2015/09/28 のログ
浅田扁鵲 >  
「さて、このあたりでまとめさせてもらうが。
 『気の思想』や『気』がなにか、と言う話よりは多少分かりやすい理論だと思うが、これも中々重要な考え方だ。
 ここで何より大事なのは『天の陽気』と『地の陰気』、どちらが欠けても『人の気』は産まれないということ。
 この二つが調和して、初めて『人の気』が産まれるわけだ。
 古典では『天の陽気』や『地の陰気』に属するものを具体的に記した物があったはずだが、先ほども言った様にここではあくまで考え方としての説明に留めさせて欲しい。
 この講義はあくまで思想、考え方の講義だから、その域を越えないようにと言われていてな……。
 自力でより詳しく調べたい場合は、参考になりそうな資料を教えるから後で聞きに来てくれ。
 この島なら恐らく、図書館にいくらでもあるだろうからな」

【頬を綻ばせた少女に、楽しそうな女性の様子にほっとしつつ。
 『天地人三才思想』について簡単にまとめ、画像を次へと切り替えた】

「さて、今回は次で最後になるが。
 人と自然、宇宙を一つの統一体だと考え、人体の形や機能も天地自然に対応するものと見る『天人合一』の思想がある。
 これは東洋医学において非常に重要な考え方で、さらに言えば、自然の力を借りる魔術、異能、ほかの能力においても意味のある考え方だ」

【画像には『天人合一思想』と書かれ、また古典の引用だろう文章が表示されていた】

浅田扁鵲 >  
「四季の移り変わりをはじめ、自然界の変化は少なからず人体へ影響を与える。
 季節によって体調が悪くなったり良くなったりと言う体験は、誰でも覚えはあるだろう。
 こういう天地自然と、人体の形と機能が相応していると考えるのが『天人合一思想』だ」

【そう概要を説明すると、引用文をポインターで示した】

「これは自然と人体で相応するものを並べて記した文だ。
 まるごと覚える必要はないが、一先ず目を通してくれ。
 渡した資料には意味の解説も載せているから、それとあわせて聞いてくれると助かる」

【そう前置きして、歌うように読み上げ始めた】

   天に日月あり、人に両目あり
   地に九州あり、人に九竅あり
   天に風雨あり、人に喜怒あり
   天に雷電あり、人に音声あり
   天に四時あり、人に四肢あり
   天に五音あり、人に五臓あり
   天に六律あり、人に六腑あり

【一つ一つ読み上げて、小さく一息つくと教室を眺めてから解説を続ける】

「これは人体が自然と相応し、自然と同じく、統一体をなしていることを述べている。
 統一体、というのは人体をパーツごと、部位ごとに見るのではなく、その全てが影響しあった『人体』という統一されたモノだとして見る見方だ。
 先ほどの『三才思想』でも説明したが、自然はその全てが循環し、それぞれが影響しあい調和している。
 それと同じように人体もまた、それぞれの部位、臓器が影響しあって人間という生命をなしている、というわけだ。
 この際、通常の自然を(大宇宙)、人体を(小宇宙)と表現したりもするな」

【そこで一旦区切ると、これまで通り教室内の様子を伺う。
 質問が出る様子が見られなければ、またまとめへと移るだろう】

クローデット > (人と自然、宇宙、全て1つの統一体、ですか…)

西洋魔術の考え方からも、近代科学の考え方からも外れたそれ。
何かを考えるように、すっと目を細める。

…が、それは少しの間だった。
通常の自然を「大宇宙」、人体を「小宇宙」と考える「捉え方」の説明に、真剣に耳を傾ける。

光ヶ丘睦美 > (図書館、はちょっと……)
先程も使った通り、睦美の異能は学習においてもそこそこ役に立つ。
自分で成果をまとめる時間を削ってでも講義を多く詰め込む方の睦美としては、
読書は実はあまり相性がよろしくないのだ。

と、講義に再び意識を戻せば、次のスライドが表示されていた。

相似には力が宿るという考え方の大本にあたるのかな、と思いながら。
『富士信仰→地元の山を富士山に見立てた』
思い出した言葉を、あとで調べてみようと思いながらノートに書き込んでおく。

「これって、人を治すことが天を治すことに繋がる、という言い方のような…?
でも逆に人を治すには天下が定まる必要がある、って感じの…?」
先のやつは耳にしたことがあるけれど、後のはそんな遠回りな話があったかな、と。

