2015/06/17 のログ
ご案内:「路地裏」に湖城惣一さんが現れました。
湖城惣一 >  ふらり、と。男が現れる。長身痩躯。和風かぶれの服装で、腹には真一文字の傷跡。
真新しく、しかし特段血が滲んでいるということはない。
 肩から竹刀袋を引っさげながら、大きく息を吐いて当たりを見回した。
 このところ、風紀の乱れる事案がここで多く発生しているらしい。
見回りは彼の役目ではなかったが、だからといってしないわけでもない。

湖城惣一 > 「…………」
 無言のまま腰をかがめて検分する。争いあった形跡から、何から何まで。
雑多すぎる情報はここがいかに危険な場所であるかを痛感させた。
 ふさがったばかりの傷跡が疼く。痕跡に顔を近づけてみれば濃い血臭すら漂っているようであったが、平然と拳よりも大きな懐からおにぎりを取り出した。

湖城惣一 >  腹が減っては戦はできぬ。
とにかく食べることが彼にとっての一番の治療法だ。
 ここで何があって、どのように血が流れていったのか。
だけでなく、明らかに泥酔して吐き戻された吐瀉物の香りまで鼻を直撃して、
「…………む」
 そこでようやく眉をひそめた。
 とはいえ、検分も進めたいし食事も食べたい。
大抵こういう時に食事を怠ると倒れてしまう。
 おにぎりに丹念にかじりつきながら、淡々と、淡々と状況を確認していく。

ご案内:「路地裏」に虞淵さんが現れました。
虞淵 > ガチガリガリガリガリ

まるで獣の爪がコンクリートを裂くような音が響く

音の先、闇の中から現れるのは巨躯の男
爪音は文字通り、この男の五指が廃ビルの壁を抉っていた音だ

「匂うねェ…極まった匂いだ、何かの道をひたすらに探求した男の匂い…そりゃア、惹かれるよなァ……」

湖城惣一 > 「…………」
 幾人もの異能の痕跡。幾つもの死の香り。
実際に死んだかどうかまでは分からないが、明らかにここは異質の空間と化している。
 供養でも、してやるか。
 そうやって背筋を伸ばした刹那。音は聞こえた。
「…………」
 無表情に視線を向ける。それは、そこに居た。
 ――虞淵。友人の妹をいたぶった男。
 いずれもやりあった経験はないが、むしろ己に"仕事"が回ってこなかったこと自体が不思議な相手。
「来たか」

虞淵 > 「なんだよ、お待ちかねか?俺様もとうとう迎えられるような身分になったか」

くつくつと嘲笑う巨漢。

廃ビルから手を離して、ゆっくりと、歩み寄っていく

湖城惣一 > 「別段、待ってなどいない。気まぐれに"仕事"をしているだけでな」
 叩きつけられる殺意を濃厚に感じているはずだ。だが、こちらは無表情。
いささかの感情の乱れもなく――竹刀袋の紐を解く。
現れたのは名刀でもなく、霊刀でもなく。ただ多くの怪異を切り捨てた凡庸の一刀
 迷わず、懐から短刀を取り出すと、鞘から抜き払う。
「来るならば、公安・風紀として相手になるだけだ」
 この手合は、躊躇すれば死ぬ。故に。やりあうならば最初から"奉納"しなければ話にならない。

虞淵 > 「ふゥん」

成程?

コイツは面白い手合だ
自称達人だの極めただのって連中は幾人も喰い潰して来たが
コイツにはそいつらとは違う"凄み"がある
何かの領域で、天辺を拝んできたツラだ

「来るならば、だと?
 なら俺が行かなきゃ、アンタには俺様を斬り伏せる理由がねェのかい?」

無遠慮、かつ無防備に間合いをつめるが如く、のしりのしりと歩いていく

湖城惣一 > 「生憎とな。俺は君を斬るに足る理由がない。
……俺は、生徒が収拾をつけられん異能者、怪異を斬るのが仕事でな」
 ――言外に。お前は風紀が片付けるだろうと嗤うように。
 依然、ぴくりとも変わらぬ眼差しが虞淵を見据える。
 戦闘態勢を整えたものの、泰然、傲岸とした態度は崩さない。
 最後のおにぎりを口の中に放り込み、咀嚼し、飲み込んだ。

虞淵 > 「そうかそうか、なるほどなァ」
そのまま、巨漢は湖城の目の前まで歩いてくるだろう

「つまりオマエは公安や風紀ドモよりも喰いでがあるってことか」

その立場を自称するのであれば、
少なくとも実力は図抜けてなければいけないはずだ
異能力者が蔓延るこの島で、そこまで言ってのける者はそうはいない

湖城惣一 > 「そそるだろう」
 淡々と。まるで眼前の相手を見ていないかのように、告げる。
 湖城惣一という剣士の心臓が、時を告げる。

 ひ、ふ、み、よ、いつ、むゆ、なな、や、ここのたり。

 身体がひふみを唱え、剣士の身体が切り替わる。開始は一瞬。
己から抜くことはしない。それは"違う"からだ。

 二年という短い期間だが、あらゆる異能者・怪異の類を切って捨て。
常に死と向き合ってきた男は――ただ、己の意識の淵に沈み込む。

虞淵 > 「精神修行の果て、自分自身との戦いにこそ極限を知る東洋の剣術……」
男は見下ろしながら、雄弁に語る

「オマエが今まで積み重ねてきた全てが砕け散っても、俺ァ責任とれねェぜ」

間合い

男の凶暴性が牙を向く
通常の反射神経ではまず反応すら出来ないであろう、音速を超えたボディブローが放たれる

湖城惣一 > 「……………」
 ただ、沈む。沈む。沈む。
 己にとって戦いとは、"己の限界に挑むもの"。
そこに敵は居らず。ただひたすらに沈み込む。
 故に、彼はまともなどではない。
ただ一つ、相手の"意"だけを汲み取り先んじて体をかわした。
 すれ違い背後に回りながら、短刀が湖城惣一の傷跡を切り裂いていく。美しい、真一文字。
「――随神(カムナガラ)」
 それだけで、男は成る。人のまま神域の化け物に。
あふれだす血潮は光と貸し、ただ一つの神と成る。
 刀を、抜いた。

虞淵 > 「───はッ!」
男が嘲笑う
コイツは楽しそうな相手だと
久方ぶりに"じゃれあえる"相手だと

地面が抉れるほどの回転力で背後にまわった湖城へ回転蹴り…否、軌道からすればそれは踵落としに近い
まるでプレス重機のような剛脚が降り掛かる

湖城惣一 >  彼の"神域"は期間限定だ。
漏れ出る血潮は今も光として霧散し。
湖城の首を刈らんと死神が鎌を首へと寄せている。
 しかし、であるならば。
「…………シッ!」
 細く息を漏らし、それを"すんで"で回避する。
直撃すれば死は免れない。打ち付ける飛礫を問題にしてはならない。
 目の前の男は、ただそれだけで神の威容に匹敵する。
 故に。
 軌道は最短で。相手の意識を向けぬ"無意"の剣。
かわし、ひねり、土埃を巻き上げながら斬り上げる。
 あらゆる怪異を切り伏せた"ただの剣"。当たれば致命と言わずとも切り裂くことはできるはずだ。

虞淵 > 「ククッ!このタイミングでも紙一重の"余裕"で避ける!
 いいぜェオマエ!けどなァ……」
回避された強烈なストンプは地面に小規模なクレーターを形成し、片礫を巻き上げる
そこに迫る刃を───男は視覚で、砂埃の動きで察知する

