2016/06/18 のログ
ご案内:「青垣山」に蕎麦屋さんが現れました。
蕎麦屋 > 青垣山の麓。最近はいつもの場所になりつつある。
屋台をあけて。――まだ、提灯には灯を入れない。

「や、今日は早く来すぎましたか。」

客用の椅子に座ってのんびり。手元には湯気の立つ湯呑を握っている。傍らには急須。
ずずー……

「はー……いや、お茶が美味しいですねぇ……」

夏ももうそろそろ本番に差し掛かる。日は落ちたと言え周囲は随分と蒸し暑い。
――客が来るまではのんびりと構えることにしよう。

蕎麦屋 > ことり、と湯呑を脇に置く――空だ。
急須を持ち上げて……

「あら。」

此方も空。
淹れなおすべきか、はた、と悩んで――

蕎麦屋 > しばし悩んで――店を開けることにした。
ふらりと立ち上がれば、急須と湯呑を片付けてしまう。
提灯に灯を入れる――『冷やし 200円』の文字が浮かんだ。

「さて――」

布巾でさっと机を拭きなおす。
いつも通りの客待ち――今日はお客の来る日か来ない日か。

蕎麦屋 > 「――ふむ。」

人入りという意味では落第街の方が、やはり。
でも最近は監視の目も厳しい。客になんやかやの被害が掛かっても宜しくない。
そういうわけで此処なのだが。

「来ませんねぇ――」

当たり前ではある。まず人通りがないのだから。
仰いだ空は、若干の雲模様。どうにもすっきりとしないのは時節柄か。

ぽつねんと。
一人、汗一つかかずにたたずめば、やはり幽霊のような気配。

ご案内:「青垣山」に黒星さんが現れました。
黒星 > 山に入る道から下りてくる姿は、全身真っ白い姿をしているせいか、暗い中から浮き上がるように見えた。
幽霊みたいに。

そして見つける、蕎麦屋の姿。
…………どっかで見たような、屋台。

「アレって落第街に出てたのじゃなかったっか、っけねえ……多分だけど、ネ。」

蕎麦屋 > 「おや――?」

くるり、と視線を向けた先。
一瞬だけなら幽鬼の類にも見える白い姿だが。

「あら、毎度。」

小さく頭を下げての礼。

「今日も食べて行かれます?
 今日は暑いですから、冷やししかございませんけど。」

以前にも蕎麦を啜りに来た客だ。顔は当然、覚えている。

黒星 > 「ああ、やっぱりかヨ。
 落第街、追い出されでもしたのかネ?
 みかじめ料払えなかったとかネ。」

カラカラ笑いながら屋台の方へ。
他に客も居ないので遠慮なく真ん中に座らせてもらおう。

帽子を取りながら、 冷やし という提灯を見た。

「おや、前は100円だった気がしたヨ。」

蕎麦屋 > 「いえね。まっとうな方の方々からちょっと追いかけられてまして。
 ほとぼり冷めるまで河岸を変えているだけでございますよ。」

心地いい笑いには微笑みで返す。
どうぞ、と席を進めて――屋台に据え付けた冷蔵庫から水桶と、器を取り出した。
見かけによらず案外ハイテクな屋台である。

「冷やしは手間かかりますからね。――というのは建前で。
 落第街や此処ならともかく、他でも営業するのでしたら少々価格は引き上げるべきでしょう?」

蕎麦を茹でるのは熱いかけ蕎麦と同じ。
湯から上げてから、取り出した水桶でざっくりと冷やす。――水桶には並々とはった水に氷まで浮いている。
十分に冷えたところで、きっちりと水を切り、冷やして置いた器に盛る――

「はい、どうぞ。天かすはそちらから。」

器の縁には山葵を添えて、最後に刻み葱と海苔、鰹節を乗せて、濃い目のこれまた冷えた汁を掛ければ、完成。
ことり、と客の前に差し出す――

黒星 > 「真っ当ねぇ……ふーんだヨ。
 これ、電気どうなってんのかネ。」

冷蔵庫て。
バッテリー内臓なのか?

