2015/06/17 のログ
■翔 > 逆に、その言葉は、今度こそ俺に刺さった
だから
いや、それなら逆に
その理由だけで、俺と対等に殴り合えると
やっと、面白くなってきたとーーー!
笑みが、浮かぶ
ようやく、対等に殴り合える、相手が出来る
「反論する元気があるなら来やがれ狂犬、っ!?」
首輪から、明らかに聞こえた機械音
それと同時に、以前にもアノ夜に見た火花のような散ると同時に、犬飼が倒れこむ
時間が止まる
猫が、犬飼を囲み、その顔や首を舐めるのを見ながら
俺は
「ふっ、ざぁけんなぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
怒りが、胸にこみ上げる
このままいけば、こいつと最高に殴り合えると
今、まさしく、コングが鳴ったと
そう思ったのによ
拳を付き合えると
また、ここに現れた世界の理不尽に
俺は、振り上げた拳の行き先を、また奪われた
「cool head and warm heart」
無理矢理に、深呼吸をしながら自分の好きな言葉を唱える
落ち着け、落ち着け、落ち着け
最後に一つ、大きくため息を漏らして
威嚇してくる猫達を踏まないように近づいて、首輪を脚で小突く
「おい、起きろバカ犬」
■犬飼 命 > 「……ハッ」
小突かれて目は覚ましたようだが起き上がらない。
流石にこの負傷では起き上がるのは無理というものだ。
「……」
自嘲するように鼻で笑った以上は何も言葉を発しない。
今の犬飼がどんな言葉を口にしようがそれは全く無意味なのだ。
男ならわかるだろうか。
■翔 > こいつもまた、理不尽に囚われている
いや、理不尽を受けている、んだろうか
首輪に、さっきの言葉に、風紀委員の制服
なんとなくつながるように見えて、何処か繋がらない
ロストサイン
そういえばあの夜にこいつがそんなことを言っていたような気がする
聞き覚えはある、が
それだけだ
今は、まだ
言いたいことは山ほどあった
だが、その答えはこいつは持っていない以上、何を聞く必要もねー
だから、寝てる馬鹿犬に手を差し出した
「荒木 翔(アラキ ショウ)」
そうとだけ、呟いて
■犬飼 命 > 差し出されたその手を振り払う。
このような状態に手を差し出されることも犬飼にとってはひどく傷つくものであった。
俺の名前はてめぇは知ってんだろと言いたげに、その手を振って空き地から荒木を追い返す。
そして背を向けて離れていったその後ろで、凶犬の吠える声がした。
ご案内:「Howling of the underdog」から犬飼 命さんが去りました。
■翔 > つくづく狂犬だな、ったく
だけど、噛み付く元気があるなら
また噛み付かれる日もあんだろ
勝者から敗者へ贈る賛辞は終わった
だから最後に、独り言を漏らす
「握った手ごと、拳振るんじゃねーぞ」
■翔 > あぁ、ったく、雨が降り始めやがった---
ご案内:「Howling of the underdog」から翔さんが去りました。
ご案内:「《サイバーアレクサンドリア大図書館》」に《銀の鍵》さんが現れました。
■《銀の鍵》 > ――没入する。
格子状に形作られた電脳の世界の中が視界の中に生み出されていく。
――没入する。
マトリクスが現れる。この常世島に張り巡らされたネットワーク。
その中に没入する。電脳世界へ、仮想でありながら一つの現実である疑似世界へとダイブした《銀の鍵》は巨大な《大電脳図書館》の前に来ていた。
ステルスプログラムを起動し、並大抵の警備プログラムの目は既にごまかしてある。
学園地区を再現した電脳領域。そこに《銀の鍵》はいた。
図書館が立ち並ぶその中でひときわ目立つもの。
《大電脳図書館》あるいは――《サイバーアレクサンドリア大図書館》などと言われる場所だ。
■《銀の鍵》 > 《サイバーアレクサンドリア大図書館》とは俗名であり、正しくは《大電脳図書館》なのだが、その蔵書データの多さからそのように呼ばれるようになっていた。
通常、許可なく入れる場所ではない。電脳世界に没入した際は、そのアカウントなども入念に調べられる。
この電脳の大図書館には学園の報告書や研究業績、機密文書などが収められていると噂されている。
故に、普通ではないれない。一般学生では許可すら出ないだろう。
《銀の鍵》が今用いているアカウントは偽のものだ。よく調べられればすぐに偽だとわかるだろう。
だが、元よりそんなものをアテにはしていない。《銀の鍵》はハッカーである。
そして――彼には異能の力があったのだ。
大図書館の入り口。警備プログラムなどが周回する中、ステルスプログラムを起動し、《銀の鍵》は姿を消しつつ、ジャミングプログラムを飛ばす。
刹那、警備プログラムの電脳に偽の映像記録が映し出される。その間に、《銀の鍵》は何重にもロックされた扉の前に立つ。
「――開錠」
扉の前に右手を伸ばし、そう呟くだけで、何重にもかかっていたはずのセキュリティロックが一気に外れていく。
ご案内:「《サイバーアレクサンドリア大図書館》」に有澤 零砂さんが現れました。
■有澤 零砂 > その近くを、ふよふよと立方体のようなアイコンのプログラムが飛んでいる。
見慣れないそのプログラムは、偶然にもそのロックの解除を認識したらしく、
周囲を確認するかのように辺りの巡回を始めた。
■《銀の鍵》 > 開錠を確認すると、そのまま勢いよく《銀の鍵》は扉を駆け抜けていく。
この大図書館には一度侵入したことがある。ここまでは問題ない。
《銀の鍵》は後ろ向きに鍵を回す所作を行う。そうすれば扉は何事もなく閉まっていくだろう。
(……魔導書の電子データは今はいい。必要なのは……)
《銀の鍵》の顔の左前に小さなウィンドウが出現する。
この大図書館の地図だ。あらかじめハッキングして入手しておいたものだ。
《銀の鍵》が必要とするものは学園の機密文書。
この学園の電子領域で消息を絶った“師匠”のことだった。
