2016/09/25 のログ
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 「…急に雨が降るから、びっくりしちゃった」

休日の午後。
訓練施設に駆け込むと、何らかの術式を解除する蘭。
「雨が降った」と言う割に、少女には濡れた痕跡がほとんどない。

(…魔術って、こういう時に便利よね)

そんなことを考えながら、訓練スペースへ。

美澄 蘭 > 訓練用端末の手慣れた操作で、放射魔術の訓練用の的を呼び出す。
夏休みの「瞑想」の成果だろうか。夏休み明け頃から、元素魔術の訓練は調子が良かった。

「…よし」

半径5mの半円状に配置された、水晶体の的。
蘭は、訓練端末の脇に鞄を置くと、その中心に相当する部分に立った。

美澄 蘭 > 「………」

自分の両手を肩幅くらいに広げて、前方へ伸ばす。
そうして、目を閉じる…閉じていた時間は、1秒あるかないかくらいだろう。
蘭は、そうして自分の使う魔力と、それで展開される術式の範囲を予測しているのだ。
そして…

「えいっ!」

魔力を使って、火の放射術式を展開する。
半円状に配置された的を丁度飲み込むように…炎が、放射状に広がった。

炎が消えた後の水晶体は、鮮やかな緋色に染まりきっている。

「…よし、今日もいい感じ」

最近の蘭からすれば、これは割と普通の状態らしかった。

美澄 蘭 > そうして、四大元素の他の属性も交えて、放射魔術の練習を繰り返す蘭。
どの属性の放射魔術も、綺麗に半径5mの半円状に展開された水晶体の的を丁度飲み込む規模で、且つ元素を強く撃ち出している様子は、熟達した魔力制御の賜物と映るだろう。

(…やっぱり、風は気持ち魔力消費少なめで、地は気持ち魔力消費多めかな…)

蘭は一旦訓練用端末の傍に退くと、鞄から筆記用具とメモを取り出して、記録した。

美澄 蘭 > 使う魔力を計算する際に目を閉じる必要があることで、結果的に魔術発動の際の隙は増えた。
…しかし、その課題について考えるのは、これからでいい。
まずは、自分がきちんと魔力を制御出来るのだという自信をつけて…魔力が暴走しないようにするのが大事だ。

…「もしも」の時に、「こんなつもりじゃなかった」と、言わずに済ませるために。
それに、その頃には魔力の計算にも慣れて、計算速度は上がっているだろうから。

そして、これからは後期の実技講義の課題の練習だ。
…つまり、放射魔術の二重詠唱練習である。

そんなわけで…蘭は再び端末を操作する。
…放射魔術の訓練用の的は、今度は半径10mの半円状だ。

美澄 蘭 > 「…よし」

的の範囲が広がったのを確認して、再度半円状に展開された的の中心部に立つ。
そして、的の水晶体の方に両手をかざし、目を閉じる…

(…あ、これ結構魔力使うかも)

直感的にそう感じ、使う魔力を増やす。
そして…

「『フレア・フレア』!」

そう蘭が唱えると、強力な魔力が、放射状に美しく展開する。
その魔力の展開をなぞるように、黄色がかった橙の炎が、10m先の標的を丁度飲み込むように、放射状に展開した。
炎が消えた後…水晶体は、やはり鮮やかな緋色に染まりきっている。

「………よしっ」

結果を見て、蘭は小さくガッツポーズをとった。

美澄 蘭 > 意気込んで的の状態をリセットし…火の放射魔術の二重詠唱の練習を、何度か繰り返す。
そして…

「…じゃあ、次は水いってみましょう」

そんなことを言ってリセットした後、再度同じ位置で、同じように魔術を放つ姿勢をとる。
そして、目を閉じて…少し後に開く。

「…『アクア・アクア』!」

そう唱えると、蘭の足元から、訓練施設の天井に届きそうなほどの大波が発生する。
大波は、10m先で半円状に展開された水晶体の的目指して突進し…水晶体を飲み込んだ頃合いに、崩れ去った。
水晶体は、それこそ海の色のような深く美しい青に、綺麗に染まりきっている。

「…これも、いい感じね」

蘭は、満足気に頷いた。

美澄 蘭 > そうして、何回か水の放射魔術の練習をした頃だろうか。
…蘭は、足元がどこか覚束ない感じを覚えた。

(………あ、れ?)

