2016/07/31 のログ
伊都波 悠薇 >  
「ちがいますよね、研究者さん。知らないでは、行動を移さないでしょう。こうなってほしいという、ことがなければ動かないでしょう?」

端的な事実。だが、それだけで研究者は動かない。
知らん、などという言葉では済まさない。
ある程度の”予測”があって、初めて動くのだと、悠薇は認識している。

「”知りません”……」

告げれば、首をつかまれる。
しめられる、首。でも――逆らうことを悠薇はしなかった。

「……”満足”しました?」

じぃっとずっと研究者を見たまま……

”マネキン” > 【二人の間には多少の距離があった。
そのため首をつかんだというのはおそらく錯覚だが、同時にウィルスによって与えられた感覚でもある。】

(逆らわない。
受け入れることで姉のために行動する、ということか。)

…期待した結果ならある。
伊都波悠薇が姉のために動くことだ。
当初の予定では高峰司を餌に伊都波凛霞を誘導し、伊都波凛霞を餌に伊都波悠薇を誘導する予定だった。

同じ理由では動かないことは、推測されていたからな。
だが現在のところ、君の行動に関してだけ予定通りに進んでいない。

そういう意味で君にこうなってほしいという期待があるとすれば。
伊都波悠薇が自身の異能を正しく理解することだ。そして己の願いと姉のために行動するといい。

これは忠告でもある。君の願いは、その異能にかかわる君の願いの根幹は一体何だ?

(異能はその人物の個性に大きく依存する。
彼女自身の望みか、記憶か。何かがあるはずだ、と推測する。そして彼女はそれを諦めたのだろう。)

