2016/11/09 のログ
マナ・ヴァール > 「この島で探せば居そうっていうのは島の外から見れば最終手段よ。
 この島に居ないものなんてのはきっとこの世界にそもそも存在してないんでしょう。
 島の外と比べるとここには何でもありすぎる。まるで…いえ忘れて頂戴。」

ミステリアスな感じの笑みを浮かべてそんな事を言う。
特になにも思いつかなかっただけなのであるが…

「なるほど一族に伝わる伝承ね…。(そういうの私の家にもないかしら?)」

とかそんな事を考えてみるが思い当たるものは無い。
ドラマ的なものが我が家には欠けているのだ!

「…多分、そのご先祖様はきっと人間の姿に化けたりしたと思う、思うのよ。
 貴女も化けてみたり出来るの?」

キツネと言えば化ける、化かす。そんなイメージは頭の中にずっとある。
このキツネの子のご先祖様はきっと化けたり出来たのだろう。
…流石に普通のキツネと結婚して子供ができるのはイメージできない。
きっと、その子孫であるこの子も化けることが出来るに違いない!

狐々 > …ん、それもそっか。
確かにこの辺りに来たばっかりの時は、色んな種族の人たちがウロウロしててびっくりしたっけ…

(山から下りてきたときのことを思い出し、相手の言うことに納得する。
そもそも自身の暮らしていたところは動物ばかりで、人型の生き物など狩人くらいだったが)

ば、化けるって…そんなこと考えたこともなかった…。
でも…そうだよね…人間と結婚したんだったら、そのご先祖は化けてたのかも。
…でも、どうなんだろう…

(相手の言うことに一時は驚くが、よく考えてみると人間と交わるには必要な能力のように思える。
しかし、仮にその力があったとして自分に遺伝しているかどうかがわからないし、今まで試そうとする機会もなかった。
首を傾げ、考える)

マナ・ヴァール > 「私もこの地に足を踏み入れた時凄く驚いたわ。
 これ程のレベルで共存が成立しているとはね…。
 私がいた『場所』では考えられない事だわ。」

驚きが薄れてきて少しずつエンジンがかかってきた。

(…そうよ、マナ・ヴァールはこうでなきゃ。)

正直、色んな種族に驚き、戸惑ったのは自分もであるのだが驚いた点をすり替える。

「でも普通に生活できて不便で無いのなら化ける必要はないのかもしれないわね。
 ここではその姿でも一人の生徒として受け入れられるのでしょう?
に、人間と子孫を残すとかでない限りは大丈夫じゃないかしら?」

さっきの焼きそばやの店員が特別なので無ければきっと普通に彼女はこの姿のままで認められているのだ。
この島では人に混ざって生きる為に無理に人の姿を取る必要はないのだろう。

狐々 > うん…、これだけ色んな種族がいて、仲良く生活してる処ってこの島くらいしかないよね、きっと。
今じゃこうして堂々と外を歩けるし…

(その発言は、裏返すと「以前住んでいたところでは外をあまり歩けなかった」ということになる。
それ故に、こうしていろいろな種族が共存していることに対する驚きがあるのだろう)

うん、不便を感じたことはないかな。
あれから2か月ぐらい経つけど、さっきみたいに買い物もできるし、学園にも通ってるし。
子孫…は、まだどうなるかわかんないけどね…。

(特に生活で苦労する場面はないようで、先ほどの焼きそば屋だけでなく、その他の買い物も普通にしているようだ。
子孫については、結婚以前にまだ相手がいないのでぼかしている)

マナ・ヴァール > (はあ、ほんと楽しそうだな早く通えるようになりたいな…。)

今はどこまで行っても観光客で実際ただの中学生。
異能や魔術、異邦人、超常に憧れるだけの存在である。

「じゃあ、前に住んでいたところにいる時とかに化けれるようになってたら
 丁度良かったのね…。もしかしたらさっき言ってたお父さんとかなら化けたり出来るのかも…。
 また今度聞いてみたらいいんじゃないかしら?」

様々な事を伝えられてきたのならもしかしたらそのお父さんなら知っているかもしれない。
代々と受け継がれてきた化けるための方法を!

