2015/07/06 のログ
■湖城惣一 > 「そうか。それなら」
ふむ、と顎を撫で思案げに。
「西にある岩礁は滑りやすい。あとは……あの深くなった場所の更に向こう側。あのあたりは潮の流れがきつい。
海開きが始まれば対策は取られるが、気をつけるに越したことはない」
と、改めて危険な地点をいくつか口頭で説明する。そちらが視線を外して場所を確認するなら、指で示してみせるだろう。はずさなければそのまま見つめ合うだけだ。
「友人と泳ぎに行くなら、尚の事な。危険に対して、注意を重ねるに越したことはない」
■枢木 柩 > 「ふむ、ふむ。」
視線を外して場所を確認しつつ
「そうだな、いや、本当に助かる。」
ありがとう、と微笑みかける。
■湖城惣一 > 「礼には及ばん。大した手間はかけていないからな」
恩に着せるつもりもない。おにぎりを食べ終わり、次はいなりずしに手を伸ばしつつ。
「見かけない顔だが……一年か?」
特徴的な外見だが、見かけた覚えがない。広い島だ。単にすれちがっていただけかもしれないが。
■枢木 柩 > 「いや、二年だよ、二年ということになってる。私も貴方を見かけたことがないし、おあいこじゃないか?」
なんてはぐらかす。
妖狐、いわゆる妖怪、人外である。その辺は推してはかられよう。
■湖城惣一 > 「なるほど」
相手の言葉。別段素性をどうこう言うつもりはない。
風紀・公安に身をやつしては居るが、目の前の彼女が喩え二級学生であっても補導も何もするつもりがなかった。
「違いない。なに、単なる話題のタネのようなものでな。俺は湖城惣一。君と同じ二年だ」
まあ、自己紹介ぐらいしてもバチは当たるまい。
■枢木 柩 > 「おお、同級生か!よろしくな、私は枢木 柩(くるるぎ ひつぎ)だ、よろしく。」
同級生ということで普通に喜び、自己紹介を返す。
「あ、ちょっと服を着てくるな」
そういって袋をとりに戻り、パーカーをはおるだろう
■湖城惣一 > 「枢木か。ああ、よろしく頼む」
目礼で済ませ、そのまま視線を外し、もう一度深呼吸。
仕事でない時、そして相手が害意を持たない時。
そういう時に水着は少々動揺が来る。
ひとまずそちらから視線を外しながら、着替えを待つだろう。
その間に、残った食事を咀嚼していく。
■枢木 柩 > パーカーをはおり、袋を背負って戻ってくる
「ええと、こじょう、私はもうそろそろ寮に帰ろうと思うが、こじょうは家が近いのか?」
■湖城惣一 > 「俺か? いや、近いというわけではないが……」
正確に言えば、書類上は男子寮だが。男は神道奏者でもあるが故、その儀礼用の荷物で部屋はうめつくされている。
仮屋はここからは遠い。
「女子寮であれば、通りがかる程度の場所だ。送って行こう」
妖狐の類とて、夜道のひとり歩きはどうなるか分からないのがこの場所だ。
特段手間がかかるわけでもないし、ちょうど食事も取り終えた。
手ぬぐいで自分の指を拭いながら、竹刀袋を担ぎなおす。
■枢木 柩 > 「ふむ、それはありがたい、気が利くな…」
尻尾を揺らしてお礼を言い、湖城の後に続くだろう
■湖城惣一 > そちらの歩調に合わせるようにゆっくりと歩いて行く。
帰り道は何も問題なく帰ることができただろう――。
ご案内:「浜辺」から枢木 柩さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から湖城惣一さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に烏丸 九郎さんが現れました。
■烏丸 九郎 > (今日もこの浜辺は静かに波音を立てる。
来るものを拒まず、去るものを追わない海はどれほど少年にとって心やすまる存在であるか。
あれから何日立っただろう。
もう覚えちゃいないが…一週間くらい?まぁそれくらい。
氷架の想い人と会うのが嫌で、男子寮にずっと帰っていない。
ずっと、ネカフェぐらしの日々。
試験期間が開けたら戻ろうと思っていたが
気づいてみれば、あと二日しか無い。
これはよくない。自分的にはまだ戻るのは早い。
こうなったら寮、でていくか?)
■烏丸 九郎 > (そんな心中を察してか知らずか、潮騒がザザーンと響く。
我ながら情けないとは思う。情けないとは思うが。
いや、全く情けないんだが。)
男らしくねぇよなぁ…
(はぁっとため息。
おお、見よ。少年の背中の、なんと哀れなことか。)
■烏丸 九郎 > (なんというか、あれから、だいぶダメになってるのがわかる。
良い学生であろうと頑張ってはいるものの、テスト勉強には身が入らない。
ダメなのだ、これでは。
自分のことはどうでもいい。まずは約束を果たさなければ。)
■烏丸 九郎 > (氷架の想い人にあったとして
自分は、普通の…今までどおりの顔ができるだろうか?
いや、しなきゃいけないだろう。
むしろ、大事なメンバーの彼氏なんだから
笑顔で対面して礼の1つや2つは言わないといけない立場だ。
それができない。
そんなことできるやつは聖人か、はたまた異星人だろう。)
■烏丸 九郎 > (だからといって、もう一週間経ってるのだ。
いい加減にした方がいいだろう。
ここは一発腹を決めて帰るか?寮に?
いや、できれば一生対面したくはないのだが。
氷架にはネカフェぐらしのことは伝えちゃいないが…知ったら流石に気にするだろうし…
その前に何とかせねば。)
ご案内:「浜辺」にエリナさんが現れました。
ご案内:「浜辺」に楓森焔さんが現れました。
■烏丸 九郎 > (というか、だいぶ氷架に対しての気分は落ち着いてきている。
氷架になら、出会っても冷静でいれる自信はある。
あれから多少は成長したと思う。
だが彼氏、テメーはダメだ。というやつである。)
■楓森焔 > ばしゃばしゃと音がする。水辺に沿って、その水上を走る少女が一人。
そのようなとんちきなことをする少女など、一人しかおるまい。
「お?」
なにやら、浜辺でたそがれている見知った姿。弟子だ。
何やら沈み込んでいるその姿を知っては、流石に放っては置けず速度を上げた。
「おう、どうした、九郎!」
少女が声をかける。
■烏丸 九郎 > (やはりもうちょっとネカフェで暮らそう。
今度男子寮に忍び込んでギターとってこよう。
そうきめた。)
あ、師範。修行か?
