2016/07/25 のログ
■寄月 秋輝 >
かなりの時間ダウンし続け、ようやく息を整える。
恐ろしく重く感じる体をなんとか立て直し、立ち上がる。
若干ふらつくのをこらえ、魔装を解除した。
「……しばらく、続けるか……」
疲れきった様子で呟いた。
恐ろしく体に負担がかかるが、失った勘は取り戻さないといけない。
実戦はまたそのうち、機会が訪れるだろう。
まずは全盛期の力を取り戻さなければならない。
あの頃とは違い、生きるために。
■寄月 秋輝 >
汗だくの体を引きずり、シャワールームへ消える。
今日は食事が大量に必要そうだ。
ご案内:「演習施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に尋輪海月さんが現れました。
■尋輪海月 > 「――……ッー……はぁぁ……」
――申請をし終えて、色々な手荷物の入ったトートバッグを片手に、物々しい格好。
今から此処で鉄の溶接加工を行う、と言えば納得してしまいそうな格好で、彼女はそこに居た。
なるべく間合いを広く取れるようにしたところで、トートバッグから、ビニール袋に入れた、何枚もの、鉄の輪っか。
恐らくは何かの部品だろうが、錆びたり焦げ付いたりグリースだらけという辺り、何かの乗り物の廃部品か。
……それを片手に持てるだけ持ち、トートバッグを蹴って、壁際まで飛ばすと、深呼吸。
「…………大丈夫……あの時、みたいには、……絶ッ対、しない……」
■尋輪海月 > 「……」
普段から、これくらい自分は冷静な様でありたいと思っている。何かに怯えるような素振りだって、分からなくて彷徨う間抜けな姿だって、
自分の素と言えば素だが、それを覆い隠す、かっこいい自分が欲しくて、けれど、……過去の因果か、ただただ、人との間合いが、怖くて仕方ない。故に、
挙動不審になるし、解ることの余裕も無い。
此処に来れば、きっと、それの根源である、"これ"だって……――
鉄の輪を一枚、もう片手に取り、前方に構えた。
「……ッ…………あたしに、絶ッ対、逆らうなよ……!!
――『火炎輪』ッ!!!」
■尋輪海月 > そう叫んだ刹那、
――鉄の輪が、猛烈な発光と共に赤熱し、……炎上した。
燃え盛る輪は、その手を離れて浮遊する。炎の玉ならぬ炎の輪が、不安定に炎の勢いを変えながら、ゆっくりと、ゆっくりと回り始めた。
「ッ……ぬうぅぅうううぅぅぅ……!!!」
――その輪っか一枚を制御しているであろう本人はと言うと、鬼のような形相で輪を睨みつけて、手を震わせていた。
まるで、抑えこむようだった。その炎を制御するのに、抑えこむ意識が必要だった。
……そうしなければ、また、あの時の、ように――。
■尋輪海月 > 「ッ……落ち着……け……」
か細く声が零れて、震えた。
炎がゆらぎ始めた。輪の回転は早くなる。徐々に、その制御を離れていくように。
からからと音を立てて、もう片方の手に持った多量の輪からも、熱が発され始める。冷静さが欠けていく程に、力は暴走を始めた。
「ッ……落ち着け……落ち着け、落ち着けッ……落ち着け、落ち着け…って、ばぁ……!!」
段々と、悲鳴のようになっていく。熱の対策を万全にしているはずなのに、目の前の炎は。自分の制御下にあるはずのそれらが、恐ろしい。
――恐ろしく感じる程に、炎は、強くなる。輪は高速回転を始め、風切音を発してくる。
■尋輪海月 > 「落ち着けって、言ってるのに……なんで、なんでっ、押さえられ、な……!!」
――訓練場の温度計の数値が、急速に上がっていく。
真夏の炎天下のような陽炎が、密閉された空間で発生している。
