2015/06/20 のログ
ユーユン・レイ > はっと気が付いてぶるぶると顔を振る。
いけない、ぼんやり時を過ごす所であった。
反省しつつ裸足で駆け出した。
やはり難しい、と1分もたたずに思い始めた。
立っている時はあんなに癒してくれた波が邪魔をしてくる様に感じられた。
足が取られる。水しぶきが冷たい。足の裏がくすぐったい。時々痛い。
様々な情報が集中力を削いで来る。
いっその事もっと深いところの方が楽なのではないだろうか、などと思い始めた。

ユーユン・レイ > 物は試し、と少しずつ深い所に向かってみる。
足の裏からくるぶし、ふくらはぎ、膝、と水に使っている部分が多くなっていく。
当然ながらそれにつれて水の抵抗は大きくなっていった。
主目的は気分転換とはいえトレーニングの一環である。
負荷が大きいのは望む所、ではあるのだが。

「はっ、はっ、はっ……にゃっ!?」

突然悲鳴を上げて左の下半身が水没した。
調子に乗って深い所に行った結果、深みにはまったのである。
最悪であった。
びしょ濡れで気持ち悪いし、何より変な悲鳴を上げてしまったのだ。
こんな所誰かに見られていたら、と思うとぞっとする。声まで聞かれていたらちょっと泣くと思う。

ご案内:「浜辺」にスピナさんが現れました。
ユーユン・レイ > ざぶざぶと音を立てながら砂浜に戻った。
挑戦は大事だが慎重さも大事だ。それを学べただけでもこの訓練には意味があったと思う。
授業料は高かったけど。

ジャージを脱いで体操服の裾やらの水を絞りながらため息をつく。
すっきりしにきて何を汚れているのか。虚しさが胸に去来する。

スピナ > 「…………。」

水面、陸が見えてる部分から少し離れた沖あたり
スピナは海から顔を出して、走る少女を見ていた。

とぼとぼと砂浜に戻っていくのを見ると、スピナも泳いで近づいていく。

ユーユン・レイ > 頭頂部に備わった猫の耳がピクリと動く。
割と気配には敏感な方だ。
水音を捉えた、と言う訳ではなくただの予感の様な物だが。
誰かいるのだろうか、水を絞る手を止めて砂浜を見回した。
腹の辺りが無防備である。

スピナ > 砂浜に、ちくちく髪でワンピースの少女が上がってくる。

「あの……だいじょうぶ?さっき……」

声をかけながら、まっすぐ少女に歩み寄ってくる。

ユーユン・レイ > 「………」
無作法にもすぐには答えず額を押さえて天を仰ぐ。
見られてた、間違いない。あの恥ずかしいシーンを…と言うポーズである。
だがいつまでもそうしている訳にもいかないので3秒ほどで相手に向き直った。
「大丈夫、です……ありがと」
相手が子供のようなので少し馴れ馴れしい響きでそう言った。
「それで、その……あなた、いつから、泳いでた?」
泳いでいたならきっと声は聞こえていないだろう。
とりあえずその辺ははっきりさせて安心しておきたかった。

スピナ > 「よかった。ひめい?きこえたから……
 あと、ころんでた。けが、してないなら、よかった。」

安堵の表情を見せる。
見知らぬ相手でも、怪我は心配なのだろう。

「えと、そこ、はしってるの、みてた。
 あなたも、なにか、れんしゅう、してた?」

先ほど少女が走っていた砂浜を指さしながら言う。

さっきの光景は、以前、自分が陸の上を歩く練習してたのと似ていて
ついつい目で追っていたのである。

ユーユン・レイ > その場にしゃがみこむ。
それまで感情のままに動いていた尻尾も元気をなくしてくたんと砂にまみれた。
「聞こえてたかぁ……」
宣言どおりちょっとだけぐすっと鼻を鳴らした。