金剛脚

クレーターを形成している右足を更に地面へ叩きつけ、指向性のある衝撃波を生み出し、迫る刃に叩きつけた

車の一台くらいなら仰向けに吹っ飛んでいく威力で以って、刃をやり過ごす

「………剣に殺意がねェなァ、勘に頼ってちゃ避け損なうトコだったぜ」

湖城惣一 > 「君は"敵"ではないのでな」
 敵など居ない。ただこの瞬間にも湖城の意識は沈んでいく。
会話に応じているのは、彼の"表層"を撫でるような意識のみ。
 眼前の敵を、敵と思わず。ただ己が神域に届くことだけを目指す。
 彼が死の淵へ近づけば近づくほど、その鋭さは増していく。

 片礫が彼の頬を抉るが、目が見えていれば。
歯を噛みしめることさえできるなら問題ない。
"部位の欠損以外によって、彼は戦闘力を失わない"。
日常を飢餓状態で過ごす湖城という男の、命を賭けた戦いに載せる加護。
 それはただ、己の剣の追求だけに向けられている。

 迫る衝撃波を切り飛ばしながら、なおも湖城は次の一矢を狙う。

虞淵 > 「あくまでも敵は自分自身か、ストイックなことだねェ」
振り散る破片の雨の中で、大地を砕いた剛脚をプラプラと揺らす

「並みのパリングじゃ刀のほうがブッ飛んでくとこだってのに、いいねえ。
 オマエ相手にはそこまで露骨な加減はいらなさそうだ……」

ドンッ

大地を再び揺らす強烈な震脚
男が腰を下ろした構えをとる

両腕で円を描くようにして、腰に据え───

「───六合鋼線砲ッッ」

裂帛の気合と共に両腕から撃ちだされる巨大な衝撃の塊
狭い路地、左右の建造部を圧し曲げながら、湖城へと迫る──!

湖城惣一 >  震脚と、円運動。
大きな隙だ。狙うに不可能ではないその速度。
しかし。ダメだ。"深さ"が足りない。
 こちらが態勢を戻した時点で衝撃波が迫る。
「お互い様だろう。……馬鹿げた功夫だな」
 どれだけの研鑽か。外功か内功かなど最早些細に感じるほどの波濤。
正面から受けては、切り飛ばしたとて刀が持つまい。
 ならば、むしろ相手の一撃を利用する。
 へし折れる廃ビルに足をかけ、更に"ひび"を足場に疾走する。 
「ひ、ふ、み、よ、いつ、むゆ、なな、や」
 目の前の男は最早暴力。一個の災害。
衝撃波が背後へ着弾し、湖城の身体が煽られるように"飛んだ"。
「ここの、たり」
 風とともに足を踏み込み。一矢と成った湖城が、身体を閃かせながら空から男の背中を狙う。

虞淵 > 「──だろう?お遊びにはいい技だ」

流石にコレでは紙一重ってわけにはいかねえだろうと、派手な一発を使った
…実に冷静な判断力と回避運動
そしてそれを追撃へと無駄なく利用してくる

───が、この男・
これだけの体躯を持ちながら存外に素早い
ネコ科の猛獣を軽く超える瞬発力とバネ、
巨躯がまるでブレるように、その場から…今度はこちらが紙一重の回避を為して見せる

「惜しかったな、実はこう見えて避けるのもうまかったりするんだぜ」
なんならもう何発か試してみるかい、と軽口を叩く

湖城惣一 >  これも無駄だった。なるほど、ただの筋肉ダルマというわけではないらしい。
当たり前の話だ。"ただの"手合が、この15年を生き延びるわけがない。
 ならば、必殺は狙えない。いまだ傷ひとつつかぬ男を前に、ここで体勢を立てなおしてはこの流れが繰り返されるのみ。
「――――」
 沈んだ。意識の底に。"神域"と呼ばれるその領域に、完全に入り込む。
 ――時間にして、あと四分ほどしかないであろうその時間に己の剣を賭す。

 曲芸は当たるわけがない。ならば本来の戦いに挑むのみ。
最短最速、相手の呼吸の間隙を縫って刃を突き出す。
 線で駄目ならば。点で攻める。

虞淵 > 「ハッ───」

いいね

もはや軽口も届かないくらいに意識の海に沈んだのか

実にいいね

剣の域というものは底が知れない
最終的には剣と完全に同調同化するなんてオカルトな話しもあるくらいだ

ま、そんなオカルトが現実になるのがこの島だが

「ハッハァッ!!!」

金剛不壊

鋼の如き筋繊維
異常とも言える筋密度
それに六合の理合は、実にマッチするものであった

両足を地につけ、一穿を迎え撃つ
男の尋常ならざる動体視力はしっかりとその筋を捉える

人間の体、否、生物の肉体を超えるほどに硬く固められた腹筋と
衝撃を散らす重厚な硬質ゴムのような皮膚がその一撃を迎え受った

湖城惣一 >  最短を狙ったがゆえに、その切っ先は届かない。
手の中で刀を返し、刃を上に。
腹に触れただけで刃先は滑り、ただ対手との距離が縮まるばかり。
 ――だが、それでいい。
 相手を貫けぬのならば、穿てる場所を穿てばいい。
湖城と虞淵の身体が、密着しそうなほどに迫る。
刀は男の腹筋、胸筋を滑り――喉元を狙っていた。
 深く、深く。未だに湖城は沈む。

虞淵 > 「流石にそりゃあ───」

金剛の理合によって精錬された筋力は、何も防御専門というわけではない
同時にそれは拳をも強化する
攻防一体の武

「甘 い ぜ ! !」

徒手空拳に対して間合いに優れるはずの剣術
密着してしまえば、回転の速さで拳術に叶う道理はないのだ

せり上がる刀
その横腹目掛けて、豪速の鉄拳を叩きつける───!!

湖城惣一 >  これは死ぬ。
 当たれば死ぬ。
これは、相手の間合いだ。相手の最大の一撃。死線を超えた死線。
 だが。そこで退くことが、果たして正解か?

 ――否。相手にとって必殺であるということは。
こちらにとっても好機であるということ。

 湖城は一歩を踏み込んだ。身体をひねり、まるで虞淵の胸に己の背を預けるように。
鉄拳が、湖城の横腹に叩きつけられる。一層の光が空へと巻き上げられる。
最早、神力ではごまかせぬ血臭とともに、湖城の"中"が吹き飛ばされる。
 だが、それで顔色を変えることはない。ただほんの少し。二分ほど。
己の死に至る時間が短くなっただけ。
 最早突きこむことはできぬ。
まるで逢瀬の恋人のように擦り寄る湖城の剣が、
虞淵の喉元から顎にかけて背負うようにして弧を描いた。

虞淵 > 「───」

巨獣の表情が変わる
喉笛から、口元まで赤い線が走っていた

「……鋼糸でも斬れねェんだがな」
次に見せた表情は歓喜の、笑み
固く硬く刃の侵入を阻害する真新しいタイヤゴムのような皮膚が斬り裂かれ、血を流した
おまけに自身は金剛の理合を使い、明らかに防御力も固めていた
それだけに、目の前のこの男の一閃は鋭かった
過去喰らい尽くした剣豪の中でも、段違いに
"至って"いた

「名前を聞いてなかったぜ」
まるでそれが残念だと言わんばかりに

刹那、一瞬で振るわれた手刀が
音速の豪斧の如く、湖城の腕を目掛けて振るわれる

湖城惣一 > 「湖城、惣一」
 ――血が足りない。友のために"奉納"を行なってから、あまりにも早すぎた。
そのために、目の前の男を殺しきるだけの"深さ"に至る時間がない。
 男の手刀によって愛刀が砕けていく。
もう、十年の付き合いとなるその相棒を未練なく手放して。
それを砕くために生まれた、ほんの一瞬で湖城の身体が"落ちる"。
 地面にひれ伏すように、まるで蛙の如く。身体をたたんだ湖城は、新たな刀を抜いていた。
先ほどのものより幾分か間合いで劣る脇差し。
 それを抜き払いながら地面を転がっていく。

