2016/08/28 のログ
ご案内:「歓楽街」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 落第街――
マネキンとともに過ごして数日。束縛されることは特にない。
いわく、時間が来るまでは自由にしていて構わないということらしい。
彼が考えていることを実行するには、準備が必要ということなのだろう。
研究者とは、そこを怠らないからこそ、研究者だ。

「――…………」

初めて入った、落第街。七不思議くらいのうわさでしかない世界。
一度、入ることを止められた境界線。

そこで抱いた感想は、何もなかった。

何か抱いてであろう、姉とは対象に。興味も、怒りも、悲しみも、恐怖も――

何も――

憂鬱。退屈――

一つ、ため息を零す。
本来なら、キャッチがあったり、ナンパがあったり。
行儀の悪い、ものたちが絡んできてもおかしくない。
だが――今の悠薇は、近づけない何かがあった。

”壁の花”。パーティで、ずっと眺められている――一輪の……

ご案内:「歓楽街」に谷蜂檻葉さんが現れました。
谷蜂檻葉 > 悠薇が落第街から、何処へともなく移動していた同時刻。

檻葉は歓楽街にある、”一般の書店”ではない魔道書を求めてこの街に足を踏み入れいていた。
図書委員として、『本の蒐集』兼自分の興味本位である。

歓楽街の奥の奥。
落第街にもほど近い知る人ぞ知る場所に居を構えるその店を目指して、夜よりは収まってもその勢いは変わらないキャッチを潜り抜けながら、小走りに街を進み―――


「――――?」

ふと、思わぬ人物を見つけて足を止める。

(悠薇ちゃん…?)

鬱屈とした雰囲気を纏う悠薇は、普段のそれとは明らかに違った。
何処か危うい程の負の空気を見て


「……こんな所で、どうしたの?」


他人でもなければお節介を焼くのが、檻葉だった。

伊都波 悠薇 >  
声がした。
聞き覚えのある、先輩の声――

――ごめんなさい。

かつての言葉が、脳で反芻する――。

「……だれ、ですか?」

振り返り、見てみれば。的中。
手で、髪を弄り。驚いたように慌てて、前髪を直す。
ここまでは、いつもと同じ。
ただ――手首に包帯と。
首筋にも、包帯があること以外は。

