2016/11/22 のログ
ご案内:「常世公園」にルベールさんが現れました。
ルベール > 鳴り響くホイッスル。
綺麗に手入れされた芝の上に、22人の選手が走る。

「まだたった3点差3点差! 後半で一気に逆転な!」

ボール一つにきりきり舞いをしちゃう異邦人商店街チームの中心人物は、煉獄部隊長、国立愚連隊と称される炎の兵団を任されていた女、紅のルベール。
バスケット、野球、プロレスときて、今日はサッカーの助っ人だ。

とはいえ、スタミナ不足のおっさんが10人のこの商店街チームでは、若手少年クラブチームに全く歯が立たないのが現状である。

ルベール > 「みんな、ちょっと。」

後半キックオフ開始前に円陣を組んで、作戦を授ける。
いろいろ考えたが、勝つためにはこれしかない。

「いいか、ボール裁きとかパスの精度とか、どう考えても差がデカい。
 とりあえず身体を相手とボールの間に挟んで、取られないようにして後ろでもいいからパス。

 んで、蹴れる時は相手のゴール前まで思いっきり蹴りだす。
 後は私がなんとかする。 オーケー?」

指示を出せば、戦士たちはポジションに散っていく。

ルベール > 「でぇりゃぁっ!!」

吠える女。センタリングと呼ぶには微妙なボールであっても、だれよりも高く飛んで、思い切り頭でゴールに突き刺さんとする。
この空中戦は効果は絶大だった。

まず、彼女は非常に女性らしい身体つきをしていたものだから、なかなか全力で止められない。
その上、まともにぶつかったとしても、少年や青年の2人くらいは吹き飛ばすパワーを内包している。

結果、だれにも止められない空中爆撃機が完成したのである。

相手のディフェンス2枚を吹き飛ばし、髪を振り乱してゴールを量産する鬼神がそこにいた。

ご案内:「常世公園」に東雲七生さんが現れました。
ルベール > ………結果。

「ちくしょー、別にいいじゃんか。ぶつかって振っ飛ばされるくらいさ。」

ため息交じりにつぶやく女。
鬼のように短時間でゴールを量産したのだが、相手チームに負傷者が増えすぎたのか、退場処分を食らったのである。

相手チームは最後は7人で試合してたから、チームは6-5で勝利したけど。

東雲七生 > 委員会街からの帰り道。
何やら祭りの喧騒とはまた違った賑やかさの公園を通りがかり、何事かと様子を見れば。
サッカーに興じる人たちを見つけ、常世祭中でもやるんだなあ、と感心する七生だった。

「……サッカーかあ、前にやった時は色々迷惑かけちゃったしなあ。」

苦い思い出と共に試合を眺めていたのだが、その中に見覚えのある姿を見つけて。
思わず叫びそうになるのを堪えて、ひとまず試合が終わるまで待つ。


「ルビィ!!」

試合が無事に終わり、選手たちが後片付けを始めた矢先。
目当ての人物へと、とりあえず挨拶代わりに飛び蹴りを放ったのだった。

ルベール > 名前を呼ばれてからの飛び蹴りならば、それを受け止めるだけの技量はある。
振り向きざまに足が飛んで来れば、思わず声をあげながら腕で受け止めて、よろめいて。

相手を見れば、にひ、と唇の端を持ち上げた。

「おー、いいとこを狙うねぇ。
 確かに今なら体力は半減ってとこか。

 ……あー、あー、いい。 気にすんな。
 別になんでもねーよ。」

騒ぎを聞きつけて集まってくるチームメンバーを手で追い払いながら、蹴りを受け止めた腕を軽く振る。
痺れがちょっとあるが、それもまた良い。

東雲七生 > 「ぐぬぬ……」

難無く受け止められて眉根を寄せる。
本気でショックを受けるほど力を込めた一撃ではないものの、それでも期待したほどの効果は無いと知ると悔しくなる。
やっぱり名前を呼ばず不意を突けば良かったのだろうか、と思いこそするもののそこはどうしても踏ん切りがつかない性分だった。

「くっそ、まだまだ全然かあ……」

悔しさを残したまま、片手を地面について、そのまま体全体を回す様にブレイクダンスよろしく足払いを仕掛ける。
避けるにせよバランスを崩すにせよ、直後には突き上げるようなドロップキックのおまけつき。

