2016/06/19 のログ
リビドー >  
「この位は嗜みだよ。
 ……ん。最近は暑いからな。冷たいお茶が丁度良い。
 あるいはビールだな。ビールは置いていないのか?」

 ダメ人間のような言葉が飛び出す。
 3割ぐらいは冗句なのだろう。

「とは言え、両方遮断されたらどうしようもない。
 ま、電波で補えない部分を補う程度だな。薄壁程度なら通るだろうが。
 ……ああ、改めて聞いておこう。段取りの方は平気そうかい。」

 蕎麦の方も8割方食べ終えて、一旦手を止める。
 大分お腹いっぱい、と言った体か。
 
 

蕎麦屋 > 「本当にこの島は……と。
 はい?ビールですか……」

くすりと。
備え付けの冷蔵庫をあけて、中身を探る――

「はい、どうぞ。」

出てきたのは、キンキンに冷えたビールと、同じく冷えたジョッキ。
何で用意しているのか。

「段取りの方は……さぁ?としか。
 連絡自体は取れた、と思いますけれどね。
 ――まぁ、向こうとしては私個人の問題とは取ってないようで。」

面倒くさい話この上ないですけどねぇ。

リビドー > 「あるのかよ。
 いや、あるのが当然、か?」

 ビールを受け取れば訝しげに呟いた後、煽る。
 ぬるいビールも良いが、冷えたビールもまた格別と言わんばかりに呷った。

「そうかい。
 ま、そんな所か。」

 面倒くさそうな言には、断言し頷く。
 個人の問題ではないと言及するまでもなく、それを認識していた事は把握している。
 念は押したが押す必要もなかっただろう。
 そんなことを認識しつつ、再び呷る。

蕎麦屋 > 「それほど量は備えておりませんけどね?」

ぶっちゃけるとその一本だけですし。と。
そもそもそれほど客が来るわけでもない。日に用意する量としては十分なのだろう。

「ええ、全く。
 ――いやまぁ、最初の言からある程度予想できた話ですけれど」

どーも最初から紐づけて考えているらしい。
最初の表現が悪かったか――とはいえ。あの場で迂闊に変な事を言うとそれこそ全面戦争、という可能性もあったわけだし。

「ああ、で。
 信用したらお話しする約束でしたね?」

今お聞きになります――?
そんな様子で首を傾げてみせる。

リビドー > 「む、仕方ない。もう一杯は我慢しよう。」

 空っぽになったグラスを返しつつ、残りの蕎麦を平らげる。
 満腹そうに人心地付いてみせる。

「そうかい――ん、概ねはそんな所だが、今の段階で話してしまって良いのかい?
 当然、聞くからにはキミから聞いた事は配慮するつもりではいるとは言え、だ。」
 
 この前のやり取りも踏まえてデリケートな話である事には違いない。
 故に確認も兼ねたような口ぶりで、そう問うただろうか。
 

蕎麦屋 > 「ええ、泥酔されてしまっても困りますので。
 後はお茶で我慢してくださいな。」

くすり、と。
こうしてみると会社帰りのサラリーマンのような雰囲気がある気がする。

「んー…いいんじゃないのです?
 主に言うとまた面倒くさいことになりますけれど、あの主、人を信用しなさすぎますので。」

なんで独断ですけれどね、と。

リビドー > 「ははっ、そう聞くと泥酔したくなってくる。」

 軽くおどけてみせてから冷たいお茶を啜る。
 冗句にしてしまえばそのまま本題へと入るか。

「了解。とは言え、人となりに関してはどんな奴か知らんから何とも言えんな。
 人を信頼しない理由はいくつかに分類できる。

 人そのものが悪いものだと思っている。
 自分の力を信頼できない故に相手の評価を受け止め切れない。
 裏切られるのが怖いから、その落差を受けたくない為に信頼しない。
 
