2015/06/28 のログ
■雪城 氷架 > 再度、水分補給
体も、心も落ち着いている
「………よしっ」
気合も十分だ
うまくいけば自分の力のすべてを知ることができる
入学する時に自分の力を分析した担当の先生は、すべてを話してはくれなかった
公安の男に聞くまで自分の力が特待能力だなんてことも正直知らなかった
多分、ラストステージに到れる可能性という言葉の意味もきっとそこにある
「いくぞ………」
片手ではなく、両手を眼前へと突き出し、集中する
周囲の温度が上がっていくのがわかる
フィールドがそれを感知するように、ヴーンと音を立ててシールドの出力をあげる
■雪城 氷架 > 「Gefängnis des Feuers!!」
建物全体が震動するような爆音と共に出現する、
巨大な白焔、正四面体の牢獄
サイズは自身が出した過去のどれよりも巨大
炎の色から熱量はゆうに4000度を超えるだろう
しかしプラズマ化しないのはそれを制御しているからに他ならない
一辺の距離が十数メートルという巨大な炎の監獄
でも、それだけでは終わらない
■雪城 氷架 > 「(制御するんだ……ちゃんと、全部ッ……)」
炎の檻を創りだしたのは自身の持つイメージをそこへ具現する為だ
本当の【目的】は、その中に出現しようとしている
体温の上昇を感じる、耳の奥に心臓の音が響いてくる
でもいつも程じゃない、不完全ながらも、ちゃんと自分で反動を制御できている
バチッと変な音が聞こえる
超高温計測用のパイロメーターが数値を振りきったらしい
が、そんなことは意に介さない、目の前のことに集中する
「……どうかな、こんなとこだろ。西園寺偲。
アンタが目を覚ましてたら、是非見せてやりたいな」
実習区36番区画に広がる光景
それは、かの炎の巨人が、その身よりも遥かに強力な炎の壁に閉じ込められた姿
「アンタが私の力を勝手に使って創りだしたモノなんてこの程度だ。
こんなものは頂でもなんでもないましてや───」
天使なんかでもない
ただ、牢獄に囚われて何も出来ないだけの力だ
少女は直接の体面こそしなかったものの、
風のうわさで聞いたことはあった
かの炎の巨人を天使と呼ぶ、公安委員がいることを
そんなものは否定する
これは天使なんかじゃない、ただの、力だ
■雪城 氷架 > ───理解できたことがある
分子運動の世界においては熱量に上限は存在しない
つまり何処までもどこまでも、加速し続ける
もしかしたら、西園寺偲が到達したかったのは───
と、そこまでだった
余計なことを考えたせいだ、制御が揺らぐ。
炎の檻は巨人を押しつぶすようにして一点のプラズマ球へと収縮し、大気の中へと消え去った
「………」
両手を下げる
脈拍が早い、嫌な汗も出始めた
これ、以前だったら死んでたんだろうな…と思いつつ。
自身の体温を下げるように、異脳の力を行使する
減速は加速に比べてイメージも実際の運用も難しい
故に、普段は炎熱系能力者のフリをしている
「(…やっぱさすがにしんどい)」
制服が汚れるのも気にせずに、その場に倒れこむように寝そべった
得意不得意の差が、僅かに肉体への負荷を殺しきれなかったらしい
■雪城 氷架 > 「(結局ラストステージなんてのは何処にあんのかな………)」
落ち着かない呼吸をなんとか抑えようとしつつ、そんなことを考える。
単なる強い力、そんなものはきっとそうは呼ばないだろう
ラスト、最後、終焉。
結局、自分を攫ってまで、薬を使ってまで、為したかったことはわからない。
理由を聞く間もなく、西園寺は眠りについてしまっていた
少女は知らないが、そしてもう一人の公安委員も
自分の力の終着点として考えてみれば、それは何処なのだろう
熱量には上限がない、際限なく上がり続ける
きっと最終的には原初の火と呼ばれる摂氏4兆度にも到達するのだろう
もちろん、そこへ到達するまでに自分は愚か、何一つ残らないであろうことは明確だが
「(……難しいこと考えてたら頭痛くなってきた)」
もしかしたら酸欠かもしれないけど
そういえば今度受ける試験は、セカンドステージだとかサードステージだとかの区分とは別のモノらしい
以前川添が丁寧に教えてくれたのだが…あ、そういえばメモとったな、と思い出す
