2016/08/22 のログ
ご案内:「演習施設」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
重力状況、約4倍。
酸素濃度、標高6000メートル相当。
室温42度。
そこは地獄の空間。
「……ぅぅぅぅああああ!!!」
修羅の形相で刀を振るう。
それまで同様、決まった角度からの一閃でなければ切り落とせない木偶人形たち。
それらを相手に、踊る。踊る。踊る。
「……っらぁ!!」
最後の一体を断ち落とす。
抜刀、一太刀、納刀まで一瞬で終わる神速の剣。
■寄月 秋輝 >
それを終えると、急いで施設内のデータを書き戻す。
こんな空間で動くなど、本来なら自殺行為だが。
「……っぶはぁ!」
ばしゅう、とすさまじい音と共に空気が入り込んでくる。
重苦しい体が自由になる。
「はーっ……はーっ……!」
肩で息をして、その場にへたりこむ。
膝をつき、吐きそうになるのに耐えて呼吸を整える。
■寄月 秋輝 >
「はっ……はっ……う、ぅ゛……っ」
涙がこみ上げる。溢れる。
何も わからない
「なんで……オレはこんなこと……してんだよ……!」
涙が止まらない。
疑問、怒り、悲しみが止まらない。
何故自分を鍛えているのだろう。
もう、守るものなんて何もないのに。
「なんで……鍛えようとしてるんだよ……!」
地面を渾身の力で殴る。
痛みが走る。
わからない。
自分の何もかもが、わからない。
ご案内:「演習施設」に滝川 浩一さんが現れました。
■滝川 浩一 > 「今日も異能を使うのさ~僕は~♪」
変な歌を歌いながらその空間へとやってくる。
普段は訓練施設に来ているのだが、たまには演習施設へ来るのもいいだろう。
それに授業でここに来ることもあるだろうし、施設の内装は把握しといた方が良い。
そのような事情により本日はこの空間へとやってきたのだが…
「!?」
膝をつき、俯いて見たところ涙を流している男性を見て、逆再生するかのように足を後ろに踏み出し出入り口へ向かう。
■寄月 秋輝 >
ぎょろりと目が向く。
ぐし、と目元を強く拭い、一度目を伏せて。
開く瞬間には、目の周りこそ赤いものの、何事も無いかのような表情をしていた。
「……失礼しました。
すぐにどきますので」
立ち上がり、裾を軽くはたいて。
刀を腰の帯に差し、ゆっくり歩いて中央から去る。
離れたところにある鞄からスポーツドリンクを取り出し、一気に煽り始めた。
■滝川 浩一 > 「いやいやいやいや、いいんですよ別に!自分のことは気にせず修行に精進してくださいハイ!!」
目元を拭うがなお目の周りが赤い彼を見て、焦りつつ早口にそう言う。
このようなシチュエーションに遭遇するとは思わなくて、目を泳がせて冷や汗を掻く。
(やべぇよやべぇよ…こんな気まずいことになるなら演習施設なんてこなけりゃよかった)
ダラダラと運動してないにも関わらず汗を流し、その男性が気になって何度もチラチラ見てしまう。
…何かあったのだろうか。少し力になりたいが、余計なお世話だろうか。
そのような考えが頭の中でグルグルと渦巻き、中々声を掛けられずにいた。
ご案内:「演習施設」にエアルイさんが現れました。
■寄月 秋輝 >
「いえ、僕はもう終わったので大丈夫です。
一日何度もやるような訓練ではないですから」
首や肩を回してストレッチをしながら答える。
実際、彼にとっては十分な運動を行った。
「……何か?」
見返さずに尋ねる。
こちらを見ていることはわかっている上での質問だ。
■滝川 浩一 > 「……いえ、余計なお世話だと思いますが…どうも、何か苦しんでいる様子でしたので」
先ほどとは口調が変わり、焦りや緊張は消えて真剣な表情と声色へとなる。
自分に彼の抱いている問題の重要性はわからないし、それを解決できないかもしれない。
余計なお世話、有難迷惑かもしれないが、悩みは誰かに話した方がすっきりすると聞いた。
「差し支えなければ、お悩みお聞きしてもよろしいでしょうか?」
背を向ける彼に対し、反対にこちらは視線を逸らさずにそのように聞く。
自分は善人ではないが少なくとも悩んでいるであろう人物を見過ごすほど残酷でも悪人でもない。
■エアルイ > 「…………?」
学内の散策。探検。冒険。
言い様見様は様々であるが、一度身に付いた習慣は中々抜けるものではなく。
普段は興味の赴くままにあちらこちらを……医療施設はあまり好きではないが……
さ迷うのだが、この場にたどり着いたのは、
今回については偶然とは言いがたいものであった。
聞き覚えのある声がする。
確か、海で聞いたことがある声で……
もう一つは、何処かで聞いたような。
音に導かれるように、気軽な歩みで演習場に足を踏み入れ……
