2015/07/03 のログ
久藤 嵯督 > 眺められた少年の腕に、風紀委員の腕章が巻かれていることには気がつけるだろうか。
もっともかの少年、久藤嵯督が身を置いている本部は、『常世財団』『風紀委員会』と二つあるのだが。
次回があるかどうかはさておき、今回襲われたのは『風紀委員会』の本部である。

「はぁ? この俺に二時間も待てと?
 言っておくがな、その程度の件……俺なら30分も掛けん。
 だから先にこいつらをな……クソッ」

どうやら電話を切られたらしく、目に見えて憤ってみせる。
人員を本部に回すとか、護送役は別の案件を片付けた後にそちらに向かわせるとかで、こちらに貧乏籤が回ってきたというワケだ。
自分に理解のある上司には平凡な仕事でこき使われるし、理解の無い上司にはやるべき仕事を回されない。
こんなことだから、警備隊が全滅したことにも頷けてしまう。
液晶画面を乱暴にタッチした後、携帯電話をポケットに仕舞った。

「――どこの誰だか知らんが、あまり人の後を付回すもんじゃないな。
 相手によっちゃ命に関わるぞ」

感知した当初は大した動きも見せないので、無視していこうかと思っていた。
しかしここで待ちぼうけを食らってしまうともなれば、暇つぶしの相手にしてしまった方がいい。

薄野ツヅラ > 「ンッンー、此れは失礼失礼。
 貴方は命に関わらなさそうでよかったわぁ──……」

独特の間延びした語尾に赤いジャージにヘッドフォン。
───風紀委員の中でも報告に上がっているその小柄な体躯。
それから金属製の見るからに高そうな前腕部支持型の杖をかつりと鳴らす。
不機嫌そうな少年の腕章を見遣れば、楽しそうに笑顔を浮かべた。

「ヤア、どうもご機嫌じゃあない様子で。   ・・・・・・・
 何かあったんですか、風紀委員さん?ちょっと迷い込みまして」

くすり、自らにの唇に左手の人差し指を宛てがった。

久藤 嵯督 > 路地裏を吹き抜ける風に白金の髪を揺らしながら、出てきた少女の方を向く。
予測された身長と体重、杖の材質。該当する生徒のデータは2件。
ひとりはどこにでもいる、怪我をした女子生徒。
もうひとりは、今まさに目の前に見える少女、"薄野ツヅラ"その人である。

「『堂廻目眩』[ドグラ-マグラ]が幻に巻かれたか?
 別に、俺の方は上のいい加減な判断にほとほと困らされていた所さ」

眉間に少しだけシワの寄った仏頂面で、返事を返す。
黒く淀んだ瞳が、ツヅラの紅瞳を捉える。
犯罪者の一人が目を覚ましたので、小指の糸をキン、と引く。彼は再び眠りについた。
虞淵襲撃の件は、いずれ公安の耳にも入ることだろう。
しかしどうにも、風紀委員には守秘義務とかいうヤツがあるらしい。

薄野ツヅラ > 「ンー……案外知れ渡っちゃってる感じなのかしらぁ──……
 出来るだけ云わないようにはしてるんだけどぉ」

恥ずかしいのよねェ其れ、とクツクツ喉を鳴らしながら笑う。
目を覚ました人間がコクリと意識を失うのを見てぼんやりと考察を続ける。
能力の系統と純粋な戦闘力を推し量る。何らかの能力かな、とぼんやり思案する。
ゴウ、ゴウと音を立てて室外機が生暖かい風を送る。
路地裏ではありきたりな、そんな光景。

「上の方──……風紀委員さんも厄介ごとを抱えてるのかしらぁ?
 そりゃ大変なこって。
 生憎公安所属がバレてる相手だと『一般生徒ごっこ』が出来なくてつまんないのよねェ───……
 
 特に風紀委員さんと遊べなくなって退屈でねェ、なんて」

退屈そうにチュッパチャップスを口に放る。
ぴょこぴょこと棒を弄びながら前髪をくるくると弄る。
淀んだ黒を血のような赤が覗き込む。
不快感が先にくるような、真意の掴めない笑みをじわりと滲ませた。

久藤 嵯督 > 「疎いヤツは何処にいようと知らないだろうし、よく識ってるヤツは何処にいようと識ることができる。
 今回は相手が悪いってだけで、そこまで気にすることでは無い」

久藤嵯督は現状、無能力者である。
異能の発現は見られず、万人にも必ず一滴は存在すると言われている魔力でさえ、神秘を失ったその肉体からは枯渇している。
その分身体能力のスペックは引き上げられており、
『数列解析<ガウス・ブレイン>』のように未来までは見通せないものの、情報処理能力は頗る高い。
純粋な技術と計算能力だけが、その技を可能にしているのだ。

「馬鹿を言え。路地裏でヘラヘラしながらこのザマを眺めてるような一般生徒が、いるものかよ。
 もっと一般生徒らしく見える努力をする事だな」

赤に黒が映り、黒には赤が映る。
乾いた血のような一本線を空中で描きながら、より一層、眉をひそめた。
精神系の能力者はどいつもこいつもひねくれている、というのが嵯督の持論だ。

「それとも、『一般生徒』だったら俺に何かしてくれるとでも?」

薄野ツヅラ > 「ふうん……まァ別に自分で名乗るときもあるから別に気にしないけどぉ」

其れこそ少年の云う通り「識っている人なら識っている」事だ。
特に気にすることでもないだろう、とぼんやり飴を弄ぶ。
寧ろ知られていたところでただ単に自分の趣味───
風紀委員や落第街の住人からの情報収集が出来ないだけだ。
彼とは少し遊べなくなってしまっただけ。逃がした魚は大きいが別に構わないだろう。

「『一般生徒』に何が起きていたのかくらいは正義の味方の風紀委員さんが
 教えて呉れないかしらぁ───なんて思っただけよぉ?