寮に帰ったら読み返そう
■雪城 氷架 > 内線スピーカーから声が響く
「……あ、大丈夫です、すいません、はい」
確かにモニターしていた職員から見ればいきなり倒れたようにも見えるだろう
ゆっくりと体を起こす
「………ま、成長したもんだ、うん!」
日頃の自主練の成果を感じ取っている
これなら異脳の先生に一泡吹かせてやれそうだ
■雪城 氷架 > 「って、一泡吹かせるのが目的じゃないだろ…試験だ試験」
自分にツッコミしつつ、制服についてしまった汚れを払っていく
よく考えなくても列車で帰るのに汚れてたらマズい
■雪城 氷架 > すっかり呼吸も落ち着いた、少なくとも【演習】という環境の中なら、これぐらいはできるということだ
実戦ではおそらく使えないだろう、慣れてもいないし、まず平常心を保つことから難しい
「そういえば括流が防犯用になんちゃらって言ってたな…」
やはり咄嗟に威嚇できるような異脳の使い方も覚えておくべきだろうか、と考える
簡単なのは…
「───んッ!」
何も考えずに、力を放出すること
氷架を中心に炎が波のように舞い上がった
………ダメだ、普通に相手が死ぬかもしれない上に周囲にも危害が及ぶ
■雪城 氷架 > 炎というのがまず扱いづらい
遠目に威嚇するのにはいいが、密着した状態で使えば相手も衣服を着ている。
まず全身大やけどだ、最悪死んでもおかしくない
そんなことになるくらいなら、はっきりいって自分がひどいことをされるほうがマシにすら思える
「となれば……こうか!」
今度は何も考えずに自分を中心にして大気中の分子運動を減速させる
………すごくゆっくり、水蒸気が氷の粒になってキラキラしていく
超キレイだ
ダメじゃん、美しい風景を作ってどうする
気を取られているうちに逃げろとでもいうのか
■雪城 氷架 > となれば、こうだ
減速する速度を加速させる
正直頭がごっちゃになるが、要するに減速のスピードを上げるのだ
0度程度でははっきりいってさっきと同じにしかならない
ならばマイナス40度、これも無意味だ
なぜならドライアイスをどんっと空気中においたところで周りが瞬時に凍っていくわけではない
となれば瞬間冷凍と呼べるのはマイナス173度、液体窒素レベルだ
更にそこに、大気中の水分の分子をコントロールして集結させる
いざ実践!
………氷架を中心に、まるで氷の華が咲いたような美しい光景が広がった
一瞬にして凝固した水分がまるでツララのように尖った花びらとなり突き出している、カッコいい
「……イヤだめだろ、死ぬよな」
とことんリアクションスキルとして使うのがめんどくさい異脳であった
■雪城 氷架 > しかしやってみてわかったこともある
氷結能力として異脳を使うと、炎熱に比べて遥かに面倒くさい代わりに体への負担はかなり少ない
まぁ2000度3000度と上限なく上がっていく炎に比べて、
氷には絶対零度という実質頭打ちが存在する
分子の運動量が完全に0になってしまえばそこで終わりなのだ
自分の肉体にとっては、氷結能力のほうが優しい
割りと自分の名前通りだな、なんて思いつつ
考えも煮詰まったところで今日はこのへんにしようと内線にコールをまわす
「終わりました、フィールド解除してください」
演習場には綺麗に咲いた氷の花が一輪
氷そのものを操作する異脳ではないが故に、力から手放してもすぐに溶けたり消えたりということはないのだ
ご案内:「第一演習場」に霜月 零さんが現れました。
■霜月 零 > 特に深く考えず、練習のために演習場に顔を出してみたが…一応知ってる顔、くらいの奴がいた。
炎の巨人事件の、ある意味最大の被害者。ついでに、そういう意味では自分と戦いもした相手。
「魔術……いや、異能かなんかの練習かね」
人がいるならば、取り敢えず見学と思ったが……どうも、ちょうどよく終わったようだ。
「よぉ、頑張ってんな」
取り敢えず、適当に声をかける。
■雪城 氷架 > 「ん」
あぁ、そうか。フィールドが解除されたから他の利用者も入ってこれたらしい
「アンタは確か、芙蓉の兄貴?」
だっけ?
と確認するように、声に答える
■霜月 零 > 「ああ、そうだ。そーいや名前言ってなかったっけな?