ルベール > 「手段を選んでるうちは………っとぉっ!」

正対してしまえば、足払いを飛び上がって避けるのは簡単だ。
ただ、そこから突き上げるような蹴りが飛んでくるのは予想外。
それを腕で受け止めながらも、空中で振っ飛ばされて。

芝でバウンドして、そのまま回転して距離を取り、起き上がる。

「いーのかい。
 今、私はスパイクつきだけどさ。」

かちゃり、と音をさせてスパイクのついたスニーカーを見せる。

東雲七生 > 「ふっ……ぬっ!」

蹴りが受け止められれば、ルベールの腕を足場に跳び退る。
身軽な動きとは裏腹に、放たれる蹴りの一撃は反して重い。

空中で体勢を立て直してふわりと着地すると、にっ、と悪戯っ子の様な笑みを浮かべて。

「別にスパイクくらいどうって事ないよ。
 それとも、フェアじゃないって言うんなら俺も靴底に五寸釘くらい付けて来るけど。」

とっ、とっ、と小さく跳躍しつつ軽口を叩く。

ルベール > 「そうかい、そうかい。」

鋭くテンポを刻みながら言葉を発する相手に、一歩、二歩と歩いて芝生から出つつ。
手をぶらぶらさせて、息を吸い込んで、吐く。

「釘をつけてくるってのは悪い選択じゃあないかもな。
 ……軽くてしゃーないもんな。」

挑発する。にしし、と笑いながら、スタジアムの壁を背にして。

東雲七生 > 「軽さはその分、回転数で何とかする……しッ!!」

ぱんっ、と小気味良い破裂音と共に瞬間的に加速し間合いを詰める。
二度目の破裂音、地面を数度蹴りつけて勢いを増した踏込と跳躍、それらが常人に認識できるのは手を叩いた様な音、としてのみ。
跳躍した七生は、体全部を捻るようにして勢いをつけた回し蹴りをルベールへと放った。

「んじゃ、行くよっ!」

ルベール > 「来い。」

スパイクで己を地面に縫いとめる。
芝から出たのは、食い込みを強くするため。
壁を背にしたのは、吹き飛ばされることを防ぐため。

一撃を………いや、攻撃全てを受け止めることを前提とした、アストライドポジション。

彼女の構えだ。


「……ふんだ、りゃっ!!」

回し蹴りの、その足に己が肘を思い切りぶち当てんとする。
ケンカ慣れ……どころか、命のやり取りに慣れた女の「当て感」。

東雲七生 > 「フゥ……ッ!」

放った足に肘を当てられ、僅かに眉が歪む。
小柄な体躯が放つには重い蹴りでそのまま押し切るのかと思いきや、体だけが先行する様に捻られて。

「……ここから気ぃ抜かないでよねっ!?」

跳躍に使った軸足が、遅れてルベールへと迫る。
迎え討たれた足を軸に、更にもう一撃放たれたのだ。

ルベール > 「っしゃっ!」

その軸足に、今度は頭を叩きつける。
先ほどハットトリックを叩き込んだ黄金のヘディングをそのまま蹴りの迎撃に使う。

刃物を使う相手と戦う時とは全く違う覚悟。腹の括り方。
超痛いことを前提として、それに負けないだけの意地を捻り出す。
ざっくりといえば、すごいやせ我慢。

彼女の殴り合いは泥仕合になりやすいのは、そういう理由だ。

「っせ、ぃっ!」

同時に手を伸ばして、掴もうとしてくる。
全力で走り回った直後なのだから、スタミナ勝負にはしたくない。
だからこそのこの戦い方だ。

東雲七生 > 「こッん……のォっ!!」

二撃目も防がれたように見え、歯噛みする。
しかし悔しむ暇は無く、痺れる足を更に振り回そうと地面へと腕を伸ばしたところでその身体を掴まれた。

「くっ……!」

──投げられるッ!
以前見たプロレス技が脳裏を過る。
流石に受け身も取れないまま地面に叩きつけられれば大事だ。
どうにかして一度身体を安定させなければと考え、咄嗟の判断で取った行動は、こちらもルベールのシャツを掴むことだった。

ルベール > 「へ、っへ。惜しかったけどな。」

当然のように、その腕に力を籠める。
相手がどこを掴もうが、そんなことは気にも留めずに。

「……んだりゃぁああああっ!!」

投げ飛ばす。
自分が背にしている、コンクリートの壁に全力で投げつけるのだから、始末に負えない。
蹴りを受けて、相手が十二分に強いことは理解したからこその、彼女なりの礼の尽くし方。