流石に危機感を覚え、ふらふらとした足取りで訓練用端末の元へ向かい…鞄を何とか拾い上げると、端末に寄りかかるようにして訓練スペースを初期状態に戻した。

そして、ふらふらと訓練スペースから出て、休憩場所のベンチに、崩れるように腰を下ろす。

美澄 蘭 > 別に、体力を消耗したわけではない。
どちらかといえば、感覚的には貧血の方が近いだろうか。
蘭は、ベンチを独占するかのようにくったりと倒れ込む。

(…最初に放射魔術単詠唱の練習を3回ずつで…12回でしょ。
その後二重詠唱の練習で…5回ずつやって10回か。
合計20回ちょっとならそこまでじゃないけど…放射魔術の二重詠唱って、結構魔力使うのね…)

それでも、頭の中で計算はしているのだが。

(…魔球魔術に比べれば、放射魔術は魔力使うわけだし…
まだ、そこまでの消費に身体が慣れてないのかしら)

疲れを回復する感覚を得るために、甘い飲み物が欲しいところだが…
正直、動く気力はまだ持てそうになかった。

ご案内:「訓練施設」に八百万 頼さんが現れました。
八百万 頼 >  
(野菜ジュースを飲みながら通路を歩く。
 ヂュゴーと盛大な音を立てて箱の中身をストローで吸い尽くしながら角を曲がれば、前方に見知った姿を見付ける。
 ストローを咥えたままホイホイと踊るような足取りで近付いて。)

こんちはー。
どしたん、休憩――ホントにどしたん?

(最初は単純に休んでいるだけだと思った。
 しかし近付いてみれば、どうも様子がおかしい。
 顔色が悪いような気がするし、明らかにぐったりしている。
 飄々とした口調から、心配するようなそれに変わる。)

美澄 蘭 > 人が近づいてくる気配がする。
起きなければいけない…と思った時には、その気配は自分の方にすっかり近づいてきていた。

「あ…八百万さん、こんにちは」

近くに寄ってみれば、ただでさえ白い蘭の顔から、更に血の気が引いていることは確信出来るだろう。
それでも、蘭は八百万の顔を見れば、心配させまいとしたのか、弱々しくも笑ってみせた。

「…別に、大したことじゃないの。単なる魔力の使い過ぎ。
放射魔術の二重詠唱って、随分魔力を使うみたいで…連発してたらこんな感じ。

…人を心配させちゃうなんて、保健課失格ね」

そう言って、弱々しく笑いながら…何とか、腕を支えに身体を起こそうとする。
…身体の動かし方に覚えがあれば、腕の震え、わずかに力の入った蘭の口元から、それなりに無理をしているのは伺えるだろう。

八百万 頼 >  
魔力の使いすぎて……十分大したことあるやろ。
無理せんと、横んなっとき。

(近寄ってみればやはり顔色が悪い。
 起き上がろうとする彼女の肩を押さえ、寝そうと。)

そら無茶して掛ける心配やったら掛けん方がええけど。
体調悪い時はそんなん考えんでええて。

(に、と笑って彼女の言葉を否定する。
 保健課だからこそ、体調が悪い時に無理をしないことの重要さはわかっているはずだ。)

美澄 蘭 > 「ほんと…大したことないのよ。
少し休めば…身体の疲れより、よっぽど回復早いくらいだから…あ」

肩を押さえられて、きゅう、という感じで潰れた。
それでも、腕を支えに起きようとしていたおかげで顔がぐにっと押されることは避けられたらしく、くる、と首だけ回して頼の方を向く。

「………二重の意味で油断してたわ…
魔力の使い過ぎでこうなることと…それを人に見られちゃうこと」

に、と満面の笑みを向けられれば、その上で無理をすることが馬鹿らしくなってしまって。
ただ、この失態を招いてしまった自分の情けなさに対して、苦笑いを浮かべるだけだ。