「――先輩。先輩こそ、どうしたんですか、こんなところで」

ほんの少しの違和感。まるで取り繕ったような”いつもの”……

谷蜂檻葉 > 檻葉はあまり敏い方ではない。
むしろ、自信の感情の動きの激しさと対照的に他人のソレを慮るのは苦手である。


……とはいえ、ここまであからさまなモノを見過ごす程鈍くもなかった。


「私は魔道書の買い付けよ、この先にあるの。
 あんまり着たくもないけど此処にしかないなら仕方ないものね。

 自衛だって出来るから足を運ぶのも吝かでもないのだけれど―――」

そう言って、僅かに睨むようにその瞳を見つめる。


「悠薇ちゃん、今落第街の方から歩いてきたわよね。
 ……っていうかこの先はもう落第街しかないし。

 ねぇ、何をしてきたの? 『大丈夫』?」

色々な思いを一言に纏めて、『大丈夫なのか?』と。
叱るように、不安そうに。そう尋ねた。

伊都波 悠薇 >  
「……魔導書。そういえば、先輩。図書委員でしたね。いろんな本、詳しかったですし」

稽古に付き合ってくれた休憩時間、たまに教えてもらった勉強。
入院していた時に、教えてもらった本――

そういえばそうだったと、遠い日の思い出の様に。

「さすが、先輩です」

自衛ができると、さらっといえるあたり、やはりあの魔術はすごいものだと認識する。

そして、睨みつけられれば――

「大丈夫じゃないですよ。全然、大丈夫じゃないです。けど、”平気”です」

ざぁっと、ノイズが走ったと思うほど。おぞましい声に聞こえたかもしれない

谷蜂檻葉 > 総毛立つ。

とは、つまりこういう事なのだろう。
どこか他人事の様に思考が宙に浮かぶ。
珍しい体験をしたと笑ってしまう程に現実感のない恐怖。

「――――そ、れって……」

全く同じ顔をした別人のような薄気味悪さと、発言から読み取れる『最悪』の予感が気温が下がるような錯覚を感じさせる。

「悠薇ちゃん…!」


一歩、気圧されて下がった。

――――下がった分、二歩進む。


僅かに震えた声で、しかし手を伸ばし、悠薇 の手を取るために距離を詰める。

伊都波 悠薇 >  
「……――」

ざぁっと、風が撫でた。
髪を、頬を――見えた、泣き黒子。
そして――泣いたような、”笑顔”。寂しさ漂う――
でも、わかっていたような――

「――平気です。だって、もう、ずっと独りですから
 独りですよ、ヒトリ……ずっとずっと――もう、これからずっと――……そう、英雄が倒しに来てくれるまで」

詰めた距離が、きっと、遠い。

「――本に、よくある話です。英雄はさらに、仲間を集めて――化け物を倒す。だから、それも、仕方ないんです。だから、ごめんなさい、先輩」

笑いながら――

「似合わないかもしれないけど、もう独りですから。無理して、手を取ろうとしてくれなくて、いいんですよ?」

――汚れちゃいます

谷蜂檻葉 > 「……っ何言ってるの!!」

伸ばした手は、ひらりと躱される。
少しつんのめるようにして、足を踏み直す。

「―――英雄だとか、化物だとか…ッ!!
 『役者を勝手に決めるな』!!自分で決めつければ動けなくなるって判るでしょう!?

 悠薇ちゃんが今どうなってるのか私は知らない!
 でも、今悠薇ちゃんが『間違えそうになってる』のは…解るよ…!!」

言葉のとおりだ。
悠薇が何を悩み、思い詰めているのか檻葉は解らない。

そも、悩んでいるのか?ただの言葉遊びなのか?
それすらも確定的な事柄ではなく、思わぬ解答を手に持って何かの決意を持っているのかもしれない。


―――だが、彼女の目からそれを感じなかった。

だから檻葉は、声を荒げた。
それは正しく怒りであり、『正義としての意志』だった。
独善であろうと、今危うい悠薇を見て、それを『悪しき選択』であると否定した。

伊都波 悠薇 >  
「……では、聞きますが」

ふわり。笑う。今度はすがすがしいくらいの、何かを張り付けたかのような笑顔。

「ではなぜ、今”下がった”んですか、先輩」

役者を決めるなと、彼女は言った。
そう、決めつければその通りにしか動かない。言うとおりだ。
だが――

「”下がった”というのは、恐怖を感じたからではないですか? 私が――今までと違って、恐怖の対象になったからでは?」

虚無。光がない、瞳で、言葉を紡ぐ。

「ええ、間違っているのでしょう。間違っているのは――悪の、化け物の証では?」

あげ足をとるような――その主張は……
高い高い、壁にも見えた。

谷蜂檻葉 > 「……っ、そうよ。 ちょっとビビったわよ!」

貼り付けた笑みに、若干キレ気味に視線を返す。


「知り合いが!『友達』が!! 急に様子が変わって【助けて】なんて言ったら!!

 ―――ビックリするでしょうが!!!」

一歩、二歩、三歩。
近づき、踏み込み、傍に立つ。

此処には、人も少ない。
だからこそ大声を出せば人目を引き、幾人かの好奇の視線が集まるが、関係ない。

「そんなの、誰が何者でも―――誰だって間違うわよ!!揚げ足取らないッ!」

そして、渾身の……『頭突き』。
とはいっても、鍛えたものでもなければ洗練されてもいない。

ただ、当たればどちらも痛い。
当てる方も、当てられた方も、だ

伊都波 悠薇 >  
そう、本当なら。そうやって怒ってくれるって、思ってた。
まぶしい。どこまでも、この先輩が――

でも、あの人じゃない。
もう、あの人じゃ――

「”平気”って、いったじゃ――?」

近づいてきて、やられた頭突き。

痛い。頭に熱がともる――

「――誰でも、間違う? ええ、間違うでしょう。でも、その間違いを――」

――許せるかどうかは、別の話じゃないか。

「――間違いでした、ごめんなさい。それさえあれば無条件に、許せとでも? それで、私が、どんな傷を負ったか、考えてますか? どう感じて、どう戸惑って、飲み込んだか。あなたに、わかりますか?」

