2015/07/24 のログ
ご案内:「常世公園」に桐竹 琴乃さんが現れました。
■桐竹 琴乃 > 「♪~」
口笛を吹きながら夜の公園を歩く。
バイトの給料も入り、やっとこ、生活がまともになりそうだった。
何より必死のバイトにより。
「ふふふふー」
痩せたのだ。
以前にむに、とお腹を引っ張られたあの屈辱は忘れていない。
忘れて、いなかったのだ。
と言う訳で適当に趣味でしている夜歩きであるが遠出はする気も無く、公園をふらっとしている程度である。
最近わかったが公園も中々捨てたものでは無かった。
風が辺り揺れる木々の音など、中々聞いてて悪いものじゃない。
ゆっくり、ゆっくり、公園内を歩く。
■桐竹 琴乃 > 自販機で買った炭酸飲料を適当に飲みながらふらふらと歩く。
夜は涼しいので歩きやすい。
「んー。やっぱいいなー」
結局夜歩きとは何がしたいかと言えば、単に普通はしない事、しては行けないと言われる事をしているというそういった何かそういうのだ。
多分。
親の元に居たころからそうしていたクセが治っていない。
……そのクセも異能が発現してからの事であるけれど。
「……」
その頃思い出して微妙な顔になる。
いい、思い出では無い。
さっさと押し込もう。
「そう、給料入ったしー」
独り言が多いのは、単に誤魔化しているだけで、わざとテンションを上げようとしている。
そんな行為。
ふらふらと。
ただ公園を適当に歩いている。
人通りも余りなく、その行為はそこそこ目立っていた。
ご案内:「常世公園」に湖城惣一さんが現れました。
■桐竹 琴乃 > ふらふらと歩いて、目につき見上げた。
気が向いた。
つい、と見上げるのはこの公園で一番大きな木。
「……へへ」
軽く笑う。
トントン、と靴で地面を叩く。
ONにする感覚。
後は踏み出すだけ。
トン、トンと。
何も無い所を階段で昇るように。
彼女は空を駈ける。
やがて適当な腰掛けれる枝を見つけ。
その場所に陣取った。
■湖城惣一 > 「………………」
道端、もとい公園。琴乃の見下ろす先に不審者が倒れていた。
指先にはダイイングメッセージ。「じはんき」。
巷を騒がせている幽霊自販機のことかもしれないし、
或いはあの魔の自販機に類する何かがあったかもしれない。
少なくとも今この場に死体、失敬、行き倒れの不審者が倒れこんでいることはまちがいなかった。
主に水分不足と貧血、空腹。その他諸々。
それなりにピンチな身の上である。
■桐竹 琴乃 > そこそこにいい眺めだ。
公園全体を見下ろすことぐらいは出来るほどに。
そこでふと見つけるのは―――。
「んー……?」
見知ったような。
「んんー……?」
っていうか大体よく見るような。
「んんんー……!?」
っていうか倒れてるような。
「ええー……」
目尻を少しだけ抑える。
一度だけ目を閉じ、息を整える。
開ける。
「ええー……」
やっぱり倒れてた。
トン、と空を蹴り、トン、トンと階段を駆け下りる様に。
幹から空へ。空から彼の倒れる位置へと。
そして少しだけ観察して。
多分色々で倒れてるんだろう。
「コジョー……大丈夫?」
声を掛けた。
■湖城惣一 > 「…………じは……んき……」
一体全体、ただの自販機が彼をどのように追い詰めたのか。
やや白目を剥いた瞳は、普段の三割増しの破壊力で目つきを悪くさせている。
わずかに身動ぎすると、泥と血にまみれた無残なおにぎり。
流石にこれは食べたら危険なやつである。
ついでに言うと、ラベルのない謎の空き缶が転がっていた。
中身は空だ。
顔面は蒼白であり、少女漫画に似合いそうな青いエフェクトをまとっている。
■桐竹 琴乃 > 「また……自販機か……」
渋い顔をする。
前のあれの事なのか。
それとも、今噂になっている【どこにでも現れ、よく分からない飲料を売っている】奴なのか。
わからないが。
とりあえず手元には。
飲み差しの炭酸飲料しかない。
当たり前だ。
こちら適当に夜歩きする為に手ぶらで出てきているのだから。
しょうがないのでコトリとその飲み差しを足元に置く。
「とりあえず、飲む?もしくはゆすぐ?」
そう言う。
■湖城惣一 > 「…………かたじけない」
震える手で缶を掴んだ。今までで一番弱っているような気がした。
震える小鳥。或いは雨に打たれた子犬。
ゆっくりと手を伸ばしてプルタブを開け(たつもりの動作の後)、倒れ伏したままに缶を傾ける。
なかなか流れ込んでこない。飲みさしだから当たり前なのだが。
大きく傾けてなんとかそれを飲むと、少しずつ起き上がり。
「…………ん?」
残量を確認。飲んだ量と残った量。
明らかに釣り合いが取れていないことに気づき、
「…………………」
目頭を抑えて俯いた。
■桐竹 琴乃 > 「どう?マシになった?」
足元に転がるラベルの無い空き缶をけん、と蹴っ飛ばす。
ポケットに両手を突っ込む。
「……何してんの?」
突然俯いた湖城へとジト目で言う。
倒れていたせいか知らないが頭でも打ったのだろうか?
