2016/08/20 のログ
■影打 鈍 > そうか……。
ならば仕事の事は聞けんな……。
(がっかり。
あからさまに肩を落とす。
もし割りの良いまともなバイトを知っているなら紹介してもらおうと思ったのだが、当てが外れた。)
今すぐにと言うのは住居の関係でどうしようもないからな。
最短で週明けと言う事になるらしい。
(主から言われたスケジュール通りに進めばそう言うことになる。
そうしれば晴れて自分も学生だ。)
ああ、それはもう良い。
主を見つけたでな、血はもういらん。
必要になったとしても主から貰うよ。
■水月エニィ >
「……仕事なら入学手続きの際に色々やってみなさい。
身よりのない異邦人扱いなら奨学金や補助金が出る事もあるらしいわ。
場合や時期、ともすれば担当もよるでしょうけれど。」
少し前の知人を思い出しつつ、
記憶の断片からぼんやりと情報を引っ張り出す。
「住居の話もあると、確かにそうなるでしょうね。
……………ああ、なるほど。それで。」
諸々の疑問が腑に落ちる。
主を見つけた。それで満たされたのだろうか。
このように落ち着ている事も良く分かる。
無邪気で懐っこいなどの性格的な話ではなく、在り様の話だ。
良く分からなかった素直さも、人を斬って血を啜るその暴虐さも、
主の有無を置けばそれとなく理解が出来た。
エニィの観点としては、そのように捉えるものとなった。
(……羨ましいわね。)
その素振りに羨望を覚え、少しだけ見つめる。
■影打 鈍 > どうだろうなぁ。
身寄りは無いが、主が居る。
まぁ聞いては見るがな。
(ともあれ色々相談はして見ることにしよう。
もしかしたら仕事の斡旋とかもしてくれるかもしれない。)
主が男子寮住まいでなぁ。
今新居を探しておる。
その間私はやることが無いから仕事を探しているのだが、なかなか。
なんぞか無いか。
(身分が保証されていないから、では無く、それ以前の問題。
人を斬ることしか能のない刀が出来る仕事などそう多くはない。
彼女は遺産を食い潰していると言ったが、それでも自身よりはこの街に詳しいだろう。
何か仕事を知らないか、と尋ねてみて。)
――なんだ。
主はやらんぞ。
(なにやら羨望の眼差しで見られている。
自身のオモチャを欲しがっている者を見る目を返した。)
■水月エニィ >
「ええ。調べておいて損はないもの。
……男子寮。確かに貴方は男子寮に居られそうにはないわね。」
主は男性なのだろう。
彼女を部屋に連れ込む事は出来ない故に新居を探している。
そう察しを付ければ、納得したような口ぶりで零した。
……次の彼女の言葉を受ければ、自身の掌を自身のこめかみ辺りを強く押し付けて荒らす様に掻く。
「あ―もう、その位分かっているわよ……。
それにそもそもそう言うものじゃないもの。」
大きく溜息。
口調も大分乱れている。
■影打 鈍 > そうだな、礼を言う。
――まぁ、今はただのモノだ。
普通に部屋に居るがな。
(頭を下げておく。
そして今の自身と主の住居についても口にして。
そもそも本体は刀だ。
今は訳あって持ち出しているが、普段は部屋に置いてあるか、彼が持ち歩いている。
今の身体は出し入れ自由なので、出たい時だけ出て窓なりから外に出れば良いだけの話である。
セキュリティが厳しくない男子寮ならではの裏技だ。)
なんだどうした、腹でも減っているのか。
私は金を持ってないからメシはやれんぞ。
■水月エニィ >
「モノ……いえ、礼を云われる程のことはしていないわ。」
何処か消化しきれぬものを覚えつつも、
礼の言葉には落ち着かなさそうに謙遜めいたものを見せる。
「何でもないわ。負け犬には眩しく映っただけ。
