2016/08/30 のログ
■デーダイン > 「んんんん?!
いやまて、少女よ!貴様の心遣いは嬉しい!しかし、なんかそれは違う気がする。
困ってない事が一番!先生は困っている生徒を困ってなくするのだからな。
だから困ってない方が良いのだ。」
なんでそうなった?!と、控えめにずっこけるデーダイン。
何を言っているか自分でもわからなくなってきたが、要は、
「困ってなければそれで良い!無理に困らなくてもいいのだ!!」
これが言いたかった。ビシリと手袋の指先で指さして。
大きな声で暑く訴える。
「なるほど。分かったぞ。
この変な感じが新鮮だったんだな…そういうことだったのか…。」
変。それは何も建物だけの話ではない。
最初にフィアドラがあの人この人と目をやっていたように、
ここの住人もみんながみんな、変である。
変であるけど、それで成り立っている。そういう所だ。
言葉で表すなら変、以上に的確な言葉もない。
「本当だッ!……はい?」
めがね?
何故だ、なぜそうなる。と沈黙するデーダイン。
そもそも、仮面なのだ。眼鏡なんて付けていたら仮面on眼鏡で少し滑稽ではないだろうか。
というか、何故メガネを掛けている必要があるんだろう?
だが、怪しまれている!これはいけない。
なんとしてでもこの場を切り抜けねば。
「メ、メガネ…メガネは…。」
メガネなんか掛けてない。その必要がないからだ。
「しょ、少女よ。先生だからといって、メガネをかけているとは、限らん…だろう?」
これを言いだすのに、かなりかかった。
まるでメガネなくんば教師にあらずとばかりに言ってくるのだから、
自分の常識が通じるかどうか…。
■フィアドラ > 「そうなんですか?じゃあ良かったです!」
安心しました!
今度からはどうやって困ろうかっていうことで困らなくても良いみたいです。
「はい、私もあの、異邦人なのに初めて異邦人街に来たので!」
異邦人だから異邦人街に来なくちゃいけないことはないので今まで来た事なかったのですが
今日は来て良かったと思いました!
「メガネが無いのに先生って…。」
そんなの紅ショウガが乗ってないのに焼きそばパンを名乗るようなものです!
何か違う気がするのです。
…でも
「でも、先生がさっき言ってた先生は困った生徒を困ってなくするものっていうのは
私が好きな先生も言ってたのできっとデーダイン先生も先生なんですよね!」
そんな感じの事を言って私が困ってるときに声をかけてくれたのです!
だから、きっとこのデーダイン先生も先生なのです!
…メガネはないですけど。
■デーダイン > 「ほう!初めてだったのか。道理で。つまり、最近学校に来たのかね?」
それにしたって、この異邦人街、異邦人に対してですら、物珍しい物が多い、
故に、色んな人がいるんだなって思うのは無理もない。
寧ろ、それが当然である。
「………嗚呼。」
こんなことなら、メガネをかけたらよかっただろうか。
ちょっとオシャレなやつかけたらモテただろうか。
とか思いながら、脱力する様に傾く仮面。遂に不審者認定される…?
「そ、そうだ!デーダイン先生は先生なんだぞ!
わ、分かってくれたか、良かった…!良かったぞッ!
良い先生なんだろうな、その人は!」
ぐ、と拳を作る手袋。表情こそでない物の、声は凄い嬉しそうだ。
メガネなんていらなかったんだ!
「しかし…メガネと先生ってそんなに密接な関係にあるんだろうか…。」
腕を組む素振りをする不審仮面。
……カレーと福神漬けの関係に似ているのだろうか。
■フィアドラ > 「あの1月くらいに来たんです…あのでも特に来る用事が無かったので…。」
あんまり最近ではありません。
でも、大抵のものは学生街にあるのであまり来なかったのです。
そして普通の町を見たのもこの世界に来たのが初めてでした。
きっと学生街になれた今ここは変な感じに見えるのです。
「はい、でもデーダイン先生もいい先生ですよ!」
困ってる人に声をかけて困って無くするのは良い人なのです。
だからこの先生も良い先生だと思います。
「メガネの人って賢いじゃないですか!
だから、先生はみんなメガネをかけてるんだと思います。
えーと、デーダイン先生は良い人だけど…お面だから?」
今まで会った先生の感じと目の前の先生は違います。
だから、メガネじゃないのかもしれません。
もしかしたら他にもメガネをかけられないからメガネじゃない先生がいるのかもしれません。
■デーダイン > 「ん、む。そうだったか。いやすまんな。異邦人は異邦人街へ行くものだと思ったが。
そうでもなかったのか。」
確かに、用事がないと言えばないかも。
学生街の商店街やレストラン、寮なんかで生活はやりくり出来てしまうし。
それで、あっちの地球の人間主体の世界に慣れると、こっちがより一層新鮮に…。
「うむ。そういってくれて嬉しい!良い先生だと褒められる事は、教師の喜びだな!
ああ、そうそう。私のことはダイン様、もしくはダイン先生と呼ぶが良い!
デーダインは少し長いのでな。」
こういうところは、デーダインの教師根性だ。
見た目よりまともな節介焼きの先生。それが暗黒変態デーダインである。
「ふむ。ふむふむ、なるほど。」
メガネの人が賢い。一理ある。
「クックック!少女よ!良い事を教えてやろう!