 風紀委員が『一般生徒』に何かして貰おうなんて意識低いんじゃないかしらぁ?
 其れともリターンを求めて正義の味方してる訳ェ?」

当然のように質問には質問で返す。
にこりと笑みを湛えたまま真っ直ぐに其の双眸を見遣る。
あッは、と特徴的な笑い声が路地裏に反響する。

久藤 嵯督 > 「生憎だが俺は、『一般生徒』相手に情報を漏らすような阿呆じゃあない。
 開示する情報は、"生徒が最低限身を守るための情報"にのみ限られる。
 その『一般生徒』から情報を奪うような輩も少なくは無い。そうだろう?」

若干の皮肉を込めた一言。鉄仮面のように堅い顔の、口元だけが少しだけ釣り上がる。
その形は少々歪で、口まで広けば紅白の三日月が拝めそう。

「例えどのような仕事であろうとも、大なり小なり見返りはあって然るべきだ。それが世を生きる鉄則だろう。
 そもそも『問題児』の相手は、俺の趣味も兼ねているようなモノだ。
 もし目の前にソレが現れたのならば、タダでも正義の味方を気取ってやるさ」

今までに出会ってきた死合いを思い出しながら、三日月を少しずつ広げていく。
命のぶつかり合いにて血湧き肉躍った記憶を胸に秘めながら、眼《まなこ》が鋭く研ぎ澄まされる。
誰とも違った笑みが二つ、路地裏に浮かび上がった。

ご案内:「路地裏」にギルバートさんが現れました。
薄野ツヅラ > 「残念ねェ、『一般生徒』相手に情報を漏らしてくれる風紀委員さんも居たのだけれど
 ───、あれは独り言だったかしらぁ?まァ此れ今は別に要らない情報ねェ」

皮肉を云われればにこりと笑顔をひとつ。
暗に「情報を『一般生徒』に漏らすような風紀委員が居るぞ」、と。
彼の『正義の味方』観を聞けば楽しそうに笑いを溢した。

「正直『一般生徒』からリターンを求めるのはどうかと思うわよぉ?
 まァボクとは考えが合いません、の一言で済むんだけれどぉ───……
 趣味でやってるなら余計どうかと思うわぁ」

ふああ、と退屈そうに欠伸をしながら、目尻に涙を浮かべた。

ギルバート > 「止めなよ久藤。女の子にする顔じゃないでしょ。」

久藤の感知範囲の中に、無数の反応が浮かび上がる。
片手の指どころか、両の手でも足りぬほど。
それは久藤が待っていた護送部隊の連中ではない。
一糸乱れぬ歩調から、察することができるだろうか。
少なくとも、素人の学生集団が遊びにきたわけではないと。
先頭を歩くのは彼の同級生。ギルバート・レイネス。
つかつかと歩み寄り、彼が拘束していた犯罪者の一人を足蹴にする。

「悪いんだけど、貸してもらえないかな。」

流した前髪に隠れた眼光が、横目に久藤を見やる。

久藤 嵯督 > 「電話のことなら、『聞こえすぎる』お前の接近を予測した時点で諦めていたさ。
 まともな『一般生徒』ならそもそも聞こえないし、こんな所にまで聞きつけもしない」

例え予測された二人のうちのもう一人がこの場に来たとしても、電話の声をまともに聞き取ることは能力でもない限りは難しい事だろう。

「"炎の巨人"の出所は、お前も知っているハズだが」

『一般生徒』からアレが出るのだから案外侮れない。
あれぐらいのモノが問題を起こしてくれれば、こちらとしても面白いのだが。
だからと言って目の前の『自称一般生徒』にそれを期待しているワケでもない。
そこを少し、ここに現れた少年には誤解されてしまっているのかもしれないが。

無数の反応を感知すれば、その情報の一つ一つを高速で読み取っていく。
糸が五本指であれば足りなかったのであろうが、元々路地裏に張り巡らせてある六十六本を使えば、情報は集められる。
あとは脳の処理の問題。一人ひとりの行動を全て予測することは、少しばかり手間だ。

「……第一隊か。なぁに、少しばかり時間を潰していただけさ。
 ちょっとした談笑をしながらな」

ハッ、と笑い飛ばす。
いつも仏頂面だった彼が、クラスメイトに初めて見せる笑顔がこれだから始末に負えない。

「手柄の横取りか? テストといい、随分と点数稼ぎに必死なことで……」

薄野ツヅラ > 「随分とお詳しいようねェ───……
 こんな能力どこの情報なのか誰の会話なのかも特定できないレベル0よぉ、
 別に一般生徒と変わらないし其れ以下なんだゾ───…☆」

ゆらりと新たな声の主に視線を向ける。
ここ数日で随分と見慣れた人影。部署は違えど公安委員の後輩。
甘党で中々に"面白い"、そんな後輩。
────ただし、先日とは違い少々きりっとした印象の。

「やァ、ギルバートくん。お仕事かしらぁ?」

にこりと笑みを浮かべる。
こんな時間にこんな裏路地に居ると言うことは何らかの任務の後か、と考えるのは自然だろう。

ギルバート > 「成績の査定に響けばよかったんだけどね。」
「オレも最近知ったんだけど、どうにも何にもならないらしい。」

取り出したるは肉厚のダガー。
切っ先をピアノ線に這わせ、足蹴にした男の拘束を解く。
安堵の吐息も束の間、お次はとばかりに指錠を掛けられるのだが。

「だけどね、こいつを公安(うち)で締め上げることで、得られるモノが色々あるんだ。」
「それを手柄と呼ぶお前には、一生それが何かなんてわからないよ。」

再拘束された男の身柄は、久藤の反応を待たずとして他の隊員に受け渡される。
実行部隊の人間が、こうして出張って来たのだ。
上同士では既に、カードの交換が済んでいる。
それは久藤だけではなく、ツヅラの目にも明らかだろう。
いつもの軽口からもそれは連想される。

