明確な答えかどうかは自信がないが、1つの可能性として、確かに溜飲は下がった。胸が空く感覚を覚える)

(……そして、昨日と同じことを、この少女にもしようとしているのではないか。静佳はハッと気づく)
(悩みを言い合おうなんて、気軽すぎた提案だったのでは。向こうから言ってきたことではあったが)
(とはいえ、心に少しは余裕のできた身だ。相槌を打ちながら、ルフスさんの言葉をしっかりと聞く)

……むぅ。悩みというか、質問ッスね。途方もなさすぎて、やっぱりアタシではうまく答えられないかも……。
(とはいえ、言われたとおり静佳は保健委員だ。そしてその喩えを出されたら……)

……うーん。一時的に治療する方法が見つかったなら、それは治療したい。収まるのが一時的だとしてもね。
ただし、それはその人の……ルフスさんの、同意を得てから。ルフスさんもそれを治したいと思っているなら、治す。
そして、これも同意が得られればだけど、根治できる方法は精一杯探す。治せないってのが覆せないルールであったとしても、探す。
なんせ、異能者にあふれる世の中になってきたからね。そういう方法も実はあるかも知れない。

……でも、大事なのは、そのウィルスを持った本人の意思。
ルフスさんが治療を拒むなら、もうそれは放っておく。たとえ悲劇的な結果になるとしてもね。誰かの意思を無視しての医療行為は、アタシは認めたくない。
ただ、その気持ちを変えられるような努力はするよ。できるかどうかはともかく、ね。

どうかな。答えになってるかな……?(真顔で、そう尋ねる。自信はなさそうだ)

ルフス・ドラコ > 伏せていた目を、少しだけ上げて。
結局はずっと目を合わせていることが出来なくて、また目線を逸らした。

「……やっぱり、貴方は怖い人だと思います」
「何よりも、それが答えです。」
震えかかっていた拳を握って、手のひらに爪を立てる。
肉に爪を押しこむ感触、さっき黙らせていた本能の力を借りる。
血が滲んで、滴り始めるのと同じ頃に、ようやくもう一度口を開いた。

「だって、明確な答えがあるじゃないですか。
この質問には、最初から一つだけ、簡単な論理と筋道があるんです。」
「それを、最初から視点を変えて見過ごしてるんです、静佳さんは。」
最初に視点を変えたのはルフスの方だ。
ずっと自分が抱え続けてきた問題を、相手に合わせた喩え話にすることで。
厄介にも背負い込んでしまった運命を、なんとかして終わらせるしか無いと思っていた因果を、ウィルスという形に落としこむことで。

「ウィルスを治した後に、私が死ねば世界人口は減らないままですよ」
だけれども、その答えによって、
本当は治ってほしいと、そう思っているのだと。
……治療を拒んでいるのは自分の意志だと。
気付かされるのが恐ろしくてたまらなかった。

鈴成静佳 > ………ッ!!

(「怖い人」という感想に、目が丸く見開かれる。そして、続く言葉には、息が止まりそうなほどの嫌悪感を覚えた)
(肺をぎゅっと掴まれたような。背骨が凍っていくような)
(思わず腕に力が入り、腰を浮かせそうになる。しかし脚が震える。立ち上がれない。昨日と同じように……)

……な、何を言ってんのよ! アタシ、視点なんて変えてないッスよ!
「私が死ねば」なんて、そんな選択肢、ハナッからあるわけないじゃない!
(張り上げた声が、鐘のように夏空に響く)
そんなの、そんな選択肢、人類が滅ぶ以上に、ありえない選択肢ッスよ……!
なんで、その人が死ななきゃいけないんスか!
(もはやこのたとえ話の主体は「その人」であって、「ルフスさん」ではない。そうであることすら、静佳にとっては論理の外だ)