メガネをかけている賢い人!確かにそれはその通りだ。
しかし!それはメガネをかけているから賢いのではないッッ!!
そもそも!メガネは何のために使うか知っているかね?」
先入観、なんだろうか?
今更だがフィアドラの言葉はやけに幼い、というよりは、この世界を良く知らない、ようだ。
そしてそれが、デーダインの御節介な教師的欲求を擽る。
なんか色々解説してあげたい!
「む…、お面だから…なんだろうか?ああ、この仮面が、気になるかね?」
最後に言いかけたことは良く分からなかった様で。
きょとんとした口調と共に、仮面が傾き。デーダインの頭上に黒いハテナマークが浮かんで消えた。
■フィアドラ > 「はい、皆そう言ってくるので私も行っておいた方がいいのかなと思って…。」
殆んど一人で暮らしてきて文化とか分からなかった私はこの街を変わった町くらいにしか思いません。
珍しいものがあると言われてもこの世界の全部が珍しかった私にとってはきっと同じくらいの珍しさだったでしょう。
始めてきた場所がここだったらきっと私はこの街をそもそも変に思わなかったかもしれません。
「ダイン様ですか?分かりましたダイン様!!」
ダイン様の方がダイン先生よりも短いです。
短い方がいいなら少しでも短い方を選ぶほうがいいと思いました。
「えっ!メガネって使う物なんですか?
あれって私は賢いですよって分かりやすくするための名札みたいなものじゃないんですか?」
だから、もしも分からないことがあればメガネの人に聞けば知ってる確率が高いのです!
「ダイン様は何か理由があってお面をつけてるからメガネがかけられないんじゃないんですか?
色々知ってて賢いのに…。あっ分かりました!顔が怖いから怖がられないようにかぶってるんですね!」
きっと私が目を髪で隠しているのと同じような理由なのです!
先生で賢いのにメガネをかけてないのにもそれなら納得ができます!
■デーダイン > 「ああ…そう言う事だったか!
それで今こうして話している…と!うむ。分かった。」
概ね理解した。
けども、なんでこんなにあどけないんだろうか…。
「おおお!!久々にダイン様と呼んでくれる生徒が出来た!!
感激だ!!少女よッ!―――ム。そう言えば、少女よ、貴様の名前を聞いていなかったな!
これも何かの縁!良ければ名前を教えてほしいッ!」
自分の名前が様付けされるとすごくうれしい。そういう呼称で呼ばれるともっと嬉しい。
勿論そこに深い意味はないのだけども。
そうして自分の呼び名を呼ばれると、ついで少女に名前を問い掛けた。
「………!なるほど。そう言う考え方もあるのか。
少女よ!メガネをかけたことは、あるかね?恐らく、ないだろう。
…今度、好きな先生というヤツに御願いして、
メガネを少しで良いからかけて見てほしい。騙されたと思ってな!」
この場にメガネがあったら良かったんだが、生憎デーダインは眼鏡を持っていない。
そして、メガネショップなんていうのも、この異邦人街ではそんなに見つかりやすくもない。
何も言わずに、かけて見てほしい、と訴えかけるのだ。
「そうだな!―――ハッハッハ、なるほどなるほど。
だが、仮面を付けた方が怖い、というのも世の中の意見には多いのさ。
それと、私にメガネは必要ないんだ。少女よ!
だが、この仮面こそ名札みたいなものよ。私はデーダインだ!と分かりやすいだろう?」
理由もなく付けているわけでもないが。怖いから、と言う訳でもない…。
付けた方が不審者に見えて怖がられるのが世の常だ。
何と答えたものか、少し悩んだが…結局、自分のシンボルだ、という暫定的な答えを。
■フィアドラ > 「他の人からはダイン様ってあんまり呼ばれないんですか?」
皆はダイン先生の方で呼んでるみたいです。
皆がダイン先生って呼んでいるなら私もそっちで呼ぼうかなって少し思いましたが
凄く嬉しそうなのでダイン様の方で呼びます!
「私はフィアドラっていいます。…実はこう見えて人間じゃないんですよ!」
実はからの部分は少し声を小さくしてこそこそと話します。
そう、実は私はこう見えて人間ではないのです!
「?あまり賢くなくてもかけていいんですか?
その先生に会えるか分からないのでメガネの人にあったらかけてみます。」
何なんでしょうか?
メガネをかけたら何が分かるのでしょうか?
騙されてみます!
「そうなんですか?でも、お面をつけてるダイン様は別に怖くないですよ?
なるほど…確かに!一回みたら遠くからみてもダイン様って分かりますね!」
こんな変なお面つけて歩いている人なんてダイン様の他に見たことありません。
だからダイン様だって簡単に分かるのです!
■デーダイン > 「そうだな!皆ダイン先生と呼ぶ。やはり様付けは億劫というか…敬遠されるものだ。
逆に何故貴様は様付で呼んでくれたんだ!嬉しいぞ!」
表情は読めないものの、素振りと声は踊ってる。嬉しそうだ。
「ふむ、フィアドラというのか!覚えよう。
……な、なんだってー?!………。」
うむ。察しは付いていたけど。それでも驚く素振りを見せるデーダイン。
こういう時知ってる、って冷めた反応するのはイカンと思うので。
「で、ではフィアドラ!貴様は一体…?!」
周りに聞こえんような小さい声をフィアドラだけに投げて質問。
「そうだ!賢いとか賢くないとか関係ない!
