2015/08/12 のログ
渡辺慧 > その、間の抜けた声。
疑問の声には答えず、シシシ。
といつもの変わった笑い声を漏らした。

そういう気分だったのだから、致し方ない。
そして、感謝とは、こっちが思うことが重要なのだ、と。
それらしき、それっぽく。なにやら意味の通らないことを思考して。

「なーる、ほど」
先程の思考ではないが。
それがなくとも、霧散したのも、また事実。――霧散しようとも、いつのまにかに。また集まってくるものなのも、否定はできないが。――

まぁしかし。
そういう意味では、その営業に、乗っていたのだ、ということだろう。

「初めてのお客さん、ってかい」
ちら、と見上げられたその表情に。
悪戯気な――幼い印象を受けそうな。――笑みで笑い返す。

「いいセールストークだったよ」
なんて嘯いて。

「安心してくれ」
「――アイスは、たまたま。今日偶然だから」
それこそ、適当なセリフ。仮に。もし、次に会うときに。
アイスを持っている確率は、もしかしたら天文学的なそれなのかもしれない。そも、次に会うのは季節が変わった時かもしれない。

まぁ。だからか、言える言葉なのだろうし。
そして、もし持っていなくても。

「お互いにね」
そう言って、去っていくその背中に。
日陰から、出ていく彼女を見ながら。

溶けそうになっていく、そのソフトクリームを、又一口。
口に含んだ。

ご案内:「学生通り」から春日 真央さんが去りました。
ご案内:「学生通り」にオリハさんが現れました。
渡辺慧 > 再び。
影になった、ビルの壁へ背中をもたれかける。

――暑い。
話をしている最中は、そうでもなかったそれが、余計に感じられる。
それとも、それも。彼女が言っていた異能の力だったりするのだろうか。

――そんなわけねーな。
と一人で苦笑して。

再び、その甘味に身を任せようとした時に。

ポトリ。となにか。
固形物のような、液体化した、何かが、地面に落ちた音。

首を傾げ。その。身を任せようとした甘味が。
無残な姿になっているのが。

大きくため息をついて。

「……しまらねぇなぁ」

と一人零した。

オリハ > 太陽が動き、ビルの影がその角度を少し変える。
窓の反射が移り変わり、暗所の増えたビルの下、スポットライトのように一角が照らされる。



ガリ
            ガリガリ


    ガリ
           ガリ



 ガイィィイ………ン

コンクリートに、爪を立てるようなスチールの音。



「……………何してるの?」


スポットライトの下に、至極不機嫌そうな表情をした金色の悪魔が居た。

―――いや、オリハが居た。

その手には1m弱の杭のようなもの。
羽根の周りには薄っすらと光る「剣」が数本浮かび、その間をまたキラキラと光る粒子が踊る。

『武装』している、と称して間違いのないオリハが、慧の前に現れた。

渡辺慧 > 仕方なさそうに。
それを見つめ、諦めた後……視線を、あげ。

――ようとした時。

聞こえる。聞こえるそれ。
何の音かは分からないが、なにか。……なんの音だろうか。
少なくとも。――気分が高揚する音ではないのは間違いないのだが。

――あげる。顔を上げる。
それを確認しなくてはいけない。少なくとも、今は。

上げて。そして、聞いて。

――見た。

――あ、なんかやばい。

頬を微妙にナガラひきつらせ。
何を不機嫌になっているか。――それを知るには少しばかり、毎度のことく。機微に疎い。
だからこそ、此処は。

「………………………………や、ぁ」
「オリハ」

「…………それ、危なくない?」

オリハ > 「い・ま・はぁ―――」


オリハの背後には、傷跡―――爪痕が、残っていた。
ギィン。と、手の”杭”が振るわれる度にコンクリートに刻まれる爪痕が増える。
奇妙な”杭”はその先端を灰色に剥げさせながら、コンクリを薄く刳り取る。