見覚えのある2つの人影を視界に捉えた。
……なんとなく、一つは何かが違う気がするが
■寄月 秋輝 >
「少し、考え事をしてしまって。
恋人を捨てて失って、自分のプライドを通してまで世界を救った英雄は、本当に英雄なのだろうか、と」
聞かれたことに応える。
実際の悩みも、まさにこれなのだが。
「考えれば考えるほどに、その英雄が無様に思える。
いや、英雄と呼ぶのもおこがましい、ただのクズに思えるんですよ」
ふ、とため息を一つ吐いて。
入り口に現れた、新しい影。
そちらに向けてちょいちょい、と手招きをした。
■滝川 浩一 > 「…難しい問題ですね。そのような思いをもうしないために修行を?」
少し間をあけてそのように返す。
目の前にいる人物が何者かは知らない。英雄なのかもしれない、悪役なのかもしれない。
自分自身も、相手に何かを諭すほど修羅場を乗り越えてもいなければ、経験を語るほど老いてもいない。
そんな自分だが、率直にどう思ったか伝えようと口を開く
「でも……」
そう発言しようとしたところ、目の前の男性が入り口の方を見たのを反応し、こちらも視線を向ける。
そこにいたのは海の家でたこ焼きを船ごと丸のみするという滅茶苦茶な行いをした少女であった。
■エアルイ > 「う?」
手招きをされて、ようやくその顔に思い至る。
確かーー落第街? 落第街で出会った二人組の一人だ。
あの時の連れ合いはいないし、あの時と何か……
何かが違う気がするけれど。
何を言っているかは聞くことができようとも、
何が言いたいのかは頭で考えても分からない。
分かるのは何かを考えていることだけだ。
しかし手招き呼ばれれば、尾を揺らしマントをたなびかせながら近づいていく。
呼ばれたら返事はしたほうがよいのだ。たぶん
「……おう!」
そして、こちらを見ているもう一人にブンブンと片手を振る。
海で会った時は疲れていたが、元気そうだ。お腹一杯に食べたのだろうか。
■寄月 秋輝 >
「……いえ、これはただの日課……というか鍛え直しですよ。
なまってしまっていたので、以前と同じ程度にはしておきたくて」
それもまた真実。
全てが、というわけではないのだが。
でも、の先を聞くこともなく、顔を少女の方へ向ける。
ふっと笑顔を浮かべてみせた。
「こんにちは、エアルイさん。
お元気そうで何よりです」
声色は以前と同じで、優しかった。
■滝川 浩一 > 「…そうですか。
言われなくてもわかってると思いますがあんまりハードな訓練は逆効果になる場合もあるので程々に」
日課ということを聞けば、一応そのように言っておく
改めて自分の発言を振り返るがこれこそ余計なお世話だ。
彼が英雄ならば自分の体ぐらい自分が一番わかってるだろう。
「おう!お腹の方はどうですか?」
ため息を一つつくが、元気よくやってきた少女に手を振られそれに応答する。
開口一番、まず腹調子を問いかける。
■エアルイ > 「元気だぞ!! よく食べたからな!!
お前も元気そうだ!」
にかーっと二人に向けて笑いながら、尾でパシパシと床を叩いた。
お腹の方の調子も全く問題なさそうである。
可食物以外もかなり食べていたとは思えない肌の艶やかさだ。
マントの下は健常とはとても言えないのだが。
「あきは元気じゃなさそうだな。ごはんは食べてるのか?」
同じ声音を受けつつも、しかし黄色い瞳は見返してくる。
■寄月 秋輝 >
「肝に銘じておきますよ。
ありがとうございます」
そう笑いかける。
けれど、それを聞く気はさらさら無い。
今はただ、自分を痛めつけたい。
「僕は大丈夫ですよ。
そういえばエアルイさん、あの時の棒はまだ大切に持っていますか?」
例のスタンロッドに関して、ある程度の話は聞けたものだ。
今一度この少女には聞いておかねばならない。
■滝川 浩一 > 「えぇ、ごはんキッチリ食べましたんで!」
元気よくそう返しながら胸に拳を宛がう。
海の家での彼が嘘のように元気だ。ごはんパワーは偉大である。
そして、未だ暗い雰囲気の彼と少女の会話を見聞きし
(あき、彼の名前か…)
男性の名前が判明し、スタンロッドの話題が出ると何のことかと言った具合に
少女の方を見る。
■エアルイ > 「そうか! 良かったな!! 食べるのは大事だ!!」
にかーっとした笑みを浮かべながら、
秋輝の問いにあるぞー! と応え、
マントの中から……どう収納されていたのかは分からないが、
黒く無骨な形状をしたスタンロッドを引きずり出した。
「大事だからな! 持ってるぞ!!
でも、少し傷んだな……」
僅かにしゅんとなる。
見れば、スタンロッドの表面には大きなヒビがはしっており……
僅かに歪んだその棒には、かなりの負荷が掛かったことが伺えるだろう
■寄月 秋輝 >
「おや……何かあったのですか?