【フードの男が顔を上げる。不気味なマネキンのような顔が正面を向く。
指を動かし制御権を奪った彼女の肉体に一歩、足を踏み出させた。】

伊都波 悠薇 >  
「――正しく理解?」

疑問。この異能には、正しい理解が必要だと彼は告げる。
正しく理解するにも何も――

いまさらな話。自分は――

「思い通りに動いていないのはいいことなのか、悪いことなのか……
 それは、結局のところ”結果―おわり―”が来ないとわかりませんが――」

じぃっと、見ている。ただただ、じぃっと。

命じられたように、一歩前に踏み出す――
逆らうはずもない、なにせ――……

「姉のために行動する? 違います。間違えないでください」

歩んで、告げる。

「行動したら、姉のためになるんです」

ふわりと笑いながら――

「私は、もう。お姉ちゃんにもらってばかりじゃないんです」

ご案内:「常世公園」に蕎麦屋さんが現れました。
蕎麦屋 > 半ば以上は、勘。
引っかかった感覚が脚を向け、立ち寄った公園ではあるが。

「あー……」

見慣れた姿と、見慣れたような見慣れない姿が対峙している。あれが噂の妹だろうか。
とりあえずは――静観しようか。介入する、道理がない。

”マネキン” > 【伊都波悠薇と似た表情筋の動きで微笑み返す。】

残念だが、私が期待したのはそういう答えじゃない。
それは異能の話かな。姉に差し出せるものができたと、そういいたいのかい。

なぜ笑う?
もしかしてそのことがうれしいのか。会話の答えは、出せなかったのに。

【制御を維持して彼女の足を動かす。
伊都波悠薇の体の向きを変えて、新たな乱入者へと向けた。】

まあどちらでも興味はない。
結果次第では姉が犠牲になるだけだ。

君への仕掛けはすでに確認できた。

伊都波 悠薇 > 「……?」

言っている意味が理解できない。
噛みあわない。そして、会話とは”どの”会話を指しているのか。

「――うれしいですよ。すごく、すごく。嬉しいです」

こくりとうなずいた。だが――姉の犠牲と聞けば。

「そんな結果はきません。姉を犠牲になんてさせません。なりません。姉は――勝ち続けますから」

断言して。体の向きの先に視線をやり――

「……注射の結果は順調でしたか」

なんて、ぽつりつぶやいた

蕎麦屋 > 差し出すとか異能とか。
まぁ、それなり程度に物騒な会話だ。

そして、どうやら公園に入った時点で補足はされたらしい。
ならば別に静観してる必要もなし。どうにも違和感のある動きをしている妹にちら、と視線を向けて。

「……毎度タイミング悪くありません?私。」

どーにもこーにも、会話のタイミングを逃している気がしなくもない。

ご案内:「常世公園」に高峰司さんが現れました。
高峰司 > 今日は走ってばっかりだ。きっと厄日なのだろう。
そんな事を考えながら、常世公園になだれ込む。

「いた……伊都波悠薇!」

そして、自身の親友を苦しめている元凶ともいえる存在に、声をかけた。

”マネキン” > 君の尋ねた こうなってほしいという、ことだよ。
行動したら姉のためになるんです、なんて言葉が私のこうなってほしいということなのかい。

相手の思考を考えることが苦手なのは傾向なのかもしれないが。

【フードを再び深くかぶり直し、顔を伏せた。】

もうひとつ忠告しておこう。
異能は相互作用だ。

君がそれを信じるのはいいが、最初に君自身が言った通り伊都波凛霞が無事ではないという可能性はなく、勝ち続けるという保証もない。
姉を理解しないまま伊都波悠薇がそれを奪えば、異能は伊都波凛霞からそれらを奪い去る。と、予測しているが。

そのことを考えればそんな単調な答えは出せないがね。研究者には。

【踵を返す。
さらに追加された乱入者の足に向けて、感染細胞にたいする干渉を行う。高峰司の足が意図を外れる。】

注射の結果が順調だったかどうかは、そうだね。
もうひとつたしかめるとしよう。

伊都波悠薇にとりついた存在に干渉する。そこの長身の女性に襲い掛かりたまえ。

(干渉してウィルスに命じた。
この場をすぐに立ち去るから一撃か、二撃か。その程度だろう。
抵抗するかもしれないが。彼女がそれをされても無抵抗かどうかは、興味ある。)

【蕎麦屋を指さして、”マネキン”はその場を立ち去るべく足を踏み出した。】

蕎麦屋 > 「えー……なんか偉く嫌われてますね。いやホント。」

向こうからは諦めた方がよさそうだ。というか、探すのも難儀するんですけど。
それはさておき。何やら物騒な言動していきましたよ、あの人。

なんか後ろからはうちの主人来てるし。
さて、どうしようか。襲い掛かられてもいい体にはしておこう。

伊都波 悠薇 >  
頭の回転が追い付いてない。
それも当然だ。研究者と、ただの”落第間近の学生”。
思考を読めるはずもなければ、考えの根本から違う。

「なら――こういえば満足ですか。”姉のために頑張らない妹なんていません”」

そうだ。姉のためになっているはずなのだ。
姉のためになる異能を手に入れたのだから――

「勝ちます。お姉ちゃんはずっと勝ってきたんですから。次も――」

ぴくり眉が動く。その言い方ではまるで自分が姉を理解できてないような言い方だ

「奪うなんて言い方、やめてください。ちがいます。そんな、”せい”にしないでください。”せい”なんかじゃ、ないです」

むっとして――言葉を吐けば。
子供の様に、むっとした感情のまま――自分を動かす何かに逆らう意思をみせた。

「……私に何か”取りつかせ”んですね」

一つ、理解を得た。得たから――逆らう気持ちをぐっと強くする。
いいや、逆らうではなく、むしろ――

従えと言わんばかりの――そんな意思。
まるで子供の反抗期だ。
さて――そんな気持ちは――……

「……あの、その―― 一応頑張りますけど、ダメだったら、その―― 一思いにお願いします」

なんて、長身の女性に告げて

高峰司 > 「ヘルヴォルか……!?
ヘルヴォル、伊都波悠薇は取り敢えず寝かしつけろ……あっ!」

マネキンを警戒しつつ近寄って行く。が、そこで足の自由が奪われて無様に転んでしまう。
移動不可能。命令を飛ばし、マネキンを目で追う。

「テメェ、伊都波悠薇に何を吹き込みやがった!」

何とかそちらを指さし、ルーンガンドの準備をしながらマネキンに問い掛ける。

蕎麦屋 > 「はいはい、遠慮なくどうぞ?
 そして私はしがない蕎麦屋でございますってば。」

未だにそれで通す気ではある。
謝りながらも中々芯の強そうな妹さんにはばっちこーい、などと構えて見せたり。
ある意味で無駄に安心感があるかもしれない。

「――というかこんなところで戦闘行為とか止めてくれません?いや本当に。」

なんかいきなり構えてる主人は止めておこう。
暴発されたらまた面倒くさいのだ。

”マネキン” > 【三名の様子をしり目に背中越しに手を振る。】

こんな治安のいいエリアで追い回されたりしても困るんだ。
だから彼女の相手でもしてやってくれ。

健闘を祈る。
また会おう、高峰司。しかし行動が早いな…その様子、君は伊都波凛霞に会い、その居場所を知っているんじゃないか?

