2015/07/01 のログ
■美澄 蘭 > テストが近い。
蘭の履修している科目の試験はもっぱら後半に集中しているのだが、蘭は「一夜漬け」というものがあまり好きではない。
追い込まれる状況が精神的によろしくない上、それで時間が足りなくなるとどうしようもないからだ。
…もっとも、蘭は日頃から授業の予習復習を行っているので、試験前に焦る必要はない。中学校時代の3年間、5教科でオール5を守り続けたのは伊達ではないのである。
なので、今日も試験前の勉強をカフェテラスでまったり…と思って立ち寄ったところで、大声が聞こえてそちらに目をやると…見知った姿が机に突っ伏している。
「………泪さん?」
小声で、そうぽつりと呟く。でも、視線でも気付くかもしれない。
■三千歳 泪 > 「ランランだ。やっほ」
友達の姿をみつけて、身じろぎもせずに覇気のかけらもない声をかける。かけたつもり。聞こえてないかも。
気だるい余韻が抜けてくれない。たぶん顔も赤いまま。アンニュイすぎて腕も上がらないよ。はやくシャキッとしないと。
「大丈夫……ケガしてるのとかじゃ…ないから…はぁぁ……」
■エトランジェ > 「勝ちました……」
何に勝ったというのか……戦いというものはいつもむなしい……
一応勝者らしくない胸を張る.
うしろでは瓶の中の小人が『ちぇー』と悪態をついていた.
やはり折檻せねばなるまい.
それから二人の来訪者に気付き
『違うって言ったろー?いや言ってなかったか?』
小人はおかしそうに笑い
「あら?どなた?」
少女は頬を赤くして小首をかしげた
■美澄 蘭 > 「………まだそのあだ名なのね」
苦笑しながらその席へ近づいてくる。泪の声は聞こえていたようです。
「…軽めの体調不良を治す治癒魔術なら、一応発動はさせられるけど…」
効くかどうかはまだ分からなくて…と言いながら泪の様子を伺ったところで、泪の同席者に気付く。
「あ、えぇっと…泪さんとは、保健課の仕事の中で知り合って」
そう、エトランジェに対して答えた。
■三千歳 泪 > 「私の友達。ランランっていうの。突撃衛生兵みたいないきもの。あの子とはランランるいるいと呼び合う仲…」
むくり。
「つまり瓶詰めマスターはマスターじゃなくて…それは困るよ! グランドマスターのことこれから何て呼べばいいのさ!?」
「ちなみに私は三千歳泪(みちとせ・るい)。三千歳だけど16歳。お店のコーヒーマシンの修理に呼ばれた《直し屋》さんだよ」
「そうそれ!! またいなくなっちゃう前に報酬貰わないと!」
■エトランジェ > 「ランランさんにるいさん…」
名乗られてから気付く.そういえば自己紹介すらしていない.
「申し遅れました.エトランジェ・アル・ラディスラウス・ドラクレア
と申します」
椅子から立ち上がってうやうやしく頭を下げた
『オレはクルクルだぞー』
と瓶がしゃべっているが……まぁ聞こえないかもしれない.
■美澄 蘭 > 「…私は別に「るいるい」なんて呼んでないけど…」
冷静にしてささやか過ぎるツッコミ。きっと泪には通じないだろう。
「…私は美澄 蘭。1年生よ。
そんなに、かしこまられても………」
エトランジェの名乗りには名乗り返しつつも、恭しく頭を下げられてあたふたしている。
「…えぇっと…エトランジェさんに…そっちの瓶の中の…人?は…クルクルさん?」
クルクルの声まで聞こえているようだ。案外耳は悪くないのかもしれない。
■三千歳 泪 > 「ランランは何でもできちゃうんだねー。栄養ドリンクみたいな感じ? じゃあそれ、お願いできるかな」
「一発シャキッとさー! 動けるようにしてくれると助かるんだけど……マスター待って!!!」
無理やり立ってマスターを呼び止めておく。強敵(とも)に健闘を称えて右手を差しだす。
「きみには負けたよエトランジェ…さすがはグランドマスター。それにマスター・クルクル。かわいい名前だね!!」
■エトランジェ > 「よろしくおねがいしますね」
いえぇーいと言った感じで小人が瓶の中で跳ねている.
それなりの存在アピールらしい.
「あ,はい」
グランドマスター……大師父?というのはよくわからないが
とりあえず手を取り握手する.一応まだこちらの方がなじみ深い.
■美澄 蘭 > 「何でもは無理よ…医学的につっこまないですむ範囲の、あんまり高度じゃない治癒魔術だけ。
…これ以上治癒魔術を伸ばそうと思ったら、生物とか、医学とか勉強しないと」
泪の褒め言葉にはそういって苦笑する。
…が、頼まれれば表情を引き締めて
「…じゃあ、やってみるわね。
…『かの者の身体の妨げを浄化せよ、ノーマライズ!』」
そう蘭が呪文を唱える。
外科的な傷を治す事は無い代わりに、治癒対象のざっくりとした「不調」を大体取り除く事が出来る、中級の治癒魔術だ。
泪のぐったり状態が明確な「不調」ならば、気にならない程度には改善するだろう。
そうとは括りきれないものでも、対象である泪が特別魔術が効きにくい体質でなければ、多少は気分が改善するはずだ。
「こちらこそ、よろしく。
…あんまり畏まらないでもらえると、こっちとしては楽だけどね。
………大丈夫よ、分かってるから」
エトランジェにはもう少しラフに接して欲しい旨の事を伝えつつ、クルクルの方に視線を投げてアピールを受け止める。
どっちにしろ、漏れるのは少し困ったような微笑だ。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に六連星 葵さんが現れました。
■六連星 葵 >
[>入り口の扉が開く。
[>店内を伺うように赤いショートボブの髪を揺らしながら、少女が見渡している。
[>はじめてきたらしく、古風な佇まいの建物に「おー!」と歓声をあげている。
「ここがカフェ? いいところだなぁ。僕にはちょっとおしゃれすぎて浮いちゃうや」
[>先に来ている3人に気づくと、軽く会釈と挨拶を送る。
「ども、おじゃましまーす!」
■三千歳 泪 > 思考がクリアに冴えて、倦怠感が抜けていく。身体のコントロールを取りもどし、また生き生きと動きはじめる。
すごい魔法をかけてもらったっていう暗示みたいな、プラシーボ効果? それもあるかもだけど、実際すごく効いてるみたい。
「ありがと。いいねこれ! すっきりしたよー。今の私なら何でもできそうな気がする!」
「次は負けないよエトランジェ! きみの弱点をきっと見つけてみせるんだから」
「でもグランドマスターはかわいくないよね。今日から君はドラちゃんだ。二人あわせてドラクルクルだ!!」
マスターが怪訝な顔をしてどこかへ行ってしまおうとする。いけない。今すぐ捕まえないと!
「あっ待って、待ってって言ったのに!! いかないと! またね、お邪魔さまー!!」
新しいお客さんははじめて見る子。会釈を返してすれ違う。また今度、どこかで会えたらゆっくり話そう。それまでは、再会を祈りつつ――。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から三千歳 泪さんが去りました。
■美澄 蘭 > 泪のものすごい回復っぷりに目を瞬かせつつ。
「…効いたなら、良かったわ…
………じゃあ、またね?」
用事があったのか、マスターに突撃して行く泪を、若干クエスチョンマーク多めに見送りつつ、新しく入ってきて会釈をしてきた少女に気付き、こちらも会釈を返してみる。
「………共通の知り合いはいなくなっちゃったみたいだけど…
せっかくだし、ここで一緒に勉強しても良いかしら?」
そう、エトランジェに問うた。
■六連星 葵 > 「あ、っと!」
[>走り抜けていく泪に道を譲る。
[>元気良さそうに駆けていくのを見ると、あてられて自分も元気がもらえた。
[>見送ると、どの席に座ろうかな、と店内を見回すだろうか
■エトランジェ > 「うーん……」
と少し悩む.