普通に使った分には、ここまでの傷は付きませんね」
目を細めて、その棒を見つめる。
一応はあらゆる物を『破壊』したことがある。
これは強い負荷、それも体重がかかった程度でつくものではないだろう。
「……エアルイさんは、怪我などしていませんか?」
■滝川 浩一 > (やけにひどい損傷だな。)
その無骨なスタンロッドの損傷を覗き込み、そのように考えながら顎に手を添える。
よほど強い衝撃に耐えたのだろうか。まるで渾身の一撃を耐えた後に思えた。
この少女とスタンロッドに何があったのか。
男性は少女とどのような関係なのか。
気になることは沢山あるが敢えて口を出さずに会話が治まるまで傍観しようと考える。
■エアルイ > 「おう。山ででっかいゴワゴワに殴られた!!」
何かがあったかと問われれば、そう応えるだろう。
正確に言うならば、青垣山で大型の熊型の獣に殴られた際、
地面に叩きつけられた余波でへし折れかけたわけではあるのだが……
風紀委員には伝わっているため、連絡が言っているならばあるいは知っているかもしれない。
「怪我はしたな。 変わってるぞ!」
応じつつ、スタンロッドを持っていない……
海の家でも、今の今までずっと隠されていた反対の手をマントから引き出す。
それは、一見したら太長い棒の様に見えるだろう。
表面を硬質の……甲羅とも、鱗ともつかない何かで覆われた、硬質な棍棒。
だが……その先端に小さな五つの突起がついていること。
そして、その根元がマントの中へと伸び繋がっていることから、
これが腕であることが分かるだろう。
獣に殴り倒され、折れ千切れかけた腕がこうなったとは、
にわかには信じがたいものがあるが。
他にも大小様々な怪我はあるが、本人には気にかける程ではないのか……
あるいは、気にしていないのか。
特に伝えるようなことはしないだろうが
■寄月 秋輝 >
「ゴワゴワに」
恐らくは青垣山で、何か異界の存在にでも襲われただろうか。
人と同じ存在ではないのだ、この少女はおそらく大丈夫、だったのだろうが。
「……おや、これはまた。
……どういう状況で……?」
首をかしげた。
少女の無意識の防衛本能だろうか。
にしろ、秋輝の知識ではわからない。
「……そちらの方。
この状況を見て、何かわかりますか?」
近くの男性に顔を向ける。
自分の知識の及ばぬところは他人に頼る。
■滝川 浩一 > 「っ…」
ゴワゴワという奴に殴られ、怪我をした腕を見ると驚いて目を見開く。
まるで鉄棒に無理やり金属を溶接したような腕を見て、言葉を失うと同時に考察を開始する。
「これは…」
手を伸ばし、硬質の突起や鋭さで怪我をしないように優しく触れようとする。
その時、男性に声を掛けられ、そちらの方を振り向く。
「詳しいことはわかりません。恐らくですがエアルイさんは体に何らかの損傷を負った際にこのように肉体を修復するのかと…
こうなったのは怪我をしてからどの位経ってからですか?」
男性にそのように返しつつ、その手に触れて少女へと問いかける。
■エアルイ > 「どれくらい……んあ、寝ておきたら、だな!」
そう応えると、当時のことを簡単に説明しはじめた。
曰く、ゴワゴワに殴られて、助けてもらって、ゴワゴワをバラバラにした後。
山を下りたらすごく疲れたので、公園の隅で寝ていたら……
起きたら腕がこうなっていた、ということであった。
腕が肩から千切れかけ、肉と筋で繋がっていたというレベルの損傷から考えれば
異質な再生速度と言えるだろうが……
しかし本人は気負った風もなく、腕を上下に動かしている。
「動かしにくいしドクドクいうけど、腕だぞ?
生きる気があるから、まだ生きてるぞ!」
うんむ、と頷き。黄色の瞳を二人に向けるだろう
■寄月 秋輝 >
「……そう考えるのが妥当ですね。
一時的なものか、この形で固着されるかはわかりませんが」
とはいえ、本人が無事で、悪く思っていないならばそれでもいいだろう。
「とにかくエアルイさんが無事でよかったです。
この腕の状態も不思議ですし、一度医務室あたりで見てもらいましょうか?
