2015/06/28 のログ
■東郷月新 > 崩れゆくビル。
崩落する瓦礫。
人々の阿鼻叫喚の叫び。
――さて、チャンスだ。
この状況ならば遠距離攻撃は不可能。
崩落の中を上階から斬り下ろそうとして……
二箇所、切り傷を負う。
上階に仕掛けられたワイヤートラップ。
崩落のせいでロクに見えやしない。
「――やってくれますな、さゆりぃ!」
こちらの動きを読むような戦術。
まったく、コンピューターかあいつは。
……コンピューターだった。
だが、その程度で止まれない。
最大のチャンスを活かすべく、ダメージを受けながらも崩落の中――まずは、ツヅラへと。
■エルピス > 「っ、はいっ!」
大声を上げれば、無事を示す意味合いを兼ねて声を張り上げる。
崩壊程度では、この合金の身体に疵一つ付けられるものか。意気込みと共に、庇い通す。
幼さの残るボーイッシュな声が、凛、と、響くか。
……ツヅラを徹底して庇い、ウィリーは大丈夫と見れば庇わない。
「だ、大丈夫です。こう見えても頑丈ですから……!
ツヅラさん、一度外に出ましょう。纏めてやるにしても、このビルは彼と彼女の領域になってます!」
ウィリーにはそう応える。
そのままツヅラを抱え、飛行機構を起動。高速で外に逃げるだろう。
■エルピス > 「させません!」
東郷がツヅラに迫るより早く、庇っているツヅラをひっとらえて脱出する。
■薄野ツヅラ > エルピスの優れた空中機動。
無事に空へと脱出を果たせば、チェシャ猫のように嗤う。
「時間が欲しいわァ、一先ず時間さえあれば勝機はある。
彼女が仕留め損なったアレを討つのはボクの役目だ
───あァ、聞いておきたいのだけれどアンタが今飛んでるの。
魔術や異能の類じゃあないわよねェ?」
爛々と赤い瞳を輝かせて、笑う。
■ウィリー > 斬撃の対象はおそらく、こちらへと向かうだろう。
ワイヤートラップの中を直進してくるほどのタフさと、その斬撃。
遠距離攻撃に集中しようと思っていたが、その余裕はない。
ツヅラとエルピスが対策を打つ間を稼ぐためついでに、試験運用してみるか。
「瓦礫の運動エネルギー、しっかり貯めこんだからな」
左腕を真上に掲げて、力強く。
「せえの、そらっ」衝撃波と閃光、そして熱が指向性を持って空を穿つ。直撃しなくとも、足止めにはなる程度の威力だろう。
■能見さゆり > 【東郷はいつもだいたい決まって、そうだ
打開策が見つからなければその辺のものを使ったり持ってこようとする
要は環境を変えるのだ
昔はコレに対応できなくて味方の時も随分嫌がられたものだ
地の利を利用し、一旦出来た戦場を白紙に戻したり変化させてしまう
逆に言えば、その周りの環境も最初から考えておけばいい
建物が崩れる前に飛び出すと、張っていた巣を、一部、東郷の周りに落とす
綺麗に倒壊の煙幕がカモフラージュしてくれるだろう
戦闘中でいいタイミングで引けば、刀を絡めたり全力で振るタイミングを外したり
足を制限したり出来るだろう
もちろんその間に、環境を移動しそうなところに仕掛けに行こう、そうしよう】
ああ、そこのお方
……不用意に飛びすぎると網にかかりますので注意してください
東郷さんの正面はあなた方にお任せしますから、後方や周囲への移動は私が縛ります
あの方は不利がすぎれば環境を変えます故
……ではよろしく
【エルピス、ツヅラのコンビに東郷の正面側は開いていると告げると壁面を跳ねつつ設置に向かった】
■エルピス > 「――ええ、今は使っていませんっ。」
強く答え、ビルの外に浮かんだままさゆりを抱え待機する。
ワイヤートラップや網の類は、優れた空中機動により上手く掻い潜っている。
アドバイスも受ければ、トラップに引っかかる事は先ず無くなるだろう。
「あ、ありがとうございます。綺麗なお姉さん。
……そこのお兄さんっ、ちょっとボクと一緒に正面をお願いしますっ!」
ツヅラが"なにかするつもり"と見ている。
故に直ぐには正面衝突をせず、宙に浮いてツヅラを守りながら東郷を見下ろすだろう。
■東郷月新 > まったく、最大の機を逃した。
こうなると建物の外に出た事になり、一気に不利になる。
さて、次の手は――
「ひとまずは、正面衝突ですなぁ!」
倒壊に紛れて近づけたのは幸い。
ツヅラに向かって斬りかかる。
――もっとも、さゆりの残したワイヤーのせいであまり効果的な攻撃は出来ないだろう。
■薄野ツヅラ > 「任されたんだゾ───……☆」
不自由な右足も今はぶらんと宙に浮いている。
何も恐れることはない。公安の人間に、さゆりまで味方にいるのだ。
臆することなく、彼女は謳う。
『人間』にだけ通用する魔術を。
東郷のほかにももう一人見覚えのある────恐らく人間が居たが気にしている暇はない。
エルピスとさゆりには届くことのない、白い死神の遺した魔術を。
『周囲の人間』の身体能力を、数十秒間『薄野ツヅラ』と同程度まで縛る魔術。
絶対ではないが、『勝機』を作る時間くらいは稼げる筈だ。
「エルピス───ッ!」
避けろ、と言外に叫ぶ。
そして其の魔術のトリガーを、
ドグラマグラ
「『簡易詠唱───言葉を綴る堂廻目眩』」
引いた。
■エルピス > 「――はい!」
強く応える。叫べばエルピスは応える。
機械は使われるものである。人は頼られれば応えるものである。
両方を併せ持つ彼にとって、頼られる――依存される事は強い『動機』となる。
瞬時に刀の腹から蹴り飛ばして弾き、更に上へと逃げる。
少々卑怯な気もするけど、この際気にする事はない。
魔術のトリガーが引かれると、身体が重くなった様に感じる。
生体部分の不調や、魔力の封印。そのようなものを察し取る。
機械の機能は、縛られていない模様。
魔力による加速などは、出来なくなったが。
(――ちょっと身体が重いけど、これくらいなら……ッ)
■ウィリー > 指示の通り、近距離戦から銃撃による援護に切り替えて正面を守っていた。
ついにその甲斐があったのだろう。
別の糸口から、決定打となりうる「切り札」がツヅラによって切られたことを知る。
「コレで十分に恩は売れたか……?」
まるで叫びのような、それでいて歌のような。
まずい、と思った時には巻き添えを食っていた。
身体が思うどおりに動かせない、左腕はなんとかなってはいるが……
「ああ……あいつらマジ後でしばくわ…」
■東郷月新 > 東郷月新は人間である。
故に、その魔術は彼の身体能力を縛る。
「ぐっ……!?」
まるで身体が鉛になったかのような感覚。
一体何をしたのか……
だが、彼の中に流れるモノが、ギリギリで戦闘能力を保たせてくれている。そう――「■■=■■■■」の血が。
「やってくれますなぁ……!」
東郷の目が緑色に光る。
もっとも、今までのように自由には動けないだろう。
■エルピス > とは言え、不調がある状態で長く浮きすぎてもいる。
ただでさえ激しい空中機動を、それも長時間行っているのだ。その状態で異常を受ければ――
――身体の不調が僅かな歪みとなり、次第に ゆっくりではあるが、次第にエルピスの位置する高度を下げる。
動くとなれば、高度はもっと下がるだろう。
(……こらえろ、ボク、っ)
■薄野ツヅラ >
彼女は謳う。高らかに、誇らしげに。
クロノスの『万物を切り裂くアダマスの鎌』の欠片を喰らった、
クロノスの願った『奇跡』を喰らった、3段の詠唱を求める魔術を。
『───巻頭歌』
『───胎児よ 胎児よ。』
『───何故躍る。』
『───母親の心がわかっておそろしいのか。』
『───お前の母は、人を喰らった。』
『───為らばお前も人を喰えよう。』
───ジャラリ、左手には漆黒のアダマンタイトの鎖が。
ご案内:「落第街大通り」に瀬田 瑞央さんが現れました。
■瀬田 瑞央 > 「状況が芳しくありませんね」
女は呟く。マスター東郷が交戦に入ってから下手に関わって不興を買うのを嫌ってやや離れて観察していたが……流石に異能揃いの相手、しかも手の内を知っている機械歩兵の介入でかなり逼迫した状況になっている。
「イオ。私はかまいません。むしろ、私に関わりがあるとわからないように、遠くから支援をしてください。
まずは……そう、あの空を飛んでいる少女。それと……貴方と同じ機械歩兵に対して牽制で構いません。射撃を許可します。
私は無関係を装っておきます。」
隣に控える機械歩兵に女は命令を下す。
彼女が鹵獲し、彼女が手を加え、彼女の手先とした機械歩兵に……
『はい、ミオ。ソレが貴方の命ならば』
イオと呼ばれた機械歩兵は、女の側を離れ……手にした銃を撃つ。
まずは空を飛ぶ、二人の人型に。
■エルピス > (新手っ!?)
