2015/08/10 のログ
シイン > 眼の前の者の腕が大きく様変りを果たした。
なるほど、納得というよりコレなら納得だ、と。
あの手なら普通のサイボーグを引き裂くには十分過ぎるだろう。

鋭利な爪がコートにスーツを通り越して、腕に到達する。
人工血液の白い血液が漏れた、粘着くから嫌いなのだから勘弁して欲しかった。
食い込まれ箇所は直ぐに直る。何事もなかったように。

彼女が翼を生やし、飛び立とうと。
このまま腕を引っ張って持ち運ぼうという訳か。

「なるほど、たいしたもんだ…。」

空へは飛べるが、滞空は出来ない。
もしこのまま飛ばれれば、ろくに抵抗は出来ないのは目に見えてる。
ならば、手段はひとつだ。
顔色一つ変えずに、彼は腕を肩口から切り離したのだ。
切り離される時に蒸気を噴出しながら、荒々しい断面図を見せるだろう。

白い人工血液が滝のように肩口から流される。
当然だ、強制的に機器の電源を落とさずに切り離したのだから。

流布堂 乱子 > 「…っと、」
人を連れ去ろうとして落とすのは二度目。
自分でも対処法はいくつか考えてあるが、今回はその内の一つとして―

「いえ、この程度は飛べるうちにも入りませんよ」
左手をフリーにするために、相手の右腕を相手の左腕めがけて投げつける。
たとえ空中にあろうと、足の代わりに翼を使えば十二分にその投擲の威力を発揮できる。
ただ、自分で言うとおりに羽ばたきを投擲の反発力に使えば、そのまま浮上することも敵わない。

そのままぐるりと左手上手投げの勢いを殺さず前周りに空中で回転しながら、高度を下げる。
左手の爪でポーチを切り裂けば、眼下にトリモチのような粘着く物質が三つ落下してシインに向かうだろう。

既に相手の射撃能力についての知識は頭に入れてある。
上空に留まるつもりもなく、鳥もちを追って乱子もまた地面に降り立つはずだ。
…妨害されなければ、無事に。

シイン > 「…チッ」

いきなり出鼻を挫かれた。
だが対抗策としては引き千切るしかなかっただろう。
これが人間であれば、間違いなく終わりだった。
自由に関節から細かな部分まで外せる昨日に感謝せねばならない。
袖部分は腕が引きちぎれたことでガラ空きになりブラブラと身体が動く度に揺れる。

腕がなくとも身体だけで無事にバランスは取れている。
上手く右に身体を反らして、投げられた自分の右腕を躱すのだ。
敵に自分の腕が投稿されるのはいい気分ではない。この返しは倍にして返す、そう誓う。

すかさず彼女は器用に空中で回転を決めながら、何かと共に落下しながら自分に向かってくる。
このままでは無事では済まない、誰だって分かる。

異能は発動された、いや、発動されていた。

千切れた右腕は再生され、コートの袖を全て満たす。
それは再び生えたことを示す。
間髪をいれずに、彼は懐に手を差し込んで、大口径銃を取り出す。
当たらないように、下がりながら3つの落ちてくる物体に正確な射撃を一発ずつ撃ち込んで、一発を彼女の翼の翼膜に撃ち込む。
まずは翼を封じ込めようという考えか。
避けようとしなければ、当たるだろう、最も銃弾の速度を避けれるの話だが。

流布堂 乱子 > あの腕のお陰で、空いた左腕に依る射撃を受けずにすみ、
こうして蜂の巣にならずに居るのだから感謝してもバチは当たらない。
そう、たかだか翼程度に穴が開こうとしかたない話だ。
「うわさ通りの大口径…ッ!
なるほどこれで撃たれたら普通の学生はたまらないでしょう、ね!」
小口径弾ならば難なく弾き返す翼膜に穴が開く。
トリモチを貫通した弾丸がその数を増やしていく。
翼を消して落下した体勢に不都合はない、ただ飛ぶ能力は失われた。