うつむき、額を抑えながら――

谷蜂檻葉 > 「痛ぅ……。」

額に灯る熱が、逆に思考を冷やす。
混乱から訪れた沸騰した思考がゆっくりと形を持って固まりだす。


「そうよ。

 ―――それを”理想”にするの。」

許せるかどうかは、別の話だ。

「さっきも言ったでしょ。悠薇ちゃんが何をしてたのか、何があったのか
 私、今日の今日まで会えてなかったんだから分かんないし雰囲気から読み取るしか無いわ。

 ……や、その、無鉄砲に怒鳴ってごめんなさい。


 ……っそれでも、それでもね? こうして足を止めて、話をしてくれて……

 ―――『何かを伝えたがってる悠薇ちゃん』を、何も言わずに、何もせずに見過ごす事がのうのうと出来るほど人間出来てるわけでもないのよ。」

独りで居たがるのなら、逃げることも出来た筈だ。
もっと一方的に拒絶して引き離すことだって出来た筈だ。

そう、思うから。

そう、したから。

人間に恋した化物は境界線に足を止めた人間に、声を荒げたのだ。

伊都波 悠薇 >  
「……”理想”、ですか」

誰かに、理想を願う。それは自分がずっとしてきたことだ。
だから、その言葉は、飲み込める。
息を吸い、空気を嚥下し――

前髪を、整えた。

「――……そうですか」

飲み込んで、受け入れる。いつもの、悠薇のスタイル。
それを世界の中に入れるかは別の話だが――拒絶は、しなかった。

「――先輩は、誰か大事な人は、いますか?」

谷蜂檻葉 > 「『解りません』……って顔してるわね。
 まぁ、言われてはいそうですかって訳にはいかないと思うけどね―――


 ……だ、大事な人? まぁ、人並みには、いるけど……。」

友達とか。

伊都波 悠薇 >  
「――その大事な人を、幸せにしたいって思った経験はありますか?」

静かに静かに、告げていく。
喧騒が止んだと思ったのか、見ていた人はまばらに散っていく。
その光景が、どこか雑多で、光速で流れていくように見えて。
人間に恋した化け物と、化け物になりたい少女の二人の世界だけは時間が遅く感じた。

「そして、それができる力があったと思ったら――否定されて、結局――その人を不幸にしてしまった経験は?」

ただ、少女は尋ねるだけ。

そう、ただの”たとえ話”、だ

谷蜂檻葉 > 「……幸せ、に……」

駄目だ。

「なろう、と……して ……」

その問は。


『否定されて、結局――その人を不幸にしてしまった経験は?』


【「――だから、これ以上
       …………傍に、踏み込まないで」】




「―――ぅ"、……っ!!!」


咄嗟にに口元を抑える。
見覚えのない見覚えのある記憶に無い記憶の中の光景。

毒を盛られてもこれだけ急激な変化は起こりえないだろうと言うほどに、檻葉の顔が青ざめる。
激しい動悸、恐ろしいまでの吐き気。頭がかき乱され脳みそを毟り取られるような痛み。

伊都波 悠薇 > そのしぐさ、それが答え。ならきっとわかるはずだ。
きっと、彼女は――

「大事な人を、不幸にするくらいなら。こうなったほうがいいんですよ。ねぇ、生きているのって――」

……つらいですよね?