「私が、質問してるの。」


ね? と、不機嫌そうな顔のままに小首を傾げる。

質問で質問を返すな。 と、言外に語っていた。

渡辺慧 > 「ひぐ」

いや。なにか。
いつもと違う何かの圧力を感じる。――というか、武力。――
迫力あるなー……等とぼんやりと考えるだけの余裕というより、これは。
現実逃避に似ているのかもしれない。

答えるしかすべはなさそうだが。
いや、別に答えるのは構わないし――それによって何が起こるかはよくわからないが。
と、言っても。なにをしていたか……と言われると。

「…………えー、と」
「……ここで会った子とだべってた?」

ぐらいしか思いつかないのだが。
――やっぱり、よくわからない。

オリハ > 「へぇ。」

眉間の皺が増え、同時に慧の1m先の床に爪痕が付く。



「私がこんなに悲しい思いをしている時に、慧君はのんびりお喋りしてたんだ。」


トン、と慧と向かい合うようにビルへ背をもたれかける。

「ね、それ女の子?」


ニコ。 と、笑みを見せる。

渡辺慧 > 「……?」
悲しい思い……というとなんだろうか。
確かに今自分も、アイスを落として悲しい思いをしてるが。

「…………いやそれ初めて知ったし仕方なくない?」
「いや、なんかごめん……?」

……こういう場合、どういう対応すればいいのだろうか?
分からない、というかなぜ自分は武力を向けられているのだ……?

「ん。……うん? そーだけど」
一挙一動が緊張感にまみれているかのような感覚があるが。
実に言葉はお気楽に紡がれる辺り。
それにどんな意味合いがあるというんだろうか……。
等とぼやきに似た言葉は、まるで出せない。

オリハ > 「……………。」

慧の言葉はまさしく「お気楽」だった。
オリハの怒りと悲しみは確かに演技ではなく本物で。

それと同じように、慧の困惑も本物だった。


―――結局、剣呑な雰囲気を滲ませて居たが大きく溜息を付くとズルリ。とビルを背にしたまま座り込む。

「慧君って、オトメゴコロとかわかんないよね。一生。」

笑顔でもなく、不機嫌そうな顔でもなく。
……どこか、拗ねたような表情で口を尖らせる。

「お友達のお見舞いに行こうと思えば追い返されるし、偶然あった慧君は女の子とお喋りしてるし……


 ―――ああもう!またイライラしてきたっ!! ……ハァ」

百面相という言葉が正しく当てはまる様子で、最後はため息を付いて体育ずわりの膝に頭をうずめる。


「……前に言った「用意」。もう、してくれた?」


俯いたまま。再び話が飛ぶ。
―――飛んだ先は、さらに慧にとっては当惑する内容だったが。

渡辺慧 > ……。
「……んー……」

確かに。自分は、機微に疎い。――今みたいに、何かしてしまったのかもしれない。
彼女が不機嫌である、というならば。恐らく、それは自分の何かが原因なのだ。

何を喋るでもなく。
何を言うでもなく。

その落ち込んだ、様子すら見せるなにかは。
ひどく、自分の気になるそれだった。
だから、その顔を埋めた様子の、彼女の隣に近寄って。――と、言っても。多少、少しばかり。距離があるのだが。――

そこに胡坐をかいて座り込み。
「……こーいう場合ってさー。分かってないのに謝られると腹が立つんだっけ」
それを当人に聞きながら。

「……えっと、ごめん?」
それしか、今言う言葉が思いつかなかったのは、致し方ないとしてほしい。

「そんで。それも用意できてない」
「………………聞きたいこと聞いてから」

……その結果、用意するか、用意しないかは。
すでに決めてある、といえばある。

オリハ > 横に、トサリと腰を落とす音にぴくりと肩が動くけれど。それだけ。

『ごめん』という、自分で結果の予測を言いながらやっぱり言ってしまう。
間の抜けたセリフに、膝をさらにキュッと抱きかかえるけれど。それだけ。


そして『用意出来てない』という言葉を聞くと。


「私」

そして、俯いたまま。

「空回りなのかなぁ……。」

どこか、ほんの少しだけ。少しだけ泣きそうな声で、そう呟いた。


「聞きたいことって、なに?」

渡辺慧 > 何が空回りか、よくわからないし。
彼女の言っている言葉のその、それを、よくわからない。
何かを焦っているのか――ただ。
善意に、彼女なりの善意に過ぎないのか。