(試験期間なのに元気な人だなと思う。
アグレッシブというのだろうか。)
■エリナ > 試験期間中のため外出は避け集中的に自習をしていたが最近どうにも身に入らない。
ずっと家に閉じこもりっきりでは気分も晴れないものだ。と自分に言い聞かせながら久々に散歩をしようと家を出た。
もう夏も間近という事もあり浜辺を選んだのだが……そこに佇む人影を見つけてしまった。
どうもしおれている様な雰囲気を感じ、心配になったエリナは彼に声を掛けようとするがその時水上を走る影を見つけた。
少し様子を伺って見るとどうも彼とは知り合いのようだった。
『あまり邪魔をしてはいけませんよね』と思い、背を向ける。
■烏丸 九郎 > (視線を感じ、ふと振り向くと
そこには金髪の…美しい女性が立っている。
一瞬見とれたが、ジロジロ見るのも失礼かと思い
慌てて頭を下げる。)
■楓森焔 > 水を蹴って、ひとまず砂浜に着地。
衝撃を吸収した砂が少し辺りを舞った。
残念ながらもう一人の気配には気づかなかったようで、
エリナをよそに九郎の顔をじっと見つめてみる。
「そ、修行。なかなかお前の修行を見てやれなくて悪かったな」
言いながら、背後から何かを取り出した。頭陀袋だ。
「お前にも渡したいものがあって……あ。つっても結構デカいから今渡すのもアレだな。寮に帰る時渡すよ」
とりあえずどストレートに空気よめない言葉を投げて。
「お?」
九郎が頭を下げている。気配にまったく気づいていなかった焔は、そのままそちらに顔を向けて。
ちょうど背を向けていたので「知り合いか?」と尋ねるだけであった。
■エリナ > 散歩に来ただけである、彼が一人じゃないのなら大丈夫。
きっとあの方が助けてくれるはず。
さて、このまま散歩を続けることにしよう。勉強で凝り固まった頭はまだまだ解れる気配を見せない。
背を向けていたために烏丸が頭を下げていることには気付かず、そのまま立ち去っていった。
■烏丸 九郎 > いや、師範も忙しいだろうしな。
わがままはいってられねぇよ。
(師範といえども、彼女も立派な学生だし試験勉強もあるだろう。
もちろん自分も追い込みの勉強を書かしてはいないし
今なにか教えを請うべき期間ではないことは少年も理解していた。)
渡したいもの?なんだ、それ…
(置かれた頭陀袋をじっと見つめる。たしかに大きいものだが…。
そして、知り合いかと聞かれれば首を横に振る。)
いや、でも、綺麗な人だったなーって。
一瞬見えただけだけどよ。
ご案内:「浜辺」からエリナさんが去りました。
■楓森焔 > 「なるほど……」
去っていく彼女は確かに美人であった。目を奪われるのも仕方がないか、と何度か頷いた。
「んー、そうか。いや、でもそろそろ本格的に技を教えてやろうと思ってさ」
彼のことだ。しっかり教えを守っていたに違いない。
だからこそ、コレが要る。
「見たいか? そうか、それじゃあ仕方無えな」
相手がじっと見つめるならば、むしろその辛気臭い顔を少しはふっ飛ばしてやろうと。
「みろっ!」
頭陀袋から引き出したのは――白い道着だ。
手縫いと思しき、焔のものよりも随分大きなそれには、胸に"俺"の字が刻まれている。
一部には、九郎のメッシュをイメージしたのか炎のような染め上げが成されていた。
ババァーンと音がしそうなほどの、ドヤ顔であった。
■烏丸 九郎 > 本格的な技…か…。
俺にできるかな。
(たしかに、彼女の言いつけを守り、ずっと裸足で過ごしてきた。
今となってはアスファルトの上を走るのも、少々の痛みに耐えれば可能だ。
そして、彼女が取り出したその白い真新しい道着を見ると
少年は目を輝かせる。)
おおー…師範、これ…道着じゃねぇか。
もらって、いいのか?
■楓森焔 > 「当たり前だろ! お前、自分が誰だと思ってんだよ!」
俺に出来る。もらっていいのか。その二つの言葉を同時に肯定する。
「お前は烏丸九郎。俺流の一番弟子。俺の、自慢すべき最初の弟子さ」
破顔して。大輪のような笑顔で、見せた。
瞳を輝かせる彼の姿には、ずいぶん満足できて。
「だろ?」
と、首を傾げた。
■烏丸 九郎 > お、おう!!
(そう短く答えると、焔の持つ道着へと手を伸ばす。
ここで受け取らないのは彼女を裏切ることになるし
何より、自分を認めてくれることが嬉しかった。
こんな情けない男だというのに。
それでいてなお変わらずに接してくれる気遣いに感謝した。)
へへ…俺の、道着か。ロックだぜ。
■楓森焔 > 「ロックだろ」
まあ、ロック、の意味はまだ掴みかねていたが。
だけどこれがロックな気がするのは間違いない。
ばしばしと背中を叩いて笑いながら。
「下と帯もあるけど、大荷物になるし寮で渡すよ。お前、寮住まいだろ?」
詳しい住まいまではそういえば聞いてなかったし、
本人としては確認をとるだけのつもりだったが。
■烏丸 九郎 > あー…今はちょっと訳あって寮には戻ってないんだ…。
(バシバシ背中を叩かれながら問われると正直に答える。
さすがに理由までは明かさないが。
理由を聞いたらさすがに呆れられるだろうし。)
だから、そうだな。
テスト期間が開けたら寮に戻るつもりなんで
その時にでも渡してくれりゃいい。
(言ってしまった。
約束してしまった。
これでは、試験が終わった後に寮に帰らなければならない。)
■楓森焔 > 「訳あって?」
首をひねる。学生が寮を出なければならない理由。それはなんだろうか。
騒音? かつて出会った少女もそれで寮住まいはできないといっていた。
楽器をやる九郎なら、それもあるかもしれないが――。
いやだが逆に。それなら期間が開けたら寮に戻る、というのは不自然だ。
バカなりに考える。頭は回らないが、弟子がここでたそがれていて。少なくとも帰れない事情があるというのは分かっているのだ。
「なんかあったんだな。で、それが俺にゃ話せない事情ってことか?」
弟子のピンチは師範のピンチ。それは何度も言ったこと。
きっとそれは理解してくれているはずだと思いたい。
だからピンチではないのだ。それは、九郎に対する信頼だった。
■烏丸 九郎 > ……。
(話せない…わけではない。
が、ちっぽけなプライドが邪魔をする…といったところか。
だが、少女の目は自分に対する信頼にあふれているではないか。)
…ちょっと、顔をあわせづらい奴がいるんだ。
憎いってわけじゃない。ただ、俺の一方的な理由でなんて言うか…
会いたくないんだ。
だから寮に戻っていない。
(顔をあわせたくない理由に関しては、口が裂けても言えない。)
■楓森焔 > 「なるほどな」
心の整理が必要なわけだ。納得する。
そいつが憎いというかなんというか。
悪いやつだったら殴りに行ってやろうかと思ったが、
残念ながらそうではないらしい。
「もし寝床に困ってんなら、俺の道場使っていいぜ。
鍵も飯も無えけど、電気も水道も一応通ってるし」
歯切れの悪い声。まだ悩んでいる最中というわけだ。
■烏丸 九郎 > いいのか?お世話になっても…
師範は一応女子寮住まい…だったよな?
