2015/06/21 のログ
サリナ > 焼き鳥屋、そういえば自分も間食にとよく行く焼き鳥屋がある。
よく行くので何を頼めばいいかはよくわかる。目の前の屋台のメニューを眺めつつチェシャの言葉を聞いて…

「なるほど…じゃあねぎまはダメですね……ああ、一緒に頼みますし、遠慮しないで」
とりあえずはぼんじりを4つとあとは適当に何か色々頼む。
脂の弾ける音とともに香りが漂ってきて、食欲を促進させる。

チェシャ > 「ねぎまはね……ねぎがねー いらないん」
やなぁん……と言いたそうな渋い顔。猫故に当然かもしれないけれど

「……いいの? うんーじゃあ一緒に今日は同じご飯食べよっか!
お揃いね!」
と、言いながら嬉しそうにくるくると彼女の足元で回る
焼き鳥の焼かれる匂いが香ばしさを増し、食欲がそそる
「まだかなぁ?まだかなぁ…?」と、足元の白いのがくるくるそわそわと落ち着かない

サリナ > (待ちわびてる)
足元で動き回って落ち着かないチェシャを見て、早く食べたいと訴えているのがよくわかった。私も早く食べたい。
お金を払って品を受け取る。小さい紙袋に揃えて入れられた焼き鳥を広げてチェシャに見せた。

「この塩焼きのぼんじりがおすすめです。脂が乗ってておいしいんですよ。あとはモツですね、タレとの相性がよくて…」
とりあえずはぼんじりを差し出してみる。猫に味がわかるか知らないが、軽く塩が効いていて脂との相性がばっちりなのである。

チェシャ > そわそわした空気が伝わる。早く食べたい
くるくるしながら焼くのを待ち続けて、お金が支払われたと知ると、ぴたっと大人しく静止して
小さい紙袋が近くに来れば、すんすんと匂いを嗅ぐ
焼きたての脂のとろけたいい香りがとても美味しそうで、今すぐにでも被りつきたい

「ぼんじり!って、確かお尻のお肉の部分で柔らかくって美味しいんだっけ?
チェシャもねーちょっとだけならわかるん……モツも美味しそうね。先ずはぼんじりから頂くんねー」
差し出されたぼんじりの匂いをすんすん嗅いだ後に、はくっと口に咥える
まだ、熱いけれどとっても――……
「おいちぃぃぃぃぃんねぇぇぇ!」
嬉しそうな雄たけびをあげる。猫の分、人ほど味覚は鋭くないけれど美味しいものは美味しいし
幸せの味が口に広がれば、素直に美味しさを表現して
はくはくと夢中になって食べていく

サリナ > 「よく知ってますね?希少部位ですから、だからおいしいんです。私も一番好きです。」
あまりの喜びように少し驚いた。普通の猫なら普通黙々と食べる。しかし目の前の猫は歓喜の声をあげる。

「チェシャは焼き鳥で好きな部位はどこですか?」
自分の分を食べるのも忘れてしばし、チェシャに焼き鳥を次々差し出していった。

チェシャ > 「チェシャはおいちぃものが大好きなん。柔らかくておいちぃお肉は最高ね」
きっと、もしかしたら他の動物も意思疎通出来たら素直に喜ぶのかもしれない
動物は、素直だという――……そんな一例を見た気がした

「チェシャもねぇ、ぼんじりが好きー
後はねーももとか、手羽先とか、ささみとかつくね
基本的に「お肉」って感じの所が好き」
次々と焼き鳥を差し出されれば、目をきらっきらと輝かせて
「いいの!? これも良いの!?
おいちぃぃぃん!」
――……と、嬉しそうにはくはくと焼き鳥を食べていく

「今日はねぇー焼き鳥の焼きたての美味しいのが食べられて、とっても幸せなんねー
サリナちゃんありがとね!」
嬉しそうな上機嫌で、ぺろりと口の周りを舌で舐めとりながらお礼を言う

「サリナちゃんは、そんなに少しで足りるのー?大丈夫なの?」
貰って嬉しい半面、彼女の分まで取ってしまって心配そうに尋ねた

サリナ > 「ふむ、なるほど…なるほど………」

(かわいい)
喋ったり、食べたりでせわしなく口が動いている。
言葉を喋るだけで他は猫だというのに口調から、仕草から、本当に人の…それも女の子のようにも感じられた。
いくらか量が減ってくると、ようやく自分の分も食べだして、すぐに平らげてしまった。


「どういたしまして。私はいつも間食挟むので大丈夫です。お昼が少ないならその分増やすだけですので…」
こちらの心配までしてくれる。本当によくできた…猫。こういう気遣いをするのは人でも中々いないような気がしてくる。