普段通りの腕のほうが便利でしょう?」
そう言って微笑んだ。
■エアルイ > 「……医者は嫌いだぞ」
黄眼を細め、眉をしかめて嫌そうな顔をする。
どうやら、医務室かそれに類する物にいい記憶がないらしい。
尾を床に幾度も叩きつけ、音を響かせる。
「生きるなら残る。ないなら千切れる。
まだあるなら、それでいいぞ」
医務室が嫌いということもあるだろうが……
しかし、その言葉からは何か異質な意味合いが感じられるかもしれない。
■滝川 浩一 > (所謂、この鱗みたいな物体が人間でいう血小板の役割を果たしているのなら
かなりの栄養をこの腕で消費している。
となると…なるほど、本人の悪食は勿論だが、この腕のためにあれだけのカロリーを摂取してたのか。
しかし、硬質だから仮に鉄分が消費されたとして…)
顎に手を添え、考察を加速していく。
形状、面積、色、形、様々な観点からその腕を考察していくが納得のいく回答は得られない。
自分の役目ではないということを悟ると男性の発言を聞いて口を開く。
「確かに、この腕が永続するとは思えませんが医務室で見てもらった方がいいかと。
ゴワゴワくんが何らかの魔術的、異能的な効果を以てエアルイさんの腕をこのようにしている可能性も否定できませんしね」
男性の言葉に賛同してそのように言い放つ。
医療や医学はまだまだ専門外なので自分が見ても何が何だかさっぱりだ。
自分に出来ることは明らかに異常と思われる状態の友人に『病院に行け』と言う事だけだ。
■エアルイ > 「むぐー……」
不服そうな視線をしつつも、しかし強烈な反発は抑えているようだ。
年長者には従うべきである。
そう教わったからこそであるのだろうが……
■寄月 秋輝 >
「いえ」
病院へ行くべきだ、という言葉を制する。
それよりは、少女の表情のほうが響いた。
事実よりも感情。
「この子が医者が嫌いだというなら、それに合わせたほうがいい。
病は気からと言います、現状問題ないのに無理にかからせてはいけない。
この島、今の過渡期にあたる世界においてはなおさらに」
そう呟く。
医者にかからせて、この状態の少女がどうなるか、いくらかの想像がつく。
「大丈夫、エアルイさん。
連れて行ったりしませんから、ね?」
■滝川 浩一 > 「…まぁ、本人が嫌がるなら、強制はできませんけど…」
少女の不服そうな視線を見て、こちらも渋々引き下がる。
やっぱり女の子の意見が大事かーなどと考えつつ男性の方を見て、当然か。と言った風にため息を一つ。
それよりも…なるほど、"そういう事であったか"。
少しばかり納得したように頷くと口を開く。
「確かに現状問題なければ放置でもいいでしょう。
経過を見て状況判断ってのも大切ですし」
笑顔で二人に言って、自身も賛同しておく。
■エアルイ > 「……おう!」
最初はいぶかしんでいたようであるが、
瞳が静かに細められ、にかっとした笑みを浮かべる。
何故そうしたのか、そのことへの疑問を瞳に宿して見返しつつ、
マントの下に硬質化した腕を引き戻す。
軽く体を揺さぶるようにして、それにつられて尾が左右に緩やかに震えた。
ご機嫌……とは言えないまでも、先程までの不満と警戒に似た感情は薄れているようだ
■寄月 秋輝 >
「……正直まだ、この世界は異邦人にとっては居づらいですから」
少年に対して呟く。
まだまだ世界は未熟なのだ。
知識に対し貪欲とも言えるが、この少女に悪い影響があってはいけない。
「でも体に悪くなったりしたら、必ず言ってくださいね。
エアルイさんが嫌な思いをしないように気を付けますから」
小さく微笑んで囁いた。
この子は守ってあげなければならない。
この世界を繋いでいく、大切な代の子たちだ。
■滝川 浩一 > 「……異邦人に限った話じゃありませんよ」
こちらへ向かって呟いた男性へそう返す。
男性の気遣いは最もであり理解は出来るが…どうも、決定的に納得することは出来なかった。
頬をかき、辛気臭い雰囲気を吹き飛ばすために大きく伸びをする。
「んんーっ!さてさて!世界の話とか、オカルト番組がやることだ!ストレッチストレッチ!」
元気よくそう言うと当初の目的を思い出し準備運動を始める。
屈伸から伸脚、肩を回してストレッチ、ストレッチ。
準備運動を終わらせると思い出したように「あっ」と振り返る。
「自分、滝川 浩一って言います。二年生です。転校生なので縁があればよろしくお願いします」
にっこり笑顔で唐突に自己紹介をする。
■エアルイ > 二人の交わした言葉に、何か重い気持ちがあるのは分かったが……
それについては、口にはしなかった。
「おう、わかったぞ!」
秋輝の言葉に頷き、笑いながら大きな声で応えると、
携えていた壊れかけの電磁警棒をマントのなかに仕舞いこみ……
同時に、ぐぅという音がマントの下から鳴り響き、その空腹を訴えた。
「お腹が空いたから、ごはんを探してくるぞ。
あき、こういち、まただぞ!」
そう告げると、二人にブンブンと大きく手を振り、
くるりと背を向けてその場を後にするだろう。
■寄月 秋輝 >
「滝川さん、ですね。
僕は寄月秋輝、三年ですが来年から教師をする予定です。
それと、長らくお邪魔をしてすみません」
そこまでの話を無かったことにし、ぺこりと頭を下げた。
結局彼が特訓を出来ないほどに場所を占領してしまったのは事実なのだ。
「エアルイさんも、気を付けて。
もう怪我などしないように」