「第二から貰った情報のおかげですよ。」
「今連れて行ったアイツ……どうもブローカーの元締めのようで。」
「今夜は寝かせないゾって、うちの隊長が意気込んでいましたよ。」

しばし背を向け端的に語り、いつもの後輩スマイルで向き直る。

「それで先輩は、散歩スか?」
「―――なんて。」

薄野ツヅラ > 「ほんほん、アレだったのねェ──……
 実際にボクらは荒事は向いてないから有難いわぁ、お疲れ様よぉ」

自分の掻き集めてきた情報が交差して此の結果を招いた。
彼女は情報を集めて手渡すまではしていても、情報を使っているところを目にしたのは初めてだった。
其の様は非常に興味深く、其れで居てどこか罪悪感を覚えた。
勿論調査部別室である第二特別教室の「管轄外」故に知る由もなかったのだが。

「ええ、久々に散歩しに。
 魚でも釣れないかなあと思ったのだけれど生憎釣れなかったわぁ───……」

にこり、小さくギルバートに笑いかける。

久藤 嵯督 > 統率された、これだけの数の能力者達。
もしここにいる自分が風紀委員でなければ……―――口直しに、戦ってみたかった。
この制約が狙い通りだというのだから、財団の采配にはつくづくうんざりさせられる。
歪みきっていた顔も、元の仏頂面に戻っていた。
『はぁ』と溜め息をつけば、拘束していた側のピアノ線を左腕の一振りで回収する。

「情報・信用・名誉、そして米粒ほどの平和……それ以上の何がある?
 ――他に得な話でもあるのなら、是非とも教えてもらいたいもんだがね」

戦えないことだけが実に残念だが、他はまあいい。
今回の仕事のおいしい部分……と言っても粗末なものであったが、そこはもう平らげた。
公式にカードの交換が行われたのであれば、これ以上自分が出る幕は無い。
さっさと次幕を求めに行くのが賢明というものだ。

「馴染む努力、か……」

仲睦まじげな二人の様子を見て、ふと零す。
友好的に接することで"使える"人間が出てくるのなら、そうする価値も十分にあると言える。
何となくではあるが、上が自分をこっちに追いやった理由が見えてきた。

「お前達が受け持つと言うのなら、俺は次の仕事に当たらせて貰おう」

去り往くその横顔に、歪んだ口元がちらりと覗いた。

ギルバート > 「大事なものなんていくらでもあるだろ。」
「それを損得で勘定しなきゃわかんないって言うのなら……。」
「……久藤、やっぱりお前は生きちゃいない。」

「またね首輪付き。」
「明日のテスト、結構難しいらしいぜ。」

本来ならば一人を移送すれば良い案件ではあったが、さして興味も示さない久藤の背。
ため息交じりに他の隊員を呼び、残る全ても連行していった。
見送る眼差しは軽蔑でも憎悪でもなく。
久藤に続いて各隊員も撤収を始め、あたりの人の気配は急速に薄まっていった。

「えーっと、先輩……釣りの邪魔しちゃいましたか。」

バツの悪そうに色の混じった笑みを返す。

「えっ あっ そうだ。お詫びに家まで送らせてもらえませんか!?」
「もうこれで今夜の仕事は終わりなんで!」

薄野ツヅラ > (ンッンー……どうもいけ好かないわねェ……
 風紀が全員そうって訳じゃあないンだろうけどどうも気になる)

監視番号304。注意が要るかもしれない。
其れから首輪付き、とのワードも気になる。趣味の範囲で調べてもいいかもしれない。
だが落第街自体に何をする訳でもなさそうなら自分が敵にまわる必要はない。
どうしたものかと暫し堂々廻りの思案を重ねる。

結果至上主義であると推察される少年をぼんやりと視界に入れた。
暫しの思案の後、ふうと深く溜息を吐きながら口を開く。

「得も何も、自分の正義に則ったモンならなんでもいいわぁ
 ただボクはこの街で生きていくのに必要な金と、情報と力と。
 其れからアタマがあれば信用も名誉も平和も必要ない」

ぴょこぴょこと飴の棒を弄ぶ。飴自体はとうに溶けてしまっていた。

「そんなことないわよぉ、中々いい釣りはできたかも
 ン、送ってくれるなら其処のホテルまで。割と近場だけどねェ──……」

左指をぽんと伸ばして、路地裏の先の高い建物を指差した。

久藤 嵯督 > 「自分の心配をしてろ、忘れん坊」

珍しく本名以外で呼び返し、振り返ることもない。
ただ一つ、最後に付け加えた。

「公安委員会の悪い癖を案じて言っておくが……俺の出自を調べるのはよしておいた方がいい。
 常世"程度"の力ではどうにもならない事だ」

それ以上は何を問われても、何も返さず。
黙ったままその場を去っていくのであった。

ギルバート > 残る隊員たちのにやけ顔に、親指を下に突き立て追い返す。
振り向きまた屈託のない笑顔で喜んだ。

「あっはい! 喜んで!」
「……と言っても、土地勘は先輩のが詳しそうッスよね。」
「あー、なんか格好付かないなあ。オレ。」

口先を尖らせ、誤魔化すように咳二つ。

  「もうすぐ雨らしいスよ。」

             「ところで―――」

「―――今日は何が釣れたんですか?」

最後に残った二つの影が、人波の渦中へと消えていった。

ご案内:「路地裏」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「路地裏」からギルバートさんが去りました。
ご案内:「路地裏」から薄野ツヅラさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に石蒜さんが現れました。
石蒜 > 「ふんふ、ふんふん♪るら、らら♪」歌を口ずさみながら小走りに路地を行く褐色の肌の少女、その身を包むのは漆黒の白衣に、血のように赤い緋袴。
楽しそうに、嬉しそうに、雨の中傘もささずに、汚れた路地裏を進む。
前方に傘を差した人影、気取られないように近づいていく。自然に、自然に。