「それでは、そろそろお暇させて頂きます。また今度会いましょうチェシャ」
残った袋をまとめて、歩き出した。時折振り返っては様子を見ながら…

チェシャ > 「おいちぃぃ……おいちぃぃ……」

見られている目線にも気付かず、夢中になってはくはくしている
とても美味しかったのだろう、満足そうに食べ終えると、お店の名前をちらりと見て覚えた
そして、二人のご飯が終わると――……


「本当?そっか、大丈夫なら安心ね!
嬉しかったけど、サリナちゃんのご飯がね、チェシャがとってお腹すいちゃったら可哀想だったの」
彼女が平気と言えば、ちょっと安心した感じで

「あ――……そうね、今日はかなり時間が経っちゃったわね……」
約束通り、彼女にちょっと家族のお話をしようとして……気が付けば結構な時間
「うん!今日お話しできなかった分の約束ね!次は絶対お話しするね
サリナちゃんのお話も聞かせてね」

彼女が去っていくと、後ろからちょこちょこと商店街の外まで付いて行って
少しだけ、彼女へのお礼も含めてか、見送っている様にも見える
本格的に彼女が商店街の外へと進んで行けば、彼女の姿が見えなくなるまでそこに居た

ご案内:「商店街」からサリナさんが去りました。
ご案内:「商店街」からチェシャさんが去りました。
ご案内:「商店街」に朱堂 緑さんが現れました。
朱堂 緑 > 夜中のマーケット。その食品売り場。
人も徐々に疎らになってきた頃、ふらりと現れたざんばら髪の男が1人。
不景気そうな面で惣菜を見て回っている。
当然狙いは半額シールである。

朱堂 緑 > まだ蓄えはあるにはあるが、少々高い買い物をしてしまったせいで、今後どうなるかわからない。
節約するに越したことはないということで、男はふらふらと落第街の帰りにそのままマーケットの自動ドアをくぐっていた。
カートの籠に入っているものは悉く特売品であり、統一性は一切ない。
選定基準は安いか否かの一択のみ。
本来は自炊が理想的なのだが何せ男は片腕である。
こういったものに頼るほかないのだ。

朱堂 緑 > がらがらと不景気面のままカートをおして、保存性があり、尚且つ安いものを適当に突っこんでいく。
ホットな時間を過ぎているため、今日の半額シールの惣菜はあんまり美味しくなさそうなものしかないが、背に腹は代えられない。
なんでも経費で落としていたあの頃が懐かしい。

朱堂 緑 > いっそ麻美子に食費を渡して食事も頼んでしまおうか。
そんな考えが脳裏をよぎったが、即座に否定してぶんぶんと首を振る。
いや、甘え過ぎだろ流石に。
家の面倒まで見てもらって何を考えているんだ。
『囁き』方が最近雑じゃないか悪魔。
責任転嫁の自己完結をしつつ、日用雑貨もついでなので適当に見ていく。
殺風景極まりない新居なので足りないものだらけなのである。

朱堂 緑 > 特売の消耗品を適当にまた籠にぶち込み、ついにカートは上下豪華2段山盛りとなるが、ここで一つ問題が生じた。
運ぶの面倒臭い。

朱堂 緑 > そりゃあ運んで運べないことはない。
この男にだって腕力が付随していないわけではない。
だが、これを全部運ぶともなれば、ハッキリ言って重い。
左腕しか自由にならない男からすれば割と深刻な問題であった。

ご案内:「商店街」に雪城 涼子さんが現れました。
朱堂 緑 > 会計を済ませたら、もはや後戻りはできない。
故に決断するなら今である。
どうするか、いくつか諦めるか。
それとも、己の左の握力を信じるか。
男は割と本気で悩んでいた。

雪城 涼子 > 「んー……流石に夜だと、あんまりいいものはないわねえ……」

なんとなく、寝付けなくて……というより、昨今は寝るという感覚がずれてしまったので、少し手持ち無沙汰になっていた。
気分転換に、と夜のマーケットに来たものの……そこにあったのは半額商品やらスカスカの棚やら、商品入れ替え目前、な微妙な光景であった。

「あら……?」

ふと見れば、なんだか山積みのカートを前に悩んでいる様子の男がいる。

「あの、大丈夫……?」

思わず声をかけた。おb……主婦はお節介なのである。

朱堂 緑 > 「あ?」
話しかけられるとは思っていなかったので、男はいつもの調子で振り返ってしまう。
真っ黒な伽藍洞を思わせる瞳と、不気味な黒いザンバラ髪。
どう控えめにみても、感じがいいとは言い難い。
しかし、当然そんなことはこの男当人にはわからないので、いつも通りにじわりと男は微笑む。
口元だけで笑う癖があるせいか、これもまた不気味だ。
「ああ……すいません、邪魔でしたかね?」
自分が場所をとっているのではないかと思ったらしい。
実際通路上で立ち往生していた。

