2015/07/23 のログ
ご案内:「大時計塔」に六連星 葵さんが現れました。
六連星 葵 >  
[〉周囲には大きな機械の歯車が音を立てて動いている。薄暗い世界は非常灯がぽつりぽつりとあるのみで、機械じかけの世界を歩くには心許ないものだった。
[〉コツン、コツンと音がする。円形の光の軌跡が、壁や床を照らす。
[〉それを持っているのは風紀委員の六連星 葵だ。彼女は人がほとんど出入りしないこの場所で「ある作業」をするために、皆が授業中であるタイミングにひっそりとこの場に訪れていた。

「ひゃ~。夏に来ると怖いなぁ。幽霊でも出たらどーしよ……」

[〉時刻は昼間であるが、密閉された時計塔の内部では夜同然の暗闇が広がっている。彼女が目指しているのは時計塔の巨大なベルがある場所だ。
[〉そこは音を伝えるために、大きく開けており、それでいて学園内でもかなり高所の部類であるから、ベルが鳴った時にすさまじい音がなる以外には、今回の目的の条件をすべて満たしていた。

「おっとと……!」

[〉階段に足先をひっかけ、3つ分の段差をたたらを踏みながら駆けた。カンカンカンッと大きな音が響く。
[〉ドキリ、として元きた道へと灯りを向ける。誰も、いないだろうか。
[〉こういった「悪いこと」と自覚していることを進んでやった経験は、葵はほとんどなかった。だから、もう心臓がはちきれんばかりだった。
[〉無機質な臓物は規則的な駆動音を鳴らすだけだが、これが人間なら自分の鼓動がいやというほど実感できたことだろう。
[〉数秒、静止をして様子見して、何者の存在も実感できないと、彼女は再び、上層への歩みはじめた。

六連星 葵 >  
[〉整備用に敷かれた通路をしばらく進むと、階段の先に明かりが差し込む場所に辿り着いた。
[〉ほっと胸を撫で下ろす。どうやら、目的の吹き抜けの場所が近づいてきた様子だ。
[〉そこまでいけば反響の不安も減ってくる。安心しきった葵は足取り軽やかに時計塔を昇り続ける。
[〉そして光差し込む場所にたどり着くと、真上に大きな鐘があった。
[〉鐘を整備するためだろうか、天井が大きく空いていた。天井の横手には梯子が一つあり、梯子の頂点はベルの根本に、ぐるりと壁に這うように鐘を清掃するためと思わしき通路があった。

[〉葵はためらわず、その梯子に手を駆けて昇っていった。
[〉アンドロイドの自重の重さも感じさせない素早さで終着点が見えた嬉しさから一気に通路まで到達する。

[〉すると、視界が開けた。
[〉眼科には校庭や、町並みが広がる。島を一望できる、とまではいかないものの、高所から見渡せるそこはなかなかの絶景だった。
つい、気持ちが高ぶって、葵は声をあげた。

「ゴォールッ……! はぁああ~。いい景色……!」

[〉立ち位置禁止の場所に着ているということを忘れてしまうほど、その光景は葵を満足させるものであった。
[〉青空が続く俯瞰風景は、絵にすれば映えるほどであり、区画ごとに乱立する建造物は、逆にそれこそが常世学園なのだと主張しているようで、葵の心を捉えて離さなかった。
[〉しばらくの間、葵は滅多に来ないその風景を堪能した。

六連星 葵 >  
「さて、と。眺めるためにここにいるんじゃないし、始めないとね」

[〉自分にそう言い聞かせる。是非ともこのまま見続けたいものであったが、ここにあったのは要件あってのことだ。
[〉葵は鞄からピクニック用のシートを足元に引くと、そこの上で女の子座りになり、背を手すりに預けながら瞳を閉じる。
[〉しばらくすれば眠るように頭を垂れ始めていた。

――DIVE。

[〉それは電脳世界に精神や自己の情報を投影して、電子ネットワークの中に自分自身を放り込む行為だ。
[〉アンドロイドである葵には標準規格として装備されているもので、まして戦闘用の素体であるから、機能性でいえばかなり高度なものが積まれている。
[〉最も、自分自身の感覚を丸々サイバーネットワークへと投げ込むのだから、没入――電脳世界へ飛び込んでいる――時には無防備になるなど、危険な欠点はいくつかある。
[〉葵の意識が、電子世界へと沈んでいく。