誰にでも丁寧に
基本的に常時がこんな感じなのだ.
かしこまらないというのがよくわからない.
「善処しますね」
考えた末にそう応えた.
そして席は空いている.
「はいどうぞ.お座りになってくださいな」
こちらもにこやかに快諾した.
しかし,ドラちゃん……
実をいうとそういうあだ名のようなものをつけられたのは初めてだったりする.
顔には出さないが密かに感動しているエトランジェであった.
■美澄 蘭 > 「…困らせちゃってごめんなさい。
無理にとは言わないけど…
とりあえず、私相手には敬語を使わないでもらえると楽で良いわ」
「畏まりすぎない」に悩むエトランジェにそんな事を言いつつ、
「…ありがとう。
それじゃあ、ご一緒させてもらうわね」
相席を承諾されれば、はにかんだ微笑を見せて空いた席に座る。
そして、腰掛けたところを見計らって近づいてきた店員に
「すみません…アールグレイと、焼き菓子のセットをお願いします。
…ミルクは………それじゃあ、お願いします」
と注文をして、店員が去った後にノートを2冊開いた。
■六連星 葵 > [>エトランジェの声がすると葵はびくんちょと背筋を伸ばした。
[>どうやら彼女には蘭しか見えていないような様子で、周囲をきょろきょろと見回した。
[>声はすぐそこから聞こえたのに、と困惑している。
[>どうやら、エトランジェの姿が見えないようだった。
[>よもや目の前にいるのが吸血鬼で、機械である自分には見えない存在であるなどと、思いもしなかったのだ。
「え、えと。おじゃまします……透明人間さん?」
[>ぷるぷると、幽霊でも見るような様子で声がしたエトランジェのほうへと、言葉は返す。
[>目に見えて怯えているのが伺えるかもしれない。
■エトランジェ > 「敬語じゃない……うーん」
自分としては丁寧にしゃべっているだけのつもりなのである.
習慣というものはなかなかに抜けきらない
自分もトマトジュースのおかわりをもらい本に目を落とす.
そこで声をかけられた.
「はい?」
すっとんきょうな声を上げる.
透明人間とは……どうのような異能か種族かわからないがこの島は本当に不思議なところである.
などと考えていた.
まさか自分に対して言われているなんて思わなかった.
なにせ目の前の女の子は普通の人間にしか見えないのだから.
■美澄 蘭 > そうしている間に、頼んでいたメニューを受け取る。
「ありがとうございます」
そして、紅茶を一口。
しぐさ「だけ」ならば、エトランジェともそこまで遜色しないかもしれない。
「………まあ、それがエトランジェさんの「素」なら…そう受け取るわ」
悩んでいる様子のエトランジェに、困るように眉を寄せながらも、笑ってそう返す。
「………透明人間?」
少なくとも、蘭の目にはエトランジェは普通に存在している。
しかし、新たに入ってきた少女が話しかけている方向は、自分とエトランジェのいるテーブルのようにしか思えなくて。
眉を寄せつつ、首を傾げている。
■六連星 葵 > 「ぴゃ!?」
[>今度は明確に位置が分かったようで、涙目でエトランジェを見ているのが分かるか。
[>椅子から半分ずり落ちそうなほど身を寄せ、手に持っていたバックをぎゅっと力を込めて抱きしめている。よほど怯えているのか。
「(あうあうあう!? なんだか自分のほうが奇異な目で見られてる!?)」
「あ、あの……! すいません、お隣に誰か、いらっしゃいますか……!」
[>バッグを抱えていた一方の手で挙手をして蘭に目線を向けて問いかける。
[>そうした後、エトランジェのほう手のひらを広げて指すだろうか
■美澄 蘭 > どうやら、「透明人間」を探す少女は、エトランジェが発する声の方向自体は察知出来ているらしい。視線が蘭の視野に入るあたりで、蘭はそう推測していた。
「………丁度、あなたが指すあたりに白髪でゴスロリ系の美人さんがいるんだけど………見えないの?」
少なくとも、蘭にとってエトランジェは「世慣れしていない良いとこのお嬢さん(蘭を知る他人からすれば「どの口が言うか」状態の可能性はあるが)」でしかない。
ただ、この島では「どこかでナニカが間違って」見えていない可能性はある。
そう思って、葵の方に問いを返してみる。
蘭の普段の授業態度から考えればさほど支障はないものの、試験勉強の準備どころではない。
■エトランジェ > 受け入れると言ってもらえるのはうれしいものである.
特に迫害された経験があるならなおさらだ.
感謝の言葉を述べたいところであるのだが……今はそれよりも目の前の人である.
「えっと……大丈夫ですか?」
なにやらおびえられている気がする.
■六連星 葵 > 「え、えぇ。そんな人が……!?僕何も見えないようぅ」
[>愕然とした様子で驚いて、確かめるように
「ちょ、ちょっとだけ失礼しまーす! 〈探査(サーチ)〉……!」
[>少女はどうやら、魔術の心得があるようだった。
[>ごくごく短い詠唱で、手のひらを大きく広げ、エトランジェのほうへとかざす。数秒の沈黙の後に
「ほ、ほんとだ。人っぽい魔力波長がある……!?」
「あ、はい! ごめんなさい、ごめんなさい! 大丈夫ですよ、だ、大丈夫ですからー!?」
[>全く大丈夫ではない様子で涙目で叫ぶ。
[>それでも正体不明の何がしかがいるわけではないとわかった様子で、
[>へにゃりと力が抜けるのが傍から見ても伺えるかもしれない
■美澄 蘭 > 「………あー、ええ…波長で分かるなら、多分きっとそんな感じ」
きょどりまくっている自分より後に入ってきた少女に、アバウト過ぎる同意を返す。
この少女は魔術の知識に関しては初歩レベルである。アバウト過ぎるのは不可抗力だった。
「…まあ、何か困るなら私が仲介するから、とりあえず落ち着いたら?」
なんというか。少女の混乱ぶりから、そんな感じでなだめるのを試みる。
必要性はそこまで高くないとはいえ、試験勉強の時間はお悔やみになったかもしれない。
■エトランジェ > 人っぽいと言うのがなにやら気にかかる.
まぁ実際人っぽいものなので正解と言えば正解なのだが.
「とりあえず落ち着いてジュースでも?」
そういって頼んだばかりのトマトジュースを差し出す.
これも独りでに動いたように見えるのだろうか?
■六連星 葵 > 「ああ、よかった。どうたんだろう、こんなこと初めてでよくわかんなくて……」
[>涙目で蘭に訴えた。
[>蘭の時間が無碍に失われた自覚もなしに、彼女はこくこくと勢い良く縦に首を振る。
「お、お願いします。声は聞こえるし、幽霊でもなかったと分かったなら安心でき……」
[>と、いった当たりでエトランジェからジュースを差し出されて、彼女は目を見開いて、がたーんと椅子から転げ落ちた。
「じじじ! ジュース! ジュースが空を飛んでるぅ!?」
[>エトランジェが持ってやってきたなどと梅雨ほども思わなかったようで、目の前の状況に再び混乱している様子だ。
■美澄 蘭 > 「………ごめんなさいエトランジェさん…
どういう理屈か私には見当つかないけど、多分あなたがそうするの、彼女には逆効果にしかならないと思うの…」
トマトジュースを差し出すエトランジェと、その動きを見て混乱する葵を見て、悩ましげにため息を吐きつつ。
「何か動きたければ私が代行するわ。
…とりあえず、詳しい話がしたければ、声の方向が近い方がやりやすいんじゃない?
…何かしたいなら、だけど」
エトランジェに、葵に対する行動を牽制しつつ、葵についてはより近くで判別を促してみる。
■エトランジェ > なるほど,彼女には自分”だけ”が見えていないのだ.
全くと言っていいほどに.
現代でも珍しい自分たちのような存在が彼女の世界ではさらに希少になっているかも……
なんてことは知るよしもないが,とりあえず納得する.
