2015/06/11 のログ
ご案内:「◆特殊Free(違法描写注意)2」から川添 孝一さんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(違法描写注意)2」から秋尾 鬨堂さんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)2」に久喜棗さんが現れました。
久喜棗 > 草木も眠る丑三つアワー
人気の少ない路地裏、そこにそびえる廃ビルと見紛うばかりの建物の二階には、今夜も明かりが灯っていた
通常の入り口は閉まっており非常階段でのみ進入可能なそこには、黒服のいかつい顔をした角刈りのヤクザ風の男が門番をしている

久喜棗 > 「イラッシャイマセー!お客サン、合言葉をお願いしやっす。マウンテン」

ドスの利いた声でヤクザ風の男は非常階段を登ってきた客へ問答する

「リバー」

見事答えを言い当てた客は奥へと通される
室内には正方形のテーブルがいくつも置かれており
男たちはタバコを吹かせながら、テーブルの上に置かれた小さいが厚みのあるタイル上の何かと睨めっこしている

久喜棗 > 入ってきた客に店員が揉み手をしながら対応する

「イラッシャイマセー、お客サン。すぐに入れる席ありますが、いかがしましょうか」

「うむ、入れるならどこでも良い。入れとくれ」

その時であった

「ザッケンナコラー!」

ヤクザ特有のスラングが店内にこだまし、騒然となる

久喜棗 > その方向を見ると一人のヤクザ風の男が対面の男の腕を掴み睨みつけている
見れば男の手には牌が二枚握られていた、あれはイカサマの一つ、ギリ(握りこみ)だ!

「ザッケンジャネーゾコラー!ッテンダコラー!」

「ヒィッ、スミマセン!とんだデキゴコロで!」

サマ師は掴まれてない腕で自分の顔を多い震えながら謝罪する
しかしヤクザ風の男は激高し、鉄拳をサマ師へと叩きつけた

「スッゾコラー!」

「グワーッ!!」

サマ師は壁へと叩きつけられるがヤクザ風の男の怒りは収まらない、無慈悲なヤクザキックがサマ師を襲う

久喜棗 > 「テメッコラー!ドクサレッガー!!」

「アバーッ!アババーッ!!」

哀れ!サマ師は腹部を蹴り上げられ大量の吐瀉物を口から吐き出すが誰も助けるどころか止める者すら居ない
それはそうだ、このようなテッカバでイカサマがバレたものは殺されても仕方ないのだ
サマ師の意識が完全に途絶えたことを確認したヤクザは身ぐるみを剥いでダストシューターへとサマ師を投げ込む
残酷だがこれがサマ師の末路なのだ
サマ師の処理が終わると一時はザワツイていた店内も落ち着きを取り戻し各々の勝負に戻る
こんな事はここではチャメシ・インシデントなのだ

久喜棗 > 先ほど入室した客は一部始終を見終わるとわざわざヤクザ風の男のもとへと近づく

「空いておるか?」

「アァン?」

ヤクザが二度見する
たしかに今サマ師が処理されたことで席は開いていた、それは問題ではない、問題はその客の容姿であった
まるで子供のようにしか見えないその容姿はこの場にはあまりにも不釣り合いなものだった

久喜棗 > 「ナンダァ?ガキが何でこんなトコにいるんだ?」

「失礼な口を利くな、最近のヤクザは目上への口の聞き方を知らんのか」

「ンダッコラー!?ッテンノカコラー!!」

ヤクザの怒りもなんのその、客…いや、少女は席へと着く

「そうじゃな、ならばお前とお主でビンタ10万というのはどうじゃ?」※ビンタとは他者の順位に関わらず参加したものの内トップに敗者が指定された額を支払う形式のギャンブルである

「チッ、身ぐるみ剥がれてからナキいれても知らねーぞコラ
 上等だ、受けて立ってやるよ!」

久喜棗 > ヤクザは言いながら卓の上の牌を中央の穴へと落とす
外装こそボロいがこの店のオートマージャンシステムは最新式だ
内部において人の手が介入する余地は一切ない、実際安全だ
ヤクザがスイッチを押し、中央のカプセル内部でダイスが踊る
ダイスの値でオヤが決まるとオートマージャンシステムの中で洗牌された牌が下から迫り上がってきた
ヤクザが理牌し終わると口端を曲がらせた、どうやらこのヤクザはポーカーフェイスというものができないらしい