「うん……転んで、悲鳴あげて……怪我は大丈夫、うん……」

鸚鵡返しにも程がある返事をしながら心の態勢を立て直した。

「練習、かな……陸上じゃないところも走ってみたかったの。鍛えられるかなって思って。」

砂浜にぺたんと座り込んだまま答える。
思ったより足が疲れていた。

「ところでさ、『あなたも』……って事は、あなたも?」

またも鸚鵡返し。でも少し気になった。見知らぬ少女が何を練習していたのか。

スピナ >  
「えっ、えっ?
 あ、あの、だいじょうぶ?いたい?」

突然しゃがみ込む少女を見て、慌てる。
心配そうに駆け寄って声をかける。

「りく、じゃないところ、はしる……
 うみのなか、はしる?」

陸じゃないところは海……スピナはそう考えてた。
だからだろうか。

「えへへ、わたしと、にてる。
 わたしもね。すこしまえ、りく、あるくれんしゅう、してた。
 ずっと、うみのなかだったから。」

それは親近感だった。
似たようなことをして、似たような様子になって
それがまるで、少し前の自分のようで。

ユーユン・レイ > 「あ、あ、大丈夫……ちょっと、疲れただけ」

かなり心配させてしまったらしいと思い、寧ろこちらが慌てる。
ぱたぱたと手を振って否定した。

「海の中って言うかね、水が多い場所って言うか」

海の中は流石に走れない、と思う。
陸上生物の思い込みかも知れないが、そうなるともうそれは『泳ぐ』と言うのだ。

「陸を、歩く……?」
普通の小さな女の子にしか見えていなかったので不思議そうな声色になった。
「海の中にいたの?ずっと?」
普通なら子供の冗談とかそう言う物だと思う所だったが、この島ではその限りでもないような気がする。
自分にだって猫耳が生えているのだ。
彼女もここの住人の多数派とは違うのだろう、こちらはこちらで親近感を覚えていた。

スピナ > 「ん……なら、よかった。」

もう一度、安堵の様子。
ころころ表情が変わっている気がする。

「みず……ん、なるほど……」

多分考えていたものとは違ったのだろう、と
考えなおして再度納得する。そういえば海は走るんじゃなくて泳ぐものだった。

「うん、うみのなか。
 わたしは、スピナ。うみのせいれい。
 あなたの、なまえは?」

多くの場合、自己紹介をすると相手の抱いてる疑問が解消される、と
経験からそう学んでいた。だから、いつもどおりの自己紹介をする。

ユーユン・レイ > 「うん、良かった……」

少女の心配もなくなったようでこちらも安心した。
今までなるべく変えないようにしていた表情も思わず解れようというものだ。

「だから、また来るかも。今日は失敗したしね……」

自嘲気味な笑みを空に投げながら呟く。今度こそは失敗しないぞと心に誓うのだった。

「せいれい?精霊か……」

まぁ納得するしかないのだろう。確かに普通の生き物とは違う気配がする。気もする。

「私は、ユーユン。ユーユン・レイ。よろしくね、スピナ。」

握手でもする場面なのだろうが、そういう習慣がなく思いつかなかった。
代わりに頭を下げてお辞儀をする。
座ったままなのでスピナの頭よりも下に自分の頭を持ってくることが出来るのだ。

「海って言うのもいいね、しょっぱいけど……へくしっ」

自分の体を抱いて一つ震える。尻尾も海水と砂にまみれたままぴんと立った。
濡れた状態で海辺にいるのは辛い。思わず話に夢中になって気付かなかったが大分冷えてきていた。

「ごめんスピナ、知り合ったばかりだけど……私、そろそろ帰るね。」

もうちょっと精霊と言う物についてなど聞きたかったがそうも言っていられない。
海はきっと悠久に近い時間を存在すると思う。
ならばその精霊もすぐにはいなくならないに違いない。
そんな希望をこめて。

「また来るね。それじゃ……ばいばい」

軽く手を振って海岸を後にする。
海中で転んで、悲鳴まで聞かれて。
慣れない走りで足は重く、ふらふらと歩いた。
情けない一日ではあったが、何だか気分は軽くなっていた。