虞淵 > 「湖城、ね…」
新しい赤い線が、今しがた手刀を振るった男の腕に入っている
ぺろりとその血を舐める

「惜しいな。剣術家としちゃあコレ以上ねェってくらいに上等だが…
 使う刀がナマクラじゃあな、魅力が半減だぜ」

男はその意、殺意を消そうともしない
目の前の相手は底が見えた、もうぶっ壊してもいい頃だ
両腕を下げた無防備な姿勢で、距離をとった湖城へと歩み寄っていく

湖城惣一 > 「…………」
 退くか、攻めるか。普通ならばせめぎ合うところだ。
残るところ二分未満。できたのは二度、切り裂いただけ。
こちらの身体は最早満身創痍。術式がなければとっくに意識を消失している。
 だが。

 ――ふるべ。ゆらゆらと、ふるべ。

 いずれの道も無い。底が見えた。確かにそうだ。湖城惣一の"底"はここまでだ。
だが、果たして。意識の底とはどこだ。

 ナマクラと呼ばれた凡庸な脇差しを手に、湖城がゆるりと立ち上がる。
湖城は再び短刀を取り出し、更に真一文字を"縦に引き裂き、その中身を取り出した"。

 ――以ってこれこそ、正しき切腹の作法なれば。残り一分。
最早死すら厭わぬ神域を見せつけよう。

虞淵 > 「!」
歩みを止める

それだけの姿を、目の前の男は見せている

「そうだな」
誰に語りかけるでもなく、
自身が納得するように巨獣が呟いた

相手に命を捨てる覚悟が見えたら
例えそれが女子供であろうと容赦なく殺せ

そんなものは裏街道に生きる人間なら知っていて当然のことだ

"顧みない"力というのは存外に性質が悪い

「何度か楽しめそうなヤツだと思ったんだがなァ…」
そうだ、これきりで食い終わるのはもったいないぐらいだ

「そういうことなら、しゃあねェ」

残念だぜ、と呟き
狂獣、虞淵が構えを取る
先程の六合の構えとは正反対に位置する構え
すなわち表三合に対する裏三合

「魔勁───」

神速の移動術羅刹脚
瞬く間に湖城へと肉薄、禍々しい程の力が込められた貫手をその胸へと───!!

湖城惣一 >  対手の表情。彼の表情に最早遊びはないだろう。
しかし。であるならばこそ。――深く、深く。
 湖城の音の一切が消えた。彼の背後で、"術式"の消える感触。
最早彼には"失血"から身体を保護する力が無く。
 血の味も、獣臭も、音も、手にかえる感触も最早無く。
忘我の淵で剣を構える。
 なんてことはない、ただ相手の一撃に合わせた横薙ぎだ。
 だが。
 これまでのものとは桁が違う。
 人生最深へと――迫る。
「"ひとつ"」
 即死は免れたが、間違いなく胸骨を貫かれた。
貫かれるまま。まるでそれに沿うように。それを吸い込むように。
月夜に照らされた白刃が虞淵の身体を、薙ぐ。

虞淵 > 「───ッ!!」

巨獣の鮮血が噴き出す
胴を薙がんとした刃は、湖城を貫いた貫手をつくる、もう片方の巨獣の腕で防がれていた

防がれていたのだ

ただしその刃は、皮膚を裂き、肉を経ち、骨に至りようやく止まっていた
夥しい出血

「ク…クハハハッ…こいつァ…」
初めて、男がその表情に汗を一筋流した

自然勘とも言うべき反射神経が遅れていれば胴を掻っ捌かれていた
右腕に負ったダメージも、これはおそらく男の過去を遡っても類を見ないものだった

湖城惣一 > 「足らん……か……」

 忘我の淵にあってなお、小さく声を漏らす。
 それでも、彼にはまだ先はあった。
 貫手で塞ぎ、片手で脇差しを防いだのならば。
湖城の腹を割くための短刀。それによって、最後の一撃を加えることも可能だったろう。

――湖城惣一という男の敗因は三つある。

 万全の態勢で"切腹奉納"を果たせなかったこと。
 必死の剣。敗北を知らないが故に、彼の実力に相応しい刀へ変わることがなかったこと。
 ――神域に潜るために、ともに沈む"想い"が無かったこと。

 戦いにおいて、己の剣にしか拠り所を見いだせなかったこの男は、静かに短刀を取り落とす。
 乾いた金属音を立てて短刀が転がっていき。
 徐々に、徐々に。否、急激に。力が抜けていく。

虞淵 > 貫手を引き抜き、右腕を振り払うように刃を振り落とす

「(チッ…)」

他愛のない斬傷ならいつもどおり筋繊維を締めあげて止血するところ、
この深手ではさすがにそれも使えない
シャツを引き裂き、右腕に巻きつける

力なく崩折れていく目の前の湖城という男

「………オイ」

見下ろしながら、声をかける

ご案内:「路地裏」にエアリアさんが現れました。
湖城惣一 > 「…………トドメは刺さんのか。……思ったよりは甘い男だな」

 事実、二の矢(短刀)は残っていた。今の湖城に、三の矢が残っているかもしれないというのに。
 小さく笑い、以降、どうにも言葉が紡げなくなっている。

「…………なん、だ」

 声をかけられれば、答えるのが礼儀であると言わんばかりに声を返す。

虞淵 > 「あァ?」
ガリガリと頭を掻いて

「オマエ俺を殺人鬼かなんかと勘違いしてねェか?
 俺ァただケンカが好き、人をブン殴るのが好きなだけなんだよ。
 喧嘩や勝負の結果として相手が死んじまうのはどうしようもねェこったがな」

あ゛ーーーーーっと気だるげにそう吐き捨てると、巨獣は湖城の体をまるで藁でも抱えるかのように担ぎあげて

「オマエにはまだ先が見えるぜ、次はもっと楽しく遊べる」

エアリア > 【そこへ走りこんでくる、黒塗りの車。
明らかに、普通の車ではないことは一目瞭然だ。一般人が乗るための車ではない。
扉が開けば、そこから悠然とした様子で白い少女が降りてくる。】

戦闘が終わったようですね。
すいません、お取り込み中のところ、少々よろしいでしょうか?

……誠に不躾で勝手ながら、今回の戦い、賭事の対象とさせて頂いておりました。
つきましては、今後失礼のありませんよう、契約をお願いしたく参上した次第です。

いきなりの話ですから、ご要望、ご質問があればなんなりと。
可能な範囲でお答えさせていただきます。

【全身、上から下まで白い少女は深々と礼。どう見ても戦闘力はない。見なくてもわかる。
明らかに場違いかつ上品な態度だが、ある意味この街の別の側面を表しているようでもある】

虞淵 > 「……んだ、テメェは」
訝しげに白い少女を睨めつける

「契約だと?」

何言ってんだこのガキは、そんな表情を浮かべて

湖城惣一 >  湖城は、その剣を振るうとき、一切他者へ関心を向けていなかった。
故に対手の感情など慮ることはなく、虞淵の姿勢についても見誤っていた。
 絶句、したというわけではない。ただ、心奥で軽く笑った。
 いずれも知己の因縁さえなければ、むしろ好感さえもっただろう。
 だが、いずれにせよそろそろ喋る余力はない。
彼女が自分にも問いかけているのかは知らないが、まあメインは虞淵だろう。
 放っておかれれば、事前に己の"限界時間"を知らせておいた保健委員が現れるだろうが、それにはまだ時間が足りない。

