2015/08/21 のログ
ご案内:「OkawariFree」にテリメーラさんが現れました。
テリメーラ > 夏の風物詩、入道雲が堂々と鎮座する昼下がりの空の果て。
肉眼で見るには余りにも遠すぎる小さな点の様な何か。
そんな雲にしがみついて、むしゃむしゃと齧る少女の姿だった。

雲を食べて魔力をため込むため、大きな雲の塊があるこの時期に、食べられるだけ食べてしまう。
下界の人間からは、夕立が無くなったやったー!と喜ばれたりするらしいし、いいことずくめなのだ。

テリメーラ > しかし、その体積たるや、アリと象もビックリだ。
手当たり次第に雲を掴んで口に運んでも、無くなるはずもないだろう。

(この間は大分派手にしちゃったから、ココでたくさん食べとかないと…)

そう、そのままでは一生掛かっても食べきれないだろうが、ただ闇雲に食べている訳ではないのだ。
雲を魔力で圧縮して、固めて、口へと運んで、お母さんに言われたようにちゃんとかんで、飲み込む。
その圧縮効率たるや、なかなかのもので、大人になればものの1時間で入道雲を食べつくすとか。
おっとりとした彼女でも、アハ体験と言った具合に肉眼で入道雲の減り具合が確認できるほどのスピードでむしゃむしゃいっているのだ。

テリメーラ > 夏の雲特有な、口の中でぱちぱちと弾ける感覚。
普通の雲は味が全然ない物だから、途中で飽きてしまいそうだけど、コレのお陰で大きな入道雲を食べてて飽きないのだ。
雲よりも、魔力への変換効率が良く、体の中でほんわりした感覚に変わっていく。

放っておけば雷となって地上に降り注ぐのだが、彼女達にとってはスパイス程度の感覚らしい。恐るべし竜の子。

テリメーラ > 綿菓子みたいな雲、とは言え、必要なのはその魔力と、少々の水分であって、一部の水は純度100%の水として、口などから、じょばじょばと排出していたりする。

お天気にもかかわらず突然ふるその局所的な雨は、元居た世界の地上では、「天使の泪」とか言われていたらしいが。
そんなわけで、現在、消化管に溜まった大量の余分な水を「天使の泪」として地上に向けて、口から排出したりしていた。

人間の食事を間近で見るようになった最近では、ちょっと不快になり始めているが、生理現象なので仕方がない。
何とも非効率的な生き物であることには違いないだろう。

テリメーラ > そんな時間ばっかり掛かる非効率な食事をすること早1時間。
海の上に浮かぶ大きな入道雲は、半分ほどが彼女の小さな体の中に納まるか、地上に返って行ってしまった。

そんな頃、食べ疲れと満腹で、不自然にまったいらになった雲の上、ごろごろと転がっていた。
「やっぱり大きすぎたかなぁ・・・」
なんてちょっとした後悔を抱えながら、ポテチ感覚でときどき雲を摘まんではぱくり。

雲を食べるような生き物なんて他に見たことが無い。
そのうえ、どうせこんな高度に来れる生き物なんてそうそういないのだ。
まったりまったり食べて行けばいい。
なんて、ごろりごろり。

テリメーラ > もこもこの雲の上、転がりながら、雲に文字を書いていく。なぞれば白い雲は雨雲に代わり、灰色の文字が浮かび上がっていく。
ちなみにこれは、この間学校で習ったカタカナだ。

ひらがなもカタカナも、200年の独学を経て一応書けるようにはなっているものの、改めて学校で習うと新鮮で嬉しいものだった。

「あいうえお~♪」
なんて口ずさみながら、50音の灰色の文字が並んでいく。

テリメーラ > 書いた文字も200に達する頃、何だか文字はミミズのようにアッチにのびて、こっちに伸びて。
ゴロゴロとしているうちに、だんだんと眠くなってきたらしく、もはや文字として成り立っている者の方が少なくなり始めていた。