霜月零。妹が世話んなるみたいで、よろしく頼む」
この少女の所にルームシェアしに行く、と言うのは既に報告として聞いている。
そう言う意味では、ちょうどよく対面できたと言ってもいいだろう。
■雪城 氷架 > 「あ、私は…って私の名前は知ってるか…」
でも一応、とその流れで自己紹介を済ませるだろう
「優しい兄貴だって聞いてるよ、芙蓉も芙蓉で、兄貴のこと大好きみたいだしな。
仲の良い兄妹って感じでなんだか羨ましい」
くすりと微笑む
■霜月 零 > 「俺としちゃあ、アイツの親愛表現は勘弁して欲しいんだけどな…最近はそうでもないが、会うたびに弓ぶっ放されちゃかなわん」
困ったように頭を掻いている。だが、満更でもなさそうだ。
「アンタもアンタで、よくもまああんなお転婆とルームシェアなんてしてくれたよな。感謝するよ。
……と、そういえばさ。お前も姉妹がいるんじゃねーの?」
ふと思い出す。そういえば、以前少し武術を教えた雪城涼子……死んでいると言っていたが、姓が同じだ。もしかしたらそういう類なのかもしれない。
いや、でももっと前に死んでたって言ってたような……?
■雪城 氷架 > 「勘弁してくれ、って感じの顔してないぞ、霜月兄」
苦笑する
本当に仲の良い兄妹なのだろうと
「兄貴なら理解るかもしれないけど、手の届くところにいないと不安になるだろ?芙蓉って。
女子寮住まいだと兄貴も心配だろうし、一人住まいよりはいいじゃん?
……ってのは家族向けの建前で、単純に一緒に住む相手が増えるのは楽しいし大歓迎なんだよ」
くすくすと笑う少女の笑みは、
芙蓉のような満面の明るい笑みではないものの、素直さを感じさせる
「私は一人っ子だよ、この学園都市にはお母さんと来てるけど。
お母さん見た目若いから多分勘違いしたんだろうな…私みたいな銀髪で髪の長い子だろ?」
■霜月 零 > 「ははっ、どーにもアイツに色々あってから、素直に兄として妹を大事にする気になっちまったらしい」
苦笑する。前は本当に心の傷になっていたが、もう妹が元気ならそれでいいと思えるようになっていた。
「にしても、全くの同感だ。アイツ、マジでほっとくと何するかわかんねーからな。アンタと一緒に暮らしてりゃ、アイツも退屈しないし安心だろ。ホント、いい友達見つけたもんだ」
くつくつと笑う。素直そうな笑みは、きっと彼女の本心を表している。この子ならば、任せても問題ないだろう。
「…………え、母親?いや、死んだっつってたけど、母親なのか!?」
だが、その後の発言にびっくりする。何歳年上だったんだ……!?
■雪城 氷架 > 「あぁ、怪我したって言ってたもんな。
考えたらすぐ動いちゃうタイプなんだろ?兄貴が心配するのも無理ないよ」
子供っぽい、という言葉を使うのは簡単だが、きっと彼女の良さはそれに留まらない
そんなことは、友達になってからことさら感じている
「え? あ」
どくん
「………そ、そうだよ、母親なんだ。あれで……。
い、異脳の力でさ、死んでも、その、生きてるように活動できてるだけなんだ」
目が泳ぐ、嫌な汗がふき出す
その質問をなげかけた青年にも容易に伝わるくらいに、その様子はおかしい
■霜月 零 > 「怪我、まあ怪我、だな」
少し遠くを見る。妹が負った傷はその程度に留まる物ではないが……妹がそれを口にしていないなら、自分が口にするべきではないだろう。
が、その後氷架の様子が変わると慌てて近寄って声をかける。
「おい、どうした!?なんかあったのか!?」
もしかしたら、母親の死がトラウマになっていたのかもしれない。軽率な言葉を使った自分を恥じながら呼びかける。
■雪城 氷架 > 「…な、なんでもない。なんでもないよ、大丈夫……」
そう、母は
雪城涼子は生きているようにしか見えない
だから普段は意識することもないし、しないようにしていた
母は死んだのだ、あの時
私と、兄貴───来島先生の、目の前で。
冷や汗がとまらな、体の震えも。
久しぶりに【母の死】を思い出してしまった
あの光景が、脳裏にフラッシュバックして───
「大丈─────う」
その場に、吐いてしまった
■霜月 零 > 「大丈夫に見えねぇよ!」
吐き出したのを見れば、吐瀉物が跳ねて汚れるのも構わず肩を掴んで声をかける。
「落ち着け、取り敢えず落ち着くんだ。なんなら俺を殴るなりなんなりで気分転換を図ってもいい。取り敢えず、落ち着け」
ゆっくりと、出来るだけ焦らせないように声をかける。
■雪城 氷架 > 「けほっ、げぼっ……!