エアリア > はい、虞淵様。
最近のご活躍ぶりが話題となりまして、私の関わる組織内での虞淵様の人気が高まり信頼を得るまでに発展した次第です。
良い悪いにかかわらず、これは虞淵様の実力が成した影響だと思ってもらって構いません。

そのため、今回の争いに関しまして、試験的に賭事の対象となりまして、様子を見させて頂いておりました。
この件に関しまして大変不本意かもしれないと思いましたが、このまま虞淵様に何も知らせず続行するのも問題と判断しました。
故に、私共の組織としましては、その告知及び契約に参った次第です。

平たく言えば、賭事の対象とさせてもらいますかわりに、カメラの設置と賭場を開くことをご許可いただければ、という次第です。
代わりに、当組織としては可能な限り虞淵様のご意向に添えますよう尽力いたします。
具体的には、今まで通りの行動と活動を行っていただければ、あとはこちらで勝手に行います。
また、試合ごとにファイトマネーが支払われます。

基本的には以上になります。

【組織と名乗る女は、嘘か本当かわからないが、おおよそ案内と思われることを丁寧に恭しくひと通り話した
湖城には一瞥もくれていない】

虞淵 > 「……ナルホドね」

ぽりぽりと頬を掻く
線のように入った血の痕がぽろりと落ちた
もう治ってきてる

「んじゃとりあえず詳しい話くれェは聞いてやる条件として、
 コイツを今すぐその車で病院にブチ込んでこい」

そう言うと抱えた湖城を、少女が降りた車の開きっぱなしのドアへと乱雑に叩き込んだ
けが人に配慮するという思考はないらしい

「さ、ゆっくりとオハナシしようぜ、お嬢さんよ」

車が行ってしまえば当然帰る足は一時的になくなるのだが、
この程度で及び腰になるやつはハナからここにこないだろう

湖城惣一 >  流石に抵抗する気力は残っていない。
車の中に叩き込まれればそのまま意識を失うだろう。
車で運ばれていくならば治療されるだろうし、
放り出されるならばどちらにせよ保健委員が見つける。
 ひとまずトドメを刺されなかったことで、湖城惣一という男は命を繋いだのであった。

ご案内:「路地裏」から湖城惣一さんが去りました。
エアリア > かしこまりました。虞淵様のご要望とあれば最大限善処させていただきます。
【付き人を一人残し、車を走らせるよう促す】

簡単に言ってしまえば、虞淵様のご活躍を衛星軌道上の望遠からだけでなく、
もう少し寄った映像でその強さを魅力的に撮影したい、ということになります。
また、試合による賭事とファイトマネーに関して言えば、虞淵様のご活躍次第で勝手に行われます。
基本的に虞淵様が望むような戦いを行っていれば、勝手にこちらで賭場が開かれます。

虞淵様には今までどおりの生活をしていただければそれで構いません。
可能な限り、お気をわずらわせることのないよう配慮いたしますし、ファイトマネーに関しましても
このような不躾で目立つ形ではなく振込その他の対応も可能です。
また、もしご所望なら噂を広めるその他、相手に出会う確率が増えるような対応も行えますし、歓楽街の施設利用なども便宜を図れます。

条件としてはいかがでしょうか?
それと、コレをどうぞ。今回の分になります。

【説明が終わり、付き人に合図をすれば、虞淵に対し、恭しく袋を差し出される。
中には100枚の紙幣が入っている】

虞淵 > 車が走り去るのを眺め、黙ってその袋を受け取る
中身を見れば、札束だ

「悪い話じゃねェけどな。
 俺ァ別にカネとかいらねェんだわ。どうせなら他の取引材料が欲しいとこだな」
言いながら、無遠慮にエアリアに近寄っていく…

「例えばオマエが俺の女になるとかだ」
くつくつと嘲笑しながらその細い顎を掬おうとする
本気で言っているのではないだろう
おそらく金持ちの道楽をからかっているのだ

エアリア > 私であれば、あまり体が強くありませんので、おそらく壊れてしまいますゆえご要望にあまり添えないのではないかと思います。
優しく扱っていただけるのであれば、その限りではありませんが。
可能な限り御協力申し上げるといった手前、ご所望であれば幹部である私も可能な限り身を捧げる必要があります。

もっとも、一晩の戯れに私を壊すのがご所望であれば、その場合、私共組織にも体面がありますから
虞淵様に対して組織よりあまり嬉しくない事が行われると思います

……具体的には戦闘中の余計な邪魔です

虞淵様の性格と実力を鑑みるに、それがもっとも効率的かつ効果的と存じます
何か他に条件に関しての御質問や御所望な点などはありますでしょうか?

なお、申し遅れましたが、場合によってはこちらから対戦カードのご提案などもあるかと思います。
無論、受ける受けないは虞淵様の判断次第で決めて頂いて構いません。

【微笑を崩さずニッコリと微笑むあたり、この女のネジもどこか壊れてるのかもしれない。】

虞淵 > 「………へェ」
単なる道楽者かと思えば、存外に肝が座っている
それよりも何よりも、この状況下でも脅しをかけてくるのは面白い

「面白ェな、オマエ。なんて名だ?」

少女の言動は、この男の興味を引いたらしい

エアリア > ありがとうございます……エアリア・リフルールと申します。
以後お見知り置きを。

【改めて深々と礼。
そもそもこの場に立っている以上、虞淵の暴力に抗うすべなど無いのだから、彼の気分をどう捌くかの話でしか無い
主導権は向こうにあるのだから、まな板の上からどう言った気分のいい話と気分の悪い話が出来るかでしか無いからだ】

虞淵 > 「いいぜ、カネに興味はないがお前が気に入った」
言いながら、その細い肩へと腕をまわして

「美味い飯、お前が俺の女になる、俺が再戦してェと思ったヤツの治療。
 この3つが俺の提示する条件だ。
 心配せずともお前の体をブチ壊すような真似はしねェよ、俺ァ加減も上手いからなァ」

エアリア > ……かしこまりました。
ではこの時点を持って契約締結とさせていただきます
私の身柄、歓楽街の主だった店での寝食、対戦相手の治療体制をファイトマネーといてお支払いいたします
なお、注意事項として、負けた際には、魅力的な再戦カードが発生しない限り権利は失われますので注意してください

ところで、早速で申し訳ないのですが……私は欲しがりでわがままですから、その分はお覚悟願えるとありがたいです。
そうですね……私個人としましては、虞淵様の肩に乗せていただくか、胸に抱えていただけると嬉しいです。

【虞淵の腕に手を回すと優しく微笑んだ。ある意味、自分も巻き込んだルールにエアリアも興味を覚えたのかもしれなかった
……ただし、エアリアは無性だ。
そういう意味でも女として扱われるのは初めてだったし、はっきり要求されてしまえば興味があったのかもしれなかった
正直、そういった経験は、研究所でいたぶられた経験しかない】

虞淵 > 「いいだろう。
 負けりゃお祓い箱ってのはルールだ。
 第一負け恥さらしてまえ俺は生き残るつもりがねェからな」
不敵に嘲笑う
自身が負けることなど一片たりとも考えてすらいないのだ

「構わないぜ。
 女は我儘で欲しがりぐらいが丁度良い」
要求されるがままに。ひょい、とエアリアを抱き上げる
体格差も手伝って大人と子供のようにすら見える

「当然俺という男のモノになるんだ、女としてのスキルくらいは覚えてもらうがな」
それとももう知ってるか?と再び嘲笑う

エアリア > ありがとうございます……ですが、実は契約に一点だけ誤りがございます、ふふ。
私、実はこう見えて、申し訳ないのですが性別がございません。
女としてご所望されておりますので可能な限りご要望に添えるよう努力は致しますが
元々あまり良くない身の上ゆえ失礼がありましたらそこはご容赦ください