(確かに、ずっとネカフェぐらしは財布にダメージが来る。
ただで屋根のあるところで寝泊まりできるなら、実際助かる。
だが、一応確認はとって置かなければなるまい。
信頼関係に結ばれた、弟子と師であっても
男女が同じ屋根の下暮らすわけには行かないだろうし。)
■楓森焔 > 「女子寮と、道場と、青垣山。まあ大体サイクルで寝泊まりしてるな」
ぐるぐるーっと指を回して。道場は未開拓地区の郊外。
開拓村からも少し離れ、精々池があるぐらいで周囲には何もない。
考え事をするにはちょうどいい。
「だから気にすんな。それなりに生活用品は入ってるから、困りゃしねえだろ」
笑いながら言う。その後、"で"、と声を出しながら自分の太ももを叩く。
「ついでだ。技を二つ教えてやるからさ、磨いとけ」
九郎から距離を離してから頭陀袋を置いて。海のほうへと構えた。
■烏丸 九郎 > お、おう、わかった。
道場に泊まるときは教えてくれよな。
一応そん時にまだそこで暮らしてるようなら、席を外すからよ。
(このへんは律儀であった。多少の不便は少年にはどうってことはないだろう。)
って…わざ…?おれに?マジか…
(技と聞けば少年はその場に正座の姿勢になり
焔に視線を送る。)
■楓森焔 > 「そんときゃ山にでもこもってるよ」
と笑いかけてから、真剣な表情に。
「俺の技は、大体イメージが肝心だ。
俺の基本技の二つを教えるけど、両方大事だ」
ざり、と砂を滑らせる。まずは一つ目。
「水ってのは勢い良く叩きつければコンクリート並の硬さにだってなるらしいじゃねえか。
だからさ、その水を掴むイメージ。
びっちりと、足の裏全てで掴んでやるんだよ。
"掴み方"はもうわかってきただろ?」
だからこその裸足。大地をつかめという教え。
息を吸って、吐いて。前を見据える。
「俺の動きをよく見てろ。
大事なのは、なれるまでは根性も必要ってこと」
気合ってのは捨てたもんじゃない。腹の中からおもいっきり叫べ、と。
「お」
声が、漏れる。
「おぉおおお――ッ!」
踏み込んだ。まるで大地に吸着しているかのような足。
砂が余すことなく掴まれて、疾走するたびに空に舞い上がる。
叫んだまま、獣のような声を上げてイメージするのは"水を掴む自分"。
河童でもいい。器用に、足の裏がまるでゴムよりも柔らかく、鉄のように硬くなったイメージ。
ただ、それだけだ。焔にはそれしか説明できない。
だから示す。できる、お前ならできると。
水に足を置き、掴み、かき上げ、踏み出す。
とにかく――伝えたかった。
荒々しい走り。けれど飛沫は立たない。水に叩きつけるわけじゃない。置く、掴む。だからこそ、走れる。
■烏丸 九郎 > うぉ…おおお…
(それを見れば、少年は感嘆の声しかあげることができなかった。
水をつかむイメージ。
そのための裸足。その足は、大地をつかむためにあると思っていた。
だが俺流では違う。
水すらも、その対象なのだ。
根性、気合でどうにかなる領域を超えているのだが
少年は、それをなす少女の姿を目に焼き付ける。
自身も、その領域へとようやく踏み出すのだと言う強い意志を持って。)
■楓森焔 > ひとしきり円を描くように走りぬいて、砂浜へと着地する。
大きく息を吐いて、再び笑顔を浮かべなおす。
「大事なのは、足の裏のぜんぶを水にくっつけるぐらいの気持ちで行くこと。
大地をつかめるなら、硬いのがちょっと柔らかくなっただけだ。
叩きつけると安定しない。置いて、掴んで、蹴る。その意識だ。
あと、声は出せ。こうな、無駄なことを考えてる余裕がなくなるから。目一杯声出せ。お前の体格なら、一週間か二週間で……多分10m……20m……いや、もっといけるかもしれない。そこはお前の努力次第」
焔なりのアドバイスだ。めいいっぱい、慎重に、ゆっくりしっかりと。次の構えをとりながら、そう語りかけた。
「信じてるからさ」
■烏丸 九郎 > お、おう!まかせろ!