そう本気で思っている。
「ま、いいや大方後お腹減ってるんでしょ」
待ってて、何か買ってくる、と続けて。
ONにしたままであった故に。
トントンと地面を蹴り、空へ踏み出す。
空を駈け、最寄りのコンビニまでの道を最短で真っ直ぐ進み始めた。
少しすれば食べ物やらを買って戻ってくるだろう。
■湖城惣一 > 「…………む」
なにか言う間もなく彼女がコンビニを往復する。
初めて見たが、あれが彼女の異能か。
身のこなしから移動系の異能だと推察していたが、
改めてそれを実感した。
とはいえ、問題はこの飲みかけの缶ジュースである。
彼女が帰ってくるまでの間に、ひとまずベンチまで移動して、
「これは……もしや、飲みかけだっただろうか」
迎えるなり、ふとたずねてみた。
■桐竹 琴乃 > 「ただいま、っと」
適当にコンビニの包みを抱えてまた空から戻ってくる。
そして言われるのは「のみさしであったか」、と。
そこで彼女は瞬時にふと考える。
多分、真面目に言えば、面倒くさい事になるだろう、と。
「うにゃ、零しただけ」
ちょっとドジしてさー、と。
そうなるとまたこちらも妙に意識してしまったりもする。
湖城とかこれぐらいの距離がいい。
いい、はずだ。
「で、とりあえずこれ、肉とか」
中にはから揚げやら水やら。
とりあえず目についたのを適当に買ったようである。
その包みをベンチに置くだろう。
■湖城惣一 > 「そうか」
言われれば、すぐに納得。
単純というよりは、彼女に対する信頼が篤いのであった。
保証がついたならば、特に気にせず残った僅かな量を飲み干して。
「ありがたい。……いや、危うく三途を渡るところであった」
相手の広げる食事。あまり遠慮はせずに、軽く目礼する。
いずれこの礼もせねばならんか、などと顎を撫でた。
「そういえば、先ほどの。あれが君の異能か」
空を疾走る。初めて見たその様を、改めて口に出した。
■桐竹 琴乃 > 「……あれっ」
その反応を見て。
んんーと考える。
彼と会った時を全て思い浮かべる。
そういえば、使った覚えが全くない。
あの時ですら、使わなかったのだ。
「知らなかったっけ」
よっと、横に座る。
この距離感にも慣れたものだ。
「そ、あれが私の【異能】」
コンビニ袋から新しい飲料を取り出して封を開ける。
「空を駈ける能力。それが私の」
何でもない事、と言う様に。
片方の手はポケットにまた戻して、ぐい、と一口煽る。
「ま、あんまし使わないけどね」
授業を遅刻しそうになったりしたら速攻で使うが。
■湖城惣一 > 「ああ」
一度目を閉じてからひとまず頷いて。
顎を撫でる手を離してから、座る彼女に向き直る。
知らなかった。推測まではしていたが、鮮やかなものだ。
思えばあの足を引きずっていた様も、
能力を酷使しすぎた代償なのかもしれないとアテをつける。
相手の距離も、今はもはやそれほど気にはしていない。
はじめの頃など、4歩か3歩の距離を残して開けていたものだが。
しかし、さて。
「君らしい、というべきか」
空を駆ける異能。
それは自由であろうとする彼女の様に沿うもののようにも、
「……どうだろうな」
そうでないようにも映った。
珍しく歯切れの悪い言葉を残して、ふむ、ともう一度顎を撫でた。
■桐竹 琴乃 > 「私らしい―――ね」
どうかな、と言う顔。
「ただまあ何ていうかな」
くい、とまた一口。
今までこの【異能】が発現してからあった事を思い出す。