――――――――――――――

[〉投影開始。無線中継ドローン検索......6件。
[〉正常な通信の確立。常世学園のネットワークへの接続、構築。安定を確認。
[〉未承認のアクセス多数。ブロック。電子ネットワークの視覚化の実行。
[〉イメージ:「庭園」を起動。
[〉情報:華。プロテクト:柵、経路:通路を提起。
[〉オープンされているネットワークの情報を可視化の是非。

<<ノー。対象を『ゲマインシャフト』のホストコンピュータに絞って検索実行。該当した端末の可視化をお願い>>

[〉「ゲマインシャフト」:メーリング配信プログラム。
[〉該当する端末:0件

<<予定どおりならAM11:51に次のメールが僕に届く。そこからアクセスを遡って>>

[〉受信待機...._

六連星 葵 >  
<<毎回のことだけど、自分自身の実行プログラムと会話するの、慣れないなぁ……中継ドローンと会話してるってだけなんだけど、それは結局僕の分身だから、僕が僕に会話してるわけで……うう、頭おかしくなりそう>>

[〉メール受信:ゲマインシャフト_件名『常世学園の大時計等に幽霊出没?』

<<い……やめてよぉ、よりによってその当の場所にいるのにそういうニッチな話、しないでよ。帰りが怖い……>>

[〉配信端末、特定。物理アドレス割り出し:不可
[〉結果の可視化の実行是非。

<<お願い。多分そこであってると思うから>>

[〉実行。

===================

 葵の目の前に明るい光景が広まった。
 田舎町の庭園といった風景が急に目の前に広がる。
 咲き誇る花々が目的の情報の投影された状態だ。色とりどり、様々に咲き誇っている。
 これらすべてが「ゲマインシャフト」という組織が保有する情報なのだと知ると、葵はいささか困惑する。

 「結構な量だなぁ……ええと、金髪の男で、場所は落第街。目撃情報に絞ると?」

 葵がその言葉を口にすると、庭園の区画の1つの花に小鳥が降り立つ。
 どうやらそれが目的の情報のようだ。
 葵は静かに農民たちの間を進む。時折犬が寝ているのが見える。
 犬達は納屋や建物の前で昼寝をしている。
 どうやら情報へのセキュリティは、甘いようだ。その情報を集積している人物や、組織に関する情報は別途管理されているようだ。
 葵にとってはありがたい話だった。これなら組織に目をつけられることなく、必要な情報を集めることができそうだからだ。

六連星 葵 >   
 目的の情報の元へ歩みを進めながら、セキュリティのゆるさに比べて、その情報の整理されている度合いに葵は驚いていた。
 花は種類ごとにきちんと分けられ、そこへ至る通路も規則的だ。
 庭園の中央には噴水があり、そこから水が宙へ舞うと華が咲く。
 農業者の姿をした男女がいる。彼らは可視化された、この情報をせいりしている者達だ。つまりこの場所の管理者だ。
 葵のアクセスは隠匿されている。今彼女は透明人間としてこの場に降り立っているようなもので、気づいている者はいない。
 彼らは、その華を手入れし、形がおかしなもの――多分、情報の信ぴょう性が疑わしいものだろう――を見ると、それだけは切り取っていっている。
 その数が一人二人でないところを見ると、ゲマインシャフトの組織力の、その一端を垣間見た気がする。
 おそらく、今後何度も世話になることだろう。

 「っと。これだね」

 失礼して、葵は目的の華の場所へたどり着くと、手を伸ばす。
 彼女がチョキンとその華を切り取り、手に取ると、目の前で切り取ったはずの華が再び芽生える。
 入手した情報の復元は完了した。
 役目を終えた小鳥たちは、空へと羽ばたいていく。
 葵はその華をまじまじと見ながら、情報の内容について確認しようとするが、とりあえずここを出るほうが先だろうと判断して、
 庭園の出口へと小走りで歩いていった。

===========================

[〉可視化処理:終了
[〉対象からのアクセス:0件
[〉没入処理を終了しますか?