(さすがに他者を傷つけるとなれば抵抗はするか。
そして姉のため。またこれだ…それが姉のためになっているか、などと聞くのは意味がないだろうな。
姉のことを考えているようで、まったく何も見ていない。厄介な相手だ。とりあえずこの場は高峰司に押し付けておくとしよう。)

【一方的な言葉を置いていく。ゆっくりとした足取りで公園の出口に向かう。】

伊都波 悠薇 >  
立ち去る、後ろ姿に。
何故、そこまで自分たちに興味を抱いているのか理解できないまま。
なにが目的なのかもわからないまま――見送るしかない。
それに余裕もない。新たに誰かが来たのは分かるがそちらに意識を向ければ、今にも襲い掛かってしまいそうだ

悠薇には結局、”何もできない”という結果を寄贈することしかできないのだから……

「――さよなら、また」

また会うことは予想がつく。だからそう返した。
礼は、大事だから。だれに、対しても――

「じゃあ、その。あとはお願いします」

動く。一撃……結局のところ、この悠薇には一つのことしかできない。

襲えと言われたなら――撃ってしまうのは毟り蕾。
でたらめなから出る――

雑な走り、呼吸、身体に変な負荷がかかる打ち方――

だが、結果として絶命というものをもたらす――……

しかし、達人や腕に覚えのある者には、避けるにはたやすい。
それこそ、身構えていたなら、一瞬で片が付くだろう

高峰司 > 「この、待て……!」

叫ぶが、蕎麦屋が攻撃を止める。ついそれに反応してしまい、マネキンはそのまま見送ってしまった。
……居場所は知っている。だが、言うわけにはいかない。
今の凛霞と、妹を会せるわけにはいかないから。

「クソ!ヘルヴォル、わかってんな……!」

となると、見るべきはこちら。
自身の手持ちの中でも、最強の召喚獣と……才能無き伊都波悠薇の勝負。
本来なら見るまでもないが、ヘルヴォルがしっかり加減するかが少し心配だ。

蕎麦屋 > 「……ふむ。」

重心は酷くブレて、動きは稚拙と言っていい。
ただしその動きの先にある結果だけは年頃の少女が引き起こしていいモノではない。
正直去る相手をしてる余裕は――あるにはあるが、そうすると。
妹の方が怪我なりなんなり、それなり致命的な結果を生むだろう。

「はい、ちょっと覚悟してくださいねー」

そういうわけで。
伸びてきた腕を取る。同時に脚を引っ掛けて。崩れきった重心を軸にくるりと力を流して――
ひょい、と抱え上げた。所謂お姫様抱っこ。

ご案内:「常世公園」から”マネキン”さんが去りました。
伊都波 悠薇 >  
「……ふぇ?」

ひょいっと持ち上げられれば。
すごくきれいに腕の中。いや、美人さんの、胸の中。
大きい……

「あ、いやそうじゃなくて――あ、でもありがとうございます? ん? ご、ごちそうさまです? いやその、そのままお持ち帰りとかは困りますけど……」

ぶつぶつぶつぶつ……

妄想劇場トリップはいりました。

高峰司 > 「……はぁ」

余計な心配だった。
否、心配する事が間違っていた。
北欧の戦女神、盾持つ乙女ヘルヴォル。それが、あの程度あしらえないわけがないのだ。

「あークソ、こんなんばっかりだな……ヘルヴォル、よくやった」

溜息交じりに立ち上がり、そして妄想トリップしている悠薇に話しかける。

「伊都波悠薇。少し話がしてーんだが、いいか?」

蕎麦屋 > 「結果を出せるだけでもえげつないですけれど。
 まず基礎を作らない事には、一回結果出したら次が出せませんよ。おねーさんからの忠告です。」

いやまさか、素手相手でまずいかな、と思ったのは久しぶりだった。
それだけでも研鑽の跡は十分に見て取れる。

「……いや、だからしがない蕎麦屋ですってば。」

いつになったら治るのかこの主人は。そんなジト目です。

「で――えー……」

なんか降ろしてもいいのだろうか。
抱え上げたらそのままぶつぶつ言ってるけど。大丈夫?