目を細める。
湖城からは、深夜路地裏で夜歩きをしていたあの時の雰囲気に似ている、そう感じれるだろうか。
「一回も私らしいとは、思ったことは無かったなあ」
あはは、と乾いた笑い。
「いや、便利だけどさ」
それは事実。
まぎれも無く事実であり。
「でもさ、別に」
どこかつまらなさそうに。
どうでもよさそうに。
「無くても、いいよね」
それは軽口。
はたしてそれは軽口であったのか。
ただ琴乃より出た口調は軽い。
■湖城惣一 > 「ああ」
無くてもいい、という言葉にはあっさりと同意する。
男に執着はない。力に対して、異能に対して。
「確かに。異能があろうとなかろうと君は君だ」
空になった缶をベンチに置きながら、淡々と、無表情に。
かつての彼女の雰囲気をわずかに感じ取りながらも。
「ああ、だが」
ふむ、と唸る。言葉を選ぶ。
こと、やはり会話という一点において男は相手を不快にさせやすい。
琴乃の気配の変化。それ自体は理解している。
だからこそ少しだけ考えこんで。
「俺は君に会えてよかったとは思う」
異能が無ければ、こうして顔を突き合わせることもなかっただろう。
そんな言葉が足らずに、ただ必要だと思った言葉だけ。
淡々と、無表情に。いつも通り相手の目を見ながら。
この数ヶ月の間に、湖城惣一という人間が動き出したように。
そのキッカケは紛れも無く、琴乃を含めた人々との出会いなのだから。
■桐竹 琴乃 > 「はは」
笑う。
その笑い方はどこか―――。
遠い笑い方で。
「ありがと」
すい、と流すような調子。
「そーだね。無くても私は私か」
復唱する。
湖城は強いなあ。
今出た感情は―――それだけだ。
無ければ、確かにここでの出会いは無かった。
ここに居る事も無かった。
彼に会う事も無かった。
それは不幸だったのか?
幸運であったのか?
まだわからない。
ただただ。
湖城ほどに。
琴乃は強くは無い。
無くてもいい力。
否。
【はっきりと無ければ良かったと考えた力】
と面と向かう勇気がまだ、無い。
あるから使っているだけだ。
理解を深めようともせずに。
・・
「うん、湖城は流石だね」
そう言って立ち上がって伸びをした。
■湖城惣一 > 「――――」
変わる気配。その転調に湖城惣一という男は口を噤んだ。
名前を呼ばれ、どこか違う言葉に聞こえたそれ。
だが、それを指摘するべきか、迷う。
褒められたにもかかわらず、どこかそれは違うような――。
分からない。分からないからこそ口を噤むのだ。
おそらく彼女の気持ちは、湖城にとって理解のできないものだ。
想像すらできないものだ。
彼女は己から視線を外した。
いつものように。だがいつもとは違った様子で。
どうするべきか。どう言葉を紡ぐべきかも分からない。
自分を否定することも。
自分を肯定することも。
これまで、誰かとのやりとりで"ダメだ"と分かったことだ。
寡黙に。ただ、深く。どう言葉を紡ぐべきかを思考した。
■桐竹 琴乃 > そう―――。
常に己と対話してきた。
ワカ
【強いもの】には理解らない。
これが琴乃の。
【弱者の思考】。
当然彼にも。
苦労はあるだろう。
それは琴乃には理解しえない。
それはそうだ。
己は己。
他人は他人。
冷めた思考はただただ。
彼と己を別世界の住人へと。
今はっきりと隔離した。
口を噤んだ湖城を少しだけ見る。
今―――私はどんな顔をしているのか。