「………でも、ここまで酷いのは多分初めてね…
初めて使う術式、連発するものじゃないわ」

顔色は良くはないが…それでも、苦笑いの笑顔自体は、無理して作ったような印象は薄かった。

八百万 頼 >  
ボクとしては、女の子が弱って倒れてるのをほっとけんからな。

(押せばあっさり潰れた。
 よし、と満足そうに見下ろす。)

魔術使えへんボクは魔力の感覚とかわからんけど。
燃費悪そうな放射魔術を二重で唱えたら、そらそうなるわ。

(放射魔術と言うのは、単発で射出魔術に比べて継続で放出する分魔力を多く消費すると聞いたことがある。
 二重詠唱も、単純に計算すれば消費は二倍。
 相互に影響して威力が増すと言うが、その分魔力も多く消費するだろう。)

練習でそうなるんはええことや。
自分の限界わかるからな。

(虚空からハンカチを取り出し、彼女に渡す。
 自分が額の汗を拭いても良いのだが、そう言うことは男にされたくないだろうとの配慮だ。)

美澄 蘭 > 「ほっとけん」と言われれば、血の気の引いた頬に、ほんの少しだけ血の気が戻ったように見えるだろう。
…通常の顔色だったら、ほんのり頬が赤く染まっていたところだろうか。

「………えぇっと…こういうときって、「ありがとう」でいいんだったかしら…?」

少しだけ目を泳がせながら、そう応じる。

「うーん…二重詠唱で拡大してたのが威力じゃなくて規模だったのも、結構響いたのかも。
…単詠唱だけなら、同じくらい撃っても大したことないんだけど…」

10mの半円状の範囲に元素魔術を放射状に展開するのを連発したら、慣れないうちはまあこうもなるだろう。
…そもそも、蘭と同じだけの規模の魔術の連発など、万人に出来るものでも無さそうではあるが。
…そして、頼が魔術を「使わない」ではなく「使えない」と表現したことに、普段の蘭なら食いついても良さそうだが…その余裕もない程度には、今の蘭は消耗しているらしい。

「まあ、しばらく「本番」の予定はないけどね…強いて言うなら実技試験くらい?

………?」

そうして、虚空から頼がハンカチを取り出して蘭の手元に差し出すのを、不思議そうに見つめる。
…具合が悪い時にかくタイプの汗をかいている、自覚がないらしい。

八百万 頼 >  
礼には及ばへんよー。

(にっこりと笑う。
 自身にとってそれは当然の事だから。)

ま、次から気を付けたらええねん。
そうやって色々知るんが勉強や。

(限界を知ったのであれば、次からはその限界の範囲でやればいい。
 そうして色々な事を知っていくのだ。
 まるで先生のように、そんな事を口にして。)

実技試験ってそないに難しいん?
――や、汗。
結構汗出とるよ?

(実技試験、との言葉に、首を傾げる。
 そこまでするほど難しいのだろうか。
 ハンカチを受け取らない彼女はどうやら汗に気が付いていないらしい。
 それを告げて、ひょいひょいとハンカチを持つ手を動かした。)

美澄 蘭 > 「………そう、なの?」

不思議そうに、目を何度か大きく瞬かせる蘭。
「身体の疲れより、よっぽど回復早いくらい」と本人が言った通り、顔色は既に改善の兆候を見せ始めていた。

「…そうね…少しずつ、馴らしていかないと。
今日は、頑張り過ぎちゃったかもね…」

そう言って、苦笑いを浮かべながらも、横になったまま頷いてみせた。

「…絶対評価だから一定数絶対落とされるみたいなのは無いし、やることはシンプルなんだけど…
やるからには、出来るだけ上を目指してみたいじゃない?

………え、汗?」

実技試験については、そんな考えを零し。…どうも、理想が高いらしい。
それでも、汗について指摘されれば、きょとんと目を丸くした後、頬をほんのり赤く染めた。

「…やだ、ただでさえ今日湿気があるのに…」

それでも、すぐに頼が差し出したハンカチを取ろうとしないのは、他人の持ち物で自分の汗を拭く、という状況が恥ずかしいからだろう。
…だからといって、厚意をすっぱり断るのも気が引けてしまい。結果として、蘭は頬を赤らめたまま、少し目を泳がせた。

八百万 頼 >  
美澄ちゃんが保健課に居るの、感謝されたいからちゃうやろ?