「キミの主は――どうなんだろうな。」

 指を折りながら例を挙げてみせ、最後に何気はなしに尋ねてみせた。

「ま、それなら聞くだけ聞いておこうか。
 キミの思惑が分かるだけでも安心できる。頼むよ。」
 

蕎麦屋 > 「歩いて帰ってもらわないといけませんので。
 そこはご勘弁くださいな。」

ふふ、と冗句には軽く答えて――

「あー、どれでもないですね、多分。
 ――強いて言うなあ全ての複合ですか。

 どうやったらあそこまでねじくれるんでしょうかねぇ?」

だから面白いんですけど、と注釈など入れつつ。

「あ、じゃあ簡単に。まず前提として。
 こないだ来られた時に蕎麦喰ってた生徒さん――ええと、真乃君じゃない方の子。
 あれね、ウィルスなんだか人間なんだかの集合体でしてね、多分。ぶっちゃけ地下室でやり合ったのあの子です。
 ――殺したんですけどやっぱ生きてますよねぇ。」

ここまではおーけーです?ととりあえず。
殺した、となんでもない事の様に言ってのける――

リビドー >  
「全ての複合、なぁ。
 賢い類の性悪説寄りの認識持ちかい。ま、後は聞いて判断する」

 冷たいお茶を飲み干し、空になったコップを弄んでから置く。
 ――当然と言えば当然だが、会話はしっかり聞いている。
 視線は蕎麦屋に向いたままだろう。

「安心した。真乃君だったら喰った蕎麦を噴き出す所だ。
 ――ふむ。アイツがそうだったのかい。やられてもいいかやられないを踏んで表裏問わず踏み込んで来るのかな。
 ま、普通に殺しても死なないのは化け物や割とよくある話だが……
 ウイルスと人間では質が大分変わってくるが今は置いておこう。オーケイ。構わんよ。」

 彼自身も、"殺した"の句に反応する事はない。
 先の話題からも死んでいない事は明瞭だ。
 

蕎麦屋 > 「まぁ、主の話はほどほどにしておきましょう。
 揶揄うと非常に面白い反応してくれるのですけれど。」

契約しているとは思えない言動を零しつつ。
空になったコップには再び冷茶を注ぎ――

「私も真乃君でしたら大爆笑するところですけれど。
 あれはまぁ、なんでしょうねぇ――ある程度統一した意識を持ったスライムみたいなものですか?
 さーっぱり分りませんけれど、まぁ、元々は人間でしょう。」

多分。
イマイチ見たこともなく、確証は持てない。

「――大方私の真意を探りにでも来られたのかと。
 ほら、私これでも一介の蕎麦屋ですから。なにやってんだ、的な?

 で、ここからが本題ですけれど。
 うちの主、そのウィルス?に罹患しましてね。目下進行中でございます。
 行く先は異形かなんからしいですねぇ……」

あれからぶんどった資料ですから、そもそもそれすら眉唾ですけれど。

リビドー >   
 
「成る程。ボクも人の事を言えないが、ルギウスを思い出すよ。
 ……ああ、旧い知り合いの教師にそういう芸風の奴が居てね。」

 其処まで言ってから脱線と判断したのだろう。
 咳ばらいを加えて、話題を戻す。

「話を統合するに、罹患した存在を同じものか眷属に作り替える類かな。
 依代が無いと自己増殖が難しいのが普遍的なウィルスだろう。」

 断片的な知識から推察を重ねて大雑把な推察を立てる。
 まだほとんどの事が分かっていない と言っている風に聞こえる。

「普遍的なウィルスの定義を使うなら、概ねそのような具合だからな。
 どうにかしようと切羽詰まっているって所かな。治療法もないのだろう。
 嘘だったとしても秩序の重要性を認識している言える奴だ。本人位は何か持っているかもしれんが……」