ちょっとかけて世界を見てほしい!!うむ!頼んだぞ。」
腕組みして頷く。
メガネをしらないフィアドラがメガネをかけたら一体どんな反応をするか、
見てみたい!
見れないのが残念極まりない!
「今度、もし会ったらかけた感想を聞かせて欲しい。」
ので、しれっと御願いしておく。
「フィアドラよ!
確かにお面をつけている私は怖くないッ!
しかし!
お面をつけている誰か分からない人だったら怖いだろう?
お面はな、誰か分からなくする働きがあるのさ。
だろう?コイツは特注品なんだ…。」
こんこんと手袋で仮面を叩くデーダイン。ちょっと得意気な声だ。
■フィアドラ > 「デーダイン先生よりもダイン先生が短くて、それよりもダイン様の方が短いからです!
でも、それより短くても流石にダインとは呼びませんよ!先生にそういうのは失礼なんですよね?」
短い方が良いと言ったから短いダイン様を選んだのです。
あと、ダイン様って言われた時に嬉しそうだったっていうのもあります。
「驚きました?そこまで驚かれたのは初めてです!」
少し嬉しい気分になります。
大抵の人はツノとかシッポで気が付くのです。
…もしかしたら仮面のせいであまり前が見えていないのかもしれません。
そう、思うと急に心配になってしまいます。誰かにぶつかったりしそうです。
「…実はドラゴンのクォーターなんですよ。4分の3は人間なんですけどね。」
…最近なんの抵抗もなく自分をドラゴンと呼べるようになってきました。
確か実際に種類は近いらしいので大丈夫なはずです!
ダイン様の多分耳があると思うあたりに口を近づけて
手で声が漏れないようにしてこそこそと話します。何か楽しい!
「分かりました!頑張ってメガネの人を探します!」
メガネの人から見える世界はどんな感じのでしょうか?
頭が良い人の世界は私が見ている世界とどれくらい違うのでしょう?
楽しみです!
「なるほど!じゃあ今目の前にいるダイン様もダイン様じゃないかもしれないんですね…。
あれ?じゃあ本物のダイン様はどこに?えっじゃあ私は今まで誰と話してたんですか?
まさか、偽物ですか!?」
少し混乱しましたが特注品だと聞くと少し安心します。
確かに誰か分からないと怖いです。
「特注品…。じゃあ真似されないんですね!
はあ、てっきり今私と話しているダイン様が偽物ものの偽ダイン様だと思いました…。」
■デーダイン > 「なんという…なんという…!こ、効率的だがちゃんと礼儀は弁える、と言う事か。ウム。
その通り。良い子の生徒は先生を呼び捨てしてはならない!」
なんという。それに尽きるのだった。
確かに言っていることは正しい。
「ハッハッハ。」
こういうのは、知ってても驚く素振りをするのが良いのだ!
間違っても、冷めた反応はいかん!…とはいえ最初の時点でツノには気付いちゃって居たけど。
「ほう!ドラゴンのか。つまるところ竜人、というやつだな。
フハハハ、ナイショ話…うむうむ。分かった。ヒミツにしておこう。」
ほそぼそーと、仮面の耳の穴あき部分(真っ黒なとこ)に入ってくる音声に仮面を傾けるデーダイン。
小さく小さく頷きながら理解したと親指の部分がグッと立った。
「クックック!その通りさ。貴様が私だと思っている人物は偽物かもしれない!
仮面をつけ、ローブをつけ、手袋にブーツをしていれば、その中身が誰であるかなど分からない!
が、そもそも、本物のデーダインがいる、という考え方が誤っているのかもな。
なんてなッ!」
小難しいなぞかけをしながら。
「そう言う事だ。さっきも言ったろう、名札みたいなものだと。
この仮面は私のトレードマークだ!なので、安心して大丈夫だとも。
とはいえ、偽物の仮面を作ってしまったら、偽デーダインが出来るかもしれん。
そもそも、世の中何が本物で何が偽物か、そんなものを考えだしたらキリがない!」
この時代、仮面だけなんかじゃなく、姿形すら偽物になるのだから。
「…が、少なくとも私こと、このデーダインは本物だ!重ねて言うが安心してくれたまえ。
本物であるが故、本物の先生として、今日もほっつき歩いてるって事だな。」
■フィアドラ > 「はい、竜人というやつです!」
竜人。有名なはずですが私はまだ他の竜人の人に会ったことがありません。
この島のどこかにはいるはずなのでいつか会って話せたらいいなと思っています!
…実は特にナイショでもないんですけど何か楽しかったのでナイショという事にして指を立てました。
「やっぱり偽物なんですか!?ダイン様ばっかり偽物でズルいです!
…じゃあ私も偽物やります!実は私も偽物です!
本物は今、えーと…何してる事にしようかな?
あっ、本物いなくても良いんですか?
じゃあ本物はいません!あれ?本物がいないならもしかして偽物の私が本物?」
難しい事を言われると頭が絡まってきます…。
実際に右手とか左手の頭が絡まってるんじゃなくて例えの話です!
「いつもほっつき歩いてるダイン様が本物のダイン様なんですね!
もし、偽物があらわれても安心ですね見分けがつきます!」
もし、真面目に机の前とかで何かしていたらそれはきっと偽物のダイン様なのでしょう。
見分けがつきやすいです!
「でも、良く考えたら…偽物でも本物でもどっちでもいいですよね!