想像できるのは。
バカみたいに冷めた目つきをした。
多分、【異能】が発現して数か月ぐらいの私の目。
何もかもがバカらしいなんて思っていた頃の目。
湖城に会うよりずっと前の。
本土に居た頃の目。
この【異能】のせいで、居場所を追われた頃のワタシ。
・・
「―――あぁ、ごめんね湖城」
つい、とまた目を逸らして空を見上げる。
「八つ当たりしたね」
あはは、と嗤った。
■湖城惣一 > 「君は」
身体を傾けようとして、悟る。
"間合いが変わった"。剣術を収め、ただそれだけに生きた彼は、その明確な変化を知る。
四歩、いや五歩以上――。
かつて彼女と出会ったあの時よりも離れた距離。
その彼岸こそが適切な距離だと、湖城惣一の神経が告げている。
間違いない。今のこの距離は、適切ではない。
まるで敵対する相手のような、そんな距離こそがふさわしく。
「八当たり? いや、構わない」
だが。それでもなお。下がらぬと決めた。
何故か。それは。
――どこからが友達で。どこまでが知人なのか。それすらも不明である故に。
かつて、友だと言ってくれた彼女のために。
何が変わろうとも、目の前の彼女は、己が友だと思った相手に相違ない。
「君と話すことが俺は好きだからな」
だから。どのようなことに言われようとも横に立とうと、そう思った。
■桐竹 琴乃 > ―――。
「そっかぁワタシと話すのが……好きかあ。はは、あははははははは!」
顔を空に向けたまま、一際大きな声で。
夜など関係ない。
本当におかしい事のように嗤う。
違う。
湖城が好きなのは。
何時もの私。
今のワタシじゃぁない。
違う。
違う。
違う。
絶対に。
違う。
「ふふふ、あは」
顔に手を当てる。
まだ嗤いが収まらない。
可笑しくない。
だがもう嗤うしかない。
今のワタシならわかる。
「ねえ、わかるよね」
・・・
彼がこちらへ踏み込もうとしているのが。
「その先はさ」
一歩、遠ざかる。
・・・・
「ワタシ達の距離じゃぁないから」
ごめんね。
もう一歩。
さらにもう二歩。
離れる。
■湖城惣一 > 「…………君は」
笑っている。笑っている。
どうしようもなく。いつもと違うように。
だがそれは果たして異常ということなのだろうか。
湖城惣一は、人の心というものが理解できない。
見えず、掴めず、察することすらできはしない。
君らしくない、なんてことが言えるわけはない。
だから先ほどだって言葉を濁した。
湖城惣一という男は、本質的に相手を理解し得るわけではない。
「そうか」
かつての彼女を思う。
落第街でどこか遠くを見ていた彼女。
無理をしてなおあの落第街を闊歩し、
時に友人のために激昂していた彼女を思い返す。
一歩、一歩と遠ざかる女。
一歩、一歩と踏み込む男。
「それも君か」
それは蛮勇だ。人の心を解さない故に。
距離を測ってなお、離さずに。
「……俺は、湖城惣一。公安、風紀に所属する嘱託委員。齢は十八、趣味は……特に無い。
山陰の生まれで、父母と姉、弟が一人」
取り留めもない自己紹介。ただ、それを淡々と告げる。
「君は?」
だって、目の前の彼女については何も知らない。
お互いのことは何も話さない。その必要もないからだ。
問われることだけを答えたし、こちらからも尋ねたことなどなかったのだ。
だから。まるで初対面のように告げた。
■桐竹 琴乃 > ぴた、と歩くのを止める。
そう。
ワタシとも話してくれるんだ?