むむむ、とちょっと唸った。後で質問にした方がいいかな、と講堂の時計を見れば考えるだろう。

浅田扁鵲 >  
「……君は本当に凄いな。
 確かにこの理論で行けば、そういう考え方に繋がるだろう。
 けれどこれは、直接繋がるわけじゃない。
 人を治す、つまり人を健康にすることによって、過剰な消費を行わなくなるだろう?
 そうすることで人が必要以上の自然を消費しなくなる。
 反対に、過ごしやすい環境が整ってさえ入れば、人は健康を害すことが少なくなる。
 最初に言ったとおりこれは東洋医学の考え方だ。
 これまでの天地自然の仕組みと言うよりは、少々スケールダウンした人体の話なんだ」

【最初に言うべきだったな、と反省しつつ。
 黒髪の少女の呟きに反応しながらもまとめに入る】

光ヶ丘睦美 > 「ふぇっ、あ、はいっ、ありがとうございます!」
なんとなく呟いたことに答えてもらい、
褒められた事もあって、ノートから顔を上げる時にちょっと大きな声が出た。
「やっぱりどうしても体の話に、頭が引っ張られちゃって……
もっと大きな話、なんですよね」

恥ずかしい声を上げたことも含めて、反省しつつ。
教えてもらったことを、今度は図に起こさずにそのまま書き込んでいく。

浅田扁鵲 >  
「さて、この理論自体は意味としては理解しやすいと思う。
 大事なのは【自然と同様、人体も統一体である】と言うこと。
 そして【人体もまた自然の一環】であり、【自然と人体は相応しあい、影響しあう統一体】である、と言うことだ。
 自然が人体に影響するように、人体もまた、自然に影響するということだな」

【そこまで説明すると、一拍置いて】

「さあここからが重要になるんだが。
 この【自然と人体は相応し合う】これを突き詰めていくと、【自然(大宇宙)で起こり得る現象は、人体(小宇宙)でも起こり得る】という解釈をすることが出来る。
 少々こじつけに感じるかもしれないが、かつては異能や魔術による超自然的な現象を、『気の思想』と合わせこういった理論で説明していたと考えられている。
 もちろん大小という関係上、その規模や影響も小さくなるわけだが、現実に異能や魔術といった形で人体においても超自然的な現象を起こすことが出来ているだろう。
 今の時代でもこの『天人合一』の考え方は重要だ。
 異能や魔術を扱うものは、自分の体や、異能や魔術を個別に捉えるのでなく、それを含めて統一された人体なのだと知っていなくてはいけない。
 これを軽視してしまえば、調和を崩し思わぬ障害、被害を受ける事もありえるからだ。
 この『天人合一思想』は『陰陽論』『五行論』と共に、異能魔術を扱うものなら覚えておいて損はない。
 意識したことがなければ、自分自身をこう言った観点から見てみるのも良いかもしれないな」

【そうして『天人合一思想』を締めくくると】

「さて、ここまででなにか質問はあるだろうか。
 今日の講義で気になる事があれば、今のうちに確認してくれ」

【教室を眺めながら、そう訊ねた】

クローデット > クローデットにとっての魔術とは、「世界の捉え方」を用い、世界を上書きする「技術」だ。
それを人の身が可能とするからには、当然人体と自然ー世界は連なるものではある。
そして、扱うことに多大な危険を伴う「禁術」を、「調和を乱しうるほどに強力なもの」と解釈すれば、この枠組みで説明も可能だろう。

………それでも。
クローデットには、認めることの出来ない…認めることの許されない、一線があった。
もっとも、それをこの場で表に出すほど、クローデットは愚かではないが。

とりあえず、クローデットには今回の授業で深く掘り下げるべき内容はこれ以上はない。
陰陽のより深い解釈は次の講義に期待出来るし。

というわけで、一通りノートを取った後は、シャープペンシルを下ろし、平静な視線で教壇の講師を見つめているだろう。

相楽 満 > (異能も含めて全部俺、な)

胸の中で呟く。
この異能に命を支えられてきた身として、それは盲点だった。
これが無ければ車いす生活、これがなければとっくに時間切れ。
そうではない。
異能があってあの日まで生きられたこと、それら全てが自分なのだ、と。

なんとなく納得した。
うむ、と一つ頷き、ペンを置く。

光ヶ丘睦美 > 魔術も、異能も、しいて言うなら現状の生き方さえも、
睦美にとっては母から教わった"気"という得体のしれないものを中心にしているわけで。

その捉え方は、最初は自分のうちにあるもので、
次に他人の体の中にあるもので、
つい最近まではなんとなく人と人の間にも溢れてるのかな、というくらいの認識だった。

だから、少女が無意識に人体の中の気にこだわり続けている理由としては、
肉体という確信を持たずに、気という総体でしか捉えていない曖昧な自分自身は、
天地との相応なんて考えでは、ひょっとすると、そのうち融け合っていなくなってしまいそうで。
怖いな、という気持ちは、ノートには書けずに。
そろそろ終わりかな、と出しっぱなしの色鉛筆をペンケースに仕舞いこんだ。