オヤのヤクザが初手で中張牌をバチリと卓上へと叩きつける、テンパイが近いのだろう
少女はそれに動じることなく不要牌を切っていく

久喜棗 > そして5巡目、ヤクザが野太い声でリーチを宣言しリーチ棒を場に置く

「ヘッヘッヘ、テメーの泣き顔を見るのが楽しみだぜ」

ヤクザが下品な笑い顔を向けたその時、少女が口を開いた

「ツモ」

「ナニィィイイッ!?」

少女が手を開く、綺麗なメンタンピンだ。毟り取るようにヤクザが置いたリーチ棒を奪い去っていく

久喜棗 > 「チィッ、マグレだ!こんなことそうそう続くと思うなよ!」

ヤクザは舌打ちし牌を穴へと落としていく、オヤが移り少女の上家になる。しかしそれもまた5巡目で

「ツモ」

「グワァアアアアア!」

少女が手を開く、またもや面前でのタンピンだ

「まだだ、まだあと6局もある。このままじゃ済まさねえぞ」※常世島においては半荘勝負がメジャーである

ヤクザは歯ぎしりし次の手を開く、しかしそれもまた三巡後

「ツモ」

少女が声を上げた、前の二局よりも更に早い上がりである

久喜棗 > 「ザッ、ザッケンジャネーゾコラ!!
 インチキだ!
 イカサマだ!」

「儂がサマを使っておる?
 その証拠は何処じゃ?
 証拠がなければサマと言うことはできぬぐらいお主も知っておろう
 お主もヤクザならば自分で自分の格を落とすような発言は慎むことじゃな」

「グッ!ググーッ!」

ヤクザは悔しさで歯ぎしりした

久喜棗 > そして今度こそ目の前の少女のサマを見逃さまいと血眼で睨みつける
瞬間、何かが赤く光った気がした。だがそれはとても人間に視認できるような速度ではなかった
風も起こさぬ超静音の左手芸によるスゴイスリカエ、それが少女のサマということだけがかろうじて理解できた

「ザッケンナコラー!?
 サマ、使ってんじゃねーか!
 俺は見たんだ!
 テメーの左手が牌をすり替えるところをよ!!」

見えていない、だがインネンをつける

「あぁ、見たからどうしたというのじゃ
 お主の証言にどれだけの価値がある
 儂を捕まえたければ現場を抑えんかい」

久喜棗 > 「アァアアア、ダッコロスゾコラー!!」

ヤクザはとうとう抑えが効かなくなり卓に拳を叩きつけ立ち上がる

「シネッコラー!!」

ヤクザの豪腕が空を切る、実際このヤクザは通信カラテ十段であり界隈キッテの武闘派だ
この正拳突きで何人ものヤクザを葬り倒してきたのだ
しかし、そのカラテも通じるのは人間相手だけだった
被せるように放たれた少女の高速左ストレートが先にヤクザのアゴへと突き刺さる

「グワーッ!!」

倒れこむヤクザにトドメとばかりにケリを入れる

「グワワーッ!!」

久喜棗 > 完全に失神したヤクザの財布を抜き取ると先ほどのサマ師が放り込まれたダストシュートへとヤクザも放り捨てられた
少女はそれを懐に仕舞いこむと店員にチップを渡し、店を出る
少女は夜の路地裏に溶けこむように姿を消していった
そんな少女の一連のバトルを見たギャラリーは畏怖を込めて牌鬼と呼んだ
しかし行く先々で揉め事を起こす彼女が一帯を出禁になるまでに時間はかからなかったともいう

ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)2」から久喜棗さんが去りました。
ご案内:「女子寮・深夜の大浴場」に雪城 氷架さんが現れました。
雪城 氷架 > 「よし、貸し切りだ」

いつも通り皆が入る時間とズラして入ってくる氷架
この広い浴場を独り占めできるのは実に心地よいことである

ご案内:「女子寮・深夜の大浴場」に雪城 括流さんが現れました。
雪城 氷架 > どうしても他人の視線が気になる氷架としては、誰もいない時間に入浴するのがベストだ
お風呂に入ってすっきりすればすぐ眠りにもつける
髪を乾かす時間は異能の力を使って水の分子を分解してしまえば一瞬だ!

「~♪」

ふんふんと鼻歌を歌いつつ上機嫌に洗い場へ

雪城 括流 > 脱衣所のほうで、影が動いている。
いつもの蛇姿ではない、人化した姿の括流だ。
さっさと言ってしまった氷架に少々あきれつつ、服を脱ごうとブレザーに手をかける。

「…ひょーかー。人はいそう?」
蛇姿になったほうが楽かな。どうしようかなと思いながら声をかけた。

雪城 氷架 > 「この時間は誰もいないってー連日証明済み!」
少しだけ声を張り上げて脱衣所に聞こえるように話す

雪城 氷架 > 雪城氷架はお風呂が大好きである
基礎体温が高いのでシャワーは少し温度低めが好み
湯船のお湯は熱いくらいが好きだ

ふんふん鼻歌混じりに髪を洗う
はた、と鏡の中自分を目が合う

と同時に見慣れた自分のボディスペックも目に入る
……今朝会った菖蒲はスゴかったな、などと思いだす
あれで同い年とか世の中一体どうなっているのか、不公平だ

雪城 氷架 > 思えば麻美子とか静佳とか、
基本的に仲の良い友達は皆小さい気がする

そんな豆鉄砲で遊んでるような中に突然グレネードを持ったヤツが現れたような感覚である

「………」

髪を洗う手が停止してじっと見てしまうのも仕方がない

雪城 括流 > ブレザーを綺麗に畳み、薄いシャツのボタンを一つづつ外していく。
不器用なわけでもないが、普段しない動きなので手指の器用さにどうしても変な感覚になってしまう。