(第六六階層か……)
機密文書のある場所までは掴んでいた。
電子の色彩に彩られた図書館の中を《銀の鍵》は駆ける。
ステルスプログラムは未だ起動している。問題はない。
時折存在するセキュリティロックは、右手を伸ばすだけで解除されていく。
ハッキングする形跡すらなかった。
■有澤 零砂 > プログラムは、解錠されたロックを追いかける。
なにもせずに開くロックを見れば、それは異様なことだ。
ゆえにふわふわと、それでいてそちらに負けない速度でたどって飛んでいく。
「Piii.....」
時おりそれが、どこかへ向けて信号を放っていることに気づくかもしれない。
■《銀の鍵》 > (……《氷》か? 面倒な)
機密文書のある階層へと降り始めた《銀の鍵》であったが、何かのプログラムがこちらに気づき、追ってきているのを感知した。
ステルスを見破ったかどうかまではわからない。恐らくはセキュリティロックが外されていくことに反応したのだろう。
無論、扉を開けた後は即座にハッキングを行い、痕跡は消している。だが。外からそれを見られていれば具合は悪い。
(……ここまで来て邪魔をされてたまるか)
《銀の鍵》の顔部分は電子の仮面で覆われている。
こちらは何重にもセキュリティや防御プログラムをかけている。
並大抵の技術ではこちらの正体はわからないはずだ。
「――対《氷》プログラム起動」
《銀の鍵》は立ち止まった。そして、自身を追いかけていたプログラムに相対する。
《銀の鍵》の手には小刀のような物があった。とはいえ、イメージはあまり重要ではない。
それは当たれば一時的にプログラムを停止状態に追い込むものだ。普通のプログラムならそれで停止する。
《銀の鍵》は迷わずそれを自身を追ってきたものに投擲した。
■有澤 零砂 > 「Pipipi---」
あっけない、防壁もほぼなく、攻撃を行うそぶりもなく機能を止める。
そう、先程まで放っていた信号も、だ。
それをきっかけに、何かのデータが、いや、調べればわかるが誰かがダイブに使っているアバターが高速で迫ってくるのが確認できる。
どうやら、先程のアレはその誰かが撒いていたものらしい。
■《銀の鍵》 > (……転移用のプログラムか。クソッ)
《銀の鍵》は悪態をつく。
自分は“師匠”の消失に関する情報を集めなければならない。
だが、今のプログラムの破壊で何かをダイブさせるルートを作ってしまったらしい。
普段ならばもっと冷静だったはずだ。即座に破壊することもなかったはずだ。
「……面倒なことになったな」
《銀の鍵》はそう呟いた。
目的なのは必要とするデータのみだ。誰かとことを構えるつもりなどない。
対《氷》ようプログラムをバックグラウンドでいくつも起動しながら、何ものかの到来に備える。
■有澤 零砂 > 飛んでくるそれを視界に捉える。
その見た目は銀髪の幼い少女に見える、とはいえこの世界で現実そのままの姿で隠しもせずに出てくることはないだろうが。
そして、その少女があなたのそばに着地する、そしてあなたが居る場所をまじまじと見つめる。
「なるほど、いい腕ですね。」
まず、一言目はそれだった。
よくよく見ると、アバターはいわゆる狐耳が生えている、なんとも可愛らしいといった印象を受けるかもしれない。
なんにせよ、その少女の見た目のそれは、あなたをまじまじとみていた。
■《銀の鍵》 > 目の前に現れたのは狐のような耳の生えた少女だった。あまり珍しいものでもない。
《銀の鍵》は電脳世界に没入する時間が長く、現実との齟齬を避けるためにほとんど自分の姿を現実と同じ構成にしてあるが、あまり一般的ではない。
目の前の少女も、現実でこのような姿であるとも限らないだろう。慎重に《銀の鍵》は様子を伺う。
ステルスプログラムもおそらくは意味を成してないだろう。監視よけのために今も起動はしているが、様子からしてあちらには見えているらしい。
「……何の用だ。ふざけた真似をして。
そう言うあんたも大した腕のようじゃねえか。
こうもあっさりと没入してくるとはな。
……俺は簡単には捕まらないぜ?」
■有澤 零砂 > 「いや、ふざけたもなにも、飛ばしていたbotが、周囲で妙なロック解除を検出。
こちらに信号を送りつつ確認していたのをあなたが止めたんですよね。」
耳をピコピコさせながら、たんたんと話す。
「別に、ここのセキュリティ担当でもないからさ、捕まえてつき出すとかはしないよ。 たぶんだけど。
なかなか面白いものが関知できたから、見に来た。 それ以上でも以下でもないんだよね。
本気で捕まえるなら、もっと賢い手を使うしね。」
自信満々にそう言った。 実際、口にしながらも彼女は警戒用の観測プログラム回しているし、アバターも厚い防壁で保護されているのがわかるだろう。
■《銀の鍵》 > 「ここのセキュリティ担当じゃねえならあんなもん飛ばす必要ねえだろ。
下手すりゃクラッカー扱いだぜ?」
ふん、と《銀の鍵》は悪態をつく。
相手の言っていることがどこまで本当かなどわかるはずもない。
ただ、あれほど自信満々なのだからそれなりの腕はあるのだろう。
軽く解析してみても、身を守る防壁は厚い。
「そんな軽い気持ちで邪魔をされた俺は不愉快だが……。
どんなセキュリティにも捕まらない自信はあるぜ。
……別にあんたが何者かなんて聞くつもりはない。俺も聞かれたくないからな。
ただ、あれを見られたのは少々面倒だ」
あれというのは《銀の鍵》の異能を持って、全てのセキュリティロックを解除していったことだ。
本来ではありえないことである。だが、その異能はあらゆる「門」を突破する異能だった。
それが電脳世界でも通用しているのだ。それは何よりも知られたくなかったこと。
■有澤 零砂 > 「ははは、ちゃんとばれないようにはやってるよ。
信号の探知もされにくいようにうまく作ってるからね。」
停止したプログラムを拾って、どこかの領域へしまいこむ。