サングラスも外したのだが、胡散臭そうな目で蕎麦屋の手を見た。

「200円でも十分、ダンピングだと思うけどネ。
 まぁ……  ああ、今、追いかけられたって言ったネ?」

どういう屋台の構造なのか良く分からないが……
何となく見てみる。

   なんだこれ。

とはまぁ、それはいいとして。

「あぁ、ありがとうさんだネ、いただくヨ。
 後、なんか保険課で不審者扱いされてる変なのが居るってウチの子が言ってたけど、キミのコトかネ。」

蕎麦の器を引き寄せつつ、片手で割り箸を取って、咥えて パキ と割って。

蕎麦屋 > 「電力ですか?内緒です。」

見た限りバッテリーも発動機の類もなく、そもそも駆動音も聞こえない。
それでも十全に動いているのは中々に奇怪かもしれない。

「他所に行くのでしたらもう少し値上げも要りますでしょうか。
 いえね、向こうのお店は結局行ったこともありませんので。ふむー……」

これでもまだ安いらしい。そこは考慮しておかなければいけないだろう、と。
胡乱な視線には気が付いたが。

「えー、多分それではないでしょうか。ただのしがない蕎麦屋なのですけどねぇ……
 あ、蕎麦はぬるくならないうちにどうぞ?」

はぁ、どうしてこうなったのか、と溜息一つ。
とはいえあまり困っている様子でもない。
蕎麦の方はきっちりと器まで冷えて、暑い日には丁度いいかもしれない。

黒星 > 「ま。まあいいヨ。
 年季の入った屋台だって話で……私は詮索する方じゃないからネ。」

そんじゃまぁ、と蕎麦を混ぜて勢い良く ずずー っと啜る。
美味い。
美味いので、更に ずずー っと啜る。もぐもぐ。

「安すぎると逆に怪しいからねえ、こういうのはリサーチも大事だヨ。
 ずっとそこでやってる老舗ってわけでもないんだしネ。

 まぁ、普通にツッコミ入れると
 ・普通の蕎麦屋はあんなことしない、頭がオカシイ
 ・キミ、不法入島者だろう、アカン
 ってのが原因だろうネ。

 特に後者かネ。

 ところで、お代わりだヨ。」

あっと言う間に食べ終わったので、お代わりを要求する。
器は綺麗に空っぽになっていた、完全に何もない。

蕎麦屋 > 「怪しいのは分っておりますけれどね。
 ――いえ、ほら、落第街の方々ってお金あまり持っていらっしゃらないでしょう?
 普通に出すなら掛けでも四、五百円はとってもよいのでしょうけれど。」

価格に関しては本当にそんな理由である。
事落第街であれば100円すら払えない、払う気のない連中も居るわけだし。

「あ、バレてます?
 まぁ、捕まえるだのなんだのと物騒な話の上に実力行使までされてしまうと逃げますでしょうよ。
 ――そもそも見舞いに行ったら、乱闘騒ぎ起きかけたの止めただけなんですけれどね。 

 はい、少々お待ちを。」

いろんなところに話行ってますねぇ。ホント。
それはともかく、空の器を受け取れば、二つ目の器と蕎麦を取り出す。
蕎麦は一杯目より多め。というか二玉。あっさりと食べきってもらえるのはやはり心躍るもので――

「はい、お待ち。――おまけしときました。」

手慣れた手つきで二杯目を差し出す。二玉の大盛、というやつです。

黒星 > お代わりを受け取ると、また勢い良く ずずー である。
美味そうにずずー ずずー。ごくん。ずずー。

「ぉ、大盛りでいいネ。と、まーそーなんだけどネ。
 値段相応、味相応って感じで、安過ぎるのも客が引くよって話だヨ、私にゃ関係ないけどネ。
 金持ってるからネ。」

なので遠慮なくお代わりするのである。

「普通にバレるよ。
 バレたくないなら、大人しく目立たず騒がず、公の場に出たりせず、だヨ。
 
 うちの子もワザとやってんのかなあって笑ってたヨ。

 何しに島に来たのか知らんが、騒ぎを大きくしたくないなら、捕まっとけば良かったのにネ。
 そしたら説教されて、正規の手続き踏めヨってまだ穏当に済んだだろうに、クカカッ。