括流がシャツをはだけると、ノーカップブラが盛り上がる胸を下から支えていた。
上に持ち上げられていたそれが、支えを外されてゆさっと下に揺れる。
スカートから下もさっと脱いでしまうと、白い肌がその場にさらされた。ただ腰の辺り、尾骨の上付近に蛇姿と同じ鱗が並んでいる。

「…ねえ、じゃあたまには背中ながしてあげようか?」
脱衣所と洗い場を隔てる扉をがらがら…と開きながら、そう声をかけた。

雪城 氷架 > 「ん?別に自分でもでき……」

停止
チッ、此処にもグレネード持ちが……しかもM79レベルかよ

「るけど、まぁたまにはいいか」

目をそらす
あんなもの直視していたら自我が崩壊する

雪城 括流 > 「…見慣れてるはずだよね。なんだか荒んでない?」

胸をタオルで押さえつけながら、苦笑しつつ氷架の近くに椅子を持ってくる。
隠しつつ軽く潰して見せることで、ちょっとした気遣いを見せながら。

男性相手には逆効果かもしれないが。

雪城 氷架 > 「今日会った同学年のヤツがククルにも負けないようなスタイルだった
 世の中不公平だよなほんと」

荒んではいないつもりだったけどそう見えたのかなと、理由を素直に話す
まったく不公平である

雪城 括流 > 氷架の後ろに座るとその綺麗な肌を見つめながら、ボディソープの容器を持ち上げた。

「常世学園だしね。普通の人間ばかりじゃないんだよ。
私以上もいるかもしれないよ。」
これで納得するだろうか、とりあえず言い訳のような。

タオルを太腿の間にかけ、ボディソープのポンプをぐっと押す。
無事使えるかもしれないし、ちょっと固くてうっかり氷架の背中にかかってしまうかもしれない。

雪城 氷架 > 洗いやすいように髪をさらって前にもってくる
髪も白いが肌も白い
部分的に赤みを帯びているのは基礎体温の高さ故か

「ククル以上は一人見たな、寮で。
 何年生かは知らないけど……」

ぺちゃ、と背中に冷たいボディソープがかかって ひやっ とか変な声が出ちゃうハプニング

雪城 括流 > 「あ、ごめん。」
謝りながら、氷架に付いた液体をそっとタオルでぬぐおうとする。
追加でもう一回ポンプからボディソープを補充して、泡立て…
ふわふわとした泡がカプチーノのクリームのように

「人間だって、外国籍もいるからね。
あんまりこう他者の特徴をうらやんだり、気にしてはいけないよ。」
澄ました顔で作業を進めながら。

雪城 氷架 > 「それはわかるけどさーーー」
細い脚を投げ出してうだる
わかるけど
理解はできるけど納得はできないみたいなアレだった

「済ました顔して…ククルはおっぱい大っきいからそんなに余裕のある発言が出るんだ、きっとそうだ」
背中を洗ってもらっていても表情は鏡で確認できる
むすっと頬を膨らませたり、なんだか普段よりも子供っぽい仕草をするのは家族同然の相手だからか

雪城 括流 > ふわっとした泡で優しく氷架の背中を洗っていこうとする。
擦らないようにしながら痒くなりそうなところだけ、少しタオルを当てて。
それほどくすぐったさはないかもしれない。

「…もちろん、大きいからね。でもひょーかより年齢もはるかに大きいよ?
悔しかったら、同じ年になってからうらやむことだね。」
ちょっと楽しげな声音で、家族のやり取りを楽しむ。
鏡に見えるその表情は目を閉じて微笑んでいた。

雪城 氷架 > きめ細かい泡でふんわり洗ってもらう感覚がとても心地よい
はふぅ、と満足気な吐息が漏れたりして

「同じ年って…そんな長く生きられないっての」

肩をすくめて、
微笑む括流の顔を見て、まぁいいかと思うのであった

雪城 括流 > デリケートな…くすぐったい部分にはそれほど触れないようにしながら
上から下にホイップが覆うようにその背筋を包んでいく。
自らの重さに耐えかねたソープの泡が椅子の狭間を埋め、その下へとゆっくりを滑り落ちていった。

「これ以上は説教臭くなりそうかな…。
ん、洗いおわったから流そうか。前は大丈夫?」
浴槽のお湯を手桶に汲みながら、問いかける。洗っている途中なら困るだろうと。

雪城 氷架 > 「ん、あぁいいよ、さんきゅ」
流してもらっておっけー、と意思を伝えつつ

「さて、それじゃ私もくくるせんせーを洗ってやんないとなー」

雪城 括流 > 「よし。」
返事を聞いて氷架の首筋からかけられるだろうお湯が、白桃の肌を覆う泡の軍勢を洗い流して。
後にはその肌に透明な水滴が伝うだろう。

「じゃあ、お願いしようかな。いつもどおりにね。」
交代しようと椅子を立ち上がる。腰の鱗部分には気をつけて欲しいと注文をつけながら。

雪城 氷架 > 「わかってるよ、なんなら蛇状態で洗ってあげてもいいけど」
泡まみれにしそうだ

立ち上がって位置を交代する
その隙にぱぱっと自身の髪をまとめてしまおう

「そういえばククルって恋人とかできないのか?もったいない気がするぞ」
蛇っぽい特徴はあるものの、スタイルはいいし顔も綺麗だ
男の人なら放っておかないと思うのだが……