浮きながらも眼鏡の女を視界の端に見て、戻す。
東郷から眼を離す様な真似はできない、が――
――姿勢をずらしてツヅラへの銃弾を外し、残る銃弾を身体に受ける。
『ハイカキン』と呼ばれる特殊な装甲が銃弾を受け止め、その衝撃を跳ね返し貫通力を殺し、地に落とす。
(よ、よかった。この程度なら……)
――もし、『常世財団英雄開発課』を存じていれば、該当課の開発した合金と認識出来るだろう。
少し、高度が落ちた。
ツヅラを抱えている以上、攻撃は出来ない。
■東郷月新 > 「――――!」
一瞬、隙が出来たか。
なら、あの詠唱を止めれば――
だが、身体が鉛のように重い。
まるで自分の身体ではないかのように。
それでも一歩、ツヅラの方へと向かい――
■薄野ツヅラ > 高度が下がったのを認める。
何処かからの射撃をエルピスが庇えば。
・・・
「エルピス、頼りにしてるわぁ────」
小さく、極めて小さくだったが────ひとつ。
其のまま一息で謳い上げる。赤い瞳を爛々と輝かせる。
『───幕間歌』
『───ああア──アア──あああ。』
『───右や左の御方様へ。』
『───右には彼女の愛した秩序を。』
『───左には彼女の犯した叛逆を。』
『───堂々巡りの思考の海に目眩を落として。』
───カチャリ、右手には純白のアダマンタイトの鎌刃を。
■エルピス >
段々と高度が落ちている事は、自分でも理解している。
一段、また一段、と、エルピスの身体が地へ近付く。
全力で維持している。システムに不明なエラーが出ていると脳が訴える。
視界にノイズが奔る。身体には熱が篭もる。瞼が重い。
――ここまでは、ツヅラの声がエルピスに『届く前』の出来事だ。
■東郷月新 > 「――そんなサルマネで、小生と戦おうとでも?」
殺意の篭った視線をねめつけながら、東郷は刀を構える。
この種の呪いは、効果時間に難があるはず。
さらに――
「――"非才者"!? その人形を小生の元へ!」
見つけた、勝利への道。
あれには対異能機構があるはず!
■瀬田 瑞央 > 「……仕方ありませんね。イオ、あちらの男性の方へ。
基本的な指示はしたがって構いません」
見つかったからには仕方ない。女は自分の人形へ指示を出す。
自らは己のための防御機構のスイッチを入れる。
『ミオの命のままに』
命を受けた人形は殺刃鬼へと向かう。
そこに何の躊躇もなかった。
■能見さゆり > 【東郷が切り替えを行いそうなところへ設置を行う
ひとつ、ふたつ、みっつ
こういった場所での剣術は止まらないこと、少数人しか対応しないこと、追い詰められないことだ
常に変化させ流れることである
だから、淀ませる
強い一撃はいらない、弱くていい、遠くていい、やりあわなくていい
邪魔、嫌がらせ、足止め、不規則、不定期、偽装
かき乱す】
……あれは。
【射撃を回避。距離が遠く現状問題になる程度ではない
アレは……N3001型、自身と同じ型だ
もっとも、単体ではそれほどではない
だが、バニラであろうと、東郷はそれの活かし方を知っている
活かさずとも、自身と同じ、遠距離からの対異能だけでも十分なのだ】
気をつけてください、あの人形は、対異能能力……遠距離からの異能を殺す能力を持ってます
魔術と陽動で殺してください
■エルピス >
エルピスの身体は地に降りた、が。
そこで、声が掛かった。
・・ ・・・・
「頼りにしてくれるなら――がんばる!」
――瞳に強い意志が篭もる。
東郷が『非才者』に意識を向けた瞬間を狙い、重量512kgから繰り出される足刀蹴りを放つ。
誰かに頼られるのは嫌いじゃない。
へこられてなんか居られない。多少の無茶は、当たり前のようにしてみせよう。
「異能キャンセル、分かった――っ」
元々封じられている気もするが、キャンセル機構を意識の片隅に入れ、次なる行動への準備を済ませる。
■薄野ツヅラ > 「───猿は猿でも猿の手よぉ?」
彼女は対価を払えなかったけど────と、ぽつり。
『───巻末歌』
『───顕現せし万物を喰らうクロノスの鎖よ。』
ドグラマグラ
『───言葉を綴るは堂廻目眩。』
『───胎児は果たして夢を見るか。』
『───アア、《私》はいったい誰なんだい。』
『───教えておくれよ、《彼女》がそうして呉れたようにッ!』
―――ゆらり、幽鬼の如く。
―――白い死神のように、血のように紅い双眸を煌々と煌めかせる。
―――白い死神の名を冠した、彼女の置き土産の金に輝く鎖鎌。
――――『万物を喰らうクロノスの鎖』
────詠唱は、完成する。
神の大鎌を喰らった鎖鎌を、手元にそっと抱き寄せる。
あくまで『罪を断ち切る』クロノスとは違い、彼女は『罪を縛る』。
────罪を、贖罪を求める其の鎖鎌を。ひと思いに東郷へと投げつける──ッ!
鎖が東郷を縛れば、先刻感じた体の重みを再度感じるだろう。
同時に、魔術や異能が否定される感覚が伝わるだろう。
「此れは、魔術、よおッ───!!」
獣のように、叫ぶ。
■東郷月新 > 呼んだのは一足遅かったか。
エルピスのキックを受け、東郷は後ろへ大きく飛ばされる。
――幸い、体勢を崩す事はなかったが。
しかし、イオと呼ばれる機械人形との距離は開いてしまった。
そこへ――
「ぬ、ぐ――!?」
鎖鎌が、襲う。
それはまさに東郷を縛りあげ――
■瀬田 瑞央 > 「異能……魔術……機械の体……全く……持たざる者からすればなんと恵まれたことなのでしょうね、あなた方は。」
争う様子を眺め、肩をすくめる女。
この島では、この世界では、それが当たり前なのだ。ソレを受け入れるしか無いのだ。だが、そうだとしても……
「イオ、命令を変更します。その男性の援護として鎖使いを標的に。せいぜい邪魔をして差し上げなさい。」
『命令のままに』
両者の間で交わされる命令。
瞬間、機械歩兵は鎖を放った女に銃撃を再開する。
■薄野ツヅラ > ・・・・
「───ンなの、興味ないわァ……!
持たざる者も持つ者も変わらないッ!
────終わりが在るのは、全てに於いて等しく悪平等ッ!
ボクの「正義」のッ!邪魔すンじゃないわぁ──……!」
鎖は、意思を持ったかのように。まるで蛇の如く蠢く。
蛇はきつく、きつく東郷を縛り上げるだろう。
果たして其れは、誰の意思だったのか。はたまた遺志だったのか。
エルピスを押しのけ、銃弾の雨の中に飛び込む。
宙に身体を投げ出して、そして、もう一度叫ぶ。
「────エルピスッ!!!
ボクを『死なせンじゃない』わよぉ!!」
何の根拠もなく、エルピスならやってくれると思った。
故に、其の四肢を投げ出し、両手を自由にしようと。
■能見さゆり > 【エルピスが機械なのが惜しい。そうでなければあの人形、パルスグレネードを隠して転がせば早いのだが。
仕方がない、撹乱しよう
出元がわかりにくいよう、人形に向けて音響グレネードをワイヤーを引っ掛けて飛ばす
適度に感知されるだろうが、そのタイミングで射撃元がわかりにくいよう不規則に半落下しながら釣瓶撃ちにしてあげよう
まだ瞳の赤い色の個体だ、意味がわからないものに対処は遅れるだろう】
所詮、まだバニラでしょう?