とりあえずジュースを机に置き
「どうぞ?」
と声をかけた.
しかしなんで見えないんだろう……などと考える.
それはあちらもかもしれないが.
■六連星 葵 > 「う、うう。僕のせいでごめんなさい。ありがとうございます」
[〉椅子を戻して不安そうに席に身を戻した後、蘭に一礼する。
[★〉蘭が葵に近づくのであれば、葵の瞳がカメラのファインダーのような、
[★〉人間ではありえない挙動をしているのが観察すれば分かるだろう。葵の瞳が生身ではなく機械であるのが分かる
「あ、あの。エトランジェ……さんですか?
怯えちゃって、ごめんなさい。えと、どうなっているか、分からないから、それで……」
[〉しどろもどろの口調で、弁明をする。
[〉自分だって、もし見えないと言われてこんな反応されたら戸惑うだろうし、不安を覚えるだろうと思うと、
[〉葵は詫びずにはいられなかったようだ。
「あ、はい。トマトジュース、頂きます」
[〉なんとか微笑み、渡されたトマトジュースを手に取る。
[〉両手で持つと、くいっと軽く煽り、ぱぁっと目を輝かせる
「あ、青臭くない! 飲みやすいよ、これ!」
[〉先ほどとは打ってかわり、明るい声音でそう感想を述べるだろうか。
■美澄 蘭 > 「………とりあえず、私の隣なら空いてるから」
要は
『正体不明の存在を知りたいならこの席が上等だ』
という事だろうか。ため息まじりにそう葵に告げ。
「………トマトジュースね…嫌いってわけじゃないけど…」
そう言いつつ、頼んだアールグレイを一口。
トマトジュースをあまり好き好んで飲むタイプではないようだ。
■エトランジェ > 「ですよねー.ここのは臭みがなくてよいです.
トマトまるごとで香りも芳醇なのも捨てがたいですがー」
ぱっと花が咲いたように笑う.
彼女は紅茶も飲むが,こういう場所では好んでトマトジュースを飲む,
そんなトマトジュース愛好の輩は少ない.純粋にうれしいのだろう.
顔は見えなくとも声のトーンで喜んでいるのは伝わるかもしれない.
■六連星 葵 > 「わーい! おじゃまします!」
[〉安心したのか、取り戻した明るさでジュースを持って蘭のほうへ向かう。
[〉その横にちょこんと座り込む。言葉とは違い多少の不安は、まだあるのだろうか。
[〉ほっとしているようにも見える。
「うんうん。私こんなにおいしいトマトジュース初めてだよ!」
[〉甘いモノが大好きな葵だ、トマトそのものの甘みが気に入ったのだろう。
[〉同意するようにこくこくと頷いた。
「あ、えと。自己紹介がまだだったね。
僕、六連星 葵(むつらぼし 葵)。最近転校してきたんだ。
よろしく。えと、エトランジェさんと……」?
[〉と、蘭のほうへと視線を向けるか。
■エトランジェ > 「ランランさんですね」
会話の流れで自分の名前は伝わっていたか
そう紹介した.
■美澄 蘭 > 「………美澄 蘭。1年生よ。
編入とかが無ければ、同級生のはずね」
自分の方に葵から視線を向けられれば、苦笑まじりにそう告げる。
「…美澄 蘭よ。英語風に言うなら、「美澄」がファミリーネームで「蘭」がファーストネーム」
泪経由のあだ名がエトランジェに定着する予兆が見えたので、改めて、名前の区分を強調した上で名乗る。
■六連星 葵 > 「はーい、水澄 蘭さんであだ名はらんらんさんなんだね。覚えたよ!」
[〉うんうんとにっと笑う。
[〉そして、ふと思い出したように
「そうそう、僕。アンドロイドで、ええと。機械でできた人間なんだ。
色々驚かせちゃうかもだけど、よければ気にせず付き合ってくれると嬉しいな」
[〉と、蘭とエトランジェの双方へと自己紹介の付け足しをするだろうか。
■美澄 蘭 > 「…そのあだなは今のところ泪さんだけだけど………まあ、良いわ」
『覚えた』と自信満々に葵に言われれば、おかしそうに笑いつつそう言う。
「………機械の、人形………?
見た目では全然分からなかったわね………日常に差し支えない範囲で覚えておくわ、葵さん」
そう、隣に座った少女に告げた。
■エトランジェ > 「むつらぼしさん……はい.覚えました.
アンドロイド……よくわかりませんがめずらしそうですね……」
自分を棚上げしてそう言った.
だが自分が吸血鬼であるとは明かさない.
積極的に隠そうとはしないが明かそうともしない.そんな主義である.
そして,紹介を受けてなお六連星に自分が見えない理由には至らなかった.
なにせ鏡や写真に映らないことは知っていたがそのほかの機器にも映らないとは知らなかったのである.
■六連星 葵 > 「え、そうなの? じゃあ、使わないほうがいいんだね」
[〉と、得心いったように頷くか。
[〉蘭の反応を見るとこくこくと頷いて
「うん、普段は殆ど変わらないから、気にしなくても平気だよ!」
「珍しいと思う。僕、ちょっと来た場所が特殊だし」
[〉と、そこまで言い終えたところであわっと慌てた風にして
「とと! ごめんなさい、よくよく考えれば僕お店の場所確認しにきただけで、待ち合わせしてたんだった!
怒られちゃう! ふたりとも、また今度ね! エトランジェさんが見えない理由、きっと母さんなら分かると思うから、聞いてみる!」
「お話ありがとー!」
[〉そうまくし立てると大慌てした様子で、店を走って出て行くだろう。
[〉嵐のように騒いでいた少女がいなくなり、店は静けさを取り戻すだろう。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から六連星 葵さんが去りました。
■美澄 蘭 > 「………それじゃあ、また………」
嵐のように急いで店を出て行く葵に、呆気にとられつつ、ほとんど消えた背中にそう声をかけた。
「………と、そろそろ試験勉強に取りかかろうかしら」
そう言って、ルーズリーフ形式のファイルと、それとは別のノートを取り出す。
■エトランジェ > 「あら……台風のような方でしたね」
そういって自分も気になり時計を見る.
思ったよりも時間がたっていた.
楽しいお話というのは時間を忘れる.
「あら,いけない!この子にご飯を上げにかえらないと」
そういって瓶に手を置く
退屈だったのかクルクルは丸くなって寝ていた.
その姿は大きな葛餅にしか見えない.
■美澄 蘭 > 「…まあ、元気なのは悪い事じゃないわよ」
「台風のような」という評価には、苦笑まじりにそう伝える。
…しかし、相手の時間に制約があるようであれば
「あら…大変なのね。」
と、引き止める気はないようだ。
一応、先ほど人影のような形を見ているので、今葛餅のような形をしているのは気にしていないらしい。
■エトランジェ > のこったトマトジュースを飲み干し大きなバックにクルクルの瓶をおさめる.
「はい.それでは機会があればまた……」
気付かぬうちに雨はやんでいたらしい.
手を振って店をあとにした.