【まるで子供のような少女……少なくともそう見えるエアリアは、何か絡めとっているかのような笑みを捧げつつ
嬉しそうに身を預けた。
案外、楽しめるぐらいの深さは持ち合わせているのかもしれない】

虞淵 > 「へェ、ナリは女にしか見えねェがなァ」
事実、抱き上げたその姿は間近で見ても少女にしか見えないだろう

「俺ァはお前が面白くて気に入ったから契約にノったんだ。
 その上普通の女じゃねェならますます楽しいってもんじゃねェか。
 このドブ溜めみてェな落第街の性別だけは辛うじて女、みてェな売女よりァ遥かに良いぜ。
 ……丁度腹も減ったところだ、車呼べよ。その店っての、早速寄らせてもらうからよ」

エアリア > ふふ、お褒めに預かり光栄です。
【実際、抱き心地は女のそれを思わせる。外見的にも、連れ歩くのに都合がいいだろう】


はい……かしこまりました。
では早速、足を手配いたします……ホテルはそうですね……ラグジュアリのスイートをご用意
それとお食事にはVIPルームを手配いたしますか? それともお部屋で?
どちらにせよ、お気軽にマナーなど気にせずご利用いただけます。

【お付きのものに指示し、手配を済ませるとすぐに車が到着し、扉が開かれる】

虞淵 > 「任せる。
 そういうのを考えるのも含めて"俺の女"の役目だ」
エアリアを抱いたまま、無遠慮に車に乗り込む

「この掃き溜めから出るのも久しぶりだぜ」

そしてこの大男は、一旦落第街から姿を消すことになるのだった

ご案内:「路地裏」から虞淵さんが去りました。
ご案内:「路地裏」からエアリアさんが去りました。
ご案内:「路地裏」にスラッシュさんが現れました。
スラッシュ > 深夜の路地裏。
外の世界はとっくに眠っているというのに、この場所だけは、音の無い何かがうごめいているような気がする。

そんな静寂をぶち壊すかのように、輝くウサギのステッカーつきトランクをガラガラ引いた、見た目からうるさい女が現れた。
「にゃんにゃにゃーーんっ☆今夜のキンム先はココに決めたニャーッ☆」
やっぱりうるさい。
口調は語尾に☆がついているかのようなうざさ。

家を持たずそこで眠っていた者たちは、邪魔者の乱入によりいやいや起こされてしまった。
眠い目で彼女の姿を見る。
ショッキングピンクの三つ編みに、デカいウサ耳カチューシャ。
学校指定のシャツに、ジャージを着こんだ女。
胸にはTHRASH!!の文字・・・。
彼らは、すごすごとその場を去る。
裏の薬物商人、スラッシュだ、関わると碌なことは無いぞ・・、と。

スラッシュ > 「人を臭いものみたいに避けるんじゃないニャ!!お前らみたいに臭くないニャーッ!!」
などと頬を膨らませて、辺りを去った人間に怒鳴る。
その辺に落ちていた石も投げる。

「ホーント失礼な奴らだニャ。アタイは毎日お風呂入ってるニャー☆」
とぷりぷり怒りながら、彼らの寝床であった段ボールを脚でよける。
そして、無造作にトランクを置き広げた。

「さーて、本日も開店ニャーっ☆」

スラッシュ > 「さてー面白い客はいねぇかにゃーっと・・」
ボロが出て素の喋り方になりつつ、外からうっかり迷い込んだような人はいないか、とキョロキョロ辺りを見回す。
人が現れれば、じぃ~っと舐めるようにその人の顔を眺めるだろう。

スラッシュ > 「あーつまんにゃーいのー・・・」
まず人が来ない。
全然人が来ない。
場所も時間も悪すぎだ。

その見た目は明らかに未成年だが、懐から煙草を取り出した。
口にくわえ、火をつける。

ふーっと煙を吐きながらすっかり月も昇りきった空を見上げる。

ご案内:「路地裏」に空閑 栞さんが現れました。
空閑 栞 > 「んー……ツヅラ居ないかなー……」

そんなことを呟きながら路地裏を歩く。
しきりに周囲を見回して、ため息をついている。

「せっかく箱で飴買ったのに……」

腐るわけではないのに探すのは、すぐに渡したいからだろう。
栞本人もよく食べているため、自分で食べることを危惧しているのかもしれない。

タバコを吸っている少女には見向きもせずに歩を進めている。

ご案内:「路地裏」にウィリーさんが現れました。
スラッシュ > (んっんー、ここら辺ではアンマ見ねえ顔だな。・・まぁモノを買いそうにゃー見えねーけどな。)
視界に入るなり栞さんの姿をなめるようにジロジロと見回す。
まさに変質者だ。

何ジロジロ見ているんだ、と怒られる前に声をかける。
「Hey!そこのカワイーお姉さーんっ☆ボクのお店によってかないかニャ~っ☆」
相変わらずマトモな喋り方でないこととマトモな人間ではないことはわかるだろうか。
トランクを開けた少女が栞さんに向け声をかける。

ウィリー > 相変わらず剣呑な雰囲気が漂う街の、更に吹き溜まりを歩く。
ケンカや行き倒れの類がないか、それを確認して回るのが自警団としての彼の役目である。
もちろん眠いし、あまり楽しい仕事ではないがお給料のため。

「珍しいな……まともそうな人間がウロウロして……」
違う。あの客引きはまともとは違う。間の悪いこともあるもんだ、と女の声に顔をしかめて、
遠巻きに物陰から、二人を見張ることにした。

空閑 栞 > 「かわ、えと、わ、私ですか?」

周囲に人はほとんど居ない。
恐らく自分だろうとは思ったが、可愛いと言われて自分か疑ってしまう。

「お店っていうと……なんのお店をしてるんです?」

少し照れながら近付き、トランクを覗く。

スラッシュ > >>ウィリーさん
(ん…?アイツ、どっかのリストで顔を見たな。確か…いや、名前まではいいか。客を連れて一旦退散すっかな。)
ヘラヘラとした顔で、ウィリーの方を向き、でへへ、とだらしなく笑って見せる。煙草は其方を向く前に踏み消した様だ。

>>栞さん
「えへへー、そうニャそうニャ~☆もっと自分に自信を持つニャ~☆」
(ま、オレの方が可愛いけどな。)
とナルシストをこじらせつつ、営業スマイルで手を振る。

「まー言っちゃえばオクスリのお店ニャ。異能でクスリを作れるけど、マダマダ見習いで売らせてもらえない子のクスリを、ニャーが代わりに格安で売ってるって訳ニャ~ッ☆
トリップするようなアブナイおクスリじゃなくて、ホントにただのクスリだから気にしなくていいニャー」
と言ってトランクの中に入った小瓶の群れを見せる。ウィリーさんの耳には届かないよう、かつ、栞さんの耳には充分届くよう。

空閑 栞 > 「あんまりそういうことを言われたことがないので……」

はにかみながらそう応える。
腹の中でなんと思われてるかなど全く気付いていないだろう。

「えーっと、でもなんでまたこんなところでなんです?」
「この辺りは危ないって聞きますけど、大丈夫ですか?」

テンションの高い人だなぁと思いつつ、心配そうにそう言う。
小瓶の群れには少々興味が惹かれているようだ。

スラッシュ > >>栞さん
この辺りは危ない、と言われると、きょろきょろと周りを見た後に、小さな声でしゃべり始める。
「そうニャそうニャー、さっきからあそこのアヤシー男もチラチラこっちを見てきてるニャ。ウチの勘は当たるんだニャー・・きっと、ボクの商売を邪魔するに決まってるニャ。もしよければ少し移動しないかニャ?」
こっそりと指さす先にはウィリーさんが居る。