味わうには物足りません
【それに命令ははどうせ「邪魔」だ
攻撃でも消去でもない、行動妨害と様子見だ
決定的に撃てる場面でも排除ではなく無力化を選ぶだろう】
■エルピス > 「――っ、はいっ!」
とは言え後ろから銃弾をどうこうできる手段はない。
だから、やっぱりブーストを吹かせ前に出て、銃弾の雨の前にたちはだかる事にする。
この身体は単なる弾丸にやられる程、柔ではなく、衝撃を拡散反射する作用もある。
銃撃程度では怯む事もそうない。
……彼女には打たせないと、イオと呼ばれる機械人形の前に立って射撃の全てを遮る。絶対に死なせないと、言わんばかりに。
――先ほど切断され、倒壊したビルの残骸から、『東郷が切った支柱の先』を『左腕』にマウントさせる。
無理矢理に十数mの巨大な鈍器――《インスタントウェポン》として適合させれば、目の前の機械人形――イオを見据える。
その圧倒的な質量と速度を以って支柱を奮い、
さゆりの射撃や音響グレネードの合わせる形で、
イオを叩き潰しに掛かった。
「く、ら、えっ!」
■東郷月新 > ヘビは巻きつき、離れない。
未だ力の戻らない東郷では打ち破れないだろう。
「正義――
くく、2年前と代わりませんなぁ。
そんな下らないものの為に、まだ戦っているのですか」
縛られたままで嘲る。
正義に意味などない。
「昔、ある少女に言った言葉ですが、貴女にも差し上げましょう。
――そんな子供騙しに縋るから『本当に欲しいものは何一つ手に入らない』」
鎖に縛られたまま。
東郷は大笑した。
■瀬田 瑞央 > 『敵対行動を感知……音響兵器と判断。想定される損害は微小。』
さゆりの陽動に見事にはまる。まだ経験値の低い人形では達しきれない領域だ。
そして、迫るエルピス。
『脅威度大の攻撃と判断。対処……』
しかし、できることは少ない。そして、ソレに対応する学習もない。
効かない銃弾の雨を更に追加するしか彼女には残されていなかった。
「やれやれ……どうにもならない、ということですか。また、私は…私達は蹂躙されるということでしょうかね。
無駄な抵抗の一つくらいはさせていただきたいところですが」
懐を探る……なにかを有用な手段があるかどうか。それを考えながら
■薄野ツヅラ > 宙に投げ出された身体は地面に落ちる。
どうせ怪我をしているのは変わりない、目の前の悪人に敬意を払って。
脚の一本くらいはくれてやる、と。
右足で乱雑な着地を試みる。
想像通り、酷い痛み───痛みも最早感じない。
「正義は本ッ当に下らないわぁ、腹の足しにもなりやしない」
傍らに投げ出されたロフストアンドクラッチをついて、ゆらり立ち上がる。
「其れでも、ボクは「正義」に縋る。
何の得にもなりやしないこンな下らないモンの為に命を掛けた、
あの死神のことを忘れない限りは「正義の味方」の猿真似を辞めない」
カツリ、カツリと杖を鳴らして東郷に歩み寄る。
其の表情は、敬愛か。其れとも憐憫か。
「下らないモン守るのも中々悪くないわよぉ、同類」
嗤った。
■東郷月新 > 「――残念ながら」
ようやく力が戻ったようだ。
――なんとか鎖を解こうと力を入れる。
「小生はそこまで純真にはなれませんなぁ。
小生がする事はただひとつ。斬り刻み殺す事だけです。
故に――」
ツヅラに向かい、こちらも嗤ってみせた。
■エルピス >
……何もなければイオを叩き潰し、次なる行動へと移るだろう。
「ツ、ツヅラさん、あ、あし……!?」
嗤い合ってから少し間を置いて、ツヅラの無茶な着地と足の怪我に言及するだろう。
その瞳には不安が浮かぶ。心配そうだ。
■瀬田 瑞央 > 『……緊急回避』
銃弾を物ともしない攻撃に、ようやく判断を切り替える。
しかし、遅い。強力な一撃は、イオとよばれた機械歩兵の体を吹き飛ばす。
「……経験の差、ですか。能見さゆり……アレへの対処は考えないといけませんね。
……さて、こうなると……秘策……ないわけではないですが、タイミング次第、ですね」
目当ての物は探り当てられたのか……しかし、ただ、黙って様子をみることにする。
■能見さゆり > 【イオがもし回避を選ぶなら狙い撃つだけだ
戦闘を知らない人間の命令を聞いているな、と思う】
……ああ、ツヅラ。
東郷さんはそう言うところ、ほんと人間のクズですから、女が誘うと破滅しか無いですよ?
抱いたすぐ後に切りたければ切るぐらいには、ダメ人間なので
子供なんで、興味持ったら我慢できないんですよ
【移動経路を相応に想定しつつ包囲を狭める】
ご案内:「落第街大通り」に『室長補佐代理』さんが現れました。
■東郷月新 > 「さゆり、人の夜の性活を暴露するのをやめなさい!?」
かなり声がマジになって切迫しはじめる。
やばい、そう来たか、恐ろしい攻撃だ。
■薄野ツヅラ > 其の鎖は神の大鎌を喰らった鎖。
"人間"の力では恐らく到底緩むことはないだろう。
「ボクは生憎甘ったるいものでねェ──……
抱かれた後に杭をブッ刺されるのにも慣れてるモンで」
からからと楽しげに笑う。
彼女は、"同類"にはとことん甘い。
故に、東郷の首を鎌で掻っ切ることも、脳天にショットシェルを叩き込むことも出来ない。
■エルピス > 「風紀委員さん?!」
思わぬ夜事情の暴露に思わず突っ込む。
東郷の反応が差し迫っていた事が、エルピスにツッコミを誘発させた。
風紀とは、一体。
■『室長補佐代理』 > 銃声が一発、空を劈き、周囲に木霊する。
威嚇射撃の咆哮が一面に響き渡れば……現れるのは黒の装甲服に身を包んだ無数の兵士達。
顔は一様に厳つい仮面のようなフルフェイスヘルムに覆われており、伺う事が出来ない。
周囲を包囲し、装甲車をも穿つ重機関銃の銃口を一同に向ける。
■瀬田 瑞央 > 「ああ――」
なるほど、たまに妙な死体が出ると思ったらそういうことだったのか。
などと、場に似つかわしくない変な納得をごく真面目にした。
しかし、そんな場合ではないことは流石に分かっている。
「……さて、イオ。まだ動けますか?動けるなら、脱出の準備をしておきなさい」
小声で、忠実な人形へ語りかける。
『はい、ミオ。まだ稼働できます。』
■『室長補佐代理』 > 銃口と装甲の包囲網の一角が割れると、兵士達に一礼をうけながら、現れる男が一人。
そのザンバラ髪はまるで揺らめく炎のよう。
その黒瞳はまるで昏い水底のよう。
その薄笑いは……まるで、滲む汚濁のよう。
右腕に、『公安委員会』の腕章……直轄第二特別教室、室長補佐代理の腕章をつけた男が、じわりと嗤った。
「よう……いい夜だな。お前ら」
左手を仰ぎ、ゆったりと。
中指の銀の指輪が、鈍く輝く。
「大手柄じゃねぇか。『堂廻目眩』」
■エルピス > 圧倒的な数の兵士と暴力を象徴する重機関銃。
権力による数と武力の暴力に、顔を顰めた。
ボクは今、常世島の闇――
――公安委員会の闇を目にしている。
今はそれが、味方にも回っているとは言え、油断は出来ない。
(初めて見たけど……)
……そう思いながらも光景を見る。
ボクも頑張ったのにな、なんて気持ちも少しだけ、芽生えた。
決して褒められたかった訳でも、ないけど。
だが、それ以上に、
多大な力と兵士を従え、ツヅラに近付く彼の姿には、
揺らめく炎には、昏い水底には、滲む汚濁には、
さながら『委員長』かそれ以上と錯覚させるような――力強さを憶えた。
■東郷月新 > やれやれと溜息をつく。
遠距離戦による牽制。
その後大人数での包囲、捕縛。
――まったく、公安はやる事がいつでも変わらない。
いや、それに二度捕まる自分もどうかと思うが。
「ご大層な事ですなぁ。
公安委員会というところは、よほど暇人が多いらしい」
さて、つまらない幕引きは終わりだ。
後はどうやって舞台の外まで逃げ出すか。
■薄野ツヅラ > 「あッは───……☆」
ゆらり、特徴的な笑い声を溢しながら、杖に体重を預けて振り返る。
見慣れた伽藍洞のような瞳をジイと血の滲むような紅が見据える。
「最高に最低な良い夜ねェ──、『室長補佐代理』」
緊張しきっていた状態に、見慣れた声が響けば安心したように。
金色に煌めく鎖の拘束が幾らか緩む。
あァ、とことん甘い。
「"先輩"の不始末は"後輩"がつけるモンでしょう?」
逆だったかしらぁ、とどうでもよさげに笑う。
■瀬田 瑞央 > 「これは……やれやれ、困りましたね。まさか此処まで大事にされるとは。
それもこれも、マスター東郷への畏怖がなせる業でしょうか。
しかし公安が業を祓おうとするのならば、公安自らの業に沈んでもらう……という手もありますね。」
思案する。まだ、あの少女の魔術の効果は続いているのだろうか。
なにしろ、才も何も持ち合わせない自分では弱体化した才など感じえるはずもない。
いや、効果が続いていようがいまいが、あれなら関係はないはず。
以前、この街でデータを拾った、あれならば……
後は、静かに気が付かれないように作動させるだけ。
「イオ、EV3試薬の散布準備を。指向性は要りません。せっかくです。全域に撒く準備をお願いします。」
指向性マイクを使い、指令を出す。
■『室長補佐代理』 > 「はっ。よく言うぜ。
俺の部下ってのはいつの時代も口減らずのやんちゃばっかりらしいな」
エルピスに「ご苦労」と労いの言葉をかけつつ、コツコツと東郷の前にまで歩いてくる。
「よう、暇人。監視番号230東郷月新。
人を斬るのに飽きて今度は緊縛にでも目覚めたか?
勉強熱心だな」
無数の銃口を向けられたまま、その中心で男は東郷の目を見て嗤う。
公安のことだ。もし妙な真似をすれば『目前の男を巻き込んでも』兵士たちは平然と引き金を引くだろう。
アイツらは昔から、『それくらい』は平気でやる。
ロストサインにいたからこそ、恐らく東郷にはそれがよくわかっていた。
「まぁ楽にしろよ。俺は調査部だ。
調査部は荒事専門じゃあない。もう、いいたいことはわかるよな?