<<うん、起きるよ。処理のほう終わらせて?>>

[〉通信を切断します...._

―――――――――――――――

「ん……」

[〉目覚める。夏場の日光に晒されて、体が少し暑い。
[〉体の冷却装置が警告を鳴らしているところを見ると、没入するのにそこそこ時間を使ってしまったようだ。
[〉相変わらず、現実の時間と切り離されるこの感覚に葵は慣れないでいた。
[〉目をこすり、頭の中に入れた情報を開く。

[□〉タイトル『落第街にスカウトマン? 教師を名乗る金髪の男』
[□〉最近落第街で金髪の男が目撃されている。
[□〉男は突然その場に現れ、常世学園への正式な入学と取引に自分に協力しないかと持ちかけるという。
[□〉拒否しても男は何もせず、来た時同様忽然と姿を消すという。
[□〉怪しい男にはついていかないよう、落第街住まいの女性は注意をしてほしい。

[〉これだけでは、ラインバッハの情報かどうか、全く分からない。
[〉列車で彼と遭遇した時、彼は猫の姿を取っていた。
[〉突然現れては消える、というのは、猫への変装した結果であるなら、状況に齟齬はない。
[〉猫となった彼は探査の魔術にひっかからない。なんらかの特殊な対魔術を仕組んでいるのだろう。この世界の多くの魔法使いや異能者には、おそらく彼の変装を見抜けない。
[〉しかし、彼には特殊な「マナの流れ」がある。それを視認できる葵は、彼をラインバッハと見抜くことはできる。
[〉そのマナの流れは葵の出身世界で生み出された「時間渡航の魔術の残滓」であるからだ。

「とりあえず落第街、いってみよっか。そういえば、あいつが降りた駅、確かに落第街に近かった気がする……」

[〉葵の世界から過去へ飛び、多くの歴史的事件に関与した疑いがある男、ラインバッハ。
[〉タイムパトロールが常世学園に捜査を打診したが、学園からは干渉をするなと突っぱねられたという。
[〉ならば。自分一人で動くしかない。今やったように、場所を特定させないようにしながら不正アクセスを繰り返し、学園内のネットワークを荒らすことになってでも。
[〉そうしなければいけないと葵は強い使命感に駆られていた。

六連星 葵 > [〉立ち上がり、シートを畳もうとして、耳鳴りがしていることに気づいた。
[〉そういえば、昼の12時前に鐘の下にいたのだ。
[〉没入時には気付かなかったが、きっと盛大な音がしたのだろう。
[〉動き始めた感覚が悲鳴を上げ始めていて、葵は少しふらついた。
[〉手すりに体を預けながら、葵は改めて眼科に広がる学園を一瞥した。
[〉静かな、平穏そうな学園生活が一望できた。
[〉もちろんそればかりではないのだろうが、葵にとってここは何一つ不安になることなく通える学校で、一所懸命に陸上に打ち込める大切な場所だ。
[〉何より、友達が少しずつ増えてきている。彼らとの生活を護るためにも、ラインバッハの逮捕か、学園からの退去のどちらかは果たさねばならない。
[〉手も足も出なかった強力な存在。それを相手にしても、果たしてそれは為しうるのか。

「違う、やれるかじゃない。僕はやるんだ、絶対にやりきるんだ。この学園で、悪さなんてさせやしない」

[〉この風景に誓う。これを護るのだと。
[〉心に決意を胸に、葵は大時計塔を降りていく。
[〉道中で、件のメールにあった幽霊に合わないようにと、心のなかで何度も祈りながら。

ご案内:「大時計塔」から六連星 葵さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に鈴成静佳さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」にルフス・ドラコさんが現れました。
鈴成静佳 > ……うわっと!
(大時計塔の屋上へ続く重い扉を開けると、高所の強く涼しい風が静佳のショートヘアを捲き上げる)
(その風圧に逆らいながら日差しの元へ出ると、短いスカートも激しくはためく。蒸し暑い塔内の階段でしこたま流した汗が、あっという間に乾いていくのを感じる)
(陽はやや傾き、午後3時少し前ごろか。静佳はこの時計塔の屋上に来るのは始めてだ。立ち入り禁止なのは知っているが、誰もそれを気にしていないという)