蕎麦屋 > 「……――やー、この島の人は本当に飽きませんねぇ。
 るぎうす、というのはこれ、うじゃうじゃ似たような同じ魂抱え込んでる人の事ですか。」

いやはや。

「同じ物――なのでしょうかね?
 あの結果はどうやら失敗した結果、らしいのですけど。
 まぁ、治療法は多分ないでしょう。あればあんなもの生まれて暗躍してませんし。
 纏めて罹患者焼き払えば解決もしますけれど、ね。」

あっさりと言ってのけるあたり、実は割とそっち方向は諦めていたりする。

「進行抑える――とかいうアンプルはございましたけどね。
 あくまで抑えるだけなのか、最初から欺瞞か。分りませんが進行はしてるようで。」

まぁ、掻い摘んでいえばそれだけの話でございますよ、と。

リビドー >  
「魂の定義にも因るが大体そんな所だな。
 ……しかし、ふむ。同じものでないかもしれない。且つ、失敗した結果か。
 つまり異形になるとやらは失敗した結果で、それを前提で打ち込んだのか。
 単に成功へのサンプルを取りたいだけかもしれんが……それにしてはキミに釘を刺しに来る立ち回りは不可解だな。」

 眉間に皺が寄る。
 思考を回す。賢しいにしては迂闊ないし強気な行動がどうにも引っかかる。

「進行を抑えるアンプルはある。それをどこから知ったにも因るが……
 ……どうにも腑に落ちん。ただサンプルデータが欲しいだけの立ち回りにしては迂闊が過ぎる。
 キミの口から暗躍の言葉が出るにそう言う奴なのだろう。この前の会話も無軌道なものには見えなかったぞ。
 相手に合わせて殴りつける理論を変えているのかもしれんが、理然とした奴の行動には見えんな。

 状況も動機も分からん。ソイツ、何が目的なんだ?」
 
 

蕎麦屋 > 「――目的?知りませんよ、そんなもの。」

肩を竦めて答える。

「把握していたら当にその目的を潰してます。
 まぁ、そういうわけで一事が万事、よく分りかねます。
 そもそも件の主人の件にしても、主人の友人を釣りだすのが目的、でしたからね?

 ――――何なのでしょうかねぇ、一体。」

改めて、首を傾げる。
気味が悪い、というのが一番近いのだろうか。
魂の形から言動に至るまで。

「でもまぁ、蕎麦喰う分には客なのですが。
 ――今度来店されたらその辺聞いてみましょうか。来るとか言ってましたし。」

リビドー >  
 知らない、と来た。
 ……その上で毒を受けた経緯も副次的なもの。
 となると、罹患させた事そのものは大きな狙いではないのかもしれない。
 思案を続けながらも会話を続ける。

「主人の友人を釣り出すのが目的で、その為に主人に毒を残した。
 
 ……【主人を救いたければ言うこと聞け。】
 短期的には、そうやって強請る為の人質兼サンプルと見るのが分かりやすい形だが……」

「ま、その辺はどうにも良く分からん。
 素直にその友人を差し出してしまえば話は早いのだろうが、そうはさせないのだろう。
 案外生きる事に疲れ、自分を殺してくれるものを探しているのかもしれんが……観測としては希望的すぎるか。」

 冷茶を少し含んで気を変える。

「聞いてみるのが良いとは思うが、それが切欠で強請ってくる可能性は大いにある。
 小さなアクションでも何かの布石かもしれないから気を付けておくと良いかもな。
 フット・イン・ザ・ドアもドア・イン・ザ・フェイスも手垢のついたロジックだが、
 何だかんだで王道足りえる手法だ。」

蕎麦屋 > 「個人的な印象、ですけれど。――あれ罹患させたのすらどうでもいい話の気もするのですよねぇ。
 そもそもあの後、接触に来たの私の所だけですし。――知っている限りでは。」