石蒜 > そしてすれ違う瞬間に、異能を使って右手の中に刀を呼び出し。
「るった、らんた……らん♪」くるりと右足を軸に回転しながら、その背中を斬りつけた。
返り血が頬にかかり、肉を斬った手応えに、背筋がゾクゾクした。一瞬遅れてあがる悲鳴。
それにはもう何の興味も示さず、刀を投げ捨てると、また小走りに路地を進む。

石蒜 > 「るるるっるーらら♪」歌を口ずさみながら小走りに路地を行く。
楽しそうに、嬉しそうに、雨の中傘もささずに、汚れた路地裏を進む。
前方に傘を差した人影、気取られないように近づいていく。自然に、自然に。

石蒜 > そしてすれ違う瞬間に、異能を使って右手の中に刀を呼び出し。
「ふふん♪ふん♪……ふん♪」くるりと左足を軸に回転しながら、その胸を斬りつけた。
返り血が頬にかかり、肉を斬った手応えに、背筋がゾクゾクした。一瞬遅れてあがる悲鳴。
それにはもう興味を失い、刀を投げ捨てると、また小走りに路地を進む。

ご案内:「路地裏」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > げっ……

(悲鳴を聞きつけたのか建物の屋根伝いに移動してくる影が一つ。
 立て続けに上がる悲鳴を辿り、その先へ回ると雨の中傘もささずに歩く姿が目に留まった。)

……辻斬り、にしても異様過ぎるだろ……。

ご案内:「路地裏」に焔誼迦具楽さんが現れました。
石蒜 > 「ららん、らら……。」視線を感じて足を止め、ぐるりと首を回し、上を見る。
「あはぁ……♪」見つけた、口が三日月のように裂けて歪む、笑っている。

焔誼迦具楽 >  
「騒がしいと思って出て見れば……」

【石蒜の背後から少女の声が聞こえてくるだろう。
 それは嫌悪感混じりのあきれた声】

「やめてよね、あんまりここではしゃぐの。
 風紀とか公安とかやってくると、私まで巻き込まれちゃうんだけど?」

【路地裏の住人として、苦言を呈す。
 どうせ相手には自分の正体なんてバレてるだろうと思いながら。
 振り向けば嫌悪感を露に表情をゆがめた小柄な少女が、雨に打たれながら赤い瞳を向けているだろう】

東雲七生 > うわぁ……。

(こちらへと向けられた笑みに生理的な嫌悪感を覚える。
 すぐにでも目を背けたくなるのを堪え、何か言おうと口を開いた直後、さらなる影に気を取られた。
 どことなく、見覚えのある容姿。)

……焔……誼?

石蒜 > 背後に気配、やめろ?「つまらないことを言わないでくださいよ」笑いを顔に貼り付けたまま、振り返りながら、右手の刀を呼び出す。
私の邪魔をする、私の享楽を否定する。なら、敵だ。
振り向く動作のまま、横薙ぎに斬りつけた。

東雲七生 > ──焔誼ッ!

(雨の中俯瞰の状態で人物の判断をするのは東雲にとって難しかった。
 既知に似た影が斬り掛かられたのを見るやその名を叫ぶように呼ぶ。)

焔誼迦具楽 > 「別にやめろとは言わないけど――」

【そのまま胴体を上下に分かたれる。
 ……だが】

「――遊ぶなら、もう少し上手くやってほしいのよね」

【切られた胴が、刀が通り抜けた後で何事もなかったかのように結合する。
 通り抜けた刀に何の加護も守りもなければ、溶けないまでも熱が移っているだろう】

「…………?」

【気に入らない気配の向こう。
 そこに人間の気配を感じて、なるほど、とわらう】

「大丈夫、これくらいなんともないわよ」

【雨の中だ。
 無邪気な笑顔を浮かべて言ったが、さて通じただろうか】

石蒜 > 手応えが違う。肉ではない、ああ……斬ってもつまらない相手か…。
石蒜の刀は血に飢えた妖刀であり、尋常ではない強度と切れ味を誇っている。刃が少々熱せられても問題はない。
だが相手が異形の類なのは分かった、素早く後ろに飛び退いて、距離を取る。
「なんですか、あなたは。」つまらなそうに、気分を害されたといった風に問う。「私は人を斬りたいんです、水の塊じゃない。」

東雲七生 > 馬鹿、避け──ッ!?

(続けて掛けられた声は途中で途絶える。
 確かに今、目の前で少女は胴を薙がれた筈だ。それが、こちらを見て笑っている。
 軽く眩暈を覚えたが自身のこめかみに一発、拳を入れて。)

なッ……何なんだよ、何だってんだお前らッ!