「でも、不便で無いならやっぱり大丈夫ね。
 個人的には化けるところとか見てみたいのだけど…。」

きっと習得するころには私はもうこの島にはいないだろう。
そんな事を考えていると携帯が鳴る。

「…色々と教えてくれてありがとう。そろそろ、行かなきゃ。
 それじゃあ。また会うことが会ったらヨロシクねキュートで凄い狐さん。」

そう、言い残して少女は歩き去っていくのだった。

ご案内:「噴水広場」からマナ・ヴァールさんが去りました。
狐々 > …うん、そう…だね。
《さすがに…今これは言えないな》

(実は父を既に亡くしているのだが、それを知らない様子で提案した相手には何も言うべきでないと判断した)

化けるところ…かぁ、それをわざわざ見せるための能力でもないような気がするけど…

(本来、正体がばれないように使うための能力のはずなのに、化けるところを見られては意味がない気がして笑う)

ん…うん、それじゃ、またね!

(相手に手(=前足)を振って見送る。
その場から相手が去り、しばらくしてから思い出した)

あ、そういえば名乗ってなかった…

(結局最後まで名乗るタイミングを失っており、自身の名前を相手は知らず終い。
だが、自分の姿が相手には特異なものとして映ったように思えたので、当分忘れられることはないだろう…と自身を納得させる)

…まあ、いっか!
さて、次の屋台は、っと…

(ベンチから跳び降り、焼きそばの入っていたケースをゴミ箱に捨てると再び歩き出し、その日は日が暮れるまで祭りの数々の屋台や催し物を楽しんだのであった)

ご案内:「噴水広場」から狐々さんが去りました。
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「よーしよーし……にひひっ、いっぱい買ったなあ。」

常世祭を間近に控えた学生通り。
特設の屋台が軒を連ね、平時以上の活気に満ちた大通りを、七生は両手に大量の食べ物を持って歩いていた。
この日の為に稼いだバイト代をここぞとばかりに使ってこの日限定の屋台メニューを片っ端から買い漁ったのである。
勿論、買い占めるなんて野暮なことはしない。

「あーん……んむ、んんー……美味いッ!」

腸詰の串焼きをひと口で半分平らげながら笑みを浮かべる姿は、この通りに於いて一、二を争うお祭り漫喫っぷりであった。

東雲七生 > 「ハロウィンからこっち、だいぶ催し事が続くから何だか嬉しいね。」

串焼きの串を紙袋の中に入れてポケットにねじ込みながら独りごちる。
期末試験も期間もじわじわと近付いて来ている事も忘れちゃならないのだが、一学期の成績からそこまで焦る必要はないだろうと見ている。実際中間試験も危なげなく通っているし。

「鍛錬で無茶して怪我して長期入院、とか無ければ全然平気だと思うけど。」

そもそも自分が長期入院しなければならない怪我はどの程度なのか、というのも気になる。
以前、並の人間であれば致死量である程の出血をした時でさえ、様子見込みの3日間の入院であった。
だとしたら相当な怪我ではない限り1週間以上の入院は起こりえ無さそうな気がする。四肢が取れたりとか。

「って、縁起でも無い事考えてる場合じゃない、か。」

東雲七生 > 腕時計やアクセサリなど小物の露店を眺めながら綿菓子を頬張る。
時間はまだ放課後になってすぐ。
夕飯時にはまだまだ時間があるが、今日はこの時の為を考えて夕飯は要らないと伝えてある。
なので心置きなく食べ歩きが出来るのだった。とはいえ、今から満腹になるのは下策だろう。

「んー、準備中の屋台は何時頃始まるかなー。」

口の周りに着いた綿菓子を舐め取りながら来た道を振り返る。
並んでいる屋台、それらの全てが営業中であるわけではなかった。
むしろまだ半数にも満たないと言っても良いくらいである。