伊都波 悠薇 >  
「あ、いやその……そんな、えっと。注目いっぱいですし
 初めてで、しかもこんな高そうなホテルとかちょっと
 ハードな道具とかそういうのもあれですしもともと女の子同士ですし――――――………………え、あ、はい?」

はっと、名前を呼ばれれば顔をあげて。
慌てて髪を戻した後――

「…………な、なななななななな、なんでしょう?」

何も聞かれてないといいなと思いつつ、訊かれてるだろうなという動揺を隠しもせず。
すごく挙動不審に応えました

高峰司 > 「つってもなぁ……アタシにとって、オマエはやっぱヘルヴォルなんだよなぁ」

どうしても、召喚獣としての側面……ヘルヴォルと言う扱いの方が出てしまうのだ。
まあ、意識した方がいいかもしれない。

「気ィ抜けるなぁ……まあいい。
話っつーのはな。伊都波悠薇、オマエの異能の事だ」

そして、気が抜けつつも即座に核心を突く。
回りくどく行っても仕方ない。ここは、最短最速で。

蕎麦屋 > 「そういうのがお好みです?
 高そうなホテルはちょっと手が出ませんけど。」

元気で大変よろしい。
それは脇に置くとして。

「ああ、さっきも言ってましたね。異能がどうとか。」

首を傾げつつ――降ろすのもなんだし、お姫様抱っこは継続。

伊都波 悠薇 >  
「……私の異能のことですか?」

不思議そうに首をかしげる。
誰に聞いたのだろう。恩のある相手。顔も名前も忘れたわけじゃない。
が――交流がそんなに深いわけでもない。
姉とのつながりはあるかもしれないが、自分とは久方と言えるくらい希薄な関係だ。
判明して、外にでてまだ、一日もたっていないのに……

「……なんでもないです。わ、忘れてもらえると……」

また顔を赤くしてうつむいた。胸の中でもじもじとしつつ

高峰司 > 「ついでだ、オマエも聞いとけ蕎麦屋」

意識して呼び方を変えてみる。あんまりしっくりこない。

「まずは確認だ。
伊都波悠薇。オマエの異能は『平等』。対象との幸不幸の合計を強制的にゼロ地点にする因果干渉系能力。
異能の対象は姉の伊都波凛霞。具体的な効果として、片方が幸福になれば片方が不幸になる。オマエが1000円落とせば、凛霞が1000円拾う。
そんな感じの能力……っつーことで、合ってるか?」

この確認は必須だ。
あの情報がウソでないとも限らない……流石に、全て信用出来るわけではないのだから。

伊都波 悠薇 > ――本当に誰から聞いたんだろう。
そう思わずにいられないくらいの内容だった。
言葉にせずとも、それが正しいということはわかるだろう。

蕎麦屋 > 「や、まぁ嫌でも聞きますけどね。」

蕎麦屋と呼ぶなら納得した。
聞きたくない話でも聞かざるを得ない状況である。

「……いやぁ、元気でいいんじゃないですか。」

忘れろと言われても、別段否定するような内容でもないし。
姉より面白いかもしれない、揶揄いがいがある的な意味で。

高峰司 > 「……そうか」

表情で分かる。アイツの……ルギウスの寄越した情報は正確だった。
ならば、言わねばなるまい。
蕎麦屋に念話で『場合によっちゃ抑え込め』と命じつつ、言葉を放つ。

「なら、結論は早えぇ。
伊都波悠薇。その異能、棄てろ。封じるのでも、抑え込むのでもいい。
オマエの異能は、アイツを……凛霞を苦しめるだけのものだ。
だから、棄てろ」

伊都波 悠薇 >  
――……?