「私のお店はこっそり有名だから、すーぐ悪い奴が付きまとうのニャー。ほんと困っちゃうのニャー…」
と引き続き、大きくため息をつきながら、小さな声でささやく。
やれやれ、という顔。

トランクの角度をこっそりと脚で変え、余所から中身が見えないように小細工しながら。

ウィリー > あっさりと気づかれてしまった。相手のが上手らしい、大人しく両手を挙げて笑いながら二人の視界に入っていく。
栞はこちらに気づいていないから、驚かれてしまうかもしれないがやむを得まい。

「どうも~自警団でーす。この辺りはただでさえ危ないとこだし、深夜に
 女の子がウロウロするのはよくないですヨ~。いやホント」
スラッシュのあからさまな媚び笑いへの意趣返しか、棒読みで
通り一遍の注意をする。

「いやあ…本当に、気をつけて」
夜闇を行く番犬のように、スラッシュだけを睨めつけて去る。
顔と声は覚えた。あの少女には悪いが、事が起きたならその時に、
対処するとしよう。

ご案内:「路地裏」からウィリーさんが去りました。
空閑 栞 > 「怪しい方……って自警団の方だったんですね」
「どこかに行っちゃいましたし移動する必要はなさそうな気も……?」

声をかけられて驚きつつ、去っていく男性を見る。
少女の方を向き直って言葉を続けた。

「有名なお店だったんですね、なんというか知る人ぞ知るって感じがしてきました」

トランクの角度を変えているのを見て少し違和感を感じるも、特に警戒はせずに話を聞き続ける。

スラッシュ > >>ウィリーさん
(おうおう、大人しくどっか行っちまえー。)
「アタシのコトは心配してくれないのかニャー!!」
と去りゆくウィリーさんの背中に向けて叫ぶ。

「ま、悪そうなヤツじゃなくてよかったニャー☆アタイの勘もアテにならないモンだニャ~…」
はぁ~と一安心、大きくため息をつく。
(今のでアイツに覚えられちまったかなぁ~…また見た目変えんのめんどくせぇ~だるぅ)

スラッシュ > >>栞さん
「あんまりたくさんの人に押し掛けられても、ウチが困っちゃうから、他の人にはヒミツでよろしくニャ~☆」
あざとく、口元に人差し指を立ててウィンク。
「それでも知る人は知っちゃうから、有名になって困っちゃうニャー☆」
と自慢げに補足説明を加えながら。

手でよっとトランクを持って、向きを変える。

空閑 栞 > 「ええ、秘密にしておきますよ」
「そういえばお店の名前とかってないんです?」

笑顔を浮かべた後、すぐに浮かんだ疑問をぶつける。

「有名だったんですね、あんまりこちらに来ないので知りませんでした」

ふむふむ、といったように頷く。
こんなところで売れる薬屋さんなのだからすごい薬があるんだろうな、と考えて話を聞いていた。

スラッシュ > 「お店の名前かニャ?んー…考えたこと無いニャ☆」
ケロっと笑って見せる。

「あんまりコッチに来ないのかニャー?さっきのお兄さんも行ってたけど、あんまり近づかない方が良いんニャよぉ~?」
へらへらと笑いながら、小瓶に値札を付けていく。

ペタペタと張られる値札には、治療薬や、魔力回復薬、風邪薬などいろいろ。普通のドラッグストアと並んでいる商品は変わらないだろう。
隅の方に追いやられている媚薬と異能開発薬を除いて。

空閑 栞 > 「名前のないお店ですか……なんだか穴場らしさがすごいですね」

軽く笑みを返す。

「うーん、危ないのはわかってても知り合いがここによく来るので」
「それを探しに来ちゃうんですよね、ついつい」

苦笑しつつ小瓶の値札を眺めていく。
健康体で、魔術を使わない栞には縁のないものばかりだった。
ふと、隅の方の小瓶が目に留まる。

「それって……どういうお薬なんです?」

媚薬と異能開発薬を指さしてそう言った。

スラッシュ > 「ニャッニャー☆実際穴場だから仕方無ーいニャー♪」
ひっひっひーと笑いながら頭をかいて照れて見せる。

「しっかし、こんな可愛い子を放っておいてこんなところふら付くなんて悪い友達ニャ~…今度私が見たら怒っといてやるニャ~☆」
(むしろ感謝してーくらいだけどなァ~・・・)
と、わざとらしく腰に手を当てぷりぷりと怒って見せる。
いちいち行動が鼻につくヤツだ。

「こぉ~れが気になっちゃうのかニャぁ~?」
ニヤニヤと笑いながらねっとりと話す。

媚薬の方の瓶をとると
「コッチはぁ~多分お客様には関係ないにゃ~☆ちょぉ~っと大人の夜を盛り上がらせるオクスリニャ~☆」
口に手の平を当てて、ヒッヒッヒ~とワザとらしく笑って見せる。

さてこっちは、ともう一つの小瓶を取る。無数の錠剤の入った小瓶だ。
「コッチは~ワガハイのメイン商品、異能開発薬ニャ~☆…ま、副作用があるからコッチもオススメでっきないニャ~…」
と、ちょっとしょんぼりとした顔で2つの瓶をトランクへとしまう。

空閑 栞 > 「ですねぇ、ここ以上に穴場らしい穴場もないでしょうし」
「本当に、せっかくご飯も準備してるっていうのに……」
「って愚痴っちゃってすみません」

頬を掻いて誤魔化す。
あざとい行動などは全く気にしていないようだ。

「お、大人の夜……」

保健の授業でしたような内容のことだろうか、と考えて顔を真っ赤にする。
恋人が居たことのない栞にはかなり刺激が強かったのだろう、そのまま一歩後ずさってしまう。

「異能開発……私はもうあるのでお世話になれなさそうですね、副作用も怖いですし……」

残念そうにトランクを見る。
しかしすぐ、他に珍しいものはないかと薬を見始めた。

スラッシュ > 顔を真っ赤にした様子を見ると
「やっぱり、お姉さんには刺激が強すぎたのニャ~?」
嘲笑うかのように悪戯っぽく笑って見せる。

(ま、やっぱ興味ねーよな。マトモでマシなクスリはねぇかなっと・・)
と心の中で大きくため息をつく。

「んっんー…お姉さん最近困ってるコトはあるかニャ~?もしかしたらお手伝いできるクスリがあるかも知れないニャ~☆」
むむむ、と難しそうな顔で、トランクの中の他のクスリをがちゃがちゃと探す。

空閑 栞 > 「すみません、私には少し……」

赤い顔のまま苦笑を浮かべる。

「困っていること、ですか……」
「魔術の勉強が捗らないのと……自分の弱さに困ってます」

本当に困った、といったような顔をする。
先日の路地裏であった一件、自分がもっと強ければ、もっと早く到着していれば、ツヅラをあんな目に合わせなかったのに。
そう思うと、自分の無力さに苛立ちを覚えた。

スラッシュ > ま、お姉さんは可愛いからいずれカッコいい彼氏ができたら来るといいニャ~なんて茶化す。

「お勉強の手伝いかニャ~☆魔術なら魔力増幅薬ってのがあるニャ~!!これを使って、一回体で覚えるのも手かもしれないニャ~☆」
ごそごそとトランクを漁ると、小瓶を一つ取り出す。

「ま、弱さはさて置き、とりあえず魔術の勉強でもしてみるといいニャ~☆何か新しい技でも思いつくかもしれないニャ~☆」
そして、我ながら良い案だ、とうんうん頷きながら、先ほど取り出した小瓶を、栞さんに渡そうとする。