東雲七生 > ふと足を止める。
食べ物はしこたま買ったし、それでもまだ買うつもりだけども。
何だか妙に満たされない。物足りない。
それが何なのか、行き交う人々の邪魔にならないように道の端へと退きながら考える。

「あー」

話相手が欲しい。
辿り着いた結論は、そんな単純なものだった。
さっきからお祭り気分を味わっているのは良いのだが、一人だとどうも味気ない。

とはいえ、道行く人々は大抵複数人連れで、屋台の人たちは忙しそうだ。
途端に一人浮いている様な気がして、気を取り直そうと街灯に寄り掛かってタコ焼きを頬張る。

ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」に三野瀬 美色さんが現れました。
三野瀬 美色 >  
 その声は、全く突然に、少年へと掛けられた。

「そこのアナタ!」 
 
 声だけでは、誰の事を言っているのかわからないかもしれない。
 しかし、今回は間違いなく、タコ焼きを頬張っている少年へ声が掛けられたと分かる。
 何故ならば。

「そう、そこのアナタですわ!」

 思いっきり、声の主が少年を指刺して呼びかけられているからである。
 

東雲七生 > 焼きたてのタコ焼きは表面はこんがり、中はふわとろの絶妙な焼き加減で大粒のタコが入っていた。
芳醇なソースの香りと鰹節、青海苔の風味を味わっていたのだが、やっぱりどうにも味気ない。
こんな事なら部活が終わる時間帯に合わせて来れば良かっただろうか、などと考えていたところで。

「……へぁ?」

急に大声がして呆気にとられて、我に返る。
何だ何だと辺りを見回して、すぐにこちらを指す少女の姿に気づき、

「……え、と。俺?」

思わず何か悪い事でもしただろうか、と今日の事を振り返ったりして見る。
………大丈夫、女子に批難されることは何もしてない。男子はともかく。

三野瀬 美色 >  
「そう! アナタですわ!」
 
 びしっと失礼にも指を突き出しているのは、指定の制服を着用した、黒髪セミロングの少女。
 左手を腰に当て、右手の指を突きだしたまま、得意気に笑っている。
 
「アナタ、お暇でして? いえ、お暇ですわね!」
 
 そして、そんな風に堂々と言い放った。
 周囲からは若干視線が集まりつつあるが、気にした様子はない。
 

東雲七生 > 「ですよね……」

だって真っ直ぐこっち向いてるもんな、とタコ焼きに爪楊枝を突き刺しながら思う。
一体何だろう、見たところ同級生でも無さそうだ、と首を傾げていると。
一方的に暇人と決定されてしまう。あながち間違いでもないが面食らって口をパクパクさせる七生。

「……え、あ、いや、はい……そう、だけど……?」

周りの視線に身を竦めて、ぎこちなく愛想笑いなどしつつ。
怪訝そうに曇った紅い瞳が少女の顔を見つめる。

三野瀬 美色 >  
「やっぱり! 見るからに暇を持て余していそうだと思いましたわ。
 社交界で壁の花になっていらっしゃる方と同じ雰囲気でしたもの!」
 
 紅い瞳に黒い瞳のドヤ顔を返しつつ、つかつかと歩み寄ってくる。
 無駄に姿勢が良く、無駄に足音が響く。
 そして、少年の目前にまで来ると足を止めて、僅かに視線を下げた。
 
「わたくしは三野瀬家長女にして次期頭首、常世学園一年生! 三野瀬 美色!
 転校生ですわ! アナタは?」
 
 愛想笑いに返す笑顔は、不敵な笑みである。
 

東雲七生 > 「そ、そうなの……?」

社交界、って何だろう。
そんな疑問を抱くのも束の間、こちらへと歩み寄ってくる少女に気圧されつつも背後には街灯。
周りの視線も最高潮に達して、今すぐにでも何処かへ逃げ出したい気分をぐっと堪える。
ひぁ、と小さく悲鳴が口から漏れるのを何とかかみ殺して、堂々と名乗りを上げる少女を、呆気にとられたように見た。