そんなことを思いつつ手にボディソープをとって、泡立てていく

雪城 括流 > 「そっちでもいいけどね。」
どちらでも気にはしない、というか人姿で洗ってもらうほうが珍しいだろう。
すっと交代した椅子に座りながら。

「蛇の恋人?うーん…普通の子はちょっとね…。」
返事は超ずれてた。

雪城 氷架 > ふわふわの泡と柔らかな掌で擦りすぎないように洗っていく
……背中越しでもおっぱいが見える、高まるヘイト、見ないようにしよう

「そーじゃないって…いやそっちでもいいけどさ、
 好みのタイプとかいないのか…?」

括流は自分から見て、大人の女性である
此処のところ友人の麻美子から彼氏彼女の話題を振られることも多く、
今までは対して気にしなかった部分が気になるようになってしまった

雪城 括流 > 背後に視線を感じたので、そっと片手で脇から胸を寄せて。
後ろからは見えなくなったが、正面から…
つまり鏡のほうを見てしまえばその谷間が強調されているだろうこれ即ち諸刃の技。

…ということに気づいたのでその上からそっと濡れたタオルを載せる。

「ん…ひょーか、私は案外情が深いんだよ。蛇のように…。
説教ばっかりしてるけど。」
だからどう、とは言わなかったが。

雪城 氷架 > 「? まぁいいか…」
氷架にはよくわからない答えだったようだ。

すっきりと背中を洗い終える
ちゃんと鱗にも気をつけた、完璧

「流すぞー?」
桶にちゃぷんっとお湯を貯めて、結構な勢いでざばーっとぶっかける
このへんは実に性格が出るものである

雪城 括流 > 「ひびゃぁっ」
悲鳴を上げるが、目を瞑ってちょっと楽しそうだ。

人姿はそれほど汚れることはないが、風呂の感覚は気持ちいい。
ちゃんと泡が流れたか、腋の下から側腹部を確認して。

「うん、ありがとう。さっぱりした。」
誰かに洗ってもらうというのはやっぱりいいものだ。

雪城 氷架 > 「どうしたしまして」
くるくると指で桶を弄んで、カコンと元あった場所に戻す

普段ならタオルで前は隠すところだけれど、
括流は家族も同然なのでさしたる羞恥心もない

そのままひたひたと湯船に移動してとっぷりと浸かる

「はぁぁぁ………きもちー…………」
うっとりするくらいに気持ちいい
お風呂大好きを自称するくらいにはお風呂が好きなのだった

雪城 括流 > 「もう、ちゃんと洗った?」

続いて括流も湯船に体を沈めて、暖まる。
気遣いもきちんと、そっと浮きそうな胸元を目立たぬよう手で押さえて沈めながら。

「暖まるよね…。」
こちらは暖まれば何でもいい感じ…。ゆったりとその身を沈めている。

雪城 氷架 > ホントは誰もいないお風呂が一番落ち着くけど、
たまには家族水入らずっていうのもいいよな、なんて思ったりしてチラリと括流に目線を送る

ペットだって立派な家族の一員
ましてや括流は普通のペットなんかじゃない

自分の心配を誰よりもしてくれる身近な姉のような存在だ

蛇だけど

雪城 括流 > 目線を送られたのに気づいて、にっこりと笑う。
割りと長い付き合い、何を考えているのか分かったのかもしれない。

(恋愛か…私にはちょっとね。…ん?)
己のしまわれた牙に指先で触れながら、そんなことを考えて何かに気づく。

「…さっき恋人がとかって話をしたけど、もしかして、ひょーか…?」
ちょっとがくぜんとしたような表情かもしれない。みなもがさざめく。

雪城 氷架 > 「…ん?
 な、なんだよなにもないよ!勘違いするなよ!」

確かに友人の間で色々と話題にされることも多く、
此処最近その手のワードが身近にはあるけど
……なんか慌てて否定してしまったのは逆効果だっただろうか

とりあえず目線はそらしておく、スイー

雪城 括流 > 「…そ、そうなんだ。」
納得はしておく。納得は…信じるけど…。

後でちゃんと調べておかなきゃ、とは思いつつ、しばし茹で上がる寸前までお湯を堪能していたのだった…。

ご案内:「女子寮・深夜の大浴場」から雪城 括流さんが去りました。
雪城 氷架 > まったくいきなりなんだ、へんなやつめ
私のことが心配なのはわかるけどそこまで慌てることだろうか

世間話にちょっとした身内話
そんなことを話しているうちに、仲睦まじいお風呂タイムは過ぎていくのだ

ご案内:「女子寮・深夜の大浴場」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「常世島/地下世界」に三千歳 泪さんが現れました。
三千歳 泪 > ところは、常世島に張り巡らされた高速鉄道網の終端のひとつ。大隧道に穿たれたホームの、そのまた隅の方に置かれた小さな待合室。
時は真夜中をすこし過ぎたころ。お客さんなんてどこにもいない、空っぽの終電が送り出されていく、その間際。
強い照明を浴びて白く浮かんだホームは黒い水面にただよう小船のようで、コンクリートで固められた足場さえ頼りなさげに感じてしまう。
裸のペーパーバックの褐色を帯びた紙葉に白い照明が落ちる。活字をたどって次のページへ。待ち人はいまだきたらず。本のおかげであまり寂しくはないけれど。