保健委員として、いや、一人の人間として。そんな選択肢は絶対にとらせないッスよ。
「世界の人口は減らない」? 嘘をつかないで。減ってるじゃない、1人。それじゃダメなの!
生きるの。生きて、楽しい思い出をいっぱい作るの。そうじゃなきゃダメなの! 誰かの「選択」によって誰かが死ぬのなんて、そんなこと……許せるわけ……。

ウッ……ぐ……。
(目に手を当て、嗚咽する静佳)
(思わず感情的に言い放ってしまった。これによって、「怖い人」という印象が確固たるものになってしまったとしても、もう構わない)
(誰かの、あるいは自分の命を奪う選択肢、それを否定できるならば……)

ルフス・ドラコ > 「火よ」
下げた視線は、溢れて滴る血液にたどり着いて。
「……服せ」
赤龍の血液は水よりも火に近い。
容易く火が着き、掌の傷跡まで細く炎が燃え上がった。

「生きていていいんじゃないか、なんて」
「私のようなのにまで思わせてはいけないんです」
薄く開いた目が、炎を映して紅く輝く。
再び声を出す為に唇が動いて、ぞろりと並んだ牙が見えたような気がした。
「その人が死ななければならないのは」
「自分よりも世界のことが好きだからですよ」
「生きている限り、ずっと、静佳さんのような人がいる世界を脅かすなら。
自分が消えたほうがいいから。」

傷跡を塞いで、炎が消える。
焼ききったわけでもなく、ただ炎が同化するようにして、傷は癒えていた。
「……もしくは、ただ。ただ生きているだけでも自らの選択で他人を傷つけるなら。」
もう燃えるものもないのに。
まだ夕暮れには早過ぎるのに、真っ赤な瞳がもう一度静佳を見ていた。
爪を突き立てて、四肢を引き裂いて、その血で喉を潤し、その肉で飢えを癒やそうとする眼。

「私は、貴方にはきっと許されないでしょうね」
手を伸ばしても届かないから、ただ下ろすしか無かった。

鈴成静佳 > ……………。
(滴る血が赤く発火して、手の傷を癒やし……いや、埋めていく様子を、震える瞳で見つめる。涙が伝う)

……………。

(言葉が出ない)
(自分の死を望むことが傲慢・短絡的であるとするなら、他人の生を望む自分の意思すら、傲慢であるといえようか)
(ましてや、「世界が好きだから、世界のために消える」などという言葉。殺し文句に近い)
(好きという感情を、静佳は止めることはできないのだ)
(そんな理由で自分に害が及ぶのならばともかく、「一般的に見れば善」ととれる選択肢を取ろうとする者を止める術など……)
(でも……)

………うん……許さないッスよ。
(ずびっ、と鼻をすすりながら、震えた声で言う)
保健委員として、許さないッス。
アタシはさっきの答えで、「その人が望むなら」っていう条件をつけた。
その人が生きるのを拒むなら、その意思は尊重する。でも、許さない。
きっとその選択は、人や人類を救っても、違う形の「傷」になって、どこかに残ると思うから。
アタシはきっとそれを恨むよ。許さないよ。

だから、さ。アタシはもう「生きて」なんて傲慢なことは言わない。
でも、考えて。よりよくなる方法を。あきらめないで、最後まで。可能性を捨てずに。
お願い……お願いだから……。
(赤龍の瞳と威厳に見据えられたまま、静佳はうずくまって再び嗚咽する。その姿は弱々しい……)

ルフス・ドラコ > 「そうですか。許されない、か。それは困るでしょうね」
「アエラ姫様も、ジリアンさんも、オルさんも、ジャニーハ様も、みんな許してくれないので……
許されないのは……ゴメンなんです」

獅堂日成美でなくなってから、赤龍になってから。
強大で破滅的な運命が自分のものだったことになってから。
かつての世界で共に歩んだ人々の記憶は、全て赤龍が食い殺す瞬間の様となっていて。
何を思い出そうとしても、手を下す瞬間の怨嗟しかもう思い出せない。

