2016/06/18 のログ
ナナミ > (えっと、水月……だっけ。)

フードの奥で二、三度目を瞬かせる。
この場に随分と似つかわしくない様な、と言えばそうでもないが。
身なりを見れば、だいぶ着衣が乱れてた痕跡がある。
何か面倒な事に巻き込まれでもしたのだろうか、と小さく嘆息し

「……おい、おーい。 何してんだ、お前。」

こほん、と咳払いをして。
静かに駆け寄ると声を掛けた。

水月エニィ > 「あら。……何処で聞いた声のような。」

 退屈そうに物色していた露店もどきから視線を外し、
 こてん、と小首を傾げてみせる。

 何をしているか。そう問われれば人差し指を口に当て、目線を上に逸らして思案するような動きを作って――

「世界がもうちょっと優しくなりますように。
 そんな世界平和の為に邁進してる、とかでどうかしら?」

 わざとらしくすっとぼけたように、冗談にしてみせた言葉を弾ませた。
 

ナナミ > 「何を言ってんだか。」

呆れた様に肩を竦める。
そんなお題目は、七生からしてみても放言だと言わざるを得ない。
少なくとも、この島に来て数ヶ月の少女の口から出るにはあまりにも突飛過ぎる。

「そんなボロボロの状態で、か?
 さすがに身の程を弁えとけ、としか言い様がねーよ。」

せめて上に何か羽織れ、と目のやり場に困りながら告げる。
以前屋上で会った時は気付かなかったが、それなりに曲線の目立つ体型だったんだな、と思いつつ。。

水月エニィ > 「冗談を言ってるのよ。」

 しれっと流しつつ、商品を視線に戻す。
 見覚えのない雑誌――早売りの週刊誌を目ざとく見つければそれを購入した。

「身の程、身の程ねえ……。
 身の程って、何かしら。」

 雑誌の中身とフードの少年を交互に見つつ、
 軽い調子で尋ねてみせた。
 

ナナミ > 「少なくとも、新入生がこんな場所で、そんな状態で言える事じゃねーよって意味だよ。
 鏡でも見てみろよ、ひっでえ有様だぞ。」

続けて何か羽織れと促して、それからカーキ色のズボンのポケットに手を突っ込んだ。
顔の大半を隠すフードからは、辛うじて不機嫌そうに歪められた口元が見えている。

「で、実際のところこんなとこに何しに来たんだよ。」

むす、と謂れも無いのに不機嫌なままに言葉を投げる。

水月エニィ > 「そう? まだマシだと思うけれど。
 ……負け犬に口なしなのは同意するわ。私のようなのが居ると見るに堪えない?」

 不適に笑ってみせれば、やはり雑誌へと向く。
 顔は向けず、読みながら――

「同じような勝ち馬にちょっかい出そうと思ったけど居ないのが一つ。
 もう一つは……ホラーのお約束よろしく聞いたら戻れなくなるかもしれないけど、聞く?」

ナナミ > 「後輩兼ダチがボロボロになってるのを見て喜ぶ趣味は無えの。」

きっぱりと答えてから、やはり不機嫌そうに口をへの字に曲げる。
水月から窺う事は出来ないだろうが、眉根も寄りに寄って一本になりそうなくらいだ。

「そんな言われ方で怖気づく様な学生生活送ってねーんだよ。」

何だよ、言ってみろよと促す。

水月エニィ > 「それは嬉しいわ。
 てっきり排除しに掛かると思ったけれど――。」

 即答してみせるその様は頼もしくもある。
 とは、言え、それはそれで悩ましいものも覚える。
 
「怖気よりも責任の問題よ。まぁいいわ。
 ざっくり言うとこの落第街の地下にどでかい爆弾を兼ねた炉が設置されててそれが気に喰わないけれど出来る事もないしコネクションも足りない。風紀や公安に垂れ込んで所無理矢理動かすにもややこしそう。
 だから無いに等しい手掛かりを探りながら3歩先まで踏んでるようなコネクションを探してたの。
 何時も通り絡まれて、何時も通り逃げられたけれど。後は冷やかし。早売りの週刊誌とか手に入れやすいのよ、ここ。」