……ふぅ、気持ちいい場所ッスねー。
(スカートの中身が外に晒されるのも気にせず、しばし夏風を堪能する)
(多くの学生はここに景色目当てに来るそうだが、静佳はそれを後回しにし、埃も溜まっていない床にそっと腰を下ろす)

(気分転換、もとい、考え事をしに来たのだ)

ルフス・ドラコ > 屋上の屋上。階段からの出口のその上。
頂きを守るようにして、茶髪の少女が、
赤色に揺らめく瞳で柵の下、広がる街と海を見下ろしている。

ぎぃと揺れた扉の音を聞けば、一瞬だけ首を振り向かせ、
塔の外壁を見やってこの場を離れることを思案したようだったが、
結局のところもう一度首を巡らせて、縁に腰掛けてそのままの姿勢を保った。

元々人を待っていたのだ。慌てて離れることもない、と。
思考するうちにどこかに飛んでいっていた目的を取り戻して、再び遠くを。
恐らく行くこともない海を眺めている。

鈴成静佳 > (そう、あれは昨日のこと……男子寮で……)

(……と、脳を回転させようと夏空を見上げようとした時、屋上の塔屋の上に人影を認める)

……おりょ。先客がいたんスねー。そんな高いところ登って、怖くないんスか?
(お尻を軸にくるりと回転し、来た入り口の方を向く)
(そして、にっこりと優しい笑みを浮かべたまま、吹きすさぶ風の中でもよく通る声で呼びかける)
(考え事は後でもいいだろう)

ルフス・ドラコ > 考え事と言ってもとりとめもない。
『ルフス』の思考は少女の思考と赤龍の半々でぐちゃぐちゃになっているから、
こうしてまだ少女を表に出せている間は考えていい事柄を選別しなければならない。

校舎を見れば、今日出ていない授業のことと、中まで火を通すには何分掛かるかを考えてしまうし、
女子寮を見れば、そろそろ片付けなければならない部屋のことと、女子寮と男子寮で焼き時間をどれくらい変えなければならないかを考えるし、
神社を見れば、ついこの間会った知り合いと、その時食べた朝食のこと、それにそれを燃やし――

声に応じて、そちらに目を向ける。
過去にこの塔に上った時の経験から、なんとなく声をかけなければお互い距離を保って景色だけ見て居るような気がしていたが、そうでもないのだろうか。
「……まあ、怖いといえば。怖いですけれど。」
怖いのは、今なら誰も見ていないから一人くらい構わないかなと思った事のほうだが。
怖いと言った以上は、縁から腰を浮かせて壁面を軽く蹴り、
少しの滞空時間を経て静佳と同じ高さに着地した。

「先客、というのも……ここは立入禁止ですから。」
「お邪魔でしたのなら、申し訳ないです。……考え事をしている顔でしたし」
向けられた笑顔に対して、表情が動くことはなく。
声音も平坦なまま、言外に少女は外に出ようかという意向を伝えた。

鈴成静佳 > おおー……かっこいいッスね、お姉さん。
(ふんわりとした衣服をはためかせて舞うように着地した少女に、座ったままの静佳は目を丸くする)
小柄なのにお洋服の布地が多いんで、風が吹いたら飛んで行っちゃいそうな予感がしてちょっとヒヤッとしちゃったッスよ。フフッ。

……そうッスね、立入禁止。でも密かに人気スポットにもなってるって聞いたよ。だから、アタシも一度くらいは来ておこうってね。
(顔のことを指摘されれば、きょとんとした表情のまま右手で己の頬に触れ……ちょっとだけ汚れがついて残る)
んー、まぁ考え事してるのは確かッスよ。でもまぁ、考え事よりは人とお話するほうが好きッスからねー。
お姉さんはどっちが好きなのかな?