浅田扁鵲 >  
【治療者として、まだ数年ではあるが人の表情や顔色を見続けてきたのもあり。
 講義中、銀髪の女性が表情を変えた瞬間があったのを見逃しては居なかった。
 とはいえ、こちらもやはりそれをどうと言う人間ではない。
 質問の様子がないのを確認すれば、口を開いた】

「……ないみたいだな。
 後々疑問や質問が出てきた場合は、直接聞きに来るか、渡した資料の最後、あとは掲示に質問用のメールアドレスを記載したからそこからメールを送ってくれ。
 後は講義に収まらない個人的な相談や問答も、可能な限り応えさせてもらう。
 そっちは私の本業だからな。言い忘れていたが、治療師として学生の相談を受ける仕事も頼まれているんだ。
 健康相談、悩み相談。デートのお誘いも大歓迎だから、気軽に連絡してくれよ」

【冗談を交えながら、後の質問方法を提示する。
 冗談のつもりではあったが、本音が混じっていたのはお約束】

「さて色々な考え方の話をしたが、これはあくまで東洋の大陸における、一つの考え方でしかない。
 今日の講義を聞いた君達には、それぞれの世界観がちゃんとあるだろう。
 この講義はその世界観を否定するものではもちろんない。
 だが、人の数だけ様々な世界観、考え方が存在する。
 この講義はそれを知ることで、自身の世界観を広げるためのものだ。
 今後も『陰陽説』『五行説』と解説していくが、どの講義も自分を深める、世界観を広げるために最大限利用してもらえたら幸いだ。
 では、このあたりで第一回『東洋思想概論』の講義は終わりとしようと思う。
 次回は『陰陽思想』について講義する。
 今回の内容を踏まえて行うから、講義前には軽く復習しておいてくれ」

【そう最後の口上を述べると、一つ頭を下げて講義を締めくくった。
 それからあまった資料を回収、後片付けを始めた】

相楽 満 > 満足げに頷き、席を立つ。
かばんに教材を詰め込み、ファイルに資料を綴じて。
ありがとうございました、と頭を下げて教室を出て行った。

ご案内:「教室棟/特別講義会場」から相楽 満さんが去りました。
クローデット > 表情を見られたか、視線が一瞬合った気がした。
…だが、それだけで何かを疑われることはないだろう。もしその場合でも、嘘にならない程度の適当な言い訳を用意するくらいは容易い。
クローデットは、あまり深く考えないことにした。
…一応、講義の復習で分からなかった時のために、資料の最後の連絡先には目を通しておく。
ちなみに、「デートのお誘い」というワードを聞いた際には、品位を落とさない程度に鼻で笑った。

講義が終わると、講義資料とノート、筆記用具をバッグにしまって。
講師に軽く会釈をし、教室を後にした。

ご案内:「教室棟/特別講義会場」からクローデットさんが去りました。
光ヶ丘睦美 > ペンケースを仕舞って、
レジュメをクリアファイルに入れて、
クリアファイルとノートを括ってまとめると、
リュックに入れて、背中にしょって。
イスを引くと立ち上がった。

前側の通路から教室を出ることにすれば、先生の近くを通りかかる。
「あの、もし良かったらなんですけどっ。
治療師としてのお仕事のことも詳しく聞きたいなー、って思います。
これからまだ講義があるので、今からは無理なんですけど……」
「デートの相談も含めて、今度メールしますねっ」
ウィンクした少女をポニーテールが遅れて追いかけて、教室から去っていった。

ご案内:「教室棟/特別講義会場」から光ヶ丘睦美さんが去りました。
浅田扁鵲 >  
「はい、お疲れさま」

【少年を見送り、銀髪の女性……冗談に失笑で返された悲しみを堪えつつ、会釈を返して見送れば。
 一人になったと思ってがっくり肩を落とし――ああいや、まだあの少女が居た】

「ああ、いつでも連絡してくれて構わないよ。
 とはいえ、どれくらい希望に添えるかは分からないけどね。
 ……お疲れ様」

【ウィンクして去っていく少女を見送れば。
 そういえば家の『トカゲ』にもあんな頃があったなと思い。
 危うくときめきかけたのを忘れるように頬を叩き、後片付けをして教室を出て行った】

ご案内:「教室棟/特別講義会場」から浅田扁鵲さんが去りました。