 今からでも 島のルール知らなかった、悪かった、人間社会に疎かった、って出頭したらどーだネ。」

箸を動かしながら喋りながら、で、空になった器を前に。
またお代わりなのである。

蕎麦屋 > 「金持ってる人はよろしいですけどね。」

頷く。
だが実際。持ってない方が圧倒的に大多数、というならそちらに合わせることになるわけで――

「いえもうねー、なんであんなことになったのか不思議で仕方ないですけれど。

 や、島に来たのは蕎麦食わせに来ただけですよ?本当に。
 ――まぁ、この島、やたらと昔馴染みがいるモノで、そっちの問題に巻き込まれたようなもの。でしょうか。」

瞬く間に綺麗になくなった器を受け取れば。全く同じ動作で三杯目。
――同じじゃなかった。今度は三玉持ってる。器も大きくなったぞ。

「いやもう。散々釘刺されてますのでそこはご心配なく?
 出頭はしてませんけれど、話は通しましたので。

 まさか戦争起こす気か、まで言われるのは予想外でしたけれど――ねぇ。
 はい、お待ちどうさま。――よく食べなさりますね。」

此方も喋りながらてきぱきと蕎麦を茹でていく。
ことりと置かれた器は蕎麦がてんこ盛りだ。

黒星 > 「何でか分かってないなら、そうなったし今後もなると思うがネ。
 不法入島者のままじゃ余計にネ。

 蕎麦食わせて回りたいなら、もちょっと島に居てもいい権利を取ることを勧めるヨ。
 その方がキミも、キミ以外のヤツも私も幸せになるからネ。

 って、これ200円なのかネ。」

なんかすごい盛りになってる。
食べるゴトに増えるのか、この蕎麦屋は。

だがしかし、それで怯むような吸血鬼ではない。
混ぜるのがちょっといやかなり大変だが、グルグルすると、ずずーっと食べる。
食べる。
啜る、食べる。ずずー。

「まだまだ育ち盛りなんでネ、食べれる時に食べる主義なんだヨ、カカッ」

蕎麦屋 > 「あまり長居する気もなかったのですよ、本来。
 ――あ、ただの蕎麦屋ですからね。それ以上でもそれ以下でもございません。

 まぁ、早い段階でとりましょう――とる前にもめた感じではあるのですけれど。」

もう目まぐるしく物事が動き過ぎて年寄りには大変ですけれど、とため息などつきながら。

「盛に関してはおまけです。
 ――いえ、どこまで食べられるのかな、と少し興味がわいてしまいまして。

 育ち盛り?食べ盛りの間違いではなくて、です?」

だから200円ですよ、と。
怯むどころか全く変わらぬペースで食べ続けられるとやっぱり気になります。
成人男性がまだまだ育ち盛りとは、面白いですねぇ、などと笑いながら、食べっぷりを見ている。