冷静さを欠く環境の変化で、いよいよ、手に持つ輪っかからの熱で、耐熱素材のはずの手袋が焦げ付き始めた。
――腕を振って、輪を投げ捨てる。制御を目の前の一枚にしぼり、他の輪の制御を切り離そうとして、
「ッ……な、嘘……ちょっと……!!どうしてよッ……!!」
投げ捨てた輪が、離れた途端にまとめて炎上する。
赤熱しきった輪が、先の一枚と違い、炎上と同時に高速回転を始める。
主の周囲を、高熱の炎をまとって回転する鉄の輪が囲む。
ご案内:「訓練施設」に雨野 明さんが現れました。
■尋輪海月 > 「は……ッんの、この、このッ!!」
念じるだけ念じた。収まれ。止まれ。消えろ。
腕を両方の浮かぶ輪にかざすように、制御を試みる。
多少勢いは止まるのに、それでも尚、ひとりでに炎上は激しくなる、回転は更に速くなる。
――自分さえ、この炎は、焼き殺そうとしてくる。
足元がふらつく。熱に頭が侵される。意識を集中しようとすればする程、全身の感覚が麻痺していく。
平衡感覚が崩れ、視界がぶれる。
輪の発する熱をもろに浴び続け、思考が溶け出す。
制御を、制御を、制御を――。
「ッ…………止まれっ……止まっ…れ…ってば……っ!」
■雨野 明 > たまたまの補修にて呼び出されてた訓練施設。
近隣の部屋で何やらトラブルがあった様子が伺い知れた。
「な、なにやってんだあ…?」
大規模な炎の異能か魔術でも使ったか、なんて思えるくらいの熱量で。
何しているのか野次馬と、それからちょっと文句の一つでも言ってやろうか、なんて心づもりで、
尋輪の入っていた室内のドアを二度叩き、返事を待たず戸を開ければ、
少年はなんら躊躇わず押し入った。
「おい!」
威勢よく踏み込みと共に言うはいいが、室内にいざ入ってみれば益々暑い。
全身熱い湯船に使った様な感覚と、妙なコゲくささ。
けどそれはあんまり問題ではなかった。
「………えええ?!な、何やってんだよ、…何やってんだよ?!
ってか大丈夫か?!それ!」
その先には所謂工業系女子…というのか、いかにもそんな感じの格好の人が、
赤橙色の燃え上がった輪っか?に包囲されている。
何が何やらさっぱりだけれど、とりあえず望んでそんな状態でない事はそれこそ火を見るより明らかである。
頭で追い切れない事実なので驚きはすれど、その驚きの分無駄に大きな声を張り上げた。
片手でメガホンみたいなものを作ってはその先へと呼びかけてみるが…。
■尋輪海月 > 「ッ……え、う、ぁ……?」
炎と輪の回転の制御に目一杯な頭が、辛うじて、何か、自分の荒い息遣い以外の声を拾った。両方を同時に応答は出来ず、
呻くような反応をするだけ、浮かぶ輪に、両手をかざすまま。けれど、もう既にそれをするだけの体力も残っていないようなふらふらな足取り。
ふらつきのふれが大きくなる。輪の炎が一段と、一瞬、膨れ上がるように膨張し、その勢いに後ろにふらついた。
「うぁッ……!!」
ゴーグルで護られていた顔を、それでも両手でかばって倒れる。そして、そのまま仰向けに、力なく転がった。
……先までの炎や高速回転が、その女子が倒れたのと同時に、一瞬大きく光って――急速に発熱した為のそれ。電球のフィラメントのような光。――……ぱきんっ、と。
浮かんでいた輪が、一瞬にして鉄の焦げ屑となって転がる。
熱の余波と、発光の反動で、薄暗くさえ感じるようになった室内で、炎に吹き飛ばされた女子が倒れたまま起き上がらないでいる状況。
■雨野 明 > 妙な焦燥に駆られたまま、返事を待つと共に暫く様子を外から野次馬していた。
一体集中しきっているのか、答えは得られない。
燃える炎や煙のせいで工学系女子の表情まではあまり伺えないが、