焔誼迦具楽 > 「……ふうん、わからないのね。
 見ての通り、あなたと同じ化け物よ」

【不機嫌そうに笑うと、その場で爆ぜるように体を分解し、雨に溶ける。
 そのまま水と共にうろたえている少年のほうへと移動した】

「――私は、そうね、どうしよっかな。
 ……うん、焔誼。焔誼迦具楽だよ」

【東雲の近くで再び人の形を真似ると、面白そうに微笑みかけ。
 そして、今思いついたままの名前を名乗った。
 そこで再び石蒜の方を見やると】

「別に人を切るのはいいけど、散らかさないでって言ってるの。
 あんまり汚されると、後片付けが面倒じゃない」

【迦具楽は人を喰らっても痕跡は残さない。
 自分を守るためでもあるが……単純に住処が汚れるのはすかないのだ】

石蒜 > 焰誼を追って、足に魔術で斥力を発生させ、地面と反発させて飛び、屋根の上に着地した。
「私は……。」何か、と問われれば無表情になり、一瞬考えるように宙を見る。私は、誰だっけ…?ああ、石蒜だ、思い出した。

「私は石蒜(シーシュアン)、見ての通りの、人斬りですよ。」また笑みを浮かべ、頬についた返り血を舐める。

「元から綺麗でもないんだからいいじゃないですか、殺してないから適当にどっか行くだろうし。」斬りつけた傷はいずれも浅く、止血を行えば命に別条はない程度だった。

東雲七生 > 焔誼──迦具楽…?

(名乗られた名を反芻する。
 一度姿を消し、そして近くに現れた少女の姿を見れば、知っている姿とは違いが多いことに気付いた。
 そもそも東雲が知っている少女は、ここまで饒舌である印象は無い。──もう、わけがわからない。)

──ああクソ、考えるのは後だ!

(どちらが危険なのか頭で考える前に体が石蒜から距離を取る。
 少なくとも、向こうは自分よりも“慣れている”だろう、──人を、攻撃することに。)

焔誼迦具楽 > 「まあそうなんだけどね。
 上手くやれって言うのにはもう一つ、治安組織がやってくるような口実を作らないでってのも入ってるの」

【面倒くさそうにため息をついて言う】

「ようやく面倒な敵が消えてくれたんだから、のんびり遊びたいのよ、私は。
 バカ騒ぎするなら他所でやってほしいのよね」

【そう話しながら、自身のうちにある魔術を幾つかリストアップする。
 やりあうことになったとしても、ひとまずの対処は出来るだろう。
 けれど相手はあの『混沌』の同類だ。
 力比べになれば負かされてもおかしくない。相性がすべてじゃないのだ】

「……そうそう、迦具楽。
 お兄さんは姉の知り合いみたいね。
 ……ああ、母って言ったほうがいいのかなあ」

【距離をとった東雲に満足そうに笑いかけながら、上の石蒜と対峙する形になる】

石蒜 > 「治安…?ああ、風紀の連中とかですか。いいじゃないですか、来たら殺し合えば、とても楽しくなりますよ。」何が問題なのか、という顔で。例え殺されても捕まっても楽しむ、そういった存在なのだ。

「やるんですか?ああ、面倒だな……あなたを斬っても全然楽しくない、水風船を斬ってるようだ……。斬るなら生身の人間がいいんですがねぇ、ちょうど彼みたいな……。」ため息をつきながら、東雲を一瞥する。だが、焰誼と対峙する形になれば、気だるそうに刀を構える。

東雲七生 > あ、姉……? 母……?
何が言いたいのか分かんねえけど……!お前、あいつと戦り合えんのか?

(少なくとも斬撃は効果が薄いのは先刻見て承知だったが。
 効果的な攻撃が出来るのかはいささか疑問だった。
 刀を構える石蒜を見て、注意をそちらへ向けつつ迦具楽へと訊ねる。

 いざとなったら、自分も戦わなければならないだろう、と覚悟をしつつ。)

焔誼迦具楽 > 「お断りよ。
 私は人殺しが好きなんじゃないの。
 人は美味しいから食べるけど、殺しあいたいわけじゃないわ」

【構えられれば、特にどうというわけでもなく、そのまま哂う】

「ああ、逃げてくれるつもりだったの?
 それなら私も楽でいいなあ。
 私もアナタみたいなのは、不味くて食べたくないもん」

【そう言いながら、同じように東雲を一瞥。
 少年はまだ美味しそうとはいえないが……何れ美味しくなりそうでもある。
 もし狙われるのなら、手厚く保護しなければ】>石蒜

「やりあえるけど……あんまりやりたくないかなあ」

【戦うのは何の問題もない。
 最悪でも逃げればいいだけである。
 問題は……東雲をどうするかなのだ】>東雲

石蒜 > ああ、面倒くさい面倒くさい
考えるのは面倒だ、享楽に浸りたい、戦うでもない逃げるでもない。
なんで突っ立って話をしなくちゃいけないんだ。
「ああ、もう……。」どっちを狙うかもどうでもいい、だからもう、適当にどちらかを狙って、刀を投げた。
斥力で手と反発させて、とてつもない速度で刀が飛ぶ、狙うのは……
[1d2→1=1]1=焰誼 2=東雲
石蒜 > まず異形の少女のほうだ、好物は後にとっておこう。
東雲七生 > だったら!早くここから離れて誰か呼んで来いって!

(相手が自分を慮っている事など察せられる筈も無く、大通りの方を指して声を荒げる。
 自覚は無いが既に自分がこの場から離れるという考えは、既に無くなっている様だ。
 たとえ他人の空似だとしても、知り合いに似た少女を危険に晒したままこの場を離れるのは問題外、という事なのだろう。)

──ッ、来た!