(少女の技に驚嘆しながらも、それを吸収するために
じっと、真剣に見つめる。
足の裏を全部くっつけるように、置いて、掴んで、蹴る。
そして、目一杯の大声。
心のなかで焔の言葉を反芻しつつ、自分のものにしてゆく。
信じていると言われた…その期待に、答えなければ男じゃないのだ。)
■楓森焔 > 「よし。次だ。こっちは簡単。真似るだけだったらガキでもできる。
結果を出すのが難しいってだけで、さ」
左腕を高く上げた。胸元よりやや高いぐらい。それを、身体を横切るよう90度に折り曲げる。右腕は腰溜めにかまえている。
おそらくこちらは、九郎も見たことあるはずだ。
「お前、"音"に関係する異能なんだって?」
ただ小耳に挟んだだけだ。詳しくはしらないが。
「だったら、こいつと相性がいいはずだ」
焔の十八番。落第街でも見せた一撃。
「イメージは山だ。山のてっぺんまで吹き上げて、
そこから打ち下ろす強い風。ジェットコースターでもいいけどな」
そういってから大きく息を吸って。
「オォオオッ!!」
先ほどの声よりも、鋭い。押し付けるような声量で右の拳が放たれる。
左手を振り子のように下し、右手は山なりのオーバーアクション。
身体をひねって、右の拳が山の軌道を描きながら正面に放たれた。
体重も乗って無さそうな、だが、全身の力がみなぎるような一撃。
その一撃は風を呼び、まるで大砲のような音を立てながら海を断ち割り、空へと消えていく。
オーバーアクションでだって構わない。これは遠くにいる相手を討つための技だから。
■烏丸 九郎 > …すげぇ……
(海を割るその拳…格闘技経験のない自分ができるのだろうか?
いや、やるのだ。
焔のなす型ををしっかりと見つめ、それを覚える。
型の真似だけならだれでもできるだろう。
だが、自分はこれと同じような力を持たせなければならない。
できる、やれる。
自分は焔を信じると決めたのだ。
だからこそ、やってみせる。)
■楓森焔 > 「以上二つ! 水の上を駆け回れるようになったら、あとは体重移動とか色々工夫すれば壁とか空とかイケる」
気楽に言うが、流石に"空"までいくのに焔もかなりの時間をかけてきた。
九郎に才能があれば、あるいは熱意があれば。
互いの信頼のもとに会得していくかもしれない。
「大事なのは気付きだ。踏み出せるか、踏み出せないかだ。
一歩踏み出して、ひとつの技をつかめれば、あとはもう反復するだけだ。
あとは身体鍛えて、ずっと繰り返す。
へへ、バカでも出来るぜ、九郎。俺が出来るんだから」
根っからの馬鹿だ。考えずとも、繰り返せば出来る。
笑いながら、肩をたたいた。
「馬鹿みたいに声だして、馬鹿みたいに練習してみろよ」
きっとすっきりするから。その言葉は飲み込んだ。
言わずとも彼はやるだろうし、きっと気持ちの整理に特訓は役に立つ。
――次に会うときには、ある程度モノにしてるだろう、と。そう思って。
「あの拳の方は、もし出来るようになったら異能を使って工夫してみせてくれよ。
俺は異能とか持ってないからさ。そういうの見るの楽しみなんだ」
■烏丸 九郎 > 空、までか……やっぱすげぇな、俺流…。
(その言葉には、焔に対する尊敬と信頼が伺えた。
空まで行けると彼女が言うのならば、そうなのだろう。
そして、その技を自分に伝授してくれている。
自身も、その領域へ到達するため、少年は努力を惜しまないだろう。)
気づきか。その一歩、踏み出してみせるぜ。
それに、楽器も何でも反復練習だ。
それくらいは慣れっこだ。
やってやるぜ、俺は。
(馬鹿みたいに声を出し、馬鹿みたいに練習する。
得意である。
なぜなら少年はバカだったから。)
ああ、もしできたら…『俺』流の俺流にしてみるぜ。
そういえば、この2つって名前とかねぇのか?
■楓森焔 > 「その意気だ。楽しみにしてるぜ」
笑いながら親指を立てて。その後の問には
「この技? 河童ランとマウンテンハンマーって技名だ!」
小学生のセンスであった。
いや、事実彼女がこの技を編み出したのは小学生の頃で。
名づけたのもその頃なので当然だったのだが。
ロックかどうかは九郎の感性だろう。
■烏丸 九郎 > 河童ランとマウンテンハンマー…
おう、必ず、モノにしてやるぜ!
(意外と抵抗なく受け入れた。
もし、冷静だったら河童ランにはちょっと首をひねったかもしれない。
だが、今の九郎は見せられた技に感動し
自らもそれにこれから挑むということで、熱くなっていた。)
■楓森焔 > 「いよっしゃあ! 頑張れ愛弟子!!」
手を掲げる。ハイタッチ。
いや、そこからの手をがっちりと組み合うアレだ。
伝われこの想いとばかりに手を振った。
■烏丸 九郎 > おう!任せろ、師範!
(応えるように、ハイタッチ
から、ガッチリと手を組む。
ぴったり決まると、なんか胸がスッとしたようだった。)
それじゃ、道着は道場に持ってくからさ。
道、教えてくれよ。
■楓森焔 > いい音を立てて噛み合った手。こういうのは実に気持ちいいものだ。
笑顔を浮かべながら手を離すと。
「まあ確かにそうだな。あー、じゃあこれごと持ってけ」
と、頭陀袋ごと。中身は例の"水筒"が入っている程度でそれほど重くはない。
九郎に具体的な場所を教えこんだ。
「もし客がきたらケータイに連絡くれ」
と伝えつつ。
「それじゃ、俺もそろそろいくかなぁーッ!」
大きく背を後ろに逸らして身体を伸ばす。
■烏丸 九郎 > ああ、ありがとな、師範。
技と、道場…。
ありがたく使わせてもらうぜ。
その前にしっかりものにしなきゃいけねぇけど。
(少年は立ち上がると頭陀袋を背負って教えられた方向へと向かおうとする。
その前に、師範にひらりと手を振り)
■楓森焔 > 「応! んじゃあな! 次に会う時を楽しみにしてるぜ!」
こちらも手を振って、かっこつけながら背を向けた。
お互い別々の方向に歩き去っていくだろう。
ご案内:「浜辺」から烏丸 九郎さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から楓森焔さんが去りました。
ご案内:「浜辺」に自販機さんが現れました。
■自販機 > (自販機がいた。竹で身を飾りありとあらゆる短冊を貼り付けられたそれは一見異様だった。というより完全におかしかった。短冊の内容はさまざまな言語で飾られていた。とてもこの場所ではモザイクをかけないと語れないような内容のものもあったがおおむね願望に基づく内容だった。
七夕。それは彦星と織姫が年に一度会って取っ組み合いをして世界の理を決める祭典。織姫が一日に千人を殺すといえば、彦星が二千人を生もうと言って返すのだ。違うって? やかましい)
「ブーン」
(七夕ルックの自販機が浜辺に立っている。それが情景である)
■自販機 > (砂浜にはいろいろなゴミが転がっている。人間の足跡がゴミにまぎれてしまっている。悲しいかな。生活委員や風紀委員が躍起になってゴミと盗撮と格闘する季節が徐々に近づいてきているのだ。
浜辺の潮風を浴びてのんびりと佇む。猫はいない。タコっぽいのもいないしラジオもいなかった。孤独の中の孤独。
カラコロ転がってきた空き缶がぶつかった。背後からも同じような色合いの缶が転がってくる。
缶と缶で缶がダブってしまった……)
「ブーン」
(海開きは近いらしい。人ごみにまぎれてたくさん販売できそうな気配がする。
と思ったのかは別として現状、誰もいない)
ご案内:「浜辺」に鈴成静佳さんが現れました。
■鈴成静佳 > ほっ、ほっ、ほっ……。
(今日も日課のランニングで浜辺を走る静佳さん)
(しかし、いつものコースに見慣れぬモノリスが屹立しているのに気づき、近づく)
……ん、なんじゃこりゃ……モリ○ー?