あ、アタシは1年の鈴成静佳。保健委員だよ。(床の汚れを頬に残したまま、えくぼを作って笑顔を見せる)

ご案内:「大時計塔」に嶋野陽子さんが現れました。
嶋野陽子 > 保健室を出たあと、気が付くと
陽子は時計塔の階段を昇っていた。階段の造りはしっ
かりとしていて、彼女が上に登っても問題ない。何よ
りも、無意識に塔に足を向けたことが彼女の願望を暗
示しているかのようで、陽子は上まで登って見ること
にした。
立ち入り禁止の張り紙をした扉は開いており、先客が
いることを示唆している。
「お邪魔します」と遠慮がちに外に出る陽子。

鈴成静佳 > (扉を開けて現れるは、人間離れした巨体。同じ保健委員として何度も出会ってはいるものの、やはりその威容は視界に入ると一瞬ビビる)
……あ、陽子さん。こんちわ。陽子さんも涼みに来たのかな? フフッ。
(すぐに澄ました微笑に戻り、肩の力を抜く)

ルフス・ドラコ > 「……まさか褒められると思いませんでした。」
とんとん、と靴のつま先を床に当てて、普段は感じたこともない履き心地の悪さを直しながら、
次に風ではためいた襟元を正した。
「夏ですし、こんなにはためかせていると暑苦しいと思われそうですね。
貴方くらい短くしたほうが見栄えはいいのでしょうけれど、商売道具でもありますから」
最後に、言及していたスカートの裾と、先程まで腰掛けていた尻の辺りをはたいた。

「噂、ああなるほど。
私が来たのも噂が元ですから、トレンドに敏感な乙女が二人というわけですね」
服のことを気にしたからか、人の目線に立ったからか。
ともかく少しは調子を取り戻して、いつもの様に声音が軽くなった。
先ほどまで紅く揺れていた虹彩も今は暗く焦茶に沈んでいるのが、静佳の瞳の中の自分に見えた。
「私も人と話す方が好きですよ。とくに空腹でない時に限りますけれど。
……どのみち考えても堂々めぐりするようなことしか頭のなかに入ってませんし。」

「同じく一年のルフス・ドラコ。呼ぶならルフスでお願いします。」
笑顔に合わせて、少しだけ微笑んで。
瞳を覗きこんでから気になっていたその頬の汚れを取ろうかと手を出しかけて、止めた。
そのまま爪を立てそうだったから。空腹が悪いのだろう。もしくはまだ直接触れるほどには落ち着いていないか。

「……陽子さん、という方ですか。ルフス・ドラコです。」
スケール感に少し戸惑うものの、驚くという程ではなかった。
逆に掴んで空を運ぶにはちょうどいいだろう。

嶋野陽子 > 扉の向こうにいたのは、保健委員仲間の鈴成さんと、
ルフス・ドラコさんと名乗る小柄で巨乳な女の子。
「鈴成さん、こんにちわ。少し頭を冷やしに来ました」
と鈴成に挨拶してから、ルフス・ドラコさんの方に
向き直り、「鈴成さんと同じく一年生で保健課の嶋野
陽子です。赤い龍とは、珍しいお名前ですね」ラテン
語は敬一君が留学のために勉強していたのを聞き齧っ
ている程度だが、それが役に立つ。

鈴成静佳 > 商売道具……?(その欧風な出で立ちを、上から下まで眺める。どこの民族衣装だったか……)
んー、酒屋のバイトか何かッスかね? まぁ言われて見れば暑そうッスねー。
アタシはもう制服でも暑いなーって思うことあるもん。フフッ。
(スカートから出した制服のポロシャツの裾をパタパタ。腕と同じく日に焼けたお腹がちらちらと見える)

ルフスさんッスね。ヨロシク!(埃に汚れた手を掲げて挨拶)
……むぅ、空腹の時には人と話すのは嫌なんスか? もしかして、食べちゃいたくなるとか? フフッ。
(静佳は別の意味で言ったつもりだ)
ルフスさんも何か考え事があってココに居たんスねー、じゃあ邪魔したのはこっちのほうかー。アハハー。
(目を細めて笑う。あまり深く悪びれている様子ではない)>ルフスさん