ご案内:「浜辺」からユーユン・レイさんが去りました。
スピナ > 「ユーユン・レイ」

教えられた名前を復唱して、覚える。

「ユーユン……うん、おぼえたよ、ユーユン」

屈託のない笑顔を見せる。
友達が増えることへの喜び、その表情。
礼をされると、一昨日習ったとおりに、礼を返す。

「うみ、いいところだよ。
 ひろくて、おさかな、いっぱいいて、いろんなもの、しずんでる。」

ふねもあった、と付け加え、嬉しそうにしゃべる。
海に興味を持ってもらいたいのだろう。海は好きだし、皆にももっと知ってもらいたいから。

「ん、もう、いっちゃう?
 ……またくる?それじゃあ、また、あおうね!
 さよなら、ユーユン!」

また来る、という言葉に反応する。
もう一度、会えるというのは、とてもいいこと。うれしいこと。
だから、表情も明るくなる。

少女が去った後、その背中が小さくなって見えなくなるまで、手を振っていた。

スピナ > 「…………おともだち、またふえた、えへへ」

今日もいい一日だった。
うきうきとした気分で、海へ潜っていく。

そのまま潮の流れに乗り、拠点である海底遺跡群まで流れていった。

ご案内:「浜辺」からスピナさんが去りました。
ご案内:「浜辺」に瀬部キュウさんが現れました。
ご案内:「浜辺」に空閑 栞さんが現れました。
瀬部キュウ > 「……えーっとそれで、ここまで来たわけですけど」

栞先輩に偶然会ったキュウは、『ちょっと用事に付き合って』といわれるがまま、一緒に浜辺まで来ていた。

「何をするつもりなんです?」

不思議と不安はあまりなく。
『お母様』に危ないことにも顔突っ込んでみて等々言われた為か、変化を楽しむ余裕が出てきたのかもしれない。

空閑 栞 > 「えーっと、魔術の練習に付き合ってほしいなぁって……」
「ここなら戦いやすいでしょう? 異能的に」

鞄には先日の魔力増強剤、そして魔術の教本が数冊入っている。
これを使って実戦形式の訓練を……と思っていたところで通りがかっているキュウを見つけたので声をかけた。
水などを操れるらしいため、ここならば最適だろう。

「ダメ、ですか?」

瀬部キュウ > 「あー、えっと……」

海の方を眺める。"大量の水"は確かに操るのはうってつけではある。
足元の砂は、"土"と言ってしまうのは少々乱暴だが、まぁ補助になる程度には操れる。
……それはそうなのだが。

「"戦う"んですか?あぁいや、ダメとは言いませんけど…」

練習なら一人ででもできるのではないだろうか?
なんて、『相手を倒す』ような戦闘を仕掛ける事を想定していないキュウはのんきに考えてしまう。

空閑 栞 > 「ええ、実戦形式じゃないと勿体ないですから……」

家で軽く練習するために薬を使うなんて勿体ない。
実戦が一番の訓練だ、と何かの漫画に載ってた気がする。
なので実戦形式の訓練を頼んだのだから。

「いざとなったら私も能力を使うので……思いっきりしてかまいませんよ?」
「倒すつもりで、お願いします」

そう言って微笑みかける。
鞄からゆっくりと小瓶を取り出した。

ご案内:「浜辺」にウィスタリマンさんが現れました。
瀬部キュウ > 「……勿体無い?」

うーん、少し引っかかるけれど、まぁ実践形式が大事なのは間違いないこと。

「倒すつもりで……自信はないですけど、うーん。頑張ってみますね」

そして栞先輩がカバンから小瓶を出したのを認めた。
何らかの準備か、いつもの儀式か、今回のテスト対象か。
なんであっても、関係のないことではないだろう。

……"充電"はほぼフルパワー。
こちらも"初実戦"。私がどれだけできるのか、テストさせてもらいます。

横の海面が大きく揺れる。

「では、目一杯準備させていただきますね」

ゆるりと笑みを浮かべた。

ウィスタリマン > 「話は聞かせてもらった、私が相手になろう!!」

浜辺で談笑しているであろう二人に割って入る仮面の少女が一人。
可愛らしいメイド服には微塵も似合わない仁王立ちは存在感をより引き出している。


……面識のある二人には分かるかもしれない。"どこかで聞いた声"だと。

空閑 栞 > 「ええ、おもいきり……」
「って誰ですか」

突然現れた闖入者にあまり驚かずに対応する。
声に聞き覚えがあるためだ。
誰ですかとは言ったか、十中八九あの子だろう。

「えーっと、乱戦みたいな感じでやればいいんです?」

仮面をつけたメイド服の少女に質問を投げかける。
小瓶の蓋を開けた。

瀬部キュウ > 「……ほぇ?」

突然の乱入者にきょとんとする、が。
あぁ、確かこんな声をしていた子を送ったことがあったな…と思いだし。
栞先輩の声を聞きながら、"準備"を進める。

「乱戦、かぁ……でもあんまりやることは変わらないですかね」

…多分1時間も戦うことはないだろう。
長くて30分。短ければ15分もかからないかも。
なら…1時間連続操作限界量の2.5倍。
『2万5千リットル』…25立方メートル分。