首を傾げた。何を言ってるか全く、理解できない。
棄てろと言われて棄てられるものでも、封じれるものでも抑え込めるものでもない。
そして姉を苦しめていると、口にする。

それも、理解できない。

「”できません”」

だから、そう答える。
きっぱりと、応える。

蕎麦屋 > 「……まぁ、なんていうか。」

性急だなぁ、という気はする。
退院は今日ではなかっただろうか。

とりあえず、話は傍観していよう。――どうにも結論のある話ではなさそうだが。

高峰司 > 「何故だ」

問い掛ける。
ここでこちらもあっさりとは引けない。
何より……何故、こうもあっさりしているのか。
姉を想うなら、自身の異能の特性がそれにそぐわない事は理解出来ように。

「オマエの異能は、その特性上『凛霞とオマエ、両方が同時に幸福になる』っつぅ選択肢がねぇ。
その時点で……凛霞の幸福はねぇんだ。分かるだろ。
凛霞の幸福の条件には『オマエが幸福である事』が含まれてる。それが絶対に満たせねぇんだぞ、オマエの異能の効果で。
……何故、そうもあっさり『出来ない』で済ませれるんだよ、オマエ。何とかしようって思わねぇのか」

訝るように、咎めるように。
司にとってはとても簡単な理論を展開する。
伊都波凛霞と言う女性の性格を把握していれば、こう考えるのは当然であろう、と。

伊都波 悠薇 >  
「何故って……」

首を傾げた。なにが満たせてないのだろう。
なにがダメなのだろう。なにが一体、いけないのだろう。

「……わかりません。私の幸福と、お姉ちゃんの幸福を。どうして貴女が決めるんですか? お姉ちゃんの幸福が、私が幸福であるのなら、もうすでに満たされています。それに――」

じっと見た。
じぃっと――

「――あなたの言ってること、私に。姉の幸福のために、私に犠牲になれって言ってるようにしか聞こえません。私のことが勘定に入ってるように見えません。恩はありますが、それには従えません」

蕎麦屋 > 「……ん?」

双方の会話の内容を考える。明らかにどこかで噛みあっていない。会話として次元が断絶している、そんな感覚。
かくり、と首を捻って――さて、どこがおかしいのか。

「ああ、成程。」

一人で納得したように頷いた。

「まぁ、忠告しますけれど――司君、貴女に説得は無理ですよ。多分。
 えー……はるかさん、でしたか。少なくとも彼女にとっては。その理論は破綻している。
 いや、むしろすでに達成されているのですかね?」

実際は分りませんけど、と舌をぺろりと。

高峰司 > 「…………は?」

いみが わからない。
なんで、そうなるんだ。

「いや、おかしいだろそれは!?オマエ、何考えてんだ!?
オマエはあの姉を慕って、幸福になって欲しいんじゃねぇのか!?つうか、そんな使い辛いにも程がある異能に固執する意味があんのか!?
分かってんのか!?凛霞が優秀であればあるほど、オマエにはその逆……無能であることが押し付けられる!
そして、凛霞が幸福になる事でオマエが不幸になるなら、そこに凛霞は不幸を感じちまう。そう言う性格なのは、妹のオマエが一番分かってんじゃねぇのか!?」

この異能は、その性質上、絶対に『平等』をもたらさない。
結果の合計値をゼロとするだけの欠陥品、双方が綺麗に釣り合えば『平等』をもたらすかもしれないが、それは現実問題あり得ない話だ。
『天秤』……そう、ルギウスが表現したのは確かに言い得て妙だ。
総量を吊り合わせるために……片方に幸福が乗れば、もう片方に同量の不幸を乗せる。それが伊都波悠薇の異能である。
何故それに固執するのかが、まるで理解できない。
双方が『他人を蹴落としてでも自己の幸福に寄与すればそれでいい』と言う性格なら分かるが、この二人は明らかにそうでは無いのだから。

「どういうことだヘルヴォル、達成されてるだと……?」

蕎麦屋、と呼ぶことすら忘れて問い掛ける。
寧ろ、伊都波悠薇の理論こそが破綻しているように司には思える。
何か見落としでもあるのか……?