激しい音がしてシャツが裂け、下着姿になってしまうのだけれど。

東雲七生 > 「う、……ぐ、あっ!?」

投げられるというより、半ば叩きつけられるように壁へと激突する。
シャツを掴んだお陰か、勢いは多少殺したとはいえ、それでも背中からぶつかって視界が明滅した。
手足が痺れて、為す術無く壁にもたれる様に地面へとずり落ちて。

「………~っ!」

ぶつかった衝撃で肺の空気を全て吐き出した所為か、悲鳴も上げられずに痛みに悶絶する。

ルベール > 流石にいきなりケンカを始めて、そして服が脱げれば、誰もが注目するだろう。
サッカーの試合が、いきなり乱闘になってしまったのだけれど、殴り合いに集中した女は、それに気を取られることも無く。

「………っしゃ、あっ!!」

走り込んで、コンクリートの壁の傍にうずくまった相手に、膝を叩き込まんとする。
コンクリートの壁と膝とのサンドイッチだから、骨の2~3本は確実に貰おうという算段。
下手したら死ぬかも? だからどうした、と言わんばかりの、全力のタックル。

一撃が軽い、ボクシングの打ち合いのような戦いになれば体力は持たない。
この場で、決めに行く動き。 容赦など微塵も無い。 思ったよりいっぱいいっぱいだ。

東雲七生 > 「………、ぁ、……は。」

肺が震えて呼吸が十分に出来ない。
何度か口を動かし、空気を求めるが上手くいかず、項垂れた視界の端でこちらへ向かって来るルベールの姿が見えた。

(──あ、これ駄目だ。負け──)

(──負けるのか、俺。馬鹿言うな──)

心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。
こんな所で躓いてる余裕はない。一分一秒でも惜しい。
負けられない。負けてる暇は無い。絶対に。

(──俺は、負け、ない……ッ!)

そこからは意識の外。
こちらへ突進にも等しい勢いで迫る膝を僅かに横に逸らす。
背後は自分がぶつかって硬さを把握済みの壁だ。戦闘不能まではいかずとも、それなりなダメージにはなるだろう。
そう期待して、力の塊のようなタックルをすんでのタイミングで逸らした。

ルベール > 「…が……っ!」

全力でぶつかりにいってのタックルを逸らされれば、コンクリートに思いっきり激突する女。
流石にヒビこそ入らないが、激しい衝突音が響き渡って、周囲の人間が目を背ける。

「………まだ動けるかよ。
 この島は、マジでとんでもねーのが多いな。」

頭を抑えて、片足でぴょん、ぴょんと飛んで距離を取る。
トドメを刺そうと突き出した膝は、ぐしゃりと音を立てた。
多分骨が逝った。脚をつくこともできないほどの痛みを堪えながら、ぺ、っと血のついたつばを吐き出す。

「………こんなもんでいーだろ。
 流石にこれ以上やると、いろいろ呼ばれるからな。」

周囲の人間がざわつき始めたところで、ちぇ、と舌打ち。
改めて考えると目立つ格好だからか、着替え貸せ、と本当の白いシャツ一枚を上に羽織って、その場から逃亡を試みる。

東雲七生 > 「はぁ……はぁ……ッ!」

ようやくまともに呼吸が出来るようになり、息を荒げながらよろよろと立ち上がる。
手に握ったままだったシャツの残骸をひらりと投げ捨て、まだ焦点の定まらない紅い瞳でルベールを見据える。

「……ま、だ、……やれ……るッ!」

ギリ、と奥歯を噛み締めて睨みつける様はどう見ても痩せ我慢。
しかし瞳だけ異様にギラギラと燃え猛り、さながら手負いの獣の様な獰猛さを見せていた。

そしてそのままルベールが去るまで睨みつけていたが、最後には糸が切れた様にその場で気を失ったという──

ルベール > 「……惜しいな。それだけの気概があるなら、手段を選ばなきゃ私くらい殺せるだろうに。」

思う。私は二度殺されていた。
でも戦いにIFは無い。きっと10分後には彼女は忘れているだろう。

金色の炎はサッカー場に騒めきを残して、颯爽と(片足で)去るのだろう。

ご案内:「常世公園」からルベールさんが去りました。
東雲七生 > 遠退いていく意識の向こうでルベールの声がする。

違う、そうじゃない。
俺は殺すために強くなりたいんじゃない。

そう口にしようにも、擦れた息がひゅうひゅうと漏れるだけで言葉にならない。

そういうのじゃない。
そういう強さじゃない。

繰り返し繰り返し強く思いながら、七生の思考は闇へと沈んで行った。

ご案内:「常世公園」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にウィトサーレさんが現れました。
ウィトサーレ > 人影もまばらな公園に,響き渡るリュートの音色。
今は水が出ていない噴水のてっぺんに,無駄に良いバランスで立っている吟遊詩人がいる。