ご案内:「カフェテラス「橘」」からエトランジェさんが去りました。
■美澄 蘭 > 「ええ…それじゃあ、また」
ゴシックドレスが型にはまる美人だったなぁ…と頭の片隅にしっかり記憶しながら見送る。
「………にしても、不思議な人達だったわね」
魔術学外論のノートを開きながらひとりごちる。
エトランジェが見えない葵と、葵には見えないエトランジェ。
きっとただ事ではないのだろうなぁ、でもこの島では些細な事なのだろうなぁ…などと思いながら、試験勉強に集中する事にした。
■美澄 蘭 > いわゆる教養科目、中学高校の勉強の延長にあるレベルの科目は、蘭にとっては「何とかなる科目」の範疇を出る事は無かった。
問題は、この学園ならではの「魔術」「異能」に関する科目で…特に「入門」からははみ出る領域の多い獅南先生の魔術学概論が、蘭にとっては今期の難関と言って差し支えなかった。
ノートと、補助教材となる魔術学のテキストを真剣な表情で見据える。
(…ここだけ抑えれば、少なくとも今学期の試験でヘマは無いはず)
その視線の真剣さは、ある種の鋭さを周囲に感じさせるのに十分だろう。
■美澄 蘭 > そうして、(蘭にとっては)重要な部分のノートを作りつつ、疲れた合間に紅茶を甘味を取りつつ…どれほどの時間が過ぎただろうか。
蘭は、いざ勉強に集中すれば雑念を放棄出来る、勉学に励む者としてはえらく都合のいい性質の持ち主だった。
「………あ、あれ?」
気がつくと、空が梅雨にしても暗さを増している。
いわゆる、「黄昏時」が訪れていた。
■美澄 蘭 > 「いけない…!」
「魔術師喰い」については、夜の闇の中にこそ警告が出ていた。
『魔力ばかり高く、知識が伴っていない』蘭は実のところ格好の獲物なのだが…蘭自身にそれを的確に判断する能力はなく、ただ「魔力を使う人間は警戒しなければならない」という暗記事項として、暗記事項相応の危機感の元に、飲み物と食べ物の残りを消化すると、レジに立ち寄って会計を済ませて、店を出て行くのだった。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に遠条寺菖蒲さんが現れました。
■遠条寺菖蒲 > 試験期間、といっても自分の知識や経験を確かめられる訳なのだから、緊張しない訳がないのだけれど。
それこそ崖っぷちでなければ少し普段と空気が違う期間なだけだと菖蒲は考える。
思えば、この学園に来てから四年目になるわけでこの空気や年々変化はあれど基本は変わらない試験の形式にも慣れるという話だ。
最初は生徒会の一員ということで一年近くの間、緊張していたが予襲復讐と日々の授業の内容を確りと把握していればそれほど周りの学生たちの言う『一夜漬け』だとかは必要を感じない。
「試験中にこうして甘いモノを食べに来るのっていいかも……」
ショートケーキと紅茶をいただきながら、試験の事を少し考える。
■遠条寺菖蒲 > 異能試験や魔術実技が免除されている菖蒲にとっては試験とは筆記試験で。
生徒会の一員としては成績優秀であれば先ずはいいのだから、日常的に勉強を楽しむようにしていれば試験の結果も成績の具合も悪くはならないし変に拘ることでもない。
言うならば、勉強も趣味だ。
ケーキを摘んでは少し紅茶を飲む。
均等に。バランスよく。
(ここを教えてくれたヴィクトリアさんには今度感謝しておかないとね)
ご案内:「カフェテラス「橘」」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > 「デスジュースの10濃を三つ。注文は以上だ」
男がそう告げれば、ツインテールの店員が凍り付いた。
マニア向けとしてメニューに並べられている激辛飲料、『デスジュース』。
1濃あたりのスコヴィル値は10万以上、最大の10濃になれば100万を悠に越す。
臭いを嗅ぐだけでも倒れることが必死な一品である。
試験期間になると、どこもかしこもピリピリしている。
教室で寝て過ごそうかと思えば居残り勉強組がやかましく、訓練で時間を潰そうかと思えばぎゅうぎゅう詰め。
嵯督に残された時間を潰すための手段は、ここだけ。
仕事の時間になるまでは、ここで過ごすしかないということだ。
「……なあ、10濃以上は頼めんのか?」
店員に無茶振りをする悪質な客の図である。
■遠条寺菖蒲 > 声がした方を横目に見ると私服姿も少なくはないが圧倒的多い学園の制服。それと風紀の腕章。
(風紀委員の人か……)
と一瞥だけする。
しかし、確か注文している飲み物は警告文が書かれるような飲み物ではなかったかと少し考える。
そうだとすると、よくもまあそんなものを好き好むものだな、と菖蒲としては理解できない領域のものだと考える。
――店員の子は困っているが、そこは接客業と言う仕事柄ついてまわる苦労だろう。
対応するのは他の店員か時間帯責任者の責であり、菖蒲は見守る事が他人としてはベストだ。
程よいスポンジと生クリームの配分に味を塗りつぶさないがその甘さを主張する苺。
苺の旬といえば冬から春にかけてだが、季節外れでこれとは驚かされるな、などと思いつつ思考の隅で久藤の方を、と言うよりは店員の行末を見守る。
■久藤 嵯督 > 「………チッ」
根負けしたかのような舌打ち。
どうしても10濃以上は用意できない、ということで話がついたようだ。
店員は深く溜め息をついた後再び青い顔をぶり返して、更なる地獄の待つ厨房へと歩いていくのであった。
一方嵯督は番号付きの注文札を受け取った後に振り返り、席の並ぶ場所へと視線をやる。
そのあたりの席に適当に座ろうと歩き出した時、一瞬だけ視線が合った。
黒く淀んだ瞳に、蒼が映る。
(蒼い瞳……いや、大して珍しくもないのか?)
日本人にしては珍しい、異能の影響だろうか? いいや、日系人の可能性もある。
一瞬だけ考え込んだ後に視線を外すと、それほど遠くない席にどっかりと座り込む。
頼んだ品を待ちながら、長い針金をぐるぐると弄くり始めた。
■遠条寺菖蒲 > ――どうやら決着がついたみたいだ。
結果として、風紀委員の男の無茶ぶりは通らずメニューにないものは出さないとかそういうところだろう。
例外は認めてしまえば、他も例外を認めなくてはならない可能性が出て来るのだろうからお店としてはとても正しい判断だったのだろうと言える。
当然ながらそんな事を頼む方は考慮しないだろうし、自宅で用意できるのならばそれを作ってしまえるのだから店と言うものに不便さを感じての今の舌打ちだろう。
一瞬だけ、視線が交差したがこちら事を大して意識した様子はない。
菖蒲も意識していたのは事の顛末とあの店員は無事に対応出来るかなという好奇心であった訳だ。
(無愛想……というか、風紀委員の人だし少し強面の人がいても当然だよね)
脳裏に知り合いで久藤と同じ風紀委員いつも正しい言葉をぶつけて来る先輩の顔を思い浮かべて僅かに苦笑する。
考えてみると風紀委員で知ってる人は割りと変な人が多いかもしれないと考える。
席についたあとの久藤の場所は意識しつつも何をしているかは特に気に留めていないようだ。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に乙訓 真織さんが現れました。
■乙訓 真織 > 「あか~ん、もう疲れたぁ~……と、菖蒲ちゃんや~ん!」
言葉と裏腹に、ぱーっと明るい笑顔でもって店内に入ってくる長身の少女が一人。
先客の一人に目をやると、右手を猫の手のようにして、にぎにぎとして見せる。
相変わらずのことだが、彼女なりの持ちネタ――もとい、挨拶らしい。
「ほんま奇遇やな~……どや、カフェ『橘』で『タチバナ』シでも……」
ふっ、と不敵な笑みを浮かべて菖蒲を見やり、親指と人差し指を顎に宛がう
真織であった。
■久藤 嵯督 > 風紀委員らしからぬ風紀委員が針金を弄っていると、背広を着た男が入店してくる。
男はアイスコーヒーを頼んだ後、嵯督のいる席のすぐ隣にある、仕切りの向こう側の席に座った。