その手をひらりと振って見送るだろう。
「……では僕もここで失礼します。
またお会いしましょう、滝川さん」
そう言って、もう一度手を振った。
■エアルイ > そして。
背を向けたことで……尾を揺らしながら去っていくことで。
二人は、エアルイが告げていなかったある事実に気付くことになるだろう。
彼女は獣に襲われ、重傷を負った。
その結果、腕を負傷したわけだが……
その衝撃は腕だけに留まらず、当然他の部分にも起きていたわけで。
特に頭部の負傷は激しい出血を伴うものであり……
その結果、体の殆どと、身に纏う服が血塗れと成り果てた。
そして、血に濡れた服を引き剥がしたあと……
公園の隅で寝泊まりするような彼女には、着替えが無いわけで。
故に。
「~♪」
ご機嫌そうに尻尾を大きく振るエアルイ。
その動きで大きく翻ったマントの下から…………
服はおろか、下着をすら身に付けていない、
文字通り一糸纏わぬ健康的な褐色肌の丸みあるお尻と細い背中が
二人の前に大きくさらけ出され。
何事かを告げる前に、その影は視界の外へと消えていった
ご案内:「演習施設」からエアルイさんが去りました。
■滝川 浩一 > 「えぇ、またです!エアルイさん!!」
こちらも元気よく手を振り、少女を見送る。
首を何度か鳴らすと男性の自己紹介に応じる。
「あぁ、そうだったんですか。いえいえ、こちらこそ引き留めて長話してとんでもないです」
ぺこりと頭を下げる彼に対しこちらも何回も頭を下げる。
「えぇ、お疲れ様です。…寄月さん」
去っていこうとする彼の背にそう声をかける。
言おうかどうかの素振りをすると、意を決して自分の意見を言うため口を開く。
「自分はここに来て何年の経ってませんし、貴方の名前も今、この瞬間知りました。
貴方がこれまでどのような苦労を重ね、ここまで歩んできたかは知りませんし、貴方が英雄かどうかもわかりません。
ただ…お願いします。俺のような凡人に口出しされるほど、チープな英雄にはならないでください。
―――――お願いします」
そのように言い放つとふとエアルイの後ろ姿を見てしまい、顔を赤くして頭がパンクする。
■寄月 秋輝 >
顔色一つ変えずに目をぱちくり。
なかなか女性的な体だな、と思う。
少し目を奪われてしまった。
仮に手出しするにしてもまだ若いか、などとちょっと考えたりしつつも。
す、と目を滝川に向けて。
静かな、剣士の瞳。
「オレは世界を救った英雄の一人だったかもしれない。
ただ一人……大切な恋人の英雄にはなれなかった」
鞄を肩に担いで。
「……英雄なんて名は重すぎる。
オレは君と同じ凡人に過ぎないよ」
刀を携え、歩み去る。
出口を出たら、空へと舞い上がっていくだろう。
ご案内:「演習施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
■滝川 浩一 > 首を横に振り、顔の赤みを消す。
危ない危ない。見慣れない女性のヒップに頭がオーバーヒートするところだった。
なんとか気持ちを落ち着けると彼の言葉を聞く。
「………」
向けられた剣士の瞳。その瞳に少し気圧される。
(あれが修羅場を超えた男の瞳…ってか。はぁ…そんな奴に口出しする俺も俺で、何やってんだろうな…)
頭をかき、ため息をつく。
歩み去る男性に背を向け、こちらは特訓へと赴こうとする。
右足を踏む込むと青い光は発生させ、モヤモヤを取り払うかのように訓練に尽力するだろう。
ご案内:「演習施設」から滝川 浩一さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に水月エニィさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に羽切 東華さんが現れました。
■水月エニィ >
「……さて、そろそろかしら。」
装備の許可も含めて諸々の手続きを済ませ、
ペットボトルの水を片手に人を待つ少女。
……羽切東華との模擬線。
水月エニィ自身から打診し、承諾して貰ったものだ。
「後ろ向きではないつもりだけど、私ながら珍しいわね。」
勝負ともなれば"負ける。"
当然いつか勝つ。その様にこそ思っているが、それでも目途や誘いがなければあまり行わない。
それでも図書館に足を運ぶ程、自分から羽切に打診する程、前に気が向いたのは。
「……あの子に言った手前、私も目途がないからと逃げてはいられないもの。
みづき、だったかしら。姓と名の差はあるけど、奇遇なものね。」
■羽切 東華 > 「…えーと、ここでいいんだよな?」
初めて訪れる演習場。既に今夜の手合わせ相手である友人の少女が手続きはしてくれている筈だ。
「…しっかし、婆ちゃんからの餞別とはいえこのコート慣れないなぁ…暑いし」
と、ボヤきながらもなんだかんだで訓練施設へと到着する。
担いだ竹刀袋の中には何時もの刀が2本。
人外殺しの刀と、契約した妖刀の”本体”。今夜は後者を使うつもりだ。
(鈍にもこの戦い、バッチリ伝わるだろうし無様は晒せないかなぁ)
と、内心で呟きながら既にペットボトル片手に待機していた友人の姿を発見。
小走りで近寄りつつ、竹刀袋を下ろしながら挨拶をしていこうか。
「こんばんわ水月さん。今日は手合わせよろしく」
と、笑みを浮かべながら軽く会釈をしていく。正直、彼女の戦い方が分からないので未知数だ。
…左腕に巻かれた布が気になるが、アレが武器だろうか?