……あいにく公園を焼く気もないし、こんなところで正気を失うつもりもない。
火で怪我を塞ぐことは選択肢から外し、
あるいは飛んで運ぶことを選択肢から外し、
過程を柔軟に変化させる。
「……そんなふうに生えるなら、私が貰っておけばよかったですね。
いえ、今からでも遅くない、か」
相手の再生能力を見るに、行動不能にするのも困難。
ポーチに入った他の投擲物、設置物で捕縛するのも、
根本的に相手に遠距離戦の利がある状況では不可能に近い。
投げさえすれば銃弾より早いが、動作に入るまでで指し負ける。

「それじゃ改めて、その腕を頂くとします…!」
ポーチを爪で引き裂くと、爪先で札を掴みとる。
乱暴に握るようにして、赤い軌跡を描いて爪痕を書き加えて、札が完成する。

札が変化して生まれたのは、刺のような鱗で覆われた、鞭のようにしなる、異形の剣。
足運びから来る踏み込みの不足を獲物で補うと、右腕を通るルートで、体を真一文字に切り裂こうとするだろう。
……それが再生能力によって無意味であると知りながら。

シイン > 「噂か、どんな噂が流れてるのやら。」

悪い噂なのは間違いない。
彼女は翼を自由に生やせるのだろう、それならば自由に翼を消すことも可能か。
まずは一つ"空"を奪った。
制空権を維持されながら攻撃を続けられたらたまったものではない。
最優先事項は達成された。

それで安心するのも束の間、札から生成された異形の剣に
よくそんな芸当も持っているなと感心すら覚える。

「はっ、幾らでも持って行くといい…!!」

彼に痛覚は存在しない、故に突き進んだ。
相手に再生力がなければ、必然と勝ちに駒を進めるのは私なのだから。

細かな動作は銃を持ったままでは対応ができない。
それ故に一時的に腰の空のホルスターに両銃はしまわれた

彼が前へ前へと突き進む中で、異形の剣で切り裂かれる。
不規則な動き、それを瞬時に動きを読み、躱すのは至難だ。
だからこそ敢えて躱さない。
右腕は犠牲になった、が直ぐに生えてくる。
それだけでは済まさずに、身体を切り裂こうとする異形の剣。
それを残った左手で掴んだ、人工皮膚がぼろぼろになりながらも、それ以上の進行を止めたのだ。

だが、身体半分以上は持って行かれたか、なんとか繋ぎ止められている状況だ。
斬られた断面から、白い人工血液が地面を白く染めていく、嫌いな色だ。
思わずして眉を顰める。身体が持ってかれた影響ではなく、その色に。

流布堂 乱子 > シインの体を中程まで食い破った棘鱗の剣は、そのまま結合を解いて、
白い人工血液の中に紅く沈んでいく。
物理的ではないが確かにそれは刺さり、肉の中に身を埋めていく。

落ちたその右腕には視線さえやらずに、少女はその様を確かに見届けた。
「確かに、貰いました。ええ、頂きましたとも。」
再生能力がある、あるいは不死の手合いの為に用意した一枚の札。
あえて攻撃を受けることで一手読み勝つ相手に対する対抗手段。
この剣は攻撃のためだけにあるのではない。
切り裂かれた者の身に食い込ませ、赤龍の鱗の一部としてその居所を感じ取るための、
探知用の術の一端であり…偽装だ。

「過程は無意味で、ただ結果だけが有ればいい…
貴方の居場所を知る術も、得ました。
だから、結果はもう変わりません。」
いずれ風紀委員に依る本格的な手配が掛かる。
それで捕まれば良し、捕まらないようであれば情報を提供しても良いだろう。
「……もしもそうでないと言うなら、たどり着いて見せてください。
捕まるよりも早く、貴方にとっての価値のある結果に」

ポーチを一列切り裂くと、地面へと三つの球形の物体が落ちる。
一つは閃光、一つは音響、最後の一つは煙幕をそれぞれ発生させ…
その片足を龍のモノへと変えて、大きく背後へと跳び去る乱子の姿を覆い隠すだろう。
もちろん、その起爆の前に何発の銃弾が彼女に突き刺さるとも知れないが。