そう告げた少女の笑みは――どこか……

「だから、待ってるんですよ。だから、なりたいんですよ。だから――」

終わり方を選びたいんです、とそう告げて。

「ねぇ、先輩」

ざぁっと、風が流れる。

「――私の気持ち、伝わりました?」

谷蜂檻葉 > 「はぁっ…ハっ……ぉ"ぇ…っ!!」

空気を、飲み込む。
喉元にまで込み上げた胃酸を強引に落としこんで瞳を燃やす。
頭の中が、目の裏に花火を散らしたようにチカチカする。


「心臓が握りつぶされるような、痛みで……生きてるのが辛い――――」

涙が滲むのは、心砕かれるほどの悲しみ。その記憶。



「………訳あるか、この馬鹿ぁ――――っっっ!!!」

でも、それを、踏み越えていくのが『人生』だ。
構えはテレフォンパンチ、もどき。

思いっきり振りかぶって、グーで。
振りきれば、動いた反動で胃酸が溢れて道端にちょっと吐き出す。


「げほっ…!! はぁっ…! 化物のまま、終わって堪るかってのよ、この馬鹿悠薇……!!」

涙を、袖口で拭う。


「私は!! ……に、逃げたわよ!辛くて!!あの時!慧君に嫌われるんだって思って!!
 逃げ口上まで使ったうえで思いっきり壁作られて!! 泣いて!!!

 『あぁ、”化物”じゃ駄目なんだな』って!!

 
 だから!!!


 ―――やり直そうって、『また一から頑張ろうって』!!

幸せ掴まなくて、大事な人を幸せにさせられる位自分が幸せになれない方が、辛いわよ!!」

伊都波 悠薇 >  
「……本当に?」

受けながらもじぃっと見つめる、少女は。
その言葉を、”疑っている”。

「あぁ……なるほど……」

貴女は――

「……そっち側でしたか」

なら、わかるはずがない。
なら、伝わるはずがない――
なにせ――……

「……私は、逃げられた側です。お姉ちゃんが、私が、幸せにできるって思ったのに。お姉ちゃんは、逃げました。私から、異能から。――自分のせいだなんて、私がしたくなかったことまで理由にして、お姉ちゃんをやめて――逃げて。結局――」

――私は、大事な人を信じられなくなりました。

「……ねぇ、先輩。確かにそうかもしれませんね。でもね、先輩。――その大事な人を心の底から、信じられなくなって。その言葉が全部自分への慰めの言葉だって――そう思ってる――逃げられた側の気持ちが、わかりますか?」

谷蜂檻葉 > 「………ハァ……はぁ…っ」

何処までも、頑固というか―――!

「凛霞さん、だっけ……? ほんと、噂でしか、知らないけどさ……。

 逃げて、逃げられて―――それで姉妹って、終わりなの?何処まで話合ったの?
 他人と他人だった私よりも、姉妹って……軽いものなの?

 なんて言われたのよ、信じられなくなるぐらいの事って。

 私なんて…っグ……ふ、『踏み込まないで』って…!!
 友達でいるだけで良いって…!
 か、片思いさせてもらえるだけで良いって言ってもフラレたのにさぁ……!!」

言ってて、涙が出てくる。
……きっとアレで逃げないで受け止められるのは、
相当―――慧本人ぐらい図太い奴でもなければ、無理だろう。多分。今思い出しても逃げたい。

伊都波 悠薇 > 「……軽いと、思いますか?」

じぃっと見つめて。

「……そんなに軽い、出来事だったと思いますか?」

そう思われるなら、心外だというような声音。

「失恋、ですか」

自分には経験のないことだ。
きっとつらかったことだろう、悲しかったことだろう。

「――ずっといたからこそ、失ったとき。治せないほどの傷になるとは、思いませんか?」

それに。

「お姉ちゃんの幸せが私の生きがいだったんです。それを否定されたら、価値がないとは思いませんか?」

谷蜂檻葉 > 「何がなんだかわからないけど、喧嘩で急に終わるんだったら相当軽いんでしょうよ。

 悠薇が喧嘩したとか、そういうの聞いたこと無かったから『仲がいいんだな』って思ってたけど
 ……全部悠薇が色々溜め込んで、お互いにそれが爆発したってことなんじゃないの?