嵯督は針金弄りを止めると、深く溜め息をついて机を叩き始めた。
『・・・ -・-・ --- ・-・ ・ 』
それだけ叩けくと嵯督は指を止める。わざとらしく欠伸をした。
すると仕切りの向こうからも、机を叩く音。
『-・・・・ --・・・ 』
「……なんだと?」
今まで誰とも話していなかったにも関わらず、驚いたように言葉を零した。
そしてまた鳴り出す、机の音。
『--・- ・・- ・・ ・ - 』
■遠条寺菖蒲 > 店に声を上げてやってきた真織にはすぐに目が行く。
思わず残り僅かになりつつあるショートケーキに向かっていたフォークの挙動が止まる。
身長も高い彼女はよく目立つ。そこら辺の男性よりも大きいのだから目立たないわけがないのだが。
それは逆に言えば、よい個性であり彼女以外の人物だと間違えることがないというトレードマークだ、と思う。
自分に対して言葉を投げかける真織に対し、
至極冷静に。
「蕎麦屋や屋台を食べ歩く訳じゃないのですから座ったほうがいいんじゃないですか?」
少し疑問だとも首を傾げて返す。
そもそも店のコンセプトとして座ってお茶をすることを前提としているのだけど、ととも言葉を漏らして。
「……?」
僅かに、近くの席に座っていた久藤が上げる声にも疑問を感じつつも風紀委員である事だし何かあれば彼がうごくであろう。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 橙色に身を包んだ少女が、店内へ立ち入ってくる。
巷では試験期間。だが畝傍にとって、試験の結果よりも気がかりなことがあった。
「……まだ、みつからない……」
先日に引き続き学生通りを捜索していたが、探し物――刀の鞘は未だに見つからない。
試験と探し物の疲れを取るため、畝傍はこのカフェテラスへ訪れたのだった。
畝傍は立ち入ってすぐ、何やら話をしているらしきポニーテールの少女と、長身の少女のほうを見やる。
だが二人とも名前も知らない上、注文も済んでいないので、こちらからはまだ声をかけない。
■久藤 嵯督 > 寒い。胃から雪を吐いてしまいそうなほどに寒い。
あれで笑いを取っているつもりなのだろうか。それともアレが女子特有の冗談とかいうヤツなのか。
テストの点数に受けたショックも忘れて、くだらない事に対して真剣に悩んでしまいそうになる。
だが、少女の口から出た『菖蒲』という名前には聞き覚えがあった。
退魔の異端児、遠条寺菖蒲。
財団の圧力で"転入"させられたとは聞いていたが、まさかこんな所で見かけるとは思いもしなかった。
常世財団に所属していればよく聞く話だ。
能力があるにも関わらずわざわざこんな所に通わされるということ。
その点に関してだけは、憐れまずにはいられなかった。
■乙訓 真織 > 「のわっ!? ガン無視! マジレスやと! 今月始まって以来のショッキング事件やでこれっ!」
大きく、大袈裟に仰け反る真織。
「やはり強敵……不意打ち喰らわせたればいけるかと思ってたうちが阿呆やったわ……
次こそ絶対笑わせたるからな……」
肩を落として、障気もかくやと、恨みがましいオーラと共にそんなことを呟く。
数瞬おいた後。
気を取り直したか、そや、と手をぽんと叩いて自分の背負っていた鞄の中をごそごそと
探る。
「退院おめでとさんな。で、これな、退院祝い! 次に会った時に渡そうと
思っとったんや~」
そう言って、菖蒲にスッと差し出したのは、劇場版デカタンのDVDである。
初回生産限定盤で、映像特典も盛りだくさんのものだ。
■久藤 嵯督 > 続いて立ち入ってきた少女には、見覚えがある。確か畝傍とか言ったか。
嵯督は、橙色の少女に視線をやった。
どうにも、落第街で見かけた時より気力が落ちてるように見える。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「チョコレートケーキと、カモミールティー」
注文を済ませ、番号札を受け取って適当な席につこうとした畝傍は、以前落第街の路地裏で見たことのある少年の視線に気付く。
近づいて、声をかけてみようとするも。
「……えっと、風紀の……クドーさん、だっけ。まえ、路地裏で会ったよね」
やや記憶が曖昧である。
■遠条寺菖蒲 > 試験期間だというのにやはり、ここはいい店なのだろう。
人がよく来る。
「刺激的なひと月の始まりというのもいいものですよ」
真織にそう笑顔で答える。
そもそも、先ずはギャグや駄洒落、冗談などといったお笑いの文化を馴染ませるところからなのだが、
根気よくやれば恐らく菖蒲もいつか察することだろう。
そして差し出されたDVDを見ると目を輝かせる。
「わ!乙訓さんありがとう!」
受け取りそのパッケージを大事そうに抱くようにしてそう言う。
興奮のあまり、周囲の先程入店して来ただろう女性や近くの席にいる男の事を少し忘れてしまう。
■久藤 嵯督 > 「ああ。"マネキン撃退"の件以来だったな、畝傍・クリスタ・ステンデル」
忘れかけではあったが、場面さえ浮かべばなし崩しに思い出せる。
記憶を探っていくうちに、目の前の少女の情報がかつてのものと一致することがハッキリする。
誰かの変装でもなければ、擬態でもない。わかったところで、そうして自分に接触する理由など思い浮かばないのだが。
同じくらいの時に、ツインテールの店員が注文された品を運んできた。
『デスジュース10濃』を三杯。ほんのりと刺激臭が漂い始める。
嵯督はそれを、ぐいっと一気に飲み干す。ああ、美味い。
やはり辛味はわかりやすくていい。
ごった煮にされたスパイス共の唸り声と、痛みに悶え苦しむ舌の絶叫、燃え盛る胃袋の悲鳴が、嵯督の心の中を満たしていく。
「――飲むか?」
布教開始。
辛味の素晴らしさについては嵯督も認めるところがあるので、
それを是非色々な人間に知って貰いたいと思っている。
残っている二杯のうち一杯を、少女に勧めてきた。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 「うん。あのときは、ありがと」
久藤の言葉を肯定し、感謝を述べると、彼の近くの席に着く。
畝傍は久藤が飲んでいるものに目を向けてみるも、
眼と鼻に強い刺激を受け、思わず顔をそむけざるを得なかった。
「……ボクね、このへんでさがしてるモノがあるんだ。刀の鞘、なんだけど」
誰に語るでもなく、ただ隣にいる風紀委員の少年には聞こえるように。
周囲にいる少女たちにも、もしかすれば聞こえるかもしれない。
■乙訓 真織 > 「心臓止まるかと思ったわ。そんな刺激要らんわ~……」
その言葉には、クイクイ、と手を左右に仰いで拒否の反応を示した。
「返すのはいつでもええで、うちはもう見た後やからな~。試験勉強終わった後のご褒美?
みたいな感じで見るとええよ。めっちゃおもろいで~! 二枚目のは、特典映像やから、
そっちもちゃんとチェックするんやで~」
一応、真織にも勉強を優先すべきだという考えはあるらしい。
こんな少女ではあるが、生徒会の一員なのである。根は至って真面目だ。
「店員さ~~ん? オレンジジュース一杯!」
そう声をあげて注文をすると、菖蒲のすぐ近くの席に座った。
「退院した時、すぐに祝いに来れたら良かったんやけど、色々溜まってしまってて、すまん
なぁ~。あれから、体調大丈夫なん? 問題ない?」
そう尋ねる真織。こんな調子を見せているが、やはり心配していたらしい。
■久藤 嵯督 > 礼を言われれば首を横に振る。
「礼ならばレイチェル・ラムレイに言え。
あの場を抑えたのは、彼女自身の意思だ
顔をそむけられるというのもまた、予想通りの反応ではある。
無駄だとは思うが、少しだけ食い下がってみることにした。
「………一口だけでも、試してみないか?」
「刀の鞘、と一言で言われてもな。
鞘だけが落ちていたなんて話は聞かないし、察するにその鞘、タダの鞘ではないんだろ?