■水月エニィ >
「ええ。こんばんわ。
今日は宜しく頼むわね。存分胸を借りるつもりだもの――コート?」
装いを見て首を傾げる。
夜とはいえ夏真っ盛り。彼自身の趣味にも見え辛い。
昨日カフェテラスで見た様な色物教師のような性格や専攻でもなかったはずだ。
その上で季節外れのコート。水月エニィはそのように見て取り、疑問を抱く。
■羽切 東華 > 「ああ、これ?ウチの田舎の婆ちゃんが昔使ってたらしいコート。何か押し付けられてさ?
で、こういう友人との手合わせにはこれ着ていけって言われたんだ」
バトル的な意味での「勝負服」、と思って貰えれば早いかもしれない。
とはいえ、彼自身は慣れてないのか、コートの裾を引っ張ったりして着慣れていない様子。
「まぁ、それはいいんだけど……普通に暑いんだよね、この季節だと」
苦笑いを浮かべて肩を竦める。ともあれ、竹刀袋の紐を解いて中をゴソゴソ。
やがて取り出したのは、そこにあるだけで血生臭い空気が漂う一振りの刀。
簡素な鉄鞘、普通の刀の柄に何故か護拳(スウェプトヒルト)が付いた和洋折衷。
彼女の希望で今宵使うのは、契約している妖刀…黒刀・影打鈍。あの少女の”本体”でもある。
■水月エニィ > 「ふぅん……」
そこまで聞けば、少々の警戒を張る。
"友人との手合わせに"と指定した衣服。餞別に寄越す理由があったのでは、と、思考を回す。
「真昼に着込んだら倒れそうよね――ふむ「。」
コートもそこそこに改めて”黒刀・影打鈍”を見据える。
護拳付きの妖刀。以前交戦した彼女の本体。
暴走していない、正しい形の彼女の姿。
何かを思案すれば、少しだけ羨むような視線を見せた。
「障害物のない広いものとしてみたけど、良かったかしら。
……大丈夫そうなら、始めましょう?」
右手で左腕の長布を解き、布先を下す。
それとなく臨戦態勢を整えて距離を取る。構えとしては鞭に近いか。
■羽切 東華 > 「あー一応、防弾とか耐刃繊維使ってるらしいけど、特に何か異能とか魔術的な効果はないよ?」
と、あっさりコートの性能を暴露する。と、いうか実際隠すほどのものでもない。
「と、いうか手合わせでも着たくないけどねぇ…動き易い服装が一番だよ」
と、苦笑い。まぁ昼間に着るとか自殺行為に等しいが。軽く影打を鞘に収めたまま素振り。
実は、まだ完全に使いこなせているとはいえない。習熟度は矢張り人外殺しの刀の方が当然高い。
だが、契約者として情けない戦い方も出来ない。少しの羨む視線に気付けば首を傾げていたが。
「ああ、うん構わないよ。俺の剣術は広さとかあまり関係ないからね」
と、言いつつ、左手に鞘に収めたまま刀を持ち、右手は刀の柄に添えて居合いの構え。
彼女の構えは…何故か鞭を連想させる。少し間を置いてから口を開き
「えーと、じゃあ俺から仕掛けていいかな?」
と、緊張感は無いが気を抜きすぎても居ない。恐ろしく自然体な調子で尋ねて。
■水月エニィ >
「そう。」
特に何かは無い、とのことらしい。
外してはならぬ"安全装置"の線を疑っていたものの、言及されれば一旦思考の隅に置く。
「……へぇ、結構な自信じゃない。気を張らないと一瞬で決まっちゃいそう。
ええ、どうぞ。先手は譲るわ。」
言葉と共に持ち方を替える。
布先を下段に下したまま、長布を持つ手を片手から両手に。
雰囲気としては長物を持つ様な構え方か。
■羽切 東華 > 「自信がある訳ないだろ、今こうしてみてても水月さんの戦い方がまだ予測付かないのに」
苦笑を浮かべて。布術の類だろうか?だが、生憎とそこまで詳しい知識が無い。
居合いの構えを取りながら、軽く息を整える――カチリ、と脳内でスイッチを切り替える。
安全装置?…そんなものは”最初から壊れている”。
「…《五輪連・桜花》」
短い呟き一つ。次の瞬間、少年の右手がブレるように霞んだ…かと思えば。
刀身すら見せぬ速度で抜刀。一度の居合いで彼女の首、両腕、両足を狙った衝撃波を繰り出さんと。
異能でも魔術でもない、正真正銘のただの”技”。故に魔力も異質な気配も無い…不可視の5連撃。
■水月エニィ >
声は重要な"情報源"であり"力"。
――何か来る。呟き始めた頃には大きな動きでその場から離脱する。
「シィッ――……!」
右腕を逃す様に右に大きく跳ね飛べば直撃だけは避ける。
右腕を狙ったであろう衝撃波が左腕を掠めた。
「……最初っから飛ばしているわね。」
構えを直し、相手見据える。
次の出方も伺う事にした。
■羽切 東華 > 「………。」
無言、そして抜刀した刃は刀身が黒い。性格には、刀身に染み込んだ血の赤が濃すぎて黒となっている。
…らしい、本人からそう聞いた気がする。
緩慢な動作で刀を鞘へと収める。が、その間も当然ながら視線は水月さんから外さない。
伊達眼鏡は流石に破損しそうなので今夜はしていない。故に鋭い目付きは真っ直ぐ彼女を見据え。
「……スゥ…」
息を軽く吸い込んで…止める。瞬間、再び居合い。振るったのは彼女の真上の空間。
と、今度は不意打ちで”落ちてきた”衝撃波が頭上から彼女を切り裂かんとする!