…はぁ…っは……や、ほんと…なんともないって……。
ちょっと、お母さんが死んだ時のこと思いだすと、キツいんだ……それだけだから……」
顔色はよくない、冷や汗も出ている。
零が感じた通り、トラウマというやつだろう。
■霜月 零 > 「そりゃあ、大丈夫じゃねぇだろ……!」
やはり迂闊だった。少し考えればわかる話なのに、なんてことを口にしてしまったのか。
取り敢えず、気持ちを一気に切り替えさせないといけない。こういう時、自力ではなかなか復帰できないものだ。
「ちっ……」
後でブン殴られるのも、異能でふっとばされるのも一気に覚悟を決めた。
取り敢えず、意識をフリーズさせる……!
「すまねぇ!」
肩を掴んだ状態から、一気に抱きしめた。
「すまねぇ、俺が迂闊だった……取り敢えず、落ち着いてくれ」
■雪城 氷架 > 「だ、大丈夫だよ……!
もう、何年も前の話だ─────しっ…!?」
唐突に抱きしめられる
「!?!?!?」
いや何してるんだお前なんでいきなりわけわかんないぞこのシスコン兄貴
色んな考えがぐわーっと頭の中を巡っていく
……酷い記憶も、とりあえずは感情の濁流に飲まれていく
思わず硬直
「ちょ、え、あ、おい、な、何………」
■霜月 零 > 「……すまん、落ち着いたか?」
意識がフリーズしたとみると、手を離してちょっと離れる。
「お前の意識を切り替えないと、と思ってな……思いついたのがこれだった。重ね重ねすまん」
深々と頭を下げる。理由があるとはいえ、急に男子に抱き付かれるのはいい気分ではないだろう。
そもそもが自分の失態であることも含め、それこそひっぱたかれる覚悟は出来ている。
■雪城 氷架 > 「い、いやいや、だから私だいじょうぶだって言ったじゃんっ」
本当は微妙なところだったけど、故に、霜月兄を責める気にはまったくなれない
「べ、別にどういう言う気はないけどさっ……ほ、他になんかなかったのかよ……」
なんだか目を合わせづらくて顔を背けてしまう
みっともないところを見られたというのもあるが…
妹に抱きつかれ、兄に抱きつかれ、なんという日だろうか
■霜月 零 > 「すまん、咄嗟には思いつかなかった……」
気まずそうに頭を掻く。流石に、行為としてちょっと色々と危う過ぎた気はする。
「そもそも、俺が迂闊な事を言ったのが悪いんだからな……すまん」
もう一度頭を下げる。これは絶対に詫びないといけない事だと、零は考えていた。
■雪城 氷架 > 「……あー!あー!もういいよ、頭下げなくたって!
別に謝られるようなことはされてない!」
ぐいっとその頭を掴んで無理やりあげさせる
「びっくりはしたけど、別に───」
謝られることではない
むしろ、ここは……
そうだ、そこは礼を言わなければならない
礼を言うのだ
礼を……
礼を
「えっと……」
さんきゅな、と言う言葉がなぜか出てこない
多分、気が動転しているせいだ
■霜月 零 > 「うおっ…」
無理に頭を引っ張られ少し動揺。そこから先、言葉が出てこないのを見ると、少し心配げになる。
「あ、あー…大丈夫、か?」
やはり抱き付いたのはまずかったか、と取り敢えず声をかけてみる。
■雪城 氷架 > 「……だ、大丈夫 だ」
つい目線を逸らす
礼を言うんじゃなかったのか自分
とりあえず落ち着け
落ち着いた、うむ
「ま、まぁ……私、子供の頃にお母さんが死んだトコ見ちゃったからさ…不意に思い出すとちょっとな……。
悪かったな…へ、ヘンなことさせて……」
結局お礼は言えず、濁す程度で終わるのだった
■霜月 零 > 「いや、本当に俺が迂闊だったのが悪いんだ」
だから気にしないでくれ、と宥める。
と、そこで気づく。靴や服が、吐瀉物で汚れてしまった。
「あ、あー……どーっすっかな、これ」
少し困ったように頭を掻く。
■雪城 氷架 > 「ご、ごめん。あぁそうだ、訓練施設のほうに休憩室とかシャワールームがあったな…」
簡単な洗濯くらいは出来るだろうか
「……ほんと、ごめん。こんな…」
さすがにシュンとしてしまう氷架だった
■霜月 零 > 「いや、これも俺が迂闊な事したのが悪いんだからさ」