 死んだわけでもなければ、行方不明でもないんでしょ?
 だったら、『治せない』なんてことはないと思う。

 どんな不格好な傷跡が残っても、きっと治るわ。本当に、大切にしているのなら。」

伊都波 悠薇 > 「…………そうですか」

どうなんだろう。
軽い? 本当に?
信じたくても信じられない、この気持ちが?
喧嘩――、喧嘩ができたら――……

「……喧嘩ができたら、どれだけよかったか」

つぶやいて。
踵を返す――

「帰ります。”さよなら”、先輩」

ゆっくりと、落第街へと向かって

ご案内:「歓楽街」から伊都波 悠薇さんが去りました。
谷蜂檻葉 > 「―――っとに、わからず屋……!」

背を向ける悠薇に、苛立ったように言葉を差し向ける。


「全部、自分で諦めたらそこで終わりよ。

 本当に……本当に、取り返しの付かなくするのは―――自分なんだから。」



きっと、彼女には何も届くことはないのだろう。
正確には届いた所で何も変わることがない。

それは何より彼女が『目の前の絶望』を信じているのだろうから。

何が起きたのかは解らない。


しかし、姉妹の間に仕込まれた『パンドラの箱』を開いたのだとするのならば
絶望に目がくらみ、希望を閉じ込めるのかは、その箱に手をかけたものに委ねられるのだ。

ご案内:「歓楽街」から谷蜂檻葉さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」に羽切 東華さんが現れました。
ご案内:「歓楽街」に影打 鈍さんが現れました。
羽切 東華 > そろそろ夏休みも終わりが近付き、本格的に学園生活がスタートする…前に。
取りあえず、学生街とその周辺だけでも一通り回っておきたいもの。
そんな訳で、今日は歓楽街へと出向いてみた次第。とはいえ、流石に一人では心許ない。
なので、相棒でもある妖刀娘と共に歓楽街へと足を運んできた訳だが…。

「…お、おぉぉ…何か上手く言葉に出来ないけど…大人の雰囲気…!!」

完全にお上りさん状態で周囲をキョロキョロ。大人の雰囲気というより欲望の雰囲気だが。

影打 鈍 >  
うむ、名前通り正しく歓楽街と言ったところだな。

(彼の相棒であるところの妖刀娘は落ち着いたものだ。
 このようなところを歩いた事は初めてではないし、こういうところに居を構えていた担い手も居た。
 最近トレードマークになりつつあるメイド服ではなく、和と洋を統一感無く合わせたいつもの格好である。)

あまりキョロキョロするでないよ。
財布を盗まれるぞ。

(おのぼりさんと化している相棒を肘で突く。
 明らかに慣れていない感が丸出しで、治安の良くないこの区画ではカモがネギ背負っているようにしか見えない。)

羽切 東華 > 「いやぁ、スマホでどんな所か事前に調べてはいたんだけど、いざ本物の場所に来ると凄いねぇ」

相棒の妖刀娘は落ち着いたものだ。ちらっと聞いた話ではこういう場所も特に初めて、という訳ではないらしい。
歴代の担い手には、こういう場所に暮らしていた主も居たと聞く。
あと、メイド服は流石にかなり目立ちすぎるので今回は我慢して貰った次第。

「う…分かってるけどさ。人生初の場所だからつい…」

相棒に指摘されつつ肘で小突かれて苦笑い。お上りさんの自覚は大いにある。
場慣れしてないのは当然だし、ここまで分かり易いカモもそうは居ないだろう。

実際、客引きの女性とか、怪しげな店とか色々と厄介の種になりそうな光景がチラホラある。

影打 鈍 >  
気持ちは分からんでもないがな。
ああいう店とか、此処でしか見れんだろうし?

(ニヤリと笑いながら指差すのは、えっちなお店。
 所謂「お風呂屋さん」である。
 目立つと言う意味では今の格好も相当目立つものではあるが、こういう街を歩くのならばまだそこまででもないだろう。)

財布の場所には気を張っておけよ。
あとぶつかって来る奴とかな。

(その分こちらが気を付ける事にしよう。
 慣れていると言うほどではないが、彼よりはこういった場所での色々な事態に対処しやすいだろうと思う。)

羽切 東華 > 「え?ああいう店……店…ぶふぅ!?」

彼女に指差された店へと伊達眼鏡越しの視線を向ける…と、そこにあったお店は。
そう、いわゆる「お風呂屋さん」だ。確かお店の女の子がお風呂とかマットで以下略。
そして、相棒に比べて地味に過ぎるのがこの主の服装であった。
とはいえ、竹刀袋を携帯しているのは相変らずだが…彼女の本体も当然中に収めている。