私の前のダイン様が本物でも偽物でも困ってることを助けてくれた良い先生です!
先生の悪い偽物でなければ偽物がいっぱいいてもいいと思いますよ!」
そう悪ダイン様じゃなければいっぱいいてもいいのです!
■デーダイン > 「ふむ。そもそも異邦人らしいからな、その世界では竜と人が共生でもしていたのか、
それとも儀式的な物で生まれたのか……。」
ぶつぶつと呟いて。
「ハッハッハ。そう慌てるんじゃあないさ。かわいいやつめ。
偽物であることってかっこいいかね?
……むむ、何か私も良く分からなくなってきた。
少なくとも、私の目の前に今こうして本物か偽物か迷っている、
そこにいる貴様は本物ではないか?
もし偽物なら、正体があるはずだ!」
どこから突っ込んでいこうか。
だけどなんか頭がこんがらがっちゃってる様子は、見てて楽しい。
でも考えすぎるとこっちまでこんがらがってくる。
偽物とは、本物とは。綺麗な答えは示せない!
「待て!誤解だ。いつもほっつき歩いてるんじゃない!
ちゃ、ちゃんと先生は先生として、仕事をしたり授業をしたり…!」
盛大な誤解をされてしまっている!
なんとか誤解を解かねばと必死になるデーダイン。
だが、改めて言われると、こういう純粋な子に逆に振り回されてる気が。
「………う、うむ。」
偽物ではない、と突っ込むのは諦めた。
実際に偽物が居るとしても、確かに悪い奴じゃなかったらいいのか?
…いいんだろうか?
「そう、だな。
偽物に良い奴なんて、あまりいないと思うが…もし、その偽物が本当に良い奴だったら、問題はない…よな。
先生としては、まずなんでそんな偽物が現れたのか知りたいが。」
居もしない空想上の偽物という存在に頭を悩まされるデーダイン。
これこそが偽デーダインの悪事か?!
■フィアドラ > 「えっと、おばあちゃんはおじいちゃんがどこかの国のお姫様をさらってきたって聞きました!
お母さんはどんな人なのかはお父さんは教えてくれません…。」
お父さんが呆れるように話していましたがお爺ちゃんは凄かったらしいです。
おばあちゃんもある意味凄いってお父さんは言ってましたけど・
うーん、私のお母さんはどんな人なのでしょう?
「かっこいいというか?楽しそうでした。
なるほど!流石ダイン様!賢いです!」
そう偽物ならば正体があるのです!
実際だれかが誰かになっているのですから。
「えっじゃあ区別付かないですね!
じゃあ生徒とか私に優しいのが本物のダイン様ってことにしましょう!」
そうすればもし、どっちが偽物でも困りません!
「多分、偽物はダイン様みたいになりたいからダイン様の偽物をしてるんですよ。
ダイン様は優しいし賢いですから!憧れられてるんだと思います!」
だから、少しでも本物に近づこうと良い事をしているのです。
そうやってダイン様の優しさを偽物のやさしさが越えた時に偽物が本物に変わるのです!
その時本物のダイン様は…どうなるのでしょうか?ダイン様その2とかになるのでしょうか?
■デーダイン > 「………んんんん?!?!何かすごいことじゃないかそれ?!
ははあ…凄い経歴を持ってるんだな!!
で、どっちが竜でどっちが人なんだろう。
………家庭が複雑なんだな。」
姫様を攫って結婚とか、物語の中だけではないのだ。
普通にいつも通りの口調で語られるけど、デーダインもこれまたビックリ。
話を聞くに、お父さんやおじいちゃんおばあちゃんはいるけど、お母さんはいないようだ。
「ははは、なるほど。だが本物の方が楽しい!偽物になって得た喜びなど、それこそ所詮は偽物の喜び、楽しみにすぎんのだ!
だが、その正体はなんなのだろうな。
フィアドラよ!貴様が偽物を名乗るなら、まずは本当は誰であるかを考えるべきであったのかもしれん。
もっとも、偽物になる必要は全くないがな!」
理由もなく偽物を名乗った所で、良い事などないのだ。
勿論、理由があっても良い事ではないが。
「そうなれば!そもそも偽物と本物という区別より、
全く同じ別人で二人とも本物なのかもしれないな!
ハッハッハ、それで結構!私は教師だからな!」
とても、ややこしい話だけど…解決策は、案外簡単。
「………はは、そうか…なんだか、嬉しいぞ!!照れる!!」
こうも言い淀まずはっきり言われると、流石に照れくさい。
勿論偽物は居ないだろうけども。
「偽物に負けんよう精進せんとな。た、たぶん…居ないと思うがね。
さて、呼び止めてすまんかったな!フィアドラよ!
貴様と話していると、何だか日々の何気ない話が面白くなってしまう!
このまま話して居たいのだが…ッ!!
誠に残念だが私はこれから向こうで用事があるのだ!」
バサリッ、風もないのにマントを翻す。
離れていく歩幅は何処か名残惜しそうだ。
「それではな!そうそう、始めてきたのなら道に迷わんよう気をつけろ!
初めての異邦人街!充分に楽しんでくると良いッ!!」
手袋をびっと上げればぶんぶん振って、
呼び止めていたフィアドラと分かれて、広い大通りから細い街路へ消えていくだろう。
ご案内:「異邦人街」からデーダインさんが去りました。
■フィアドラ > 「お爺ちゃんが竜の方です!