雪城 涼子 > 「あら、怖い」

男の不気味な様子に言葉だけ怖がってみせるが、口調は全くもって平然としていた。元々の精神性もあるが……
なにより、この不気味な様子の男がカートを前にして悩んでいる姿は、逆に滑稽というか……その、なんというか。可愛い。

「ああ、違うの。なんだか困ってそうだったから、つい。」

そういって、にこやかに笑う。
其の姿は、色素の薄い髪と肌の色と合わせて儚く人形のような美しさを持っており……ある種、男の雰囲気とは間逆であった。

朱堂 緑 > 「ああ、これは失礼」
怖いといわれてしまえば、男とは対照的な非常に感じの良い対応の女性に、男は素直に頭を下げる。
そして、カートを見ながらそう心配をしてくれる女性に、男はじわりとまた微笑む。
「恥ずかしながら、欲張った結果見ての有様でしてね。
あまり腕力に自信があるほうではないので、少し減らそうかどうか悩んでいたんですよ」

雪城 涼子 > 「んー……」

意外と対応は素直だった……けれど、笑いは相変わらずだ。
とすると、これはもう彼の個性みたいなものなのだろう。
まあ見慣れれば、これはこれで可愛いかもしれない。
などと人の顔をネタに失礼な考察をしていた。

「なるほどねー……流石、男の子。沢山食べるんだなあ……
 んー……よかったら、少し持とうか?」

なんとなく、ではあるが。そんな提案をしてみる。
プライドが傷つく、とかそういうのは一切考えていない。純粋に困っているなら助けようかな、くらいの感覚である。

朱堂 緑 > そう提案されると、男は目を逸らし、暫し逡巡していたようだが、すぐに向き直って一つ女性に尋ねた。
「提案は非常に嬉しいのですが……
私の住んでいるところはここからあまり近い場所ではなくてですね……」
そういって、自分の住んでいる当たりの住所を教えた。
住宅街の一角である。
確かに近くはないが、そこまで遠くもない。

雪城 涼子 > 男が説明した住所を考え……大体の位置を予測する。勿論、正確に分かるわけではないが大まかな距離くらいは分かる。

「あはは、なんだ。それくらいなら、そう遠くないじゃない。
 車で行かなきゃいけないくらいの距離かと思ったわ。」

あはは、と闊達に笑う。この男、話してみれば見かけによらず存外に生真面目だし、好感が持てる。

朱堂 緑 > 「しかし、女性の足では……」
そう、一目足を見たが、すぐに目を逸らす。
まぁ、彼女自身が遠くないというなら、そのままお言葉に甘えるとしよう。
男はそう判断して、また頭を下げる。
「では、お恥ずかしい話ではありますが、持ち切れない分はお願いしてもよろしいでしょうか。
故あって、左腕しか使えないので」

雪城 涼子 > 「大丈夫、それなりに鍛えてるわ。まあ、男の子の全力に敵うかッて言われたら、ちょっと困るけれどね。」

笑って肩をすくめるが、視線に気がついて……

「ああ、それと。あんまりアカラサマに動くと逆に分かっちゃうわよ?
 紳士もなかなか大変よね」

くすり、と笑う。年若い男の子をからかう、というのは悪い趣味ではあるが、これくらいは勘弁してもらおう。

「あら……怪我か何か?」

左腕しか使えない、という割には健在な右腕を見て、思わず首を傾げる。けが人であるなら、尚更大荷物などもたせられない。

朱堂 緑 > 視線についてからかわれれば、若干困った様子で苦笑を漏らす。
「不徳の致すところです、申し訳ない」
それだけいって、レジに向かう。
会計をすませながら、そう右手について問われると、これまた少し困った様子で男は笑った。
「まぁ、そのようなものです。
色々ありまして、今はもう私の意思では動きません。
お陰で日頃のあれこれが何かと面倒でしてね」
そういって、少し疲れたように溜息をもらした。

雪城 涼子 > 「あら、そんなにまじめに謝らなくてもいいのに……なんだかごめんなさい」

ちょっと反省した。うん、イヂメ、良くない。

「サラッと言ってるけれど、それって結構大変なんじゃない……?体が自由に動かないって、それだけで辛いし。
 お医者さんとかはいったの?そういう大事なことは早めに言ってほしいものだわ……」