だから余計に訳が分からないのですよ、と首を傾げる。

「や、差し出したところで話は終わらないと思います、よ?これも直感でしかないですが。

 死にたがり――というようにも見えませんでしたしね。」

まぁ、どうぞ。と自嘲気味の笑みには茶を勧め――

「私を強請ってどうするのですかねぇ、と思いますので。大丈夫でしょう。
 舞台の端役は大した報酬も持っていないものですし。」

リビドー >  
「処置も適当 且つ 死にたがりの類ではないと。
 生き汚さでも視たのかな。……こうも分からんと逆に興味が沸く。
 どんな哲学を持っているのやら。――む。」

 ――"端役"、の言葉に訴えるような眼つきで反応する。
 所謂ジト目を見せてから立ち上がり、適当な木々をよく見て――。

「……おいおい、舞台の端役なんて言葉は使うもんじゃあない。
 それはある種の呪いのようなものだ。個人的に推奨しない。
 どうあろうとキミのようなものの力は脅威足りえる。
 敵が排除ないし無力化されるってだけでも盛大な報酬だ。」

 小さく欠伸をして、空気の刃を何処かに撃つ。
 着弾を視ずに向き直り、ジト目を向け直す。
 何かしらの問題にはならない事は事前に確かめている。

「この程度のものであったって、無辜の人間からしちゃ脅威足りえる。
 この手の暴力が自分に向かわなくなる、ってのは後ろ向きながらも立派な報酬だ。
 何度も言うが、そこは違えるなよ。キミの力がどこまで残っているかは知らんがな。
 
 ……ああ、折角だ。その内一つ力量を確かめさせてくれないかい。
 キミの力がどの程度であり、どのような意思で扱っているかが理解出来れば安心できる。
 ボクも無暗にキミに小言を叩き付ける回数は減るだろうな。」

蕎麦屋 > 「さて、分りませんよ。
 それこそ聞いてみないとわかりませんね……?」

かくり、と首を傾げてみせる。

「いえいえ、端役も端役。まぁ、早々と席を譲る気もありませんけれど。
 私が主役になるようなお話は――まぁ、次の終焉までお待ちください、といった所ですか。」

おや、さっくり行きましたね、と。
視線の先ではすっぱりと切れて落ちる木の枝。

「――まぁ、それは、私が本気でやればコトなのでしょうけれど。
 基本的には軍隊一つ分、それ以上にはなりえませんよ?

 生憎と、付随するような諸々は何処かに置いてしまいましたからね。
 試すというなら――連絡いただければ、行かせていただきましょう?」

肩を竦める。
どの程度の物か――確かめる。
この様子だと手を抜くとえらく怒りそうな感じである。

リビドー >  
「それが来たら凄く怒るからな。
 確かにキミからしちゃそういうもので、キミのようなものは……ち、まあいい。」

 どうにも不機嫌そうです。
 一番苛立たしげに頭を掻いてます。

「そりゃそうだろうが、そんな簡単なものではないだろう。
 ……ま、何れ試すか調べさせてくれ。どうにもキミが語るキミの強さが低めに見積もられているような気がしてならん。
 実力以上に低く評価している強い奴は時に目測を見誤ってやらかすものだ。
 気高さと頑固さがあれば尚更だ。全く……」

 代金は払った。
 端末は渡した。説明は直感と地力で把握するだろう。
 少々の酔いを覚えながらも踵を返す。 

「じゃ、ボクは行く。
 ……ああ。スマートフォンは渡したがキミのプライバシーは出来る限り覗くつもりはない。
 何なら主か誰かに見て貰うと良い。……また会おう。ご馳走様だ。」