まったいらな入道雲の上、大の字でそのままぐーぐーと眠ってしまうのだった。

ご案内:「OkawariFree」からテリメーラさんが去りました。
ご案内:「牢獄」にシインさんが現れました。
シイン > 時刻は夕の刻を過ぎるぐらい。
時計が存在せず、正確な時間を把握することは出来ないが、体内時計というのは便利だ。
それに太陽が既に沈み始めている。壁の上部に取り付けられている柵から差し込む光が殆どと無いのが証明。

今日も夕飯が運ばれてきたが手は付けていない。
食事を必要としない身体は便利だが、それを警備の者に説明しても
"ルールだから"
と飽きずに運んでくる。
それが仕事の一つでもあるから、此方の言葉など聞けないのだろう。

冷えて不味くなるだけの質素な夕飯は放置したままに。
罪人の軍人は今日も牢獄内で動こうともせずに、簡素な椅子に腰を掛けて座っているだけ。

ご案内:「牢獄」に『女看守』さんが現れました。
シイン > ふと、昨日に自分の面会に来てた"アスティア"の事を思い出す。
講義を聞きに訪れると、彼女は言っていた。
あんな面会室の前で、どんな講義をすればいいのやら。
変に頭を捻らせる言葉を告げてくるものだ。

実際講義をするとしたら何が良いのだろう。少し考えてみよう。
折角牢獄という一般人で善良な民には経験できない場所にいるのだから、場所に関しての題材。

即時に頭の却下された。

そんな人の為にもならない、阿呆らしいの一言で片付けられる未来が見える。
物好きであるならば、実際に経験した者から、直接に聞いて知りたがるかもしれないが。
幾ら彼女が物好きな部類であってもそれはない。

普通に学園の講義としてやっていた軍事を教えればいいだろう、と結論付けた。

『女看守』 >  
靴音がする。
段を降りる音。
聞き慣れた音だ。
日に決まって鳴る。
だが今は奇妙だった。
既に夕餉は運ばれた後。
ならば今更面会者もない。

檻の向こうを歩いてきたのは、はたして当然看守だった。
もはや見慣れた看守服に、目深に被った帽子と黒い髪がただでさえ暗い場所で顔を覆っている。
これまでにやってきた看守ではない。

看守は歩いてきた通路の向きのまま、鋼の棒の向こうに顔を向けずに口を開いた。

「――――食事は食べないのかね、“先生”」

その声は、しばらく前に浜辺で海からやってきた声だ。

シイン > 靴が硬い床を叩く音。
階段を一つ一つ、静かに降りる音。
それを鳴らす人物は当然に看守なのだが"まだ早い"
そう、まだ早い。
本来ならまだ暫くと回収までに時間として猶予がある。
巡回でもない。
その時間はとうに過ぎ去っていた。

自分が閉じ込められている牢獄前で口を開いた看守。
その声に驚きを隠せなかった。
何故なら、その声の主に聞き覚えがあるから、入り江で一度だけ聞いたことがある声。

もしかしたら自分の勘違い。そんな可能性も否定はしきれないが。
"先生"という言葉によって無情にも勘違いの線は打ち砕かれるのだ。
呼び方がそっくりそのままに同じなのだから。


閉じていた瞳を開いて、檻の前に居る者に目を向けた。
見た目は看守の服装。あの時の黒衣とは別だ。
看守に変装して来たのか、来たとしたら何故。
様々な考えが巡りに巡るが、まずは一言。