「……え? あ、俺ね。
 俺は東雲七生。一応、二年生。一年の春から通ってる。
 ……ええと、三野瀬ね。 よろしく?」

相手が後輩と知ると流石に逃げるわけにもいかず。
どうにかこうにか、半分引き攣った様な笑みを浮かべる。
なお身長は僅かに三野瀬の方が高い。ほんの数センチの差だけれども。

三野瀬 美色 >  
「まぁ! アバンギャルドな響きの素敵なお名前ですわね!
 では、自己紹介も終わったところで早速参りましょう、東雲先輩!」
 
 引き攣り気味の笑みを気にした様子もなく、美色はにっこりと笑って。
 
「わたくし、折角の学園祭だというのに、先日転校してきたばかりで何処に何があるのかまるでわかりませんの。
 東雲先輩はお暇なようですし、是非ともわたくしをエスコートしてくださいな!」
 
 さも当然と言った様子で、楽しそうに笑いながら、そう言い放った。
 

東雲七生 > 「あばんぎゃるど……?
 ……え、ちょっと待って。参るって?何処へ?」

訳も分からぬまま、取り敢えずタコ焼きを手提げの中へしまう。
何時までも食べ物片手というのも失礼だし、そもそも何処か行くのなら尚更だ。

「……ふむふむ。 ああ、なるほど。
 そういう事なら、喜んで案内させて貰うよ。
 そっか、最近転校してきたなら初めての常世祭だよな、俺は二回目だし案内するよ。」

実際暇だし、断る理由も全く無い。
丁度先刻まで話相手が欲しかったくらいなので、むしろ願っても無い申し出だ。
にっこりと、とても高校生には見えない様な幼い笑みを浮かべると大きく頷いて了承する。

「此処は見ての通り屋台がずらーっと並んでるけど、まず何か見てみたいモノとかある?」

三野瀬 美色 >  
「それは実に重畳ですわ! では、まずはお腹が空きましたから何かお勧めの屋台を教えて欲しいですわ。
 今はちょっと、しょっぱいものが食べたい気分ですわね!」
 
 七生の隣に並んで、早速ぐるりと周囲を見渡す。
 
「流石に全部は食べきれませんからお勧めを食べたいのですわ。
 困った時は専門の方のお勧めにするのがわたくしですわ!」
 
 美色からみれば、一度でも常世祭を経験している七生は専門扱いなのやもしれない。

東雲七生 > 「オススメの屋台?
 んー……おっけー、分かった。ついて来て。」

僅かに視線を通りに向けて考えた後、アレをまだ買ってなかったな、と思い至る。
にぱ、と笑みを浮かべて先導する様に歩き出した。

「専門って程じゃないけど、去年大体の屋台は見たから大丈夫。
 それに今回は常世祭だけど、それでなくとも小さなお祭りで屋台はちょくちょく出るしさ。」

先のハロウィンの時も、お菓子以外の屋台も出ていた筈だ。
そんな事を思い返しながら、三野瀬の歩く速度に合わせて通りを進んで行き、一件の屋台の前で足を止める。

「はいよっ、これなんかどうだろう?」

屋台の屋根兼看板には独特なフォントで「焼きそば」と描いてあった。
今まさに鉄板でそばが炒められており、じゅうじゅうと水気の跳ねる音とソースの香りが漂っている。

三野瀬 美色 >  
「まぁ! 鉄板焼きのスパゲティですわね! アバンギャルドですわ!
 ムッシュ!!! 一つくださいな!」

 目を丸くしながら、両手を合わせて驚いて、早速屋台の店員に注文する。
 ムッシュ呼ばわりでも気付いたのは、先程、七生にしたように、美色が店員を指差したからである。
 
 そうして、早速、焼きそばがパックに詰められ、小銭と引き換えに美色に手渡される。

「ありがとう、ムッシュ! ところで、フォークとスプーンはどこかしら?
 もしかして、東雲先輩、このお祭りはマイフォークとマイスプーンを持ち歩くべきなのかしら?」
 

東雲七生 > 「あ、そういう見方も……あるか。
 ちょ、ちょっとちょっと。三野瀬っ。
 あんまりそうやって人を指ささない方が良いって、良い気分しない人も居るだろうし……。」