一目ぼれで国を滅ぼしたって聞いてます!
複雑でもないですよ?お父さんがいるだけですから。」
おじいちゃんは何でもおばあちゃんをさらいに行くときにあまりにも頑張りすぎて
かなり長い間生き物が住めない場所にしたとか聞いています!
「そうですよね!良く考えたら自分で自分の偽物になっても何も変わらないのに
楽しいわけないですよね!」
そう考えたらダイン様の偽物をやるのは楽しそうな気がします!
お面とローブで簡単にできそうですし!
偽物の気持ちが分かってしまいました!
「二人とも本物!そうなったらダイン様はいつでもこうやってほっつき歩けますね!」
そうなれば困ってる生徒を助けられて授業もできて凄い!
凄いです!
「私もダイン様が色々知っているので話していて面白かったです!」
そう、こんな時に二人いればずっとお話しできるのです。
さっき言ってたような凄い偽物、いないかな。
「はい!ありがとうございます!楽しみます!」
負けないように思いっ切り手を振ると
始めての異邦人街の探検へと戻るのでした。
ご案内:「異邦人街」からフィアドラさんが去りました。
ご案内:「異邦人街・神留通り」に水月エニィさんが現れました。
■水月エニィ >
異邦人街・神留通り。
正確にはその名前も通称ではあるものの、概ねその様に呼ばれる事の多い通り。
者によっては、煉獄通りなどとも呼ぶものも居る。
宗教施設群に向かう道の中でもひときわ大きな通りの一つ。
故に信心深い者や異邦の宗教・文化に興味を示すのが多く行き交う通りであり、
その者たち相手に古書や宗教品を売る商人たちが通りに集い始める。
――そうして発展した通りこそが、この 異邦人街・神留通り。
需要と供給が噛み合えば栄えるのは必然であるのだ。
■水月エニィ >
「図書館でダメなら、と、思ったけれど……」
水月エニィは己が異能の手掛かりを求めて歩く。
異能そのものへ対策を打つことには抵抗があったものの、そろそろ我儘も言っていられない。
未だに燃え盛る熱こそあるが、他人や知人、そして友人との会話を重ねる内には許容できるものとなりつつある。
とは言え。
「ちょっと間違えたかしらね……」
異能 と読むことのできる側面の本はそうそう見つからない。
奇蹟や神話から類似するものを探そうとしてみたものの、何せ異邦の神話や歴史だ。
字の問題もあるし、字の問題がクリア出来ても読み解く事は労が要る。
神話から外れ、文化に根付いた書物の類も少なくはない。そちらは今の所興味が薄い。
ご案内:「異邦人街・神留通り」に烏丸秀さんが現れました。
■烏丸秀 > ぼーっとしながら異邦人街へ来た男。
目的は骨董品。いつも訪れるとおりの理由だ。
だが、今日は少し様子が違う。
その瞳はまるで死んだようである。
「……はぁ」
憂鬱な溜息。
理由はあれど、それはまだ誰にも明かしていない。
■水月エニィ > 「あら。」
見つからぬ探し物から思考を切って前を見れば、いつぞやにカフェテラスで見た男の姿。
和の装いは印象的で記憶に残っている。それにしても、
「随分と参ったような顔をしているけれど――あ、こんにちは。」
ずいぶんと参ったような顔をしている。
それが気に掛かってしまえば当たり前のように近付き、声を掛けた。
■烏丸秀 > 「あ……」
どうも、そこで限界だったらしい。
烏丸はすとんと膝をつき。
エニィに縋りつこうとしながら泣きはじめる。
「エニィちゃぁーん……」
マジ泣きである。
べそをかきながら、人前で。
情けない事この上ない。
■水月エニィ > 「うわっ」
人目もはばからずに縋りついでべそかく男性。
演技か、いや、演技にしては捨て身過ぎる。
仮にそうだとしても拒む理由にはならない。縋りつく彼を受け止めた。
「ど、どうしたのよ……学生証でも無くしたの?」
その程度でマジ泣きするようには思えないものの、
変な方向に重い予想が当たっても気まずい――ので、当たり障りがなく、尚且つ大ごとに値するようなものを浮かべて問う。
■烏丸秀 > 「ぐす……」
演技どころではない。
この男、マジである。
本当に始末に負えない。
「振られた……」
ぐすぐすとすすり泣きながら呟く。
そう、振られた。
完膚なきまでに。ばっさりと。
「しかも! 二度目! 今度はいけると……うぇぇ……」
目を真っ赤にしながら泣く。
■水月エニィ > 「あー……」
納得はしたがイマイチ共感が出来ていない。恋愛事はどうにも自分に縁があると思っていない。
取り敢えず強めに抱き寄せて背中をさする。
同年代の男性がフラれてマジ泣きしてる時の対処法は脳内にない。
もっとも近い経験は、年下の子供に対するそれだ。はて、これはどちらの記憶か。
「えーと、掛ける言葉が見つからないけど……とりあえずどっか入って何か飲むか食べましょう?」
