2016/09/19 のログ
ご案内:「>落第街、海底地下施設最奥」に”マネキン”さんが現れました。
ご案内:「>落第街、海底地下施設最奥」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「>落第街、海底地下施設最奥」に伊都波 凛霞さんが現れました。
”マネキン” > 【9/14Free4中断からのあらすじ。】

【伊都波 悠薇は”マネキン”の手を取った。
伊都波 凛霞はそんな妹を迎えに来る。辿り着いたのは海底施設最奥、かつて研究がおこなわれていたと思しき場所だった。】

【姉の声は伊都波 悠薇に届かない。
妹の嘆きが伊都波 凛霞を打ち据える。
やがて”マネキン”はそれまで誘っていた言葉通りに、その手に姉までをも絡めとる。】

【何が起こるのかは彼ら自身にしかわからない。
妹は姉を手に入れ、姉は妹を取り戻した。”マネキン”は天秤の両皿をその手にした。
うす暗くあかいモニターの明りの中、室内に満ちる微小な何かが燐光を放つ。】

【異能の混ざり合った室内ではもはや何が現実かはわからない。】

”マネキン” > 【”マネキン”の無機質な瞳にはかつてのこの場所の姿が映っていた。
整然と並べられた机に置かれたパソコン。担当の研究員がそれぞれの椅子に座り、その光景を自身は横から見ている。
現在のように壁面にそれらのパソコンのモニターは張り付いておらず、正面にだけ大型モニターとサブモニターが配置されていて、そこにはモニターされたデータが並んでいた。】

(懐かしい。
私は誰だったか。彼らは誰だったか。
天秤に魂の定量を期待してはいた。戻れるのなら――)

【振り返る。
姉妹がいた。】

これは過去ではない。
では君たちは、何を見ている…?

【()内の声も聞こえてよい。彼は宙に問いかけた。】

伊都波 悠薇 > 対して――妹のものは見えていなかった。
姉は見える、妹は見えない――
マネキンが把握していた天秤。つかさどる天秤――

その大きさが増しているようにも思えた――

「――なにも?」

無機質。感情のない声で

伊都波 凛霞 > 対して──姉のものは鮮明に

妹がこれまで抱えてきたもの
その重さを思い知らされるように、心に刺さる

妹の全ての感情は大好きだった姉の為に
自分もそうだと思っていた
けれどそれは大きく食い違っていて

姉は妹を不憫だと思っていた、それでも頑張る妹を心から応援していた
でもその妹の頑張りは自分のための頑張りとは必ずしも言えなかった

知らず知らずのうちに、頬を涙が伝う
近すぎるとものが見えなくなるように、見ていたつもりでそれは───

「悠薇───」

妹はその異能を心から喜んだのだろう
何せ、無駄に終わったと思われた自らの努力は、全て大好きだった姉の糧となっていたのだから
だから、必要なものは、謝罪でもなく、逃避でもなく……

「……今まで、ありがとう」

感謝だったのだ

”マネキン” > 【白衣の男は片眉を上げた。】

「なにも?
姉には見えているようだが。
見たまえよ、あの様子を。」

【天秤を奪い取るべく、束縛を強める。
概念が形となったものだが、脈打つ血管や心臓が天秤に絡みつき、その存在を別のものへ変えようとしていた。】

どうにも。
望みが弱い気がする。

もっと強くその目を見開くことだ。
化け物として退治されたかったんじゃないのかい。
姉にはそんなもの見えてはいないようなんだけど。

もうなにもかもまじりあったんだ。
好きにしたらいいじゃないか。終わったんだ。もう。あれは終わりの言葉だ。

【妹へ囁く。】

伊都波 悠薇 >  
「――…………」

無言。妹の望み?
妹の望みなんて、もっと単純だ。

「ねぇ、何を勘違いしているの」

誰になった気でいるかは知らないが。
いつ、終わったのかなんて知らないが――

「――私は、お姉ちゃんの糧でいたいだけ。でも、今のままじゃ、糧どころかお荷物だ。だから――いなくなったほうが幸せだと思った、それだけ」

――感情が、希薄だった。
その代わり――天秤が、より強く。より大きく――
秤が、均整を取ろうとしていく。

「――どうしたの、人形。ささやきの、”甘さ”が足りないよ?」

ケタケタと、口だけ嗤う――。

伊都波 凛霞 > ───もう、届かないのかもしれない

自分の我儘も、感謝の言葉も、これからの感情も
二人が一緒に、近くで笑い合えるはずの自身の異能は、働かない

妹の心のクレバスが、一体となることを拒否している

「……そうだね。
 もう、悠薇の心が変わらないなら…声が、届かないなら…
 それが一番、幸せなのかもしれない。
 でも、私は悠薔と一緒が一番幸せだって、改めて気づいたから……」

泣き笑いの表情を向けて───

「その時は、今度は私が悠薇を追いかける……。
 向こうでなら、また一緒にいれるかな───」

”マネキン” > 【端正な眼鏡の男が口の端を釣り上げる。】

「勘違い、かな。
私もそう思っていたよ。でも君は消えてない。そうなっていてもおかしくないのに。
溶け合って、天秤の釣り合いがことりと落ちて、あとには天秤だけが残るとそう想定していたんだが。
君こそ勘違いしていないか。私は君らを観察しているだけなんだ。」

(端的に過ぎて、勘違いをされた、か?)