誰彼かまわず指さす少女にそっと忠告しつつ。
さっきの七生と同様面食らったような屋台の店主にぺこりと頭を下げる。
店主の方も慣れているのか愛想のいい笑みで流してくれたが。

「……フォークとスプーン。
 いや、それは箸で食うもんだけど、三野瀬、箸使った事無い……?」

そういう事ならフォークの方が良いだろうかと先程買い漁ったものを漁ってフォークを探す。

三野瀬 美色 >  
「お名前が知れたら、そうしますわ!」 
 
 何故か偉そうに胸を張って、笑顔で焼きそばを受け取りながら、首をよこに振る。

「いいえ、お箸は得意ですわ。でも、これはスパゲティではなくて?
 スパゲティはフォークで食べるものですわ!」 
 
 やっぱり、何故か偉そうに胸を張った。
 得意気である。

東雲七生 > 「むしろ名前を知らない人にこそやっちゃ駄目だと思うんだけど……」

これ以上の忠言は無意味と察したのか、小さく肩を竦める。
願わくば彼女の行為に本気で機嫌を損ねる人が出て来ないのを祈るのみだ。

「スパゲッティじゃないよ。焼きそばって……知らない?
 一応そば、ってくらいだし箸で食べて平気だよ。」

スパゲッティは知ってて焼きそばは本当に知らないのか、と素直に驚きつつ。
まあそういう事もあるか、と三野瀬の手の中にある焼きそばについて説明を添える。

三野瀬 美色 >  
「まぁ! これは御蕎麦でしたの! なるほど、言われてみれば確かに少し蕎麦粉の香りが……しませんわね?
 香ばしいソースの香り一色ですわ。
 前衛的なスパゲティかと思いましたのに違いますのね」
 
 どうも、焼きそばは知らないらしい。
 
「中華そば的なものなのかしら?
 いずれにせよ、お箸で問題が無いのでしたらお箸で食べますわ!!」
 
 言うなり、そのへんのベンチにゆったりと腰掛けると、割り箸をパチリと割って、蕎麦と言われたので蕎麦のようにちょっとだけ取って手繰る。
 
「……!!」

 直後、美色の顔色が変わる。

東雲七生 > 「前衛的……いやまあ、ううん前衛的かなあ……?」

割と古い時代からある料理だとは、七生も聞いている。
実際のところこの島の外の記憶が極端に曖昧で、何かの折に知った程度の知識でしかないのだが。
外から来た三野瀬が知らないと言う事は、案外マイナーな料理なのかも、と考えを改める。

「ああ、うん。お箸で大丈夫だよ。」

いちいちリアクションがオーバーで面白いな、と微笑ましく眺めていたが。
ベンチに腰掛けたのを見れば、そういえばタコ焼きもさっさと食べないと冷めてしまうな、と思い出して。