ご案内:「常世公園」に谷蜂檻葉さんが現れました。
ウィトサーレ > 『──炎は沈みて暗闇迫り 幼き枝葉は屋根へと帰る
  闇夜に歌いて闇夜に駆ける ドヴェルグならざる汝は誰ぞ──』

谷蜂檻葉 > 「……もう、完全に冬だなぁ。」

マフラーに温い息を吹き込んで、夕暮れ過ぎた夜道を往く。
一息早い冬の息吹が肌を刺し、メガネを迂回する風は顔をはたいて冷やしていく。

それでも飛ばずに、つい歩くのは一つの『癖』だった。
習慣でもある。

人と同じ目線で足早に、公園を横切っていく。

「――――大道芸人さん?」

影法師が立ち並ぶそこで、ふと聞き慣れぬ音色に、詩の無い歌に足を止めた。
止めて立ち寄り、噴水の上に立つ誰かを見た。

ウィトサーレ > さほど高い場所ではないが,貴方からはあまりよく顔が見えないだろう。
というか,ド派手な衣装に目が行ってしまうだろうし……

『──音色を紡ぎて我が歌聴かす されどもイズンの夫に敗る
 汝が二つの宝玉向けし 小さき枝葉は歌い手なりや』

……独特のメロディに,独特の言い回し。
でもなんだか,貴方の質問に答えたような,そんな気がしないでもないです。

谷蜂檻葉 > 公園の街灯を背にした影色の男。

止めることのない旋律を奏でる手に拭われるように、光量に慣れた瞳に『奇妙な男』が映し出されていく。
影を失ってなお、中身の見えない男は謡う。


「………。」

即興で歌う「ミュージシャン」は繁華街で同居人との興行で見かけることは相応に在るが、これほどまでにエキゾチックな格好で、難解な歌詞で歌う芸人は初めて見た。

驚きで口が開き、音楽に言葉を失う。


「ええと……芸人じゃなくて、
 あー…ミュージシャン……とも違う、詩人…… 吟遊詩人!……で、いいのかしら?」

それから、奇妙な沈黙が続いて、なんとなく『大道芸人』という言葉を改めた。
そうした方がいい。そう思ったから。

ウィトサーレ > 大道芸人だろうと吟遊詩人だろうと,きっと,この男にとってはどうでも良かったのだろう。
というか,真面目にそれを聞いているのかさえ定かではない。
ただ,貴女が自分の歌を聴いているし,口を開けてぽかんとしているのを見れば…

……跳んだ。マジでノーモーションで。
しゅたっ!と貴女のすぐ近くに着地して,ドヤ顔のサーレさん。

「…………?」

そして貴女の近くに寄れば,わずかに首をかしげてから,すんすんと鼻を鳴らして…

『──汝が纏うは雌花か蜜か 小鳥を集める女神に似たり
 靡かす黄金も輝き満ちて か細き枝葉を眩く飾る───』

言葉の意味が分からないとしても,行動に遠慮がないというか,
すっげー自由なのは伝わってくるでしょう。きっと。うん。

谷蜂檻葉 > 何故、この男は噴水の上にいるのか。
というか彼は練習として歌っているのか、それとも誰かに聞かせるために歌っているのか。

……もしかして、彼の『アイデンティティ』として歌っているのか。

様々な疑問が脳裏を過ぎっては旋律にかき消されていく。

だが

「―――ぅ”おわっ!?」

突如、影が飛び目の前に現れる。 いや、飛び降りてきた。

女子にあるまじき声を出して仰け反る檻葉。
そしてまた、それを事も無げに、無遠慮に檻葉の匂いを嗅ぐ吟遊詩人(仮称)。

「―――へっ? ……ちょっ、いやいやいや顔近い近い近い……っ!」

同じ評ではあれど、『奇妙な男』の意味が変わっていく。
顔立ちは悪くないが、初対面の人間に顔を寄せられれば反射的に押しのけてしまう。

「何言ってるか良くわかんないけど、『女神に似てる』って何か褒めてくれてる……んだよね?
 とりあえず、ありがと。

 ……ただその、嬉しいんだけどわざわざ目の前にまで来なくても良いからね?」

とりあえず、かの人物と言葉をかわすために問いを投げる。
人の見た目をした獣か否か。

ウィトサーレ > ウィトサーレが押しのけられたくらいでめげるはずがなかった。
その手をひらりとかわしてから,くんくんとその手首やらを嗅いで…
……でもすぐに飽きたのか自分から遠のく。