……ふぅん、陽子さんもなにか考え事?(口を尖らせつつ)
陽子さんって結構冷静沈着に見えてたけど……。
(……といって、言葉をそこで止める。これほどに人間離れした巨体だ。普通に暮らす上でも、悩みや苦労が多いことは想像に難くない)
(そして、自分にできることも少なそうだ。苦笑を浮かべる)>陽子さん

ルフス・ドラコ > 「それはそうでしょうね、偽名ですから。」
少し眉根を上げて、言い当てられたことに驚きながら少女は答えた。
高校生の嗜みとしてファンタジー用語を多言語翻訳したノートがかつての自分の鞄に入っていたために、
常世島での仮の名前として使っており、他のラテン語については門外漢だ。
「この島では翻訳呪文が効いているはずですけれど、随分勉強熱心なんですね。
いえ、呪文の効かない体質とかでしたら無神経な言い方ですけれど。」
なんとなくではあったが、印象から言えば勉強熱心な方ではないか、と思いつつ。

嶋野陽子 > 『陽子さんって結構冷静沈着に
見えてたけど・・・』との鈴成さんの言葉に。
(そんな私にも女の子の悩みがあると知ったら、鈴成
さんはどう反応するかな?)と思う陽子は、
「こんな体の私でも、女の子の悩みがあるのよ」と鈴成
さんには答える。
『随分勉強熱心なんですね』とのドラコさんの問いに
は、
「親の仕事の都合で3年ほどアメリカにいたので、外
国語の勉強はそれ以来少しずつやってます。翻訳
呪文では原書は読めませんしね」と返す。

ルフス・ドラコ > 「体を使う職業だと、とくに自分の感覚に合わないものを着るのは困りますから。
もっと気軽に着替えたいと思うこともありますけれどね」
静佳の日焼けした肌も、額を流れる汗も、こうして見せられると羨ましい。
ルフスにはどちらも既に縁遠いからだ。そういう思いが、つい言葉に出た。

「ええ、こちらこそよろしくどうぞ。静佳さん。
……いえ。
まあ、そうですね。静佳さんのように肉付きの良い方だと特に。
おやつにするには勿体無いので、ディナータイムまで待ちたいところではありますけれど。」
酷く動揺したわけではないが、全く簡単に受け容れられたわけでもない。
普段述べる軽口と方向性が似ていたからなんとか言い切れただけで、
先ほど流れないといったばかりの冷や汗が頬を伝った。

「結局一人で考えても答えが出なかったので、誰かの助力を借りようかなとは思っていたところなんですよ」
胸元、隠してある何かを手で無意識に触りながら、ルフスは呟く。
「とはいえ立入禁止の場所ですから、どちらがどちらの邪魔をと言うのも変な話ですけれどね。」
先程からここに残るべきか、それとも話すべきか、実際のところは決めかねているというのに、
ただ小利口に話題を合わせるために言葉を紡いでいく。

鈴成静佳 > 女の子の悩みかぁ。アハハ、そりゃそーッスよねー! あるッスよねー! アハハー。
恋の悩みってやつかな……?

(言いつつ、改めてその規格外の体格を眺める。その傍らに、男子の幻影を重ねてみる。……だめだ、どんな男子を宛てがっても、お似合いとは言いづらい)
(とはいえそれをズバリと言うのはよくない。それに……実は一人だけ、釣り合う人はいるかもしれない。静佳の記憶に一人だけ。2m50cmのノッポさんが)
(当然だが、陽子さんに想い人が居ることは静佳は知らない)
……まぁ、彼氏が欲しければ、ココは常世島ッスからねー。陽子さんの気に入る男子もきっといるッスよ。アハハー。>陽子さん

ルフス・ドラコ > 「……いえ、陽子さんは大変女性らしいと思いますけれど」
口に出せば空々しいけれど、嘘偽りの全くない本心そのままに。
「こんな体、なんていい方をするには魅力がありすぎて当て付けのようだと思います」
喰いでがある、という話をしているわけではない。