あー、と頭を掻く。だが、こうなった時人は、どうしても申し訳なさが立つものだ。
妹にするようで、ちょっと悪いが……もう、ついでだ。
「だから、気にすんな。お前は悪くねぇよ」
ぽん、と頭の上に手を置いて軽く撫でてやる。
思えば、芙蓉がやらかして申し訳なさそうにしている時は、よくこうしてやったものだ。
曰く『なんだか落ち着く』だそうで……少しは、効果があるかもしれない。
■雪城 氷架 > 「……ん」
普段ならやめろよと振り払うのだろうが、
今はなんだか不思議と受け入れてしまう
「きゅ、…休憩室のほう行くぞ、
さすがにそのままじゃダメだろ…確かジャージくらい、貸してくれるし……」
■霜月 零 > 「おう、じゃあ取り敢えず着替え確保だな」
お前もちっと汚れてるしな、と笑う。
笑顔は、人を落ち着かせるという。この笑顔も、少しは効果があればいいが。
そんな事を考えながら休憩室の方へ向かっていくだろう。
ご案内:「第一演習場」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「第一演習場」から霜月 零さんが去りました。
ご案内:「第一演習場」にウォラーレ=オートリーさんが現れました。
■ウォラーレ=オートリー > 「おー……此処が演習場。ひろー」
ノシノシと地面に爪を立てて歩きつつ、のんびりとした調子で周囲を見渡す。
今まで見てきた施設の中ではーー入れなかった場所は別として、一番広いのではないかと思う。
しかも……今は何も無い、ただ地面が広がるだけの空間であるが、
生徒が望むなら様々な環境を用意することが出来るのだという。
「いいなー、面白そうだなー」
自分の好みで好きに設定できるーーつまり、色々遊ぶ事が出来る空間。
それはとても魅力的で、近くに居た教員に何かやらせて貰えないかと聞いてみたが……
当たり前のことながら、この空間は危険な異能や魔術の習熟、あるいは訓練に用いられる場所である。
そんな理由での許可がおりる筈もなかった
■ウォラーレ=オートリー > 「だめかー……訓練、訓練かー……」
困った様な顔をする教員の前で、がっくりと肩を落とす。
異能や魔術と言われても……素養が無いのか、
そもそも種族として不可能なのか。
全くといっていいほど適性がなく、欠片も扱うことが出来なかった。
かといって、自分に出来る事と言えば…………
「……!」
ピコン、と頭に閃きが走った。
いぶかしみながら此方を見ていた教員の肩をガシリと掴むと、
その思いつきを勢い込んで説明する。
やつぎはやに繰り出される言葉に目を白黒させながらも、
内容自体には一考の余地があると判断したのか……
しばらく悩んだ後に、使用許可が正式に貰えたのであった
■ウォラーレ=オートリー > 「やた!! 何事も挑戦だー♪」
にこにことご機嫌な調子で笑う少女に苦笑いを浮かべつつ、
教員は提示された【練習カリキュラム】に必要な物を、
演習場に展開させていく。
魔術的な仕組みが作動し、何も存在しなかった筈の空間に
必要な資材の設計図が書き込まれ、見えざる力がそれを確認。
確かな精度で以て現実に打ち上げ、完成させていく。
「へぇー……!」
好奇心に目を輝かせるウォラーレの前で……それは、
音もなく完成し、演習場に姿を現した
■ウォラーレ=オートリー > それは……一言で言えば、巨大な箱だった。
黒々とした表面には傷一つなく、
つるりとした表面が照明の光を受けて鈍く輝いている。
厚みは小さな車ほどだが、横幅と高さは大きめのビル程もあるその箱は、どっしりとした重量を漂わせながら、
演習場の端にそびえたっていた。
■ウォラーレ=オートリー > 「へー……本当に頼んだ通りに出来るんだ」
【カリキュラム】の邪魔にならないように場外へと出ていく
教員に礼を告げつつ、
完成した箱ーー演習場の向かって反対側の端に作って貰ったので、よりその大きさが分かるーーに目を向けた。
「ぃよし。それじゃ、やってみようかなー」
肩や関節をグイグイと回し、脚を軽く、尾をゆっくりと動かしていく。