「こっちもそっちの都合まではわからないもの、そこで恨まれても困っちゃうよ。」
と、わざとらしいかわいいしぐさで困ったポーズをする。
「たしかに、始めてみたなぁ。 痕跡も残さない即時の鍵開け。
どういうギミックかな、といっても企業秘密かな。
予想では、異能か、魔術だとおもうけど。」
いちいち、そういうしぐさで困ったりした動きを見せながら話を進める。
■《銀の鍵》 > (セキュリティ担当でない、という言葉からすれば……。
ネットワーク関係の風紀か公安か、あるいは教師か……)
《銀の鍵》はそう推理した。
いちいち可愛らしい仕草を取るので《銀の鍵》は非常にイラついていた。
こんな見た目をしていて、中身は40代の壮年男性という可能性もありうるのだ。
「中身はオッサンだったりしてな」
そう敢えて呟いてみた。
「……教えるわけねえだろ。俺は見ての通りハッカーだぜ。
仲間でもない奴に情報なんて教えねえよ。
……ま、わざわざ色々飛ばしてるってことは、あんたも本来ここにいるべき奴じゃないんだろ。
俺が用があるのかここの深層領域だ。あんたもハッキングでもしてたのか」
どうにも可愛い仕草で動かれると緊張感に欠けてしまう。
敢えて自分の情報を出して、相手の様子を探ることにした。
いざという時の手段はいくらでもある。恐らく相手も同じではあるだろうが。
■有澤 零砂 > 「ははは、そうかもね。」
そこで口を滑らすほどバカでもないらしい、それを否定すれば年齢層が絞られるのだ。
自身の年齢がばれれば、技術力等からかなり絞られるのは目に見えていた。
「ふふふー、まぁそりゃそうだね。 なんにせよ、うちのセキュリティは対策を固めなくちゃ。
まぁ、お散歩だと思ってくれればいいかな。 特に今日はほしいものがある訳じゃない。 競合することまないさ。」
お散歩とは言うが、暗に破ってたというやつだろう。
■《銀の鍵》 > 「……チッ」
相手は引っかかりはしなかった。幼稚なやつならと思ったが、さすがにそうでもないようだ。
《銀の鍵》が今必要としているのは、相手が敵かそうでないか、ということに尽きる。
だが、大した情報は得られなさそうだ。
相手の防護は強い。ハッキングを仕掛けるにしても、そちらに集中すればここのセキュリティに感づかれることになる。
「こういう場合、お互い“見なかったことにする”っていうのが鉄則だと思うが、どうだ。
俺はあんたの事を別に何かに報告したりしない。する意味もねえしな。
ハッカー仲間だっていうんなら、静かに目をつぶっててもらうのが一番だ。
俺の鍵開けのこともだ。黙っていてくれるよな?」
《銀の鍵》としては、ここは穏当に済ませたいところだ。
相手の情報も大して得られていない。相手も同じはずだ。
たとえどこかに通報したとしても自分にたどり着くことはないだろう。
相手が拒否した場合の事も考えてはある。相手の電脳への強制介入だ。
とはいえ、これは失敗する可能性も多く、危険度も高い。
まず、行いたくないものだ。
■有澤 零砂 > 「ははは、そこまで露骨に舌打ちしなくてもいいじゃないか。
傷ついちゃうよ。」
わざとらしいしょんぼりしたアクション。
「まぁ、それがいい、お互いベターな選択だね。
僕だって、君のような腕のいい人は敵に回したくないからね。
で、鍵開けの件は条件付きかなぁ、こっちの領域へ来たらダメかな。
敵に回ってからも、内緒ですとはいかないからね。
君が悪ーいことするなら、それこそダメだもの。
ま、敵に回らなきゃ、大丈夫。」
にっこりと笑って答える。
「それに、こんな奥に来てるのなら、目的はかなりやばそうだしね。
そういうのを狙う相手を告げ口すると、僕まで動きづらくなっちゃうもん。」
困ったと様子で大きく首を振りながら。
■《銀の鍵》 > 「一々イラつくぜ、そのアクションはよ」
しょんぼりしたアクションにはあ、とため息を吐く。
これで本当に壮年男性だったら大変だ。
「……そうかよ。
ま、あんたの領域になんて入りはしねえよ。あんたのことよく知らねえけどな。
俺が必要とする情報を、あんたが持っていなければそれまでさ。
俺の求める情報があんたに繋がらないことを祈るばかりだ。
他人の電脳を灼きたくなんてねえからな。
あんたも俺の領域には来ないことだ。後悔するだろうからな」
こういう場合に弱気を見せることは禁物だ。情報は秘匿すべきものだと師匠もいっていた。
無論、相手の電脳を本当に灼くつもりなどはない。軽い脅しのようなものだが意味はないだろう。
「ああ、それが利口だ。
こんな深層まで来てるやつの事を、あんたが知ってることになるんだからな。
ま、邪魔するならそれなりの手を打つだけだ。くれぐれも、邪魔はしないでくれよ。
別に悪事のためにここに潜ってるわけじゃねえ」
「――俺は、世界の真実を知りたいだけだ」
自分の顔を隠す、電子の仮面ごしにそう言った。
「俺があんたに伝えることとしてはそれぐらいだ。
あんたが俺に特に用事が無ければ俺は下に降る。
くれぐれも痕跡なんて残すんじゃねえぞ、俺も面倒なことになるからな」
恐らく、相手はかなりの技量を持っている。
そんなヘマはしないはずだろうと《銀の鍵》は思った。
■有澤 零砂 > 「ごめんね、まぁこれくらいやらないとうまく隠せるか不安だからさ。
もしかしたら素の自分が出るかもしれないし。 まぁ、かわいい姿ならかわいい動きの方が似合うでしょ。」
申し訳なさそうにあやまりつつ。
「ま、君が悪事を働かなきゃ大丈夫なんじゃないかな、あとは僕の晩御飯のレシピがとか欲しいじゃなければね。
はは、それもそうだ。 僕だって焼くのは嫌いだからね、気持ちいいことでもないしさ。」
脅しには恐れるそぶりもない、こちらもまたわかっているのだろう。
「ま、止めないさ。 ここで暴れてお互いお縄なんて面白くもない冗談だしね。」
そこまでは冗談のように答えるだけだった。
「ふむ、真実ね。」
その言葉に、空気が少しだけはりつめる。