「食べないというより、私には必要としない。
この場所では不必要な行動は控えているのだよ。」

落ち着いた声で質問に答えた。
生徒からの質問に先生が答えるように。

『女看守』 > 相手がかつて会った姿と同じだと認識しているらしいと確認しゆっくり頷いた。

「不必要……それは異能でだろうか。失礼、食事を拒絶しているということでないならばいいのだ」

心配のニュアンスはないようだった。
淡々と相手の状態を咀嚼するように。

「随分と状況が変わったようだ。
 噂ぐらいなら多少は漏れ聞こえている。
 あの時、不安だといっていた理由も多少は」

浜辺で、灯台のように燃えた炎につられて、とりとめなく話した。
お互い何を知っていたわけでもない。
だが今はそれも変わっていて、

「探していた道と言うのは見つかったのかな」

シイン > 「さぁ、異能も関係してそうだが、一番の理由としては私は機械だからな。
それに外されないままに食べるのは、不格好で好かない。」

手元の手錠を揺らして軽い金属音を響かせる。
食べるにしても、コレのせいで食べたくないのだ、と。

「そこそこ大きな事に発展したからな。
それは覚悟していたし、噂だけでは済まないだろう。
出頭して牢獄に入ってることも知られてるはずだ。」

風紀委員の者達が事の終わりを知らせてるはず。
それならば一般生徒にも知られてて可笑しくはない。
実際に昨日訪れた生徒も知ってたのだ。

此方に顔を向けずに、いや、どこを向いてるかも今は分からないが。
薄く見える"顔"の方へと向きつつも、言葉は続き。

「道か、私の道は幻影だった。
探してたのは過去から遮断された道。今と未来には繋がらない道だよ。
それでは見付かるわけもない。
だから私は、一からまた道を探すことにしたよ。
探してた道とは別に、また別の道を。」

『女看守』 > 「機械…………」

知らなかったから、言葉尻が薄れていった。
驚きはそれほど強いわけではない。
マレビトは文字通りの人だけではないし、いきものだけでもない。
かつて己が同志とした東郷月新という男のそばに似たようなものがいた。
今はそれは、この件を処理したのと同じ風紀委員会に所属していたはずだが。

「まぁ、そういうことになる。
 とはいえ何もかも詳らかにされているわけではないが。一種の不祥事でもあるから。
 それでも、公にされたものだけが流れる噂でもない」

新しく探す、そういう言葉に反応するようにやや顔を傾ける。

「では機械であった竜よ、聞こう。
 過去に歩んだ道は捨て、貴方は今大人しく罪に服しているらしい。
 確か貴方は嘱託教員だったな……送還されて懲戒を受けるか、ここで刑を受けるかが主に考えられる行く先だろう。
 その中で、どのような道を探しているのだ?
 火は未だ消えていないようだが」

シイン > 「…機械が珍しいか?」

この島であれば人を模倣した機械など、探せば幾らでも出て来る。
人に擬態してるので、問わなければ分からないことも多いが。
数は多い方だろう。

「完全には全てが公にされてはないか。
それでも名は間違いなく広まった。表に出て満足して生きられはしないだろう。」

生きるという言葉が合うかどうかも分からない。
命を保有してると、素直に頷くことも出来ない。
ただ今は、そのように言葉を使うだけ。

そして、二度目の問い。
問に対しての答えは既に決まっていた、迷いは一欠片としてない。

「私はな、言われたのだよ。
罪を償って欲しい、と。私の信頼すべき者に。
言われずとも罪を償うのは当然だ、それだけはどんなろうと変わらない。
やるべきことも、まだ成し遂げてない。
その為には、まずは罪を償う。
第一はそれだ、そして。」

彼は言葉を紡ぐのを止めた。

刹那、唐突に彼の手首、足首から先は白い火の粉となって消え去る。
当然そうすれば、手錠に足枷と動きを封じてた拘束具は解かれて、冷たい床に堕ちた。

その手錠に足枷は力に異能と"ある程度"は抑える効果を持っていた。
完全ではない故に、異能が発動できた。
それも一瞬だが、それだけで十分すぎた。

彼は拘束具が外れて次の瞬間には全身に火を纏う。
白い炎だ。人の形を成している白炎。
二本の角を、背に一対の羽を、尾てい骨からは白い尾を。
龍を彷彿とさせた姿へと変貌して。
消えた手と足は何事もない様子で再生されて形を作っていた。
彼は止めてた言葉を紡ぎ直した。

「私は、龍の呪いを解く道を探す。
私の白い炎はいずれ滅びを招くそうだからな。
それは私だけではない、周囲を滅ぼそうとするだろう。
ならば、私は呪いに抗い、愛する者に傷を残さずに、滅ぼそうともせずに。
呪いを解く道を探す。」

