2017/03/26 のログ
■イチゴウ > 「おお。流石勘が鋭いね。言われる通り
新武装のテストだよ。
丁度あそこから飛んでくる形になるね。」
イチゴウは南の空高くを前右足で指しながら
そう答える。正直新武装のテストを風紀とは
関係ない人物がいる中でやっていいかという
問題もあるがイチゴウは全く気にしていない。
そして消失した重機関銃を見て何やら考えている
黒龍に対して
「それと・・・ああ。背中のMGが消えたタネね。
前まではぶっ壊れてて使えなかったんだけど
いわゆる余剰空間に収納しているんだよ。
あれだ。超ひも理論とか聞いた事ない?
ボクはわかんないけどな。
因みにこの空間には重機関銃だけじゃなくて
色んな武装がしまってある。
重機関銃以外ほとんど使わんけど。
いや使う機会が無いという方が正しいかな。」
イチゴウは分かりにくい解説を終えると
今度は黒龍に対して
「そういや黒龍は何か用があって
ここに来たのか?」
何かをしようというわけではないが
ここに来た理由を尋ねてみる。
■黒龍 > 「……あン?何を飛んでこさせる気だお前は」
南の空を器用に前右足で指差すイチゴウに、胡乱げな顔をしつつもそちらの方角を一瞥して。
ちなみに、男も男で暇潰しに見学する気満々であったりする。
「…あーこっちの理論とかはまだそんな詳しくねぇからなぁ。俺、異邦人だし。
一種の別空間に収納してるっつぅ認識でいいんだろ?俺も同じような術式使うしな。」
少なくとも、武装などを仕舞い込んでいる、という点では彼と同じようなものか。
とはいえ、まだイチゴウの前で男は武器らしい武器を使った事は無いが。
「使う機会ねぇ…まぁ、よっぽどヤバい相手か手強い相手にしか使えねーって事か」
普通の人間には重機関銃を掃射されるだけでもミンチになりかねないからしょうがない。
彼の質問には、「いんや、ちょいと考え事をな。気分転換も兼ねて」と肩を竦めてみせる。
あまり、自身の現状とかをペラペラ喋るのも流石に問題がある…特に義手の中身の方が。
■イチゴウ > 「まあ、見てりゃわかるって。」
イチゴウは意地の悪い笑みのようなものを
含んだ口調で黒龍の問いに答える。
それと同時にイチゴウは数秒間
転移荒野の方を凝視する。
ーーHMT-15>>>Longinus
座標送信完了、発射シーケンス開始。
数秒間凝視した後に黒龍の方に振り向いて
「何だ?キミもやっているのか空間収納。
人類にとっては超最先端の技術らしいけど
この島じゃわりと常識なのか?」
イチゴウは自分も出来るという黒龍に対して
不思議そうに言葉を飛ばす。
そしてワンテンポ置いてから
不意に黒龍の義手の方に目を向ける。
「(そういえばあれはスラムの時のヤツかな。
何か妙なんだよな。)」
イチゴウは頭の中で考えを巡らす。
義手の方を見ながらなおかつ顔を傾けてしまってるので
何かを考えているというのはモロバレである。
■黒龍 > 「……あン?何を言って――……!」
フと、南の空…”その更に上”、空の彼方をサングラス越しに凝視した。
彼の世界では流石に衛星という概念が無かった為、ソレが何かまでは判断できない。
…が、”上から何かが来る”というのは察したらしい。異様な勘の鋭さである。
「ん?ああ、そういう術式があるんだよ。正確には俺の使うのは2種類あるけどな。
一つは別空間に物とか武器を仕舞い込んで置く空間収納術式。もう一つはまぁ企業秘密だ。
ちなみに、この島でそういう術式が浸透してるのかまでは俺は知らんぞ。」
と、わざとらしく肩を竦めてみせる。別に隠すほどでもないが…。
もし、”彼と戦う”可能性が出た場合に備えて札は伏せておくに限る。
義手に関しては、彼も知る少女…ファウラが製作したのをこちらが装着した場面を彼も見ているだろう。
あの時、”偶々”彼も落第街に通報を受けて出動してきたのだから。
なので、義手そのものは高性能だがそれ自体は別に知られても問題無いのだ。
(……あー仕草で分かるっつぅか露骨に疑問そうだな。…流石に魔導書の件は暴露出来ねーが…)
■イチゴウ > 「さあ。ショータイムの始まりだ。」
イチゴウは無機質にそう呟いていると南方の空から