――そういえば。以前。
この隣に座る彼女の正体、について考えを進めたことはある。
だけれど、その時。――深く、それの動機について考えたことはなかったな、と。

「すげー簡単な事」
「君は、誰だい?」

泣きそうな声に。
つとめて柔らかく。
柔らかい声音で、言葉を紡いだ。

オリハ > 「貴方の事が好きな女の子」

柔らかい声に。
つとめて真面目に。
真面目な声音で、返事を返した。


「簡単な事だけど、それだけじゃあ貴方は絶対に捕まらないもの。」

顔を上げて、慧を見つめるその青い瞳は僅かに潤んでいて。

「ねぇ、どうしたら貴方の自由を貰えるのかしら?」

渡辺慧 > 「…………………………ん、へ?」

いや。その答えは、予想できなかったわけではないし。
そも、頼まれたものからして。――そういうことなのだろう、と。
だけど、それは。……この隣にいる彼女の、中にいる、誰かが。
気まぐれで。無邪気に。
なにか、彼女なりの何かをかなえようとしている、という風に捉えていた。
――いや、正直に言えば、今も、そうとらえている。

だけれど。ストレートに吐かれたそんなセリフには、動揺せざるを得ないのだ。

「……あげないよ」
「妖精さんが、何を考えてるか」
「それを聞くまでは」

――それを、聞いた後にも。
きっと。いや。“絶対に”あげることは出来ないけれど。
ずるい、と思いながらも。
それを言葉にしないのを、卑怯だと思いながらも。

今度こそ、自分のために。そう言った。

オリハ > 「諦めないよ」
「考えていることを受け取って、絶対に捨てさせてあげない。」

「――――恋心を持っていたのは、私が預かっている「檻葉」。」


距離を、少し詰める。


「妖精さんはね、小さな頃に約束したの。 夢見がちな女の子と、『一緒に遊ぼう』って。」


その微笑みは悪戯っぽく。

「『いつか、”愛の告白”をする時に背中を押してあげる』って、ね?」


それが


「約束が、私の"以前"の想い。」


そして


「今は、二人分の愛の告白になっちゃったけど。」


だから


「さっき言ったでしょう? 貴方が好きな女の子って。

 ――――それが全て。 私も、檻葉も。 貴方が好き。」


青い瞳に、慧が映り込む。

オリハ > 「………あ。」


その瞳が「黒」に、変わる。


「そろそろ、”時間切れ”なのかなぁ」


儚げな笑みを浮かべ、言葉と同時にオリハの姿が足先から粒子状に解けていく。




「……次に会う時、『返事』聞かせてね?」




幻のように、目前の少女が消えていく。

暑い夏の日。 ビルの隙間に、再び慧だけが残された――――。

ご案内:「学生通り」からオリハさんが去りました。
渡辺慧 > 「…………は」

口から。
渇いた何かが出る。
それは笑いなのか、なんなのか。
ただのもれでた空気の塊なのか。

捉えていたものは、違って。
想定していたものは、合っていた。

――だが、その。

捉えていたものが、どうしようもなく、楔、鎖。
何かわからない。ただ、ひどく重い何かに変わるのを感じ。


――――だけどッ!