牢獄内に収まる小さき龍人は、白き炎を揺々と揺らして。
己の道を告げた。

灯り代わりともなっているその炎。
眼の前の彼か、彼女かを映し出すには十分な灯りだろう。

『女看守』 > 「多少は。親しい相手にはいなかったもので」

聞かれ、あっさりと答えた。
世界はあまりにも、なんでもありで、混沌としていて、だから驚異と脅威に満ちている。
かつて教師だった機械が未知に不安を持ったように。

だが機械に、竜に、今その不安は見えない。
だから頷いた。

「貴方は道を探すことにしたと言った。だが先の景色が見えていなくとも、貴方は向かう道そのものはもう分かっているようだ。
 貴方が何故こうなったのか、諸々の余計な噂で判断する気はないが、聞く必要もないだろう。
 少なくとも原因となった貴方の過去の道は、過ちとして向きを変えることになったわけだ。
 理に従い、罪を償う。
 機械であり、軍人であれば、らしいというべきなのかな」

そして炎が輝いた。
影になっていた顔に光が指して、黒い瞳が照らされる。
身につけたものと同じ、昏い色の女だった。白光を受けてなお薄暗い。

「滅びに至る竜の呪いか。随分とまた装いを変えたようだが、それには私も興味があった。
 呪いを受けたと、滅びを招くそうだと、貴方は言ったが、それは?」

考えこむように顎に指をあてる仕草をとった。

シイン > 「なるほど、納得した。」

短い返答を伝えた。
特にそこからは続けずに、頷き肯定して。

「らしいと言えば、確かにらしいのかもしれない。
過去は変えられず、自分の行いに嘘や偽りで塗りたくるつもりはない。
罪には罰を。だから私は罰を受ける。当然だな。」

頷きを見せながら考えを述べて、告げて。

すっと椅子から立ち上がり、長い尾を束ねて。
真紅の瞳は真剣な瞳のままに。
揺れる炎の煌きで照らしても、眼の前の者の顔の全貌は見えない。
それに何故か薄暗いままだ。

姿からすれば女にしか見えないが、果たしてこの者は本当に女性なのかと疑問が残ってしまう。
姿形を偽ることなど、今の世の中で簡単なのだから。

「――とある龍が、私が龍となってしまった原因の龍が私に教えてくれたのだ。
龍は呪い。力を得る代わりに、最後の結末として滅びることになる。
この呪いは、私の中に元々として存在してた呪いが引き寄せたのだと。
なるべくして龍になり、なるべくして滅びる。」

龍とは、呪いとは、淡々と説明をするだろう。

『女看守』 > 「人だろうと機械だろうと、過つことはあったとして
 それを認めて越えていくことは、教師であったにふさわしい姿かもしれないな、“先生”」

かつて行く道を探していると言った。
眼前の相手はまさしく道を探したものだ。
一度は過ち、その上で見つけ直したもの。

己とは違い既に迷いなきものを見ながら話に耳を傾ける。
ドラゴン。

「解く道を探すということは、聞いた相手にも解決はできないということのようだ。
 しかしどうするつもりなのだ貴方は。
 貴方が言った通り、バロム・ベルフォーゼ・シインは以前のように学園で生きることはできない。
 貴方が当然としてとるべき理に従うなら、しばらくの間貴方に呪いの解決を探す道を進むことは難しいのではないかな。
 周囲を含めて滅びの因果に巻き込む呪い。
 猶予のある呪いなのかね」

疑問を重ねた。
それは年経た蛇(レッドドラゴン)の、誘うような言葉ではない。
絡み合う道をどう歩むのかという、強い興味と疑問だ。
知りたがっている。混沌とした世界で他人がそれをどうするのかを。