「ふふ、いただきま……ぁれ?
 三野瀬?……ちょっと、どうした?口に合わなかった?」

もしかしたら何かアレルギーでもあったのだろうか、と少し心配げに顔を覗き込む。

三野瀬 美色 >  
 覗きこまれた直後。

「んぅうぅうう~~~~!!」
 
 箸を持ったまま右手を頬にあて、頬を少し赤く染めながら、美色は甘ったるい声をあげる。
 そして、ゆっくりと味わってから飲み込んで、うっとり笑顔。
 
「野趣溢れる味わい、見事ですわ!
 ぶつ切りのお肉お野菜がソースと一緒に絡み合ってとってもとっても美味しいですわ!
 ムッシュ! このお料理実によろしくてよ!」
 
 屋台に向けて手を振り、直後にまた焼きそばに戻る。
 そして、若干スローペースで味わいながら、七生に微笑む。

「東雲先輩! これは実に美味ですわ! わたくし、御蕎麦というジャンルへの考え方が改まってしまいましたわ!
 前衛的なお料理は今まであまり食べる機会がありませんでしたけれど、素晴らしいものなのですわね!」

東雲七生 > 「……!?」

反射的に後ずさってしまった。
そして付近に人が居ないかを確認してから、改めて三野瀬を見遣る。
いきなり変な声出すんじゃない、と口を開きかけてから、それよりも先に告げられる焼きそばへの賛辞にぽかんとした顔で暫し立ち尽くした。

「……はっ。

 えっと、気に入って貰えて?良かったよ。
 それにしても焼きそば食べた事無いって、三野瀬の家ってどんな所だったんだ?」

話し方、そして立ち居振る舞いからして相当なお金持ちだったのだろうか。
だとしたらまあ、焼きそばは大衆食だと聞いた事があるので、知らなくても無理は無いと思いつつ訊ねる。
大部分ただの興味本位だけれど。

三野瀬 美色 >  
「ありませんでしたわ!
 当家、三野瀬家の御屋敷は大農園の中にあって、お料理といえば基本的に召し抱えの料理人が作っていましたの!
 色々な物を食べさせて頂きましたけれど、こういった前衛的な料理は基本的に出ませんでしたの!」

 七生の予想通り、美色はお金持ちと言われる類の生まれであるようだ。
 そのせいか知らないが、祭りの屋台に並ぶような料理は一種新鮮であるのかもしれない。
 
 スローペースながらも美色は嬉しそうに焼きそばを平らげ、最後に残ったキャベツの芯も食べてから、ゆっくりと両手を合わせた。

「ごちそうさまでした……はぁ、とてもアバンギャルドで素敵な料理でしたわ」
 
 

東雲七生 > 「な、なるほどね……。
 随分大層な家に生まれ育ったんだなぁ……すげーや。」

それがどれくらい凄いのか、七生には想像がつかない。
もしかしたら島の外ではそれが一般的なのかもしれないが、島の中しか知らない七生にはそれこそ想像もつかない事である。
なるほど、だからそんなにもの珍しそうに焼きそばが食べれるんだな、と感心の様な、納得のような物をして。
結局タコ焼き片手に三野瀬が焼きそばを食べきるのを見届けていた。

「えっと、本来なら作った人がいうべきなんだろうけど、お粗末様。
 ついでだから、タコ焼きも食っとく?結構冷めちゃったけど。」

一口食べてみて美味しかったら買い直すよ、と付け加えつつ。
手に持っていたタコ焼きをそっと差し出してみる。
心境はさながら面白い動物に色々餌をあげている気分である。

三野瀬 美色 >  
「ふふん! そうですわ、当家は凄いのでしてよ!」
 
 そう言って、嬉しそうに、それこそ鼻高々と言った感じで胸を張っていたが……たこ焼きを見せられると、目を丸くして、小首を傾げる。

「揚げ物? いやでも、焼き目はパンケーキに似ていますわね?
 何よりこの香り……焼きそばとはまた異なる香ばしい匂い……も、もしや、これは鰹節?
 あ、ああ……いけません、いけませんわ、東雲先輩、そんな、わたくし今早速美味しいものを食べたばかりだというのに……」
 