と言うか貴女、するっとメシって言ったけど……普通の食事もするの?」
社会性と常識が身に付いた/付いているだけかもしれないものの、
なにせ初対面が初対面だ。だからこそ引っ掛かりを覚えてしまう。
■影打 鈍 > ――私は刀だぞ。
モノ以外になんと言えば良い。
(人ではない。
生きていると言えば生きているが、生き物ではない。
ならばモノと呼ぶのが一番正しいだろう。
モノと聞いて妙な態度になる彼女へ、そんな言葉を。)
負け犬、なぁ。
汝は生きているだろう。
死ななければ負けてはおらんと思うぞ。
――いや、私はメシは食えん。
私の食事は血とか精液とか、まぁ体液だな。
それと主からの魔力だけだ。
(負け犬、と自身を評する彼女になんとも言えぬ感覚。
勝ち負けの概念は考え方次第でどうとでもなる。
前向きになったほうが良いのではないか、と。
そして街中で割ととんでもない言葉を自然に発している。)
■水月エニィ >
「それは分かっているわ。
貴女の様なものをあまり見た事が無かっただけ。」
一際強く髪を掻いて気を晴らす。
「それはその通りだけど だからと言って納得は出来ないわね。
気の利いたとんちで収まる炎ではないみたい。」
理解は出来るが納得は出来ない。
確かに幾度も打ちのめされた記憶はあれど 死亡したような記憶はない。
負けたら殺されているだろうと言われれば、否定できる材料は浮かばない。
とは言ってもだ。それで自分の感情が満たされる事はない。それほどまでに根付いてしまっている。
とんでもない言葉はスルーする。
……何処かで言及されるだろうし、神秘儀礼的にはおかしくもない話。
ただ言うタイミングと場所は問題になる。
そっとしておきましょう。その様な意図から来る沈黙。
■影打 鈍 > こちらでもあまり無いのか。
その辺ウロウロしてるようなもんだと思ったが。
(聞く話では考え付く限りの異能や超常現象が集まる島であるらしい。
彼女が見たことが無いだけかもしれないが、あまり見たことが無いという言葉に意外そうな顔。)
だろうな。
この程度の答えで満足するようでは、そんな呪いのようなこびりつき方はするまい。
難儀なものだな。
(彼女の異能を知っている訳ではない。
ただ前回の立ち回り、するりと負け犬と言う言葉が出てきたところから、半ば呪いのような思考が読み取れただけだ。
それこそ考え方の問題だろう。)
■水月エニィ >
「ええ、あまり見ないわ。
強いて言うならアンドロイドのメイドさんぐらいよ。懸賞の。」
モノとしての矜持があるものは水月エニィにとってあまり馴染みがない。
記憶をたどって類似するようなものを思い返して告げ
た辺りで、端末に振動を覚える。
この振動はメールかアプリの通知の類だ。
「ちょっと失礼。」
断りを入れて取り出す。
差出人は――知人。いや、友人と呼んでよいのだろうか?
いずれにせよ、羽切 東華からの携帯端末購入報告だ。
少しだけ嬉しそうに口元を緩めてから再び仕舞う。
この場で返信を行うのは失礼のある話だから後にする。
「と、お待たせ。
……ええ。そうね。呪い、呪いはとてもしっくりくるわね。
この島に来てから、いえ、こうなってから随分と裕福な生活を送らせて貰っているけれど、
そうだとしても解けないし、薄れる事に不安すら覚える。負けたままで良い。
いえ、勝てなくて良い。そんな妥協をしてしまいそうだもの。」
底冷えするようなものはなく、熱の篭った強い口調で告げる。
呪いが原動力足りえる程には身に染みてしまっている。
■影打 鈍 > アンドロイドの――メイド。
男子の好きそうな響きだな。
――ハッ、メイド服を着て主をからかうのも面白そうだ。
どこか売ってるとこ知らんか!?