ご案内:「常世公園」から流布堂 乱子さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からシインさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にシインさんが現れました。
シイン > また舌打ちを一つ。
嵌められたのだ、受けては駄目な攻撃だった。
異形の剣が自身の内部機器に埋まり、そして沈み。
取り出そうにも遅かった、なんとも自身の再生力を呪う。

右腕は再生され始めた、そして切り裂かれた胴体も、また同じく。
苦虫を噛み潰した顔。澄ました顔を見せてた時とは大違いだ。

「居場所が知られた隠れんぼか、全くの無意味だな。
他人に言われずとも、価値を見出した結果を作ろう。」

言うことはそれだけだった。
コレが目的だったのか、彼女は背後に飛び立った姿が見える。
そして、数々の手榴弾。この前に授業で説明をしたばっかだった。
目視では頼りにならない。人間なら追うことも叶わない。
だが、私は機械だ。
熱画像計測装置を作動させ瞳の色は移り変わり、ホルスターから左手で一つの銃器を取り出す。

逃げる彼女にマガジンに込められた全てを撃ち込む。
致命傷にはならずとも、何発かは着弾して怪我を負わせただろうか。

そして公園には自分が一人残った。
これからどうしたものか、そんな呟きを見せて。

誰かに見付かる前に、自身の腕と銃の排莢を回収。
それが終えれば公園から去るのだ。

まだ捕まる訳にはいかないのだから。

ご案内:「常世公園」からシインさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に惨月白露さんが現れました。
惨月白露 > ベンチに座り、空を見上げる。

「クッソ、折角人がやる気全開で風紀委員してやろうとしてんのに、
 よりにもよって、兄様の部隊が超閑職だとは思わなかったっての。」

盛大にため息をつく。
確認したところ、彼が所属した『風紀委員会警備部 特殊警備一課』は、
元々、若干特殊な事を扱う部署らしい。
しかもそこの『第二小隊』だ、そうそう動く機会は来ない。

つまり、その部下である彼もまた、
風紀委員として動く機会は滅多に無い、というわけだ。

―――そんな新人講習を委員会街で受けた帰り、
『兎に角超頑張って人助けして罪滅ぼしをする!』と気合を入れていた彼は、

しゅんと耳を伏せてベンチに座って、ビーフジャーキーを齧っていた。

「マジで平和だな。畜生。」

そう憎々しげに呟く、間違いなく、良い事のはずなのだが。

惨月白露 > のんびりと足を組み、肘をつく。

「―――あんの、クソ教師。
 ほら、見ろよ、世界はこんなに平和だぜ。
 太陽サンサン、風はピューピュー、小鳥はチュンチュンだ。
 
 この学生街のどこが薄皮一枚剥げば汚泥ばっかりだっつうんだよ。
 意味わかんない事いいやがって。

 もう、ここは落第街じゃねぇんだ。」

ベンチに肘をかけて、講習の為にしっかりつけていたボタンを外し、
次のビーフジャーキーに手を伸ばす。

『でもま、あいつにハッパかけられたおかげで、
 今日はちゃんと教室に入れたからな、今度会ったら礼くらいは言っといてやろう。
 
 それに、雰囲気に流れされちまったけど、
 冷静に考えりゃそんなヤツが、平然と学校に通ってるわけねぇって。

 俺の為にちょっと大げさな嘘をついたーって、そんなとこだろ。うん。』

そう、ぼんやりと、ビーフジャーキーを頬張る。

『……にしては、ちょっと演技が堂に入りすぎてたけどな。』

心にそんな不安が浮いて、すぐに沈んだ。

ご案内:「常世公園」にアルスマグナさんが現れました。
アルスマグナ > 「やっほー。なになに、クソ教師の悪口?誰々?
 おじさんにも教えてー?」

ベンチの背後から顔をひょいっと出して、白露ににぃっと笑いかける。
いつぞや職員室で脅そうとした考古学教師だ。
夏物のシャツにラフなハーフパンツ、サンダル姿とすっかり夏気分である。

「いやぁそれにしてもいい天気だね。今日も学園は平和だ!ごきげんよう僕の小鳥たち!