 読む? と、 冗談交じりに週刊誌を差し出す。
 受けらなければ再び読め始めるかもしれない。

ナナミ > 「そこまで攻撃的じゃねーの、俺は。
 むしろそれこそ平和の象徴みたいなもんだと思ってるっし。」

真剣みの無い返しに少しだけ不服そうに口を尖らせる。
だから少しだけ冗談めかして返しつつ、そして続く言葉に。

「……この、街の地下に?
 それが本当なら、ややこしそうとか言ってる前に風紀か公安に言っとくべきだと思うんだけど。
 ……そんなコネとか集めたところで、ただの一生徒に出来ることなんて高が知れてるし。
 それどころか、変に単独で嗅ぎ回ってたら、まとめて検挙されても文句言えねえぞ?」

いらない、と差し出された週刊誌を拒否して。
溜息を一つ零すと、フード越しに呆れた様に水月を見つめる。

水月エニィ > 「分かっているわよ。そんなこと。」

 強く、首を振る。

「――たかが知れてる。無駄な抵抗は止めろ、お前なんかに自由はない。
 そんなのは厭だもの。厭なのよ。弱い奴は何も出来ない。強ければ強い程自由に出来る。
 法や正論に従えって言われたらそうするしかないのは分かっているけれど、けれど。」

「――従った所で。通報すれば幸せになれる? 選択できない奴は全ての自由を奪われて死んでいるみたいに生きていれば救われる?
 ――貴方に従えば貴方が助けてくれる? いえ、分かってる。無理しなくてもいいわ。」

 溜めて、言う。
 言えば、首を横に振る。
 苛立たしげにその辺を歩き回りながら、落ち着かない言葉を零す。

「……分かってる。身の程知らずの願いなのは分かっている。
 でも、従っても従わなくても救われないなら、自分が自分を救うしかないじゃない。
 少なくとも、この島以外で生きてきた私は、たとえひとりぼっちで戦っていても従って救われるようには思えなかった。
 それでも、言うのかしら。身の程を弁えろ。通報して縮こまっていろ、って。
 私が【勝てない】となるだけの異能を持っていて、常勝無敗でないから……!」

ナナミ > 「そうじゃなくて──いや、現実はそうだけど。」

傍目に分かるほど苛立つ水月を見て、対照的ともいえるほどに七生は落ち着いて行く。
ここで言い合いを始めたところで時間を無駄にするだけだ。
もし彼女の言う通り、この地区の地下で不穏な動きがあるのだとしたら、
悠長な事は言っていられないだろう。

「お前がこの島に来る前にどんな生き方をしてたかなんて知らないし、
 お前がどんな異能を持ってようとそんな事は関係無い。
 強かろうと、弱かろうと、勝てようと、勝てなかろうと、

 お前が救われるために、お前が犠牲になる道理は無えだろって言ってんだ。
 お前がどんな異能を持ってようが、少なくとも──」

ふぅ、と息を吐いて。
きっと自分の想像も及ばないほどの辛酸を舐めて来たのだとしても、

「──お前が自由になれて、救われて、幸せになれるとしても。
 お前が傷つく様なことは、絶対、ぜったいに、お前の事をダチだと思ってる奴も傷つく。

 そんな事も思いつかないほど弱いんなら、こんな場所に二度と近付かない事をオススメするぜ。」

きっとお前がどうにかしようとしなくとも、誰かがどうにかしてしまうから、と。
冷酷なくらいに淡々と、目の前の少女へと告げていく。

水月エニィ >  
「……有難う。でも、自分を犠牲しているつもりはない。
 自らを助けるしか自らを助ける道が無いから、そうしている。
 助けは待っていてもこないもの。」

 首を振って、無理矢理に笑ってみせる。
 ……それでも抑えきれぬ呪いのような恨み言に引き寄せられ、霊が集う。
 
「言う事に欠いて分からないならここに近づくななど、自分が真理みたいなこと言わないで頂戴。
 ええ、私はとても弱いわよ。だからこそ、その位分かるわよ。
 だから、心配をかけるような事も分からんならお前は何を言っても無駄だと馬鹿にされる筋合いなど、ないッ!