(本当にモノとしての矜持があるのだろうか。
彼女に断られば、無言で促す。
そうして取り出したものを見て思い出した。
そういえば自身も携帯を渡されたのだ。
何とはなしにポケットから取り出した。)
――そうだな、これは私の個人的な意見だが。
(手で携帯をくるくると弄びながらそう告げる。)
負けたままでも勝てなくても良いのではないか。
そう思うことは負けではないし、妥協ではなく適応だろう。
しかし汝はそれを妥協と感じるんだろう。
ならばもがくしかあるまい。
そこに落ち着いたならそれで良し、見事勝ち取れたならそれもまた良し。
そう言うもんだろ。
(本質は変わらないが、考え方は変わるものだ。
人であれば尚更。
ならばそれを受け入れるのもまた勝負なのだと思う。)
――して、ちょっとこのスマホの使い方を教えてもらいたいのだが。
複雑なものはようわからん。
■水月エニィ >
「それなら、歓楽街か商店街ね。
歓楽街の方が安いでしょうけど、しっかりした作りが好ければ商店街が良いでしょう。」
懐っこかったり、当然と云わんばかりにモノであると言ってみせたり。
かと思えば無邪気にはしゃぐ。
「後はそうね、異邦人街なんかにも売っている事もあるわ。
古風な作り・幻想的な作り……メイド服に限った話ではないけれど、珍しい服が欲しいならば異邦人街も手よ。」
子犬の忠犬。そんなフレーズが脳裏をよぎった。
とは言え、服についてはそれなりの情報はある。主武装が布で在る以上、その様な店も情報として抑えている。
とは言え隠すような情報でもない。折角だからと云わんばかりに心当たりを挙げた。
「多分、それではだめね。
勝ちたいと思うもの。あいつらにあいつらのルールで勝って、見返してやりたい。
妥協して誰にも認められず、独りぼっちで死んだように生きるだなんて真っ平だわ。
誰も居ない場所で誰かを呪いつづけるだけの生活なんて、もう嫌よ。
……何時か勝つ。それだけで生きてきたようなものだもの。」
確かに吐き出される熱意と呪い。
……それらは艶さを伴う恨み言として霊を引き寄せるものだ。
結果として、それらは気温の低下を齎す。
「ええ。……と言っても何を知りたいのかしら?
教えるのは構わないけれど、今日の所は絞っておかないと日が暮れるわよ。」
■影打 鈍 > ふむふむ。
主は童貞だからな、下手に凝ったものよりはスタンダードな奴の方が良いだろうな。
よし、あとから商店街を回って――金が無いんだったな。
(彼女の話を真剣に聞いて決めたらしい。
ガッツポーズまでしていざ、と意気込んだところで所持金がないことを思い出す。
思い切り肩を落として落ち込む。)
そうか。
では頑張れ。
(彼女の答えには短く。
何を言ったところで、自身は彼女ではない。
ならばそう言う以外に他無く、人ではない故のドライさ。)
んん、メールは分かったのだが、アドレス帳への登録が分からん。
良ければ汝の連絡先を入れるついでに教えてくれ。
(アドレス帳を呼び出し、彼女に渡す。
受け取れば画面を覗き込むように移動するだろう。
受け取らないなら画面を見せながら自分で操作するつもりだ。
アドレス帳に登録されている連絡先は一件のみ。
主である羽切 東華の名前だけ。)
■水月エニィ >
「……お金が無いからって追いはぎは駄目よ。」
苦笑交じりに軽口を叩く。
本心でもあるが、するとも思っていない。
短い答えを受ければ、奮い立つ様に口角を上げて笑む。
「ええ。がんばる。負け犬で有る事を負ける理由にするものですか。
忍耐は練達を、練達は希望を産む。……貴方の事だって、何時か見返してやるわよ。」
下手なものよりはそれで良い。
結局の所、頑張らなければどうにもならない事は理解している。
……決意は堅い。
「ま、それはさておきメールね。
アドレス帳は呼び出せるなら……って。」