まっすぐとそちらを見るその瞳は、仮面越しのあなたの顔を見るように、じっと、じっと見る。
「止めはしない、が。 死んじゃダメだよ、でもって、絶望もしちゃダメだ。
真実なんて、往々にしてろくでもないからね。」
先程までの、オーバーなアクションはない、ただただ、心配そうな瞳がそちらを見る。
「まぁ、ほかにはないかな。 そっちも頑張ってね。
大丈夫、上手に消えるさ。
あとはまぁ、気が向いたら手伝うよ。 それくらいかなぁ。」
帰るための準備を始める、ここにいた自身のログを消して、データ移動の痕跡なども処理を行う。
■《銀の鍵》 > 「……あんたに言われるまでもねえよ。
俺が知りたいのは真実だ。それがいいものであれ悪いものであれな。
死ぬことも絶望もすつもりはねえ。
あんたが心配するようなことじゃない。
人の心配をしてる暇があるなら自分の身を案じることだな」
相手の心配したような瞳を見れば、顔を背ける。
そんな心配はいらないと手を振る。
「生憎だな、俺は基本的に一人でやる主義でね。
あんたが俺の同志になるってなら別だがね。
……ま、たぶんないことだ。
あんたが想像してるように、俺が調べているのは危険が伴う。
余計な世話回してあんたにも被害が及んじゃ気分が悪いぜ。
――じゃあな、名もなきハッカー。あんたが俺の敵にならないことを祈るぜ」
敬礼のようなポーズをすると、その場でこの領域にハッキングを仕掛けた。
すると、格子状の模様が広がる床に穴が現れた。このホールを下りて一気に階層を降るつもりのようだ。
そして、そのまま《銀の鍵》は穴の中へと飛び込んだ。
すぐに穴も消え、後には何も残らなかった――
■有澤 零砂 > 「ま、それもそうか。 確かにそうだね、もうちょっと自分を大事にしようかなぁ。」
こちらも、めをそむけて。
「なるほどね、だとすれば邪魔しないようにしなきゃね。
まぁ、ないだろうね。僕は真実を求めたとしても課程でしかないからさ。
まぁ、早々被害を受ける気はないけどね、それじゃ。
まぁ、敵に回ったときはそのときかんがえればいいよ。 また巡り合わせがあれば会おうね。」
そう言って、手を振って見送る。
「しかし、ここまで腕のたつ人が居るとは、やはり楽しみは尽きなさそうだ。 おいで。」
飛び込んで、いなくなり。一人きりになってから、辺りにいたプログラムを招集する。
かなりのかずのそれらのうちひとつを撫でる。
「いいこいいこ、それじゃ、帰ろうか。」
一つ一つがこの場のログを消しながら、自らの領域へ消えていく。
そして彼女もそれと一緒にとけるように消えた。
ご案内:「《サイバーアレクサンドリア大図書館》」から《銀の鍵》さんが去りました。
ご案内:「《サイバーアレクサンドリア大図書館》」から有澤 零砂さんが去りました。
ご案内:「来島邸【目を背けていることの終わり】」に井戸木さいこさんが現れました。
■井戸木さいこ >
時は夕刻。
今日は私が料理当番。冷蔵庫の中身を見て、肉じゃがを作ろうと決めた所。
「今日は来島先生、帰ってくるかな。」
ピーラーでじゃがいもを剥いた、包丁で剥いたじゃがいもを切る。
とん、とん、と、包丁が踊る音に交じり――
階下から、銃声音。
■井戸木さいこ >
続いて、乱雑に、扉を壊す音が響く。
鍵を打ち壊したのだろうか。
何事かと思い、慌てて一階へと降りた。
目の前には、割れた眼鏡を掛け、銃を持った襤褸の白衣を着た黒い髪の青年の姿。
そして、数人の怯える同居人の子供たち。
■井戸木さいこ > 『ひ、ひひ……ここに居たかね、315。』
NPC――白衣の青年
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さいこを創った "idea"の研究員。
白衣を纏った青年で、割れたメガネを掛けている。
身に付けた白衣はボロボロで、所々に穴が空いている。
-------------------
「……あな、たは。」
『そうだとも。お前のせいで破滅した一人だ。
ふざけやがって。ふざけやがって……ふざけやがって!』
白衣の青年が突っ掛かろうと、胸ぐらを掴むかかくやの勢いで迫る。
"やめろ!"と、同居人の子供の一人が立ちはだかったのだが、
青年は躊躇わず、子供の足を撃ち抜いた。
■井戸木さいこ >
――手に持つは拳銃。
先ほどの銃声音の原因も、きっと此れだろう。
『ひ、ひひ……邪魔しないでくれないか。
……そこの通報しようとしているガキもだ。』
二度目の発砲音。
隙を見て通報しようと、スマートフォンを使い通話を行おうとした子供の肩が撃ち抜かれた。
スマートフォンは落ちて、割れるだろうか。
■井戸木さいこ >
『全く、逃げて目を背けて、のうのうと人並みの生活を送った気分はどうかね。
……さあ、こっちに来るんだ315。さもなくばここに居る全員を殺す。分かるよな、ひ、ひひ……』
……血走った彼の瞳は、それが"言っているだけでない"事を物語っている。
こうなる事を予測していなかった訳ではなかった。
■井戸木さいこ >
でも、逃げ出してから一度も追って来なかった。だから、大丈夫だと思ってた――
――けど、大丈夫じゃなかった。
……行こう。来島先生にも、皆にも迷惑は掛けられない。
『そうだ、それで良い。ひ、ひひ…………
お前のせいで時間が掛かってしまったが……やっと完成させたんだ。
見逃されていると思ったのかね。――バカめ。そんな訳ないだろう? ひ、ひひ……』
落ちて割れたスマートフォンの通話音だけが、虚しく響く。
■井戸木さいこ >
来島先生が救って住まわせている同居人――
――子供たちは怯え、あるいは怪我に呻き、動くものも声を発するものも居ない。
作りかけの料理を放置して、彼へと近づく。
彼は私に手枷とリード付きの首輪を付けて、まるでモノを扱うかのように乱雑に引っ張って
大人の玩具のような安物だが、私が力づくで破る手段はない。
『おらッ、歩け!