 で、暑くない?肉ばっかり食っててのどかわかない?ジュース飲む?」

ぶら下げたコンビニの袋を見せた。

惨月白露 > 「誰って、養護教諭のSM変態クソ教師だよ。
 あのクソ教師、意味わかんねぇことばっか言いやがって……。」

後ろからかけられた声に思わず

「お前ッ!!!いつからそこにいやがったッ!!!
 しかも、お前、どっかで見た顔――――……。」

そう記憶を遡る、二級学生だった頃、
いつかの職員室、不気味なやつの依頼――――。

「―――お前、いつか、職員室で俺が脅した奴じゃねぇか!!!
 
 なんでそんなどこにでもいるおっさんみたいな恰好でうろついてんだよ、
 私服警官ってレベルじゃねーぞ!!!

 なんだよ、復讐にきやがったのか、
 センセェの仕込み武器の腕が一流なのはもう知ってるから油断しねェぞ。
 
 ……そのジュース、振ってあったりしねぇだろうな。」

アルスマグナ > 「えっ何、保健の先生でそんないやらしい人いらっしゃるの?きゃーこわーい!
 っていうか保健の先生はみんなそんな人ばっかりじゃね?
 具体的に誰ちゃんよー教えて教えてー俺じゃなければいっぱい悪口言っていいから!」

口元に手を当て女学生のような品を作りながらおどけてみせる。

「いつからって、さっきそこの道通りすがったらなんか見覚えのある子が
 『マジで平和だな。畜生。』って言ってたからさぁ。

 え、だって先生は普通のおっさんだよ?どこにでもいるおっさんだよ?
 実は世界の命運を握るスーパーマンなおっさんとか無いからさぁ。
 復讐?えーやだよ誰がそんな面倒臭いことするの。
 あれだってよく考えたら君、仕事で仕方なーくやったことでしょー?
 あれからさぁ、失敗しちゃって偉い人に怒られてないかなぁとかちょっと気にしてたんだけど
 全然見ないからさぁ、どうしようか迷ってたんだけどいやーこんな所で会えるなんて奇遇ですね!

 あ、炭酸苦手?炭酸抜きもあるよ?それともお茶がいい?」

ごそごそと袋を漁りながら、隣いい?なんてベンチを指し示す。

惨月白露 > 「この学校の保険教師の事が一気に信用できなくなったな、
 ……あと、ついでに教師全般もな。

 ―――ってか、先生同士って実は仲悪いのか?」

勝手にしろよとベンチを少し詰める。

「そういや、名前は聞いてなかったな。
 なんか、このへんに黒い蜥蜴のペアピンしてたよ。」

頭を指先でトントン、と叩く。

「ああ、平和だな。

 たとえセンセェが実は世界の命運を握ってるスーパーマンだとしても、
 お仕事も無く普通のサラリーマンやらねぇといけないくらいには平和だよ。」

『なんでそんな大量に炭酸もってんだよ』と飽きれながら、
折角だから炭酸貰おうかな、と手を伸ばす。

「自分を脅したやつの心配するなんて、センセェも随分お人好しだな。
 心配しなくても、ちょっとだけ怒られただけで済んだよ。

 ―――今はその仕事からも足を洗って、真っ当な仕事についてるしな。」

自分の着ている風紀委員の制服をくいくいと引く。

アルスマグナ > 「頭に黒蜥蜴のヘアピン……ああーシヅキちゃんかぁ。
 フタモリ シヅキ。ほら童顔の女性の先生でしょ。
 んで、具体的になに言われちゃったのー?薄皮一枚剥げば?きゃーやだーえっちー!
 シヅキ結構そういう噂あるからさもありなんて感じだわー」

詰められたベンチにはーどっこいしょと腰を掛けながら袋から冷えた炭酸のペットボトルを一本取り出して渡す。
パンダグレープ。なんかパンダのマスコットがラベルに描いてある炭酸飲料だ。
自分は無色透明なスブライトの炭酸を取り出して口をつける。
いやー夏って炭酸飲みたくならない?みたいな感じのことをのたまいながら。