(飛来する刀は自分を狙ったものでは無かったが、その頬を汗が伝う。)

焔誼迦具楽 > 「ああ――――」

【迦具楽の哂った顔に刀が突き刺さり……その速度により爆ぜるように散り散りになる】

《キキ――ッ》

【やられたならやり返さなければ。
 先ほどのように人間を真似た発声ではない、金属音のような笑い声が響く。
 飛散した迦具楽の頭部、その破片が九つのやじりになって、雨を蒸発させながら石蒜へと飛んで行く。
 鋭く尖り、4000℃の熱が篭った破片。
 刺されば皮膚をえぐり、触れれば肉を溶かすだろう】

《ソレは、ワタしノせりフ!》

【頭を失った体のまま、東雲にこたえる。
 ソレはすでに純粋な人間の声ではなく、金属音交じりの異質な声になっていた】

石蒜 > 飛んでくる灼熱の矢じりに、頬を釣り上げる。なんだ、面白いものもってるじゃないか。
右手を、人差し指と中指を立てた剣指の形にして振るう。飛ばされた刀は弧を描いて石蒜の前を横切り、その矢じりを7つまで弾き落とす。
残りは2つ、その2つを、陶酔した目で見つめながら、左肩と左の二の腕に受けた。肉をえぐり、骨まで焼くその熱に、恍惚とした顔になる。
「あは……っ、いいですね。素晴らしい……」痛みが、苦しみが快楽へと変換され左腕を焼いている。

右手の剣指を、焰誼に向ける。また飛んでいった刀が軌道を変え、その胴へ回転しながら飛んで行く。

東雲七生 > ィ──ッ!?

(少女の頭が爆ぜ、そして響く異質な声に顔を顰める。
 一転攻勢に転じ、飛ばした鏃を目で追うとともに激しい熱を感じた。
 人間ではないのだろう、と薄々勘付いてはいたもののここまであからさまに見せられると言葉を失う以外に出来る事が無い。)

……は、はは……まともじゃねえな……。

(鏃を受けた石蒜の表情にも、それと交戦している異形の少女も、東雲の理解を超え掛けている。
 それぞれ別の理由で、ではあるが。)

焔誼迦具楽 > 《キキ――モったイナい。
 ソれでニンげンなら、おいシソウなのニ!》

【弾かれた破片を自分に戻し、命中した破片は貫通した勢いのまま雨に紛れ別の場所へ】

「――その刀、邪魔だなあ」

【頭部を作り直し、再び人間の声を発する。
 そして飛来する刀に腕を向けると、その腕が解ける。
 黒い糸のようになった迦具楽の腕が、刀を絡めとる。
 同時に硬化し、刀を受け止めた】

「返して、あげる!」

【刀を黒い糸で丸く覆い硬化。
 ソレを錘にして、石蒜へとぶつけるように振った。
 腕が鞭のようにしなり、糸のように細くなりながら伸びて行く。
 振り子のように振られた先端、錘となった部分をたたきつけるように】>石蒜


『見世物じゃないんだから、早く逃げてほしいなあ』

【東雲の足元から声が聞こえるだろう。
 そこには手のひら大の迦具楽の姿がある。
 雨に混じった鏃が、別個に動いているのだ】>東雲

ご案内:「路地裏」にルフス・ドラコさんが現れました。
石蒜 > 「くふ、くふふ。あなただって、それで斬り心地が人間なら、もっと楽しいのに、残念だ!」肉だけではない、存在を焼かれるような炎。この炎、畝傍が放ったものに似ている。つまり、相手は『生きた炎』の関係者か?

「ああ、私の刀が奪われてしまった。これは大変だ!」嬉しそうに、楽しそうに、飛んでくる運動エネルギーの塊を、腕を交差し、斥力を発生させて受け止める。肉が裂け、骨が砕けるのがわかる、関節が悲鳴を上げる。気持ちいい……♥「あはぁ……♥」あまりの快感に、声が漏れる。

黒い糸の中から刀を引き抜く、妖刀の切れ味で、軽く揺するだけで糸は斬れていった。
そして駆ける、距離を取るのは不利だ、床に足がめり込むほどの踏み込みで、一気に距離を縮めようとする。

ルフス・ドラコ > スラム街の方から…とたた、と軽快に走る足音が聞こえる。
印象としては"逆に軽すぎる"とでも言うような、あからさまな人以外の気配で、
炎熱に揺れる路地裏を目指し、何かが駆けてくる。

「そっち行きますから……怪我、してないでくださいね」
大きな声というわけでもないのに、幾つもの曲がり角を超えて確かにその声は聞こえた。
次いで、屋根の上、東雲七生の近くに少女が降り立った。
服は少し焦げがあるが、人間の少女…に見える。
「これまた豪勢な状況ですね、大丈夫ですか、東雲…ナナオ、さん?」
間違いなく初対面にもかかわらず、少女はそう言って東雲七生を間違えて呼んだ。
…良く、字だけを知っている時に行う間違いだ。

東雲七生 > ──ッ!?
……だ、ダメだ!お前ほっといてどっか行けるかよ!

(足元からの声にそちらに目を向ける。
 小さな迦具楽に驚き、その言葉に反射的に首を振る。)

見るからにヤバいだろあんな───の!?
って、今度は何だ、誰!?ていうかまた女子かよッ!?