(足踏みしてアイドリングしながら、短冊の生えたその異様なシルエットを眺める)
■自販機 > (モノリスはモノリスでも猿に妙な飲み物を与えて卒倒させる側のモノリスである。むしろ変形してグイングイン動いて異次元の本棚に宇宙飛行士と共に突っ込んでいくような存在である。
誰かが来ても身じろぎは特に無い。
ざわわざわわといろんな意味でギリギリな音を立てて竹が揺れている。サトウキビじゃないからセーフ)
「ブーン」
(かわないか
ぴかーっとライドオn ライトオンする自販機)
■鈴成静佳 > うわっ! 光った!
(たじろぎ、一瞬身を引く静佳。短冊の下が厳かに光るのを、まじまじと眺める)
……まさか、自販機? こんなとこにあったっけ?
(裏側にも回って、そのいでたちを確認。電源につながっているのだろうか……?)
この短冊は……あー、七夕かぁ。フフッ、タイムリーな装飾ねぇ。
でも、これなにを売る自販機なんだろう……(ボタンの上を見るが、空っぽなのだろうか)
■自販機 > (電源コードは尻尾だった。つながりなど無いし中の人などいない。
ざーっと竹が鳴る。短冊の数枚が持っていかれた。
ボタンはさまざまな種別があるが、肝心の模型は一切認められないだろう。黒い空間が広がっているだけ。商品名の一切もないのだ。購入しように何が出るのかわからぬのである。2万円を一気にねじ込むような度胸が求められるだろう!)
「ブーン」
(どうした? 買わないのか?
波打ち際で誰かの書いた名前が消される)
■鈴成静佳 > ああっと……!
(風に飛ばされる短冊を目で追って、一瞬追いかけようとするも、あっという間に遠ざかる短冊をすぐに諦め)
……フフッ、空きの短冊と筆記用具があればアタシも1つくらい書くんスけどねー。
むむぅ……電源、ないッスね。じゃあ電池式……?(鳴り響くコンプレッサーの動作音に、首をかしげる)
値段は書いてあるけど……ううん!? 2万円? 万札を食う自販機なんてあったの?
あやしいな、これ……(とりあえずお金を入れずに適当にボタンを押す)
ご案内:「浜辺」に薬師寺 瀬織さんが現れました。
■自販機 > 「ブッブー!!!!!!!!!!!!!!!!」
(残念な音がした。お金をいれてもいないのに商品は出てこないのだ。だが断ると言わんばかりに音が鳴る。しかも異常にでかい。まるで船の警笛のような甲高い音だった。
音がやむ。彼女の押したであろうボタンが明滅していた。)
「ブーン」
(自販機は待っている。おかねをいれてね!!)
■薬師寺 瀬織 > 紺色の髪をなびかせ、瀬織は浜辺に訪れる。といっても、今日は泳ぎに来たわけではない。
近づいている海開きに備え、下見に来ていたに過ぎないのだ。
その証拠に、瀬織の服装は普段通りの制服姿のままである。
ふと見ると、ないはずの位置に――『それ』があった。竹で飾られた自販機。もしや、以前商店街で見た『それ』であろうか?
『それ』の近くには面識のある女子生徒の姿。近づき、声をかけてみる。
「こんにちは、鈴成さん。奇遇ね、こんなところで会うなんて。ところで……それ」
■鈴成静佳 > ギョエーッ!(自販機にあるまじき騒音に、おもわず尻もちをつく)
ちょ、ちょっと、お金入れなかったくらいでそこまでうるさく言うことはないでしょーよ!!
(立ち上がり、思わず蹴りを入れそうになるも、ギリギリで思いとどまる)
……ったく、しょうがないわね……。まぁ喉乾いてはいるし、ジュースが出てくるならいいけど。
(ポッケから小銭入れを取り出し、とりあえず500円を投入。どのボタンを押そうかとしばし逡巡し、そして、怖いもの見たさで500円のボタンを押して見る。ポチッ)>自販機
(押したあとで、人影に気づく)
……あら、瀬織ちゃん! おひさ! 元気してる!(手を上げて挨拶)
あ、そうそう、アタシ保健委員になったよ! 今後ともよろしくね!