彼女――鈍のアドレス帳には見覚えのある名前。
彼だったのかと思えば、暖かいようなものを視るような視線と共に口元を緩めた。
「主って彼なの。……ま、羽切さんなら安心ね。
落第街をさまようような人斬りに拾われなくて安心よ。」
スマートフォンは一旦受け取る。
彼女が見やすいような角度を付けて、ゆっくりと指を繰る。
「さて、アドレス帳への登録ね。方法はいくつかあるわ。大別して2つ。
一つは受信したメールや電話の情報を直接登録する方法。差出人とかね。
もう一つは、編集用のフォーマットを開いて登録する方法。
基本的には、この類なら右上か右下に……あった。右上にボタンが見えるでしょう。
そこを押してから連絡先の登録でいけるわ。私のアドレスでも登録してみる?」
■影打 鈍 > せんわ。
一度帰って主に貰う。
(自身の着るメイド服の金をせびると言うとんでもない妖刀娘。
しかし自分からすれば主のための衣装なのだから、金は主が出して当然とか思っている。
ろくでもない。)
見返すも何も。
そのような向上心は人故のものだろうよ。
羨ましいくらいだ。
(自身は何も生み出さないただの道具だ。
何時の世も、道具を使って何かを生み出すのは人間だと相場が決まっている。)
なんだ主の友人――また女子か。
あやつ本当に見境無いな。
(彼の友人・知人は悉く女性ばかりだ。
人外どころか見境無く斬り捨てて回っているとしか思えない主の交友関係に舌打ち。)
む、む。
頼む、一応主以外の知人は増やしておいた方がいいと思うからな。
■水月エニィ > 「せびるのね……」
これが妖刀の維持費だろうか。
ねだる鈍と 家計のやりくりに悩む羽切の姿を脳裏に幻視した。
「それでも勝てなきゃ無意味だわ。
いくら吠えたって結果が伴わなければ認められないもの。」
努力は怠らずとも、そこは違えない。
理不尽に敗北を喫し、此処に至るまでは認められる事の無かった彼女からすればそうなってしまう。
それでも努力を諦める事はない。勝ち負けのない点では努力が実を結んでいる事がギリギリ彼女を踏み止まらせている。
故に勝負事以外ではそこそこに多才だ。
そう言えば元々私のアドレスを試すつもりだった と 言ってから思い返す迂闊さはあるもののそれはそれ。
「やっぱりああ言う男性はモテるのね。
私には縁のない話でしょうけど……」
自身のメールアドレスと電話番号 それと住居である女子寮の住所と部屋番号も登録しておく。
「こんな感じね。
登録画面さえ開ければ、後は直観で十分いけるでしょうから。
他にも登録方法は色々あるけれど、一番つぶしが効くのはこれかしら。」
■影打 鈍 > 当然だろう。
あやつに見せるために買うのだからな。
(とは言えバイトを始めたら、その給料の中でやりくりするつもりではある。
一から十までおんぶにだっこと言うわけにも行かない。)
汝のそれはいつか報われるだろうよ。
仮に勝てずとも、何らかの形でな。
(少なくとも、向上心の塊のような彼女を自身は認めている。
それを口にしたところで彼女は満足しないだろうから、言わずにおくが。)
あやつスケベなのに何でモテるんだろうな。
童貞の癖に。
(スケベは関係あるかもしれないが、童貞は関係ない。
スケベだとしてもそれを表に出さないからモテるのかもしれない。
そして着々と主の風評被害が広まっていく。)
おお、かたじけない。
かたじけないついでに、もし何か私でも出来そうなよさげなバイトが見付かったら連絡くれんか。
こちらも汝から頼みがあるなら力になるから。
(頭を下げる。
実際に操作しているところを見たおかげでなんとかなりそうだ。
わからないところは主に聞くとして、仕事のこともお願いしておこう。)
――さて、そろそろ主も帰る頃だろう。
さっき言ってた服屋を覗いて帰るとするよ。
■水月エニィ >
「彼の役得…… なのかしら?