(今度は新たに現れた少女に驚く。
 名前が間違われた事には気付く余裕が無かったようだ。)

ルフス・ドラコ > 「ああ、それはまた勇ましい。
…チクリと良心が痛みますね、私ができるかぎりで最大限何も無いことを祈っておきます」
平坦に紡がれる言葉は、まるで気遣いという雰囲気とは逆の方向にある。
「実際に会うまでわからないものですね、
攫って来いと言われた対象がこうも好漢だとは」
ね、東雲ナナオさん―
繰り返して少女はそう呼んだ。"依頼書で名前を読んだだけ"だからだ。

焔誼迦具楽 > 「ああもう、これだから化け物相手は面倒なのよっ」

【自分も化け物であることは棚に上げ、伸びた腕を切り離す。
 切り離された腕は再び形状を変え、太い杭のようになって飛び込んでくる石蒜の後ろから迫る……が、速度が負けている】

「あ、だめだこれ」

【おそらく迎撃も防がれるか、悦ばれるだけだろう。
 あっさりあきらめて、体の固定をやめて、ばしゃりと、足元に黒い液体が広まった。
 そのまま踏み込んでくれば、自身の体を5000度にまで熱し、雨によってたまった水を蒸発させるだろう。
 その結果発生するのは小規模の水蒸気爆発。
 高温の蒸気と、衝撃による反撃と……めくらましだ】>石蒜


『斬られたって死なないからいいのに――ってまた妙なのが増えた!』

【ちび迦具楽は逃げない東雲に眉をしかめ、新たな闖入者には面倒くさそうな声を上げた】>東雲、ルフス

石蒜 > 相手が、溶けた。罠かな?罠だ、じゃあかかろう。その方が楽しい!
躊躇いもせず、黒い水たまりの真ん中に踏み込む。

そして
ボンッ
発生する熱による蒸気の爆発的膨張に、全身を打ちのめされ、焼かれる。
「~~~~~~~~ッッッ♥♥♥♥♥」歓喜の声を上げるが、それは爆発にかき消され誰の耳にも届かない。

「あはっ……♥♥あはぁ……。」爆発が終われば、全身に火傷を負って、倒れそうになるのを刀を杖代わりにしてなんとかこらえる。
「いい、すごくイイ……。」全身が焼かれて、衝撃を食らった、その疼痛が、鈍く残る痛みが、快楽になって、脳を浸している。
「もっと、もっと下さいよ!楽しい、とても楽しい!!素晴らしい人だ、たまらない!!」

東雲七生 > 攫って……て?俺を!? つーか、ナナオじゃねえよ!ナ・ナ・ミ!!
あんましたくねえ訂正だけどさ!!……てか攫ってこいって何だよ!?お前は誰っ!?

(矢継ぎ早に疑問を口にする。そうでもしないと頭がこんがらがりそうだった。
 その過程で名前の間違いにも気づき、律儀に訂正を入れる。実のところ、この訂正はあんまりしたくはないのだが。)>ルフス

死なないとか、そういうのじゃなくて!
……だぁぁぁっ、もうっ、敗けんじゃねえぞ!?

(お前について訊きたい事がまだあるんだからな、と迦具楽(大)へと人差し指を突き付ける。
 雨の中だというのに感じる熱が大きくなった気がした、反射的に腕で顔を覆って爆発の余波を凌ぐ。
 しかし、それでもなお立ち続ける石蒜の姿に若干血の気が引くのを感じた。 あれは明らかに異常だ、と。)

焔誼迦具楽 > 「……うっわ、ど変態」

【蒸気が止むまでの間に分離した腕と合流し、再び人型になる。
 どうやら興味は自分に移ったらしい。それ自体は助かるが……正直変態に好かれるのは勘弁願いたいところである】

「どうせさ、死なないんだろうけど……そろそろやめにしない?」

【言いながら、再び数メートルほど離れた距離から腕を向ける。
 またも腕が解け、五本の鋭い棘になって石蒜へと伸びる。
 これもまた超高温。それが石蒜を囲うように五方向から】>石蒜

『むりー、たぶんかてませーん。
 でも無理っぽかったら逃げるから大丈夫だよ』

【いい加減な言葉で答えながら、とりあえず笑って答えた】>東雲

『攫う、ねえ。まあこの人を逃がしてくれるなら幸いなんだけど~……』

【攫って、害される用じゃ意味がない。
 ちびの方が一度液体になり、東雲の体を這い登って行く】>ルフス

ルフス・ドラコ > (炎使い…と言うか、炎ですね、あれ)
(真正面からやりあうことになったらひどく面倒そうです)
「……まあ、それを焼いて燃やして滅ぼすのが一番、というところではありますが」
生憎と、ここまで依頼達成に近い状況を放り出してまで楽しみを優先するには人手が足りない。
……刀使いにはもう少し頑張ってもらわなければ、困る。
「火よ…」
せめて火の支配権争いにでも持ち込んで、火勢を弱めようとしたところで声がかかった。

「ええ、そうですよ東雲なな…すみませんでした、ナナミさん。」
「なにしろ…回ってきた書類にルビが振ってなかったので。」
「さ、それじゃ行きましょうか。
…私のことなら、どうせクライアントに引き渡すまでの付き合いですからお気になさらず。
ルフス・ドラコと言いますけど、覚えなくていいですよ、ええ。」
足元の小さな迦具楽に目をやりつつ、ルフスは七生を急かす。
…当然、こちらに更に分身を割かれれば邪魔が入るからだ。というか今眼の前で入った。
「随分とご熱心というか…知り合いなんですか?例えば命をかける程度には」
七生と迦具楽、二人共に問うような形。

「しかし、貴方がここにいると危ないですし、彼女もやりづらそうですし、ついでに言えば…
何か、出来るんですか?」
言葉の端々に有った、遊んでいたような態度が少し鳴りを潜めた。
全く変わらなかった表情が、ようやく態度に見合うものになった。
ひどく真正面から七生を見る。

石蒜 > 「どうして、どうしてやめるんですか。こんなに楽しいのに!こんなに気持ち良いのに!!」まるで大好物を食べている最中に、待てをされた犬のような悲しげな顔で叫ぶ。