 などと言いながらも差し出されたたこ焼きをパクりと頬張り。
 
「……~~~~!!」

 顔を紅潮させ、口を押えて声なき声をあげる。
 

東雲七生 > 「それで、三野瀬はその凄い家の次期当主なんだっけ。」

つまり俗に言うお嬢様、というやつなのだろうか。
そんな事を考えながら、タコ焼きを差し出していたのだが。

「えっと、何だろう……。
 屋台の料理食べさせてるだけなのにこの……変な感じ。」


背徳感が物凄い。

台詞や挙動に妙な艶があるからだろうか。
これも彼女の育ちの所為なのかと首を傾げる七生である。

「……美味しかった?」

半ば確信を持ちつつも訊ねる。

三野瀬 美色 >  
 まだ熱を宿していたそれを嚥下したからか。
 頬を紅潮させ、僅かに涙目になりながら、美色はこくりと頷く。
 そして、若干潤んだ瞳で七生の方を見ながら、にこりと笑う。
 
「……とても、とても美味でしたわ、東雲先輩」
 
 そうして、余韻にしばし浸ってから、大きく深呼吸を一つ。
 ようやく、それで落ち着いたようで。
 
「はぁああああ……言葉を失うとは正にこの事でしたわ。
 外側のソースと鰹節の香ばしさと、相反するようなトロリとした内側のあんかけのような何か。
 しかも、その中に一つごろりと入ったタコの食感と合わさって、コンパクトながらも何て贅沢な試みの料理なのでしょう。
 きっと、高級チョコの如く手間暇の掛かった素晴らしい料理なのでしょうね……わかりますわ。あれなら一つ数千円でも納得ですわ……」

 そんな事を呟きながら、うんうんと一人頷く。

東雲七生 > 「えっと……。」

凄く居心地が悪かった。
おかしいな、ただタコ焼き食わせてみただけなのに、と煩悶をしつつ一度大きく深呼吸をして。
そしてこちらに向けられた笑みに、頬を赤らめながら笑みを返す。ぎしぎしと音の出そうな笑みを。

「そりゃよかっ………


 いやまあ、何て言うか色んな知り合いがいるけどさ。
 タコ焼き一つ食っただけでそんなに感想が出てくる奴はちょっと居ねえな。
 作るのにはそこそこ技術は要るみたいだけど、見たところそこまで時間や手間が掛かってるようには見えなかったけど……。」

通りへと目を向ける。
ずらっと並んだ屋台の中に、タコ焼きの屋台もある。何の変哲もない、ただのタコ焼き屋だと思っていたのだが。
存外、只者ではないタコ焼き屋だったのかもしれない、と七生は戦慄いた。

どちらかと言えば目の前の少女が只者ではないのかもしれないけれど、それはそれ。

「出来立てならもっと美味いんだけどさ、如何せん熱いかなと思って。
 でも気に入ったなら今度買いに行ってみれば良いよ、焼き立てはまた格別だから。」

でも火傷しないようにね、と笑いながら七生も一つ、タコ焼きを口に放り込む。
……やっぱり、普通の美味しさだと思うのだが。

三野瀬 美色 >  
「初めての感動は得難いものがあるので……え、焼き立ては、また格別……!?」
 
 その言葉に、がたっと思わず立ち上がる。
 もう空になっている焼きそばのパックが美色の膝から滑り落ち、ベンチに転がり、そのまま運よくゴミ箱の中に納まる。
 しかし、美色はそれに気付きもせずに、驚愕の余り口元に手を当てる。
 
「た、たしかに、焼き物であるのならそれは必定……さながら焼き立てふわふわパンのごとし……!
 し、しかし、お父様は外に出るのなら不用意に無駄遣いをしてはならないと……!
 一人暮らしの今の身の上で、一粒数千円の嗜好品に軽々と手を出すだなんてそんな贅沢は……!」
 

東雲七生 > 「あー、それは気持ち分かるかも。」

確かに初めてする事、見る物は感動もひとしおだろう。
七生にも思い当たる節がある。いっぱいある。
だとしたら彼女の反応も当然であるかもしれなく、

(……いやいやいや。)