……で、この自販機に心当たりあるの? 瀬織ちゃん
■薬師寺 瀬織 > 「そうね、よろしくお願いするわ。鈴成さんが保健課に入ったというのを風の噂に聞いて、いつ声をかけようか迷っていたところだったのだけれど。こうして会えていろいろと助かったわ」
表情こそ変わらないが、銀色の右手を挙げて瀬織なりに明るく挨拶を返しつつ、瀬織は鈴成の問いに応える。
「心当たりも何も……私の勘が正しければ、その自販機、私が今個人的に調査しているものよ。色々と妙な飲み物が出てくるようだから、生徒の健康に何かあったら保健課としてはよくないと思って」
その声と目は先程とは一転、真剣であった。
■自販機 > (あ、このまえはどーも)
「ブーン」
(保健委員があらわれてしまった。お尋ね者的な扱いを受けているだけあってピンチの予感さえする。とはいえお金を入れられてしまっては販売し始めちゃう悲しい性。がこーんと音を立てて何か出てくる。
『ぬるぬるぬるぬるぬるぬるるるるるるるねーるね』。
やけに長い商品名を持つペットボトル。製造会社は黒塗りだし成分は書いてないないわで危険度が高そうなものであった。
飲めるのか飲めないのか怪しいが、きっと飲めるのだろう。たぶんね。)
「ブーン」
(いやあ調査されるなんてウレシイデスー
クソックソッ)
■鈴成静佳 > ほえー、瀬織ちゃんそんなことやってるんだ。確かに怪しい自販機だけどねー……。
(瀬織さんと自販機を交互に眺めながら。残念ながらこの自販機に関する掲示は静佳はまだ見てないようだ)
とりあえず夏本番になったら熱中症の人とかも増えそうだしね、保健室にはなるべく顔をだすようにするよ!>瀬織さん
……お、何か出てきた。ジュースのようだけ……ど……。
(取り出し口からボトルを取り出し、顔をしかめる。あからさまに危ない商品名)
……むぅ。もしかしてこれはジュースじゃなくてジョークグッズなのでは? どう思う、瀬織ちゃん?
(訊きつつも、買った以上は蓋を開けてみる。すぐに口はつけず、匂いを嗅いでみたり、ちょっとだけ手に垂らしてみようとしたり)
(素直に飲み口から出てくるような粘度であれば、指につけてちょっとだけ舐めてみたりもする)>自販機
■薬師寺 瀬織 > 瀬織はすぐさまメモ帳とペンを取り出す。飲料らしきものの特徴についてメモをとり、状況などを記録しておくためだ。
飲料の、ひいては『自販機』そのものの危険性の有無や程度を判断するためには、サンプルは多いほうが望ましい。
「……そうね。すぐに飲もうとしないのは賢明な判断だわ。もしかすると、飲み物ですらない可能性もありえるのだし」
鈴成が自販機から排出された飲料にすぐ口をつけず、匂いや粘度などを推し量ろうとしている様子を見て、そう述べた。
■鈴成静佳 > まぁこの手のジョークグッズは食品衛生上は一応大丈夫な水準のことが多いけどね~。腐ってたらさすがにアウトだろうけど。
(商品の様子のメモを取るなら、瀬織さんに見えやすいようにボトルを持つ。しかし渡しはしない。自腹切って買ったものだからね)
アタシはあまり化学的なことは詳しくなくてねぇ、勉強中だけど。>瀬織さん
■自販機 > (半分正解半分不正解と言ったところだろうか。
過去にお茶畑を作ったり人の服を燃やして原始人ルックにしたことがある自販機である。うかつに飲むべきではないのだ。
が、開封して中身を指に垂らしたあたりでそれが現れた。中から薄緑色の物体Xがあらわれると鈴成の腕にへばりついていく。一種のスライム的な生命体らしい。別に服を溶かしたりはしないです)
「ブーン」
(やだなあジョークグッツですよジョーク。
言わんばかりに低音を上げている。
スライムが手を包んで腕までいくかもしれない)
■薬師寺 瀬織 > 鈴成から差し出されたボトルを眺め、商品名をメモする。
飲料ならばあるべき成分表がなく、メーカーも記載されていないのがあからさまに怪しい。
となると、やはり鈴成が指摘した可能性通り、飲料ではなくジョークグッズの類であろうか。
そう考えつつメモをとっているうち、次第に薄緑色をしたスライム状の何かがボトルの中から現れ、鈴成の腕に付着する様子を見ると。
「……鈴成さん!」
瀬織は反射的に、鈴成へ声をかける。
■鈴成静佳 > わわわっ!?
(想定外の量が手に溢れ、それがスライム状に蠢いて手を包んでいく)
(一瞬はその異様な光景にたじろぐも、肉や衣服を溶かす様子がないことを確認すると)
……あははー。これスライムだったわー! 自販機で売ってるもんなんだねー。
(事も無げに目を離し、気の抜けた笑い声を上げる)
(なんとこの静佳さん、先日の考古学の試験(夜の部)でスライムを身を持って体験済みであった)
大丈夫だよー、瀬織ちゃん。これ無害っぽいしー?
(身体をどんどん這い登って来るスライムを、振り解こうともしない)
■薬師寺 瀬織 > スライムに這い上られる鈴成の様子を、ただ眺める。
彼女の服や肉体が溶けている様子がないことから察し。
「そうね、悪いスライムではなさそうだわ」
瀬織なりのジョークだ。通じるかは不明。
「……でも」
一つの確信。缶が動き回ったという話や、瀬織の目の前で茶畑を作ったあの飲料、そしてこのスライム。
やはり、この自販機で売られている物が純粋な『飲料』であるとは限らないようだ。
■自販機 > (スライムは特に害が無いようで鈴成の腕に巻きついて片腕を覆い尽くしたあたりで止まる。洋服を溶かしたり妙な成分を吐き出してアハーン展開になったりはしない。男性諸君には気の毒な話である。
無害だよアピールなのか否かスライムは腕でうねうねしてるだけである。
自販機から風で短冊が飛んでいく。
スライムは鈴成が気に入ったのか居心地がいいのかわからないが全身を覆い尽くして呼吸困難にさせたりはせずうねっている。
自販機のボタンが点滅して波を作る。よくある商業用の自販機と同じような。ただ点滅の速度と間隔はまちまちであった)
■鈴成静佳 > あはは、くすぐったーい!
(左腕全体を包み込んで蠢くスライムの感触に、楽しげな笑みを浮かべる静佳)
考古学の遺跡から持ち帰れなくてがっかりしちゃったけど、自販機で売ってるならありがたいッスね! もう一本買っちゃおうっと!
(左腕にスライムをまとわせたまま、片手で500円玉をもう1つ取り出し、挿入して同じボタンを押す)
瀬織ちゃんも何か買ってみなよ。調査するんでしょ?