ともあれ年下の子をあやすような調子でなだめつつ、何処かの飲食店に入る事を提案する。
エニィの視線の先には、喫茶店と食堂めいた飲食店が並んでいる。
どちらも個人経営らしい小さなものだ。
■烏丸秀 > 「――甘い物がいい」
まるっきり子供である。
とりあえず喫茶店に入る事にする。
「うう、ごめんね……」
と、今更一応謝っておく。
もっとも、欠片も悪いとは思っていないのだが。
感情が昂ぶったときは、思いっきりそれを発散するのが信条である。
「あ、これとこれ、あとこれ」
とりあえず、甘味を適当に頼む
■水月エニィ >
「……まぁ、構わないわよ。」
内心などはつゆ知らず、平然と応える。
ケロっとまで行かずと落ち着いたのならばそれでよし と。
「メロンソーダ……いや、ラムネとあんみつかしら……
……私はラムネとあんみつで。」
あれこれ気儘に頼む烏丸を横目に、食事と飲物を一品ずつ注文する。
注文が通れば店員は去り、改めて向かい側の烏丸の様子を伺う。
「で、落ち着いたかしら?」
■烏丸秀 > 「……もうさぁ、聞いてよ!」
落ち着いたかといえば落ち着いてない。
何故ならばまだ納得できていないから。
何処までも女々しい男である。
「今度はさぁ、今度こそさぁ! いけると思ったんだよ。
本当、準備したし。彼女はもう限界で、誰かに助けを求めてたはずだし。
うん、そうだったんだよ……」
やってきたアイスをひとくち。
スタンダードなバニラの味に、再びほろりと涙を流す。
「でもさぁ、ボクじゃなくて、お姉さんの方がいいって……
ずるいよ……親族には勝てないよ……」
■水月エニィ > 尋ねた瞬間噴出した。
改めて話を聴く。準備、限界、助け、ところどころ妙なものを覚えたが……
「彼女、が、お姉さんを選んだのね……
……誰を愛するかは人それぞれだから、仕方ないわね。」
小さく首をする。
それについてとやかくは言わないものの、予想外だったんだろうなと頷いた。
……親族には勝てない、の言は理解に時間が掛かっているのか、直ぐには理解・言及をしない。
■烏丸秀 > 「――ね。ボクは最後まで、凛霞に勝てなかったよ」
溜息をつき、涙を流す。
そう、勝てなかった。
凛霞自身を手に入れ、それを粉々に砕いてなお。
あの姉妹は、それを乗り越え、そして……
「――でも、ね」
ひといきつき、アイスをひとくち。
その目は、どこか遠くを見るようで。
「それでもね、この恋をしてよかったよ」
■水月エニィ > 「凛霞?」
……ぼんやりと思い当たるものはある。
断片的な情報を統合すれば、ある少女が浮かぶ。
力の籠った釘を刺されたから良く覚えている。
「あの完璧超人に勝てる人なんて、負け犬の私でなくともそうそういないわよ。
……って、良かったの。それほど素敵な女の子に恋をしたのね。羨ましいわ。」
口ぶりから察するに、理性や思考の上では答えを出している風に思える。
それ程彼の心を刺激した少女なのだろうか。完璧超人の妹となれば、同じような出来た妹なのか。
伊都波 悠薇を知らぬが故にそのような印象を脳内で結び、羨望の言葉を零す。
■烏丸秀 > 「でもさ~!」
感情の方ではおさまりがついていない様子。
まぁ、この男が振られた時はいつもこうである。
「本気だったんだよ……本気だったのにさぁ……」
未練がましく言う。
結局、いつもの事なのだが。
「本当さ――いつも、本当に欲しいものは、手に入らないんだ」
■水月エニィ >
「……本当に欲しいものは、手に入らない。」
思う所があるのだろうか。
強い刺激を覚えれば、反芻するように呟いた。
「代わりのモノで我慢しろ、今は恵まれているのだから我慢しろ、
そう言う訳にもいかないでしょうし、悩ましい話ね。………ごめんなさいね、烏丸さん。
……それには気の利いた言葉を掛けられそうにないわ。」
そう思う。
そう思うから掛けられない。
■烏丸秀 > 「キミは優しいね」
いつの間にかすっかり平静を取り戻し。
甘味を楽しんでいる。
泣きたい時は思いっきり泣き、それが終われば何時もどおり全てを愉しむ。
それがこの男なのだろう。
「――キミにも、欲しくとも手に入らないモノ、あるのかい?」
戯れに尋ねてみて
■水月エニィ > 「……言う程じゃないわよ。」
視線を逸らし、やや雑っぽく謙遜する。
気付いてみればケロッと調子を戻している。
一旦切れてしまえば尾を引かない性格なのだろうか。
「ええ。端的には勝利。」
そのような単語で、望むものを口にした。
答えた後は落ち着かないのか、あざむようにラムネを飲み干す。
■烏丸秀 > 「勝利?」
ふむ、とあごに手を当てる。
なかなか、面白い表現だ。
「勝ちたいけど、いつも勝てない、って事かな?」
勝ち負けは全てではないが。
大体の場合、負け続ける人間は勝負そのものを忌避する傾向にある。
ということは、この少女は一体……?