(そーか、そーか…自分の弱さかぁ…いいねぇそういう悩みを待ってたんだ。焦ってるみてぇだなぁ、ちょろっと崩せば折れたりしねぇかな。)

なお、小瓶を渡す瞬間、わざと手を滑らせて小瓶を地面に落としてしまうだろう。

空閑 栞 > 茶化され、更に顔を赤くして言葉を続ける。

「なるほど、そんな面白いものもあるんですね」
「理論とかよりも先に実践も手段の1つ、ということでしょうか」

そういえば本を読んでばかりで実際に使ったことはなかったなと思い、関心を持つ。
今日の財布には諭吉が数人しか居ないので、恐る恐る値段をみようとした。
その瞬間、小瓶が落ちていく。

その小瓶に右手を向けると、その小瓶は空中で留まり、ぴくりとも動かなくなる。
小瓶の下に右手を運ぶと、その手の上に小瓶が落ちた。

スラッシュ > 「ま、ちょーっと次の日、身体がだれちゃうのが玉にキズかニャ~?その辺はお安いから目を瞑ってあげて欲しいニャ~☆」
値札には1000円程度。

「あ・・ゴメンナサイニャ☆ぼくったらウッカリしてて・・」
舌を出して自分の頭をぺしっと叩く。

「それ、お姉さんの異能かニャ!?カッコいいのニャ~☆」
目を輝かせながら、栞さんの顔を見る。

(んー…折角心のスキを作ろうと思ったんだけどナァ。便利だなぁ・・チッ)

空閑 栞 > 「少し疲れるくらいでそれですか……買おうかな……」

運のいいことに、余裕で買えるレベルだった。
買おうかな、どうしようかな、とその場で迷い始める。

「いえいえ、反応できてよかったです」
「そうなりますね、詳しくは企業秘密ですけど」

頬を掻いてそのまま小瓶を返す。
そんなことを思われているなど、心にも思わないだろう。

スラッシュ > (ま、学校はお休みすることになるだろうけどなー)なんて思いつつ。

「ま、お姉さんの異能のお陰で割れずに済んだし、コレはお近づきの印にプレゼントするニャ☆」
そのままはい、と渡してしまう。

「その異能については詳しく聞かないー・・としてぇ、そんなに強い異能を持ちながらまだまだ強くなりたいのかニャ?なんだか不思議ニャ~・・・」
と首をかしげている。

空閑 栞 > 「あらあらすみません、ありがとうございます……」

全く警戒せずに受け取り、ポケットにしまう。
なんだか得したな、と笑顔を浮かべていた。

「あはは、強いのかはわかりませんけど……」
「これくらいだと守れなかったんですよ」

何かを悔やむような表情を浮かべるが、すぐ笑顔に戻る。
なんちゃって、と頭を掻いて誤魔化した。

スラッシュ > 「金曜日に使うことをオススメするニャ~」
なんてかるーく補足しながらニコニコ笑っている。

「んー…力が欲しいのはわかるケド、あ~んまり求めすぎちゃうと身を滅ぼしちゃうってのが筋ですニャ~☆」
にへにへと笑ってそんなことを言いつつ、先ほどの異能開発薬を取り出す

「それとも…何かを失ってでもその人を守りたいのかニャ?」
彼女は異能<クレイジーナイト>を使う。
目を見た者の心の揺らぎを増幅させる異能。
栞さんが守ろうとしているのは大切な人間だろう、そして、ソレに彼女は焦っているだろう、と読んでの発動だ。
栞さんの心の弱い部分に毒の様にじわじわと入り込もうとする。
・・・もっとも心の強い人間には効かない異能だが。

空閑 栞 > 「ふむふむ、そうしますね」

休みをフル活用して練習するためかな、と思って納得する。

少女の目を見ると、少しずつ強くなりたいという願望が強くなっていく。

「死ななければ、何かを失ってもいいんじゃないかなって……」
「相手も殺さずに、守れるのなら……」

ゆっくりと、脳に溶け込むような強さへの渇望。
それに身を委ねそうになるも、死ぬのなら私の前で死ねと言われたことを思い出して少しだけ抵抗する。

スラッシュ > 「お姉さん、強くなるには貪欲さも必要ニャ。何かを失ってもいいなら、何を躊躇う必要があるのかニャ?お姉さんには、暗闇の道を一歩先に行く勇気が無いのかニャ?お友達を守りたいんじゃないのかニャ?」
続けざまに、栞さんを煽っていく。
気味悪くニヤニヤと嘲笑うその顔は徐々に栞さんに近づいていく。
異能の本体であるその左目は瞬きすらせず、ギロリと栞さんの目を覗き込んでいる。

空閑 栞 > 「死なないって、約束したので……死なないのなら……」
「守るための対価は、必要なのかな……」

自分に言い聞かせるように呟く。
自分の感情に不信感を抱くことなく、ゆっくりと。
強さが、力がほしい。
その感情は確固たるものへと変わっていく。

スラッシュ > 「そ、れ、に、最後には意志の力ってヤツだニャ♡
その人のために死なないっていう強い意志があれば、意外と副作用なんてへっちゃらニャ☆」
最後の一推し、一度顔を離して、にこにこと優しく笑って見せる。
合理的な説明なんていらない、最後の最後人をコロッと落とすのには根性論で十分だ、と判断したようだ。

「欲しいなら、あなたの口から買わせてって言ってほしいのニャ?私は押し売りはしないタイプなのニャ~☆」
もうしてる癖に。
栞さんの近くまで持って行っていた小瓶を、ひゅっと自分の手元に戻す。
そして、自分の望む言葉を栞さんが発するのをニヤニヤといやらしく待っている。

空閑 栞 > 「意志の力……です、よね。それさえあれば……」

意志の力が異能を強くする。
それを経験している栞には、かなりの説得力があったようだ。

「買わせて、ください……」

ゆっくりと絞り出すように、しかしはっきりとした声で言葉を紡いだ。
薬を見つめる視線に迷いはなく、その瞳には力への渇望のみが浮かんでいた。

スラッシュ > 「少々お値段張るようですがよろしいですかニャ☆ま、お姉さんにとっては今更の話かもしれないですけどニャ~」
営業スマイルでニコニコと笑っている。
(この感覚が溜まらない・・まだだ、まだ堪えろ・・)
今にも笑ってやりたいくらいだが、貼り付けたような営業スマイルでなんとか耐える。

値札には12と0が4つ。
「ま、とても買えないと思うから、今なら少しオマケしちゃっても良いけどニャ?」
元々は下手に噂になって広まらないための厄介払いの高値だ。
すくなくともこの開発薬は自分が元締め。
元値はそんなに高くない、充分利益になる。
そうは言っても、有り金全部せしめるつもりではあるが。

空閑 栞 > 「買えるのなら……3万しかないですけど……」

値札を見ると固まる。
今の手持ちでとても買える金額ではなかった。

「おまけをしてもらっても、持っている分ではとても……」

銀行から引き出せるのならすぐに払えるかもしれないが、付近にあるはずもなく諦めようかと考え始める。
やはり異能を新しく手に入れるような薬なのだから高価なのも当然だろう。
やはり持っている異能だけで我慢するべきなのだろうか。

スラッシュ > 「じゃ、朝までにこの近くの駅のロッカーに入れといてニャ☆
お姉さんは特別に2割引きで売ってあげるニャ☆
その代り、なる早で頼むニャ!誰かとのんびりおしゃべりなんて許さないからニャ~」
意外とあっさり。
今までも、話しかけた相手が必ずしもお金を持っていたわけではない。
商品を買わせることができた、異能の効く相手ならばこの命令を聞かないはずがない。
はい、と地図の書かれた名刺サイズのカードを差し出す。