黒星 > 「個人的にゃあ、長居して欲しいんだけどネ。

 そんな強調するとかえって怪しいけどね、いや、もう怪しさはカンストしてるから意味無いけどネ。
 あぁ、申請するなら推薦に名前くらい貸すヨ、教師だからネ、私。」

ずずーずずー と、変わらぬ勢いで蕎麦を啜って飲み込んでいく。
空になりました。
お代わり要求に器を前に出します、まだ食うよ。

「美味いから、幾らでも食えるんじゃないかネ。

 私はまだ若いんだヨ、だから育ち盛りでいいんだヨ。
 何歳で爺さんなのか知らんけどネ。」

蕎麦屋 > 「結局腰を落ち着けることになりそうな気がしますけれど。
 それもこれから次第でしょうか。――割と物騒じゃありません、この島。

 あ、それはご丁寧に。蕎麦好きな教師の方多いですねぇ……」

空の容器を再び受け取る。
そして取り出したのは――流石に四玉となると入る器がない。
なので三玉。ばさりと鍋に放り込んで茹で上げる。冷水できちっと〆て。

「旨いと言われるとついついおまけもしたくなりますね、お上手なこと。

 そういえば、何歳で年寄りなのでしょうねぇ……?
 と、お待ちどうさまです。」

ことり、と四杯目。これで九玉。
そろそろ大食い選手権でいいところに食い込めそうな量になる。

黒星 > 「物騒だヨ?

 この島は日本って国の中じゃ異常に犯罪発生率高いからネ。
 だから余計に不法入島に厳しかったり、入っちゃうと発覚するまでガバガバだったりするヨ……
 まぁ、転移荒野やこの山とか、バケモンやら何やら沸いてくるからネ。

 普通の人間が普通に過ごすなら、ちょっと注意が居る島だと思うヨ、最初から居る私の感想だけどネ。」

また超大盛りで出てくる。
だが、食べ切ってくれようと、グルグル混ぜて、ずずーっと食べる。
揺ぎ無く蕎麦を啜る。

あと、適当に喋る。

「蕎麦好きっていうか、人間じゃないのに優しいのが一家の教えでネ。

 年寄り基準はそりゃ種族によるんじゃないかネ。」

蕎麦屋 > 「ですよねぇ。暫くあちらの方で商っておりましたけど。
 ――ああ、犯罪、という意味ではなくてですね。
 異世界の化物は――まぁ、場所の問題だからさておくにしても。