できれば、大人しく御同行願いたいんだがどうかね。飯くらいなら奢るぞ。
蕎麦でもどうだ」
■東郷月新 > 「生憎とこれはそちらの部下の方の趣味でしてなぁ。
言ってやってください、小生はノーマルだと」
抱いた後に斬りたくなるのはノーマルとは言えないかもしれないが、まぁいい。
――おそらく、自分の動きは公安の連中が眼を光らせている。
なら、"非才者"に任せよう。
幸い、鎖が緩んでいる。"非才者"が何かアクションを起こせば、それに乗じて逃げるくらいは出来るかもしれない。
「あ、いいですなぁ。
できれば歓楽街にある『麒麟』という店の鴨蒸篭がいいですな」
■エルピス > 「は、はいっ。」
……小さく礼をする。
内心では複雑な気持ちではあるが、今は目の前のやりとりを警戒するしかない。
彼なら、上手くやってくれるだろうと。
恐らくやりとりからして、以前から何かしらの関係があるのだろう。
……少々、目の前の大事件に対し、自分の胸の内に、疎外感と、無力さを覚えた。
(もっと、頑張らなきゃ。)
イオと呼ばれる機械人形が不審な動きをした様なそうでないような。そう見えたが、動かない。
自分が気付けるなら、彼らも気付けるだろう。気のせいなら、気のせいだ。
■瀬田 瑞央 > 『散布準備完了。EV3試薬、散布』
自動歩兵は迷わず行動を取った。途端に、人形自体から煙のような物が吹き出してくる。
かつて、暴走剤として悪名を振るったソレを。更にはそこに興奮剤、覚せい剤……様々な悪意を詰め込み悪化させられたモノを。
それは、放っておけば辺り一面に広がっていくだろう。
「……才なき私には暴走剤など無意味ですが……それ以外のブレンド品の影響はあまりわかりませんね。まあどう転ぶにしても、公安には苦い思いが残ることでしょう。」
女は冷静に呟いた。
■『室長補佐代理』 > 「悪いが、部下の教育についちゃあ俺は昔っから苦手でな。
始末書かかされて一度休職くらったくらいだ。
専門外なんで諦めてくれ。
しかし、鴨か。悪くねぇな。
俺は鴨南蛮がくいてぇ」
自嘲気味に微笑んで左肩だけを竦める。
そして、薄く薄く、目を細める。
「おいおい、そんなに『帰りたそう』にしなくたっていいじゃねぇか。
折角、部下の手柄を一目見たくて此処まできたんだ。」
■薄野ツヅラ > 「ボクは至ってノーマ──……
し、縛る側には興味は全く以てないんだゾ──……☆」
幾らか口篭もる。
先刻の様など何処へやら、子犬の如くキャンキャンと吠える。
すっかり気が抜けたのか周辺の様子の変化に気付くことはない。
見回すこともない。
同時に、鎖も幾らか緩む。
「なんか変なことでもあったかしらぁ?」
自分を『死なせないでくれた』彼にひとつ、問いかける。
撒かれる其れには、全く気付かないまま。
其れが魔術にも通用するのならば、徐々に鎖は神性を失い、
元の黒いアダマンタイトの鎖に戻るだろう。
効かないのであれば、彼女の魔術における制約────
"魔術の発動下では自身の異能が全て失われる"ため、能力の暴走は起きないだろう。
■『室長補佐代理』 > 突如、銃声が響く。
後方では、仮面をつけた兵士達が突如そのあたりのチンピラを一人肉クズにかえた。
2秒と掛からなかった。
「どうした?」
ガスマスクを渡されながら、部下から報告を聞く。
そもそも最初から仮面……マスクを着けている連中にはそういった類のBC兵器は通用しない。
機械的に兵士達は本来なら装甲車に打つような銃弾も躊躇いなく暴走寸前のチンピラや発生源に撃ちこんでいく。
「おいおい、そんなに話したくねぇのかよ。傷つくじゃねぇか」
何でもなさそうにそういって、肩を竦める。
「お前らもつけとけ」
男がそういって合図を送ると、ツヅラとエルピスにそれぞれ兵士達からガスマスクが渡される。
「お前もつけるか? 一応、重要参考人だからな」
東郷にも、一応差し出して聞く。
■瀬田 瑞央 > (薬に魔術殺しも混ざっているとはいえ、散布薬程度では大した影響はないでしょうね。後は私の携帯式の方を作動させて、どこまで効果があるか……正直なところ、あとはマスター東郷がどうにかすることを期待するしかありませんね。)
早々にガスマスクが配られるのを見ながら、状況を判断していく。
多少でも拘束がゆるめば、なんとでもなる……いや、なんとでもする、だろう。ずさんであるかもしれないが、戦闘経験のない学者にはここまでしか出来ない。
多少の期待を込めて……魔術殺しの装置を作動させる。
ご案内:「落第街大通り」にウェインライトさんが現れました。
■エルピス > 「ひっ……。」
小さく頷き、震えた手で、ガスマスクを受け取る事は受け取る。
生体部分や脳――機械化されていたりするものの、ダメージを受けない訳ではない。
「……おかしい、よ……」
なにがあったのかは理解した。
それでも、公安が『守るべき』被害者へ容赦なく『打ち込む』。
その光景は――
「こんなの、絶対おかしいよ……」
……気付けば、泣いていた。
■ウェインライト > 突如、鉄火場に響くフィンガースナップ。
この場にいる誰もの、意識の間隙。そのほんの一瞬に、それは居た。
燃え上がるような金髪/融かし尽くすような赤い瞳/蕩けさせるような美貌。
初めから最初からそこに居たかのように。
――東郷の横に座り込んでいる。
「ふむ。旧知の気配をたどってきてみれば、まさかこんなことになっているとはね」
ロストサイン、元マスター。百の異名を持つ者。
最も優雅にして最も華麗なウェインライト。
艶然と口元を歪め、目元をまるで欠けた月のように細めて、そこに居た。
ご案内:「落第街大通り」に石蒜さんが現れました。
■能見さゆり > これはこれは、今回の騒動の原因を作られた方ではないですか。
マッチポンプの消化は楽しいですか?
そのうちご相伴に与りたいものです
【室長補佐代理が来ればにこやかに挨拶する
西園寺さんもクロノスもこいつがハメたような部分はある
無論、公安としては正しいのだろうが、コイツも等しくクズなことには変わりない
挨拶にはちょうどいいだろう】
■『室長補佐代理』 > 突如現れた二人目のマスタークラス。
100の名を持つもの。多貌なりしもの。優雅の具現。
あらゆる異名を持つその美という名の異形。
『ウェインライト』
コマ落としのように現れたそれに対して……嗤う。
「本当に今日は大盛況だな」
■エルピス >
鋼の少女――元少年はただへたり込んで泣いている。
守るべき正義が被害者を容赦無く射殺処分する現状を見て、憂い泣く。
奔流の中、ただ残されて泣いている。
公安とは、何だったのか。
あれが公安の大義、なのか。
一殺多生の正義は分かる。放っておけば害を成すなら、
犠牲を払ってでも止めるべきというのも分かる。
それでも、もうちょっと、公安として――どうにかならなかったのか。鋼の少女は、独り思う。
……邪魔だと云われる前に立ち去るべきと思っても、立ち上がる事が出来なかった。
■『室長補佐代理』 > 「おいおい、俺は完全な被害者だぜ。文句なら式典委員会あたりにでもいってくれ。
まぁ、興味があるなら生徒会にいるちいさな猫耳女と懇意になるといい。
いくらでも御相伴にあずかれると思うぜ」
くすくすと能見に笑いながら、エルピスを輪の内側に回収するように部下たちに通達する。
兵士達はエルピスを優しく保護する。
そう『命令』されたから。
■東郷月新 > 「――おや、吸血鬼殿。
これは懐かしい。ってかよく生きておられましたなぁ」
むしろ吸血鬼って生きてるのかどうかも怪しいか。
まぁいい。九死に一生だ。彼の呪法があればこの場もなんとか切り抜けられよう。
――彼(彼女?)がちょっとどころじゃなく愉快になってる事は知らないのだ、この男。
■エルピス > 『権力』により『命令』されたれば手厚く保護されるだろう。
――暴れる訳にもいかないし、公安が落第街で暴れたと弓をひくことも出来ない。
ただただ無力さに、己の居場所の狭さに、憂う。
――だが、彼が公安委員会を去る事は決して無い。
常世財団の一部から、そう命じられているのだから。
■瀬田 瑞央 > 「マスターウェインライト? ……噂通り、生きていましたか。
しかし、これなら救いがありますね。彼の能力なら、この程度苦境でもなんでもない」
ロストサインのマスターのうち、最初に脱落したのが信じられないほどの能力を持った存在。彼女の認識内ではそれしかなかった。
ウェインライトの現状など、なにも知らないのだ。
■薄野ツヅラ > 不機嫌そうに声が洩れる。
「はァ?
ロストサイン此処に再結成とか云わないでしょうねェ───……
ようやく幕が下りたばかりだのに早速幕を開ける訳ェ──…?
エピローグの時間すらくれないのねェ」
全面戦争でもおっ始める気かしらぁ、と。
チンピラが撃ち抜かれても何の気なしに軽口を叩く。
受け取ったガスマスクをきっちり嵌めて、至極楽しげに笑う。
「あぁ、魔術に介入すると」
魔術殺しが作動すれば鎖は失われる。
同時に、彼女の"本来の"異能と体質が戻る。
つかつかと慣れた様子で杖をついて『室長補佐代理』に歩み寄り、小さく耳を打つ。
『この間みたいなことをするのなら、演算は任せてくれてもいいのよぉ』、と。
クロノスを呑んだ『室長補佐代理』の『闇』を想起しながら。
■『室長補佐代理』 > ぼそぼそと、耳元で……いや、わざと東郷には聞こえるように囁く。
「勘弁してくれよ。俺は基本的に荒事は専門外なんだ。
マスタークラス二人も相手に『大立ち回りはできねぇ』よ。
お前もあんまり無茶するんじゃねぇぞ。俺達は『調査部』なんだから」
■ウェインライト > 「交友は大切するべきだろう?