キュウの『横10mほど』に渡って、『高さ2.5m、幅1m程度』の水の壁がズザアァッと持ち上がった。

ウィスタリマン > 「リ……コホン、ウィスタリマンは正義を守る魔法使いだ!えーっと……偶にゴミ拾いとかもしてるぞ!」

ウィスタリマンには誤算が一つあった。
浜辺で模擬戦をしかけていた二人組を注意しようとしたら、まさか二人とも友人だったとは思うまい。
今更後には引けない。動揺しつつも威勢は緩めずに口を開く。

「乱戦でもいいぞ! 二人程度、私なら余裕のよっちゃんだからな! フハハハハハ!!!!!」

栞とキュウの能力を知らない以上、勝てる確証はないのだが。
それでも負けられない気がした。なぜなら私は"ウィスタリマン"なのだから。

空閑 栞 > 「えーっと、とりあえずウィスタリマンさんも遊んでくれるんですよね」
「訓練のお手伝い、感謝しますよ」

手に持っていた小瓶を口に運び、中身を呷る。
これで準備完了、力が湧き上がるのがわかる。
教本に書いていたことから組み立てていった我流の魔術を使える可能性も……ある。

右手に神経を集中させ、雷が迸るイメージを組み立てていく。
青白く疾い雷を―――――
ゆっくりと右手が青い雷を纏っていく。

「こんな感じかな」
「いつでもどうぞ?」

余裕のある笑顔を浮かべ、そう2人に言い放った。

瀬部キュウ > キュウは身体も非常にリラックスしているような状態のまま。
大量の水はやがて海から浮いて、その形をぐねぐねと変えながら、波打ち際を"飛び越え"、キュウの前方に浮いた。

「あらら、雷ですか?じゃあ、"アース"は伸ばしておきましょうかね」

笑顔も崩さず、事も無げにそう言って、浮いた水の一部を海の方に伸ばし、繋げておく。

……そんな大げさな事をしながら、砂浜の中で砂をいじくり、ある程度操作の感覚をつかむ。
…やはり多少は動かしにくいか。最近水ばかり動かしていて『土』はカンが鈍ってたのもあったかも。

「…うーん……『Quad-core mode』」

全力でと言われてしまった以上少し迷ったが…やっぱりまだ試していない『5コア以上』は不安である。
4コアで『砂をどう動かしてどう乗ればスムーズに動けるか』の計算は可能だろう。

黒いストールのお陰で胸の宝石の光は漏れていない。

ウィスタリマン > 「望むところだ!!勝って証明してやろう!! "浜辺でそういうことするのは危ない"とな!!!」

もう片方には雷を腕に纏う女性。
片方には水の壁を生み出す少年、いや、少女だろうか?
……勝てる確信は、ない。

―――深呼吸を、ひとつ。
メイド服の少女が地を踏み鳴らすと、砂が周囲数メートルに渡り飛び散る。
雷を操るであろう栞に対して接近戦は不利だ。ここは確実にキュウから狙うのが得策だろう。

「先手必勝ッ!!!」

地を蹴り、キュウの頭上高くへ跳躍する。

瀬部キュウ > 「っと、こっちからですかっ?」

2万5千リットルの海水を広げ、頭上をも覆うように。
上を見上げ、ウィスタリマンの攻撃に対応するように見せ。
…だが。

「…でもそれは、お断りします」
小声でフェイクだと呟く。砂を動かして栞の足を絡め取ろうと試みる。
人間の筋力なら思いっきり蹴飛ばせば解けるが、慌てて足を動かそうとしても簡単には動かない程度の拘束。
そして同時に。

「まずは栞先輩からですよ!」

目線を前方に変える。
砂を流れるように動かし、走るよりもはるかに速いスピードで飛ぶように近づいていく。
そう、"接近戦"を試みた。

空閑 栞 > (どうしよう、家ではここまでしかできてないけどどうにかなるかな……)

余裕を持った笑みははったりだったのだ。
家では危なくてこれ以上できなかった。
つまりここからは全てぶっつけ本番。予行演習はなし。
しかし今ならできる気がする。力が溢れている。

突然足を絡め取られると、焦りはせずにひと呼吸。

「色々試したかったけど……最初からクライマックス、かな?」

砂を思い切り蹴飛ばし、空中へ駆け上がる。
小さく何かを呟いて右手に纏っていた雷を球状に変化させた。
それをゆっくりと握り潰していく。

ウィスタリマン > キュウの頭上へ跳んだ筈だったのだが、そのキュウはいつの間にか栞と一悶着しているようで。
戦闘開始早々バックレられてしまった。情けない魔法少女である。