 外から見てるとなんていうんですっけ、こういうの。
 えー……ああ。蟲毒の壺ですか。そんなイメージが付きまといます。」

暫く島を見ていた感想が、それ。
相変わらずの超大盛を相変わらずのペースで食べ続ける。
その細い身のどこにそれだけ入るのだろうか、と疑問になるくらいのたべっぷり。

「おや、蕎麦好きではなく。――まぁ、ご厚意には甘えますけれど。
 種族に依りますかー……や、本当に見かけで判断すると怖い目にあいますね。」

あはは、気を付けないと、と。
とりあえずは普通に過ごす気ではある。面倒ごとがやってこなければ。

黒星 > 「ぉ、いい例えだネ。
 島の支配側も混沌化した様子がお好みのようだし、何ぞ思惑もあるんだろうネ。

 中に居る身としちゃあ、食われない程度にしといて欲しいけどネ。」

ずずー  ずず、っと、空になる器であった。
次のお代わり要求をするべきかどうか、をちょっと迷っているあたり、お腹満たされてきたのかもしれない。

とりあえず水を一口。

「ああ、美味いモノ食べるのは勿論好きだけどネ。
 身内のルールは守っておかないと、家に帰ったトキに叱られるからネ。

 人間に化けるのはバケモノの得意技だからネ、キミもそうみたいだけ……うむ、お代わりするヨ。」

結局食べるらしい。

蕎麦屋 > 「否定されないあたり、そういう意図が見て取れるのですねぇ――

 いやはや。怖いもので。」

あ、さすがに手が止まった。
と思ったらおかわりの声と共に差し出された。
空の皿を受け取って代わりの器を取り出す――

「旨いものは魂の洗濯ですよ。
 寒い、ひもじい、死にたい、などとはよく言ったものです。

 まぁ、バケモノでも人を見るのが面白い、なんて奇特な輩も居たりしますので。
 そこはまぁ、人間もバケモノもいろいろ、でしょうか――」

おまちどうさま、と――もこれは何杯目でしたでしょうか。
差し出したのは再び三玉の超大盛、割と容赦がない。

黒星 > 「綺麗にしたいなら、落第街なんぞあるわけないからネ。
 社会の縮図でも作りたいのかもしれないけれど、でもまぁ、混沌としてる方が楽だけどネ。」

受け取った器の中身を見て、 よーし と勢い良く啜り始める。
ずずー。
ずずー。

「美味いモノ食って、風呂入ってりゃあ大体は幸せなもんだからネ。
 そーいう意味では、この蕎麦屋も平和に貢献してるかもしれんヨ、クカカカッ」

笑いながら、だけど、流石に蕎麦を啜るペースが落ちてきた。
いや、持ち直した。

「私も人間を見るのは好きだヨ、だからこの島に居られるんだからネ。
 全然関係ないけど、次はかしわ天とか欲しいネ。」

蕎麦屋 > 「あの場所の存在意義。まぁ、よくわかりませんよね。
 私には牧場か何かにしか見えませんけれど。」

牧場というには少々殺伐としているが。
それにしても相変わらず手が止まら――あ、止まった。

「旨いモノは軍隊の維持にも必須ですからねぇ。
 や、貢献できているとするならばそれはなかなかに光栄なことで。」

えっへん、と胸を張ってみたりする。
――とか言ってる間に持ち直した。さすが。

「あ、やっぱり欲しくなりますか?
 前にも食べ盛りの子に言われましてね、用意しようかとは思うのですけど。
 ――今のごたごたが片付いたら用意する暇も出来ますかしらねぇ。」

ご案内:「青垣山」にリビドーさんが現れました。
リビドー > 「ふぅむ……」

 ふらりと蕎麦屋に立ち寄る姿が一つ。
 目星を付けていたのだろう。あまり迷わずに其処まで辿り着けば、硬貨2枚を取り出して
 
「――こんばんわ。一杯、貰っていいかな。」

黒星 > 「なんだちゃんと分かってるじゃないかネ。
 社会の良くない部分の再現なら良く出来てると思うヨ。

 異能が出てからこっち、どーいう犯罪者が出そうか、どう治安は悪化するかってデータは取れるんじゃないかネ。」

ずずー   で、食べ終わった、げぷ。

「温かい飯の出ない軍隊は先がないもんだよネ。
 何で軍隊が出てきたのか良く分からんけど……でかい胸を張りたいなら、後は生徒にでもなればいいヨ。」

制服とかすごいことになりそうだね、とセクハラである。
そんでやっと箸を置いた。

「ここじゃあ海産物のがいいかもしれんけどね。
 トコヨなんとかエビってのが、大きくて美味いらしいヨ。

 あ、お勘定だネ。」

そんじゃあ、食べ終わったしサングラスを掛け直して席を立った。
と、入れ替わるように入ってきた先生様に軽く会釈。

「ぉっと、センセイ。こんな場所で奇遇だネ。」

蕎麦屋 > 「……あら。」

二人目とはこの間に引き続いて珍しい、と思ったが。
姿を見れば納得もする。

「はい、毎度。」

器と蕎麦を取り出す。蕎麦の量が妙に多い気がするが気のせいだろう。

リビドー >  
「おや、キミは――黒星先生だったか。
 こんばんわ。実に奇遇だが入れ違いだな。キミの事は気に掛かっていたんだが、惜しい事をした。
 今日はどうにも巡り合わせが悪い――ま、そんな時もあるか。」
 
 掌を頭に押し付けてため息一つ。
 蕎麦の量を見れば値上がりの理由にも察しがついた。

「ああ。毎度。元気にしていたかい。」

 蕎麦を食べつつも会話を挟む。
 薬味とつゆをからめ、小さく音を立てながら啜る。
 

蕎麦屋 > 「ああ、あとはいろいろと有用なものがとれるのでしょうねぇ……と。」

本当にいろいろなものが、『採れる』。

「や、なんとなくですよ?
 ――あら、お客さん、セクハラは遠慮してもらえます?――はい毎度。」

くすりと、とはいえあまり気にした風もない。
置かれた勘定を確認しつつ。

「トコヨ――ナントカエビ?
 じゃあ、次回は仕入れておきましょうかしら。」

言いつつ。あら、お二人は知り合いですか。と、去る背を見送る――。

蕎麦屋 > 見送りながらも手は止まらない。茹でた蕎麦を冷水で〆て、器に盛る。
刻んだ葱と海苔、あとは鰹節を飾り付け、同じく冷たい汁を回しかける。
最後に山葵を器の縁に添えて――