言葉が伝わっているのかどうか怪しいが,少なくとも,それ以上近付こうとはしなかった。

『──星屑集めて絹糸紡ぎ 黄金を纏いし眩き枝葉
 汝が黄金に瑠璃色落とし 絹糸絡めて胡蝶が生まる』

リュートを背中に背負ってから,こんどは帽子の飾りから青いリボンを1本抜き取る。
それを手のひらでくるくるっと手際よく結んで,チョウチョのような飾りを作った。
金の糸や小さな宝石で触覚だの目だのまで作る器用さである。

はい,どーぞ。

って感じでドヤ顔しながら差し出しましたよ。どうしましょう檻葉さん。

谷蜂檻葉 > 「わ、ちょっと……ひっ、人の匂いを、かぐ、なぁっ……!!」

何だコイツ。  何なんだコイツ。
ヒュンヒュンと軽快に交わしながら身体を沿うように匂いをかぎ続ける奇妙な男 ―――『ヘンタイ』

結局、ぜいぜいと膝に手をついて息を吐く頃まで躱し続けられた。

「…………??」

星屑集めて、何? 瑠璃色?

ヘンタイは器用にリボンを取り出すと、手品のようなスピードでそれを一匹の蝶々に仕立て上げる。
凄い。ヘンタイだが。

「……えっと?」

そのまま、勢いにつられて手に取ってしまったがコレをどうしろというのだろうか。

―――そういえば、胡蝶がどうの。と言う前に何か一言、ヘンタイは言っていたような。

「……こう、かな。」

そのまま、鉤爪をうまく髪に絡めて『髪飾り』として付けてみる。
冷たい風の中、黄金に泳ぐ蝶々を通せばそこに春風を幻視する。 ともあれ、その飾りは似合っていた。

ウィトサーレ > ドヤァ。と声が聞こえてきそうなくらいのドヤ顔である。
もういっそ,匂いどうのこうのよりもただ単に遊ばれたんじゃないかってレベルである。
すっごく楽しそうなヘンタイ,もとい,ウィトサーレさん。

『──雷神トールの妻さえ妬む 眩き黄金を靡かす枝葉
 我が手を離れて汝に留まる 舞い飛ぶ胡蝶は汝の物ぞ──』

声だけでそう歌って,満足気なヘンタイ。

で、貴女が声をかけようとしても,もうなんか興味が全然別の方へ向かってます。
ぴょん,とまた再び,噴水の上へと跳躍しました。

谷蜂檻葉 > 「―――うん? くれる、ってことでいいんだよね……?」

自分でも似合うかも、と思えるものを貰えて嬉しい。
嬉しいのだが、こいつのこのドヤ顔に乗るのは癪だ。 癪だが、でも貰う。タダより高いものはない。

実に奇妙な、会話の体を成していない会話。
まさしく、異文化コミュニケーションである。

とりあえず


「……帰ろっか。」


疲れた気分に見合うような、見合わないような。
闇夜に響き渡る異郷の曲は、その後も通りすがる人々の心を惹き付け


惹き付けた人間をドン引きさせるのだろうなぁ、なんて。

益対もないことを考えながら帰路についた。

ご案内:「常世公園」から谷蜂檻葉さんが去りました。
ウィトサーレ > 貴女の想像通り,ウィトサーレはそこで演奏を再開した。
けれど,貴女の想像とは違って,すぐにそれにも飽きてしまった。

「……………。」

逆立ちしたり,胡坐をかいたり,
それこそマジで大道芸人のように一頻りいろいろとやりつくして,

ウィトサーレ > ある瞬間に,まるで何かを思い出したかのように噴水から飛び降りて,
そのまま普通に歩いて帰っていきました。

めでたくもなし。

ご案内:「常世公園」からウィトサーレさんが去りました。