「ああ、そこは大丈夫。身のこなしは婆ちゃんに散々鍛えられてるし…とはいえ。
これだけ賑わってると、スリとか喧嘩とかトラブルが絶えなさそうだねぇ…」

改めて周囲を見渡して。ただ、これでも落第街やスラムに比べたら全然良心的らしいが。
自分の中で落第街へのハードルが急上昇してきた気がする。

「けど、歓楽街ってだけあって…あ~『そういう店』がやっぱり多いんだなぁここ」

会話しながら周囲を見渡しつつも、器用に人の往来を歩いている辺り、身のこなしそのものは機敏で。

影打 鈍 >  
くっく、初心だなぁ。

(相棒の反応を見て愉快そうに笑う。
 彼の思ったとおりの反応は、見ていて本当に飽きない。)

ああいう奴らは上手くこちらの心理的な盲点を付いてくるからな。
そう言うヤツほど気付いたときには財布が無い、と言う事になりかねん。

こう言う所でケンカは華とは言うが……余計な好奇心を出さなければ巻き込まれることはないよ。

(心配ない、と言っているヤツほど危ない。
 プロのスリ師とは、財布がなくなったことにも気付かせないのだ。
 初めての場所ならなおさら気を引き締めるべきだ。
 こういう場所で余計な好奇心を全開にしそうな事も含め、締まっていこうと促した。)

なんだ、やはりスケベじゃないか。
と言うかわざわざ金を払わんでも、言えば私が相手してやるのに。

ご案内:「歓楽街」に羽切 東華さんが現れました。
ご案内:「歓楽街」に羽切 東華さんが現れました。
羽切 東華 > 「そりゃ、今まで回りに同年代の女の子とか全然居ない環境だったんだから、仕方ないだろ…」

ぬぅ、と唸りながらジト目で傍らを歩く相棒を見遣るが、まぁこのようなからかいは日常茶飯事だ。
主にこちらが一方的にからかわれる側であるのは言うまでもない。

「つまり、今まさにって事か…けど、その手のプロだとすると、俺が気を幾ら張ってもスルリと盗まれそうだな」

慢心はいかんな、と彼女の忠告に改めて気を引き締めるが、問題は好奇心だ。
好奇心が旺盛な少年なので、ついホイホイと騒動に首を突っ込んだりしかねない。

「自分で言うのもなんだけど、好奇心を抑えられない可能性が高いんだけど」

と、自覚はあるが抑えきれない、というダメな発言をしていく主。
取りあえず、ポケットをさり気なく確認するが財布もスマホも今は無事だ。

「いや、鈍は美少女だけど、そういう事したら何か犯罪臭が…うん」

相棒を見る。…一言で言うと、『ロリ巨乳』じゃないだろうか?この相棒さんは。
まぁ、そういうスタイルにしたの多分こちらの妄想力のせいなのだろうけど。

影打 鈍 >  
前から思っとったんだがな、周りに同年代の子供らがおらん状況ってどんな状況だ。

(彼が今までいたところに学校は無かったのだろうか。
 彼の生い立ちはやや特殊だとは思うが、学校には行っていなかったのだろうか。)

それでも心掛け一つで狙われにくいという事もあるからな。
せいぜい気をつけることだ。
くっく。

(なにやら悪の首領みたいなセリフ。
 ちなみに自身は小銭入れしか持ってきていない。
 食事もいらないし、欲しい物があれば少年にせびって買わせようとする算段だ。)

だろうな。
その時は首根っこひっ捕まえて引き摺ってでも止める事にするよ。

(脱力。
 分かっていた事だが、改めて言われると本当にそう思えてしまう。
 そうなった時は手遅れになる前に止められればいいが。)

ばれなければ犯罪ではないのだよ。
つーか年齢って意味ではむしろ合法だからな。
合法ロリババァだ。

(年数で言えば相棒よりもよほど年上。
 腕を組んで自身の胸を相棒に見せ付けるように持ち上げる。
 おっぱい。)