「……この無害な記号はかつて鉄製であった! それは逃れられぬ死の矢であり……テルモピュライの太陽を翳らせ…」

ご案内:「常世島/地下世界」に橿原眞人さんが現れました。
橿原眞人 > 常世島の地下領域。地下の世界。島内にある高速鉄道網の果て。
時刻は深夜。人などいようはずもない。そんな地下の世界を彼は下っていく。
約束の日は今日だ。待ち合わせている場所へと急ぐ。もう来てしまっているであろうか。
誰もいないホームの果て、小さな待合室へと彼は入ってきた。
地下の果ての領域を超えて。食屍鬼が出てきそうな穿たれた穴の世界へと。

「いや、すまねえ。こんなところ来たことなくって……な、何してるんだ?」

眞人は頭を掻きながらそこへやって来たのだが、まず目に入ったのはペーパバックを朗読している少女だった。
ぽかんとした様子で眞人はそれを見つめていた。

三千歳 泪 > 顔をあげれば彼がいた。詩集をしまって席を立つ。

「こんばんは、メガネくん。なにって、待ってたのさ! 迷わずに来れた? どこかで干からびてるんじゃないかって、すこし心配してたんだけど」
「じゃあさっそく。ついてきてくれる? こっちこっち! 早く行くよー」

終電が終わって、無人の地下世界。駅員さんの姿もない。ホームの端の鉄柵を乗り越え、真っ暗闇の階段を一段ずつ確かめながら降りていく。
線路に下りて、大隧道の底から見える景色は別の次元に迷いこんでしまったみたい。すこし目線の高さを変えただけなのに、非日常感に鼓動が早まっていく。
一定感覚を置いて取り付けられた明かりと懐中電灯をたよりに進み、整備通路の鉄扉へとたどり着く。
錆の浮いたドアを肩で押し開ければ、悲鳴のような軋みとともにケーブルだらけの細い通路が果てしなく続いている。

「まずは隣の線路まで進むよ。それから…海の下、通っていくから。専用の線路があるんだ」

橿原眞人 > 「いや、そりゃそうなんだが……待たせて悪かった。さすがにこんなところ来たことが無くてさ。そもそも何でこんな場所……ちょっと迷……あっ、ま、待てよ!」

詩集を朗読していたらしい。だがいくら暇だとはいえ朗読するだろうか。
眞人が唖然としている間にも、泪は先に進んでいってしまっていた。眞人はそれを慌てて追いかける。
彼女に続き、眞人はホームの策を乗り越えて暗い階段を下りていく。
線路に降り立つのは奇妙な感覚だ。普段こんな場所に立つことなどないのだから。
彼女に続きつつ、あたりを見回す。地下など来たことがない眞人である。
これが楽しい場所なのだろうかと思いながら、眞人は泪と共に進む。

「……こいつは。こんなものがあったのか。……わかった。あまり一々聞かねえよ。お楽しみってやつだもんな。三千歳も気を付けろよ。」

泪の言葉に頷く。どうやら海のを通された通路らしい。二人はまず隣の線路を目指すこととなった。

三千歳 泪 > いくつもの扉を超えて、いくつもの角を曲がって、いくつものケーブルをまたいで進んでいく。
目当ての路線にたどりつく。ここは貨物列車の専用なのだ。普通の客車は乗り入れないし、レールの幅が違うんだって。
この島の点と点をつなぐ、隠された静脈のひとつ。とある重要施設の地下構造へと続く道をメガネくんと並んで歩く。

「メガネくんはさー、見たことないかな。線路の映画。線路を歩く映画! 男の子が四人出てきてさ」
「四人はいつも仲良しで、ときどき悪いお兄さんたちにいじめられたりもするんだけど、大事な仲間だから絶対に見捨てたりはしないんだ」
「ある日四人は聞きました。この線路のずーっと先で事故があって…ひかれちゃった子がそのままになってるんだって」
「死体はそのままそこにある。見つけよう。見つけないと。見つかるかな。じゃあ見に行こう!って流れになった」

しばらく進んでいくと湿気がたちこめた場所にさしかかる。湿度が高く蒸し蒸しとして、歩く分だけ汗ばんでしまう。
遠くない場所から重く低くうなるような音がする。染みとおってくる海水をくみ上げるためのポンプが動く物音だ。

橿原眞人 > 二人して扉や角、ケーブルなど、暗い通路を進んでいく。
本当に食屍鬼でも出てきそうな気配だなと眞人は思った。そして、ようやく彼女が目指していた線路についたそうだ。
明らかに秘匿された路線であるに違いない。公開されている情報の中に、このようなものはなかった。
この少女は一体何者なんだ、と眞人は疑念を抱く。自分が《銀の鍵》であるということがバレている様子はない。財団からの刺客、でもないはずだ。今のところ、財団にとって自分は大した障害でもないだろう。
脅威になりそうな連中はいくらでもいる。