それでも。…………どうしようもなく決まっているのだ。
そうしないと、思い出すから。

逃げているなにかに目を向けなくちゃいけないから。
ごめん、なんて。相手のことを何も、何も考えていないのに。
それなのに出る謝罪には、どれほどの意味があるのか。

「…………くそッ」
悪態をつき。……陽炎が見える、コンクリートに目線をやって――。

ご案内:「学生通り」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に蒼穹さんが現れました。
蒼穹 > (夏休み、路地。
時間は昼頃。太陽は空の頂点。要は暑い。
普通の人であれば、外に出るのも億劫になるくらいには暑い。
しかし、この辺りは、こんな日でも人通りは割と多い方だった。)

…。

(ふと、込み合った施設を見遣る。料理屋。
この時間帯であれば、食事だ食事だとああいう所に駆けこむような人も多いのではなかろうか。
だが、昼時に既になってしまったら、最早混雑は熾烈を極めていざ食事にありつける頃には大分時間が経過するのだが。)

どうしよう。

(で、今日のお昼御飯は如何しよう。勿論別に食べなくてもそこまで困るわけでもないのだが。
この頃一日三食に慣れてしまったし、何となく一食抜くのは気持ち悪い気がする。
この際軽く済ませてしまおうかと、思索に耽れば何処へとも行かぬ気紛れな足取りは次第に遅くなった。)

ご案内:「学生通り」に深雪さんが現れました。
深雪 > これまで、自分からこんな場所に足を踏み入れようとは思わなかった。
けれどこうして学生の街を見て回るのは、案外と、面白いとも感じる。
自分も、周囲も、何が変わったわけでもないのだが…

「……あら。」

…ふと見れば、そこにはいつも人入りの多い料理屋と、その前をふらふらと歩く友人の姿。
列に並ぶでもなく、そこから離れるでもない。
彼女の事だ、きっとまた、どうしようか悩んでいるのだろう。
声を掛けるかどうか迷いながら、近くへと歩み寄る。

「…うろうろしてても、お腹は膨れないわよ?」

蒼穹 > …お。やっほー、ミユキ。

(目が合った。…こんな所で珍しい。いや、何か目的でもあるのだろうか。
彼女がここにいることが、あまりにイメージに似つかわしくなかったので少し間が空いて。
それから、ひょいと片手をあげれば駆け足気味にそちらへと向かう。
概ね彼女の予想通り、昼食をどうしようかなんて考えていた次第だった。
さらに付け足すならどうしようかと悩んでどうどうめぐりしていたのもその通り。)

うん…そう、だね。
そうなんだけどさ…!あれ見てよ。並ぶ気になる?

(わたわたともどかし気に料理屋の方を指差す。
大繁盛とでも言うべき煩雑さがそこに。お昼時のよくある光景。
そういえば、彼女の方は結構な弱肉強食理念者だし、並ぶと言う事自体馴染がないのかもしれないのだが…どうだろうか。)

深雪 > ソラが指差した先の行列を見れば、くすくす、と笑った。
確かに、この少女が素直に列に並ぶとは思えない。

「ふふふ、貴女に頼まれても、絶対に嫌よ。」

それはもう、清々しいまでの拒否っぷりであった。

「どうしても食べたいなら…“お願い”したら順番を譲ってくれるんじゃなくて?」

楽しげに笑いながら…かつての少女ならそうしただろうことを言ってみる。
きっと、今のソラはそんなことはしないのだろうと内心に思いつつも、少しだけ挑発的な視線を向けた。

蒼穹 > だろうなぁ。
(そこはやっぱり、だろう。
変わらないプライドというか、そもそも彼女が例え食堂と言えど他の種族と食卓を共にする事さえ想像できない。
ただ、顔も顰めず笑いながら答えると言うのが何とも彼女らしい。)

あっはは、言いたい事は分かるけど。流石にここでやるのはなぁ。
(最早犯罪とか暴動の沙汰である。それは良くないとすぐにご遠慮。
緩く彼女の視線を半笑いで受け流しながら首を振る。さもそれが当然であるかのような素振りだった。
勿論、普通であればそれが当然なんだろう。…互い普通でないのは、互い理解しているが。
今になって思い当たれば…随分と平和的思考ではないか。
もう少し、互いに力があったその昔、同じ状況だったら同じ表情で彼女の言う事を実行していたに違いない。
行列を一瞥。それから彼女に向き直って。)
いや…やらないよ?やらないからね?そんな暴動みたいなこと。
(もう一度首を横に振った。尚、踊らされている事に気付くのはもう少し後。お約束かもしれない。)