それでも状況を見るからに宜しくない事は確かで…。
「……っ?!」
不良とはいえこういうのを見たら放って置けない性質でもある。
焦りか驚きか、単に熱いのか、気付いたら汗が滴っていた。
けれど何か少年が手を出す前に、それは手遅れと言う形で終わってしまったのだろうか。
真っ黒に燃え尽きて脆く崩れた鉄の残りカスと、段々と涼しく、
焦げ臭さが残っていく部屋の中。
「生きてる…よな?お、おい、なんとか言ってくれよ…。」
若干腰が引けている。
あまり積極的に近づこうとしないながら、さっきの無駄な大声とは正反対に小さな声で、
恐る恐るといった具合に呼びかける。
あれほど暑い部屋だったのに、自分の身体はといえば汗と不安感で震えるくらい寒い。
特にえんもゆかりもない人ではあるが、目の前で誰かが倒れて良い気分になれる程性根が腐っているわけでもなかった。
「………。」
息をのむ。
飛び出して逃げていくわけにもいかないので悪い意味でドキドキしながら、
倒れ込んだ彼女の居るところへ、足音を殺すくらい静かに近づいていった。
■尋輪海月 > ――ぴくん。
「……っう、ぅ……」
呻き声。……生きてはいるらしいが、ちょっと状況的にはあまり無事という風には見えそうにもない。
先の炎を受けた、耐火素材っぽいような手袋や安全ゴーグルも、手袋は表面を黒く焦がして繊維をほつれさせて、
ゴーグルもレンズの面が若干溶けて歪に固まっている。
仰向けのままぐったりとしながら、その溶けたレンズの向こう側、熱で汗を大量にかき、白く曇った中、薄っすら見える瞳はぼんやりと、虚ろに上を見上げている。
近づいていけば、それに気付いてか、頸がゆっくりともたげ、そちらを向くか。
「ッ……す、いませ………ぁの、……お、……お怪我、は……」
そんな事を気にしている状態ではちょっとないんじゃなかろうか。という格好で、工学系女子という風体の学生は見上げてきている。
■雨野 明 > 「……!………!!」
聞いておいたくせに動いた、と言う事に驚き、また声が漏れたことにも驚いて、
合計二歩ほど小刻みに小さく飛ぶように後ずさった。
「はあああ……生きてた…。」
隣室の人に一言文句を言うだけのはずが物凄く疲労感と脱力感に襲われた。
何はともあれ生きていた、それだけでも大きく緊迫した感情が取り払われる。
というのも束の間。
やっとあの火炎が無くなったけれど、
近くによったら彼女がその火炎に今まで囲まれていた爪痕みたいなものがありありと全身の衣服に残されていた。
というよりは、暗い中に見るよりも、特に不完全燃焼の嫌なにおいが立ち込めていた。
あれはやっぱり宜しくない事だったのだろう。
「ああ、ええとっ!俺は大丈夫だけど。それよりお前が大丈夫じゃなさそうなんだけど。
や、火傷とか…後酸欠とか。怪我してるとこない?」
彼女の気遣わしい問いはそれとなく受け流し、本来気にすべきだろう事柄を問い掛ける。
熱でふにゃっとひん曲げられたゴーグルのレンズの向こう、
見るからに消耗した、と言わんばかり。生気の薄れたように見て取れた。
やっとこの状態にも落ち着いてきたのか、仰向けに倒れ込んだ彼女の近くへと座り込んで。
「ってか何してたの?……ああ、今はそんな事聞いてる場合じゃなさそうだな。
保健室いくか?立てる?いや、まずはこういう時は水分補給か?……んー…。」
それでも一先ず生きていると言う事が確認できたので、思考する余裕も出来たらしい。
医者でもないし、保健医でもないのであまり良い答えは導けないが。
■尋輪海月 > 「……ゃ、火傷は大丈夫……で…………ただ、ぁ、喉……か、わ……けほっ」