学生の問題ならま聞き入れてやらんでもないが、まずは詳しい特徴を聞かせてくれ」
■遠条寺菖蒲 > 少しして思考が現世に帰ってくるといつの間にか男の席には女の子が。
なるほど、無愛想な人と派手な少女か。などと少しテレビドラマでありそうな組み合わせだと思いつつ真織の言葉に反応を示す。
「そうですね。試験が終わったら家の家政婦さんと一緒に見ようかなと思います」
特典映像はNGシーン臭やらコメンタリーなど普段ならば雑誌で文章としてしか見れない事が役者の声として聞けるという素晴らしさである。
一瞬、思考がトリップしかけるが、どうにか舵を取る。
「私の方はもうすっかり平気だよ。最近じゃ外回りの仕事で書類回収とかして様子見されたくらいだからね。
ただ、久しぶりの仕事は少し疲れがたまったりするみたいだけど……」
先日、家で食事中に寝てしまったことを思い出して少し恥ずかしがる。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 鞘だけが落ちていたという話は聞いていない、と聞き。
「……そっか。やっぱり……」
俯き、落胆しかけるも、再び顔を上げ、一応事情を説明する。
「クドーさん、風紀委員だよね。なら……指名手配されてる『サヤ』って子のことは、しってる?」
サヤは風紀委員に指名手配されている上、畝傍自身からも風紀委員に対して情報を提供している。
だが知らない可能性も考慮し、一応は尋ねる形をとりつつ。
「その刀の鞘っていうのが……『サヤ』の一部、なんだ。うまくいえないけど、それにはサヤのたましいがはいってて……ボクにはその鞘が必要なんだ。学生通りのあたりに鞘だけで落ちてるって、聞いたんだけど……」
■乙訓 真織 > 「家政婦ぅ~? 噂には聞いとったけど、ほんま金持ちなんやな~」
はぁ~、と声をあげて驚いている様子だ。
真織は、別に金持ちの家に生まれた訳ではない。ごくごく普通の、どこにでもある
日本の家庭で生まれ育った。家政婦など、ドラマくらいでしか見たことがない。
店員が運んできたオレンジジュースを飲みながら、真織は菖蒲の話をうんうん、と頷き
ながら聞いた。そして最後まで話を聞き、恥ずかしがっている菖蒲を見てにこっと笑う。
「ま、慣れやな。慣れ。しっかり元の感覚を取り戻すまでは、無理しないことやで。
無理して疲れ果てて、また事故に遭って入院なんかしたら大変やからな」
ぴっぴっと立てた人差し指を振り、菖蒲に向けて真剣な表情を見せる。
そして、オレンジジュースをくぴくぴと飲んだ。
グラスは至って普通のサイズのものなのだが、彼女を前にすれば何処か小さく見えなくもない。
■遠条寺菖蒲 > お金持ちと言われてもイマイチ、ピンとは来ない。
前にも少し誰かに言われたような気はするが。
「そうかな?誰かの家とかと比べたことがないからちょっと分からないかな……」
実家にいた時は監視という名目上で常に複数人が傍にいたし、ここのように家だけに一人と言う事はなかった。
だから、随分と自由に感じているしこれが普通なのかも、だなんて感じていたくらいだった。
また『事故』と言われるとああ言う体験はもう二度としたくはないものだと考える。
露骨に笑顔が引きつるのを感じるが色々と自分でも思い出すと軽く凹むし精神的にブルーになるしおかげで蟲は少し怖くなってしまったしで困る。
「あはは……そうだね。気をつけるよ……」
しかし、気をつけたとしても事件の方から近寄ってくれば恐らく菖蒲は逃げ切れないのだろう。
わずかに入ってくる会話を聞いてると少し物騒な気がしてしまうが、聞いているのは風紀委員の男性だ。大丈夫だろう。
■久藤 嵯督 > ふとDVDに眼をやれば、パッケージに写る『刑事x探偵』が見えた。
書類を自分に押し付けてまで、財団の上司が毎回チェックしていた番組だ。正直いい思い出が無い。
『鞘』と『サヤ』でややこしくなりそうな会話は、イントネーションから意図を読み取ることで理解する。
「……なるほど、彼女の刀に鞘が見当たらなかった理由がそれか」
風紀委員へ通報された情報は、把握している。
『サヤ』=『石蒜』であることはもちろん、『鳴羅門火手怖』神の祠を居城にしていること。
彼女への対応はそれなりの数の風紀委員が行っていたので、自分は他の件に回されていたのだが。
あえて見つけずに石蒜と交戦できれば、死合うことも容易い出来るだろう。
彼女自身もそれを望み、そうせざるを得ない状況を作ってくれるに違いない。
「……鞘があれば『石蒜』の脅威は取り除かれる、そういう認識で相違ないな?」
■乙訓 真織 > 「いや~、十分大したもんやで~、普通の家には家政婦なんておらんからな~」
そう言って、うんうんと一人頷く真織。
笑いは、真織にとってとても重要なものである。
故に、菖蒲の笑いが引きつったことを、真織は見逃さなかった
事故のことを思い起こさせてしまったのだろうか。
真織は直感した。
こうなった時、彼女にできる行動と言えば――
「ま、大丈夫や。タイミングが合った時はうちと一緒に帰ろな?
先輩が『きっちん』と見守ったるで! そらもう『キッチン』の小さな汚れも
見逃さない優秀な家政婦みたいにや」
そう言って、どん、と自分の胸を叩いた後、改めて顎に人差し指と親指をやる真織であった。
冗談を言っているが、先輩として見守りたい、その気持ちは心の奥底から思っていることなのだろう。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 自身が伝えたかった事を的確に言い当てた久藤のその言葉に、畝傍は感心する。
鞘があれば、石蒜を刀へ封じ、サヤを救うことができる――逆に言えば、それ以外に道がなかった。ゆえに、畝傍は必死に刀を探し回っていたのだ。
「……そう。そうなんだ。鞘をみつけて、それで刀を封じればいいんだって。クドーさん、ボクのいいたいことわかってくれて、たすかるよ」
感謝の言葉を伝え、畝傍は微笑んだあと。
「ボクはシーシュアンも、サヤも、ころしたくないから。それしか方法がないんだ」
念のため、そう付け加えておく。
ふと、会話を交わす少女たちのほうにちらりと目を向けてみる。
何やらいい雰囲気のようなので、まだこちらから声はかけない。
そうこうしているうちに、頼んでいたチョコレートケーキとカモミールティーが届いた。
畝傍はケーキを一口食べ、カモミールティーを飲む。
■久藤 嵯督 > だが、久藤嵯督はそうしない。
ワカ
「承った。」
嵯督は今、ひとつの社会の上に立っている。
財団には適度に生かされつつも、生死を分ける戦いにはきちんと参加させて貰っている。
風紀委員では退屈しているものの、情報と言う名のチャンスを掴める場にいる。
学園は……まぁ寝床ぐらいにはなっているとしよう。
与えて、与えられて。たったそれだけの関係が、どれほど尊いものであるのか。
外で地獄を見てきた嵯督は、それをよく理解していた。
ならばこそ、裏切りなど以ての外。
自分の勝手に何の罪も無い連中を巻き込むことは、己の信条に反する事なのだ。
「他の風紀委員にも掛け合ってみよう。
『学生通り近辺』に、――尺――寸ほどの刀が入る鞘が落ちている。
他に留意すべき事柄は?」
デスジュースを一気に流し込む。
先日の打ち合いで、間合いと得物のサイズは全て把握していた。
一寸の狂いも無く、刀のサイズを言い当てる。
■遠条寺菖蒲 > 近くのカップルは通じあってるような気がする会話をしているような気がするので大丈夫なのではないかと思う。
どう言う関係性かは分からないが、どこか信頼関係みたいのはあるような気がするのできっとそうなのではないかと菖蒲は考える。
真織の声や自分の声で久藤と畝傍の会話の半分くらいは聞き取れていないが、風紀委員が対処しているなら信頼できるだろう。きっと。
「そっかー…そうなんだ…」
てっきりどこの家にもいるものだとばかり思っていた菖蒲にとってはちょっとした新事実であった。
「あ、それって知ってるよコマーシャルとかで洗剤のマスコットキャラが『チョチョイのチョイやよ』って言うやつでしょう?」
ギャグには気付く事もなく、テレビドラマ視聴中によく見るCMを思い出して真織に返す。
乙訓さんもあのCMはよくみるよね、だなんて見当違いな言葉を出して。
「一人よりは二人のほうが安心だけど、私の家って委員会街からすぐだから大丈夫だよ」
と笑顔で感謝しつつそう言う。
ショートケーキも紅茶もいつの間にか菖蒲のお腹の中に消えてしまっていた。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 久藤がそうしないように、畝傍もできればこれ以上無関係な人間をこの事に巻き込みたくはなかった。
今は仲間もいる。このことは、出来る限り自分たちの力と風紀委員の協力だけでケリを付けようと考えていた。
ケーキを飲み込んだ後、畝傍は。
「えっと……必要なものだから、みつけてもこわしたりしないで、ボクのところにもってきてほしい、ってつたえて。ボクの部屋は女子寮にあるから。あとこれ、ボクの連絡先。何かあったらおしえて」
畝傍は携帯端末を取り出し、久藤に自身の番号を示す。
もし久藤が端末を持っていれば連絡先を交換することもできるし、持っていなければ別の手段をとることもできるだろう。
■乙訓 真織 > 他二人の会話は、聞こえていても完全に意識の外なのだろう。
真織からは何の反応も示さない。
「そう、油汚れにチョチョイのチョイ! ショイ君やで!」
そう言って、CMの声真似などしておどけて見せる真織。
笑わせる目的とは別な方向へ行ってしまったことにほんの少しだけ落胆しつつ。
「へ~、そうなん? じゃあ今度遊びに行こかな~」
そんな風に返しつつ、腕時計を見るとあ、と気付いたような顔をして。
「もうこんな時間か~、帰ってテスト勉強せんとあかんな~」
そう言って、席を立つ。鞄から財布を取り出すと、菖蒲の方を見やって、小さく手を振る。
■久藤 嵯督 > 「……携帯かぁ……」
携帯電話は苦手だ。
タッチパネルはロクに反応しないし、タイプ方法も相当複雑になっている。
連絡するだけなら、メッセージ機能付きの無線機でも事足りる。
こんなものを好んで使用する、学生の感覚がよくわからない。
おぼつかない指付きで、電話帳機能に連絡先を入力する。
自分の番号は、紙に書いて見せた。
「他の風紀委員がどうするかまでは保障できんが、進言はする。
だがまぁ、余程の事が無い限りは壊されんだろうよ」
■遠条寺菖蒲 > くすりと真似する真織を見て「それそれ」と笑う。
「うーん、特に何か遊べるものがあったりなんかはしないけど、部屋と広さは少しあるかな?