蕎麦屋 > 「んー……
 いえね、司君。そもそも幸福とは何か。という話なんですよ。多分。
 見ている世界が違う、尺度が違う、方向が違う。言い方は何でもよろしいですけどね。」

妹さんを抱えたまま、首をもう一度傾げる。
さて、今しがた聞いた話がどこまで合っているかの確信もありはしないが。

「まぁ、どういう意味かは、一度頭を冷やして考えると良いでしょう。
 病み上がりの子に無理をさせてもなんですし――私は家まで送り届けてきますけれど。」

説明はほどほどに。さっきの今で考える暇もなかっただろう。
強引に話を切り上げて――送っていくつもりのようだ。
あの屋台に比べれば少女一人など荷物にもならない。故に当然抱えたままである。

伊都波 悠薇 >  
「……何を考えてるって」

急に取り乱した目の前の女性に困惑を隠せない。
優秀であれば、無能より幸せに間違いない。
そもそも前提が間違ってる。
自分が不幸……?

「……どうしてフコウって決めつけるんですか。”不幸―シアワセ―”ですよ。全部報われますから」

姉へいくプラスの現象によって。

「――姉が、それを不幸に感じている……っていうなら。今度話し合ってみます。貴重なお話が聞けて、うれしかったです」

自分ではないものから見た姉は、そう見えている。
のなら、猶更わかってもらわないといけない。
気にしなくていいんだと。お姉ちゃんはそのまま幸せになってくれていいんだと。

そのことを教えてくれた彼女には感謝で――

「ありがとうございます」

素直にそう告げて。
裏も何もなく、純粋な感謝を――

「あ、えっと。降りて歩けますから!」

送るといわれれば、慌てて降りようとする。
もう、変な干渉はないようで……

蕎麦屋 > 「だーめです。
 病み上がりにあんな無理させましたしね。責任くらいは取りましょう?」

無理、というのは先刻の一撃の話だろう。
慌てて降りようとする動きを軽く、制した。
まぁ、理由は半ばこじつけで。面白がっているのが正直なところだったりするのだが。

そんなわけで。何事も無ければ家までこのまま送るつもりの様子。

高峰司 > 「幸福が、何か……?」

一定の定義は出来ないが、一般的な概念は大雑把にイメージ出来る。
優越する事、勝利する事、満たされる事、願いが叶う事。
自己にとってのプラスが発生している状態を、幸福と言うのだろう。
伊都波悠薇の言葉には、違和感しかない。
全体的に違和感が渦巻くが、それが形として頭の中でまとまってくれない。
分からない。幸不幸とか、そう言う概念の問題じゃない。
伊都波悠薇。
この人間の思考基準が、全然分からない……!

「……い、や」

止めろ、と言いたかった。
その話し合いは、きっと止めだから。
だが、止まらない。伊都波悠薇には、きっと話が通じない。

「ヘル、ヴォル……。ソイツ送ってけ、アタシは帰る……」

頭痛とめまいを同時に覚えながら、ふらふらとその場を後にしようとする。
理解が及ばない、と言う事が、これほどまでにキツいものだとは。

伊都波 悠薇 > 「……大丈夫ですか? 私よりもその、あなたを送ってもらったほうが」

心配して――そして……

「でも姉を思ってくれているのはすごくわかりました。これから姉の良き友人で。姉を助けて、勝利、させてあげてくださいね」

そう告げ、見送り――

「……ぁぅぅ……――」

結局長身の女性に力で逆らうことができるわけもなく。
衆目の注目を浴びながら帰るのだろうかとか、いろんな妄想をしつつ黙り込んでしまって。

蕎麦屋 > 「――」

主人にかけた感謝の言葉。
これが埋められなかった溝の表出、なのだが、あの主人が気付けるだろうか。
まぁ――

『まずは足元を固めるべきかと思いますよ?
 此方の方は――それほど心配しなくても大丈夫でしょう、きっと。』

去る背中に、念話を通した。
足元――件の姉と、自身の事。まずそちらが片付いてから、の話だろう。

「――では参りましょうか、お嬢さん?」

弄りがいがあるなぁ、などと思いながら。結局家までお姫様抱っこで送っていくのでした。
去り際に制服の胸ポケットにメモなど差し込むおまけもつけて。

メモの内容は――蕎麦の出前発注番号でした。宣伝大事。

高峰司 > 『考え、とく』

それだけ告げて、ゆらゆらと公園を去る。
何で、そこでありがとうなんだ。
何で、姉の勝利条件を考慮してないんだ。
まるで、わから、ない。
ここ数日でも最上級の疲れを見せながら、その場を後にした。

ご案内:「常世公園」から高峰司さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から蕎麦屋さんが去りました。