別に君たちと敵対する理由は僕には無いが、一度ぐらいは旧知の義理を果たしておこうかと思ってね」
まるでピクニックのような気楽さ。
柔らかな笑みを浮かべながら、白く細い指を、東郷を拘束する鎖へ這わせる。
「ははは。懐かしいねえ、ミスター東郷。いやいや、僕は死んだ身さ。あの日、あの時。確かに僕は死んだ」
だが、と瞳を潤ませる。
熱い吐息は吐き出され、恍惚とした様子で空を見上げた。
「あの日、あの時。彼らの666の呪詛は僕を殺した。
彼らの命を賭けた総力戦は、まさに、まさに――この僕の美しさに迫るものがあった」
公安、風紀の総力決死隊。あの死線にこそ魂の輝きを感じた。
しかし、目の前の委員会に、ウェインライトは視線は向けることはない。
「僕は僕の美学を肯定する。だからね、ミスター東郷。一度だけ手助けしてあげよう」
鎖に、指を、這わせる。
誰も知らないウェインライトの"新たな異形"。身体を何かに食い込ませ死んだ時。
復活するその瞬間に万物を消失させる"絶対遵死"。
絡みついた腕を振り解こうとするならば、誰だってその消失から逃げ出せる。
――ウェインライトの身体を振り解こうとするならば、だ。
だから指を絡ませて妖しく微笑う。
その肢体、腹部は不自然なほどに膨れている。
「グランドマスターの居ないロストサインに興味はない。
だから、君たちに手を貸すのはただの僕の美学でしかない」
かつては見つめるだけで誰をも蕩けさせた赤い瞳。
それが、委員会の生徒を流し見る。
■薄野ツヅラ > 「ボクは───」
ウェインライトが鎖に触れれば、ツヅラも鎖から手を離す。
ぱっと鎖は霧散する。
「別にロストサインも公安も興味ない。
関係はあっても興味ない。お互い好きに利用し合ってるだけだしぃ───……」
ただ、と続ける。
赤い瞳で見られれば、より赤い、鮮血のような其れが睨み返す。
「落第街で好き勝手しすぎないで貰えるかしらァ、
幾ら無法の街でも秩序は存在する」
じわり、笑みを張り付け、続く言葉を吐き捨てる。
「やるなら学生街でやってくれないかしらぁ?」
■東郷月新 > 「いやぁ、助かりますなぁ吸血鬼殿。
――実は、小生も同じ考えでしてな。
グランドマスター殿が居ないロストサインは存在しないも同じ。
ま、小生は少しやる事があるのですが」
鎖から解放され、こきこきと肩を鳴らす。
やれやれ、さてあとは――
「斬り抜けるだけ、と」
にたぁと東郷が嗤う。
"殺刃鬼"の本懐だ。
■『室長補佐代理』 > 「マスタークラス二人は流石に『荷が勝ち過ぎる』な」
意味深に、東郷の目を見てそう呟いて、にやりと嗤う。
ウェインライトの凶行にも、内心で賛辞を贈る。
こいつらは腹芸が出来る連中だ。
マスタークラスが二人そろって集まって暴れた。
そのため、治安維持の為に捕縛よりも周辺住民の保護を優先した……という肩書があれば、まぁ最悪逃がしてもこちらの懐は痛まない。
その上で、『治安維持の為に尽力する公権力』をアピールできるのだ。
華は持たせてやるから見逃せ、といっているわけだ。
お互いに悪い話ではない。
「まぁ、『仕方がない』な」
そういって、部下たちに合図をすれば、部下たちは捕縛や捕殺よりも周辺住民と生徒たちの『守護』を優先する動きになる。
■東郷月新 > やれやれ、喰えない男だ。
かつては生徒会執行部の五代、今はこの目の前の男。
公権力の犬というのは、こういう連中が仕切るものらしい。
「吸血鬼殿、"非才者"、行きましょう。
なぁに、彼らも『分かっておりますよ』」
くっくっと軽く嗤いながらその場を立ち去ろうとする。
――最後に東郷は少女に向かって振り返る。
「では失礼しますよ『正義の味方』殿。
――さて、貴女の正義が守るのは、一体誰なのでしょうなぁ」
■瀬田 瑞央 > 「指示通りに。マスター東郷。イオ、此方に戻りなさい」
女は東郷の指示に従い退却の構えをとり、自動歩兵を呼び戻す。
それはさながら、二人目の人形のようにも見える。
「賢しく動くのも公安の努め、ですか。政治向きの話もお好きなようで。そのことは記憶しておきましょう。」
■ウェインライト > 「おや」
どうやら鎖を破壊する意味はなかったか。
精々時間を稼ぐ程度の意味しかなかったと見える。
それでも出てきた意味ぐらいはあるだろう。
言ったからには果たさねばなるまい。
「僕は僕の生くるを往くのみさ。アデュー、委員会諸君」
「フーム、これでは義理を果たしたことにはならなそうだね?」
美を賞賛する者。その正しき審美眼が、今誰がロストサインの関係者かを見抜く。
直後、ウェインライトの腹部から、甲高い金属音が響き渡った。
――閃光手榴弾。影を操る異能者を制圧させるためのとっておき。
そんなものをどこかから入手したウェインライトは、
ロストサインのメンバーの視界をかばうようにしてばら撒いた。
炸裂/閃光/発熱
殺傷力がないものの、急激な熱がウェインライトを襲い。
ロストサイン以外のものには強烈な閃光が襲うだろう。
――もちろん。そのような"兵器"が目の前で炸裂して。
今のひ弱な吸血鬼が耐えられるわけもない。
己に降り注ぐ光を"消失"させながら、ウェインライトはあっという間に消滅する。
■『室長補佐代理』 >
おっと、『逃がした』言い訳までくれるのか。サービスがいいな。
そんなことを男は内心で嘯きながら、わざとらしく目を背ける。
■薄野ツヅラ >
ぎゅう、と目を瞑る。
舌打ち交じりに東郷の言葉に、小さく返す。
「ボクはボクを守れれば其れでいいわぁ──……」
■東郷月新 > 閃光に紛れて立ち去るが。
後で振り返ってウェインライトが消滅しているのを知り、驚愕したそうな。
ご案内:「落第街大通り」から東郷月新さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からウェインライトさんが去りました。
■瀬田 瑞央 > 閃光を受け、自動歩兵とともにその場を後にする。
一瞬、消え行くウェインライトを目撃するが……きっと気のせいだ、と思うことにした。
ご案内:「落第街大通り」から瀬田 瑞央さんが去りました。
■『室長補佐代理』 > 「いったか。いや、惜しかったな」
わざとらしくそういいながら、肩を竦める。
瀬田の置き土産で暴走したチンピラたちを『わざ』と住民の目前で射殺する兵士達の様子をみて、若干満足気に微笑んだ。
これで、『恐怖』と『安堵』の両方をこの町に齎すことができる。
心に刻みつける経験以上の法など存在しない。
それらが容易く得られるのだ。
まぁ、悪くない『司法取引』だといえる。
■『室長補佐代理』 > 「俺はもう現場指示が終わったらあとはこいつらに任せて引き上げるが、お前らはどうする?」
一同にそう問いかけ、薄く嗤う。
■薄野ツヅラ >
「ンッンー──……
此処でとっ捕まえて"先輩"の一件から公安の評価を引き上げてやろう、
なんて思ったのだけれどぉ──……」
全く悔しさを感じさせない様子で「悔しいなァ」と。
『室長補佐代理』の問いを聞けばやれやれ、と肩を竦める。
「ボクもこんなとこに長居する気はないわぁ──……
其れとドーモ。来てもらって助かったのは事実だしぃ」
不服そうに礼をひとつ。
■エルピス > へたり込んでいた事もあり、閃光の類は大して影響を受けず。
――と言うか泣いてたので、それすら意する事も出来なかった、と言うべきか。
――『わざ』と住民の目前で射殺する兵士達は、この鋼の少女には少々刺激が強かったのだろう。
……割り切れない弱さでもあり、優しさでもあり、甘さである。
アレを、騒動を起こした"彼女は"腐敗と呼んで、実行に移したのだろうか。
……一度あの騒動に関わって良かった、と切に思う。アレを、見ていなければ。
……形は変われど、どこかで心の平衡を失い破綻し、大犯罪となるような似たようなことをしでかしたかもしれない。
「……」
泣き止みはしたが、立ち上がる余力は無さそうだ。
この英雄機――鋼の少女には、涙を流す機能は残っているらしい。
(……だめだ、あの騒動を起こした女の人……後で知ったけど、クロノスさんって言うんだっけ。
……あのお姉さんの気持ちも分かるけど、アレを見て、止めようとしたボクは。できないし、しちゃいけない。)
問いかけられた、言葉には、応えなかった。
『どうする』か。今はそれを答えられなかった、のかもしれない。
……単に、今どうするか程度の意味だと、しても。
■『室長補佐代理』 > 「何、可愛い後輩のためだ。大した事はしてねぇさ。
それに……まぁ、今回はここに俺達が間に合っただけでも十分さ」
町の小さな騒動に対しても対応できる軍事力とその威力。
それを、住民と……一般の公安委員にも十分に知らせることができた。
示威行為としては十二分な効果といえる。
一発の銃弾は一人の人間しか殺せない。
だが、一度の恐怖はそれを見た全ての人間を震撼させる。
理想の法は、それに殉ずる人間が自発的にそれを守ることを一種の完成とする。
ならば、自発的にそれを行わなければどうなるのか……?