■水月エニィ > 「ええ。大体そんな所。
"負け犬"、なんて異能を持っているとそんなものも欲しくなるわ。」
やや誤魔化しを混ぜて答える。
別に誰彼構わず当たり散らしたい訳でもない。
「少なくとも、この島での検査結果ではそうなっているわ。
どれだけ頑張っても勝てない。そう言う異能らしいわね。
"負けやすくなる"、なんて言葉で説明されたけど、勝てたと思えた事は一度もないわ。」
少々ではあるが眉を顰めて言い放つ。
一通り言葉にした後、大きく溜息をついた。
「とは言え、いつか勝つわよ。
絶対勝てないだなんて、認めるものですか。」
■烏丸秀 > 「うんうん、なるほどね」
笑いながら頷く。
うん、彼女はそういう異能の持ち主だったか。
「負けやすくなる、ね。
面白い異能だね。どんな勝負にも負けやすく、負けるようになる、か」
ふと考える。
常に負けてもなお、勝負を投げ出さない彼女は……
「それは異能なのかな。
むしろボクには、呪いかなにかのように聞こえるけど」
■水月エニィ >
「ふん。面白くなんてあるものですか。
それにどっちだって変わんないわよ。」
笑顔で面白いなどと言われるものの、悪意は覚えない。
とは言え少々腹が立つの鼻を鳴らしながらラムネのグラスを叩き付けて置き、乱暴に言い放つ。
「勝てない事には変わりがないもの。
それのせいにしなきゃならない ってのはとっても腹が立つけれど。」
■烏丸秀 > 「うん、まぁ、ボクは勝負そのものには興味がないからね。
ボクが興味があるのは、その先」
お茶の入った湯飲みを手に取りながら、じっとエニィを見る。
勝ち気そうな瞳、豊満な肢体、そして強い意思。
うん――
「キミは勝つ事によって何を得るんだろう。
ボクも弱いから、色々な勝負に負けてきたし、欲しいものはなにも手に入らなかった。
それでも考えるんだ。ボクがもし本当に欲しいモノを手に入れたら、それを壊れるまで愛そうって」
それだけ言うと、じっと彼女の瞳を見つめる。
「ねぇエニィ。キミはその勝利の先に何を求めるんだい?」
■水月エニィ >
「――……羨ましい話ね。」
勝っている奴は皆そう言う――と言いかけたものの、その言葉は飲み込んだ。
フラれた、勝てなかったと言ったばかり向けて放つ事は流石に出来ない。
……弱いから負けるし、手に入らない。
本当に欲しいものは手に入らないし、壊れるまで愛す。
彼は確かにそう告げていたし、嘘には思えない。
「貴方がそうには見えないけれど、それは今の所置いておきましょう。
にしても壊れるまで愛すだなんて、妙な言い回しじゃない。
で、勝利の先に何を望む。ね。」
何を望む?
ついぞ最近聞かれた覚えのある言葉だ。
本心を辿れば答えは出ている。されど実際に勝利した時もそう思えるかと言えば、断言できない。
「少なくとも、勝利の思い出を抱えて殻に篭るつもりはないわ。
ええ、確かに勝ちたいですとも。だけどそれが意味のないものであってたまるものですか!」
激情の片鱗こそ見せるが、明確な回答にはなっていない。
とても回りくどい。
■烏丸秀 > 「ボクは幸福だからね。ほかの人間の欲しいもの、色々持ってるし、何をするにも不自由はない。だから、きっとみんなボクを勝者と思ってるんだろうねぇ――ま、別に有象無象にはどう思われようともいいけど」
ククッと笑いながら、嘯いてみせる。
「うーん、妙な言い回しというか。ボクが本気で愛すると、みーんな壊れちゃうんだよ。たぶん、そういう星の下に生まれたんだろうね」
実際、そんな気楽な事でもないのだが。
「勝利に浸ってはいそれまでよ、というわけではない。
勝利の余勢を駆って次の勝利を。そして次の次の勝利を。
――うん、いいね、そういうのは嫌いじゃないよ」
■水月エニィ >
「羨ましい話ね。」
妬むような口ぶり。
妬む口ぶりには呪いが乗り、霊を寄せる。
それらは少々、周囲の気温を下げた様な。
……今現在の水月エニィ自身も持っていると言えば持っているのだが、知ってから知らずかそう妬む。
「……難儀な話ね。」
深くは追及をしない。
そう言う星の下なのかそういうものを好むのか。
どちらにしても、同情と同時に少々の警戒は覚えてしまう。
「ええ、そうやって行って漸く見返せる。私を認めさせられる。
強い奴らの都合で振り回されっぱなしでたまるものですか。
世界に私を認めさせてやる。
善意で回されもしない世界だけが真理じゃないと、負け犬だって赦されると、認めさせてやる。
強い奴らだけが自由であってたまるものですか。あいつらだって喪に服すべきなのよ。」
感情が先にあるのだろう。
段々と語気は強くなり、言葉は乱れる。
■烏丸秀 > 「なるほど」
大きく頷く。
結論は出たようだ。あくまで、彼の中の結論ではあるが。
「エニィ、キミはボクと似たところがあるのかもね。
きっとキミは、本当の勝利を求め、何時までも戦い続けるだろう」
まるで預言者の如く。
厳かさはないが、そこに何かがあるかもしれないと錯覚させる、自身に満ちた口ぶりで。
「でもね、きっとキミはどんなに勝利しようと満たされない。そして満たされない限り、キミにとってそれは勝利ではない。故に、キミは永遠に敗北し続ける」
残酷な物言い。
まるで見てきたかのような言霊。
だが、烏丸は遠慮なく続ける。