「いえーいお人好しでしょ。惚れちゃった?惚れちゃった?
 だが残念だ、俺の心はすでに嫁の手に渡っている。

 あ、そうなんだ。いやでもごめんねー、おまんまの食い上げちゃんとかなってたら申し訳なかった。
 おう、その真っ赤な制服は風紀!かっこいいー!きゃー白露サーン!
 まぁなんか事情はよくわからんが、いいお仕事じゃんよ。お給料もらえる?今度奢って」

べらべらのたまいながら何故か生徒にたかる。

惨月白露 > 「そういう意味じゃねぇよ、この色ボケ教師ッ!!
 この学校のセンセェは揃いも揃って脳内春色ばっかりなのか?
 お前らはもう少し、人を導く側としての自覚ってのをだなぁ……。」

そうぶつぶつと言っていたが、言い飽きると本題に戻る。

「この平和な世界も、一枚薄い皮を捲れば、
 その裏には真っ黒い汚泥が渦巻いてるーってさ。

 こんなに綺麗で、そんで平和な世界なのにそんなわけないと思わねぇか?
 そもそも、折角綺麗なとこにいんのに、
 真っ黒いほうに態々足を踏み入れるのかがわかんねぇしさ。」

炭酸飲料、パンダグレープを受け取ると、
『どうも』と小さくお礼を言いつつ、そのキャップに恐る恐る手をかける。

『このクソテンションだ、全力で振ったヤツ渡して来てても
 まったく、一ミクロンも違和感がねぇ。』

耳を伏せ、顔を逸らして開けるが、
―――プシュ、と小さく音を立てて何事も無く開く。
はー、とため息をつくと、それを一口煽った。

「―――断る、生徒にたかんな。
  ってかむしろセンセェが奢る側だろ。」

だが、そこでふと気まずそうに頬を掻いた。

「……ああ、いや、前に脅したお詫びって事で、
 大盛りのラーメン一杯くらいなら奢ってやるよ。
 
 おっさんにはちょっと多いかもだけどな。」

アルスマグナ > 「ええ~?失礼しちゃうなぁ……。
 っていうか普通に考えたら君らの歳の方がそういうことに結構反応しそうでない?
 なんだい?枯れちゃってるのかい?彼氏彼女の一人も居ないのかい?

 先生と言ってもさ~一人の人間だからな~
 俺なんか成り行きで先生やっちゃってるような人間だからな~」

とりあえずふんふんとひと通り相手が語る本題とやらに耳を傾ける。
ふーんと腕を組みながら意外そうな顔で顎を撫でた。

「へぇ、シヅキがそんなことを。面倒臭そうな顔してなんか面倒見イイトコあるからなぁ彼女。

 まぁあのセンセがどういう意味でそういうことを言ったか、実際の場面に遭遇したわけじゃないから
 俺にゃあわからんが、ここが平和なのは何も最初っからそうだったわけじゃないんじゃないか。
 例えばそう、君のような風紀委員さんたちがいて、混沌の中を法というルールできっちりと区分けして
 幅を利かせているからまぁ一見綺麗に見えている、とも言えるよなぁ。

 本当は案外ちょっとその法が揺らいじまえば、また混沌としたそれこそ汚泥に戻っちまうのかもね。」

 コーヒーの中に混ざったミルクみたいにさ。などと分けの分からない例えを口にする。
 ビビりながら開栓する相手にくくくと笑いながら

「あ、気にしてくれてんの?気前いいじゃん。ラーメンかぁ。俺とんこつがいいなぁ
 えーと白露さんは何味好きなの?折角だからなんかおすすめのとことか教えてよ」

惨月白露 > 「枯れちゃいないし、まぁ、興味もあるけど、
 俺にはそういうのする資格も、される資格もないだろ。
 
 『元二級学生』なんだぞ、俺は。

 ―――にしても、成り行きね、
 センセェはさ、先生やってて楽しい?
 