「ちょっ、私を無視するだなんて、リスタリマンの名が……ッ!」

空中で一回転。魔法少女らしく、かわいくかっこよく。
その後バク転よろしく着地しつつ、砂浜を這って進む"衝撃波"を数発キュウの方向へ放つ。
威力に欠けるが存在感だけでも知らしめられれば。

……自分の名前を噛んだような気がするのは気にしないでおくことにする。

瀬部キュウ > 「!、飛んだ!っええっと、こうっ!!」

瞬間で"演算"を行い、砂を操作。栞に向けて飛び上がる…"足元の砂ごと"。

「っああもう、水に比べてやり辛い!『Sextuple-core』!!」

躊躇ナシ。
前に真水を足に纏って飛んだ時よりはるかに難解、かつ扱いづらい砂で飛ぶために、未経験の6コアへと突入した。

海水で飛ぶことは出来ない。見る限り相手は雷。
真水ならともかく、電気を通す海水を纏うとむしろダメージが倍増しかねない。
なので不慣れでも砂で飛ぶことを選んだ。

そう、砂は飛ばせる。水も飛ばせる。
だが砂で攻撃はしない。水で攻撃もしない。
それらはあくまで補助。防御。受け身目的である。
『速度が出せない』という自らの異能の性質上、攻撃には向いていないのだ。

だから接近戦をする。
比喩でも何でもなく、『自分』と言う武器があるため。

「…っ、ピプ……ああ、ふかがすごい。こうなるんだ……ふふ、たのしい」

そう言っている間にも、浮かべておいた海水を寄り集め、ウィスタリマンの衝撃波に対応する。
ドプンッと海水が弾ける。
ロクにそちらを見ていない分防ぎ方が甘い。
一発目は防ぐも、二発目は減速止まり。そして三発目は突き抜ける…
が、その頃にはキュウは地面におらず、栞先輩めがけて空を飛んでいるだろう。

空閑 栞 > 「ふふ、ふふふ……」
「あァ、こんな感覚なんだ……痛い……楽しい……」

握り潰した雷が全身を迸る。
瞳の色が青く染まっていく。
全身に鋭い痛みが走ったが、そんなことを気にしている暇はない。
近づいているキュウには目も呉れず、自分の変化を楽しんでいる。

「今ならなんでもできそう……」
「リリアさん、遊ぼう?」

空中を蹴り、稲妻のような疾さでウィスタリマンに肉薄する。
そして腹部を目掛けて雷を纏っているゆっくりとした掌底―――しかしウィスタリマンにはそれなりに速く見えるだろう―――を繰り出す。

ウィスタリマン > 「ッ……やっと私の脅威度に気づいたか!フハハハハハハ!!!」

強がりである。
彼女自身も電流ならば出せなくもないが、あんなに体外へ空中放電させることはできない。
真っ向から立ち向かったら最後、"かっこ悪く退場"してしまうのがオチだろうか。そんなことはゴメンだ。

ガッ―――

円形の障壁が展開され、掌底はウィスタリマンの目の前で受け止められる。
ニヤりと笑う。悪意の含む笑み。"魔法少女"とはなんだったのか―――

「生憎、私は"リリア"じゃないからッ!!!」

桃色の障壁は受け止めた掌底を、栞ごと吹っ飛ばす。

瀬部キュウ > 「あー…っ」

フラれた。残念。
いや、"そう"いう訳じゃないけど、初挑戦の6コアまで使って栞先輩めがけて突っ込んでたのに目の前で攻撃対象を離れた方に変更されては悲しみを覚える。