空気を切り裂いているような音と共に
まばゆい光の帯が転移荒野の方へと落ちていく。
ーーロッド大気圏を突破、弾道再計算、
第2ブースターに点火。
光が落ちるだろう地点は
ここから数十キロとかなり離れているものの
間もなく転移荒野の方角から焼けるような光が
発される。そこから少し遅れてあり得ないような
大きさの轟音と衝撃波が時計塔を揺さぶり
ガラスを容易く割り時計台を構成している
建築材の一部を吹き飛ばす。
はるか遠くでの弾着にも関わらず吹き飛ばされた
砂によって砂嵐が発生し
しばらく時計台を包み込みほぼ何も見えなくなる。
砂嵐が晴れれば転移荒野の一部にぽっかり
巨大な穴が開いている事が確認できるだろう。
■黒龍 > 「……何やらかす気だお前は…」
と、一度ジト目でイチゴウを眺めるも、直ぐに溜息と共に南の空を見上げる。
突如、空気を切り裂くような音と共に光の帯のようなそれが彼方に落ちていく。…あっちは転移荒野の方角だ。
「…って、オイ待て。これ絶対お前上司とかに許可取らないとマズい奴だろ…!」
と、ツッコミを入れつつ、焼けるような光はサングラスもしていたのでそこは問題ない。一応魔術でもシールドを張っておくが。
更に、遅れてやって来た轟音と衝撃波も危なげなくやり過ごしてから一息。
改めて転移荒野の方を眺めれば…砂嵐の去ったそこ。巨大な穴が空いてるのが見えた。
魔術で視力強化を施している上に、元々目がいいのでその惨状がよく分かる。アレはクレーターというヤツではなかろうか。
(……場所が荒野だからまだいいが、これ…過剰火力じゃねーか?使いどころが基本大型のヤバい奴しか無さそうだな…)
と、そんな感想を抱きつつも肩を竦めてこう言おう。
「……原理まではよく分からんが、まず基本使っちゃ駄目なヤツだろこれ」
■イチゴウ > 砂嵐が晴れたあとに
イチゴウは黒龍の方を向いて
「大丈夫大丈夫。風紀に許可を取った上での
実験だから。それに転移荒野はクソ広い上に
いつのまにか直ってたりするから武装試験に
持ってこいなんだよ。」
イチゴウは全く焦らずにそういった後に
「それと・・・今の兵器は風紀からは
”ロンギヌスの槍”とかなんだかで呼ばれてる。
人工衛星によって宇宙からデカい杭を撃ちだすもので8発連続して撃てるね。
まあ言われる通り戦略級の装備で
これから使う機会があるのかさえもわからない。
1発で都市を一個丸々吹き飛ばしちまうからな。
まあ巨大な龍とか世界危機レベルの敵くらいにしか
用途がないだろうねえ。今日は非常にレアなもんを
見れたな。」
最後の言葉はハッハと笑いながらイチゴウは
黒龍に解説する。
そして不意に小声で
「(面制圧力が高すぎるんだよなコレ。
”点”でエネルギー量がコレ並みの
あっちの機能の方が実用性があるな。
ただあっちは機械的に怖いんだよな。)」
聞こえるかどうかわからない独り言をつぶやく。
■黒龍 > 「当たり前だバカ野郎。許可無しであんなモンをぶっ放せる訳ねーだろ…。
つーか、普通にテロ犯か災害撒き散らすアレな奴にしかならねぇよ。」
溜息と共に煙草を吹かす。異邦人の己の方が常識的な言動を口にするというのもアレだが。
まぁ、風紀の上の方が許可は出してるようだし、部外者の己がこれ以上どうこうは言わないが。
「…人工衛星っつーのがそもそも分からん。宇宙はまぁ何とか分かるが。
俺の居た世界にも機械文明はあったが、流石に宙(そら)までは進出してねーからなぁ。
…ってか、都市を一つ丸々吹き飛ばすとか、それこそただの災厄の類だわなソレ」
ロンギヌスの槍、という名称らしいがまぁこの島に居て今のような試射以外で使う事はまず無いだろう。
そもそも、使える場所がまず限られる。海上か荒野でない限りはそもそも”使いたくても使えない”だろう。
「……おい、まだ隠し玉あんのかよ…この世界の機械文明もぶっ飛んでやがるな」
そして、五感が鋭いので普通に聞こえていたらしい。やれやれ、と何度目かの溜息と共にそう呟くように。
(そもそも、ロンギヌスの槍がな…巨大な龍とかモロに俺は該当すんだが…)
■イチゴウ > 「まあこの兵器を提案したのは紛れもない
ボクなんだけどこんなオーバースケールな
兵器の整備を風紀がやってくれるなんて