車なんてないからな! お前が莫迦な事をしなければ、こんな余計な苦労をしなくて済んだんだッ!』
彼は八つ当たりに私を蹴り飛ばし、リードを引っ張って無理矢理立ち上がらせた。
■井戸木さいこ > ――そして、私達は此処から去る。
ご案内:「来島邸【目を背けていることの終わり】」から井戸木さいこさんが去りました。
ご案内:「来島邸【臆病の報い】」に来島宗仁さんが現れました。
■来島宗仁 > こそこそと来島宗仁は家に戻る。
この男、まださいこに会う勇気がない。
が、資料とか着替えとか色々必要なものを取りに来たのだ。
――ガキどもに見つからないよう、こっそりと
■来島宗仁 > そして
男は
自らの臆病が招いた惨劇を目にする
「――――ッ!?」
■来島宗仁 > 「おい、どうしたお前ら、おい!?」
子供たちのうち、銃で撃たれたものは動けるものが病院に連れて行っていた。
残ったのは、泣いている子供たちばかり。
そして聞き取った結果――
さいこが、白衣の男に、連れ去られた。
■来島宗仁 > 別段、珍しい事ではない。
この家に押し込んでくる悪漢どもも(流石に銃は撃たなかったが)居た。
借金取り、人買い、落第街の顔役。
宗仁が襲われた事も、一度や二度ではない。
だが、その度に追い返してきたし、相手も無理は通そうとしなかった。
だが、今回は違う。
■来島宗仁 > 胸に去来するのは、ずっと昔の記憶。
あの日。
俺は何も出来なくて。
大切な人を、守る事も、看取る事も、叶わなくて。
氷架はずっと泣いて。俺は、何も、何も――
「――ッざけんなよ」
■来島宗仁 > 来島は歯を食いしばり立ち上がる。
嘆く暇があるなら。
座り込む暇があるなら。
考えろ。
動け。
何もしないで諦めるな。
何もその手で守れないで、
何もせずに嘆き悲しみ、
得られるものは何ひとつ無い。
この20年間、ただひとつ残った思いを無駄にするな。
今度こそ――!
■来島宗仁 > 子供たちを安全な場所へ避難させるよう、比較的軽症な病人たちに指示し。
来島は家を出る。
「――20年前のようにはいかねぇぞ」
ただひとつの決意を胸にして。
ご案内:「来島邸【臆病の報い】」から来島宗仁さんが去りました。
ご案内:「 落第街/廃違反組織idea跡地前~地下研究室【意志への報酬】」に井戸木さいこさんが現れました。
■井戸木さいこ >
手枷とリード付きの首輪を付けられた井戸木さいこは白衣の青年に引き摺られる。
足並みを合わせられる事もなく、転けようがぶつかろうがお構い無しに引き摺られる。
『ひひ、車が無いおかげで時間が掛かってしまったではないか。
人が来てしまう前にやらなければ……グズグズするなッ!歩けッ!』
その光景は"目撃も多数あるだろう"し"通報されていても"おかしくない。
井戸木さいこと、彼女を引き摺って歩く青年を捕捉・追跡する手段は、幾らでもあるだろう。
青年は井戸木さいこを蹴り飛ばし、引き摺り歩く。
『もう少し、もう少しだ……』
とある廃墟の前に立ち、扉を開いた。
……かび臭い空気が放たれる。
■井戸木さいこ > 『ひひ……』
白衣の青年は通路を歩き、分かれ道を左に行って階段を降りる。
半壊したこの建物において、無事な通路や部屋は少ない。もっとも、落第街の建物では珍しくもないだろうが。
井戸木さいこは階段を擦り落ちる。
小さくくぐもった悲鳴が聞こえるが、お構い無しに降り続ける。
■井戸木さいこ > 地下へ降りれば、真っ直ぐ進む。
実験区域だったのだろうか、左右を見れば研究室であったようなものが散見される。
壊れた培養槽のようなものや、人一人が入りそうな筒や機械。
ドロドロに溶けた肉の塊や、積み上げられた、山となったさいこと同じ顔をした死骸。犬のような何か。
慣れていなければ気分を害するようなものが、幾らでも見受けられるだろう。
■井戸木さいこ > ……青年が最奥の扉を開ける。
無数の端子や電極のようなものが伸びた大きなパソコンが一台、非常用発電機が一台。
手術台がひとつ。酒瓶が一瓶。手術道具と薬棚が一つ。
リボルバー式拳銃と弾丸が一組。物音のするケージが一個。