(彼女と話した回数は数えるほど。
 それでも彼女がなにか見返りを求めて保健課に在籍しているとは思えなかったから。)

せやけど何事も無理はあかんで。

(とは言えこうして倒れるほど頑張るのはいけない。
 忠告も忘れない。)

なるほどなぁ。
ボクなんかは単位貰えればええっちゅう考えやけど、その気持ちもわかるわ。

(出来るなら上を。
 その考え方には覚えがある。
 懐かしむように、目尻を下げて。)

汗書くと体温下がるからな。
――ああ。
大丈夫や、それ新品やから。

(ハンカチを受け取らないのならば、こちらから押し付けてしまう。
 空いている手で彼女の手を握り、手のひらにハンカチを乗せて握らせる。
 新品、と言う言葉には「返さなくて良い」と言う意味もこめて。)

美澄 蘭 > 「………無いとは言わないけど、別に治療相手個々人に感謝を求めるつもりはないわね」

そう言って、苦笑する。
思考を無限に後退させていけば、きりがない。
治癒というのは、見ようによっては非常に強力な力なのだ。
それを振るうことで自己実現欲求を満たすのはエゴではないかとか、全く考えないではない。
…寧ろ、保健課の職務はそういう問いをひたすら蘭に問いかけ続けてきた。
それでも、蘭は未だに「保健課員」の一人としてこの学園にいる。

「………忠告ありがと…ほんと、これからは気をつけるわ」

そう言って、苦笑する。
顔色は、大分平素の状態に戻ってきたように見える。…それでも、日本人の平均よりはかなり白いが。

「…やっぱり、こういう場で教わるからには、色々しっかり理解しておきたいじゃない?」

そう、真顔で言う。
蘭には、自分が「年齢を考えると学業でかなり優秀な部類に入る」という自覚が乏しい。
「授業内容を理解すべく努力していたら、気がつけば優秀のラベルを貼られていた」くらいの感覚なのだ。
まして、この学園の生徒は多様だ。わざわざ他人と比較しようなんて思わない。
絶対評価の授業だから、上の成績を目指すことと熟達を目指すことがイコールになっているに過ぎない。

「えっ、新品なら余計悪いわよ!
………ぁ。」

あまり、こういうやりとりに慣れていないのか…残念ながら、頼の気配りは寧ろ蘭に遠慮をさせてしまったらしい。
驚きで思わず飛び起き…そして、急激に起きたことでふらつきが発生して背もたれにこてんともたれかかる羽目になった。

八百万 頼 >  
せやろ?
それと一緒や。

(なんでもない事のように、笑って言う。
 たとえ相手が男だって、辛そうにしていれば手を差し伸べる。
 それが人間だろう、と。)

ん。
とりあえず今は休んどき。

(猫のように笑って。
 かなり顔色は戻ってきたように見える。
 体力の回復より早いというのは本当の事らしい。)

まぁなぁ。
知りたい言うんは人の基本的な欲求やからな。
――でもな、気ぃ付けとき。
何事もやりすぎは、ロクな目に合わんで。

(最後の一言は狐のような顔で。
 まるで自身がロクな目に合わなかった、と言う様な口調。)

ほら言わんこっちゃ無い。
――ほならこうしよ。
ハンカチを受け取る代わり、今度ボクとデートしてくれればええから。

(ふら付いた彼女にそう言う時には、もう普段の調子に戻っている。
 そんないつもの調子で無茶な提案を。)

美澄 蘭 > 「………そっか、そうなのね」

自分の身に引きつければ、頼の言うことは理解出来ないこともなかったらしく、納得したようにこくりと頷く。
職務でもないのにそんな態度が取れる頼は凄いとも思ったが…考えてみれば、今の自分くらいぐったりしている人を見つけたら、職務外でも自分も動きそうだったので、その言葉は飲み込んだ。

「………そうね…もう少し休んだら、帰れるくらいにはなると思うんだけど…」

「外、雨降ってないと良いなぁ」と、ひとりごちた。

「………え、ええ………。
…でも、その責任を「自分」で負えるのも、「ヒト」だと思うの」

狐のような顔で忠告されれば、何かを突きつけられたかのように目を丸くして頷く。
…が、その後、伏し目がちに、ささやかな反論。
まだ、色んなものに絶望しきっていない人間の言葉だった。