帰りが遅くなりそうな時とかはうちに来ても大丈夫だと思うよ」
家政婦のヘラさんが少し慌てるかもしれないなぁと考えつつ。
時間の話をされて腕時計を菖蒲も見る。
「あ、そうだね。私も予定があるから行かないと」
と入り口まで真織の後に続いて席を立つ。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > 久藤が紙に書いた番号を受け取ると、畝傍もまたそれを自身の端末へ入力し。
「ありがと。たすかるよ」
礼を述べると、再びチョコレートケーキを頬張り、咀嚼する。
さらに、カモミールティーを一口。それを飲み込むと。
「ボクもこれたべたら、またさがしにいくから」
久藤にそう告げた後、店を出ようとする少女たちのほうを向き、じっと見つめる。
■久藤 嵯督 > 「俺はもう少しだけ残る。"デザート"の注文がまだだからな」
仕事よりもデザートを優先するのもどうかという話だが、
久藤嵯督は譲らなさそうだ。
三杯目のデスジュースを流し込み、店員を呼ぶ。
「いつものを」
ツインテールの店員は、青ざめた。
■遠条寺菖蒲 > 視線を僅かに感じつつも店を後にすることにする。
何やらあの店員の子がまた慌て始めているようだが、きっと大丈夫だろうと。
それも接客業の運命なのだろうと考えながら。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から遠条寺菖蒲さんが去りました。
■乙訓 真織 > 「はぁ~、ヘラさんな~。じゃ、うちが遊びに行くかもって伝えといて~」
最後にそう言って、真織は店を出て行った――。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から乙訓 真織さんが去りました。
■畝傍・クリスタ・ステンデル > しばらく食事に意識を集中し、気付けばケーキは完食。カモミールティーも飲み干していた。
「それじゃ、またね、クドーさん」
久藤に別れを告げて席を立ち、畝傍は鞘の捜索を続けるため店を後にした――
ご案内:「カフェテラス「橘」」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。
■久藤 嵯督 > デザートが届くまでの間、机を指で叩き続けていた。
『・- ・・・ -・-- --- ・・- -・-・ ・- -・ ・・・・ ・ ・- ・-・ 』
『-・・ --- -・ - ・・・・ ・・ -・ -・・ ・-・ ・- -・ -・-・ ・ 』
嵯督が机を叩き終えると、背広の男は会計を済ませ、店から出て行った。
■久藤 嵯督 > デザートと言っても、お持ち帰りデザートである。
1ダースのデスジュースを運んでくる店員に礼を言うと、
デスジュース入りの袋を持って、嵯督もまた店を後にするのであった。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にウィリーさんが現れました。
■ウィリー > 「ああー…」
四大元素魔術応用、自然魔術学の全て、ルーン文字入門、魔導書の友、
地政学、数学や外国語などの一般教養、複合機関学、戦闘技術基礎-地形及び天候による優位性の確保と、陣地構成について-……
山積みになった恐ろしい数の(そして恐ろしい分厚さの)教科書や文献に片っ端から目を通しながら、
自分専用にこしらえられた試験対策問題集を解く。
普通は皆が膝を突き合わせて勉強会というところなのだろうが、
彼の場合、団員の手助けがわずかばかりあった。
というのも、基礎と応用、それを踏まえて作られた幾つもの「ヤマ問題」を作ってくれる
学園OBの団員がいるのだ。もちろん有料で、しかも目が飛び出るような額なのだが……。
「普段から勉強して授業態度も小テストも悪くないはずなのに、
なんでかこう大きな試験っていまいち芳しくないんだよな」
書き込みすぎてわさわさしているノートから視線を外して、一つため息。
■ウィリー > 「コゼット先生の実技もぱっとしなかったし、今回は微妙な感じ……か。
本業がこの体たらくだと、また団長にしばかれそうな気がする」
気の抜けた顔で物思いに耽る。自分は人並み以上には頑張っているし、それに応じた成績を取っている。
取っているが、そのたびに考えさせられることがある。
この学園にある違和感。力を持ったものが、こうして集められ、
学園という枠の中で誰かのものさしを元に育てられていること。
ここに集まった学生が、たまたま異能を持ち合わせていたのか。
異能を持ち合わせた人間を皆、ここにぶちこんだのか。
「どっちにしても試験とか、いらないよなあ~~」
真面目な思考を断ち切って、不埒な思考に繋ぎ変えた。
どこかに試験もいいけど本当は遊びたい可愛い女の子とかいないだろうか。
いないか。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にソウマ・アーヴェントさんが現れました。
■ソウマ・アーヴェント > 流石に勉強期間なのか、
死んだ目が、普段にも増して眠そうだった。
歩くのがゆっくりしている。
……そして時々座席にぶつかりかけている。
「……すまない、どちらが空いて……」
眠くて判断能力が鈍っているのか、ウエイトレスに聞く始末だった。
■ウィリー > (随分よたよたしてるな)
ウエイトレスを巻き込んで倒れこまれても困る。痴漢騒ぎで勉強がままならなくなるというのもゴメンだった。
「店員さん、彼をこっちに」書籍を椅子からどかして、自分の横を指差した。
相席となることを申し訳なさそうに頭を下げる店員に笑いかけて、
とりあえずソウマが腰を据えられる場所は確保した。
■ソウマ・アーヴェント > 「…ああ、すまない」
半分寝た状態で行動していたのか、時々「んごっ」とか「すぴぃ」とか寝息が聴こえる。
……むしろ、何故この青年がそのような状態で受け答えだけはまともに出来ているのか。
「普段は時限おきに寝るのだが」
「試験なもので普段と勝手が違って」
「もう少ししたらまともに起きれる筈……」
「だと、思う」
どういう睡眠環境をしているのか。
■ウィリー > 「気にするな」どうせならそのままぐっすりと寝てしまったほうが、健康のためになるのではないだろうか。
もちろん、試験にどういう影響を及ぼすかは知らないが。
うつらうつらしながらギリギリまともな会話を続けている相手から視線を切ると、再びノートに向き合う。
(ごく一部の――向こう見ずな――商人による、交易ルートの開拓は当地の人間にとって当たり前であった物資に潜在的な需要があることを見出した。)
(枯れ草に火がついたように広がった商取引の輪は、彼らが行き交う街道の中でも特に便のいいところにあった街(後の基幹都市)の大いなる発展に繋がる)
(内包された様々な問題を解決するまもなく、肥大化する流通網。この後、リスクマネジメントの重要性を考えねばならない事件が、とある都市で起きた)
「これは参考書というより読み物だな……」