そりゃ、あれだけの高温の中で更に炎にあぶられ、熱に囲まれていたらば、水分なんてあっという間に飛んで当たり前だ。
覚束ない手で、がこ、と、ゴーグルをずらす。熱で赤面した顔以上に、涙の滲む程に赤くなった眼の周り。
手袋を億劫げに外して、ばたん、と傍らに放る。
はあっ、と、息を大きくついて、
「……っ、ちょ、と……異能の、……制御……を。
ごらんの、……っげっほ、通り……暴、走ッ……させてしまいました、けど……もッ、げっほっ」
咳き込む。咳き込みまくる。額の汗を拭い、眼を閉じた。
……何度も大きく上下する胸、耐熱素材らしきそのツナギもまた、
よく観察すれば、あちこちが焦げていたり、ほつれていたりする。
■雨野 明 > 「あ、ああ、分かった。もう良い、喋んな。」
喋るのも辛そうだ。まるで煙でも吐いてるんじゃないかってくらいに咳き込む様子は、
傍から見ていても痛々しいが、本人にとってはどれ程の苦痛となって圧し掛かっているのだろうか。
片手を広げて突き出して無理して喋っている感じのする言葉を静止しようと。
一先ず、炎の異能(?)を暴走させてしまった結果がこうなった、ということだと、
それから火傷は無いけど水分が必要、と、それだけ分かったら充分で。
「…なんか、暑そうだなあ、ソレ。」
手袋を取り払った事に気付けば、全身防火の衣服なのでごわごわしてて暑苦しそうな重装備であることにも気付いた。
火を防ぐために暑い格好をしなければならないとは……。
「ちょっとそこでじっとして待ってろ、その辺で何か買ってくるわ。
スポドリで良いか?」
ケチケチしてもいられないので。
その辺の休憩室で自動販売機でも見繕って来ようと、
そう言い残せば一旦出口へと駆けていくだろう。
■尋輪海月 > 「……っ」
喋るなと制された。いや元よりもうそれ以上喋れるような状態でもなかった為に、若干ぼんやりと曖昧に頷いて反応してみせると、外へ駆けていく背中を見送る。
……貴方が戻ってくる頃、
寝転がったままに、転がっている沢山の焦げた輪を、片手で集めれるだけ集め、それらを、何処か物憂げに見つめているだろうか。
■雨野 明 > ………程なくして。
両手に一本ずつ某スポーツ飲料の白いラベルが貼られたペットボトルをもった少年が戻ってくる。
「………。」
異能の失敗を気に病んでいるんだろうか。
その様子に対して、何か同情できるでもなければ、慰めることもできないわけだが。
暫く無言で眺めていた。
「よっ、と………おーい。どうしたー?」
ぼんやりしているように見える彼女が、自分が戻ってきたことに気付いているか呼びかけて。
「ほい。持てるか?代金は気にしなくて良いぜ~。」
片手に持ったボトルを、寝転んだ彼女の目先へ。
崩れた鉄の輪への視線を遮って押しやった。
■尋輪海月 > 「……あっ……」
ぼんやりと眺めていた眼は、二度目の呼びかけと、目の前のボトルで視界を遮られた事で、はっと開かれる。
ふら、と、首だけを動かして視線を向けると、
実に申し訳無さそうにしながら、ゆっくりと空いてる方の手でそれを受け取り、……仰向けなのも気にせずに、蓋を開け、ごくごくと一気に飲んでいく。よっぽど乾いていたかどうか、
喉を鳴らして嚥下していく速度は尋常でなく、ボトルの半分ほどを飲んだ時点で、ボトルを口から離し、はあっと大きく息をつく。
「っ……はあぁ……す、すいません……ありがとうございます。御蔭で、ちょっと……生き返りました……」
幾分か水分補給ではっきりとしだした眼を遣り、潤った喉で、やっとこ声を出して礼を述べる。
上半身を、片手をついて起こし、ぼさぼさになった髪の毛を手で押さえたり。