■水月エニィ > 静寂を覚え、直後に奮われる刃。
長布を戦槍に見立てて構え、衝撃波を弾くつもりであったが 来 な
「上ぅ……、ッ、シッ!」
居合いの延長にしては急すぎる角度からの衝撃波。
咄嗟に長布を地から天へと振り上げて弾きに掛かる。
……長布は見立てられた通り戦槍足りえる威力を乗せ、奇襲に応じる。
だが、僅かに遅れた。振り切る前、速度が乗り切る前に衝撃波を受けなければならない。
結果として両断こそはされなかったものの、衝撃波に因る圧を殺し切れずに姿勢を崩す。
■羽切 東華 > 視線は静かに”敵”を見据え、手足は一挙手一投足が”敵”へ向けられ、その刃は変幻自在に”敵”を切る。
これは手合わせ、友人との模擬戦。だが、一度集中すればあるのはただ”斬る事”だけだ。
「―――シッ!」
真上から落ちてくる衝撃波をいなされたが、彼女が姿勢を崩した。
すかさず、鋭い呼気と共に、地面を滑るような足捌きで一気に間合いを詰めんと。
厄介なのはあの布…だけとは限らない。まだ何かあるのは最前提。
刀は今度は鞘に収めず、両手で柄を握り…姿勢を崩した彼女へ肉薄すれば、鋭い一閃で胴を薙がんとする。
(――斬り捨てる)
あるのはその一念だけだ。
■水月エニィ > 整え直している内に肉薄される。
接近を許した。が。
「こ、、――のォ、ラァッッ!」
この距離ならば退くより進むべきだ。
構えに構わず強引に踏み込み、過剰に肉薄する。
つまるところ、鍔迫り合いの間合いに持ち込みに掛かる。
……多少斬られ様が、自分の獲物も使えなかろうが退けば斬られる。
(ならば、進むッ!)
■羽切 東華 > 「………!!」
一気に肉薄して胴体を切り払うつもりであったが、流石に彼女も判断が早い。
強引な回避や防御ではなく、むしろ逆にこちらへと踏み込んで肉薄してきた。
当然、このまま刀を振るっても彼女が懐へと飛び込んで来るほうが確実に早い。
なので、強引に刀を寸止めしつつ、左手を刀の柄から離して彼女の顔面目掛けて拳を放たんとする!
ある意味でカウンターのカウンターだ。とはいえ、この間合いでは悪手の可能性も高いが。
(退いたら負ける)
何故かそんな思考が頭を過ぎる。故に退かない。望む所だ…真っ向勝負でも受けて立つ!
■水月エニィ > 「いぃッ……!」
拳は顔面に直撃する。否、額で受けている。
額が割れて血が出ているが、些細な事だ。
転んだってそうなるのだから些細な事だ。
「――はっ!」
静かさを保つことで集中する羽切とは真逆。
吠え立てるか如く叫ぶことによって集中を成している。
痛みすら振り切らんと云わんばかり声を荒げながら地を蹴って跳ぶ。
身体二つ分程の高さまで跳んでみせ、身体を躍らせた。
■羽切 東華 > 「………。」
先程から一言も喋っていないが、それだけ集中しているのだ。
と、いうより初めて戦う相手だから油断が出来ない。そもそも、油断したら即負けかねない。
拳の一撃は命中したが、額…頭蓋骨に近い固い部分で受け止めたのは流石と言うべきか。
今の所、こちらはダメージは受けていないが、だからといって勝負は分からない。
自分とは対照的に、吼えて鼓舞する事で集中を成す様子は本当に己と対照的で。
地を蹴って跳ぶ水月の姿を視線だけで追いながら、次に備えて右手1本で刀を鞘へと収める。左手の拳も引き戻しながら…さぁ、どう来る!?