……報われると良いのだけど、どうなるかしら。」
2つの話題に疑問符が浮かぶ。
確かにひらひらした可愛らしい衣装も映えそうではあるが……
「羽切くん、スケベ童貞なのね……じゃなくて。そう言う星の下にいるのでなければ、
誠実さかしら? 話した限りでは実直で清潔。頭が固い訳でもない。
目つきはちょっと気にしていたけれど、好みの別れる点かしら。
……まぁ、男ならしょうがないわ。どうしたってスケベな性欲を覚えるものよ。」
そこまで言ってから、少しだけ表情に陰を落とす。
羽切に向けたにしては想起するような顔つき。
きっと、何かを思い出したのだろう。
「羽切さんがそう、って訳ではないけれどね。
とても其処までには見えないし……ええ、また会いましょう。鈍さん。
バイト先も見つけたら伝えるわ。」
■影打 鈍 > 喜ぶだろうな、泣いて。
くっくっく。
(彼の反応を想像しながら意地悪そうに笑う。
果たして本当に目論見通り行くのかどうかは分からない。)
まぁ、良い奴ではあるな。
つい今まで斬り合いしてた私から「担い手になれ」っつっても受け入れたし。
あやつがバイトとか家とか探してるのも、半分ほどは私の為だろうしなぁ。
確かに、性欲皆無の男はそれはそれでつまらんな。
(そういいながらスマホをぽちぽち。
アドレス帳のテンプレートを開いてみたり、彼女の住所を確認してみたり。
そのせいで、彼女の表情には気が付かなかった。)
あやつはへタレだよ。
良いと言ってるのに、まだ手も出してこんからな。
うむ、今日は助かった。
また宜しく頼む。
では。
(スマホをポケットにしまい、改めて彼女に向き直る。
ぺこりと頭を下げ、住まいの方へ歩いていこう。)
ご案内:「学生通り」から影打 鈍さんが去りました。
■水月エニィ >
「……私もそろそろ行くとしましょうか。
いつの間にかにいい時間ね。」
宙を見上げて宙の色を確かめ、そのまま帰路へと着いた。
ご案内:「学生通り」から水月エニィさんが去りました。
ご案内:「学生通り」に加賀智 成臣さんが現れました。
■加賀智 成臣 > 「……………。」
フラフラと学生通りを歩く青年。
その顔は暗く、つついたら死んでしまいそうだ。
時折通行人の肩にぶつかって、嫌な顔をされている。
その度に過剰に謝っては、またふらふら歩き出す……を繰り返している。
ご案内:「学生通り」にレイチェルさんが現れました。
■レイチェル > 新しい服を買いに学生通りへやって来たレイチェル。
帰り道に紙袋片手に歩いていれば、目の前から近寄ってくる
見覚えのある顔。
(あれは、加賀智……か。それにしても、何だかいつもより更に
暗い顔してんなあいつ……)
腰に右手をやって、うむむ、と唸るレイチェル。
「よ、加賀智。どうしたんだよお前、いつにもまして、調子が悪そうだぜ?
あ、心配させてごめんなさい、なんて謝ったりするなよ」
なるべく明るい声色で話しかけてみたりなどするレイチェル。
今度は彼が謝る前に、釘を差しておく。
さて、彼の反応はどのようなものだろうか。
■加賀智 成臣 > 「……レイチェルさん。」
聞き覚えのある声に、顔を上げる。……目の周りが赤い。
泣き腫らしたように、目の周りが真っ赤になっている。
「…………。こんばんは。
……その、すみません。こんな陰気な顔見せてしまって……」
せっかく上げた顔も、申し訳無さそうにどんどん目線が沈む。
どうやら、だいぶ重症なようだ。
■レイチェル > 「だから、謝るなって、でもって、泣くなって!