右腕が動かない、と言っただけでなにか思うところがあるのだろうか結構な反応をする。
なんとなく、相手の男ににじり寄る。

「……まあでも、なんだか買い物の中身は納得いったわ。お惣菜ばっかりだものねえ」

朱堂 緑 > 「いえ、最近その……なんていうんですかね、デリカシーってやつですかね。
まぁ、それの不足で先日、知人を1人傷つけましてね。
少し、自分でも反省しているんですよ」
そういって、また重ねて頭を下げながら、片手で面倒そうに袋に物をつめていく。
片手だから仕方がない所もあるが、雑である。
「残念ながら、医者じゃあどうにもならないんですよ。
一種の『魔術的制約』って奴でしてね。
お陰様で、自炊も侭ならないといった有様ですよ」
あんまり美味しくなさそうな特売の惣菜をこれまた袋に詰めながら、そう笑った。

雪城 涼子 > 「デリカシー……ってことは女の子関連かあ。なかなか隅におけないのね。
 でも、それなら気の使い方を間違ってる気がするわよ。大事なのは、傷つけた子のことを考えてあげること、じゃないかな?」

お節介かもしれないけれどね、と付け足す。
流石に深入りして聞くには微妙な話題だが……気になるものはなる。

「もー、片手だから仕方ないけどちょっと雑よ。貸して!」

袋に詰めるさまを見て、なんとなく血が騒いだらしい。
残り物を袋に詰めようとする。

「ああ……私はあまりソッチの方はわからないけれど……簡単じゃないことだけは伝わるわ……
 じゃあ、治る見込みも、なかったりするの?」

朱堂 緑 > そう、女性に指摘されると、一度虚空に視線を向けたあと、自嘲気味にまた苦笑を漏らす。
「全くその通りですね。
やはり、そのデリカシーとやらはまだ理解するには程遠いようです。
お恥ずかしい限りだ……と、え、あ……あぁあー」
言葉を言いきる前に袋を掻っ攫われ、あっというまに見事に惣菜やら雑貨やらが袋詰めされていく。
効率的かつ非常に手早い。
その業前は、とてもそのへんの女子高生の手際とは思えない。
居住いから年上と男は無意識に判断していたが、どうもそれは間違いではなかったようだ。
安易に見た目で判断して下級生扱いしなくてよかったな、と胸中で呟く。
「何から何まですいません。
まぁ、腕については、そうですね、見込みはありません。
恐らく、今後一生付き合っていきますよ。
ま、片腕で済んでいるだけマシともいえます。
下手をすれば『臓器』をいくつか持って行かれる可能性もありましたからね」
そう、大したことではなさそうに語る。
実際、男にとっては大したことではないのだろう。
元公安委員である以上、元々いた世界はそういう世界だ。

雪城 涼子 > 「まあ、難しいわよねぇデリカシーなんていっても結局、女の子の心の中一つで決まるものが多いのも確かだし。
 だから、理解するのはどっちかというと女心ってやつの方かしらね。尚更難しい?まあそうよねえ」

答えを聞く前に既に答えを想定して自問自答のように。
手元は淀みなく袋詰めを続けている。
まあ、流石にこんな大量なものはしたことはないが、整理整頓とかそういう類の物は得意だし、基本は変わらないのだ。

「……ソッチの世界はよく知らないけれど……いわゆる、ニエとか代償ってやつかしら……そんな若いうちから随分と無茶なことするわね……
 やめなさい、とまでは言えないけれど、程々で止めて欲しいところだわ」

はあ、と溜息一つ。改めて、此処はそういう世界なのだな、と思う。
煮詰まりすぎた世界。
ただの日常と、恐ろしく過酷な非日常が有り得ない程に近く隣り合わせなのだ。

朱堂 緑 > 「女心は……難しいですね。
残念ながら男以外になったことはないもので。
それはともかく、何から何までありがとうございます」
そう、少し疲れたような嘆息を漏らしながらも、礼はしっかりという。
そういう性分らしい。
そして、左手だけで全体の7割ほどは受け持って持ちながら、腕について聞かれれば、若干可笑しそうに笑う。
「それは無理ですよ。
男である以上、力への渇望に抗う事は出来ない。
最初っから強けりゃまぁよかったんですがね。
生憎と、落ちこぼれだったもので。
落ちこぼれでもなんでも、それでも……っていうなら、まぁこうするしかないんですよ。
必要だからそうしたってだけです」
これまた、そう軽く言った。
そう、彼らのいる、恐らく非日常側では、それは当たり前の事。
ないなら、奪うか、補うしかない。
例え、掛け替えの何かを……差し出してでも。

雪城 涼子 > 「大体にして、女心、なんていうのも結局は欲望を綺麗な言葉で誤魔化しているだけだしね。
 一他人がどう受け止めるかっていうのは……やっぱり難しいわね。結局、お互いに向き合うしか無いんだろうけれど……
 それはそれで、意外と大変なのよね」