「………うぅ…ゆっくり起きればこうならなかったのに…

………って、デート!?」

ぐったりしたままそんな風に嘆くが…
まあ、異性慣れしていない蘭がそんな無茶な話を振られれば、顔を赤らめて、飛び跳ねるように身体を起こすに決まっているわけで。

「………ぅ」

今度は、前のめりにうなだれる方向にぐったりした。とても忙しい感じである。

八百万 頼 >  
(納得した様子ににっこり笑う。)

ボクがもうちょい性能のええチカラならなぁ。
自分直すことしか出来へんねん。

(申し訳なさそうに眉尻と目尻を下げる。
 「八百万 頼」としての異能はあくまで自身と物質を対象としたものなのだから。
 反論には、猫のような笑顔を向けるのみ。
 何も言わず、ニコニコしている。)

ああ、ごめんな驚かせてしもたな。
とりあえずハンカチは使ってくれてええ。
それで美澄ちゃんがええ思うなら、一緒に遊びに行ってくれればええから。
嫌ならそれでもええし。

(こちらに倒れてきた彼女の肩に手を当てて支える。
 そうして背もたれの方に戻しながら、そう提案し直す。)

美澄 蘭 > 「………いいの、気にしないで。
異能って、そういうところ難しいのね………」

魔術の場合、適性などはあるが、基本的に学べば学ぶだけ、修得すればするだけ出来ることは増える。
…しかし、異能は異能の範囲を超えることは難しいのだろう。蘭は、真面目くさった表情で、相槌のノリで何となく頷いた。

「………?」

反論に対して、何も言わずに猫のような顔でにこにこされれば、そこに違和感を覚えるように眉を力なく寄せるも…

「………うぅん、いいの…ごめんなさい…」

背もたれに再度寄りかからせてもらうと、観念したかの様子で(大げさである)ハンカチを額に当てて…改めて、自分が体調不良のときの嫌な汗を結構かいていたことを自覚する。

「………そう言われても…
男の人と2人で遊ぶなんて経験ないし、どうしたら良いのか、全然見当つかないわ」

汗を拭きながらも、そんな風に溜息をついて。
…この少女、無駄に正直である。造形は悪くないはずなのに。

八百万 頼 >  
異能なんて大仰な名前付いとるけど、結局んとこは力強いとか走るの早いとか、そう言うのと一緒やからな。
訓練して伸ばす事は出来るかも知らんけど、今すぐどうこうなるモンでもないんよ。

(伸ばすにしても限界がどこにあるかはわからない。
 伸ばしたところで、結局範囲外のことは出来ないのだ。
 どれだけ早く走れても、歌うのが上手くならないのと同じで。)

美澄ちゃん可愛いからそう言うの結構誘われそうやけどな。
――んー、そんな特別な事せえへんよ。
買い物したりカラオケとか行ったりご飯食べたり。
――あぁ、こないだ一緒にご飯食べたのも、デートみたいなモンや。

(とは言え初めて会った時のことを考えれば、男性に対する苦手意識があるのだろう。
 自分が普段女の子たちとデートしている時の行動を色々あげていくうちに、先日の事を思い出した。
 アレも偶然会ったとは言え、デートといえばデートだろう。)

美澄 蘭 > 「………確かに、運動能力って先天的な要素が大きいって言うわよね…そんな感じ?」

納得したんだかしてないんだか、曖昧な口調で首をことりと傾げる。
…蘭は、自分では異能がないつもりでいるので実感がないのだ。

「全然…中学校の時とか、男の子達と全然仲良くなかったし」

苦みを強く示す顔の前で、手を大きく振る否定のジェスチャー。
…実際のところ、「仲良くなかった」どころの話ではないのである。

「…買い物…カラオケ…ご飯…
………ご飯なら、イメージ出来なくも…あ、でもどうかしら…」

頼が色々例を挙げていくと、何か微妙な顔。
買い物は趣味先行(読書・音楽)だと可愛げ皆無だし、カラオケも似たような感じだ。
辛うじて食事はイメージ出来なくもないらしいが…「女の子らしい」食事と「男の子らしい」食事で衝突する図が見える。
…流石に、悲観し過ぎではないだろうか。