 ――それが分かっていなかったらこんなに当たり前に動いたりなんかしていないもの。
 そして私は、私が傷付くからお前は自由になるなと相手を呪ったりなんかもしない……!
 例え友達がそういうものだと認めても、私は絶対にそうしない……!
 お前の事なんて知らない。私の要求が呑めなければ友達じゃない。それは、私にも言えるけど。」

 吠える。泣きながら、吠える。

「友達一人の自由を認められなくて足を引っ張るなんてしたくない。
 見ているのが厭だからそうするのは分かるけど、それを侮蔑や迫害の理由にするつもりはない。
 口だけの善意だけじゃなくて、嘘だけの建前だけじゃなくて、ちゃんと本当にする……!」

 馬鹿にするなッ!
 半ば泣く喚くような声で、強がる様に吠えてみせる。
 ……言い切ってしまえば、少しだけ落ち着いてみせた。
 大きく、息を吐く。

「……不快になるのは分かるわよ。分からなくもない。振り回されるって言うのはそう言うことだもの。
 ――でも。私の行いが弱いから認められないものなら、私はどうすればいいの?
 ただのお人形なら、好かったの?」

ナナミ > 「……そこまで分かってんならさ。」

ふーー、と細く長く息を吐く。
釣られて此方も感情的になりそうなのを、紛らわせる。
馬鹿になどする気もない、むしろ一人で行動するのは尊敬に値すると思う。
だから、だからこそ、強く思う事がある。

「そこまで分かってて、そこまで考えてて。

 ──その結果が、どうして“一人で”になるんだよ。
 
 お前が、お前を弱いと思うのは勝手だし、いちいち否定する気もねえよ。
 俺だって、俺の事まだまだ弱いと思ってんだから。」

吠える水月に対し、努めて冷ややかに。
怒鳴る事もせず、かと言って宥める事もない声音で投げていく。

「お前が弱いのは勝手だけど、じゃあその弱いお前に関わる奴らはお前と同じくらい弱いのかよ。
 まるっきり信用も出来ないような連中しか居ないのかよ。

 お前がお前を助ける道を、共に進めないような足手まといしか居ねえのかよ。」

フードの奥の目が、険を持って細められる。
そんなはずはない、──自分がそうだから。
自分が自分をどれだけ弱いと思って居ても、自分に笑いかけてくれる友人たちは──

「水月、一年長く此処に居る俺からの経験に基づく忠言だぜ。
 自分を弱いと思ってるなら、足手まといが嫌なら、それでも成し遂げたい事があるなら。

 もっと先生を、先輩を、ダチを頼ってやれ。

        おれたち
 それはきっと、弱い人間だけが使える特権みたいな強さだから。」

俺が言いたいのは、それだけだ。
最後にそう溜息混じりに呟いて、彼女の頭を、何時かしたようにわしゃわしゃと乱雑に撫でようとするだろう。

水月エニィ > 「使えるものは使うし振るときは振る。
 コネクションを繋げる事を軽んじはしない。
 私を認めなくても、利益でも見出せば私が動かしたように動く奴はいる。
 それでもきっと、"一人"で動く事には違いない。」

 首を横に振る。
 "人を使う"ことならば、知らなくもない。

「私と考えが違うのに、私のエゴに従う理由がない。利益にも自由にもならない。
 この場の話で言えば、頼らなければ否定するような事をさせられない。
 ――貴方が身の程を弁えろと言われる大きなエゴを誰かに乗せる事は、きっと簡単な事じゃないわ。
 この世は善意で回されていないから、まずがそうなるように世界を見返さなきゃ、いけないじゃない。
 貴方たちが見捨てたものは捨てたものではないって、認めさせないと――。」

 頭部の左側面――こめかみを抱え、顔を手で覆う。
 きっとわしゃわしゃ撫でられている事でしょう。
 見られないように、顔を覆い。

「……悪かったわね。急に喚き散らして。
 スルーすればよかったのに、どうしてこんな突っかかっちゃったのかしら。
 とりあえず、今日の所は、少し休むわ。」

ナナミ > 「だからさ、なんっかおかしいんだよなお前の言い方。
 多分そういう生き方が染みついてるからだと思うけど。」

七生の言葉に感情が戻る。
少し不満げで、それでいて子供をあやすような
声音は幼ささえ残すそれは、真っ直ぐに水月へと向けられて。

「考えが違うとか、利益とか、自由とか。
 そんなもの関係無く、好きな奴の為だから動けるのがダチってもんだろ?
 お前が独りで何かした結果、ボロボロになるのはとてもつらいし傷つくけど、
 お前が手伝って欲しいって言ったら、多分すげー嬉しいと思うぜ。」