「だったら今までの『傷』は、私が覚えておきますから。」
身を捧げても、ただ赤龍を打ち倒してほしいと、そう言った…あの世界の人々の思い出の分。
ルフス・ドラコは、その最後の幕引き。
我が身を捨ててでも、赤龍を討滅したあの瞬間のアンコール。

「静佳さんは、私のことを覚えててくれますか。」
「私の名前は獅堂日成美。どうしようもない出来事に巻き込まれて、
最近こっちの世界に帰ってきた、ただの17才。」
「……もしも、そうやって名乗れる時が来たら、一緒に、楽しいコトとか、好きなことをしてくれますか?」

少女は一歩を踏み出して、うずくまる静佳に手を差し伸べた。
瞳はまだ赤く揺らめいていたけれど、多分それは、彼女も泣いているからだ。

「ほんとに、ホントのホントに…私も、諦めなくていいんですか?」

鈴成静佳 > 当たり前でしょう!!
(顔を振り上げ、再び、鐘のような声で叫ぶ)

当たり前じゃない。忘れるわけもないし、楽しいこともいっぱいしたいし……諦める必要もない。いや、諦めちゃダメ。
たとえ、どうしようもない出来事、どうしようもない状況だったとしても……。

(いま言っている言葉は、とんでもなく無責任だと思う。自覚はある)
(でも、諦めろなどと言うよりはずっと、ずっと、力のある無責任。前を向かせたい。生きることは楽しいことだって、思わせたい)
(楽しいことを見つける可能性を、奪ったり奪わせたり、そんなことはしたくない)

獅堂……日成美さん。
いまそれを名乗れないなら、ルフス・ドラコ……赤い龍……それでもいいから。
(陽子さんの言っていたその名を思い出す)
傷つける運命だったとしても、アタシは逃げない。保健委員だから。
友達でいたい。お互いに覚え合って、楽しいことをして、そして、諦めない。

ね、いいでしょ……?(泣きはらした赤い目のまま、頬に笑みを浮かべ、手を差し伸べる少女を見つめる)
(手を取る……)

ルフス・ドラコ > 「うん……静佳さん、ありがと。」
頷くと、瞳に溜まっていた涙がこぼれたけれど。
繋いだ手を離さないまま、もう片方の手で拭った。

「私も、諦めません。きっとなんとかしてみせます。なんとかなります。
…そうですよね?」
おそらくは手を引っ張って静佳さんを立たせて、
ようやく来た夕暮れに、また体を赤く染めながら。
「私が私でいる間、もしも貴方を傷つけずに居られたなら。
…ううん、もしかすると傷つけるかもしれないけれど。
友達でいましょう、ずっと。終わりなんか来ないように。」

今度こそ、彼女を傷つけないで済むように、全力で自分の中の龍を押さえながら階段へ向かって歩き出すだろう。

鈴成静佳 > (引き起こされ、立ち上がる。ポンポン、とお尻の埃を払い)
……そう、なんとかなる。そう思ってればきっとなんとかなるし、思ってなければきっとなんともならない。
なんでも気の持ちようッスよ。だから、アタシは何があっても前向きに生きる。
みんなにもそうあってほしいな、って思うんスよ。

だから、ルフスさんとのお付き合いもきっと上手くいく。傷つくことなく。
傷ついても、そのこともきっといい思い出になる。そうアタシは思うッスよ。
……根拠はないけどね。アハハー……。

(この娘の「真の能力」、傷つける力など、静佳は知らない。でも、それでも)
(うまくいくと思えばうまくいく。それでうまくやってきた。できればこれからもそうであってほしい)

(涙を拭い、いつもの陽気さを取り戻した静佳は、ルフスさんの横に並び、寮へと帰っていった……)

ご案内:「大時計塔」から鈴成静佳さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」からルフス・ドラコさんが去りました。