「…え、この間のあの感じで?」

そんな思考の中で、先日の件を持ち出されれば、意表を突かれたように目を瞬かせる。
別に待ち合わせたわけでもないし、食べるペースを合わせたりもしていない。
………大分、デートのハードルが蘭の中で下がったような気がした。

…そして、そうして会話に興じているうちに、蘭がかなり調子を取り戻してきたのも伺えるだろう。

八百万 頼 >  
やれる事はかなりすっ飛んでること多いけどな。
ボクはそう言うことやと思うとる。

(だから特別でもなんでもないんだと。
 人よりやれる事が多いだけだと語って。)

ふーん。
もったいない、美澄ちゃんこないに可愛いのに。

(本人を目の前にあっさり言ってのける。
 別にナンパのテクなどではない。
 ただ単にそう言う性格だというだけだ。)

あんまり深く考えんでええねん。
女の子と男が一緒に出かければそれでデートや。

(彼女とは違い、こちらはデートのハードルがめちゃくちゃに低い。
 登下校を一緒にしただけでデートだと言う勢い。)

せやで。
もちろん人によるけどな、ボクはデートでええと思うよ。

(などと話しながら、彼女の調子が戻ってきた事を感じ取る。
 安心したように笑う。)

美澄 蘭 > 「………なるほどね………」

「特別でもなんでもない」という言葉には流石に納得し難いものがあるが、頼が「異能」をどんなものだと思っているかの話は、興味深いものだった。
ふむふむ、という感じで頷く。

「………えー、と。…あ、ありがとう…」

あっさり言ってのけられたのとは対照的に、こちらはしっかり頬を染めて。
…それでも、一生懸命否定するのではなく、ぎこちなくではあるが礼を返した。

「………そういうものなのかしら………」

正直、蘭も年頃の少女ではあるので、そういったことに興味がないわけではないのだ。
今図書館から借りている本も、読みながら端々の恋愛描写にひゃー、となっている勢いだし。
…そんな蘭からすると、頼のノリは恐ろしく軽くて。それでいいのだろうか、という気持ちが胸の中で渦巻いた。

「………そ、そう………。」

「デートで良いと思う」という言葉や…頼の、安心したような笑顔に、つい頬を赤らめて口元を両手で隠す。
そして、その両手の中で、深い…深い息を一つつくと、その手を口元から離して立ち上がり。

「…大分調子良くなってきたし、そろそろ帰るわね。
………色々、ありがとう」

まだ、頬に赤みを残しながら…恥ずかしそうにはにかんで、頼にそう言葉をかけた。

八百万 頼 >  
ま、その辺は人それぞれやし、それを否定するわけやないけどな。

(もちろん特別なものと思っているものも居るだろう。
 人によっては神から与えられた贈り物と思う人も居るだろうし、そんな宗教的な考えなんかを否定するわけでもない。
 意見の一つだと思ってくれたらええよ、と続けて。)

あはー、思った事言っただけやでー。

(顔を赤くする彼女に、にこにこと笑いながら尚も言う。
 実際彼女は可愛いと思う。)

デートにも色々あるとは思うけどな。
単純なお出かけの意味やったり、恋人同士が愛を深め合う意味やったり。
ま、要は今度遊ぼっちゅうだけの事や。

(どこか引っかかるところのあるような彼女の表情を見てフォローを入れる。
 どうにも男性経験が少ないところがあるようなので、デートと言う言葉に何か特別なものを感じているのかもしれない、と。
 ヒラヒラと手を振って、改めて遊びのお誘い。)

ん、一人で帰れる?
あれやったら送ろか?