もちろん自分がさっきリr…ウィスタリマンに同じことをしたのは棚に上げている。

「ふう……まあ、まざりにいきましょうかー」

間延びした声で。
スムーズに方向転換を行い、栞先輩に比べるとのんびりした速度で二人の方へ向かう。

時間がかかるついでに二人の異能も知ってしまおう。

空閑 栞 > 掌底を止められたことにも驚いたが、それ以上に弾き飛ばされたことに驚く。
砂浜に電車道が作られた。
勢いが止まると、ぐるんとキュウの方を向く。

「今はウィスタリマンでしたっけ……」
「今度はキュウさんも……ね?」

砂を蹴り、雷速でキュウに接近する。
そのままの速度で腹部に軽く触れた。
キュウの遥か後ろでブレーキをかけ、空中で静止した。

瀬部キュウ > 「――!??」

雷速。およそ秒速150km。それが比喩だとしても。
常識的な速度じゃない。"異常"な速度ですらない。
最早"超常"な速度と言えた。

軽く触れられただけとはいえ、そんな速度で来られては。
のんびり構えていたのが言い訳にならないほど。
思考する間も無く、身体が"飛んだ"。

その後…本来はこれも瞬間なのだが。
6コアが端的に"危険・衝撃波による被害甚大"を報告して初めて、ようやくキュウは事態を飲み込んだ。

地面に叩きつけられる直前に、なんとか砂をクッションにして、ぎりぎり衝撃波直撃時の骨折程度で済ませるのが限界だった。

ウィスタリマン > 「……えっ?」

何が起きたのかわからなかった。
それもそうだ。黒髪の女性が動体視力を遥かに超えた速度でキュウへと突っ込んでいったのだ。
先程アレが自分に飛んできたかと思うと恐怖が止まらない。

痛そうにふっ飛ばされたキュウに心の中で合掌しつつ、思考を巡らせる。
どうしたもんか。このままではジリ貧、栞をどうにかするには―――

一か八か。右手に端末を持ち、地面を蹴って栞との距離を詰める。

空閑 栞 > 「痛ッ……やりすぎたかな……死んでないといいけど」

動く度、全身に強烈な痛みが走る。
しかし今はそれすらも心地いい。
今ならばどんな相手にも勝てる。
そんな感覚が全身を満たしている。

「ウィスタリマンさんは大丈夫ですよね?」
「きっと、丈夫ですよね?」

にたりと嫌な笑みを浮かべてゆっくりと地面に降りて歩み寄る。
いつもの栞とは違う、怖気が立つような笑みを浮かべて。

瀬部キュウ > 「ぁー、いったあ……おれちゃってますよこれ…」

砂浜に倒れ、体内情報を分析する。
数本、骨が折れている。
が、この程度の被害で動けなくなるほど『やわくはない』。

「っあー、いたたたたたっ…――っっ」

本来別の用途のために体内に仕込んでいた金属を移動させ、折れた骨を戻して無理矢理固定する。
途中いくつかの血管や器官に傷がついてしまったが……まぁ、その程度。である。

「はあー。やってくれましたー……」

ゆっくり起き上がりながら、砂ごと戦場へと戻っていく。
酷い一撃を受けたが、戦意は喪失していない。

次はどこを狙ってくるだろうか。
さっきと同じ腹?致命傷に至る首や心の臓?案外威力に怖気ついて脚なんかもありえるかも。
そう想定して、その辺りへと『仕込み』を分離し、配置しておく。これもこれでとても痛いのだが。

ウィスタリマン > 栞からの威圧感が尋常ではない。以前あった時感じた"皆伝オーラ"とは違う威圧感。
いつもの自分ならば逃げるだろうか。だが、今の私は"ウィスタリマン"、逃げることは許されない。

「やらなきゃ、殺られるッ!!!」

距離を詰めながら端末を構え、目を固く閉じる。
一瞬でも栞の動きが止まればいいが―――


眩い閃光が端末のカメラから放たれ、浜辺を包む。

空閑 栞 > 「ッ!」

思いも寄らない突然の閃光に目を覆う。
覆うのが遅かったため、目が一時的に見えなくなった。
一瞬だが、完全に動きを止められてしまう。
直後、殺気にも似た威圧感を放って牽制を試みた。

キュウが何をしようとも今は気付かないだろう。

ウィスタリマン > 瞼を開く。栞の足は完全に止まっている。……成功、か?
依然として放たれる威圧感は尋常ではない。それどころか先程よりも強くなっているような気がする。

勿論怯んでいる暇はない。
殺気にも似たその威圧からは"油断すると死ぬ"ということをひしひしと感じ取らせる。
―――後で謝らなきゃ。

「必殺ッ! "回旋脚"―――ッ!!!」

地を踏みしめ、目の眩んだ栞の胴に"撃力"を乗せた回し蹴りを放つ。
回し蹴りを放つメイド服の少女には魔法少女の面影はなかった。

瀬部キュウ > 集中している。
リ…ウィスタリマンが放った閃光も意識の外だった。
ただひたすら、前進することと、次に不可視の一撃が来た時にせめて相手にもダメージを与えられることを考えて。