「なぜなら、キミは決して、自分自身を認めようとしないから。
――キミはきっと、決して手に入らない勝利を求めて戦い続けるんだろうね」
■水月エニィ >
恨み辛みとしてのモノとは別種の、"そうあるだろう"と呪うような断言。予言。
見下しているにしては愉悦はない。
揶揄っているにしては茶化しがない。
顔の色を俯き、歯を軋ませる。
「そんなの――」
……少しだけ間が置かれた後、更に歯を軋ませる音。
一笑に付す様に嗤ってみせる。
「――勝ってみなきゃ分からないわ。
私が満足できない事は 勝ちを諦める理由にならないわ。」
顔を上げ、尖らせた口元を戻す。
それ位の言葉で折れているならとうに折れている。
彼の言葉だって間違いではない。自分で自分を認めてあげないと。
優しく言われた事は何度もある。
……だけど、水月エニィの中ではそれは違うらしい。
「私が勝って満足する事と、私が勝つ事は別よ。
これは断言してみせる。だからそれは違うわ。
少なくとも今はそう言える。」
■烏丸秀 > 「――じゃあ」
乗ってきた。
そう、確信して。
烏丸は内心の愉悦を押し殺す。
「ボクと、勝負してみる?」
■水月エニィ >
悩む。
悩んでから、苦笑する。
「……予想外。考えもしなかったわ。
構わないけれど、あまり意味は無いわよ。
今やっても貴方の勝ちにしかならないわ。」
おどけるように肩を竦める。
冗句は程ほどにしえ、改めて烏丸を見据えた。
「貴方が勝利の先を考えさせてくれたんだもの。
それを忘れて勝ちに行こうだなんて、それはそれで失礼
よ。」
……自分を弱いと公言する彼に勝利の先を言及されて省みた以上、
舌の根も乾かぬ内にそれを忘れて勝ちに行くのは何かが違う。
■烏丸秀 > 「うーん、勝ち負けは別にどうでもいいんだよねぇ。
ボクにとって重要なのは、その先だから」
くすりと笑う。
そして、最重要な事を告げる。
「キミがね、欲しくなっちゃった。
だから、ボクと勝負しようよ。キミが負けたら、キミの全てをボクにちょうだい?」
まるで、子供のようなあどけなさで
少年のような純粋さで
そして
悪魔のような、無自覚な冷酷さで
彼女に、そう告げた。
■水月エニィ >
「私は拘るの。
ええ、確かに勝ちたいわ。”だけどそれが意味のないものであってたまるものですか。”
そう言ったでしょう。」
"全てが欲しい。"そう告げられた。
……複雑そうに笑いながら、むすっと頬を膨らませる。
「勝ち負けに拘ってくれるまで、受けないわ。
でも、そうね……ううん……」
口元を抑えて首を振る。断ってしまえば産まれる矛盾もある。
それに整合を付けようと思考を回す。
……求められた事自体は落ち着かない程に感情を刺激している。
初心な乙女の様な、動転した感情を垣間見せて――。
「うん。その話を訊かなかった事にして私が応えるのもやっぱり駄目。
……見てくれないのは厭。だから勝ちたいの。
どうでも良いって言われちゃ、嫌だもの。
……ええ。私は勝ちたいし、それとは別に勝って満足したい。
きっと、こうなのでしょうね。」
額を抑えて息を吐く。
暴かれてしまった感情を恥じ入るような素振りだ。
■烏丸秀 > 「なるほど――うーん」
と、なると。
それはそれで、面白そうだ。
ついぞ勝負に熱くなった事などなかったが。
「そういう素直な感情は好きだよ。
キミがそれを望むなら――うん、ボクも、本気で勝ちに行かなくちゃねぇ」
そう言って、ゆっくり立ち上がる。
泣きべそをかいていた事が嘘のように、その顔は晴れやかだ。
「じゃあ、まずはキミに受けてもらえる勝負を探さなくちゃね」
悪戯っぽく笑ってそれだけ言うと。
二人分の会計を済ませる為、レジへと向かう。
■水月エニィ >
「ええ、本気で勝ちに……
……本気で勝ちに、か……」
反芻する。
これも何度も言われた言葉だ。
エニィは本当は勝ちたくないのではないか。
"――まぁ勝ちてェっつのーは分かるんだけどよ。
オマエ勝とうって言う気ねーだろ”
"勝てないと思ってるから勝てないですよ?
できないと思ってるのにできるわけないじゃないですか。"
"水月さんは「何時か勝つ」って思いが強すぎると思う。"
"「何時か」じゃなくて「今ここで勝つ」くらいの気の持ちようがまず必要な気がする。"
思えば随分と棚に上げていた。
確かに、本気でなければきっとダメなのかもしれない。
……同時に、彼を通して己を見てしまっている側面もある。
私はちゃんと烏丸秀の事を見れていただろうか?
再び顔を抑え、それらを恥じ入る。
「ええ。何時でも待っているわ。
死ぬ気で受けて立つんだから。……あ、連絡先でも交換しておく?
変な事に使わなければ歓迎よ。」
歩きながら財布とスマートフォンを取り出し、軽く示す。
■烏丸秀 > 「あ、嬉しいなぁ。ついでに今度デートしようよ。美味しいレストランとか、おしゃれなブティックとか巡ってさ」
けろっとへらへらとした学生面に戻りながら、いそいそとスマホを取り出す。
こういう所、軟派な学生であることは間違いない。
連絡先を交換して、心の底から嬉しそうで。
「あ、ボクのマンションに遊びに来るのでもいいよ。
またね、エニィちゃん♪」
そして足取りも軽やかに、二人分の会計を済ませて立ち去っていく。
ご案内:「異邦人街・神留通り」から烏丸秀さんが去りました。