正直驚いてるんだよ。もしかしたらお偉いさん達は
いざとなったら怪異とかと称して
違反部活ごとスラムを丸々消すつもりなのかね?」
お偉いさんのくだりは皮肉を込めて
ジョークっぽく呟く。
「というか今更だがキミは異世界人なのか。」
独り言を聞かれていたという事は
全く気にせずに話を進める。
ご案内:「大時計塔」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 「…この島のお偉いさんもテメーも頭のネジ飛んでるんじゃねぇか?…ったく」
スラムを消す、という彼の言葉には「それはねぇだろうな」と心の中で呟く。
落第街で基本生活しているのでなんとなくわかるが、あの場所はおそらく”必要悪”の場所だ。
故に、まず消される事は無いだろう…そもそも、本気であそこを潰すならもっと早くやっている筈だ。
(……この世界も色々とアレだな…ったくよ)
内心で愚痴っぽく零しつつも、イチゴウからの今更の質問にオイオイ、と呆れたように。
「異邦人なんて別にこの島じゃ珍しくもねーだろうよ。つーか、お前高性能ぽいんだから、そういう判別機能ねーのか?」
とはいえ、素性までは流石に喋らないが。余計な厄介事の種を撒きたくは無い。
まぁ、既にあちらから只者ではない程度の認識はされていそうではあるが。
ご案内:「大時計塔」に黒龍さんが現れました。
■イチゴウ > 「いや、魔力や異能は探知できるから
人間かそうじゃないかの判断はできるんだけど
流石に異世界人の判別は出来ないなあ。
大変容が起きてから魔術とか異能は
この世界でもありふれているからね。
まあ、この世界に無いものからの間接的な判断は
出来るかもしれないけどな。」
イチゴウは呆れた様子の黒龍の問いに対し
難しい顔でそう返す。
そして思い出したかのように
気まぐれで黒龍をもう一度スキャンしてみると
「ん?」
黒龍から2つの異常パターンが検出された時に
イチゴウが何かの異変に気づいた。
一つ目のパターンは魔術。それも非常に強力な
規模である。これは前からは確認されており
問題なのは二つ目のパターンである。
規模は全く不明だがこのパターンは
俗にいく”異能”と言われるものである。
これは前には確認できなかった。
「キミ・・・何か新しい力でも持ったか?」
イチゴウは頭を少し傾けて黒龍にそう尋ねる。
■黒龍 > 「それでも、元からこの世界に住んでるヤツと俺ら異邦人では、多少の差異がどうしても滲み出る気がするがね…。まぁ、溶け込んでるならそれはそれでいいのかもしれねーが…。」
と、言いつつ内心でこりゃマズいな、と呟く。魔力や異能を探知出来る、というのがマズい。
(…魔術についてはまぁ、いいとして異能の方がな…永井にも迷惑掛けらんねーし…)
そして、イチゴウからの質問には「ああ、やっぱ尋ねられるよなそりゃ」と、思いながらも。
「ん?異能なんて俺は持ってねーぞ?元の世界に異能持ちは居たが希少だったしな。生憎と俺は異能は使えない魔術方面オンリーだぜ。」
そして、ごく自然にナチュラルに惚けてみせる。無論スキャンされている以上は嘘だとバレバレかもだが。
(まぁ、そもそも異能が目覚めたらしいってだけでどんな力かは俺自身も把握してねーしな)
なので、ひたすら追求されない限りは惚ける方針で行こうと決めた。
腹芸は苦手だが、何時もの調子でサラリと嘘を吐く程度は余裕でこなせる。
(それに…バレたらマズいのは異能より魔導書の力を義手に取り込んじまってる事の方だしな)
色々あったとはいえ、不可抗力でも禁書庫の魔導書を一冊台無しにしたのだからバレたら洒落にならない。
それで風紀に変に目をつけられても困るのだ。そこだけは異能よりも完全に秘匿しておきたい所だ。
ご案内:「大時計塔」に黒龍さんが現れました。
■イチゴウ > 「その多少の差異は機械的なスキャンが
効かないからねえ。どうしても考えて判断しないと
いけないんだ。」
異世界人かどうかを直接判断する機能が無いという
事に心底面倒くさそうな様子でそう呟く。
そして異能を持っているという事を指摘すると
この男がとぼけだした。
単純に異能が目覚めている事を知らないのか?