「ぜんしんはりねずみー…とまでは、いけませんか?」

海水はもう不要。リリース。重力に従って砂浜に派手に落下するだろう。
そして最初と同じく、栞の足をもう一度砂で封じにかかる。
偶然ウィスタリマンの攻撃にあわせる形になったかもしれない。

こちらに敵意が向く可能性も考慮して。
腕を前に突き出し、その手にも大きな『仕込み』を配置して、接敵もしくは衝撃に備える。

空閑 栞 > 「――――っ!」

声を聞いて攻撃を避けようとするも、足を封じられていたために直撃する。
強烈な衝撃を受け、その場に膝をつく。
そして膝をつくと同時に、全身に纏っていた青く光る雷が消える。
まともな術式も組まずに魔力にモノを言わせた無理やりな魔術行使、それによる肉体のダメージ。
魔術が消えたことを引き金に、それが全身に襲い掛かる。

「あっ、く……」

その場に倒れ込み、悶絶する。
まともに声すら出せないほどの痛みに動けないでいた。

瀬部キュウ > 「―…?」

フェイクか?
いや……そうではなさそう…?
こういう思考に複数コアは役に立たない。
それらは計算しか出来ない。考えるのは自分の役割。

「……!栞先輩!!」

数瞬たってようやく状況を把握し、駆け寄る。
もしこれがフェイクで、致命的な一撃を食らったとしても、『問題はないはず』なのだ。
ならばこれがフェイクでなく本当に異常が起きているのだと考えて行動するべき。

ウィスタリマン > 「ふぅ……なんとか、勝てた……といいんだけど……」

肩で息をする姿は最早リリアの素が出ている。ウィスタリマンとはなんだったのか。
呼吸を落ち着かせつつ栞に近づく。先程まで痛いほどに感じた威圧感はもうない。

「えーっと……栞さん、大丈夫……じゃないよね。どうしよう……」

痛みに悶える栞を心配する少女は、いつものリリアそのものだった。

空閑 栞 > 「お疲れ、様でし。た……大丈夫……です、か?」

痛みを堪え、額に汗を浮かべ、キュウにそう問いかける。
魔術が解けたせいか、いつも通りの栞になっている。
痛みは少しずつ軽くなっていく。話すくらいなら我慢はできた。