「――あ。」

つい前の客の勢いで作ってしまった。

黒星 > 「おっと、こりゃあ失礼したヨ。
 トコロの後は忘れちゃったけど、美味しいエビだそうだヨ。」

こっちもセクハラを悪びれた様子は無かった。

「私を気にして?
 あぁ、事務員になんか言われたかネ、先週一回も授業しなかったの、やっぱ怒ってるかもしれんネ。

 それじゃあ、また職員室でネ。」

職員室になんぞ居たことはないが。

白い帽子を被って蕎麦屋から離れていく。

十数メートルも歩いた先で、唐突に姿が消えたように見えたのは気のせいでも何でもないだろう。

ご案内:「青垣山」から黒星さんが去りました。
リビドー > 「職員室でキミを見かけた気がしないんだが……まぁ良い。
 妙な教師が妙な代講をしかねんぞ。全く。とは言えまた会おう。」

 呆れ混じりに見送ってから、蕎麦へと直る。
 ずるずる、ずるずる。……もう一つ出てきた。

「ん、二杯目の注文はまだしていないが――」
 

蕎麦屋 > 「ああ、先のお客さんが勢いよく食べる方でして。
 や、ついつい作ってしまいました。――あ、もったいないので良ければ。」

二杯目、どーん。
先の客は十二玉食べました。じゅうにたま。

「それはともかく、ご無沙汰しております?
 ――あ、これはお返ししておきましょうか。」

ことり、とテーブルに置いたのはスマートフォン。

リビドー > 「そうかい。ではその一杯だけ頂くよ。
 ……ん、そう言えばそうだったな。そっちは貰っておくとして――」

 置かれたスマートフォンの横に、少しぶ厚めのスマートフォンを置く。
 言う程ボロくはないが、使われた痕は伺える。

「と言う訳で、機能は減るが余っているスマートフォンに回線を繋げて持ってきた少々型落ち品だがね。
 ……盗難追跡用の居場所発信機能はとりあえずオフにしてあるよ。ささやかなインフラだ。」

蕎麦屋 > 「はい、や、すみませんね。
 ――ああ。言いつけ通り、でもないですけれど。他の電話は出てませんので。」

見てみれば充電は十分。何件か入っている着信履歴は不在着信になっている。

「おや、これはありがたく――よろしいのです?」

代わりに置かれたのものを、受け取る。
ながめつすがめつ――若干古いのは分るが、十分に使えるものではあるようで。
電波もきちんと入っている。

リビドー > 「了解。蕎麦を食べ終えたら改めよう。」
 
 外見からは[2nd]の印字を読み取る事は出来る。
 恐らく、何かの第二世代機種ないし二号機なのだろう。

 受け取る意を見せるならば、加えて小箱を渡す。
 中には汎用ACアダプタとコネクタが見えるだろう。その他のアクセサリーは欠品しているように見える。

「一般的でないものだから、版落ち品でも性能は十分な筈だ。
 具体的には一般回線の他に、異界経路型の回線を使用出来るようになっている。
 電波が通らない所でも通話が出来るのが強みだな。どっちかが生きていれば通話や通信が出来る。

 ……ああ、お茶をもう一杯。」

蕎麦屋 > 「ん、そうしていただけると――お、や?」

気付いた。
一般的に流通しているものならまず理解できるのだが――

「あら、やっぱり。
 変わったものお持ちですねぇ――先生だから、というわけでもなさそうですけれど。

 あ、こちらもありがとうございます。」

小箱も一緒に受け取る――何処でもつながる、というのはなかなか便利な話だ。
話しながら、差し出された湯呑に、冷たいお茶をこぽこぽと注いでいく。