「翻訳呪文を改良して、書物にも適用する試みを聞いたことはありますけれど…」
「最終的に、誰かの訳に依存する事になるのは確かですからね。」
「何か目標でもあるのですか。例えば専門家ですとか。」

嶋野陽子 > 『鈴成さんをディナーに頂く』という
ルフスさんの軽口に対して、
「私ではディナーでも大き過ぎますか?」と混ぜ返す
陽子。さらに
『何か目標でもあるのですか?』との問いには、
「外国語を知ると、翻訳が万能ではない事を思い知る
のですよ」と答える。>ルフスさん

『恋の悩みってやつかな?』という鈴成さんの問い
には、
「実は恋は遠距離で間に合ってるのよ」と鈴成さんに
告げる。

鈴成静佳 > んー? 暑けりゃ涼しい服を着ればいいんじゃないッスか? ……あ、ダメな事情があったり?
(首を傾げつつ問う)

アハハ、アタシみたいな……その、ぽっちゃり系? そういうのが好みなんスねー。気に入ってもらえたようで何より……。
(苦笑を浮かべる。もしやこれは性的な意味でなく、食欲的な意味の「食べたい」だったのか)
(頬に汗が伝う。まぁ、冗談だろう。どうみても普通の少女。とても人を喰いそうには見えない)
ま、まぁ、ディナーでもおやつでもアタシは歓迎ッスよー。痛くしないならね。フフッ。

んー、アタシでよければ相談には乗るッスよ。みんなの心身の健康を守る保健委員ッスからね。
といって、アタシもちゃんと相談に乗れる自信はないけど……まぁ、言うだけでも楽になることもあるかもしれないし?
自分のはまぁ、そんな大した悩みじゃないし。気にしないで?
(座ってくつろいだまま、陽気な声で促す。とはいえ、その笑顔にはやや陰も見えるかもしれない)>ルフスさん

鈴成静佳 > ほほう、恋人はすでに居るんスね。いいなー、陽子さんいいなー。
(歌うように揶揄する。やはり相手の想像はつかないが)
(そして、じゃあ恋ではない女の悩みというと……あとはもう、いよいよ相談には乗りづらい、自己解決すべき話ばかりだ。月に1回のアレとか)
……まぁ、お腹はあまり冷やし過ぎないほうがいいッスよ。うんうん。(自分も盛大にお腹を冷やしつつも、適当に流す)>陽子さん

嶋野陽子 > 『お腹は余り冷やしすぎない方がいい』
との鈴成さんからのコメントには
「大丈夫。私の悩みが鈴成さんには文字通り大き過ぎる
のは判ってますから」と、少し寂しげに答える陽子。

ルフス・ドラコ > 「そうでしょうね。この島だけの話でも幾らか問題が有ったと聞きましたから。」
だからこの人は自分の技術として語学を習得しているのだろう、とルフスは納得する。
>陽子さん

「痛くしないなら食べてもいい、ということでしたら」
「それなりに無痛化の準備は……」
一歩踏み出して、目の前のご馳走に手を伸ばし、
"いや爪を立てて押さえつけてその首を"
と。
一歩近づいたところでもう一度、静佳の瞳の中の自分を見る。
紅い髪。燃えるような眼差し。夕暮れにはまだ早すぎる。

「……痛くなくなるように可愛がる準備なら、出来ているんですけどね。
ちゃんと道具などもありますよ。」
伸ばしかけた手を、自制心の限りで制御して、静佳の頬の汚れを拭う。
「でも、やっぱり暗くなるまで待ったほうが雰囲気が出ますから、ね。」
きちんと冗談に出来ただろうか。そう思いながら、振り返って陽子へも手を差し伸べる。
「私、ムードは大事にする方ですけれど、量は平らげる方なんです。よろしかったらご一緒にどうでしょう?なんて」

くるりと回った勢いを、もう少し付けて、そのまま柵へもたれかかる。
先ほどのような"マチガイ"を犯さないように、ほんの少しだけ静佳から距離をとって。
「私の方も、それほど大した悩みじゃないですし……
せっかくですから。お互いに悩みの打ち明け話と行くのはどうですか」
少しだけ口角を上げて、去勢を張りながら少女は言う。