いちいち実行する必要はない。
イメージさせることができたなら、もうそれでいいのだ。
「そこの女子。帰れないなら、送ってやろうか」
そういって、左手をあげると、兵士たちがエルピスを囲み、優しく声をかけてくれる。
先ほどまで、障害を『排除』していたその手を伸ばして。
■エルピス > ……怯えながらも、手に触れる。。
恐怖しているし、許せないと思おう、でも公安としては、必要な正義だったのかもしれないとも、分からなくもない。
……差し伸ばされた手を取る。
「ご、ごめんなさい。取り乱しちゃって……」
取り繕いつつもあるが、手を取る。考えている事は、隅に置く。今ぶつけるものでも、あるまい。
混乱していた所に優しくされる、のは、つい縋ってしまうほどには、暖かく、甘い誘いなのである。
……それそのものは、エルピスも嫌いじゃない。
だから、『排除』していた手を、取る。戸惑いながらも――
――この『甘さ』を裏切りたくないから。それが偽でも策でも不器用でも、裏切りたくないと。
■『室長補佐代理』 > 「まぁ無理もない。『マスタークラス』二人を相手にしてしまってはな。俺も足がすくんだよ」
本当にわざとらしくそういって、肩を竦める。
あくまで『そういう事』になるのだ、これは。
兵士たちが、エルピスに優しく声をかける。
清潔な飲料水の入った水筒を渡し、何人もが優しく支えてくれている。
手を優しく握り返して、その身の安否を気遣ってくれる。
しかし、それは当然なのだ。
彼らは、ただの兵士だ。中身は人間だ。
なら、それは当然のことなのだ。
それすらも、時に利用する何者かが、この島にはいるというだけのことだ。
■薄野ツヅラ > ぼんやりと、ただただぼんやりと眺める。
『普通の公安委員』ならこう云う反応を返すのか、と。
知らぬ間に随分と狂ってしまったらしい自分の価値観を測りながら、
手を伸ばすエルピスを見遣る。
特に何を云うでもなく、ポシェットから
チュッパチャップスを取り出して乱雑に口に放る。
相互に利用して、二枚舌の如く表と裏を使い分ける公安を眺める。
されど特に何を疑問に思うこともなかった。
クロノスを使い潰したこと自体には反感はあるものの、
二枚舌なことは『当然』だと思っていた。
あくまで落第街の人間だ。
自分も似たようなことをして、誰かに依存して生きる。
■『室長補佐代理』 > 「さて、それじゃあ行くか」
踵を返して、状況を背に歩き出す。
「能見さゆり。あと始末は頼んだ。もう、俺の仕事は済んだからな」
そう、一言意味深に含んでから去って行った。
■能見さゆり > 私としてぇは……わざわざ逃がしに来ていただけたと報告書を書きに帰るだけですかね
【室長補佐代理。コイツがいるということは騒ぎはまだ公安にとって必要なのだろう
この埋め合わせはどう示したものかは知らないが、その事実自体は仕方がない
とりあえず言うだけなら楽でいい】
■薄野ツヅラ > ふああ、と怠そうに欠伸をひとつ。
「後片付けはお願いしますね、能見さん」
にこりと小さく微笑んで、ロフスアンドクラッチをつきながら
『室長代理補佐』の背中を追った。
■能見さゆり > ……私に任せて、手柄を譲るから見逃せ、ですか
コレはコレはご丁寧に
【室長補佐代理に憎まれ口と笑顔を忘れない
あとは任せたといっても、収集する事態などもう残っているわけでもない
つまりは横車への迷惑料だ
全くやってくれる、至れり尽くせりだ】
■エルピス > ――気遣われれば申し訳なさそうに、頷いたり、応える。
精神も大分落ち着いてきた。――比較的早く落ち着きを見せたのは、
やはり、知識や理論としては識っているのだろう。
それでも鋼の少女はあのような光景にも感情を乱し、泣き、混乱する。
同時に、どのような甘い手や差し伸べられたものでも、それを受け止める。
……『分かっていても』。鋼の少女の感情や内心を説明するには、此れに尽きる。
『闇』は『光』の為にある――
――【『恐怖』と『安堵』や、見せしめや裏の手が平和や治安の為に必要】と分かっていても認めたくないし、
『光』が『闇』の為に利用される――
――【『甘さ』『人間そのもの』それすらも、時に利用する何者かが、この島にはいる】としても
――甘さや人を利用する為の、道具としての甘さすら否定したくない。
「あ、ありがとうざいました。え、えっと……あなたさま……?」
なんて呼べばいいのか分からなかったので、去る彼をそうよんだ。
なんかこう、上の人っぽいし、優しいし、尊敬や畏怖が色々混ざって、こうなった。
■『室長補佐代理』 > 「逃がしただなんてとんでもない。あの状況では『仕方がなかった』だけさ」
薄笑いを残して、去っていく。
「クレバーにいこうぜ。何事もな。
手柄だのなんだのなんて話は……口に出すもんじゃないぜ?」
左手だけを、ひらひらと振り、部下を伴って。
■『室長補佐代理』 > エルピスの問いにも、顔もむけずに答える。
「公安委員会直轄第二特別教室 調査部別室 室長補佐代理。
あいにくと、名前は公的な場では名乗れない。それで覚えておいてくれ」
そういって、今度こそその場を後にした。
ご案内:「落第街大通り」から『室長補佐代理』さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から薄野ツヅラさんが去りました。
■エルピス > 「う、うん。室長補佐代理さん。」
……そう言って、見送った。
(……暖かった、けどボクは……
【これからどうするべき】なんだろう?)
去った彼を見送る。
……彼、室長代理補佐のした事は、認めたくない。優しくされたのは嬉しいけど、許せない、とも言える。
実際に手を下したのはあの兵士達だが、そのシンボルとして意識している故に、彼に矛先が向く。
落ち着いた思考回路で少し考え始めたが――疲労が著しい。
エネルギーも、大分少ない。
「……あ、あの、風紀委員のお姉さんも、ありがとうございました。」
ぺこり、と、頭を下げる。
■能見さゆり > 残らない側になりましたか。ツヅラ。
殺す側にならないよう、気をつけてくださいね?