今回練習するのは他でもない……自分が最も得意なこと。
飛ぶことだ。
■ウォラーレ=オートリー > 「こっちの空だと、上手く飛べないんだよねー」
呟きながら羽をゆっくりと畳み……脚の甲殻を開きつつ、尾をしならせる。
この世界に来てから何度か試したのだが……
自分が以前いた世界と比べ、風の流れに違和感を感じる事が多くあった。
感覚的なことであるし、そもそも飛ぶ知り合いが居ないこともあって棚上げにしていたのだが……
何度か墜落するうちに、流石にこのままにしておいては不味いかもしれないと思う様になってきた。砂浜に穴をあけるのは、あまり良いことではない。
そこでーー全くの偶然にたどり着いたのだがーー折角、どう飛んでも周りに迷惑を掛けない場所を見つけたのだ。
一度思いきり飛んでみれば、そこから何かが掴めるかもしれない。多分。
■ウォラーレ=オートリー > 「さて、と」
とは言え、限られた空間である以上……本当に全力で飛ぶことは出来ない。
そこで、ぶつかってもいい目標をーーどうせなら、的当てのマークでも書いて貰えば良かったかもしれないーー用意して貰ったのだ。
これなら、此処で出来る限りの力で飛んでも、そのまま何処かに飛んでいくと言うことは無いだろう。
うんうんと頷きつつ、ゆっくりと羽をはためかせる。
それに導かれる様に……ウォラーレを中心として、風の流れが変わり始めた。
演習場内をただあるがまま、静かにたゆたっていた流れが……
まる猛禽の鳴き声の様な高音を立てる翼に、管楽器にも似た甲高い叫びをあげる脚部に、鈍く唸る様な音を立てる尾に。
そして口笛に似た響きを響かせる体に。
引き寄せられる様に、あるいは囚われる様に。
膨大で荒々しい流れとなって押し寄せ、その全てが風の中心にある少女に喰われていく。
■ウォラーレ=オートリー > 風を喰らい、甲高い叫びを背後に流しながら……
ギリギリと、弓を引き絞る様に姿勢を整える。
狙いは、的のど真ん中。視界の中央に目標を見据え。
「 」
瞬間、少女の姿がかき消えて。
■ウォラーレ=オートリー > ゴッッッッッッッッ!!!!!!!
■ウォラーレ=オートリー > 轟音が、全てを薙ぎ払った
■ウォラーレ=オートリー > 一瞬前まで、悠然とそびえたっていた巨大な箱。
それが、まるで巨人の指で弾かれたかの様に大きく撓み……
風船を一気に膨らませる様に背面が大きく膨らみ、ミヂミヂという、何かが引きちぎられる様な嫌な音を立てる。
尤も……それを正確に観察する事が出来た者は殆どおらず。
激突した衝撃で撒き散らされた猛烈な風は周囲を薙ぎ払い……
周囲の砂塵を巻き上げかき回し、局地的な砂嵐の様に吹き荒れていた。
■ウォラーレ=オートリー > 巻き起こされた予想外の出来事に、場外で監視していた教員があっけに取られ…………
はっと我にかえると、慌てて演習場の設定を操作し始めた。
要請に応えて魔術的な仕組みが即座に作動し、
吹き荒れる砂嵐を沈静化させ、巻き上げられた砂や塵を地面へと押し戻していく。
そして、明らかになっていく視界の中に……
大きくたわみ、見るも無惨な姿に変形させられた箱が飛び込んできた。
■ウォラーレ=オートリー > 直撃を受けたであろう箇所が円形に大きく凹み、
直立していた筈の箱が、まるでお辞儀をするように大きく折れ曲がっていた。
横から見れば、歪な く の字に見えなくも無いが……
くの字の角、激突した部分の反対側に視線を向ければ、
その部分が大きく膨らみ、所々が大きく裂けて
花開く様にめくれ上がっているのが確認できるだろうか。
■ウォラーレ=オートリー > そして……直撃の中心地、激突した張本人がどうなったかと言えば……
「ぐ、ぐううううう」
折れ曲がった箱に、体の半ば近くまでをめり込ませる様な格好で埋まりこみ……引き裂かれた残骸に巻き込まれ、じたばたともがいていた。
■ウォラーレ=オートリー > 余程頑丈なのか、それとも何らかの方法を用いたのか……
僅かな湯気を上げ、それなりに怪我は負っていたものの、それ以外には大きな欠損はなく……五体満足であの惨状を乗り切った様であった。