礼に対していいのよ、と手で示しつつ、と此方も苦笑で返す。
家族ですら相手の心の中を読みきれないというのに、他人同士では尚更辛いのはわかりきったことだ。

「ん……男の子ってそういう所、あるわよねえ……強くありたい……か。
 うん、でも。どんな手段を使ってもいいから、欲しいものを求める気持ち……わからないではないわ。
 でも……やっぱり過酷な世界ね。それでも、その力のある人達の上に私達の生活が成り立ってるんだものね。
 なかなかフクザツな気分だわ」

自分も、かつてはすべてを捨ててでも、どうにかしたい、という願いをかけたことがある。
結局のところ、ある種すべてを失い、ある種、全てを手に入れたわけだが……今でも考えさせられることはある。
今だって、出来れば全てを掛けてでも、どうにかしたいことはある。
ただし、最早元本は殆ど残されていないので、どうにもならないのだが。

朱堂 緑 > 「まぁ、私の場合は『最低限でいいから欲しい』で『右腕一本』ですからね。
その落ちこぼれ加減は推して知るべしといったところです。
手段が選べるほど強ければ、こうもならなかったんでしょうが……いや、『もしも』なんて、論じるだけ無駄ですな」
夜の商店街を、ゆっくりと歩く。
一応女性の歩幅を合わせているようで、男はずかずか先にはいかない。
それは気遣いといえば聞こえはいいが……行き過ぎて、何か、恐れているようにも見えた。
「女心は欲望、ですか。いい言葉ですね。
ストレートな欲望ってのは、俺は……おっと、私は嫌いじゃないですよ」

雪城 涼子 > 「そうね……論じても仕方ないわね。
 それに結局のところ……貴方は望んで、貴方は得た。
 それだけの話……だものね。」

己の非力を嘆き、力を求める。言ってしまえば陳腐な話である。
そこに賭けられたものが大きかっただけのことだ。

「ところで、そんなにゆっくり歩かなくても平気よ?それに喋り方も。
 もうちょっと自然体でいて欲しいんだけどなあ。そんなに傷つけるのが怖い?」

相手の、過剰な気の使い方が気になって仕方がない。
今まで気を使われ慣れてきたからこそ、逆に悪目立ちするのだ。
だから思わず、そんなことを口にしてしまった。

朱堂 緑 > あっさりと、それを見抜かれて、男は立ち止まる。
そして……相好を崩し、ひきつるような苦笑を漏らしてから……大きく溜息を吐いた。
「おねーさんには何でも御見通し……ってか?
初対面にまでそこまで見抜かれるってことは……どうも、俺の天敵は女そのものらしい」
そう、ぶっきらぼうな、男本来の口調で嘯いて、隣に並ぶ。
先ほどよりは、早めにあるく。
僅かにだが。
「男の臆病さってのは、やっぱり女にはすぐわかるもんなのかね」

雪城 涼子 > 「あら、おにーさんったら。おねーさん、なんて呼んでくれるのね。ふふ、嬉しいわ。」

くすり、と笑うのはどういう意図を持っているのか。
ただ少なくとも、おにーさん、といきなり呼んだのは発現に乗った結果だろう。

「天敵だなんて酷いわね……でもそこまでいうからには、大分女の子で失敗したのかしら?
 ……ん。ひょっとして……」

そこまで言いかけて、止める。流石に、初対面の相手に踏み込み過ぎている気がした。
もし許されるなら聞いてもいいだろうけれど……難しい問題だ。
そんな悩みをかかえつつ、早められた足についていく。大丈夫、余裕余裕。

「んー……全員が全員、分かるってわけでもないと思うわよ。ただ、今のはあからさますぎ。
 それと、よく知ってる相手だったら……そうね。臆病さなんて、簡単にバレちゃうんじゃないかな?
 ただ怖がりっていうだけじゃない臆病さなら特に、ね。」

朱堂 緑 > 「仕事柄……いや、ちがうな。
昔の職場柄、素性を知られるってのは致命的なことでね。
初対面にも関わらず、弱みからその時の悩みまで看破されるなんてのは、諜報戦での必敗が確定してるようなもんだ。
それを天敵といわずして、何を天敵と呼べというのか」
先ほどよりも饒舌に、そして、気安くそう皮肉を述べる。
元々、こういう男なんだろう。
そして、そんなアドバイスを貰えば、また左肩だけを竦めて自嘲の笑みを漏らす。
「それが事実だとするなら、ますます女には勝てる気がしないな」
そういえば、局長も麻美子もそのあたり良く見抜いていた気がするな。
特に、麻美子には……知らずに大分気を遣わせてしまっているのかもしれない。
情けない限りだ。