【ツヅラが変わった、そう感じる
もしかしたら思考停止かもしれないし、もしかしたら自分を曲げる方法を覚えたのかもしれない
何にせよ、しばらく見守ろうと思う】
すいませんね
不思議なことにあなたに関してはデリカシーが無いようですし、コレも事態収拾の一貫ですので
【くすくすと、にこやかに見送った
その、自覚なしに人を押しつぶす、自身も含めて押しつぶす、そのやり方に
コイツも……やはり公安の二課だと認識した】
……どういたしまして
コレも仕事ですから
【実際そうだったし、それ以上でもそれ以下でもない
ただ、今日からは友人とマスターのための落第街、そう思う】
■エルピス > 「……それでも……言いたくて……ありがとございました。
……ボクはエルピスと名乗っています。宜しく、お願いします。」
そう言って、頭を下げた。
■能見さゆり > ……はい、よろしくお願いします
【いつもの笑顔で会釈を返す】
さて、私はだいぶ後始末がありますから。
使わなかった罠を引き上げないといけませんからね
……先読みはいいのですが設置はコレが面倒なんですよ
【ぼやく
正直面倒臭いというか何の得にもならない
落第街の連中がスタングレネードに引っかかったところで別にどうでもいいし……
細路地に通したワイヤーだって物干しに使えるかもしれない
……ほんとにどうでもいいと思っているため、作業をしなくていい理由を捏造しては却下する】
■エルピス > 一瞬手伝おうと思ったが、消耗もあればそこまで造詣に深くない。
『今後使ってみても』いいかもしれないぐらいは思ったが、
今この時点での知識は乏しい。
故に、この具合では余計なお節介にもなると判断すれば、
くるりと踵を返した。
「うん。それじゃあボクは、行きます。では、またねです。」
……ふらふらと低空を飛びながら、その場を後にする。
ご案内:「落第街大通り」からエルピスさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から能見さゆりさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に神宮司ちはやさんが現れました。
■神宮司ちはや > (カフェテラスの衝撃的な出来事から逃げに逃げ、
とにかく遠くへ行ってしまいたい一心で電車を乗り継ぎ
気づけば自分には一生縁がないと思っていた場所に来てしまった。
どこをどう走ったかよく覚えていない。
素直に寮へ逃げ帰ってしまえばよかったのだが、
もしかしたら誰かに泣き顔を見られてしまうのではと思ってそれが嫌だった。
事情を話すにも今は誰にも話したくない。)
■神宮司ちはや > (ふと周りを見るとあまり素行の良くない人や
見たことのない種族たちが通り過ぎる。
軒に並ぶ店はどれも派手なネオンやら異国の文字が目を引き
スプレー缶で壁に落書きしたような跡がいたるところにある。
どう見ても自分はこの場に浮きすぎている。
すれ違う人々が胡散臭そうにこちらを振り返る。
知らずに足が震え、身体がふらつく。だるい。お腹すいた。)
■神宮司ちはや > (目立たない物陰の壁に手をついて身を寄せる。
はぁはぁと荒い息で胸を押さえた。
ずっと胸の中がちくちくして痛いし、胃がひっくり返そうな不快感を感じる。
頭のなかでは楓が見知らぬ男子生徒に嬉しそうに腕を絡める姿と
昨日見せた純粋な少女の泣き顔が交互に現れる。)
■神宮司ちはや > (この間出会ったばかりで、本当にまだ楓とは
一度一緒に出かけただけの仲だ。
だから別に、楓がちはや以外の誰かと懇意になっていたとしても
それはしかたがないのだ。
だって美人で胸も大きくてスタイルも良くておっとりしていて
男の人をたててくれそうな和風美人で会話だって上手だしあんなにお弁当だって美味しく作れるし……
結局、彼女に対して勝手に憧れが募ってしまっただけなのだ。
考えてみれば当然だけど、自分なんかじゃ相手に吊り合わないし、相応しくない。)
■神宮司ちはや > (そうやって諦めよう諦めようと思いだすたびに涙がこみ上げてくる。
苦しい、悔しい、情けない。
一生懸命両の手で涙を拭い、ふらつく足でこの通りの出口を見つけようと歩き出す。
帰ろう。帰って寝て、ああでもまた明日は学校だ。
せっかく体験入部した式典委員会はどうしよう。
楓さんと顔を合わせる勇気がない。
でも入りたいと自分で言った手前、ここで投げ出すのも失礼に当たる気がする。)
■神宮司ちはや > (仕方がない。委員会で出会ったとしても何でもなかったし
何も見ていなかったと言い張って、それで体験入部の期間が過ぎたらやっぱり自分には荷が重すぎたと言って抜けよう。
楓さんの手腕ならもっと素敵な人が引く手あまただろうし
自分などが居ることで足を引っ張ってしまっても申し訳ない。
そうやって理由を重ねていったら少し諦めるのが楽になった気がした。)
■神宮司ちはや > (とぼとぼと歩き続けていると、ふと周囲に気配を感じる。
ぞっと背筋が寒くなった。この兆候は覚えがある。
”よくないもの”だ。
ここは学生街よりももっと濁っていて淀んでいて
いつもならすぐに分かりそうな気配も周囲に紛れて分からなかったのだ。
いつもよりもずっとずっと、近くにいる。)
■神宮司ちはや > (焦って周囲を伺うが皆一様に無関心な様子で通り過ぎて行く。
どうしよう、誰かに助けを求めるか?でも誰に?
ぞろぞろと”それら”が近寄ってくる。
ビルの隙間から、路地裏から、側溝の下から、あるいは窓ガラスに映る影に。
ちはやをじっと見つめている。手招きしている。欲している。)
ご案内:「落第街大通り」に正親町三条楓さんが現れました。
■神宮司ちはや > (恐怖で青ざめ、とにかく逃げなければと足を動かした。
すれ違う相手にぶつかって、怒鳴りつけられてもそれどころではない。
一度”よくないもの”に捕まってしまったらダメなのだ。
何が起こるかわからないから怖い。本能が危機を告げる。
細い路地を駆けて、隙間をくぐり抜け、何やら怪しい店の中すら通り抜ける。)
■正親町三条楓 > あぁ、なんという事だろう。
ちはやに会おうと、その足跡を辿れば。
なんと、向かったらしい先が、落第街とは!
(――お願い、なんとか無事で)
祈るような気持ちで落第街の入り口をくぐる。
どうか、奥まで行っていませんように――
だが、幸運は楓に味方したのだろうか。
落第街の入り口で、細い路地へと入るあの姿は――
「――ちはや君!」
急いでその後を追う。
■神宮司ちはや > (ふと、誰かに呼びかけられた気がした。
でも気のせいだ、だってこんな所に知りあいなんていない。
あの”よくないもの”たちの唸り声が自分を呼んでいるように聞こえただけだ。
逃げる逃げる逃げる。
だがここの地理に疎いちはやでは逃げ切るには無理があった。
気づくと高い壁に囲まれた路地に行き着いてしまった。
しまった、行き止まりだ。
後ろから自分を追ってくるものの気配がひしめいている。)
■正親町三条楓 > 楓はそんなに運動神経がよくない。
それでも必死に追いかける。
転びそうになり、引っ掛けて制服を破き、よく分からない店の人間に謝りながら。
そうして見つけたちはやは、行き止まりの路地に居る。
あぁ、良かった、すぐにこんな街からは離れないと。
「ちはやく――」
ちはやに向かって走り寄る。
――周りにいる『何か』には、気付いて、いない。
■神宮司ちはや > (怯えきった表情で壁の隅に追いやられる。
どうしよう、もう逃げられない。
すでに目の前には”よくないもの”たちが集っていた。
それはちはやの目には黒いモヤのように映る。
大型の犬くらいで四足のような形をして、身体のいたるところに目玉がぎょろぎょろとついている。
のっそりとした人型の口ばかりついた奴も居る。歯をむき出しにしてちはやを嗤うのだ。
ああ、と呻いてもうだめだと諦めかけたその時
自分へ向かって走ってくる女性がいた。
自分の名前を呼びながら一生懸命走ってくる。
だがその前にいる”よくないもの”たちが彼女に気づいて振り向いた。
ぎょろりと目を楓に向けて迫る。)
楓先輩っ!!だめ!こっちに来ないで!!
(咄嗟にそう叫んだ)
■正親町三条楓 > 「――え?」
気付いた時には、もう遅い。
――正親町三条楓は異能力者である。
その異能、契約遵守<ミスラ・ジャッジ>は条件は厳しいものの強力な異能であり、本人の素養も高い。
故に。
『よくないもの』にとっては、格好の餌となる。
「ひ、や――」
ちはやに向かって、倒れるように。
楓の身体が、地に伏す。
まるで身体の中に何かが入り込んで、食い荒されるような感覚。
そのおぞましさに身を竦め。
■神宮司ちはや > 楓先輩っ!!ああ、だめ、やめて!!
(悲鳴を上げた。
”よくないもの”の内犬型が数匹楓に飛びかかって噛み付く。
楓の魂を食いちぎり貪っては着地して。まさしく狩りの所業。
人型が両手を伸ばしてその破片を体の至るところにある口にばりばりと放り込む。
倒れた楓の体をなんとか受け止め、一緒に転ぶようにとにかく”よくないもの”たちから引き剥がす。
自分の後ろへ隠すように彼女を引きずり、自分が覆いかぶさって庇う。
獲物をとられた”それら”は憤慨した。
次にちはやを狙って襲い掛かってくるのは明白だろう。)
■神宮司ちはや > (震えていたちはやがそっと忍ばせていた扇を持つ。
せめて楓先輩だけでも守らなければ……。
恐怖と闘いながら扇子を広げると、彼女よりも前に出て立ちふさがった。)
■正親町三条楓 > 「ち、は――」
ダメだ、うまく言葉にできない。
まるで魂を削り取られたかのように。
意識が朦朧とする。
吐き気がする。
寒い。
あぁ、どうして。
やっと、やっと――
「――――にげ、て」
必死に意識を保とうとしながら。
楓は夢中でちはやに手を伸ばす。
せめて、ちはやだけでも――
■神宮司ちはや > (空気が変わる気配を感じた”それら”がたじろぐ。
すっと、ひとつ息を吸ったちはやが扇を構え手足を広げた。
汚らしい路地の中で少年が立つとゆっくりと舞い始める。
舞え舞え 巫
耳の飾りを鈴鳴らし
風音(かざね)尋ねて踊りゃんせ
周囲のよどみを祓い清めるように、花の香が広がる。
輝きがちはやの扇を伝って広がる。
空気が入れ替わり、明らかに”よくないもの”たちがひるみはじめた。
ちはやの異能《神楽舞》
自身の周囲をある種の結界で祓い清め、心許した者たちを鼓舞する舞。
だがこれには決して倒す力も追い払う力もない。
ただ暫くの間自分たちへ相手を近づけさせないに過ぎない。)
■正親町三条楓 > あぁ、なんて――
朦朧とする意識の中、楓はちはやを見つめる。
なんて、美しいんだろう――
あの舞を見た時よりも。
いや、その必死さが為せる技なのか。
今のちはやは、これまで見たどんな彼の姿よりも。
凛々しく、美しい。
とくんと。
楓の胸が高鳴った。
■神宮司ちはや > (舞いながらちはやは考える。
どうしよう、このままではいずれ二人共食われてしまう。
楓に目を向けるとぐったりとして力なく伏せている。
ただかろうじて意識はあるようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
自分たちの周囲をうろつきながら決して手を出さない”よくないもの”たち。
暫くの間は舞が終わったとしてもこの効果は残るはず。
誰か助けを呼べるのならそれが一番良いのだが……。
かくなる上は楓をこの結界の中に残し、自分が囮になってあいつらを引きつけるしか無い。
決意を固めると行動は早かった。
楓の魂を慰撫するように舞の効果を彼女に重ねる。
だんだんと寒気が遠退き、暫く後に動けるようになるはずだ。)
楓先輩、おねがい、しっかりして……
(悲痛な思いでそう呼びかける)
■正親町三条楓 > 意識がはっきりとしてくる。
寒気も退いた。
これならなんとか――立てる。
よろりと、なんとか立ち上がる。
――さあ、今度はこちらの番だ。
相手の手の内が読めるなら――方法は、ある。
「ふふ――」
ゆっくりと、ちはやの前に出る。
■神宮司ちはや > 先輩、良かった……
せ、せんぱい?