「ちょ、だ、誰か助けてー!?」
もっとも……半ば以上めり込んだ体を引き出すのに、
ここから相当な時間が掛かることになるのだが……
それはまた、別の話であった
ご案内:「第一演習場」からウォラーレ=オートリーさんが去りました。
ご案内:「第一演習場」に如何夜羽さんが現れました。
ご案内:「第一演習場」から如何夜羽さんが去りました。
ご案内:「第一演習場」に如何夜羽さんが現れました。
■如何夜羽 > 夕方頃、所謂学校が終わり際にこの場所へ直行した次第である。
「誰もいなさそう…?いないならそれはそれで好き勝手にするけども」
広く、静まった空間を中央のグラウンドからぐるりと辺りを見渡す。
所々浮いている『何か』が見えるが、今回の夜羽の目的はそういう事をしに来た訳ではなく、
どちらかといえば頭の整理と言うべきだろうか。
最も一般人が言う頭の整理とは別物で、
夜羽の頭の中は簡単に言ってしまえば乱雑に武器を積まれた武器庫の様なものである。
「誰もいないなら…整理を済ませてしまおうかな?」
グラウンドの中央にある魔法陣の中央に立ち、身体から足を通してその魔法陣に魔力を流し込む
映す情景は何も無い、そのまま地平線が見えてしまいそうな荒野
■如何夜羽 > 変わった。
そう心の中で呟くならば黒マントより見えない相手に対して飴をせがむような右手を出すと夜羽は頭の倉庫より何かを呼び出す合言葉のようなものを呟く
「概念故に忘れ去られかけてる物質。
今それを喚び出すならば鮮明に人の記憶に残るであろう
故に概念。故に遺物。故に今より生み出すのは人々の記憶に残りし伝記の遺物!
第一に思い出すは…九文字槍」
そう虚無へ呟けばいつの間にか夜羽の手には十文字槍そっくりの…九文字槍が握られている
■如何夜羽 > ズシリ、と右手にかかる重さ。
見た目はとある戦国武将が使っていたとされる十文字槍の…贋作九文字槍。
夜羽自体も頭の倉庫の中に埃を被っていた為に
どのような効果だったかあまり思い出せないでいる
夜羽は槍を掴んだ手をブンッと振れば槍先から発車される五円玉…に似た石ころ。
恐らく六文銭が何かが歪んでこういう効果になってしまったのだろう。
「…こんな効果だっけ、これ」
そう呟けば乱雑に地面に突き刺し、
次の贋作を引き出す為に再び先程と似た構えを取る
「第二に思い出すは…ミョルミル!」
■如何夜羽 > 再び空中で掴むは…見た目ただの金槌。
ただそれを掴めば全身にビリ、と電流が走る。
「あぁ…そういえばこんな効果だったなぁ。
叩いた人に電気ショックが出るならいいけど、掴んだ人にも電気ショックが来るとかドMじゃないと無理無理」
本気の魔力を込めればこんなのフンッ、と鼻で笑い飛ばせるような効果が出せるが、今はそんな事ではないし、疲れるから夜羽はやらない
というより演習所に雷が落ちたという話になれば洒落にならない。
夜羽はシビれる金槌を投げ飛ばし次の物を引き出すべく手を差し出す
「第三…第三は…マテリアルライフル!」
今から引き出す物は片手では流石に重いために左腕も構える。
そんな恐ろしい物ではないが、念のためと言ったところだろう
■如何夜羽 > 生み出されるのはマテリアルライフル。和訳するなら物銃。
そのライフルのずっしりとした重さは両腕から伝わってくるが持てない程ではない
そしてこの銃の効果はどういうものかといえば
「…アンチマテリアルライフルは対物銃って言われるけど、そのアンチが無くなったら、置物の銃だよね。うん」
弾丸が無い訳ではない。引き金が壊れている訳ではない。
言うならば常にセーフティが効いている銃。鑑賞用の銃とでも思っていればいいだろう
「使い物にならない、ということで…第四に思い出すはツライ…あぁ、もういいや。
四つも同時に表現するのはボクの魔力切れが危ないし…Return!」
そう演習場全体に響く声を出せば荒野の情景も消え、側に置いてあった『贋作』もいつの間にか消えている
■如何夜羽 > 「近いうちに整理しないと、なぁ」
ウーン、とその場で背伸びをしたり肩を回したり、と後半から集中力は切れかかっていたが、