いや、黒龍ほどの男が自身の力の変化に気づけない
馬鹿であるはずがない。
おそらくは・・・
「何か話せない事情があるのか?
だったらこれ以上の追求はやめておくよ。」
イチゴウはこの件からは素直に手を退くことにした
それこそ無関係な自分が突っ込む話題でもないだろう。
そんな事を考えながら
イチゴウは視覚情報にある時計に気を配る。
「ボクはそろそろ戻るつもりなんだが・・・
最後にちょっと聞きたい事があるんだ。
キミは落第街周りでよく行動してるよな?
なら最近スラムで暗躍してる暗殺者の話を
聞いた事は無いか?もし情報提供してくれんなら
風紀からの目は優しくなるだろうね
余程極端な事をしない限り。」
イチゴウは今自身が調査中の案件に関する質問を
する。勿論裏の人間に対する情報提供には
見返りが付き物でその条件も提示しつつ。
■黒龍 > 「そりゃ、何でも分析できたら苦労はねぇわな…」
むしろ、そんな力があるならもっと大きな事に使うか、権力者に利用されるだろう。
この世界の全てを分析するなんて、流石にスケールがデカ過ぎる。
…そういう輩が居てもおかしくない島ではあるが。
「ん?事情なんてねーぜ?どっちみち俺ぁ魔術しか使えねーよ」
と、彼が手を引いてくれたのは素直に有難いが、表面上は徹底的に惚けておいた。
どのみち、異能があるらしいと当たりは付けられている時点であまり意味は無いのだが。
「…あぁ?何だそりゃ取引の類か?あそこで暗殺者なんて割とゴロゴロ居るだろ…そういう場所だしな。
生憎、そういう輩と接点は欠片もねーから提供できる情報がそもそもねーな…」
と、肩を竦めてみせる。何人か裏で名の通った暗殺者の情報は耳に届いている。
…が、流石に確証も無いのでそう切り返すしかない。
(…つーか、暗殺者云々を聞いてくるってこたぁそいつ等は風紀委員に目を付けられてるって事か)
だが、落第街やスラムに暗殺者やヒットマン的なのはそれこそピンからキリまで居るのも事実だ。
彼が具体的に誰を目当てに調査しているのかは知らないが。
「まぁ、そんな訳で俺もそろそろ引き上げるわ。残念だが情報提供は他を当たった方がいいと思うぜ」
そして、「じゃーな」と右手を振ってから、トンッ、と後ろに飛んで時計塔から飛び降りた。
そのまま落下していくが、地面に叩き付けれることはなく…フワリと着地。
そのまま、煙草を咥えつつ一足先にその場を後にするだろう。
ご案内:「大時計塔」から黒龍さんが去りました。
■イチゴウ > 「ふむ・・・情報は得られなかったか。」
時計台から飛び降りる黒龍の姿を
確認すると共にため息と共に呟く。
「・・・それにただの暗殺者ならこんな調査任務
回ってこないんだがな。」
黒龍が残した言葉に誰に言う訳でもなく
イチゴウは一人で呟く。
普通暗殺者の調査は刑事課がやる事だろう。
それが特別攻撃課、それも裏側の自分に
回ってくるという事は対象が
とんでもない奴である事は間違いないだろう。
そうこう考えながらイチゴウは
時計台の屋上から階段を下りていく。
ご案内:「大時計塔」からイチゴウさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に楊柳一見さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」から楊柳一見さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に楊柳一見さんが現れました。
■楊柳一見 > 本日晴天。風波平らか。
折りしも時候は、門出の花薫る卒業シーズンである。
「そんなタイミングで転入とかさあ――」
――おもっクソ目立つんスけど。
毒づいてやりたくとも、その然るべき相手がいない。
いていい道理もないけれど。
禰宜坊主共の出る幕なんぞ学舎にはない。
寝とぼけた風な視線を、見晴るかす大ホールの方へ巡らせた。
人影とそうでない影とが群れ成して渾然と、門出の式場へ吸い込まれて行くのが見える。
「……まあ壮観だこって」