『ひ、ひひ……』
白衣の青年はいびつな笑みを浮かべ、
階段を引き摺られた事によって打撲を受け、意識の朦朧としているさいこを手術台に乗せる。
そのまま、乱暴に端子・電極のようなもの、刺す。
一つ。
二つ。
三つ四つ五つ六つ七つ八つ九つ十。
■井戸木さいこ >
刺された箇所から血が滲み、溢れる。
白衣の青年はお構いもなしにパソコンへと移り、キーボードを叩き始めた。
『ひ、ひひ……お前の体質が、超常を狂わすだけのものなんかであるものか……』
■井戸木さいこ > 『超常を司る体質。それがお前の本質だとも。
――ひひ、それを利用して超常現象を支配する箱を創る。
それがデミウルゴスプロジェクトだったとも。ひひ、ひ……』
白衣の青年は猿のようにキーボードを叩き続ける。
――それがどういう意味や効果を齎すのかは定かではない、が、研究室に異常が起こる。
研究室の壁や天井が黒く染まり、その角や辺に緑色の線が奔る。
さながら一昔前のSF映画に出てくるような、真っ黒い空間とワイヤーフレームで構成された空間へと変貌した。
『ひ、ひひ……上手く行った……これで後は思いのままだ……
……あァ、後は箱にしなければ。手足を切って箱に詰めなければいけないなぁ……。』
■井戸木さいこ >
青年はゆらりと歩き、手術道具の一つへと手を掛ける。
最早その顔からは狂気以外は見受けられない。
医療用ののこぎりを、手に取った。
ご案内:「 落第街/廃違反組織idea跡地前~地下研究室【意志への報酬】」に来島宗仁さんが現れました。
■来島宗仁 > まったく、日ごろから人助けはしておくものだ。
「あれ、先生んとこのさいこちゃん、なんか変な男に連れられてたけど……」
公園で前に治療した患者から聞いたこの言葉が無ければ、来島はここではなく研究区へ行っていたに違いない。
そして、取り返しのつかない事になっただろう。
扉を蹴り開ける。
遠慮などする必要はない。
そしてそこにあったのは。
さいこと同じ顔をした、無数の――
来島は白衣の青年に向かい、殺意のこもった視線を向ける。
「――てめぇ」
■井戸木さいこ > ギコ、ギコ。
のこぎりを引く音が――止む。
『ひ、ひひ……今はお楽しみ中なんだ。
願いを叶える箱を作っている最中でね。後にしてくれないかね。
どんな超常現象でも思いのままなんだ。どうだい、素敵だろう?』
白衣の青年は歪に笑う。
高揚と発狂の混ざった、気持ちの悪い笑みだろう。
『そして誰もが、平等に口を揃えてこう言うのさ――
"――神様の真似事なんて簡単さ!" ひ、ひひ。どうだい、素晴らしいだろう?』
年に似つかわしくない、純粋な童の様な弾んだ声でそう、叫ぶ。
■来島宗仁 > 最早言葉を発する必要などなかった。
ここに来るまでに、身体強化役を飲んでいた来島は、恐ろしい勢いで白衣の青年へと駆け寄り。
「――さいこに、触るんじゃねぇ!!」
その頬を、あらん限りの力で殴り飛ばす。
こいつだけは許さん。
死んだって構うもんか――!
■井戸木さいこ > 『は――?』
のこぎりをさいこの腕に差し込んだまま、思い切り、殴り飛ばされるだろう。
薬棚へとぶちあたれば、げふぅ、と、血を吐いた。
『お、お前……な、何をするんだ。
願いを叶える箱なんだ! 死人だって生き返らせられる!
どんな異能だって魔術だって誰もが扱える! 欲しくないのか、その箱が!』
大きなパソコンへと寄りかかり、立ち上がろうとするだろう。
■来島宗仁 > 「――世の中舐めてんじゃねぇぞ、ガキが」
そうだ、こいつはガキだ。
自分が世界の全てをコントロールできると思っている。
自分の世界以外の世界がある事が分からない。
だから……
「死んだ人間はなぁ、二度と戻ってこねぇんだよ!」
教育してやるのが、教師ってもんだ。
来島は白衣の青年を引っつかむと、もう一度殴り飛ばす。
■井戸木さいこ > 再度、殴り飛ばされる。
"殴られるなどとも思っていなかった"とも言わんばかりに、無防備に殴り飛ばされた。
再び立ち上がる。その眼は、確かに来島宗仁を見据えた。
『う、五月蝿いな……!
