2016/05/22 のログ
水月エニィ > 「大好きよ。私は性格悪いから。
 ……まぁ後日にしましょ。少なくても立ち話する事でもないわね。

 ほら、表に出るわよ。仕切り直しましょ。別にそっちのままでもいいけれど、
 表でそんな目をするのは、厭なんでしょう。朔、だったよね。名前。」

 ぽん、と、軽く背中を叩こうとしてみる。

(……さっきと随分印象が違うわね。)

鞍吹 朔 > 「………。そう。
 ええ、行きましょうか、水月さん。」

ふぅ、とため息をついて、その手を引く。外套が照らす表面へと、少女を連れ出す。
ああ、なんて滑稽なのだろう。出来損ないの人狼(ワーウルフ)が、森で傷ついた赤ずきんを助け出すなんて。
そんなことを思いながら、背中を叩かれればそのまま前へ歩き出す。

「此処から先は、落第街の治外法権域から脱しています。
 面倒な相手でないただのチンピラ程度なら、こちら側で問題を起こすことはないでしょう。」

口調が、元に戻った。そういう使い分けなのだろう。

水月エニィ >  
 
「そうよ。何時でも聞ける位のものはあるわよ。
 何故かは、何でかしらね。自分が不幸に慣れる為かしら。欲かしら。
 かもしれないわね。まぁいいわ。……ええ。行きましょう。鞍吹さん。」
 
 冗句を畳むよう投げかけてから、表に出る。
 ……自分では人と接する事は得意と思っていないが、ここは虚勢を掛ける。
 "いつだって全力で人と接する"から次第点はもぎりとれる。それくらいの認識である。

(……まぁ、最近は少し楽になってきたけれど。ハルナのせいね。)

 統合されたもう一つの歴史を思い出しながら、ゆっくりと歩く。

「そうね。……有難う。助かったわ。朔さん。」

 言葉と共に、大きく頭を下げた。

鞍吹 朔 > 「どういたしまして。
 形振り構わず追ってくる可能性もないわけではないので、可能なかぎり早く帰宅することをおすすめします。」

そう言って、自らも表へ。
そして、エニィの顔を覗きこむ。

「『他人の悲劇は、常にうんざりするほど月並みである。』
 ……下手なB級映画がお好きなら、連絡をどうぞ。」

そう言って振り向き、エニィが行くであろう方向に背を向けて歩き出した。

水月エニィ > 「それでも悲劇なのは、自然な反応よ。
 ……じゃあ、また明日。」


 軽く手を挙げてみせてから、その場を立ち去っただろう。

(痛むでしょうけど、シャワーを浴びたいわね。
 ……かすり傷と言えばかすり傷だけど、服は替えがいるわね。)

「全く。本当に――」

 出かかった怨嗟を飲み込み、堪える。
 不幸や痛み・悪徳に思うところはある。
 危害を加えてきたあいつらに嫌なものがないかと言えば嘘になる。
 彼女に思うところもある。恨めしいものもある。

 ……それらを飲み込んで堪えれば。何時も通りのような態度で歩き出した。

ご案内:「落第街大通り」から水月エニィさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から鞍吹 朔さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に蕎麦屋さんが現れました。
蕎麦屋 > 大通りの隅に夜鳴き蕎麦の屋台が一つ。屋号は見当たらないが、かけ蕎麦100円、と流麗な筆文字で貼ってある。
屋台の他には幾つかの簡易テーブルが一つと椅子も一緒に。提灯に灯った火が、周囲を明るく照らしている。

「毎度ー、かけ一つお待ち。」

切り盛りするのは並の男よりも頭一つ分以上背の高い、女。
客は一人か二人か。ぼつぼつ、といった入り具合。

そもそも治安の只管に悪い場所でかけ蕎麦を食おうなんて酔狂な人間がいるだけでも驚くべきだろうか。

蕎麦屋 > 「はい?――ああ、有り難うございます。気に入っていただけたら何よりで。」

桶に張った水で器を洗いながら、客の声に答える。
この何気ない会話が楽しいのだ、といって何人に通じるのか。

「はい、毎度。今後ともご贔屓に。」

最後の客が席を立つ。少々悩む時間帯。
ネタはあるが、今日はそろそろ店じまいか。河岸を変えてもう少し、商うか。
もう少し人入りの良い場所で、といった所でそもそもが非合法の居住者である。河岸を移すにはまだ早い時間帯。

蕎麦屋 > 「さて――」

客の残した器を下げ、洗う。提灯の明かりが揺れる。
辺りには人の姿も見えず、これ以上の客が来る気配も今のところはない。

「こういう日はなにかしら。と思ったんですがね」

色々な意味で見当を違えたようだ。
器を洗い終え、清潔な布で拭く。片づけてしまえば手持無沙汰。

蕎麦屋 > 「誰か来ないものですか、ねぇ?厄介事は御免被りますけれど。」

見回したところで人が沸くわけでもないのだが。ついつい見てしまうのは人間の性で。

「変なものは出していないのですけれど。」

暇だとついつい独り言も漏れ出すというもの。

そう。蕎麦自体は典型的な二八蕎麦。素材から手間暇掛けて打った手打ち。
出汁も鰹節と昆布から。返しも自前。
産地は明かせない、というと逃げる客も多いので、やはりそれなりに胡散臭く見えるのだろう。

「疑り深いのは町の性格でしょうが。やですよねぇ。」

美味しいのに。

蕎麦屋 > 「河岸、変えますかねぇ。」

これ以上待ったところでどうも客は入りそうにない。
諦めて、出していたテーブルと椅子を折り畳んで屋台に乗っける。

「――っせい。」

掛け声一つ。
軽く持ち上げた屋台の下、土にはしっかりと跡がついていた。
歩きだせば、軒先に吊るされた風鈴が澄んだ音を立てて――

夜の中に、消えていく。

ご案内:「落第街大通り」から蕎麦屋さんが去りました。