流石にあんな顔は自分はしていないと思いたい七生だった。

「一粒数千円なんて、そんな大げさな。
 そんな高価な物だったら、こんな気安く食べたり出来ねえって。
 
 ……おし、無駄遣いが駄目なら奢ってやるよ。
 一舟買うのも二舟買うのも同じだし、どうせ金ならまだまだあるしさ。」

そうと決まれば、と戸惑う三野瀬を置き去りに七生はとっとこたこ焼き屋の屋台へと向かって歩き出した。

三野瀬 美色 >  
「そうなると一粒数百円……? え!? お、おごりだなんて東雲先輩!
 三野瀬家次期頭首としてそんな高級品を軽々と施しに受けては! あ、まって、先輩おまちになって!」
 
 さっさと歩き出してしまう七生に駆け寄る美色。
 しかし、鈍足そのものである美色の足ではすぐには追いつかず、追いついた時にはもう既に屋台の前。
 そうなれば、当然目前に在るのは目当ての品であり。

「まぁ……なんて、なんて素敵……!」

 湯気の向こうで量産されているたこ焼をみて、思わず頬が朱に染まり、目が輝く。

「あのように作っているのですわね。まぁ! キリ一本であんなに鮮やかに!
 熟練の腕前ですわね!」

東雲七生 > 「だから別にそんなに高級品じゃないってば。
 俺がそんなに金持ちそうに見える?」

実際のところ、クラスメイト達よりは持っているけれども。
それでも本物の富裕層には遠く及ばない訳で、どちらかと言えば庶民層代表みたいな七生である。
タコ焼き屋の前にて三野瀬が追い付いたのを確認すれば、店主に一舟注文して。

それから感極まった様にタコ焼きが焼かれている光景を見ている三野瀬を見て、
ここまで感心されたらタコ焼き屋も冥利に尽きるだろうなあ、と笑みを浮かべた。

「俺も一回だけ試させて貰った事があるけどさ、やっぱ素人がやるには結構難しかったよ。」

三野瀬 美色 >  
「え? そうなんですの? あ、でもやっぱり一つ500円って書いてありますわ。
 一杯入っているし、バラ売りしていないのなら中々のお値段ですわ。
 立派に洗練された技術によって生み出されたものであるのですから当然……」
 
 といったところで、丁度、隣にいた女子が一舟6個入りのたこ焼を購入し、500円玉を支払っているところを美色は見てしまう。
 
「……え? え、こ、これ、6個でごご、500円……?!」
 
 目を白黒させて、美色はふらりとよろけるが、どうにか持ち直す。

「す、すさまじい企業努力ですわ……価格破壊とは正にこの事……?!」
 

東雲七生 > 「そう、6個で500円。
 ははっ、企業努力とかじゃなくて偏に……ああいや、多分、努力はしてるよ。」

かなりしてる、と店主の視線を気にしつつ頷く。
流石に店の前で値段について言及するのは野暮ってものだと思ったのだ。実際のところ利益がギリギリ出るか出ないかの瀬戸際である事も知っているし。

「それより、ほら。
 出来たても食べてごらんよ、ああ、本当に熱いから気を付けてね。」

順番が来て500円を支払ってから笹船を模した容器に並んだタコ焼きを受け取る。
そして近くのベンチへと三野瀬を促してから、湯気の立ち上るタコ焼きを一つ、差し出した。

三野瀬 美色 >  
「え、あ、は、はい……是非とも頂きますわ。
 東雲先輩ありがとうございます!」

 驚きのあまり、促されるままに美色はベンチに腰掛け、目前に差し出されたタコ焼きをみて、また目を輝かせる。

「は、はぁああああ……もう香りが! 香りが違いますわ! 出来立てほこほこの匂いがしますわ!
 で、では、早速失礼して……」
 
 歓喜のあまり、すでにタコ焼きを目前にして頬を赤く染めながら、つい美色は身を乗り出し。

 パクリと、一口で口の中に放り込む。
 折角、七生から忠告を受けたにも関わらず。

「!!?????????」