(立ち上がり自分の前へ歩み出る楓を引き留めようとするが
今舞を中断してはならない。
”よくないもの”が進み出た楓に狙いを付け姿勢を低くした。
ぐっと黒いモヤが伸び始める。)
■正親町三条楓 > 「――幽鬼たちよ」
そっと"よくないもの"に話しかける。
……大丈夫。たとえ概念の存在であろうとも。
その思考に"契約"や"取引"という概念さえあれば。
「この身を捧げるゆえ、どうか静まりたまへ
我が身に入りてこの魂を喰らう事で、どうか黄泉国へと還りたまへ」
――これは賭けだ。
もし、この誘いに応じてこの身に入り込めば。
楓は制服の前をはだけ、素肌を晒し。
舞の結界の外へと出る。
■神宮司ちはや > (今や彼らは楓の目にもはっきりと分かるほどよどみ固まっていた。
話しかけられたと分かった”それら”がざわめく。
果たして楓の賭けは成り立った。
結界の外へと一歩踏み出した彼女へ向けて我先にと”よくないもの”たちが突っ込んでくる。
白い素肌を食い荒らさんとがばりと影がまっぷたつに割れて大口となった。
ちはやがやめてと懇願して絶叫する。)
■正親町三条楓 > 「あ、あぁぁぁ――!」
中に、入ってくる。
"よくないもの"たちが、われ先にと。
中に入り、魂を喰い散らかしている。
――だが、賭けには勝った。
「ふ、ふふ――や、『約束』……まも、って……いただき、ましょうか!」
契約遵守<ミスラ・ジャッジ>は誰も逃さない。
それがたとえ、地獄の悪鬼であろうとも。
異能が発動し、あたりを光が包み込む。
――次の瞬間、"よくない"ものたちは、楓の異能に引きずり込まれ。一匹残らず、黄泉の国へと還る。
楓は再び、その場に崩れ落ちた。
■神宮司ちはや > (場がしん、と静まり返りよどみは跡形もなく楓の中へと還っていった。
崩れ落ちる楓に叫びながらちはやが抱きとめようとして転んだ。
かろうじて滑りこんで楓を受け止めるとぎゅうっとその身を抱きしめる。
はだけた胸元を服で隠し、その上から楓の手と自分の手を重ねて確かめる。
ああ、よかった鼓動はまだある。
ぼろぼろと涙を流しながらちはやは楓を見つめた。)
ああ、なんで……せんぱい、なんでこんなこと……!!
(怒っているのか悲しんでいるのかわからない表情で楓を咎めた。)
■正親町三条楓 > 「あ――」
温かい。
ちはやに抱きとめられているからだろうか。
――"よくないもの"に喰い荒された肌の部分が、黒ずんでいる。
残らないといいな、とぼんやりする頭で考えていると。
ぽたりと。
彼女の頬に、あたたかいものが落ちてくる。
あぁ、こんな自分の為に、泣いてくれているのか……
「……あなたが、無事で、良かった」
かろうじて、それだけ言った。
■神宮司ちはや > (真っ白で少しの曇もない彼女の肌に跡を残してしまった。
大切なモノが永久に失われてしまった悲しみが襲う。
自分の身を引き換えにしてでも守ってくれた彼女になんとお礼を言えばいいのか。
なのに自分は自分の気持ばかり気にして押しつぶされて挙句こんな風に楓を傷つけてしまった。)
ぼ、ぼくなんか無事でなくったってよかったんです!
そんなことより先輩……先輩のほうが大事です……。
大丈夫だから、絶対に楓先輩を助けますから、だからまだいかないで……!
(もう一度彼女を抱きしめるとその体の下に自分の肩を差し入れて支えて歩く。
体格が小柄な自分にはなかなか厳しいが、それでも絶対に離しはしない。
よろめきながら路地を抜ける。
表通りに戻ると周囲を見渡し目的のものを探す。あった。時代錯誤な公衆電話が、ベタベタと汚いシールにはられながらも道の端にぽつんと残っていた。
楓を連れてそれの受話器を取る。あいにくと自分は携帯端末など持っていない。
果たして繋がっているだろうか。通話可能な電子音が耳元で鳴れば、死に物狂いでボタンを押した。
うろ覚えの番号は風紀委員会の110番だった気がする。繋がれ、繋がれ――)
■正親町三条楓 > 彼が必死に支えてくれる。
あぁ、もう少し小柄だったら、彼も楽だったろうにな。
――ちはやの事ばかりが頭を巡る。
本当に、私は――
意識が朦朧としてくる。
……もし、自分が死んだら、彼は悲しんでくれるだろうか。
でも、彼が泣くのはイヤだな。
取りとめもない考えばかりが、浮かんでは、消える。
■神宮司ちはや > (プツリと呼び出し音が消え、事務的な女性の声がこちら風紀委員連絡局窓口ですと応えた。
繋がった!)
落第街の大通り、近くに電気屋さんみたいなお店がある近くの公衆電話に怪我人が居るんです……
幽霊みたいなのに襲われて、ええ……はい、すぐに来てください。おねがいします……!
(連絡をつけると、その場に座り込み楓を抱え直す。
もし誰かに仕掛けられても絶対に楓を守ると決意した顔でぐっと力を込めた。)
せんぱい、風紀のひとがきてくださいます。
だからもう少しだけ頑張って……
(自分も辛いが楓はもっと辛いだろう。
彼女の意識が途切れないように必死に話しかける。)
■正親町三条楓 > ――うん、いい顔だ。
少しだけ、男の顔になった、かな。
などと思いながら。
寒い。
身体が、寒い。
凍えそうに――
無意識に、ちはやに縋る。
温もりを求めて。
■神宮司ちはや > せんぱい?せんぱい、返事して……
おねがい……!
(必死に揺さぶり呼びかける。
自分の体にすがる楓にぎゅっと抱き返して応え
自身の上着を彼女の体にかける。
体温が下がっている気がする。ああ、だめだ。)
せんぱい!かえでせんぱい!おねがいやだ、いっちゃやだ!!
■正親町三条楓 > あぁ、声が出ない。
彼に言いたい事があるのに。
どうして――
「――――」
声にならない。
意識が奈落に飲まれようとしている。
あぁ――怖い。
二度と会えないような気がして。
必死にちはやを抱きしめようとするが。
その力は、恐ろしく弱い。
ご案内:「落第街大通り」から正親町三条楓さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に正親町三条楓さんが現れました。
■神宮司ちはや > 先輩……
(このままじゃだめだ。先輩が消えてしまう。
絶対にそれだけは嫌だ。
そうしてちはやは自分にできるたった一つの最後の方法を取る。
しっかりと楓の手を握り、そっと彼女の額と自身の額を合わせ、黒い跡が残る胸へ手を置く。)
ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ――
異能《人身供犠》を発動、死者蘇生の言霊といわれる「ひふみ祓詞」を唱え楓の唇へと自身の口を押し付けようとする。
捧げるものは自分の魂、強化するのは彼女の生命の灯火。
祈るように彼女を奈落から呼び返す。
■正親町三条楓 > ふっと。
身体が、温かくなる。
あぁ、なんだろう、この温もりは――
そして、そっと目を覚ませば。
目の前に、ちはやの顔があった。
え、私。
キス、してる?
「――――!?」
■神宮司ちはや > (人工呼吸のように楓の中へ自分の温かいものを吹き込む。
彼女が目を覚ませば、そっとくちづけを止め顔を離す。
潤んだ瞳がじっと楓を見つめ、目を細めた。)
ああ、せんぱい、良かった――
(ここにきて心の底から安堵した笑顔を見せ、
そして張り詰めた気がついに切れたのか楓の方へと倒れこむ。
遠くから人がやってくる気配がする。おそらく先ほど呼んだ風紀委員だろう。
自分たちを探しているようだ。)
■正親町三条楓 > あぁ、そうか。
彼が、助けてくれたのか。
「――ん」
彼をそっと抱きしめる。
起きたら、色々な事を話そう。
――汚い自分も含めて、全部。
話してしまおう。
それを決意して。
楓もまた、彼の胸の中で意識を手放した。
■神宮司ちはや > (抱き合ったまま意識を失った二人を見つけて
風紀委員が即座に保護した。
すぐに保険課の応援人員も来て、二人を担架に乗せていく。
すぐに回りは人だかりで埋まってきてしまった。
次に目が覚めるならば病院の病室だろう。
話が出来るのはきっと二人が目覚めてからだろうが。)
ご案内:「落第街大通り」から神宮司ちはやさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から正親町三条楓さんが去りました。