あー、何だその……とりあえずほら、そこにベンチあるから。
座ろうじゃねぇか、な! ……な?」
加賀智の横に行けば、彼のぼやけた視界の端に映っているであろう
ベンチの方を指差して、小首を傾げる。
近くにはアイスクリーム屋があり、客の何人かがちらちらとこちらを
見ているようであった。
こういう時に放っておけないのがレイチェルという少女である。
「一体何があったんだよ。ほら、オレに話してみな?」
ぽふん、とベンチに座れば。
隣に座ることを促すように、とんとん、と。
左手で、ベンチの空いたスペースを叩くのであった。
そうして紙袋の中からハンカチを取り出せば、それを投げて寄越した。
■加賀智 成臣 > 「………はい……。」
ふらふらとベンチへと歩み寄り、座って頭を抱える。
アイスクリーム屋の客がめちゃくちゃこっちを見ている。負のオーラがいつも以上に強いからだろうか。
「…………。
人を、殺しかけました。」
ハンカチを受け取って、目を拭う。
申し訳無さそうに眉根にシワを寄せながら、ため息を大きく吐く。
■レイチェル > 「……おう、とりあえず落ち着けよ。な?」
加賀智の泣き顔を見て、何やらくすくすと笑っているアイスクリーム屋に
並ぶ客達に向けて、しっしっ、と手をニ、三度振り。
追いやるような仕草をして睨みつけるのであった。
「へぇ、人を……ね? そりゃまた、どうしてだ」
人を殺したことのある者に対して、人を殺しかけた、と。
泣きながら『罪』の告白をする人間。
そんな中で人殺しは、一体何を思うのだろうか。
レイチェルはその場に居続ける内に段々と胸が苦しくなってくるような、
そんな感覚を覚えた。
しかし無責任に場を去る訳にもゆかず、話を続けるように促した。
■加賀智 成臣 > 「…………。はい。大丈夫です。
……落ち着いてますから。」
そう言って、しばらく頭を抱え続け……
しばらくして、口を開いた。
「……図書委員会の仕事で、禁書整理をして。
少し考えれば分かることなのに、封印が解けた禁書を……隣りにいた、人に……見せて……
……もしかしたら、あそこであの人は死んでたかもしれない。」
そう言って、少しだけ震える。
「……取り返しの付かないことになってたかもしれません。
…それを考えると……」
ぎちり、と唇を噛みしめる。
歯と肉の間から、赤い血が一筋顎に垂れた。
■レイチェル > 彼が頭を抱え続けている間、レイチェルはじっくりと青い空を眺めていた。
今日は急ぎの用事も無い。ゆっくりとしていられる筈だ。
緊急で呼び出しでもない限りは。
「なるほどな。確かにそいつは、考えが浅かったな。
禁書が何故禁書として指定されているのか、考える必要があったかもな。
その禁書が、どんなものだったかオレは知らねぇが。
ものによっちゃ、一瞬にして命を奪っちまったり、身体を
乗っ取っちまうようなもんだってある……訳だしな」
これには少し厳しい口調で、しかし棘を込めすぎずに。
人差し指を立てて、加賀智の顔を覗き込むレイチェル。
禁書に関しては、彼女も魔狩人として生きてきた中で、何度か触れることの
あったものであったし、師匠から厳重に注意して取り扱うように何度も何度も
言われたものであった。
「結果論、だけどな。それでも、命は助かったんだろ?
なら、殺していたかも、だなんて自分を責め続けるのは、きっと
プラスにならねぇと思うんだ。
四肢がどっかいっちまった、とか。心が壊れちまった、とか。
そういうことも無かったんだろ?」
■加賀智 成臣 > 「………はい。僕の責任です。
…全部、僕が悪いんです……。なのに、僕は……」
厳しい、しかし優しい口調で諭されて、ぐっと喉を鳴らす。
また、眼から涙がこぼれた。
「……僕は、死んだ程度で済んでしまった。
もしかしたら、僕の代わりに彼女が死んでしまっていたはずなのに。」
そう言って、口元を濡らした血を拭う。
「……僕は、僕以外の誰かが死ぬのが怖い。
どんな人だって、僕より命に価値はあるんです。……それを、失わせてしまったら……
……これから先、そんなことが起こったら……僕は、どう償えばいいのでしょう。」
くるりと首を回し、レイチェルの目を見る。
少し潤み、しかし暗い感情に沈んだ金色の目。それが、レイチェルを見つめる。
「………すみません、愚痴みたいになってしまって。」
■レイチェル > こくりと頷いて、加賀智の涙を見守る。
そうして、声をかけ続けるレイチェル。
「オレはその場に居なかったし、お前の話しか聞いてねぇし、
オレの言葉が全部正しいなんて思うなよ。
それでも、オレもそいつは聞いてる限りお前に責任はあると思うぜ、
加賀智。
けど、だからと言って、だ。
お前はあり得なかったそいつの死を、悔み続ける気か?