■ソウマ・アーヴェント > むしろ、この青年は寝過ぎなのでぐっすり寝た所でまた別の場所で寝始めるだけだったりする。
寝息っぽいものがようやく止まったのか、彼が持っていたかばんの中……から、
大学ノートが数冊出てくる。どうやら試験勉強のようだが。
「………人がまとめるとたまにそうなる事もあるとか」
「聞いたような気がする」
「ただ、読みやすいかどうかは」
「個人差だとかなんだとか、聞いたが」
「細かい所は良く『分からなかった』」
目が眠たそうじゃなくなったが、相変わらず眼の色が死んでいる。
■ウィリー > 出てきた大学ノートを見るに、同じ学生でテスト勉強をしようとしているらしい。
「なんだ、お仲間か」ならば、徹夜明けか何かかも知れない。
詳しい事情を知らないので、その程度に理解した。
「ふむ……確かに言われてみれば、形式張らずにかといって乱れすぎず
読みやすいかはわからないが、内容を平易に並べてある感じはする」なるほど、と首肯して。
「それで、お前は誰だ? 席を空けたまではいいが、勉強のお付き合いまでは頼んでない。
ちなみに、だ。俺はウィリー・トムスン。さあ、そちらは」死んだ目の男に問う。
■ソウマ・アーヴェント > 「……ソウマ・アーヴェント、と言う」
「……まとめるのは手癖が出るから」
「全く同じものは作りにくいとか、なんとか…」
「勿論『読めない』と論外だが」
ぺらりぺらり、と捲る帳面の中身は
綺麗に整いすぎていて困惑しそうな物だが、
調度良く同じ講義を取っているとは限らない
…が、探せば被っているものが何かあるかもしれない。
■ウィリー > 「ソウマか。よろしく頼む」
同じ学生という立場もあってか、さらりと流してしまう。
名前さえわかっていれば、だいたい探しだすことができる学園ならではの一面であった。
「物書きは大変だな……参考書として出される書籍ならまた、テンプレートにそって作っていくんだろうが」
書いた当人たちは、自分の著作が後の世に参考書扱いされるとは知るまい。だからこその、その内容。
パラパラとめくられるページに、ふと目をやった。
「ん? ああ、ちょっと手を煩わせて悪いが……その『製鉄・鋳鉄と武器の歴史の変遷』ってやつ」
「たまたま講義に出忘れててな。良かったら見せてくれるか」
■ソウマ・アーヴェント > 「……ああ、これか」
捲る手を止めて、素直に目の前の青年に自分の書き物を渡す。
「必要そうだから纏め直しただけなのだが……」
「参考になるか、は分からない」
そのノートの中身も含めてそうだが、
「ぎりぎり手書きだと分かる綺麗さの内容」がまとめられており、
教科書かなにかと思うぐらいにかっちりとまとめられている。
■ウィリー > 「助かる、これには個人的な興味もあったしな……とはいえ、この分量を書き写すには時間がないか」
試験勉強に集中しなければならないというジレンマは大きく、ここは
とりあえず聞くだけ聞いてみることにする。
「このノート、借りてもいいか? いや、無理は承知なんだが……
ほら、この項とか見てくれ。本のタイトルとは関係なしに、徒手空拳で武器を持つ相手と渡り合う方法とか、
居合道? の基礎とか、無茶苦茶充実した内容でさ」
「まあ、こう見えて武道まがいのことをしてる俺からすると、
スパーリング相手が刀の大小二本差してるとどう立ち回ればいいかわからなかったりする」
「なのでこれで勉強したい。すまん、頼む!」
■ソウマ・アーヴェント > 「……構わないが?」
無茶なお願いだと思ったがあっさり通った。
というか、彼にとっては言われたから「貸す」程度の状況なのだが、
あまりにも即答過ぎないかと心配になる。
「ああ、なんとなくその相手に想像は付くが」
「……まぁ、本人から聞いた方が早いだろうな」
そして、刀の大小二本差しというだけで特定の人物に思い当たっている。
実際にあたっているかどうかは不明だが。
■ウィリー > 「話がわかる相手でよかった」ノートを手にして、目で見てわかる喜びよう。
これまでの流れだと即答ならば、是か非か。それだけだろうし、無下に断るようなタイプにではないと見た。
張ったヤマは当たったというわけだ。
「本人? ……その本人はどっかでイチャコラしてそうだからなあ……まあ、そのクーリングタイムのうちに腕を磨くとするさ」
そんなふうに笑っていると、BEEP音。自警団の招集を告げるもので、至急とのことであった。
「勉強させろよもう……ああ、すまないソウマ。
ノートは移し次第返しに行くが、一応連絡先も教えておくから
返すのが遅くなってたらこっちまで来てくれ」
アドレスデータを送信して、荷物をまとめる――鞄はパンパンだ――。
「それじゃあまたなソウマ、忙しなくてすまない」
ご案内:「カフェテラス「橘」」からウィリーさんが去りました。
■ソウマ・アーヴェント > 「ああ、やはりそうか」
「一応紛失さえなければ問題はない」
「から、何時でも」
と、言いつつその背を見送る。
ああ、ひょっとしたら、そんな理由だったのか、と昨日の理由も思い当たっていく。
「……別に興味は無いが」
ぺらぺらと再びノートを捲り始める。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からソウマ・アーヴェントさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に狛江 蒼狗さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > 隅っこのテラス席でテーブルに突っ伏す大柄な何某が一人。狛江蒼狗である。
氷が解けて水っぽくなった珈琲のグラスを傍らに、ぴくりともしない。
嘘のように爽やかな風が彼の頬を撫でていた。
「……………………」
■狛江 蒼狗 > 長い両腕はだらりと垂れ下がり、卓上に乗せた頬と肩口で自らの体重を受け止めている。
蒼白の瞳に湛えるは空虚そのもの。
晴れ間の青空を瞳孔へ吸い込み、その色を幽く濁らせていた。
「空が…………綺麗だ……」
消え入るような掠れ声が響く。
それは、テスト初日を越えた浮足立ちの歓談の隙間に押し潰れて消えていった。
■狛江 蒼狗 > 鉛めいた四肢に活を入れてどうにか身を起こす。
放心状態で厭世観に浸ってグズグズになっていても何も解決しない。
水っぽいアイスコーヒーをストローで飲む。狛江蒼狗にはストローが似合わない。どこかの彫像もどきに見える。
「え……なに……?」
■狛江 蒼狗 > 「あと一週間あるって…………?」
電子ペーパーを拡げて、日程を確認する。
自分の試験時間割表は無慈悲な埋まり方を見せていた。
……実は、魂が抜けた状態で小一時間テラスの片隅に居た狛江蒼狗だが、今日のテストの結果自体は良かったのだ。
ただ、それは徹夜と奇跡のヤマ張りの賜物であり、生きた心地がまるでしなかった。
濃い半日だった。テストの合間の休憩時間も一切気を緩ませず詰め込み記憶を気合で保持し……。
「………………」
狛江蒼狗は微笑んだ。
別に、このへんのやつは後期でまた補填する感じでいいかなぁ。って。