ご案内:「青垣山」からリビドーさんが去りました。
蕎麦屋 > 「まぁ、今のところは大丈夫でしょう。
 黒き者も白き神も揃っていますけれど。」

後半はぼそりと。揃ってはいるが、まだ配役は足りていない。

「えぇ……頑固ですね、全く。
 いえ、恩がありますから、それが望みというのであれば付き合いますけれど。」

くるり、と端末を手の内で回す。
義理には報いる――わざわざ用意された端末だ。その分くらいの願いは聞くだろう。

「はい、では、またどうぞ。
 端末も頂きましたからね、出前も受け付けさせていただきますよ――」

ぺこり、と小さく礼をして見送る……話してみればみるほど、面白い先生であると思う。

蕎麦屋 > 「さて――」

見送れば、器を纏めて洗浄用の水桶に沈めておく。
洗うのは後程――とりあえずは。

「えーと……?」

ぽちぽちと、受け取った端末を弄り始める。
客待ちの間のいい、暇つぶしになりそうだった。

ご案内:「青垣山」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > 現れた男は,どう見ても登山家には見えないだろう。
男の顔色は優れず,目は窪んで蓄積した疲労を思わせる。
彼はややくたびれた白衣を纏っており,煙草を吹かしながら,のんびりと歩いてきた。

「………………?」

男は山頂方面へと歩いていくが,その場に似つかわしくない屋台を見れば,思わず足も止まるだろう。
こんな場所に屋台があるのも不可思議だが,獅南の目には,それが尋常のものであるとは到底思えなかった。
僅かに目を細め,半分以上残っていた煙草を,携帯灰皿へと入れる。

蕎麦屋 > 「へぇ、北欧神話。神話扱い――まぁ、神話。うん」

ぽちぽち。
渡された端末はアプリストアも問題なく使える様子。と。
端末に落としていた視線をあげる――

「あら。こんな時間に珍しい。
 ――良ければ一杯どうです?」

つ、と屋台の席を示してみせる。
時代錯誤な担ぎ屋台は――尋常ではないだろう。視えるならなおさら。

獅南蒼二 > 店主らしき女性と目が合う。
そう言えば今日は目を覚ましてからなにも口に入れていなかった。
研究に没頭していればそんな日はざらにあるのだが……

「……このまま素通りするのも味気ない、か。
 一杯貰おう。ついでに,美味い水でももらえると嬉しいんだが。」

……水分補給もしていなかったようです。死んでしまいます。
と、そんな軽口をたたきながらも,白衣の男は屋台を一瞥し,それから店主へとその疲れ果てた瞳を向けた。
何か,納得したように頷いてから,静かに屋台へと歩み寄る。

蕎麦屋 > 「はい、少々お待ちを――」

注文は快く受け付ける。
先にお冷の入ったグラスをテーブルに置き。
冷えた器と蕎麦を取り出す。蕎麦は鍋へと放り込んで――

「こんな夜更けに。随分とお疲れの様子ですけれど。
 お仕事ですか?」

言いながら、蕎麦を冷水できっちりと〆る。
器に盛って、刻んだ葱と海苔、鰹節を盛りつける。
これまた冷えた汁を回しかけ、器の縁には山葵を添えて。

「はい、お待ちどうさま。」

ことり、と置かれたのはごく普通の冷やしかけ蕎麦。

獅南蒼二 > 「すまんな…。」

椅子に腰を下ろせば,水をぐっと飲み干して、静かに息を吐く。
冷たい水が全身に行き渡り,澱んだ血の流れを解きほぐすような感覚。

「いや,古典魔術についての研究が行き詰ってな。
 古代の知恵を借りて,逆さ吊りにでもされようと思ったところだ。」

…ポケットにはアンサズのルーンを刻んだ弾丸を装填したM1911。
そして同様の弾丸が,今,まさに,この男の胸に撃ち込まれている。

尤も,そんなことは透視能力か未来を見通す力でも無ければ,分かりはしないだろうが。

「……………。」

置かれたかけ蕎麦を見れば小さく頭を下げて,割り箸を割った。
日本人らしく…と言うべきか、それほど大袈裟ではないが音を立てて,蕎麦を啜る。
一口目を飲み込んでから,小さく,ほっとしたようなため息を吐いた。