■薬師寺 瀬織 > 「……ええ。そうするつもりだわ。サンプルは多いほうがいいものね。この前は100円を入れたし、今回は金額を増やしてみましょうか」
鈴成にそう返すと、瀬織はしまっていた財布とその中の500円玉を取り出し、眼前の自販機に投入。
適当なボタンを押して、しばし様子を見る。
■自販機 > (500円が投じられると素直にがこーんと飲料が出てくるだろう。
『びやく』。
子供が適当に書き散らしたような商品名。製造は安心と信頼の常世財団。バーコードがついていなかったり成分表示がすべて意味不明な点字だったりと不可解を極めているだろう。
中身は飲んでからのお楽しみ。
薬師寺が500円を投じると、飲料が出てこない。きな臭いにおいが漂い始める。しばらく経ってからこっそりと缶が出てくるのだ。『なんでも溶かす薬』。まず缶が溶けていない段階で突っ込むべきだろう。突っ込みしようにも自販機は機械なので商品を出すだけなのだ。)
「ブーン」
(ボタンの点滅がだんだんと規則的になっていく。練習でもしてるようだった)
■薬師寺 瀬織 > 排出口から缶を取った瀬織は、呟く。
「……『なんでも溶かす薬』という割に缶が溶けていないことには、いくらでも説明がつきそうだけれど。これは……明らかに飲み物ではなさそうね」
商品名からして危うい。これで飲み物の類だと思う者はまずいないだろう。
瀬織は缶の特徴についてメモを取った後、近くに散乱しているゴミを適当に集め、
中身を浴びないように、また万が一浴びてしまいそうになった場合の保険として、装甲義手である右手で慎重に缶を開けた後、それをわずかに垂らしてみる。
■鈴成静佳 > びやく。
(ボトルを取り出し、真顔で読み上げる)
……あっはははー。まるでアタシの願望を見通してるような品揃えッスね! ほんとはスライムが欲しかったけど、まぁこっちでもいいッスよ!
(手の中でクルクルとボトルを回しながら)
とはいえこれはこれで怪しいけどー……。とりあえずこれもチェックしてみるッスかね。お外で興奮するのはあまりよくないけど。
(左手がスライムまみれなので、右手でしっかりボトルを持ち、歯でキャップを噛んで開けようとする)
……ふぬぬぬ……っわっと!
(開くと同時に中身が跳ね、少量が自分の頬にかかり、少量は口に入ってしまった)
■自販機 > (ゴミに中身を空けるや否や文字通り溶けていく。じゅわーっと肉の焼けるような音を上げて―――捨てられていた空き缶に穴が開き、流木が崩れ、花火の残骸が焼ける。砂でさえ溶けて水のようになってしまう。垂らしたところから液体がとどまるところを知らぬ勢いで流れていき、砂浜に小さな穴を作り上げる。容器である缶だけは溶けないよう。缶ということは空けたら最後密閉できないようなもの。無害とは正反対の中身である。
一方、『びやく』なるくすr……飲み物を口にした鈴成は絶句するだろう。それは媚薬には違いないのだが人間の感覚を数倍に引き上げることで性感を得ようとした産物だったのだ。風に感じて音で感じてという類。数量だけしか飲んでいないなら効力は微少だろう。すべて飲んだらあとはお察しの領域へと突入しかねない代物)
「ブーン」
(きけんぶつはないのです……きけんぶつは……
答えは風だけが知っている。)
■薬師寺 瀬織 > 「……やはりね」
ゴミの山が溶けていくのを見て、瀬織は察する。例えば服だけを溶かすような、色々と便利なものではなく。
純粋に、薬が入っていた缶を除いてあらゆるものを溶かしてしまうのだ、と。
危険度は非常に高い。もしこれをおもむろに浴びてしまっていたら、どうなっていただろうか。瀬織は恐怖した。
やがて缶の中身をすべて捨ててしまったのを確認すると、瀬織は然るべき場所に缶をそっと捨て、メモをとる。
■鈴成静佳 > ほおおっ♥
(ごく僅かが体内に入ったにも関わらず、明確に色を帯びる感覚。濡れた頬に当たる風がまるでエロ触手のように感じる)
(静佳は深呼吸をして心拍を整えようとする。それだけでも肺が熱くなるが、こらえて)
……これね、水。うん。ただの水だった。
500円でこんなの買わせるってボッタクリっすねー! まったく……。
(ブツブツと呟きながら「びやく」のボトルに蓋をし、腰に下げたメッセンジャーバッグに突っ込む。あとで部屋でたっぷり試そう)
っと、こっちのスライムさんも。ちょっと邪魔だからボトルに戻りましょうねー? あとでアタシが遊んであげますからねー?
(左手にも空いたペットボトルを差し出し、戻るように諭す。いうことを聞くかどうかはともかく)
………ふむ、確かに怪しい自販機ッスね。じゃあ……次で最後にしとくッスよ。
これはね、保健委員としての「調査」。そう、調査だから……調査はだいじ……。(未だ紅潮の残る顔で、また自販機に立ち向かう。その手には1万円札)
(それをねじ込み、1万円のボタンを押す……!)
■薬師寺 瀬織 > 「ただの水……っと。……無理はしないでね」
鈴成が浴びた『びやく』に関する記録も行いつつ、自販機に一万円札を投入する彼女の様子をそっと見守る。
一方の瀬織は、今日のところはこれ以上の金の投入は避け、事態の記録に専念しようとしていた。
■鈴成静佳 > あははー、大丈夫、大丈夫っすよ、瀬織ちゃんー!
アタシ保健委員でしかも変態だから~!(意味不明の発言。これもびやくの影響か)
■自販機 > (中身をぶちまけた地点から永延と煙があがっている。中身が砂を溶かして大地を掘り進んでいる。それもやがては止まるが底の見えない地下まで穴が続いている。飲めば喉が頭部が消えてなくなる威力があることは言うまでもない。
スライムは言うことは聞かなかったが、ボトルを差し出すと渋々と中に戻っていった。蓋を閉める知能は無いので中でたぷんたぷん揺られるだけだった。腕の水気も含めてすべてスライム由来のものはなくなっているだろう。
1万円をねじ込んだのであれば最初から構えていたのではと疑念を抱かせる速度で飲料が出てくるかもしれない。
すなわち『変身しよう!』なるもの。絵では何か貧相なお兄さんがぐっと飲む→ムキムキに! の絵。まな板でお悩みの方にどうぞ! とか、お祈りしている男が突如タコ頭になる絵もあったり、販売禁止にされかねない内容のものが書いてある。
「用法:食後 一日一回 日々の肉体の不満にどうぞ!」
ようは望む肉体になれるお薬らしいのだが、副作用の項目に「しにかける」とか書いてある。
どう見ても劇物です。本当にありがとうございました。)
「ブーン」
(ほけんいいんならだいじょうぶだね! あんしんしてね!)