「伊都波 凛霞がありがとうと言ったんだ。
感謝の言葉で締めくくられて、英雄譚はもう終わったということさ。結末は…まあ、化け物なんだったら知る必要はないだろう?
ただまあ…忠告しておくとすれば。
生に釣り合うのは生でしかなく、死に釣り合うものは死でしかない。だから今のこの状況は、実に釣り合っている。」

【伊都波 凛霞に振り返る。】

どうにも君は私の話を聞かないが。
どうやら消えてはくれるようだ。

誰かが、転生を信じていると言ったか―――

伊都波 悠薇 > ――終わり。
そうだれかがいった。

そうだから――だから……だからだから――


「ねぇ、本当に?」


だからこそ――

   この言葉を

「――お姉ちゃん。本当に、幸せ?」




薔薇の色は――…………

    花言葉は――……


そんな誰かに見せられるものでも、綺麗なものでもなく


「ねぇ、お姉ちゃん。伊都波、凛霞」

もっと、もっともっと。

もっと、人間のように。

そう――

   誰よりも姉を理解してなかったのは――


「ねぇ、教えてよ。お姉ちゃん。最後なら」

――――ねぇ、本当にこの結末が、幸せですか?

伊都波 凛霞 > 聞こえた声
それはあの時と同じ言葉

自分を振り返ったマネキンにも、涙を湛える笑顔を向けた

「話を、っていうより…うん、君も割と勘違いが多いね…。
 確かに、ああは言ったけど……」

顔を上げて、前を向く
自分をお姉ちゃんと呼んだその顔を見据えて

妹にとっての幸せが本当にそこにしか行き着かないなら、覚悟はあった
それでも、再び妹は自分に問うてきたのだ

先の言葉の"今まで"の後に、"これから"を続けることが

「……私は、辛いよ。いやだよ、悠薇」

そんな泣き顔と、素直のな己の心を剥き出しに、妹へと向けた

”マネキン” > 【伊都波 凛霞の手足を絡めとったまま、蠢く血管が皮膚の下を這い回る。
徐々に末端部から中心へ登る。】
 
いや、まあ期待も込めてあるんだが。
私は信じてないが、転生とかいうものもあるらしいよ、と言ったところだ。
だから諦めたらよかったのに。

(この二人はどこまで行けば結末とするのだろうか。
それはそれで興味深くはある。対話しているように見えて、現実ではもう二人とも救いようがないというのに。)

【伊都波 悠薇を見た。】

伊都波 悠薇 > 一人の――
一人の女の話をしよう。

女は、男に棄てられた。
生きてきたことも、一緒にいたことも。
過ごした、過去も、何もかも。まったく、その思いは消えてなどいないのに。

まったく、何も――変わることなく今も鮮明に思い出せるのに。
でも棄てられたことが悲しくて、苦しくて――
だから――

『お前の国の人間を1日1000人殺してやる』

そんなこと、したくないのに。
それが幸せなんて、思っていないのに。
だから――

自分を殺し続けた。1000回。そう、1000回。

そうだ、この結末は、1000回目。
その時に見た――
だから問うのだ。

1001回目の――

「……」

天秤は、均整をとる。
そう、均整を――1001回目の、この結果を”審判”する。

「――……もう、嘘ついたりしない?」

伊都波 凛霞 > 「───」

皮膚の内部を何かが蠢く感覚
生理的な嫌悪感を感じる、が…今はそんなことは表情一つ変えさせない

「……約束する。
 …って、コレどうにかしてからじゃないといけないんだけど…、
 はは、こんなんじゃ指切りもできないね」

こんな時だというのにふと懐かしむ子供の頃
ゆびきりげんまん、うそついたら───

うそをついたくらいで針を千本も飲ませるのは可哀想だと
二人で代わりを考えたりしていた、無邪気な子供の頃

「…まだまだ、私は悠薇に助けてもらわなきゃ……。
 これくらいのピンチ、かんたんに脱出できなきゃだもんね」

なぜ強く在ろうとしたのか? それは妹を守るため
なぜ高みに在ろうとしたのか、それは妹が誇れる家族でいるため
妹から譲られた数多くのものは、全て妹のための姉として還元されてきた

……だから何も悲観することはなかったのだ
異能があろうとなかろうと、今まで通りのままで、きっと良かった

「もう元には戻れない、みたいに言ったよね。───ほんとにそう?」

そう、マネキンに向けられた言葉は。 ほんのすこしだけ、楽しげなものだった