湖城惣一と名乗った彼。
じゃぁ。
ワタシも名乗らないと。
「ワタシは桐竹琴乃。名前でも名字でもお好きに。十七。一人っ子。元々本土の東京にいて、この【要らない】ものを抱えてここに来てるよ」
胸に手を当てて初対面にちゃんと自己紹介をするように。
・
そこで初めてしっかり彼と面と向かった。
・・ ・
「初めまして惣一。キミはホントに強いね私が知ってる通り」
ポケットに再度手を突っ込み。
ただただ冷めた目つきで彼を見た。
■湖城惣一 > 「そうか」
面と向かい。視線を交わし合い。ただじっと正面から見据えるようにして。
「初めまして、桐竹琴乃」
ざり、と。距離を寄せたまま、線を作った。それはまるで境界線だ。
相手が立ち止まったならば、ここが"そう"だ。
向かって三歩。この距離こそが。
「この距離から始めよう」
きっと、自分と"彼女"にとっての"初めまして"の場所だから。
正面切って相手の瞳を受け止めて。決して惑いはしない。
「俺は、強いわけじゃない。ただ、鈍感なだけだ」
最近覚えた単語の一つ。いわゆる人の心を理解せぬ莫迦をこういうらしい。
鈍感。そう表現するのもおこがましいほどだったが。
「ならば、君は弱いのか? 桐竹」
つなげる、という行為こそ。
会話にとっては必要なことだと人づてに聞いた。
だからただ返す。強いという言葉こそが、彼女の最初の言葉なのだから。
■桐竹 琴乃 > 三歩。
それはワタシも許容する距離。
「反吐が出るぐらい」
それは即答。
冷やかな目は更にドス黒くなる。
「この【異能】が発現して怯えて、周りからヘンな目で見られて居場所がなくなって」
ぶつぶつと。
「それで部活辞めて、グレてバカみたいな事をして」
トントン、と地面を叩く。
「挙句逃げる様にここに来て」
ギリ、と彼にまで聞こえるほどの歯軋り。
「でさあ」
はあ、と息を吐く。
「それに逃げたまま、ただこうぐだぐだしてるのがサイッコーに」
押しとどめていた感情の吐露。
考えまいとしていた考えと自分への怨嗟。
「サイッコーに反吐が出る。ワタシって何してんの?バカじゃないかな。はは」
自嘲。
「だから弱いし嫌いだ」
己が。
赦せない。
■湖城惣一 > 「なるほど」
――何一つ、理解できる要素がない。
彼は【異能】を持って生まれたわけではない。
途中から発現したわけではない。
生来誰かに関心を持つことが極端に少なくて。
異常として恐れられたことも理解できていなかった。
仕事も途中で辞める必要性を感じずに。ただただ自動的に仕事を進めてきた。
ここに来たのもただの仕事の依頼。
結局のところ、彼が己の意志で成し遂げてきたことなど何一つとして存在しない。
つまり。湖城惣一と、桐竹琴乃は。互いに寄り添える心の接点など存在しない。
だが。
「君は逃げてきたのか」
ただそれだけを理解した。
ただ相手の在り方を受け止めた。
「俺は君の苦悩は分からない。
俺はただ、当然のように生きてきたからだ」
剣を極めるために剣を極め。その果てに腹を切り。
その結末として、退魔があった。
「君のように悩むことも、君のように逃げることも、君のように立ち向かうことを考えることすら。無かった」
それは強い生き方なのか。そんなものは湖城惣一には分からない。
「だから、俺には逃げる者の気持ちは理解できないのだろう」
まっすぐに、ただまっすぐに。
湖城惣一という男は、相手を見つめることしかできはしない。
「君は。…………どうなりたいんだ?」
だから、問うしかない。
■桐竹 琴乃 > 逃げてきた。
言われてまた自嘲の笑みを浮かべた。
そうだ。
その通りだ。
【異能】がある事が【当たり前】のこの学園に。
・・・ ・
ワタシは逃げて私になった。
「―――そうだよ。ワタシはここに逃げてきた」
そうだ。
そして彼が。
ワタシの気持ちなんてこれっぽっちもわかるはずがない。
当然だ。
惣一はワタシじゃぁない。
わかる訳がない。
・・
「それに答える前にじゃぁ惣一。教えてよ」
先ほどよりは静かな、落ち着いた声。
嘘だ。
答えなんて―――。
「なんでそんなに強いのか」
聞かなくても。
絶対に。
間違いなく。
ワカ
理解らない事を問うた。
■湖城惣一 > 「…………」
何故、強いのか。それは肉体的な話ではないのだ。
己が鈍感と呼ぶその無神経さ。
あらゆる他者に関心を向けずにいたこと。
きっとそれが彼女の言う"強さ"なのだろう。