「……ああ、なんだったかな。旧世紀の映画だろ」
「なんとかキングが原作の……」
「へえ……じゃあ俺たちはその死体、そんな秘密を探しにこの地下まで降りてきてるってわけか?」

二人の声が反響する。次第に何やら湿気が高まってくるように思われた。
「……暑いな、こりゃ。こんなんなら制服なんて着てこなけりゃよかったな。三千歳は涼しそうな格好でいいよな」
そんなことを言いながら進む。声以外にはポンプらしきものが動く音ぐらいだ。

「なあ、これって、異性との会話の練習になると思うか?」
額ににじむ汗をぬぐい、ズレた眼鏡を直しながら言う。

三千歳 泪 > 「そうそれ! 見たことあるんだ? ぐーぜんだねー。死体も一応あるにはあるけど…ちょっと古いのだし?」
「干物みたいになっちゃってるし。見たいならいいよ。全然OK! いこういこう。まかしといて!!」
「暑いなら脱いじゃえば? 脱がないの? ここに置いてっても平気だよ。朝まで誰もこないしさ。帰りに忘れなければ大丈夫」

本当の終点。線路の途切れる場所までたどり着く。真っ暗闇の彼方にはカタコンベみたいな車庫が見える。
その手前、鉄道駅のホームにも似た構造物が非常灯の明かりを浴びて緑色に浮かび上がる。ここはとある離島施設の大深度。
昼間は研究員と助手が行き交う搬入口も今は薄明に包まれていて、みるからに頑丈そうな隔壁が下ろされていた。

「着いたよ! ここがこの島で一番のお化け屋敷。デートといえばお化け屋敷でしょ?」

狂ってしまった世界から集められた、叡智のかけらが眠る場所。失われたはずの遺産がひしめく《驚異の部屋》。
そういう場所であることを示す証なんてどこにもない。全ては秘密のヴェールの向こうに隠されてきたのだ。
コンソールに生徒証をかざし、生体認証のカメラを覗きこむとパネルに私の名前が浮かびあがる。いざゆかん。オープンセサミ!

橿原眞人 > 「……昔にな。あんまり俺も覚えてないな。古い映画だし」
「いや、別に積極的に死体を見たかねえよ! たとえ話だよ!」
「こういう場所に物を残して行くと後々面倒なことになりそうだからな。自分の所属がわかるものは置かねえよ」

普通の学生では中々出てこない発想をしつつ、そう受け答えをする。
そしてどうやら、目的の場所までたどり着いたようだ。
地下の墓所のような光景が広がっていく。どうやら車庫のようだ。
緑色の蛍光に照らされて、何かの構造物が明らかになる。非常に不気味な光景だ。
頑丈な隔壁も降ろされており、どう考えても普通の生徒が来て良い場所ではなさそうであった。

「……この位置、まさか……」

先程、泪は海を渡ると言った。となれば、この常世島で思い当たるのは二つしかない。
この学園の産業と農業を支える島か、あるいはこの学園の主の住む離島か。
そしてそれはおそらく――

「……そりゃまあ、デートと言えばそうかもしれないが。こりゃ随分と……」
「オイオイ、これはさすがにヤバそ……っておい!? 普通に入れるのかよ!! えっ、学生証そんなに普通にかざして、生体認証も……!? お、お前、一体……!」

明らかに危険そうな施設だった。
もしかすると財団が管理する施設かもしれない。迂闊に入るわけには――と思っていた矢先である。

三千歳 泪 > 「お宝はこの先だよ。行くの? 行かないの? 行こうよ。ほらほら!」

地理。鉱山。地史古生物。鉱物。岩石・鉱床。動物。植物。医学。薬学。考古。人類・先史。文化人類。
ボール紙の箱にふられたタグは全部で12種類。それぞれ専用の収蔵庫に運び込まれるのを待っていた。
教えてもらった限りでは、この島ができてからが集められたものが七割くらい。残りはこの島にきた先生たちの仕事道具だ。
ときどき地上の博物館に貸し出されるような品々がひっそりと覚めない夢を見続けている。そういう場所に私は来ていた。

ドラゴンみたいな馬顔の巨大生物の剥製が私たちを出迎えた。神話のベヒモスに翼が生えたらきっとこんな感じかな。
縞瑪瑙のかけらに埋もれたプレートには「シャンタク鳥」と刻まれている。きっとどこかのめずらしい生物なんだ。
この世界から消えた生物たちの剥製が暗闇に浮かんで、気分はジャングルクルーズって感じです。
果物をくみあわせて描かれた奇想の肖像。名前も知らない王様がこちらを見ていて、その微笑みはバナナ風味だ。
得体の知れない皮革で装丁された鍵つきの書物。誰かの腕から切り落とされたばかりにも見える、蒼白く脈打つ手首。
そういうものが無造作に積み上げられている。こんなのを片付けないといけない誰かが気の毒になりそう。