「リリ、アさんも、お疲れ様で、した……ちょっと、動けな、いですね……」

無理やり笑って見せる。
実際動けないほどの痛みが全身を襲っていた。

瀬部キュウ > 「だ、大丈夫か…って……私は動けますけど…」

骨は折れたがもう固定してあるので動ける。痛みも殆ど無い。

「そんなことより先輩は…どうしたんですか?大丈夫ですか?」

明らかに大丈夫じゃなさそうな人に大丈夫かと聞くのはどうかと、言ってから思った。

ウィスタリマン > 「や、私は大丈夫だから、ウィスタリマンだから、ね。」

うっかりウィスタリマンを出してしまった。いやウィスタリマンなのだけれども。
幸い自分はノーダメージだ。少し精神的な疲労が来ているが……さして問題はないだろう。

「流石に蹴ったのは申し訳ないし、良ければ家ぐらいまでなら運ぶけど……」

徐ろに浜辺の隅に置いてあるデッキブラシを手に取る。ここに来るとき使っていたものだ。

空閑 栞 > 「多分、魔術で、無理やりしたので、体が痛いのかなって……」
「まあ、大丈夫、ですよ」

うつ伏せのまま、とぎれとぎれにそう応える。
もちろん大丈夫なわけはない。

「お願いしても、いいですか? 歓楽区なん、ですけど……」

痛みを耐え、無理やり動いてポケットから家の鍵を取り出す。
砂浜に置きっぱなしの鞄をちらりと見て、あれもお願いできるのかな……などと考えていた。

瀬部キュウ > 「あ、え、ええっと鞄が…っ」

栞先輩の目線の先にある鞄に気がついて、慌てて取りに行く。
さすがに自分のアバウトな真水操作で重症人を運ぶ訳にはいかない。
運ぶのはリリアさんに任せよう。

ウィスタリマン > 「ん。ありがと! ……栞さん、ちょっと我慢してもらえるかな?」

キュウから鞄を受け取り背負う。想像以上に重いが……大丈夫だろうか。
更に倒れている栞を抱き起こす。異能で腕力をカバーしつつ、デッキブラシの上に立つ。

「キュウさん、今日は申し訳ないけどまた、ね!」

深呼吸をひとつ。イメージは大丈夫そうだ。
デッキブラシは数メートル程浮かび上がり、ウィスタリマンと栞を乗せて歓楽区へと飛び去っていく。

ご案内:「浜辺」からウィスタリマンさんが去りました。
瀬部キュウ > 「あ、えぇと、はい、また!栞先輩をよろしく…お願いしま、速い……」

ともすれば飛んでついていこうと思っていたのだが、やっぱり自分の中途半端な飛行法では追いつけそうにない。

「心配だなぁ……いやともかく…はぁ、想像以上に…弱い」

がっくりと肩を落として、キュウも帰路についたのだった。

ご案内:「浜辺」から瀬部キュウさんが去りました。
空閑 栞 > 激痛に顔を顰めながらリリ……ウィスタリマンのデッキブラシに乗って歓楽区の自宅へと帰っていった。
ご案内:「浜辺」から空閑 栞さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に蒼穹さんが現れました。
蒼穹 > (夜の浜辺。紫色になり、光を跳ね返すその水面、その光景を単に幻想的等と言ってしまえば月並みだが、それでも、なかなかどうして幻想ほどに美しい光景だとは思う。…美術家でもない故見て飽きるが。ゆったりと浜辺に、布越しに座って。)
…ふぅ、花火でもしたら楽しそうかな?
(まだ六月。夏には遠いけれど、いずれはこう言った場面でさらに美しい炎を灯すのだろうか。我ながら詩的である。いや、まぁ詩人から見ればそんなに詩的でもないだろうが。)

蒼穹 > (例えば、魔術で花火を創りだすなど、出来ないだろうか。大掛かりな打ち上げ花火的な、そういうものを創りだせたら、結構楽しそうだと思う。…思うのだが。)
…いや。
(ふと、思いとどまる。確か己の持ってる魔術って大体黒色だったよな、と。別に闇を意識したとかそういうわけではないのだが、こういう夜景に黒色の花火を飛ばしたところで色鮮やかでも何でもない。寧ろ、その夜の色に溶かされるだけの楽しくない光景ばかりが出るのではなかろうか。)
…うーん。
(しかして、別に黒色以外の魔法も持っていないわけではないのだが、こんな浜辺でぶっ放してしまっても大丈夫なのだろうか?誰かに見られて騒ぎに…いや、まぁこの学園だ、たかが魔術で花火一つ上がったところで、今更かもしれない。)
…よしっ。
(すくっと、その場から立ち上がって、海の方へと歩き出す。)

蒼穹 > …んー。と、えいっ。
(す、と指を夜空に向けて、魔力を集束させる。宛ら滝の如き量の魔力を、己と言う一点に一気に集める。或いは、その魔力の流動は、流動のみを以ってして音となり、或いは衝撃となり。それだけ、大掛かりな術式を、高々花火紛いの事をするために使うというのは頂けないが。)
さぁ、これくらいでいけるかな…っ?
(緩く両手を広げながら、溜めた魔力を放出しようと、術式を編む。)
破壊魔法・第六十術式「夜虹」
(ふんだんに、魔力を使った魔術。即興で編んだ術式。普段使い慣れない属性魔法を無理矢理使って、夜空に虹色の閃光を放つ。黒とは、全ての色を合わせた色。それらを乖離させて、虹色と化す。その閃光の数、四十九。―――七×七、とも言うか。盛大な花火を一つ、打ち上げた。)
ふぅ…壮観、とでも言えばいいのかな。一仕事したよ。
(汗をかいているわけではないが、わざとらしく汗をぬぐう仕草をして、水平線の彼方へと駆ける虹色の閃光が引く光の尾を見据える。成程、綺麗なものだ。だが、安直に虹色をチョイスしたのは、間違いだったのかもしれない。綺麗だが、派手で。それでありきたりだった。本当の花火は、単色でも、これ以上に綺麗だ。…何が足りないのだろうか。やっぱり己は、美術家には向いていない。夜に似つかわしくない光を見遣りながら、改めて確信した。)

蒼穹 > …これくらい、かな?
(一息吐けば、後ろで光が尾を引くも、何事もなかったかのように踵を返した。)

ご案内:「浜辺」から蒼穹さんが去りました。