■鈴成静佳 > よしよし、偉い偉いっ。(ボトルに戻っていくスライムをニコニコと眺め、収まったら蓋をする。今夜はこれでどんな遊びをしようか……)
……で、1万円でこれッスか。1万円なりの価値はありそうだけど……。
(ボトルの口をつかみ、ぷらぷらと振りながらパッケージを確認する。イラストは明らかに怪しいが、「肉体の不満にどうぞ」というキャッチコピーは静佳の心によく響く)
(「しにかける」の文字はあえて目に入れないようにした)
……ふーむ。なかなか魔法じみた感じがするッスね。これはしっかり調査する必要がありそう。
(瀬織さんにもチラッとだけパッケージを見せたあとは、封をあけずにバッグに仕舞う。計3本のペットボトルでバッグが膨らむ)
(願いが叶う飲み物だとしたら、願いはしっかり考えてから飲みたいのだ。つまり、後で飲む気満々である)
……フフッ、面白い自販機だったッスねー、瀬織ちゃん~
(自販機から離れると頭の後ろで手を組み、気の抜けた声をあげる)
■薬師寺 瀬織 > 鈴成から見せられた『変身しよう!』なる飲料の缶の特徴をしっかりメモした後。
「……そう、ね……。でも、今回のことで確信したわ。やっぱり、必ずしも安全とは言い難いって。鈴成さんも、その飲み物……自分で飲んで調査してみるつもりなら、気をつけるべきだと思うわ」
気の抜けた声の鈴成とは正反対に、瀬織の声と表情は真剣そのものであった。
先日の商店街で見た家一つ飲み込む茶畑や、先程の『なんでも溶かす薬』の効果を自らの目で確かめた瀬織には、
鈴成のように自販機を素直に面白がることはできずにいた。瀬織は念のため、鈴成に注意を促しておく。
■自販機 > (またしても大金を手にした自販機は心なしうれしそうだったが感情自体ないだろうわけで、表現以前の問題だった。茶畑侵食やらなんでも溶かす薬やらの危険性はこの際どうでもよいのだ。売れればいいのだ売れれば。保健委員に格闘家たちにボコボコにされる自動車君並に酷い扱いをされてもかまわないのだ。自販機というものはそういうものだ。)
「ブーン」
(七夕の短冊にはおむねの豊かな人になりたぁーいとか書かれてるものもあった。自販機にくくりつけられたそれが天に届く葉別として)
■鈴成静佳 > そう? 確かに「なんでも溶かす薬」はすごかったけど、一応書いてあるとおりの内容だったじゃない。
こっちの買ったジュースもね。……あ、「びやく」は水だったけどねー。アハハー。
(ポリポリと側頭部を掻きながら笑う静佳。「変身」のジュースも、「用法:1日1回」とあるのだ。飲み続けなければ治るようにとれる)
しかし瀬織ちゃんはやっぱり真面目ッスねー。何が起こるかわかんない常世島ッスよ、ある程度の謎には体当たりで挑まないと、流行に遅れちゃうッスよ?
(やや訳の分からない理屈ではあるが、静佳は真面目な口調で諭す)
……フフ、しかし、七夕かぁ。何のお願いをしようかなぁ……。
(短冊を眺めながら。『おむねの豊かな人になりたぁーい』という願いには、思わず瀬織さんのほうを向いてしまい、苦笑を浮かべる。アタシは今のままでも別にいいかな……)
■薬師寺 瀬織 > 「……そう、かしら」
瀬織の性格は実際真面目かどうかはともかく、慎重なほうだ。鈴成とはまるで正反対であろう。
そして事実、瀬織は流行事に疎いほうでもあったのだが、それはまた別の話。
「七夕、ね……」
鈴成の言葉を受け、思い出したように呟く。瀬織の願い事はまだ決まっていない。
小さい頃は短冊に願い事を書き込んだりしていたものだが、今となってはそういった習慣はなくしてしまった。
■鈴成静佳 > (アタシの願い、それは……ルームメイトのみんなの、恋の成就)
(氷架ちゃんと、零くん。その妹の芙蓉ちゃんと、まだ知らないけど相楽くんって人。空子ちゃんは彼氏はいるのかな?)
(短冊に書けないのは残念だけど、帰ったら用意してみよう。【特殊Free】する前にね)
……さて、じゃあアタシはそろそろ帰るッスよ。一緒に寮までいこっか?
(瀬織さんの義手を握ろうとしつつ)
自販機さんも、また会おうね~。瀬織ちゃんも調査したがってるし~?
(物言わぬ自販機にも手を振る)
■自販機 > (ここは常世である。紙コップが飛ぶし影が徘徊するし男子トイレに女装が出没するし自販機だって動くのだ。
保健委員が見ている前で動いては怪しまれるが逃げるタイミングを逃してはいけない。ゲリラ屋的な活動ルーチンあるいはプログラムあるいは何か別次元の意思によって自販機が動き出す。最初は誰にもわからない程度にそろそろと地面を滑り出す。二人が目を離したタイミングがあれば、その瞬間に砂浜に一条の線だけを残して消える。タイミングでさえないのなら強引に猛烈な速度で滑って消える。怪異だからね、瞬きの間に長距離動くこともあるんだね)
「 」
(いずれにせよこの場から消えていくのだ)
■薬師寺 瀬織 > 物言わぬ自販機を一瞥した後、瀬織は鈴成の言葉に応え。
「そうね。たまには一緒に帰るのもいいものだわ」
そう言って、銀色の右手で鈴成の手を取り、歩きださんとする――
ご案内:「浜辺」から鈴成静佳さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から自販機さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から薬師寺 瀬織さんが去りました。