雪城 涼子 > 「ぅ、ん……そうね…………………」

話を聞いて考える。

「別に、貴方がなにをしていたか、なんかはまあいいけれど。
 多分、そこでは完璧だったんじゃないかな……って、思う。」

素人考えだし、そもそも相手の職など知らない。
それでも、なんとなく話から見えてくることはある。
彼は、女に一種恐怖しているところがある、のだろう。
いや、恐怖……というより、困惑、のほうが正しいのかもしれないが。
其の原因はまあ明白なわけで。

「思うに、今の貴方、が問題……というか、なんだろう。致命的っていうなら、そうなってるのは。
 さっき自分で言ってた、知り合いを傷つけた件、のせいじゃないかな。
 だから、プライベートがグチャグチャ、というか、ダメダメ、になってるんだと思うんだけれど……」

んんー、と考える。

「アドバイスするなら……んー……今もだけれどちょっと逃げてる感があるから、そこじゃないかな。
 天敵って、そういう名前をつけているのも、多分そう。」

朱堂 緑 > また、そのあまりに的確な指摘を受けて、男の足が止まる。
逃げている。
あまりに、正鵠を得ている。
ぐうの音も出ない。
確かに、今行ったことは、まさに『そういった類』の安易なレッテル貼りでしかない。
「アンタ、もしかして……諜報部かどっかの人間か?」
などと、男は頓狂な事を聞く始末。
しかし、それくらいに、男からすれば驚くべきことであった。
「それとも……本当は心を覗く異能があるとか? いや、魔術的なテレパシーの類か?」
暗に、それは女性の指摘したことが的中していることを示していた。

雪城 涼子 > 「あはは、勘ぐり過ぎだよ……でも、そんな台詞が出るようなら本当に重症なんじゃないかなあ。」

一瞬、けらり、と笑いはしたものの、一点真面目な顔になる。

「私は、本当に純粋な一般人……まあ、多少一般じゃないところもあるのは確かだけれど。
 そうね……女の勘って奴……っていうとまた貴方が変に勘ぐったり逃げたりするだろうから。
 しょうがないな。私は、多分貴方よりちょっと人生経験が長いから、だと思うよ?」

朱堂 緑 > ちょっと、の部分に少し思いを馳せる。
こんな島だ。その『ちょっと』にも当然個人差がある。
流石に正確なそれを男が察せるわけではない。
だが、それでも……自分の想像よりもさらに『おねーさん』なのだろうなとは、なんとなく想像がついた。
「難敵のリストに『年上の女性』と追記しておくことにするよ」
故に、そう、曖昧に微笑む。
「しかし、女の勘か。恐ろしいもんだな。
そこまでわかっちまうもんか……そうなると、『男の子』としてはカッコつけるのも怖くなっちまうな。
そこも含めて頑張りましょうって受け取るべきかね、ここは?」

雪城 涼子 > 「だーめダメ、敵にしないで味方にしなさい。そこの認識からして間違ってる。
 敵にしてたら永遠にすれ違ったままだよ。まあ……それで女の子を転がすヒモ男、とかになられても困るけれど。
 大事なのはバランスね。」

チッチッチッ、と人差し指を振る。これは、完全におねーさん気分だ。

「まあ流石になんでもかんでもってワケにはいかないわよ。ただ、今回は貴方が結構ヒントを出してたからね。
 まあ、そうねぇ……臆病に逃げるよりは、カッコつける方がいくらかマシなんじゃないかな?
 うん、そこを含めて頑張りましょう」

通信簿をつける先生かのごとく、くすりと笑っていう。

朱堂 緑 > 完全に気圧され、若干のけぞり気味に話を聞いていたが、そう締めくくられると、つられてこちらも笑う。
相変わらず根暗そうな、不気味な笑みではあったが、それでも、さっきよりはいくらかマシに見える。
「善処はしてみるよ。ありがとな、おねーさん。
頑張るのもカッコつけるのも、どっちかといえば得意な方だ。
逃げない事だけ意識してみるよ」
考えてもみれば、今までの調査部の仕事はなるべく『戦わない』仕事であった。
調査部なんだから当たり前である。
戦うよりは逃げるべきであり、むしろそれが是とされていた。
仕事のしすぎで、プライベートにまでその闘争からの逃避を是とする姿勢が、もしかしたら滲み付いていたのかもしれない。
 