■水月エニィ > 激しい動きだ。
当然スカートもだってつられて翻る筈ではあるが、スカートの動きは妙に硬い。
もしかすれば、音や視認を通してスカートの内に鉄か何かが仕込まれている事は察する事も出来るだろう。
垂れる血は意に介さず。
そのままもう一歩空を蹴って身体を前方に進ませる。
羽切の裏を取る 取れ得ずとも振り向かせる手間を掛けさせんと空中での方向転換を成してみせ、
「鏡花――一山茶、花ッ!」
長布を張って戦槍に見立て直す。
布とは思えぬ、確かな勢いを十全に乗せた突きを"刀目掛けて"放つ……!
■羽切 東華 > 正直、彼女のスカートが翻るだなんだと気にしている余裕は無いのだが、集中しているからこそ気付く不自然さ。
(……この音…それに……もしかして何か仕込んでるのか?)
と、なると下半身狙いの一撃は効果が薄そうだと瞬時に悟る。
狙うなら上半身に絞るべきか。それよりも、こちらが態勢を立て直す前に彼女の布の槍が来た。
反射的に居合いで弾き返さんとして…やられた。
「……!?(武器狙いか…!?)」
態勢が不十分だったのもあり、影打が少年の手元から弾き飛ばされる。
そう、今この瞬間は完全にこちらは丸腰であった。彼女からすれば畳み掛ける好機だろう。
■水月エニィ >
「こっ、ッ」
放ち切ると同時に着地をするものの、勢いを乗せる事に専念しすぎた。
余った勢いを殺し切れず、しゃがみ込むような形で着地する。
同時に襲う捻るような歪んだ痛み。
左足首を挫いた様な痛みを覚えど堪えるように食いしばり、
喝を入れ立ち上がってから肉薄せんと駆けだした。
■羽切 東華 > 「……?」
てっきり追撃が来ると覚悟していたのだが、それが無かった。
どうも攻撃に勢いを乗せすぎたのか、着地の衝撃が強すぎたのか…。
とはいえ、弾かれた影打は数メートル先だ。今から取りに行って、は隙が大きすぎる。
ならば仕方ない…と、即座に切り替える。”素手のままで”彼女へと即座に体の向きを変えて。
肉薄する彼女へと、今度はこちらからも間合いを詰め――
「……フッ…!」
呼気と共に右足で薙ぐような蹴りを放つ。狙いは彼女の側頭部。
こめかみという人体急所の一つを的確に狙った一撃だ。とはいえ格闘の技術はそこそこ程度。
それに、蹴りの一撃は外すと結構隙が大きいのもある。だが構わない。
リスクにいちいち逡巡しているようでは、勝負には勝てないのだ。
■水月エニィ > (ああ、もうッ!)
垂れる血と汗が左眼に入れば染みる。
当然気にはしていられないし、立ち止まって隙を作る様な事もしない。
蹴りの構えは見える。刀を拾わないらしい。
突き出すのではなく横に曲げ・伸ばした脚が側面を狙おうとしている事も分かる。
だが刀程は早くはない。安全に避けてやり過ごそう。そう思えば軽く身を引かせれば、
羽切の蹴りがこめかみに直撃する。
……身体を退かせる事で空振りを誘っていた事は確かだ。
そのはずなのに、絶妙な位置で蹴りが直撃している。
「ぁ、か――」
その場で崩れ落ちて、一度意識を手放す。
……割れた額から流れた血が左眼へと流れ、視界を塞いでる。
■羽切 東華 > 「………?」
お世辞にも、格闘に優れた者からは付け焼刃程度にしか見られないであろう蹴り。
狙いは直撃ではなく、蹴りの”風圧”の方だったのだが、矢張り蹴りを見切られていたのか交わされた。
…筈だったのだ。彼女は確かに退いたはずだが、何故か己の蹴りが空振る事無く直撃している。
(……何だ?一瞬だけど変な違和感が…)
ともあれ、蹴り足を引き戻して一息。集中を解けば何時もの少年の雰囲気に戻り…
「…って、水月さん!」
慌てて彼女に近寄れば、意識を失っているのかグッタリしている彼女を助け起こそう。
そのまま、手早くコートの内側から包帯と傷薬を取り出す。
慌てていたので、傷口に傷薬をやや多めにぶっ掛けてしまったが。
ともあれ、彼女の額に軽く包帯を巻いていこう。応急手当そのものは慣れたもので。
■水月エニィ >
確かめてみれば簡単な話だ。
”左眼が塞がれ距離感を誤っていた”。
少なくとも見掛け上はそうだ。
ともあれ出血はあれど致命的なものでもなさそうだ。
手当をしている間に意識も取り戻す。復帰は早い。
「……ううん、やっぱり駄目ね。
油断していたつもりはないのだけど。」
するすると額に包帯を巻かれながら、苦みの強い笑みを返す。