(大丈夫そうとは言え、一人で帰すのはちょっと不安。
 首を傾げてそんな言葉。)

美澄 蘭 > 「…うん、でも「力」に縛られる、っていうか、「力」に振り回されるのも良くないと思うし…
「意見の一つ」としては、とても素敵だと思うわ」

そんな風に言って、頷いた。

「………もう………」

すっかり顔を赤くして、困ったように軽く眉を寄せて、俯く。
この手の話題では、蘭にどうにかする術はない。

「………そうね、遊び…なら………」

信じ難いが、蘭はここでまた詰まった。
蘭の趣味は、「その気になれば一人で完結する」ものばかりなのだ。
趣味が通じる同性とならば、やりようはいくらでもあるのだが…

「………えぇっ、と…何か、いいのが思いついたら、連絡するわ。
ホールのコンサート日程とか、確認しておきたいし」

そう言って、視線を泳がせ、ぎこちなく笑うしかない蘭だった。

「ええ…ずっと歩き通しで帰るわけじゃないから、大丈夫よ。
心配させちゃってごめんなさい…でも、ありがとう」

気遣いの言葉をかけられれば、少しだけ苦笑いを浮かべて謝罪と、例の言葉を述べるも…
送りは、断った。…一人暮らし先に異性を寄せるのは、やはりまだ怖いのだ。

「…それじゃあ、またね。
………「デート」の提案は、また改めて連絡するから」

控えめながらも人の良さそうな表情でそう言って、蘭は訓練施設を出て行く。
空は今にも泣き出しそうな曇り空だが…急げば、何とかさほど濡れずに帰れるだろう。

ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。
八百万 頼 >  
望まぬチカラ、つーのもあるしな。
結局んとこ、どうやって自分のチカラと付き合ってくか、っちゅう話やと思うわ。

(結局のところはそれだ。
 そう言った異能との付き合い方に、そう言う考え方が現れてくるのだろう。)

美澄ちゃんが楽しい事なら何でもええよ。
ボクも美澄ちゃんが好きなこと知りたいしな。

(なにやら考えている彼女に、あまり深く考えないようにと伝えて。
 彼女の言葉からコンサートを考えているらしい。
 行った事は無いが、興味が無いわけではない。)

そお?
ほなら気をつけて帰ってな。
連絡待ってるわ。

(断れても特に気にした様子も無い。
 女の子なのだ、家を知られたくないと言う気持ちはわかる。
 彼女が見えなくなるまでぶんぶん手を振って見送ろう。
 その後は来たときと同じく、どこかへとホイホイ歩き去っていく――。)

ご案内:「訓練施設」から八百万 頼さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「ふーむ……ふむふむ。」

訓練施設のとある一室で、小瓶を片手に考え込む七生の姿が。
瓶の中には赤黒い液体──七生の血が半分ほど入っている。
ちょっとした用事で病院に行き、ついでとばかりに事情を説明して血を抜いて貰ったのだが、

「どっからどう見ても……普通のザ・血って感じだよな……」

小瓶の蓋を外しながら、唸るように呟く。
大半の人間の体内に流れているものと、寸分違わぬ様に見える。
しかし、七生にとっては異能の根源の一つであり、自分の能力を把握するためにも何か発見が欲しい所だった。

東雲七生 > 「うわっ、何つーか……時間が経ってるから冷えてて変な感じだ……。」

小瓶の蓋を外し、中の血を掌に垂らす。
何とも言えない感触に眉を顰めながら、掌から零れそうな程血が溜まったところで、

「……えーと、イメージイメージ……。」

頭の中に球を思い浮かべる。ゴルフボールほどの大きさの、真球だ。
すると見る見るうちに七生の掌に溜まっていた血がその在り様を変え、瞬きする内にゴルフボール大の真紅の球体が七生の手の中にあった。

「……うん、冷めてようが何だろうが、俺の血には変わりないか。」

東雲七生 > その後も様々な形状をイメージしては、手の中の血液をその通りに変化させていく。
七生が想像出来る範囲の物ならどんな物でも作り上げられるのは、相当に便利な能力だと思う。
それは七生もよく分かってはいるのだ、が。

「……やっぱ、血、ってのがネックだよなあ……。」

再び球体へと変えた自分の血を握り、盛大に溜息を溢した。

東雲七生 > 「ま、ううん……こうしてあらかじめストックしとけば怪我しなくても何とか……」

手の中でボールにした血を転がしつつ考える。
一度何らかの形にしたものでも、触れている限りはその形を自在に変えられるのは確認済みで、
何日間か日が空いてもその性質は変わらない事も確認済みだ。
だから小さくして持ち運べば良い、とも思うのだが。