蕎麦屋 > 「いえ、お気になさらず――」

一息に飲み干したのを見れば、余程喉が渇いていたと分る。
空になったグラスには再び冷水を満たして。

「逆さ吊り――嗚呼。」

一見すれば意味不明な言動に、暫し首を傾げて、目を細め。
――暫くして、納得したように頷いた。この程度なら『視』ずとも見える。

「流石に真似したところで死ぬだけなのでお勧めしませんけれど。
 ――あ、お代わりもございますのでゆっくりとどうぞ。」

落ち着いたような、一息ついたような吐息にはくすりと笑みを浮かべて。

獅南蒼二 > 冷水が満たされたグラスを持って,

「それはそうだろう…何せ,私は人間で,アレは神の話だからな。
 だが,もし,奇跡的に死ななければ何か得られるかな?」

…それをまた,飲み干した。

神話の再現によって現象を呼び起こす魔術は数多い。
その殆どは一切の魔術的根拠も無く,神話の記述に準じた手法を取る。
獅南はそこに,同時代の古典魔術であるルーン魔術を組み込み,
神話の再現実験を行おうとしていた。

過去に失われたルーンを得ることができれば,現代のルーン魔術は飛躍的に進歩するだろう。
それは進歩ではなく、正確には復興というのだろうが。

「流石に2杯平らげられるような歳ではないよ。
 ……こんな場所で開けているのだから,店主はよほどの変わり者かと思ったが。」

「美味い。」
と、そう一言だけ。素直に賞賛しました。
「だが、変わり者であることに違いはないか。」なんて付け加えて,笑いつつ。

蕎麦屋 > 「――得られるものがあったとして、それは多分別物、かと思いますけれど。
 そもそも再現しようにも、宇宙樹もトネリコの槍もございませんし。」

再び飲み干したグラスには冷水を注ぐ。
再現する、と言うなら案外とやってのけそうな気迫が、落ち窪んだ瞳にはある。
準備もいくつかはやっているようであるし――

「とはいえ、お客さんに死なれてしまいますと寝覚めも悪いので。
 できれば止めておきたく思いますよ?」

二杯目の用意は、やめておいた。
最近お代わりを連発する客ばかり来るものだからすっかり感覚がマヒしている。

「まぁ、趣味でやっている、という意味では変わり者ですので。
 有り難うございます――」

旨い、の一言には小さく頭を下げて見せた。

獅南蒼二 > 「……なるほど,アンタが何者か知らんが,その通りだ。
 槍の代りには銃を,ユグドラシルの代わりにこの山をと思ったのだが…紛い物は紛い物でしかない、か。」

ククク,と笑って……視線を貴女へと向けた。
実験の失敗を先に通告されたというのに,楽しげな笑みを浮かべたまま。
……とりあえず、伸びてしまう前に食べ切るのがマナーだろう。
言葉を発することなく黙々とそばを啜って……さほど時間をかけず,食べきった。

「それは残念だ……迷える生徒のために,偉大な知恵を授かりたかったが。
 ………どうも,戦乙女に喧嘩を売った大馬鹿者がいるらしくてな?
 その生徒の力になってやれればと思ったのだが……。」