シイン > 「ふっ、私に先生という呼称は合わない。
それに既に先生ではないからな、だが、ふさわしい姿。
うむ。そうだな。」

そうかもしれない。頷いて、肯定する。

「呪いを解く。確かにそれは難しい。
貴方の言うとおりだ、名も知らぬ貴方のな。
以前のように自由に行動ができない、それに猶予が多少はあるが制限時間が付いている。
罪の判決次第では、もしかしたら間に合わないかもしれない可能性を否定出来ない。
龍の呪いのことで罪の軽減など絶対にしないので尚更な。
八方塞がりな現状でも、絶対に見付けてみせよう。」


「――私だけが滅べるようにする為に。」

他者に危害を与えずに、最悪の場合でも自分だけが滅ぼうと決意を見せて。

この牢からは何時でも出れるのだ。
今の時点でも暴れて無理に壁をぶち壊せば、そうしなくても先に見せた火の粉として部分を消す方法を使えば脱出は容易だ。
それでも罪だけは償わなければいけない。

覚悟の瞳。

真っ赤で真紅な瞳は内心を映すかのように真っ直ぐに。

「まぁ、本音を言えば誰も滅びないのが良いのだがな。」

小さく笑みが表情に浮かばれた。

『女看守』 > 無理矢理逃げる事もできる。
だがそれでは解決にはならない。
恐らくふたたび争いが起き、またこうなる……いや、より悪いことになる。
そしてもう一つの目的を果たすこともできない。
眼前の相手はそれを認識して、だから安易な道には行かないという。

「――――なるほどなぁ」

そう、声を吐いた。
その声色は嘘のように明るい。

「かつて私も間違えた道を行ったのだと思います。
 まあ、アンタと違って罪を償っているとかそういうのはねえけどな今は。
 だから、どうしようかと考えていたのだ。
 それに僕は貴方と違ってまだ過去の道が続いているのかどうか迷っているんだよ」

声色と調子が混濁した。
照らされている表情は、無表情ではない。ただ喜怒哀楽や感情のどれでもない表情。
あるいはそれが、迷っている者の表情。

「テメェは既に、己という海原に正邪の棹を刺し、形を決めた。
 それは羨ましいことですし、参考にさせていただきました。
 それで授業料というわけでもないけれども」

自分が相手が犯罪者であるとか犯罪者でないとか、そういう事とは無関係に。ただ縁の会った相手として。

「呪いを遅らせる助力ぐらいならば、できるかもしれない」

歩けぬ相手に杖を差し出すようにそう言った。

「オレ/ワタシに呪いを消し去るような奇跡はもちろん起こせねーし、
 あんたがあんたの罪を償うには、この世界で、この島で形作られている理に従うしかねーだろう。あんたが決めた通りにさ。
 そこに万能の答えはねえ、んだよな?多分」

わずか、口の端を歪める。

「ならあんたと、あんたの周りが不幸でないように、不条理でないように、“手伝う”っていうのは、まぁおかしなことでもねーだろう?
 誰かが道をいくために、お互いできることをさ」

シイン > 眉を顰めた。
それもそうだ。
眼の前の名も知らぬ者。
これを、今のこの状況をなんと例えればいいか。
言葉が思いつかない。

口調・声色・表情。

全てが狂っている。
一つの言葉が区切られることに、口調に声色に表情が移り変わって行く。
壊れた機械であってもこんなおかしな症状は見せない。
もしや、壊れたのか?

その考えは直ぐに否定される。

先程との調子と比べれば明らかに歪だが。
それでも言葉が成立している。

"成立してしまっているのだ"

まこと不可思議で、不思議で、不可解。

惑わされて、自分の調子まで狂うわけに行かない。
冷静に、眉は顰めながらも、彼の言葉に続いて。

「もし、貴方の言葉が本当なら、ありがたく私は手伝う事に協力を要請したい。
それに、貴方は未だ道を迷っていると言った。
ならばだ。私の言葉覚えているだろうか?」

"自らが進む道を示せないものが、貴方の道を示そう"