羽切 東華 > 「え?田舎の山奥の村だけど。もう2,3年後には廃村が決定してるけどね。
限界集落ってヤツ?俺が一番若いくらいだし…あ、見た目だけならウチの婆ちゃんが二番目に若いけど」

人外殺しの一族が根付いている時点で、あまり人の出入りが無い場所に代々住んでいるのはある意味で必然だ。
それでも、矢張り年月には勝てないのか自分の故郷も近々消滅するだろう。
あと、そんな環境だから学校は行っていたが、生徒は当然自分ひとりだけであった。

「いや、何で注意を促してる君が煽るような感じになってんのさ」

悪党みたいな笑顔に不安を覚えるけど、まぁそこは自分で気をつけていくしかない。
そして、相棒が小銭しか持参して無いので買わされる可能性が大である。

「よろしく。と、いうか現時点でもかなり我慢してるんだけどね」

と、視線をあっちこっちに巡らせながら。彼女が同行してなかったら確実にトラブルに巻き込まれていただろう。

「あと、ロリババァはもっと口調がお爺さんお婆さん的なイメージなんだけど…。
いや、まぁ鈍はそりゃ確かに俺より遥かに年上だろうけどさ…むしろ何年生きてるんだ君」

と、強調されるおっぱいはガン見しつつ。おっぱいに貴賎は無い…が!
大きいのと小さいの、どちらが良いか?と聞かれたら自分は間違いなく前者だ。

影打 鈍 >  
そう言うことか。
見た目だけて、それは暗に祖母殿を――待て、汝両親はどうした。

(限界集落ならば仕方あるまい。
 彼の祖母が彼をここに寄越したと聞いたが、確かにその話聞けば納得である。
 一番の理由ではないだろうが、きっとその辺も関係しているかもしれない。
 そこまで考えて、彼の両親の事に今更ながら思い当たった。
 見た目だけで祖母が二番目に若い、と言う事は、彼の両親は村にはいないということである。)

なんとなくだなんとなく。
汝は気にするなつーかあちこち見るのをやめろ。

(未だに視線をウロウロさせている相棒の背中にチョップを食らわす。
 本当は頭に食らわせてやりたかったが、ちょっと身長差が辛い。)

あんな調子で喋るジジババがいるか。
――何年ぐらいだろうなぁ、ちと思いだせん。
三世紀ぐらいは余裕だと思うのだが。

(今までの担い手の人数から、少なくとも二、三百年は余裕で超えている。
 自分の年齢に興味が無かったので、ちゃんと数えていなかったのだ。)

羽切 東華 > 「え?両親は既に死んでるよ。あと親類縁者も。羽切家はもう婆ちゃんと俺だけだし。
何か羽切家は代々短命みたいだしね。父さんは俺が生まれる前に死んでるし、母さんも俺を生んだ後に死んでる。
婆ちゃんは…天然の『不老』の異能持ちだから、そこは問題ないみたいだけど。」

と、今まで誰にも語らなかった、己の家庭環境を説明していく。
そう語る少年に特に悲壮感も何も無く、ただ淡々としていて他人事のようで。

「いや、だって学生街とか商店街とか、異邦人街とはまた全然違…いてっ!?」

チョップを背中に食らったので、渋々と視線は前に戻していく。
そして、主と妖刀の身長差はおよそ30センチもある。そりゃ頭は叩き辛いだろう。

「…えーと、3世紀…つまり300年くらい?俺には想像もつかないな…。
あと、鈍の姿…人型の衣装とか見た目って、やっぱり最初の頃と全然違うのか?」

おっぱい増量は間違いなく自分のせいだが。と、フと思った疑問を尋ねてみる。

影打 鈍 >  
なるほどな。
となると私も早めに次の担い手を探しておいた方がいいのかもな。

(対するこちらも淡々としたもの。
 短命と言う事をネタにして、そんな冗談まで言う始末である。)

汝いつの間に異邦人街まで。
短命の原因ってそう言うところじゃないのか。

(色んなところに首を突っ込んだ挙句に面倒な事に巻き込まれて死んでいるような気がする。)