僅かに目を細めて…白衣の男は肩を竦め,笑った。
その言葉は半ば真実であり,半ば偽りである。
いや,事実はすべて真実なのだが……

蕎麦屋 > 「いえ、気になさらず?――もうご存知の気がしますけれど。
 神のルーンを刻んだ選択は正しいでしょうけれど、それ以外で色々と無茶が過ぎますね。」

笑みには微笑みで返しながら。
そもそも一玉であればそれほど量が多い、というわけでもない。
一日飲食をしていないのなら少し物足りない、かもしれない。

「ああ――彼らは彼らで色々してらっしゃるのですねぇ。
 先生の鑑、といった所でしょうか。この島の先生方は立派な方が多いようで――」

困っている者に、理由は違えど手を貸す、というものが客として続けて三人。
なかなか面白い偶然ではないだろうか。

獅南蒼二 > 「さて,どうだろうな…アンタが隠す素振りも無いから見当はついているが。
 私の見当違いでなければ,アンタは私の心の中まで見通していそうだ。」

確かに量が多いわけではなかったが,元より大食漢ではないこの男にとっては十分な量だった。
御馳走さま。と小さく呟くように言って,箸を置く。

たしかにこの教師の語った言葉は善良で勤勉な教師のそれだったが,
貴女の言葉を聞けば,全量で勤勉な教師は肩を竦めて,楽しげに笑った。

「……正直というか素直というか,それとも,絶対の自信か。
 生憎だが私はそこまで立派な人物ではないのでな,生徒の話は大義名分だ。
 アンタらのいう“運命”とやらが,私はどうも苦手でね。
 もし私にそれが降りかかってきたときには、どうにか振り払いたい。」

相手の言葉に同調してか,こちらもすぐに本心を語ってしまった。
尤も,眼前の相手が想像通りの存在だとしたら偽りなど無意味だろう。


「まぁ,それでも,善良な教師としては,喧嘩の理由が知りたいところだな?」

蕎麦屋 > 「隠してももう仕方ないところございますしねぇ……今はもう一介の蕎麦屋でございますけど。
 あ、基本的には『視ません』よ。蕎麦屋でございますし。」

かくり、と首を傾げてみせる。
ごちそうさま、の言を貰えば、空いた器は下げて、水桶へ。
みない、という話を信じるかどうかは相手次第ではあるけれど。

「運命。いや、そんなモノまだ信じてる人居るのですか。
 ――定まった運命なんてものが存在するなら。
 今頃私二回は死んでますしね。そんなものありはしませんよ?」

なんでそんなことを聞くのか。
正直なところ不思議ではあるが――

「結果として『運命だった』ならあり得るかもしれませんけれど。
 結局それは事象の観測地点の問題です。

 で。喧嘩の理由ですかー…私も知りたいのですけど。ご存じないです?」

獅南蒼二 > 「隠さないのは分かったが,1つだけ分からん。何故蕎麦屋なんだ?」

苦笑交じりにそうとだけ聞くが,貴女がつづけた言葉には,ごく静かに
「それは『視ることが出来る』ということだろう?」
とだけ,呟いた。理不尽な力を持つ者に対する嫌悪感が僅かに表出する。
けれどそれを相手にぶつける事の無意味さも理解しているのだろう,小さく首を横に振って、

「ほぉ,予想とは違う答えだ。
 ……だが,アンタの言葉が偽りでないことを信じたいものだ。
 過去を語るものとしてのみ存在するのなら,それはただの弱者の自己弁護か何かだろう。
 …そうであってほしいと,素直にそう思うよ。」

穏やかに,この疲れ果てた男はそうとだけ語った。
「で、その理由の分からん喧嘩は“運命”とやらの結果じゃないのかね?」
なんて,冗談交じりに言って笑いつつ。

ポケットの小銭入れじからお金を取り出そうとして…金額を確認し…
「……安すぎないか?」
…少しだけ、驚いた。

蕎麦屋 > 「趣味です。それ以上の理由はございませんよ。
 ほら、老後にセカンドライフって言うでしょう。あんな感じの。」

ふふ、と笑いながら答える。
いえね、その反応が面白いんですよ、などと。

「視れます、けれど基本的に視たところで意味もございません故に。
 ――神も悪魔も一絡げに人の手の届くバケモノと成り果てました。
 『運命』なんてものを外から定義付けるナニカは最早存在致しません。」