それでも魔力を使った分それなりに頭は使っていたということだろう。
人は忘れる。人は忘れるから思い出したりするのだが、その切欠はどこから現れるかは分からないものである
実際に夜羽の頭の武器庫で忘れ去られた武器は幾つかあるが、それを思い出す切欠もどこかであるだろう
「…ま、出せる時にいつでも出せれば問題無いんだけどさ」
そんな軽い口を叩きながら九文字槍から発射された五円玉に似た石ころを蹴飛ばしながら演習場を後にする
ご案内:「第一演習場」から如何夜羽さんが去りました。
ご案内:「第一演習場」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > この日の【魔術学応用論Ⅱ】の授業は、珍しく休講となっていた。
尤も、受講している生徒のほとんどは獅南の【凡人教室】の生徒である。
その知らせに驚いた生徒はほんの僅かだったかも知れない。
「………………。」
理由は体調不良でも,出張でも,身内の不幸でもない。
彼はもう2日間ほど,まともに眠っていないし,食事もとっていなかった。
彼にとっては、ある意味で、いつもの事だ。
今回は蒼穹と対峙した時に見た『滅の矢』と,破壊に特化した異界の術式を徹底的に分析、模倣し、実用化を目指している。
■獅南蒼二 > 術式そのものは,現段階で可能なレベルでは殆ど完成と言ってもいい。
魔力の系統が違うため,破壊の術式そのものを完全に模倣することはできず,概念や魔力や術式への効力は失われた。
だが、物質を破壊するという単純かつ強力な要素は,ほぼ完全に模倣できたと言える。
「……………。」
問題は,破壊の魔力を持たぬ人間では肉体や精神への負担が大きすぎて使用不能だということだ。
この点を解消しない限り実用化など夢物語だが、すでに見通しは立っている。
■獅南蒼二 > 実験標的として、500mmの鋼鉄板を設置してある。
これを貫通することができるのなら、威力は戦車砲並ということだ。
実験段階の、個人が運用できる火力としては、悪くない水準である。
「これで、上手く行くはずなのだがな…。」
右手の小指に黒曜石で作られた指輪を嵌めた。
指輪にはあらかじめ、大量の魔力を充填してあり,生命を模倣する術式が書き込まれている。
つまり、この指輪は擬似的に“生きている”状態になっているわけだ。
破壊魔法の反動を,この指輪の“死”によって相殺しようという魂胆である。
計算上は成功するはずだが、失敗すれば、命をも失いかねない。
■獅南蒼二 > だが、特に躊躇することは無く、瞳を閉じれば術式を組み立てる。
内在する魔力と指輪の魔力を材料に“破壊”と“直進”という極めて単純な属性を、何重にも何重にも書き重ねていく。
「……………ッ」
真っ赤に発熱して、指輪が砕け散った。同時に瞳を開いて…矢を放つ。
無音で飛翔した黒い矢は、鋼鉄板に突き刺さり…否、鋼鉄板をすり抜けるように貫通して、背後の壁にぶつかり消滅した。
破砕音も飛翔音も無く、あまりに手ごたえが無い…だが、鋼鉄板にはくり抜いたような穴が開いていた。
■獅南蒼二 > 実験は成功…だが、その瞬間に獅南は胸を押さえて座り込んだ。
指輪1つでは反動を相殺し切れなかった。
破壊の魔力を持たず,通常の魔力を充填した指輪では、やはり、不十分だったようだ。
「………悪くは、ないか。」
実験は成功だ。反動を完全に相殺することはできなかったものの、それは量的な問題である。
分析の結果も、概念も、対処法も、間違ってはいなかった。
この収穫は、大きい。
■獅南蒼二 > 息を整えてから、静かに立ち上がる。
【魔術師喰い】から得られた術式と、蒼穹から得られた術式。
想定していた通りに、両者を組み合わせれば強力な魔術を行使することができそうだ。
後はこれをスクロールに描き込むか,どうせならば黒曜石の杖でも作って魔力と術式を込め、触媒と反動の相殺を兼ね備えた魔道具を作り出してもいい。
「しかし……コストパフォーマンスは良くないな。」
苦笑を浮かべつつ、部屋の隅のベンチに腰を下ろして、ポケットから煙草を取り出した。