ならその眼で見てみろよ、見せてやるからさぁ――!』
キーボードを叩き、ワイヤーフレームの世界に超常を顕現させる。
来島宗仁が確かに見た、さいこと同じ顔をした、無数の――
――死体が、動き出す。
溶けた肉、折れた腕、それらが瞬く間に蘇り――凡そ5体の出来損ないの"さいこ"が、来島宗仁へと敵意を向ける。
■来島宗仁 > 「――――」
さいこの顔をした、死体を向く。
一歩間違えればさいこもこうなってたと思うとぞっとする。
だが――
「――こんなものはな、人の願いでもなんでもねぇよ」
来島の足が床を蹴る。
彼の戦闘能力は低い。正直、生徒で多少異能が使えるものには勝てないだろう。
だが、その薬学知識をフルに使った強化薬は。
彼の身体能力の限界を突破させ。
その動き、その力を何倍にも増幅させている。
そして、さいこの顔をした哀れな死体たちに、容赦なく襲い掛かる。
「こんなものはなぁ、ガキの人形遊びだろうがッ!!」
■井戸木さいこ > その肉は脆い。
さながら出来たてのプリンの如く、殴り付けられるだけで肉を飛び散らせる。
出来損ないの"さいこ"は狂わせる体質も、ひいては支配する体質も持たない。
ただの狩りに長けた少女ではある。――一故に、一体、また一体と殴られ、蹴られ、肉を飛び散らせる。
あっという間に、5体は消える。
『ちっ、役立たずめ……! もっとだ、もっとだ。
数が居れば、あんなのぐらい何とかなるだろう!』
再び、出来損ないの"さいこ"を十体、顕現させる。
その内の一体が、酒瓶で来島宗仁を叩きつけに掛かる。
……この青年は、自分で戦おうとしない。
■来島宗仁 > 「――いい加減になぁ」
怒りのままに、さいこの形をした人形たちを跳ね除ける。
酒瓶が来島の頭に叩きつけられ、頭から血を流す。
――だが、止まらない。
その怒りを、激情をたたきつけるが如く。
来島は、青年に向かい前進する。
「夢から醒めろってんだよ、クソガキがぁ!」
手近にいるさいこの人形を掴み。
青年の方へと投げつけた。
■井戸木さいこ > 『あ、ガぁあっ!?』
さいこの人形が投げつけられ、青年に中れば、さいこのヒトガタは弾ける。
がたん、と、コンピューターごと、青年が転がるだろう。
『ゆ、ゆめかよ……夢なんかで、あるものか、
折角、ここまで、ここまで来たんだ――ッ!』
転がったキーボードを乱暴に叩く。
――青年の姿が歪めば、"出来損ないでないさいこの姿"へと変貌する。
『さ、最初からこうすればよかったんだ――
あんなゴミをよみがえらせるんじゃなくて、僕がデミウルゴスになれば
ひ、いひひ、ひはははははははははははははは
ははははははははは――ッ!』
狂った様に嗤うさいこ(青年)が、乱暴に異能を顕現させる。
炎が渦巻き、氷が槍を形成し、瓦礫が一塊となり、電気と思わしき球体が生成され――
一斉に、来島宗仁へと迫る。
■来島宗仁 > 「――よーく分かったぜ」
来島は腹を括る。
そうだ。
あいつを何とかしなければ、さいこの悪夢は終わらない。
それが、よく分かった。
「てめぇは馬鹿だ――死ななきゃ治んねぇなぁ!」
いいだろう、やってやる。
どうなろうが構うものか。こいつだけは――!
肉が裂け、肌が焼ける。
氷が彼の腕を貫き、雷がその身を撃とうとも。
――ただ、本体を目指し、進む
■井戸木さいこ > 『ちっ――何で向かってくるんだよ、おいッ!』
――不可視の力場が、壁を形成する。
だが、"殴れば割れそうな程に脆い。"
確かに万能と思わしき程に異能を顕現させている。
確かに目の前の、青年が変化したさいこは確かな存在に見える。
が、どうにも"弱い"。
先のさいこの出来損ないもそうだ。
まるで命を感じさせない程に脆い。
先の現象にしてもそうだ。
一つ一つは致死足りえず、強引に切り抜けられる。
……中身が無い。
魂の無い肉も、基盤のない力も、脅威には足り得ない。
――ギリギリ、青年が変化したさいこぐらいだろう。完全なものは。
■来島宗仁 > 「――お前と違ってなぁ」
壁を叩き割り、異能を切り抜け。
――その肉体はぼろぼろになりながらも。
来島は進む。
あぁ、もうこれで終わりだ。こいつに付き合うのも、終わりだ。
こんな奴に付き合ってられるか。俺は、まだ――
「こちとら、現実の世界に生きてんだ!
妄想も大概にしろや、クズが!!」
あぁそうだ。
この世界は、妄想だ。
目の前のみじめな青年の、妄想の世界。
そんなもので――中身の無い妄想でとまるほど、こっちはヤワじゃない。
「授業は終わりだ、クソガキぃ!」
そして、渾身の一撃で――目の前のさいこの形をした青年に、引導をくれてやろうとする。
■井戸木さいこ > 確かな拳が、"妄想"へと引導を渡す。
拳が届けば、青年だったさいこの身体へと罅が入り――
『ぁ』
硝子のように儚く割れて、飛び散った。
――ワイヤーフレームの世界は元に戻る。
空想は終わる。彼の妄執が中身の無い空想だとしたら―― [1d2→2=2](HP: MP: )
■井戸木さいこ > ――そう憂う事も、怖がる事もなにもない。
出来損ないのさいこの姿はそこにはないが、"井戸木さいこ"は手術台の上で眠っている。
出血や打撲が酷い事になっているが、無事だろう。(HP: MP: )
■来島宗仁 > 「――がッ!?」
膝が震え、その場にへたりこみそうになるのを堪える。
強化薬の時間が切れたらしい――眩暈がして、気分が悪い。
強力な代わりに副作用のひどい薬だ。ガブ飲みすれば、当然こうなる。
だが、あと少しだ、あと、少し――
ゆっくりと、さいこに近づき――
「――――」
手術台の上のさいこに、手を伸ばす。
■井戸木さいこ > ……井戸木さいこはそこに居る。
それはただの妄執や空想の存在でないことを指し示している。
「せん、せい。」
……手を伸ばされれば、それに気付いたのだろう。目を覚ます。
ただ、どこか、不安げだ。
■来島宗仁 > あぁ、まったく。
ここまで来るのに、どれほどかかっただろう。
――実際の時間はたいした事がないのに、随分かかった気がする。
だが、これでもう、終わりだ。
「――帰るぞ、さいこ」
■井戸木さいこ > 「……ねぇ。」
不安そうに、尋ねる。
その瞳には、怯えと、不安と。
「本当に、良いの?