多分ですけどね?と最後には苦笑を交えながら。

「信じるも信じないも――結局のところ信じなかったとしても、きっと貴方は『運命』を真正面から殴り飛ばすのでしょう。
 であれば、それはないのと同じです。」

喧嘩の内容が運命か、と問われれば、分りませんよ。と首を振り。

「安すぎて怒られてるんですよねぇ……これでも普段の倍なんですけど。」

値段に関しては。本当に内部に店を出すとなるなら考え直さないと。

獅南蒼二 > 趣味、その潔い理由には、笑うほかなかった。
「分かってはいるが,その外見で“老後”などと言われるのは違和感があるな。」
それも狙ってやっているのか?なんて、苦笑しつつ。

「……なるほど,過去の人間にとっては運命と呼んで諦めるほか無かった災厄や,神の力さえも……
 ……今や無数に発生する怪異の1つに過ぎない。
 “多分”にしては説得力のある見解だ。気に入ったよ。」

「それに,まぁ,確かにアンタの言う通りだろうな。
 尤も,殴り返されて死ぬのかも知れんが,それはそれでいい。」

値段に関しては納得し切らないような顔をしつつも100円硬貨をテーブルに置いて,

「善良な教師としては,無意味な喧嘩はぜひとも止めたいところだが…何か手伝うことはあるかな?」

蕎麦屋 > 「割と狙ってますよ?
 いえ、蕎麦好き、というのもありますけれど。」

くすくすと。本当にそれだけでやっているのだ、とわかってしまう、笑い。
その笑いもすぐにひっこめて。

「でしょう?
 私から言わせれば、もはや人の方が神より余程に恐ろしい。
 手が届くと分れば貪欲に取り込み、取り込まれ――何処に行きつくのかなど。」

肩を竦める。
それこそ当の昔に。神すら知らない領域に至ってますよ、と。

「まぁ、それだけの気概があれば大丈夫でしょう。
 私のお墨付きつけておきましょうか?ご利益は全くございませんが。

 ――そうですねぇ……今のところは。あ、蕎麦の出前でも頼んでもらえません?
 夜鳴き蕎麦は夜やってこそ、ですし。日の高いうちは暇でして。」

代金は毎度、と受け取り――
代わりに、電話番号を書いたメモを渡した。

獅南蒼二 > 「だろうな…まったく,始末に負えん。」

そうは言いつつも,白衣の男は楽しげに笑っている。
眼前の女がどのような“運命”を生きてきたのかは知らないが…

「…アンタの老後は私の一生より長いのだろう?
 なら,その“人”が何処に行き付くのか見届けてやってくれ。
 無論,蕎麦を打ちながらで構わん。」

冗談か本気か、そうとだけ告げて,白衣の男は立ち上がった。
差し出されたメモを見れば…小さく頷いてから内ポケットにしまい込む。

「おいおい,そこは,嘘でもご利益があると言っておくものだろう?
 まぁ,気が向いたら頼ませてもらうよ……毎回ここまで歩くのでは,骨が折れるからな。」

そう言って立ち去ろうとして…何かを思い出したように振り向き,
「善良な教師から1つ忠告だ…無意味な喧嘩は,教師の目の届かんところでやれ。」
いいな?と,念を押す。相手が答えようと答えまいと,すぐに背を向けて…

ご案内:「青垣山」から獅南蒼二さんが去りました。
蕎麦屋 > 「何、もとより、私が行きつけるところまでは見続ける所存ですよ――」

それに、ご利益は貴方にとってはない方がよろしいでしょう?
そういいながら、背を見送って――

「いやぁ、なかなか難しいのですけどねぇ。」

一応は肝に銘じておく。これで三人目である、釘を刺されるのは。

蕎麦屋 > 「さて、そろそろ引けましょうか。」

今日の蕎麦は中々いい売れ行きだった――ほとんど一人が食べていったのだがそれはそれ。
白み始めた空を一瞥して。

水桶やら机やらを片付けてしまえば、もう蕎麦屋が居た痕跡は残らない。
担ぎ屋台を担げば、えっちらおっちら、人の居ない道を帰っていく――

ご案内:「青垣山」から蕎麦屋さんが去りました。