入り江での別れの時に告げた言葉を再び告げる。

「私は自らが進む道を示さないと言ったが、今…言葉を変えて再び言うとしよう。」

「私の手伝いをしてくれるなら、呪いを遅らせてくれる助力をしてくれるなら」

「これは対価だ。
道に進む為のお互いにできること。
"自らの進む道を示せた者が、貴方の道を示そう"」

『女看守』 > 「ああ、悪い」

とだけ断った。
いくらか動揺されたものの、かといって取り乱す相手ではない。
自分の罪を冷静に受け入れているように、状況を冷静に受け止めている。
だからそれだけにして、軽く頭を下げた。

「ありがとう、先生。
 対価っていうの、慣れてるしな。
 ま、なにせ周囲を巻き込むというならここにも縁があるし。
 視える分では、周囲って何も物理的な周囲ってわけじゃなさそーだしよ」

「で、考え方としてはシンプルだ。その呪い、移動したり変質したりしてるよな。
 だから分割する。
 呪いを三分割して、呪いの完遂速度を1/3にする。
 ただそれだけだ」

言いながら、看守服のネクタイをゆるめた。襟を外したと思うと前のボタンが全て開き、上着が翻る。
シインの眼前の人影が、さきほどまで見えていた顔も含めて、全身を薄暗い色のローブで覆ったものと変わった。
ローブの端から出た両の掌だけを前に晒す。

「根本的な解決には、呪いの元になった龍とやらとも会わなきゃなんねーだろう。
 多分だけど、この世界由来のものじゃないみたいだしな」

シイン > 頭を下げられたが、コレは恐らく狂った言動の件についてだろう。
ソレ以外に考えられないからだ。

「別に構わない。」

どういった理由であのような状態になってしまったのか。
想像すらできないが、野暮に突っ込むのは良くはない。
今の話題から逸れてしまうのは避けねばならない。
それにどうやら安定したようだ、心配の必要など不要だろう。

「…そうだな、周囲を巻き込むとなれば、ここだけで済まない恐れも考えられる。」

「もし、貴方の言う分割とやらができれば、進行速度を遅くする事は可能かもしれないが…。」

不安が一つ、どのようにして分割をするのか。
それだけが不安の種だ。

突然上着のボタンを開き始めて何事かと思えば、ローブを纏い始めた。
どこに収納していたのやらと。心の中で突っ込む。

「解決としては、彼女に会わないと進まないだろう。
その為にもまずは此処から出なければいけない。」

「それと、一つだけ言わせて欲しい。
先生と呼ぶのはやめて貰えないか?どうせなら名前で頼む。
協力者同士だろう?
私の名前はバロム・ベルフォーゼ・シイン。
バロムとでもシインとでも好きに呼んでくれ。」

で、と先に自己紹介をしてから区切り。

「貴方の名前を教えて欲しい。」

ずっと気になってたことを聞くのだ。

『女看守』 > やり方に不安を覚えているようなシインを見て、目深にかぶったフードの下から答える。

「ああ、魔術というか……これも一種の呪いかな。
 三つにっていうのも理由があるんだ。
 一では単独であり、ニでは拮抗しうる。多数である最低の数、三。
 その数によって覆せない決定として呪いをかける。
 そのために必要な術者の『格』は、呪いと一体化しているあんた自身も満たせるから、
 あんたが一つ分で、オレ/ワタシが二つ分を受けもつ。
 だから、今から行う儀式は一緒に唱えてもらう必要があるぜ」

そこまで説明して、シインの最後の断りを聞いた。
そして問いも。

「……わかった。
 バロム・ベルフォーゼ・シイン。
 シイン。
 滅びに至る龍の呪いを受けし者」

頷いた。そこでもう声色が変わっている。
始める。

「その外来せし因果に呪うべき名を冠する!
 その因果を三つに別ける。

      ア ジ ・ ダ ハ ー カ
 故に、“世界三分の一を滅ぼす三頭の龍”」

名をつける行為。名を呼ぶ行為。
それは対象をコントロール下に置くもっとも原始的なやり方。
この世界の数多くの地で行われる呪いの形。
だから、この世界の名を与え、落としこむ。

                   トリプル・バン
「この“グランドマスター”の名によって、“三  重  呪”を開始する」

ご案内:「牢獄」に『グランドマスター』さんが現れました。