空閑 栞 > 「2割引きですか……家にあるはずですから、そうします……」

約10万、なんとかなるはずだろう。

「なるべく早くお金の準備をしておきますね」

万が一なくてもなんとかすることはできる。
なかった場合の金策について考えつつもその名刺サイズのカードを受け取ろうとした。

スラッシュ > カードを受け取られる瞬間、指に力を入れ、阻止する。

そして、ニヤニヤと気味の悪い顔を近づけ
「お姉さん、ぜぇーーーーーーーーったいに、ボクを裏切らないでね?」
再び異能<クレイジーナイト>を使う。
ギラギラと光る左目が、貴方の目を睨みつける。
栞さんの行動を制限しようとしているのだ。
心のスキができた人間にならこの異能は効くはずだ、と、間違っても自分を裏切ることの無いよう重々釘を刺しておく。
栞さんの心に強い恐怖感を与えることができただろうか。

「まぁ、お姉さんはいい人だし、ウチは後ろからコォッソリついていくから、そんなことできないと思うんだけどね、一応ね?
足りなければ、足りる分だけでいいからニャ☆」
とまで言うと、また顔を離し、指の力を抜く。
すっとカードを取ることができるだろう。

空閑 栞 > 「ええ、裏切らないように……」

その目に見られると、何故か逆らえない。
裏切ったらどうにかなってしまうような、そんな恐怖に苛まれてしまう。

「ああ、そういえばお金を持ってそうな知り合いがこの辺りに居そうなので……電話で呼んでもいいですか?」

カードを受け取り、そう応える。
なるべく早く。できるのなら今すぐ支払いたい。
そんな考えが頭を埋め尽くしていく。

スラッシュ > 「そうなのかニャ?それならウチは一回ココでお別れするのニャ~☆」
(これ以上顔を見られてもイイ事はねーしな)
とトランクを閉めて片づける。小瓶はまだ手に持ったまま。

「でもニャー、そのお友達に、せっかくのお姉さんの決意を揺るがされたら、ダイナシなのニャ…。」
(特に俺がな。)
「こんな大金、何に使うの、きっと変な物だわ、なんて言われちゃったらきっとお姉さん、スグにポッキリ折れちゃいそうなのニャ…。
折角意志を固めたお姉さんの邪魔をさせたくないニャ!!」
至極真面目な顔で説得する。顔だけは。

「クスリのことは秘密にしたまま、うまぁく、そのお友達を説得できるーって言うなら、ミーはフォローしても良いニャよ?」
(どうせ見た目は変えるし、ここで金蔓を逃すのももったいない。)
私って優しいでしょ?とでも言いたそうににこにこと笑っている。

空閑 栞 > 「お別れですか……そういえばお名前を聞いても……?」

そう言って電話を手に取る。

「大丈夫ですよ、ここまでお話したんですから買うだけはしてみせます」
「すぐに返せるアテはありますしね」

電話帳を開き、慣れた手つきで電話をかける。

「なんとかなりますよ、きっと」
「万が一お薬の内容を話しても風紀委員とかに話すような相手じゃないですし」

そう言った辺りで電話が繋がる。
いつも通りの気だるそうな相手の声を聞き、不思議な安心感を覚えた。

「あ、ツヅラ? ちょっとお金がなくて困ってるから来てくれないかな……」
「ごめんごめん、ちゃんと借りは返すから、ね? 場所は―――」

スラッシュ > 「ゴメンだニャ~、名前を知られて、学校で話しかけられると困っちゃうからヒミツにしてるのニャ~…。でも、これだけ目立つ見た目なら、きっと名前を言わなくても覚えられるに違いないニャ☆」
と立ち上がって全身を見せる。Aカップ程度の小さな胸、大きなウサ耳カチューシャ、ショッキングピンクの三つ編み、口元のホクロにグラスの無い伊達メガネ・・と特徴はたくさんある。

「結局今呼ぶのかニャ?」
と首を傾げると
(なぁ~んだか信用ならねぇナァ・・)
と思い、結局電話の相手が来るのを待つことにした。
下手なことを口走れば、その左目で制止しよう、という腹づもりも兼ねて。

ご案内:「路地裏」に薄野ツヅラさんが現れました。
空閑 栞 > 「うーん、なるほど……それなら店主さん、とでも呼べばいいんでしょうか」
「まあ見た目はわかりやすいので間違えることはなさそうですね」

まじまじと見つめる。特徴的すぎて間違える方が難しそうだな、という印象を受けた。

「ええ、多分この辺りに居ますから……」
「ってほら、来ましたよ」

嬉しそうに笑顔を浮かべて話しかけた。

スラッシュ > >>栞さん
「まっ好きに呼べばイイにゃ~☆メガネさんでもウサ耳さんでも可愛い店主さんでも♪」
セクシーポーズで構えてチュッと投げキッス。
超ウザい。

「あ、ホントにゃ。な~ん~か~、アチキちょっとキンチョーしちゃうニャー…」
セクシーポーズをやめて、こちらへ向かってくるであろうツヅラの顔をじっくり眺めるだろう。
(さて…簡単に丸め込めそーなヤツならバンザイ、もしコイツにもなんか売れる…ってなら万々歳ってところかね。)

薄野ツヅラ > ───かつり、かつりと杖をつく乾いた音がひとつ。
其れは、すっかり人の少ない路地裏に響く。反響する。

「で、何でそんな大金が必要な訳ェ……?」

気だるそうに杖をつく。
ゆらり、姿を見せるは赤いジャージにヘッドフォン。
見慣れた同居人と、如何にも不審人物なウサ耳に三つ編み。
間違いなく何かに巻き込まれているのだろうなぁ、とぼんやり見遣る。

「………どうも、うちのが迷惑お掛けした訳だけどぉ───……
 で、この莫迦は何を幾らで買おうとしてたのかしらァ?」

三つ編みの彼女に、ちらと視線を向けて声を掛ける。
じいと見られればにっこりと笑みを浮かべる。

空閑 栞 > 「それならとりあえず店主さん、と」

笑顔でそう返す。
服装は変えられても職業はそう変わらないだろうと思っての判断だった。
セクシーポーズなどは気にもとめない。

「えっと、ちょっとほしいものがあって……」
「明日には返すから、ね?」

具体的なことは言わないが、必要だという意思を見せる。

スラッシュ > >>ツヅラさん
(チッまぁそうなるよなぁ~)
落第街をフラついている割には中々にしっかりとしていそうな女性だ。

「ハァ~イお姉さん☆コチラこそお世話になってますのニャ~♪」
こちらもニコニコと笑って返す。

「まーそれはデスねー、彼女のプライバシーに関わるから、後日ゆっくり聞いてあげて欲しいニャ~☆アタシの信用にも関わるお話ですからニャ~☆」
ねー、と言いながら、笑って栞さんの方を見る。
異能の左目をぱっちりとあけながら。

第三者の自分が介入すべき問題ではないし、そうでなくとも、商人として第三者に対して話すべきではない、とこれなら筋道が通るんじゃないかな・・と。
ともかく、彼女としては、余計なモン呼んでくれやがって、テメェで始末しろよ、いう思いが根底にあるし。

薄野ツヅラ > 「ンー………
 まァこんな路地裏でやってるであろう商売なんてカタギじゃないのは解ってるしぃ───……」

同居人が必要とするのであれば必要なのであろう。
幾らだって金貸しくらいならするつもりだった。
ただ───ゼロの数が落第街の取引にしては多すぎる。
普通なら研究区や教師の間での取引の額。
些か一学生の取引にしては余りにも多い。故に彼女は不信感を抱く。

「別に其れでもいいとは思うけどぉ───……
 一体あんたは『何屋さん』なのかしらぁ?」

其れなら客のプライバシーにも関わらないだろう、と笑った。