……また、迷惑かけちゃうかもしれないよ。
それに、邪魔になっちゃうかもしれないよ。
……それだけじゃなくて、先生のこと……」
その先の言葉が、言えなかった。
■来島宗仁 > 「俺がいつ迷惑だって言った。いつ邪魔だなんて言った」
まったく、こいつは。
そんな事を気にしてたのか。
手術台に腰掛ける。
もう、立ってるのも辛い。
「ちょっとの間だけど、離れて分かった。
――俺はな、お前に傍に居て欲しいんだ」
そっとさいこを抱きしめ、優しく話しかける
「――それに、な」
■井戸木さいこ > 「それって――いいの? 本当に?
また、あるかもしれないよ? 」
優しく抱きしめられれば、瞳に涙を浮かばせる。
満身創痍の来島の手に、少女の暖かい体温が伝わるだろうか。
今にも泣きそうだが――次いでの言葉があると聞けば、一度、止ませる。
「それに――?」
■来島宗仁 > あぁ、まったく。
我ながら、勢いに任せて、いいのだろうか。
こんなムードもへったくれもない所で。
……まぁ、いいか。
こんなものは勢いだ。
氷架にも散々言われたではないか。「兄貴にはデリカシーってものがない」って。
なら、毒を喰らわば皿までだ。
言ってしまえ、来島宗仁。
「――お前が、『井戸木さいこ』が迷惑をかけるってんなら」
ごそごそとポケットをまさぐる。
置いてくる暇も無かったのが幸いしたようだ。
その、なにか小さな箱を、さいこの手に乗せながら。
「――いずれ『来島さいこ』になって、俺の傍に居てくれりゃ、それでいい」
■井戸木さいこ > 「ほ、え――?」
言葉に、指輪に
眼を、きょとんと、直後に白黒、要するにあっちこっちに視線が行く程、動揺する。
端子を刺された痛みも、引き摺られた痛みも吹き飛ぶ程の衝撃がさいこに奔る。
白目の前の光景に、理解が追いつかない――
「あ、わ、え、と、あ、夢でも、空想でも、ない、よね。
――私で、いいの? 涼子さんじゃなくて、いいの?」
■来島宗仁 > まぁ、我ながら突飛だとは思う。
――いずれ、タイミング見て渡すつもりだったんだけどなぁ。
「お前の為に買ったんだぞ、それ」
シルバーの婚約指輪。安月給には高い買い物だった。
指のサイズはこっそりガキたちに図ってもらった。超からかわれた。
「――なんで涼子さんが出て来るんだ、そこで?」
■井戸木さいこ > 「え、だって――?
え、あれ、あれれ……あれれー……?」
ずっと涼子さんに意が向いているとばかり思ってた。
そういえば、指のサイズを聞かれたような。
「……涼子さんの事が好きだとばかり、ずっと思ってたけど……ちがうの?」
求婚してくれた嬉しさと
ずっと勘違いして一人空回ってた恥ずかしさで
ものすごく、顔を真っ赤にしているさいこの姿が見て取れる。
「あ、もしかして私、ずっと……もしかして、最近家に帰ってこなかったのも……」
■来島宗仁 > 「あのな、さいこ――涼子さん、人妻だぞ……」
もしかして。
こいつが妙に変な素振り見せてたのは――
(説明してやりゃ良かった……)
涼子が幼馴染の姉で、しかも人妻で、氷架の娘だというの。
凄い面倒なので、説明していなかったのを、いまさら思い出す。
「――だってお前、ひとつ屋根の下になんか、その……」
なんだろう。なんかものすごく恥ずかしい。
真っ赤になってさいこから顔を逸らす。というか、俺、ものすごく恥ずかしい事言わなかったか、さっき――?
■井戸木さいこ > 「――りありー?」
あまりにも混乱して下手な英語が出る。
こほん、一つ咳き込んでみせて、落ち着いてみせ 落ち着かない。
「そ、そっか……そういえば、そうだもんね。
来島先生も男の子だもんね……」
思い返せば、割りと無防備な姿を晒してた気がする。
……色々と思い返して顔を真っ赤にしてしまう。
本当、色んな意味で恥ずかしい。でも、
「……いいの? 本当に私でいいの――?」
ここで友達からでも恋人からでもいいのに。
そう言えなかった私は、我ながらずるいと思う。
「本当に、本当に――?」
……ぢっ、と、来島宗仁を、見つめる。
どうしても期待してしまって、自然と表情が緩んでしまう。
■来島宗仁 > あぁ、まったく。
顔から火が出そうだ。そういう異能に目覚めてもおかしくない。
――だが、まぁ、一番苦しいところは超えた。
後は、なるようになれだ。
「言っただろ」
ぐいっとさいこを抱き寄せる。
その、表情を見て。
あぁ、女ってやつは本当、卑怯だな――
「お前でなきゃ、だめだ」
そのまま、顔を寄せ、そっと口づけしようと――
■井戸木さいこ > 「ん――」
口づけが交わされる。
一度交わされてしまえば。求めるように強く口付けるだろう。
口付け――キスを堪能し、満足そうに離す。
「――うふふ、キスされちゃった。
ふつつかものだけど、宜しくね。えっと……宗仁。」
■来島宗仁 > 「んー―」
まるで誓いのキスのようなそれを交わしながら。
そっと離れ、さいこの表情を見て安心する。
――こうやって笑えるなら、もう大丈夫だろう。
「あぁ、よろしくな、さいこ」
そして、重い身体を引きずるようにして、立ち上がる。
帰らなければ――我が家に。
■井戸木さいこ > 「うふふ、そうだね。
――私も、宗仁が良い。」
……端子を引き抜き、ゆっくり立つ。
全身が痛むけど、それよりも嬉しさが先に立つ。
身体は痛むから重い筈なのに、とても軽い。
「うん――帰ろっか。宗仁。それともあなた が良いかなあ? うふふ……」