「ああ、私ばかり楽しんでいるせいですか?あなたがつまらないからもう遊んでくれない?申し訳ありません気付かなかった、でもどうやればあなたを傷つけられるのはわからないんですよ。」許しを請うように、早口にまくし立てる、やめてほしくない、もっと傷めつけて欲しい。

「ああ、いや……。そうか、すみません見逃してました、そこの彼、そこの彼を殺せば、あなたも苦しみそうですね。熱中すると視野が狭くなってしまいますね、わかりましたよ。そっちを狙います、いいですね?わかりました!」一方的に決めつけると、伸びてくる5本の刺を、斥力による大ジャンプで回避する。その軌道は、東雲を目指している。
着地と同時に斬りかかるつもりだ。

東雲七生 > ──むりーって、そんなあっさり!?
まあ、逃げるんなら……良いけど、さ。
……だったら勝てなくても良いから、せめてあいつが悪さ出来ない様にしないと!

(その時、あの刀使いの少女はどうなる、と石蒜を見る。
 見たところ動ける状態では無さそうだが、それでもまた同じ凶行を繰り返すのではないか。
 そう考え、迦具楽へと言葉を投げる。)>迦具楽

ちょ──ちょっと待ってくれ……ええと、ルフス!
その、クライアントってのが俺にはさっぱりなんだけど、一体誰の依頼だってんだよ、そんな依頼出される筋合い──

──避けろッ!!
(話の途中だったが、石蒜が跳んだと同時にルフスの身体を突き飛ばそうとする。
 その反動を使い、自分自身も跳躍して石蒜の軌道、およびその刀の間合いから逃れるつもりなのだろう。)

……何が出来るのかなんて、わっかんねぇけど!
捨て置けるような……そんなんじゃ、ねえだろ、これッ!!

焔誼迦具楽 > 「あ、ミスっちゃった」

【不味いなあと思いつつ、考えるより先に体が動く。
 腕を戻しながら地面を蹴って飛ぶ。
 まったくもっと狂った人間を食べておけばよかった。そうすればあの思考も多少理解できただろうに】

「いや、やっぱむり」

【狂った人間は好きだけど、自分がああなりたいわけじゃないのだ。
 体を人間から球体にして硬化、魔術を連続して行使。
 強化――加速。
 加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速。加速――――】

《――――》

【球体になった体は加速の魔術によって、地面を蹴った際のエネルギーを増加、ひたすらに速度を加速させて行く。
 それは高速飛来する大砲の弾。
 着弾地点は東雲の居たはずの場所。
 着弾すれば地面を抉りながら衝撃と破片を撒き散らすだろう】>石蒜

《ベツにわタしヒーローじゃナいんダケ――あっ》

【体を這い上がりながら、間の抜けた声を出す。
 ちょうど石蒜が跳んだ瞬間だ】

『やっちゃった!』

【液体のまま飛び退いた東雲の前に飛び出し、薄く傘のように広がる。
 強度は非常に高く、着弾の衝撃を防ぎながら、ばら撒かれた破片は触れた瞬間に熔解するだろう】>東雲

ルフス・ドラコ > (…熱中して見えていないのは変わってないと思うのですが)
刺を回避しながら近づく軌道。囲みから脱出するようなそれは、全くもって最速で最短を目指すものではなかろうか。

つまり、七生の傍に備えるルフスの正面、攻撃機会に余りあるエリアを通過することに他ならず…
(案外、ああ見えてわかってるんでしょうか?)
ルフスが割って入るとしてもそれは迦具楽の後であり、
それも石蒜を大きく傷つけることがないだろうという状況が。

「私も理由については別に。ただ、研究区へ出入りしてるという補足が載って…」
一瞬の当惑。当然の緊張。聞き流しながらとは言え会話中。
舞台袖から壇上への場面転換のタイミングに、七生の行動はきっちりと嵌っていた。
「ちょっ……と!?」
押し飛ばされれば反射的に手を出す。
もとから"こちらを突き飛ばして逃げ出す"行動には備えてあったのだから、
顕現させた龍の腕(と自分の腕)で力加減を行いながら引き寄せるだろう。

そして、もう片方の腕を前に伸ばし、待っていたもう一つのタイミング、"焔誼迦具楽がこちらに隙を見せる"瞬間に、広がった傘を龍の腕で前に押して弾着点に突っ込ませるだろう。

「好いですね、七生さん」
「私もそういうのは好きですよ」
少女は囁くように言う。
「ただ…好い人から先にいなくなるってのは本当の話なんですけどね」
身柄は確保できた、とルフスは把握するだろう。
ただただ立ち向かおうとする姿を、懐かしささえ持って眺めながら。

東雲七生 > いぃッ!?

(つい数瞬前まで居た場所に着弾した物が何かまで確認する余裕も無く、雨で塗れた足場に骨を折りつつも着地した。
 直後、唐突に展開された盾と飛来する破片に面食らう。訳も分からないままに礫から身を守られ、気が付けば、)

──はぁッ!?

(ルフスの腕によって引き寄せられていた。
 先程から訳が分からないでいたが、ここまで来るともう何が何だか、の域である。)

石蒜 > 「アハハハハ」着地、しかし目標は既に移動していて、いつの間にか居た少女と一緒だ。着地の衝撃を殺して、流れるように振り向きながら切りつけようとして「ギッッ!!♥♥」
全身を砕くような衝撃が突き抜ける。焰誼の体当たりをまともに食らった。
「あがっ…♥がっっ……♥♥」軽い体は何度もバウンドしながら吹き飛び、ゴロゴロと転がって止まった。
「あ、あはっ……♥あぁ……♥♥」痛い、痛い、痛い、気持ちいい……♥ダメージと快楽で身動きが取れず、横たわる。