ごちゃごちゃした理屈は解んねえよ、と不満げに口を尖らせて。

「俺が身の程をわきまえろって言ったのはそういう事。
 風紀や公安だって、単独で来ることは無い場所に一人で来ることの無謀さも分からない奴に何が出来るんだよって事。
 弱いんなら、群れなきゃ。いや、弱いからこそ群れなきゃ。」

善意も悪意も知ったこっちゃない、と嘯いて。
フード越しに、水月を見透かすかの様に笑みを浮かべる。

「水月だって、そんな風に言ってても解ってんだろ?
 誰かに頼られることがどんだけ嬉しいか、さ。
 ましてやそれが自分のダチなら尚更だよな。」

へらり。
フードから唯一覗く口元が三日月を描く。

「休むのは良いけど、その前に服ちゃんと着ろよ。」

水月エニィ >  
「理想と現実に矛盾があるんだから、おかしくもなるわよ、
 ……負け続ければこうなれるわよ。」

 声色は明るいものではない。
 そのまま、言葉を続ける。

「打算なしの欲として願ってくれるならそれは理想的な友達だけれど、
 現実的には得難いもの。現実的な友達すら得られなかった私が言う話でもないし、もう居ないとも言えないけれど。そう思うから。」

 ひとしきり撫でられた後、離れてみせる。
 そんなものは夢物語と否定しながらも、続く言葉では肯定してみせる。
 やはり、可笑しい言い回しではあるだろう。

「来ないと来れないの違い、と言うのは本題から外れるから置いておくとしえも、
 ――群れる事ってとっても難しい事ぐらいはきっと分かるでしょうに。
 それでも言ってみせているのは分かるけれど……。」

 呆れ混じりに大きな溜息。
 
「ええ、頼られたらきっと嬉しいでしょう。
 そうでなければ善意や好意を嘘にしたくないて言わない。
 結果として毒を盛られても、電気を流されたとしても嘘を本当にし続ける。
 ……何時しか勝って、強くなって、この世界を見返してやるんだから。」

 強い語気で言い切ってしまえば、背を向けて歩き去ろうと歩を進める。
 その途中、思い出したように止まってみせて。

「今以上の話は、頼るのは少しだけ日を改めさせて頂戴。
 ……流石に、休みたいわ。」

ご案内:「落第街大通り」から水月エニィさんが去りました。
ナナミ > ふん、と小さく鼻が鳴る。
とことんひねくれた奴だなあと去り行く背に呆れ半分で思いつつ。

「居るんじゃん、そういうダチが。
 まあ良いけどさ。別に、お前が何をしたいかなんて、好きにやれよとしか言えないし。」

とっても難しいと言いながらも、その端は掴んでる。
これは筋金入りの……何と言えば良いんだろう。軽く首を傾げれば、此方を振り返った水月に気付き。

「はぁ~……ホント、何て言うのかな。
 いっか、じゃあな水月!風邪ひくなよ!」

そのまま去って行く背を見送って、自分も踵を返してその場を後にしたのだった。

ご案内:「落第街大通り」からナナミさんが去りました。
ご案内:「地下闘技場」にリビドーさんが現れました。
リビドー >  
「偶には身体を動かさんと――と思ってはいたが、さて。」

 ビール片手に観客席から試合を眺めつつ、面白そうな奴は居ないかと試合や客席を一望する。
 ――マッチングを希望する申請も済んでおり、人を待っていると言った体だ。

 今の所、相手は居ない。
 居ないので、ビールを片手にソーセージと皮つきフライドポテトを頬張りながら観戦に興じている。
 
 

リビドー >  
 目の前の試合を観戦しつつ食事を続ける。
 ほどよく温い生ビール。歯ごたえがあり塩気の強いソーセージ。
 整えるように軽く揚げら、ポテトの食感を残したフライドポテト。
 観戦に興じながら酒とつまみを貪るのも悪くない。
 悪くないが。

「ふむ。儲かっているのかな。落第街にしては質も良いじゃないか。
 ……いや、一応試合相手を探しに来たつもりではあるが。」
 
 

リビドー >  
「……」  

 観戦を続ける。
 ……ビールとつまみが切れたので、馬刺しとビールを追加注文。 
 

リビドー >  
「……仕方ない。改めるとしよう。」

 追加の肴を食べ終えれば立ち上がり、思い切って背筋を伸ばす。
 身体をほぐし直した後、その場を立ち去った。
 
 

ご案内:「地下闘技場」からリビドーさんが去りました。