『死んでもない人間の死』を、ずっと背負い続ける気か?
お前が今すべきは、そんなことじゃなくて、改善点を見つけて、
次に同じことを起こさないように気をつける。
それだけだと思うぜ。オレは……」
彼の血が流れているのを見れば、なんとなく目を逸らして。
そう言う彼女の言葉は、加賀智と、それからどこかぼんやりと、
彼女自身にも向けられているようであった。
「命の価値を、そんな簡単に計れるもんなのかね。
オレ個人としちゃ、そうは思えねぇがな……」
肩を竦めては、再び青空を見上げるレイチェル。
何を思うのか、少し悲しそうな表情をするのであった。
「いや、いいさ。オレ達は友達なんだ。
困った時はお互い様だぜ。
ほら、元気出せよ。アイスでも食うか?」
そう言って、今度はにこりと笑うレイチェルは、ベンチを立った。
■加賀智 成臣 > 「…………。そう、でしょうか。
次に、どんな顔で彼女に会えばいいのか……恨まれたりしたら……
恨まれたりしたら、嫌いな人と仕事をし続けることになってしまう……」
自分が嫌われることに関しては、特に関心はないようだ。
それよりも相手のことを心配している。
ふらりと首を動かして空を見上げ、遠い目をした。
「………そう、ですね……。改善、ですか……
僕に、そんなこと出来ますかね……?」
自信なさげに、へらりと笑う。
どこか自虐的だ。
「………。レイチェルさん……その、え、と……
……あ、あぁ……そうですね、アイス……」
何か言おうとしたが、アイスで遮られて言うのをやめたようだ。
「そういえば、ちょっと……気になったんですけど……
レイチェルさん、血って苦手なんですか……?」
■レイチェル > 「それは、オレには分からねぇ話だ。
その相手と、お前自身が話してみなきゃな。
でも、そうびくびくするようなことはないと思うぜ」
レイチェルは彼の隣で話を聞きながら頷いて、頷いて。
「さて、それは分からねぇな。改善出来ない人間なんて世の中に掃いて捨てる
ほど居る訳だしな。でも、『改善しよう』っていう意志を
持ってる奴と持ってない奴じゃ、全然違ってくるとオレは思うぜ。
だから、出来るかどうか、悩む前にまずチャレンジしてみようぜ。
……ってまぁ、このとりあえずやってみろ、はオレのやり方だから、
一つの参考程度に聞いて欲しいんだけどな」
彼女は彼女らしい返答を加賀智に投げる。
自分のやり方を伝えるしかあるまい、と。
アイスを買おうと立ち上がった所で、加賀智に問いかけられてレイチェルは
その足を止める。
血が苦手なのか、と。
もし血を苦手でいられたら。
血を吸わずに済む身体だったらどれだけ良かっただろうか。
でも、彼女は違う。彼女は血を苦手になど思わない。
彼女は、正真正銘の半吸血鬼《バケモノ》だからだ。
「……苦手、じゃねぇよ。別に」
落ち着いた表情と声色で。少し口元を緩めながら。
レイチェルはそう返した。
■加賀智 成臣 > 「……はい。……話しあう、べき……でしょうか。
…………。」
どうにもビクビクしているのは、やはり性格の問題だろうか。
「…………。
頑張ってみます。その、チャレンジ、というか……
……はい。」
やらないよりはマシ、という感覚に少し元気付けられたのか、目元をゴシゴシと拭う。
そして、ぺこりと頭を下げた。
「……そうですか?」
血が苦手でない割には、やたらと血に対して目をそらすことが多いような。
何故だろう?何か見てはいけないという宗教なのだろうか?
もしかして、吸血鬼?