「さて、このへんでいいわ。あそこ、俺んちだから」
 
そういって、指差した先にあるのは、普通の貸家である。
つい先日まで空き家だったのでまだあまり人が住んでいる気配はない。
越してきたばかりなのである。

雪城 涼子 > 「あはは、少しいい顔になったねえ。やっぱり、案外可愛いわ」

くすくす、と。不気味な笑みを見ながら笑う。
んー、なるほど。意外とこういうところがモテてたりするんだろうか。などと思う。

「そうそう、『男の子』は頑張ってる姿が多分一番格好良いゾ。
 まあ、頑張れってただ言うのは無責任だから、納得いくまではやってみるといいんじゃないって言っておくわ。」

何か主義主張があるらしく、不思議な激励をした。

「……うん。にしても、なんだか新しい感じね。引っ越してきたばっかり?
 ロクに荷物もなさそうよねえ……お惣菜ばっかりの生活にならないように気をつけなさいね?
 ……と言っても、其の手じゃ無理かあ……今度、何か作ってきてあげようか」

とりあえずもう少し近くまで、と歩みながらなんとなく言った。

朱堂 緑 > 「男の身としちゃあ、可愛いっつわれても複雑な気持ちだけどな。
ま、おねーさんのありがたい激励と期待には応えられるよう、それこそ『頑張って』みるよ。
『男の子』らしくな」
苦笑いで返しつつ、持っていてもらった分の袋を受け取る。
「ああ、やっぱりそういうのも分かるか。まさに越してきたばかりだよ。ほんとについ先日な。
お陰でない物ばっかりだ。まぁそういうの揃えるのも楽しいと言えば楽しいがね」
などと、肩を竦めながら嘯いていたが、料理の件について言われると……また、今度は少し照れくさそうな笑みを浮かべて、首を横に振った。
「そいつは流石に迷惑かけすぎだ。遠慮しとくよ。
それに、『もう』そういう世話焼いてくれてる奴がいるんでな」
そういって、改めて踵を返す。
「気持ちだけ受け取っとくよ。
今日はほんと、色々とありがとな、『おねーさん』
お陰で、もうちょっと踏ん張ろうって気になれたわ。重ねて礼を言うよ」
そして、家の前で一度だけ振り返って、じんわりと笑って、一言だけ告げる。
 
「良い夜を」
 
それだけいって、男はまだあまり生活感のない己の住処へと帰って行った。

雪城 涼子 > 「なんだ、馬に蹴られるところだったわねえ……というより……ん、まあいいか。」

ぼそり、と呟く。これが相手に聞こえたかどうかはわからない。

「はいはい、それじゃあね。おにーさん。良い夜を」

パタパタ、と軽く手を振って見送り……

「さて、と。大分夜も更けたけれど……まあ、半幽霊にとってはちょうどいい時間よねー」

軽く笑って……元きた道を戻り始めた。

ご案内:「商店街」から朱堂 緑さんが去りました。
ご案内:「商店街」から雪城 涼子さんが去りました。
ご案内:「商店街」に朱堂 緑さんが現れました。
朱堂 緑 > 治安が比較的良い商店街とはいえ、その裏通りともなれば、多少の例外はある。
まさにその『例外』に囲まれ、男は不敵に微笑んでいた。
黒のザンバラ髪を揺らす、長身のコートの男。
その男は己を囲む日常の例外……不良達を睥睨して、じわりと嗤う。

朱堂 緑 >  
「喧嘩を売る相手は選ぶべきだと思うんだがな」
 
威圧的にそういって、一歩前に出る。
それだけで、不良達は息をのみ、身構え、それでもなお退かずに男を見る。
数では、不良達の方が圧倒的に有利だ。
それでも、その長身の男は余裕を崩さない。
 
「俺はそこを通りたいだけなんだ、通してくれないか。
そうすれば……お互いに無駄な時間をとらずに済む。
いい話だとは思わないか?」
 

朱堂 緑 >  
「賢い選択が出来ない奴は……この町じゃあ生きていけないぜ」
 
じわりと、男が嗤う。
そして――。

朱堂 緑 >  
 
数分後。
 
 

朱堂 緑 > 「……つくづく俺も学習しねぇな……」
 
不良にボッコボコにされ、綺麗に財布の中身だけ抜かれた男が1人。
指輪は例の如く換金が見るからに面倒くさそうなので御勘弁頂けている。
 
「俺が思ってた以上にあの公安の腕章って脅しになってたんだな……」

ご案内:「商店街」に空閑 栞さんが現れました。
朱堂 緑 > 「つーか、なんでビビった上でかかってくるんだよ、わっかんねぇな……
そのまま引っ込めよ。空気読めよ。
……あ、口きれてら」
血の混じった唾を吐き捨てながら、そのへんのベンチに腰掛けて休む。
財布の中身は最近とられてもいいように必要最低限しかいれていないので損害は少ない。
少ないだけでダメージは着実に蓄積していると思うと切ない。