少なくとも今まで担い手の居た年数でそのぐらいだな。
野良でフラフラしてた時期を合わせるともっとあるだろ。
服装はともかく、造形は変わらんよ。
この姿をアレから渡されて、ずっとこうだ。

(顔の作りとか身長とかは基本的に変わらない。
 体型はその時その時の主によって、服装は本体の装飾で若干変わることもある。)

羽切 東華 > 「……うーん、何だろ。確かにそれも考えた方がいいんだろうけど、何かモヤっとするな」

仮に己が短命だとして、確かに早めに次の使い手の候補をこの島で見繕っておくのは悪くない。
と、少年もそこは同意なのだが、ちょっとモヤモヤした気持ちがあるのも事実。

「え?アルバイト探しも兼ねてさ。ほら割と近いしウチのアパートから。
あ、そうそう滝川君にも会ったよ。何か彼も誰かと何か契約してるみたいだけど。」

と、笑顔で語るが妖刀娘さんの推測はあながち間違いでもない可能性が高い。
と、いうかコロッと何時死んでもおかしくない不安定さがあるのだ。

「アレから渡された?いや、まぁでも鈍が人の姿を取れる妖刀で良かったよ。
退屈しないし、話し相手居るし、眼福だし……でも風評被害は勘弁な!!」

と、そこはきっちり申しておく。そこで何かガラの悪いにーちゃんと肩がぶつかった。
いや、ぶつけられたというべきか。

「あ、すいませ――ん!?」

グイッといきなり胸倉を掴まれて凄まれた。あ、成る程コレが絡まれるというヤツか。
それも人生初体験だから新鮮だと思う。胸倉を掴まれつつ思うのは、この人、何か顔が暑苦しいなぁ、という他人事な感想で。

影打 鈍 >  
なんだ?
嫉妬か?
ん?

(モヤモヤと言う言葉に嬉しそうな顔。
 彼の顔を後ろから覗き込みながらにまにまと笑っている。)

あっちで仕事を探すのはちと厳しいんではないか?
ああ、あやつもなんか大変そうだなぁ。

(なんせ異邦人の街だ。
 己ならともかく、こちらの世界の住人の彼では勝手が違いすぎる気がする。
 そしてその名前と契約したという言葉を聞いて、その契約したヤツと会ってみたいと思う。
 愉快なヤツなら、主をからかう作戦会議とか楽しそうだ。)

姉だよ。
黒刀の真打だ。
わかったわかった、言いふらすのは事実だけにしておくよ。
それは良いが、主よ。
恋人なりが出来たら――おい。

(嘘は吐かない。
 吐かないが、本当の事を言うとは言っていない。
 そうして前々から話したかったことを話そうとしたら、早速絡まれた。
 言った傍からこれである。
 主の胸倉を掴む男を無視し、ジト眼を主に向けよう。)

羽切 東華 > 「いや、まぁ…んーと、やっぱり今の使い手は少なくとも自分だしねぇ」

歯切れが悪いが、それだけはしっかりと答える。一応主だし、自分が生きてる限りは彼女の使い手は自分だ、という思いがある訳で。
『次の主』が誰になるかなんて分からないが、嫉妬の感情が無いといえば嘘になるだろう。

「だねぇ。散策するのは楽しそうだけど、まず生活様式が向こう側基準だから…」

そういえば、自分と彼は何となく立場境遇が似ている所が多かった気がする。
むしろ、契約者二人が組んだら無敵ではなかろうか。主の立場である彼や自分の気苦労が増えそうな気がする!

「え?お姉さん居たの?あ、影打ってそういう事か……いや、事実でも言うなよ!?」

オブラートに包むとか誤魔化すとか、黙ってるという選択肢は無いのかこの娘は!?
と、胸倉を掴まれながらも会話中。しかもお互いチンピラを無視してる構図になっていた。
なので、『テメェら俺を無視済んじゃねぇ!!』と、凄まれた。

「うわっ!?えーと、すいません。…あ、鈍。俺例え彼女が出来ても契約破棄とかはしないからね?」

と、何故かチンピラに謝りつつも、直ぐにクルリ、と彼女へと視線を向けてそう言っておく。
ああ、我ながら思うが結構ワガママだ。