 めんどくさいとか、実はやりたくないとか、そういうのねぇの?」

そう聞きつつ、炭酸を一口飲む。
喉を爽快感が通り抜け、唇を潤した。

「最初からそうだったわけじゃない、か。
 なんていうか、考古学者らしい言葉だな。
 
 結局あのセンセェもセンセェなりに気を使ってくれたのかなって思うんだけどさ、
 もし本当にそうだったら、なんか嫌だなって思ってさ。

 でも、センセェが言ってんのが本当なら、俺はそうならねぇように、
 元に戻らねぇように、ここを落第街にしねぇように頑張れるって事だな。

 なんせ、俺は、『風紀委員』になったんだし。そういう事だよな?

 ………あと、俺もとんこつが好きだな、チャーシュー一杯乗ってる奴。」

そう言って笑いながら、
『オススメのラーメン屋か』と顎に指を当てて考える。

アルスマグナ > 「えーなにその言い方。資格があるとか無いとか、んなこと関係ないでしょ。
 好きなら好き、愛してるなら車のライトで愛してるのサインを送るぐらい普通でしょ。
 『元二級学生』だから?関係ない無い。人の営みに文句ぶーたれるやつはスレイプニルの足に蹴られちまえってもんだね。ハン!

 だいたいさぁ、二級は二級でも学生ってついてるし
 何より俺は自分の受け持ちへ真面目に顔出してくれて教えを請うてくれるんなら別に誰だろうと構わんよ。
 大事なのは学びたいっていう気持ちに答えてあげることだからさぁ。

 んーんー……まぁやっぱり遺跡とか異民族相手にしているほうが楽しいって面はあるけどさ
 成り行きでなったにしちゃあ上等な職だと思うよ。
 人にもの教えるのはなんだかんだで悪くない、まぁ俺もまだまだ未熟だけどな」

たははと笑いながら頬を掻く。威張るのあんまり好きじゃないんだよな、と言いながら。

「ん、人類はいろーんな試行錯誤の積み重ねの末社会をより良いものにするために
 思想や文化、法を手を変え品を変え頑張って改良してきたわけですしな。
 で、本当にそうだとして、具体的になにが嫌だなって思ったん?

 おーやる気に満ち満ちた風紀委員で結構だ。だがあんまり無茶はするなよ。
 一番危ない位置で頑張らないといけないってことだしな。」

とんこつが好きと聞けばにっと笑顔になって

「いーねぇチャーシュー満載のやつ。翌日胃もたれ確実だけど空腹時にはたらふく食べたいみたいなさ。」

惨月白露 > 「……センセェが人の営みってやつに手ェ出したら、
 スレイプニルに蹴られる前に、フリッグに怒られるぜ?」

そう冗談を返しつつ笑うと、
―――でもなぁ、と首を振る。

「そうは言ってもなぁ、俺みたいなのとそういう仲になったら、
 なんてぇか、そういう仲になった奴に迷惑かかりそうじゃねぇか。

 それに、まだ友達も作れてねぇどころか、
 クラスの奴らとも喋れてねぇんだ、
 そういう仲までのハードルは、俺にとっちゃまだまだたけぇよ。」

そう言いつつも、『ま、一応参考にはするよ、ありがとな、センセ。』
と言って笑う彼の声は、先よりは少し明るくなっていた。

「確かに先生って感じじゃねぇな、
 精々年の近い友達って感じ。まぁ、おかげで話しやすいけど。

 でも、遺跡とか異民族とかを相手にしてるセンセェの本とかも、
 俺は嫌いじゃ無かったからさ、折角なら、
 この世界の遺跡とか、休み使って行ってみたりしたらどう?

 学内にも結構色々あるっぽいしさ。それで俺に聞かせてくれよ。
 
 異邦人街に、異世界から出店してるうまいラーメン屋があるんだ、
 そこ、連れてってやるから、その時にさ。もちろん、チャーシュー増し増しで。」

炭酸を一気に飲んでゴミを持ってゴミ箱のほうに歩み寄りながら、
『にしても、胃もたれって、やっぱりおっさんだなぁ』と笑う。

アルスマグナ > 「ええーなんでなんで?先生めっちゃ真面目でしょ。人の道に外れてませんしー
 怒られませんしー大丈夫ですしー」

ぶーぶーとこどものように唇を尖らせて拗ねる。
が、消極的な白露の態度と言葉に表情を変えて

「君が二級学生で何を具体的にしてきたか、とかその好きになった相手が二級学生だった君をどう思うか
 とかはまぁ……なんとも言えないけどさ。

 でもさ、恋に障害はつきものだしその迷惑さえもそれでもいいと思うから付き合うんじゃないの?
 好きってのはそういう現実的な問題とかどうでも良くなるぐらい強い気持ちのことだぜ。
 焦らずゆっくり仲良くなっていけばいいのさ、縁は生きてりゃ腐るほど繋がるんだよ。