「うん。お得意さんなんだ。で、君は死体が見たいんだっけ。しょうがないなー。来て、ファラオはこっち!!」

何度も来ている場所だから目をつぶっても平気なくらい。大サービスでまわり道してエジプト考古学の区画をめざす。

橿原眞人 > 「あ、ああ、わかったよ、行くよ、待ってくれ!」

泪に言われるままにそこへと入っていく。財団との直接の接触は眞人としては避けたかったのだが、致し方ない。
中に入れば、様々な研究分野のタグの貼られた箱が並んでいた。恐らくは研究材料なのだろう。
そもそもこの様子では彼女は怖がる様子などなさそうである。お化け屋敷に期待されるようなシチュエーションは既に破綻したと言えるだろう。
彼女の後を追いながら、眞人は監視カメラなどの類がないかをよく確認する。
とはいえ、この施設自体に魔術などの仕掛けをされていればどうしようもないのだが。
それでも、眞人は気になるものを眺めて行った。電脳世界では、中々常世財団に近づけない彼らの“氷”は強力だからだ。

「……うおっ!? これは、馬と鳥が合体したみたいな……シャンタク鳥……」

次に入った区画では、奇怪な物が増えて行っていた。
最初に見たシャンタク鳥という名前らしい生物の剥製。その名が刻まれたプレートは縞瑪瑙で覆われていた。
眞人が見たこともないような生物の剥製などが次々と現れる。おぞましいもの、慄然としそうな物が多い。
なるほど、確かにお化け屋敷である。世界の大部分が変容してしまった今の時代においてでも、である。

その次に現れたのは半ば正気を疑いそうなものが増えてきた。
奇怪な絵画、何やら皮で装丁された書物。鍵穴がついている。魔導書かと思い気になったものの、魔の所は先に進んで行ってしまう。
さらに趣味の悪いことに、まだ生きているかと思われるような手首さえあった。
世界の真実の一端。闇の側に属する品々。思わず吐き気を催してしまいそうなものもあったが、一緒に来ている少女はそんな様子はない。眞人は意地でも耐えねばならなかった。
「そうか、《直し屋》だからこんなところまで来れるんだな……いや、だから、ちげーよ! 別に死体がみたいわけじゃねえ! おい、話聞けよ!」

彼女を止めること叶わず、眞人はエジプトのファラオを見せられることになってしまった。
「……ここで、物を直すのか? どう見てもヤバそうなのが多いが……」
「ハハ、とてもデートって感じじゃねえよな……ま、俺も興味がないわけじゃないが……」

三千歳 泪 > 考古学収蔵室のひとつ。明かりを付ければ人がひとり丸ごと収まりそうなサイズの細長いものが安置されている。
戦火に呑まれた遠い国からやってきた、大昔の王さまの棺。こちらの部屋に保管されているのは修復作業が終わった分だ。

「ミイラだよミイラ!! 本物のミイラ! ナントカ=レンカっていう人のお墓とかからきたんだって」
「突然ですがここでクイズです。ファラオはどれでしょう!!」
「……どれだっけかなー。うーん、ほんとにわからないや。中身が入ってたり入ってなかったりでさ。適当に開けてみる?」

考古学の先生に説明を聞いた気がするけれど覚えていない。目玉が飛び出そうな額を貰ったときに全部吹き飛んでしまったのだ。

「もしもーし。入ってますかー?」

こんこん。返事してくれないかな。こんこん。こん。こんこんこん。こんこんこんこん。反応なし。ダメみたい。

「次いこっか。メガネくん、ほかになにか見たいものある?」
「ふっふっふ、顔青いよ。大丈夫? どこかで休憩してもいいけど…」

眞人に問いかける私の背後。古代の棺の中からかすかな唸り声がする。気付かない。聞こえるはずもない。
だから。蓋が豪快に宙を舞い、鬼火のような眼光が怒りに燃えて。
干物のようにパッサパサに乾いた手が私の肩に食い込むまで完全にノーリアクションだった。

「…………―――っっっっ!!!!」

橿原眞人 > 「ここは考古学のエリアか……ほんとに棺ばっかりなんだな。そりゃたしかに死体だが……」
「お前もなんでそんなに興奮してるんだよ! なんか、こう、お化け屋敷っていうんなら反応の仕方あるだろ!」
「ナントカ=レンカねえ……聞いたことないな。ツタンカーメンとかならわかるけどさ。……俺がどれかなんてわかるわけねえだろ!」
「えっ、いや、そんな開けなくてもいいだろ……!」

邪教のファラオ。歴史の闇に消されたファラオのことなど、眞人は知る由もない。
先程のシャンタク鳥にしても、遥か遠き縞瑪瑙の城の彼方から来たものかもしれない。
だが、眞人はそんなことは知らない。泪も知らないようだ。
死者の棺を無遠慮にこんこんと叩いていく泪。
「いや、返事するわけないだろ!」
という眞人の悲鳴のような叫びが響く。

「な、なっ! 顔青くなんてねーよ! 言いがかりだぜ! まるで俺がビビってるみたいじゃねーか!」
「……ああ、そうだな。どうせなら色々見てみたいもんだ。常世島の近くの海底遺跡の遺物とかは……あ?」