「うーん……それでも持てる数に限りはあるし。」

普段から落ち着きなく動き回る七生のこと、動きが阻害されようにはしたくない。

ご案内:「訓練施設」にシング・ダングルベールさんが現れました。
シング・ダングルベール > 「へえ、学園って言っても色んなところがあるんだなあ。」

ようやく転入届が受理されて、俺もこの島の学生の仲間入り。
施設を見て回っていたんだけど、どうにも学び舎っていうのも違和感がある。
訓練施設とは、何と戦えっていうんだ……?
散策していると、一人の青年……少年? 同じ学生かな。

「あんまり良い臭いはしないね。」

血とはまた。うーん……呪術者?

東雲七生 > 「もっとちっちゃく……いや、薄く?
 カードにしとけば嵩張らないかな……?」

ボールを手持無沙汰に弄びながら、小瓶に残った血液を見つめる。
ひとまず今手元にある分だけは何らかの形にしておきたい。
もし何か不測の事態が起きても即座に対応できるだろう。

「うーん……ん?」

ふと視線に気づいて顔を上げる。
訝しげにこちらを見る男性に気付き、小さくひらひらと手を振ってみた。

シング・ダングルベール > 「やあ、俺は怪しいものじゃなくて。ええと……シング。魔法使いだ。」
「折角なんで、このあたりをぶらついていたんだ。」

フードを外してかぶりを振る。
思えば学生同士で会話するのも初めてか。

「君はここで何を?」

東雲七生 > 「ど、どうも。
 俺は東雲七生。……えっと、この学園の二年生。」

シングさんか、と一つ頷いてから笑みを浮かべる。
自分よりも年上そうな姿に少し緊張するが、それよりも今は

「あ、えっと……これ、この。
 俺の異能の使い方を、色々考えて……たんすよ。」

小瓶に蓋をし、手の中の赤い球体を示す。

シング・ダングルベール > 「なんだ先輩じゃあないですか。」
「まあ、最近転入してきたばかりなんで、だいたいが先輩ですけどね。」
「ああ、口調は気にしないで。違和感があれば俺も"崩す"から。」

何やら思い悩んでいる?
口調も表情も崩しながら、俺は近くに座り込んだ。

「それで、先輩は何か見えました?」
「その力の使い方、使い道は。」

東雲七生 > 「まあ、そうっすけど。
 この学校、結構だいぶいい加減なとこあるから……」

困った様に頭を掻く。
去年、七生が一年の頃は年上の同級生というのはちらほら居たが、年下の先輩にはあまり遭遇しなかった覚えがある。
なので、いざ自分が「年下の先輩」の立場に立つとどう振る舞えば良いのか分からない。
敬語を使えば良いのか、崩せばいいのか、それらにすら逐一悩みつつ話すためかちぐはぐな調子になってしまって自嘲しつつ。

「何か見えたというか……つい最近、躊躇わない事は覚悟したんだけど。
 その為にどうしたら良いか、場を整えようとしてるって感じ?」

シング・ダングルベール > 「躊躇わない、かあ……俺、まだこの島に来て一か月ぐらいなんですけどね。」
「治安は悪いところがあるのはわかってるつもり。それに対する公的なカウンターがあるってのも。」

俺は手のひらで水球をつくってみせる。
サイズはちょうど、先輩のと同じぐらい。

「先輩はその力で何したいのかな。ただ生きているだけなら、そう悪くはないじゃない。」
「特別な力なんてもなくてもさ。」
「それでも振るう覚悟が必要ってことは、誰かと戦いたいの?」
「代わりに戦ってくれる人たちなら、いくらでもいるのに。」

それでも、取りこぼす命だってある。それはわかっていた。
全てを守り切れるわけじゃないってのも。
けれど誰もが自由に力を行使できるのは、本当に怖いことだって俺は思っていた。
どれだけ力をつけても、人は心が弱いから。
覚悟を口にしたとしても、矛先を誤ることは……ある。

「過ぎた力は重荷だよ先輩。みんなが持っていいものじゃない。」
「それでもその力、モノにしたい理由があると?」