ご案内:「商店街」に来島宗仁さんが現れました。
空閑 栞 > 「買い物買い物……あいたた……」

ぎこちなく商店街の裏通りを歩く。
すると近くに血の混じった唾を吐いた男性を見つける。
何かあったのだろうか、心配になり声をかけた。

「えーっと、怪我をしてるみたいですけど……大丈夫ですか?」

来島宗仁 > 「――さいこの奴、まーた落第街とか行ってるんじゃねぇだろうな」

ぶつくさ言いながら、近道とばかりに商店街の路地裏へ。
そこで見かけたのは――

けが人か。
落第街だけではなく、こんな場所でまで喧嘩やなんかが起こっているのか。世も末だ。

「おう、怪我人か?」

怪我をした男と、近づく少女に向かって

朱堂 緑 > 「あ?」
声をかけられ、男が振り向く。
真っ黒で光を反射しない、伽藍洞のような瞳を持った不気味な男である。
しかし、ズタボロなので威圧感などはあまりない。
「あ、あー、平気平気。慣れてっから。
それよりこのへん女生徒がいると危ないぜ」

朱堂 緑 > 「ん?」
続けて現れた男にも一瞥を寄越し、首を振る。
「いいや。ちょっとボコられただけで怪我らしい怪我はしてないぜ」
実際慣れっこなのでこれくらいは怪我の内に入らない。
昔の仕事から考えても、動けるのだから大した傷ではない。

空閑 栞 > 「ご心配ありがとうございます。でも自衛くらいはできるので大丈夫ですよ」

ズタボロの人に危ないと言われると説得力があるなぁと失礼なことを考えた。
しかし、この辺りなら不良と言っても落第街での件よりはマシだろう。
全身が痛いとはいえ、もう普通に歩く程度なら問題ない。
それゆえにこの辺りを歩いていたのだった。

「それよりも結構ボロボロに見えますけど本当に大丈夫なんです?」
「よかったらこれを……」

心配そうにポケットからハンカチを取り出して差し出した。

来島宗仁 > 「アホ。ボコられたら普通怪我人って言うんだよ
ほら、こちとら医者だ、見せてみろ」

ずかずかと近寄ると、白衣の中を漁る。
消毒薬、絆創膏、適当な治療道具は揃ってる。

「……ん? お前、どっかで……」

来島は一応、公安委員会協力者だ。
普段あまり表に出る事の出来ない公安委員の怪我の治療などを請け負っている。もっとも例の事件以降、疎遠になっているが。
さて、目の前の男は――どうだったか。

朱堂 緑 > 左手を突きだし、首を左右に振って遠慮する。
男には不釣り合いな純銀の指輪が、中指にはめられていた。
 
「御厚意はありがたいが、大丈夫だ。しまっとけよ。汚れる」
 
そういって、薄笑いを浮かべる。
その長身や雰囲気と相俟って不気味な笑みだが、やっぱりズタボロなのであまり威圧感がない。
 
そんな風に女生徒に断ってもズカズカ寄ってくる医者にも、同じように首を横に振る。

「いや、ほんと大丈夫だって……そもそも、医者だってんなら掛かる金もねぇよ」
 
先ほど根こそぎ現金はやられたばっかりである。
 
「あ? 俺の顔になんかついてんのか?」
 
なお、男は元々が調査部別室。
ようするに暗部なので恐らく普通の医者にかかったことはない。
そもそも、元調査部なので怪我の機会そのものもほとんどないのだ。
いや、なかった、というのが今は正確だろう。

来島宗仁 > まぁ、気のせいか。
公安に居た連中にどことなく雰囲気が似てるが、そもそも公安だったらこんな路地裏でボコられてるわけが無い。

が、この男に金が無いとか言うのは逆効果である。
生来のおせっかい焼き、しかもあらゆる人間を助けようとする超のつくお人よしである。

「ならなおさらダメじゃねぇか。お前生徒だろ、俺は保険医だ、大人しく治療させろったく」

こういう所でこの男は容赦しない。

「おい、ちょっと手伝ってくれ。
こいつ治療しちまうから。逃げないように抑えといてくれ」

そこに居ただけの栞にまでとんでもない注文をつける。

空閑 栞 > 「ハンカチくらいなら何枚もありますし、気にしなくてもいいんですよ?」

指輪をチラと見るも、綺麗な指輪だな以上の感想は出てこなかった。
ハンカチを手に持ったまま、頬を掻く。
ズタボロの人を見て放っておくのは嫌だが、遠慮されたのに無理やりというのはしょうに合わない。

「え、あ、はい」

もう1人の男性に押さえてくれと言われ、コートの男性を押さえようと近づいていった。