 いいこと教えてやるよ。俺の嫁さんも異種族で人間じゃないの。文化とか身分の差とかで結構大変だったけど
 振り返ってみればそういう道のりも悪くないしそれがあったから強い絆で結ばれたかなとか思うこともあるさ」

昔を懐かしむようにどこか遠い目をしながら頬杖付いて語る。
片手で飲みかけのペットボトルを振りながら。

「ひっひっひ、まだまだ若いもんには負けんのだよ。
 肉体年齢はどうしようもねぇが精神だけは老けこんだらシャレになんないからな。

 お、まじで?本結構よかった?うんうん、今度海辺の遺跡行こうと思ってるだけどさ。
 もうちょい準備が必要で整ったら行こうと思う。
 なんなら着いてくる?とか言ったりして。おっさんと連れ立っても楽しくないか。
 白露さんもこれを機会に友達誘って海行ったら?まだそういう仲じゃなくても進展するかもよ。

 お互いそういう経験を交換で話すってならいいぜー。いくらでも聞かせてやらァ。」

にひひと笑いながら、お、いいねーなんて分厚いチャーシューを想像する。

「異世界のラーメンって興味あるな。ラーメンって結構シンプルだからその店とか培ったものが味に出てくるしな。
 よっしゃ、約束だぜ。今度都合がいい時に誘ってよ。すぐ行くから」

はい、これ俺のアドレス。とどこに持っていたのか常世遺跡探索部のチラシを渡す。
その下部にアルスマグナのメールなどが記載されている。

惨月白露 > 「お嫁さんに怒られるっつってんだよ、
 浮気すんじゃねぇぞ、この色ボケ親父。」

そう笑いつつ、彼のおでこをつんつんとつつく。
が、彼の嫁が異種族、と聞けば、ぴくり、と耳が震える。

「へぇ、センセェ、結構ロマンチックな恋愛してんだな。
 ……苦難を乗り越えたからこそ、強い絆で結ばれる。か。」

何かを思い出すように空を見上げて、
そして、ごしごしと目を擦ると、にっこりと笑う。

「分かったよ、もし、そういう相手が居たら、
 俺も積極的に頑張ってみる、もちろん、相手の理解も得るつもりだけどな。
 種族もちげぇし、元二級学生だし、どうしようもねぇクソ野郎だけど、
 それでも、好きで居てくれるって人が居たら、その手は振り払わねぇようにするよ。

 ありがとな、お嫁さん、元の世界なんだろ?
 ……たまには帰ってやれよ、きっと寂しがってる。」

少しだけ尻尾を振ると、ペットボトルをゴミ箱に捨てた。

「ああ、一緒に連れてってくれるなら、一緒に行ってみてもいいかもな。
 ほら、さっき平和だなってぼやいてただろ?
 『仕事』が無くなっちまったから、時間を持て余してるってーか。
 ―――変な話だよな、あんなに嫌がってたのにさ。」

そう肩を竦め

「―――思い出交換の誘いには乗りたいんだけどさ、
 そういう事なら、まずは誘う友達から作らねぇとな。」

目を逸らして頬を掻きつつ、ハァとため息をつくと、
チラシを受け取り、一通り目を通す。
小さく首を傾げ、連絡先を見つければ、ああ、と頷き、

自分はポケットから手帳を取り出して、
そこに連絡先を書いて彼に手渡した。

「一応、俺のも渡しとくよ、
 センセェのが忙しいだろ、都合のいい時は前もって連絡はするけど、
 むしろ、センセェの都合がいい時に連絡してくれてもいいからさ。」