――百鬼夜行、とか言ったらボコられるかなあ。
なんて埒もない思考。
■楊柳一見 > 相変わらず見慣れる気のしない群れを流し見つつ、陽光から逃れるように壁へ身を預けた。
「……まあ、大将の魂胆は分かってんだけどねえ」
どうせ欲深い本部の連中のこと。
卒業生にも攫う目星を付けておけ、なんて腹積もりなのだろう。
それに唯唯諾諾と従うかは――まあ、この距離感から察して欲しい。
ホールへ向かう影の形こそおぼろげながら、人相や面体なんてこれっぽっちも判然としない。
こちとら千里眼持ちでもないんだ――。
「くあ――」
その上大口開けての大あくびである。
やる気なんぞねえ、と文字通り体現している有様。
だって朝早かったんだよ。
■楊柳一見 > 「朝も早けりゃ出足も早かったしなあ、畜生」
視線を今度は商店街から歓楽街へかけて、何度か往来させる。
まあやっぱり何があるか、なんて分かりゃしないのだけど。
眠たげな目にも、幾らか年相応の輝きって奴が舞い戻った――気がしなくもない。
――地元に比べりゃ…いや、比べんのも失礼か。田舎だったし。
――どっから見て回るかなあ。やっべえなあ。お上りさんだなあアタシ。
――そういや炊飯器すら置いてなかったよなあ、ウチ。
もくもくと取り留めもない思考をするうちに、便宜上の自宅の殺風景さを思い出した。
下手すれば壁紙すら貼ってなかったんじゃないかあの家。
「……どこのヒットマンやねん」
鬱々として思わずお国言葉が漏れた。
ツッコむ相手がちと欲しかったのも――まあ、風土病の一種だろう。
■楊柳一見 > ぐん、と屈伸一つして。
「ぃよっし」
ぱしんと両手で膝を打つ。
「まずはお米食べよう」
過程を飛ばして願望だけが口からまろび出た。
いやまずは炊飯器だろう。あと米屋も探して――
レンジでできちゃうパックのごはん? そんなもなぁ邪道だ。外道だ。
「にっぽんじんな~らぁ~、おこ~めた~べろ~♪」
頭の悪そうな歌を怪しい音律でほざきつつ、ゆらりと酔漢の如き足取りで一歩二歩。
踏み出す先は空の階。時計台上の縁。踏み締めるべき処なき虚空。
ふわりと宙を一蹴り――その所作が風を孕む。
少女の足一掻きでおおよそ生まれるべきでない風量。
出し抜けにつむじを巻く気流に、近場のカラスがぎゃあと喚いた。
■楊柳一見 > その小旋風を背で帆の如く受け、
「――ハイッ!」
だん、とまた一足。完全に中空へとその身を躍らせる。
自由落下の態の身は、しかし加速から生み出される不可思議の風力をしかと享け――さながらムササビの如くに空を滑るに至った。
「……まーだ風の練りが甘いかなあ」
割かし地表近くだったのは秘密である。
冷や汗も見る者なければかき放題だ。テリブルテリブル。
「おおう――」
若干ふらつきながらも着地した後は、そそくさとその場から退散しよう。
こわーい人――ヒトじゃないかも知れないが――に見つかる前に、ねっ!
ご案内:「大時計塔」から楊柳一見さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
■櫛鉈 蛟 > 久々に風紀委員会から呼び出しを食らった……まぁ、珍しい事でもない、男にとっては。
そのまま帰るのも味気ないので、フラリとちょい久しぶりに立ち寄ったのがこの無駄に立派な大時計塔だ。
結構長時間拘束されていた為か、聊か欠伸を噛み殺しながら長い階段を登り終えて到着。
「ったく、高さも高さだから相変わらず長い階段だよなぁ、地味に…っと。おぉ、やっぱ眺め良いわなぁ」
真っ赤なロングコートの裾を靡かせながら外の景色なんぞ眺めてサングラス奥の赤い蛇眼を細める。
そういえば、まだ学生で風紀委員会に所属していた頃はこの場所には結構訪れたものだ。
「……んーむ、これで美女とか美少女が傍に居たらシチュエーション的には割りと良い感じなんだが」
残念だが今は男一人だけだ。侘しいねぇ、とか呟きながらゴソゴソと懐を探る。
取り出したのは煙草の箱。器用に片手で箱を開けて一本抜き出せば口に咥えよう。
そのまま、ジッポライターで先端に点火してからゆっくりと一服開始である。