突如の事だった。泪の背後から、何かが勢いよく飛んでいった。
それは棺だ。かつての闇の王の墓から持ち出されたもの。
それが唸り声を上げて棺の中から飛び出してきた。目を怒りに輝かせて。
そして、泪の肩を掴んだのだった。

「……ッ! おい、離れろッ!」

とっさに眞人はそう叫んだ。突如動き出した死者の手を掴み、泪から離そうとする。

「オイ、お化け屋敷は客に触れたらいけないんじゃなかったのかよ!」

動転しつつも、何とか眞人は冷静になろうとする。そうだ、自分は破壊神にも出会っているのだ。

三千歳 泪 > 「ひっ…ぁ。ひゃああぁああああああぁあぁぁぁ!!!!」

逃げる。逃げないと。いけないのに。足がすくんで、根が生えてしまったようにその場に釘づけになる。
振り返れば、まともに見てしまった。死んだはずの人間が蘇って、私にものすごく怒ってる。
なぜ。どうして。理由さえわからないまま目の前の現実に押しつぶされそうになる。

まさか。返事を求めたから? そんな呪いみたいなことがあるわけない。
だったら、これは何? 何だろう。何なの。ぐらぐらと視界が揺れて、茫然自失しそうになった。
《驚異の部屋》の彼方から耳障りな羽音がして、見たこともない黒い蟲たちが瘴気を吐く貴人の周囲を旋回する。
触れられた場所がやけどを負ったみたいに痛んだ。

「眞……っ!? さ、触っちゃだめ…逃げないとっ!」

力任せにレンチを振り降ろして死者の腕を打ち払う。大丈夫。脚、動いてくれる。
部屋の出口はひとつだけ。戦えない。逃げないと。彼をここから連れ出さないと。袖をつかんで強く引いた。

橿原眞人 > 「クッ、なんなんだ、こりゃ……! ぐ、くぅっ……!」

泪の肩に触れた死者の手を払いのけようとするも、触れた途端に酷い痛みを感じた。
その痛みに堪えつつなんとかそれを払いのけようとしていると、泪のレンチのフォローが入った。死者の腕は打ち払われていく。

「……どういうことだ。死者が蘇ったのか? だがさっきまでは考えてもただのミイラだったぞ!」

何か魔術的な仕掛けでもあるのか。だがこれは調査対象のはずだ。わざわざサンプルを壊すような真似はするまい。
となれば理由が眞人にはわからない。死者が蘇った。その滅んだ体が直ったかのような、そんな印象を持つのが精いっぱいだ。
《驚異の部屋》の奥から、何やら黒い塊が死者の周りをぐるりぐるりと回り始めた。
眞人が見たこともない虫だ。
そんなものが羽音を響かせてこちらへ向かってきていた。悪夢のような光景だ。

「仕方ねえ、面倒を起こすつもりはなかっ……うおおっ!?」

眞人はタブレットを構える。まさに臨戦態勢だ。といっても相手は未知の存在だ。
どこまで戦えるかわからないが、今は――などと思っていると、泪に強く引かれてしまった。

「くっ……さすがに多勢に無勢か!」

彼女に引かれながら出口を目指すこととなった。電脳世界ならまだしも、ここは現実だ。眞人の電子魔術もまだ完全ではない。ここは確かに逃げるが得策だ。同級生の女子の前で良い所を見せる、などという余裕がある状況ではなかった。

「出口は、どこだっ!?」

三千歳 泪 > 「わからないよ! どうしてこんな…っ!!」

死者の蘇生。おぞましい現実に身体の芯から震えがこみあげて嗚咽をもらしそうになる。
思考は飽和して凍りついたまま。博物館と迷宮のあいだに生まれた子供みたいな地下収蔵室をひたすら逃げ惑う。
そして、《驚異の部屋》は表情を変える。
世界中から集められた奇怪なもの。異質なもの。ねじくれたものが一斉に嘲笑をはじめる。
ここの施設には危機管理のプロトコルが組み込まれているはず。それは万が一の事故に備えて設けられた多重の防護。
私たちの手に負えない事態から助けてくれる安全装置があるはずなのに!
わからない。頭が真っ白になって何も思い出せなくなる。どうしようもなく無力で、役立たずだ。私は。

逃げ込んだ先は、偶然電子錠がかかっていなかった小さな物置にも満たない場所。少し大きいだけのロッカーだったかもしれない。
心臓が破裂しそうなくらい高鳴ったまま、身体じゅうの筋肉が悲鳴をあげて喘いでいる。
息を押し殺して、身を竦ませて。苦しい。死者の手が触れていた場所が燃えるように痛みを増した。

「……ごめん。ごめんね。それと、ありがと。また助けてくれた。君ってばほんとにお人よしなんだ」
「あれは私のせい…なのかな。ばちがあたったんだ。あんなことしたから。怖い。怖いよ。どうして。わからないことがこんなに…怖い、なんて」
「きっと私たちを探してる。逃げられたかどうかもわからない…手。大丈夫? 私の肩も。見てくれないかな」

彼の手のひらに目だった傷はない様にも見える。心理的なものだった可能性はある。
息が詰まりそうなほど狭い空間に閉じ込められて、身動きさえ満足にとれない。あの羽音が聞こえるたびに震えがこみ上げてくる。