「(……まさかね。)」
聞いたことはあるが、見たことはない。
居るのかもしれないが、存在的には眉唾ものだ。
■レイチェル > 「少なくともその件については、謝った方が良いだろうな。
平謝りするだけじゃなくて、ちゃんと次はこう気をつける~、とか
そういう先のことを示した上で謝った方がいいかもな」
うーむ、と唸りながら腕組みをしてそう口にするレイチェル。
昔師匠が言っていたことの受け売りであるが、彼女自身よく
実践していることでもあった。
頑張ってみます、という言葉を聞けば、満足そうににっこりとする。
そうそう、とにかくやってみたらいいじゃねぇか、と。
軽い声でそう伝えるのだった。
「……まぁ、気にすることはねぇよ」
わざわざ自分からダンピールである、などと言いふらすようなことはあるまい。
近頃異邦人とこの世界の人々、人と人ならざる者との軋轢を
改めて目にしてきたレイチェルは、そんな風に思い、気にすることはない、
と言うに留めたのであった。
「アイス、何が良い? オレは、チョコレート頼むけど……」
メニューを見ながら、うむむ、と顎に手をやるレイチェル。
加賀智の方を振り向いて、そう問いかける。
■加賀智 成臣 > 「…………です、ね。これからは禁書の扱いとかも学んで……
……謝ってみます。…でも、謝罪させてくれるかなぁ……
話してくれなかったらどうしよう……。」
決意を固めたのに、ちょっとつつくとネガティブになるのは悪い癖である。
だがそれはともかく、やってみるという決意は固まった。
決意を固めるのは大事な事だ。出来るかどうかは別として、進行方向が決まるのは重要である。
「……はい。あの、何というか……できるだけ、血は見せないようにしますから……」
血を見るのが単純に嫌いである、という可能性もある。
苦手ではないと言ったのは強がりかもしれないし。
もちろん、吸血種であるという考えは……少しだけあるが、殆どない。
「あ……じゃあ、えぇと……
抹茶で。」
苦味好きであった。
■レイチェル > 「んなこと最初っから気にしてもしょうがねーだろって。
いいんだよ、どーんと言ってこい。自分が悪かったら謝る、
お前は間違ったことしてねぇんだから。謝りに行くっていうその
決意を、大事にしていけよ」
ネガティブになる彼の背をぽんと叩くように、そんな言葉を投げかける。
ぴしっと、身が引き締まるような声で。
「あーー……まぁ、それは何というか、ありがとな」
血を見ると、胸の内が少し火照りだす。
無論、血を貰っていることもあって吸血衝動のままに襲い掛かる、
などということは今現在レイチェルにはあり得ない話であるが。
それでも、何となく居心地が悪いのは確かなことだった。
苦いものが苦手なレイチェルは抹茶アイスを頼む加賀智を、どことなく
珍しいものを見るような目で一瞬ちらりと見た後に、会計を済ませる。
「ほらよ、アイス。まぁ、何だ。元気出せよ、加賀智。
失敗は誰にでもある。失敗をしてしまった後にどうするかが大事
なんだ……ってまぁ、受け売りだがな」
そう言って、抹茶アイスの方を加賀智に渡すのだった。
■加賀智 成臣 > 「…すい……ありがとうございます、レイチェルさん。
……あ、でも……駄目だったら……もし駄目だったら……はい……
またその、愚痴に、というか、あの……」
うじうじと指先をこすりあわせつつ、しょんぼり。
だが、凛とした声を掛けられて、少しだけ背筋が伸びた。
「………はい。
でも、確か風紀委員って結構戦闘もするんでしたっけ……
…実は吸血鬼で、血を見るとお腹が減るから……なんて……
……すみません、面白くないですよね……」
変なジョークを飛ばして、勝手に落ち込み始めた。
アイスを受け取って、舐めるように食べ始める。
「……はい。………本当に……。
…ありがとうございます。」
友達であることに、溺れている気がする。
……いずれ、傷付くのは自分なのに。相手なのに。
そう思いつつ、アイスを食べ続けた。
ご案内:「学生通り」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「学生通り」から加賀智 成臣さんが去りました。