「きっと」
だが。だからこそ。本当のことを言わねばならない。
誰よりも彼を見続けてきた人間(はは)の、その評価。
「俺が孤独であったからだろう」
湖城惣一という男は、生涯孤独の男である。
「俺は何もかも興味がなかった。
剣を振ることすら、ただそうするべきだと感じたから続けていたにすぎない」
無関心。無感情。無表情。
己の命に頓着せず、他者の有り様にも頓着しなかった。
それが人並みの倫理観を手に入れただけ。
理由もなく人を傷つけることは悪いことだし、女性に触れることも悪いことだ。
そんな認識を抱えながらも、
詰まるところ男にはそれ以上の興味などなかったのだ。
だからきっと。
「君は、孤独でなかった故に。或いは孤独でいたくなかったが故に逃げたのだろう」
何の接点も持たない湖城惣一と。
何の接点も持たない桐竹琴乃と。
何一つ理解できないというのなら。
きっと結論すら真逆なのだと。
「それが理由だ、桐竹琴乃」
■桐竹 琴乃 > 「ああ―――」
視線を足元に落とす。
掛け値無しだ。
それは。
紛れもない。
桐竹琴乃の。
「はは」
乾いた笑い。
その場にぺたりと座り込む。
「あ、は」
ぽろ。
ぽろと。
「あは、は」
脚に小さな雫。
その通りだ。
「その通りだよ」
湖城惣一は。
誰よりも。
ワタシより私を理解してた。
―――してくれた。
「ワタシは……私は。孤独になるのが嫌。独りになるのが」
思い出すのは【力】が発現してからの。
部活の皆の顔と態度。
嫌だ。
もうあんなのは嫌なんだ。
溢れ出る涙は止まらない。
「嫌、なの」
ただ、その場で声を殺して泣く事しかもう出来なかった―――。
■湖城惣一 > 一歩。二歩。三歩。
向かって三歩。その距離で、湖城惣一は座り込む。
男は、どこまでが知人で、どこからが友達なのかが分からない。
だから、まるで相手に合わせるようにして、ただ座る。
涙を浮かべ、涙を流し。ただ声を殺す少女を見つめながら。
「俺はこの距離だ、桐竹」
この距離から近づくことはしない。
この距離から離れることもしない。
「初めましてというべきか。それともまた会ったというべきか」
いくら言葉を尽くしても、相手を理解できているか、
理解されているかなんて分かりはしない。
「君は君だ」
あるがままの友を受け入れるだけ。
友と呼んでくれた君を信じるだけ。
「君が俺を呼ぶなら、俺はここまでやってくる」
「この距離だ。この三歩の距離は、俺と君との距離だ」
これから近づくかどうかはわからないけれど。
きっとこれから離れることだけはないだろう。
拒絶され、絶交されたら、なんてことを考える余裕もない。
だから、告げる。
「俺は湖城惣一。君の友だ」
■桐竹 琴乃 > 「ワタ……私」
あふれる感情は止まりそうも無い。
抑えるのは限界だった。
三歩。
湖城の提示した距離。
その距離をあっさりと琴乃は。
零にする。
ずるずると地面を擦り、近づいて。
抱き付いた。
顔を胸に押し付け。
見えないように。
音が出ないように。
「ちょっとだけ、胸、貸して」
そして琴乃は。
ただ其処で泣きじゃくった。
■湖城惣一 > 「…………ああ」
彼女が求めてきたならば、ここで拒否することこそ裏切りだ。
既にスイッチは切り替えた。
"普段"でも、"仕事"でもない、第三の。
決して動揺は表に出すまい。
湖城惣一という男は、ただここに在ると。
君が孤独でいたくないというのなら。
それに答えることが友の役目に違いない。
この島に来て、男は変わった。
動揺することすら多くなった。
それは確実に、湖城惣一という男から強さを奪う。
だがそれはつまり――この場の言葉に則るならば。
湖城惣一もまた、孤独でなくなったと言えるのだろう。
ただ、彼女の肩に手を据えて、己の存在をただ示した。
■桐竹 琴乃 > ―――しばらく。
落ち着くまで泣き腫らす。
泣けば泣くほどに。
冷めた感情は熱を持ち。
熱を持った感情は冷めて行き。
「……」
泣き止んだ後。
しばらく鼓動だけを聞いた。
次は。
■桐竹 琴乃 > 「―――ありがと。もういい」
そう言い、自分から離れ、すぐに彼から目を逸らすように離れる。
今の顔は見せれまい。
「やぁ……みっともないトコ見せたね」
あはは、と。
音は一緒なれど。
そこに乗る感情は。
どこかすっきりとしていた。
■湖城惣一 > 「…………む」
鼓動を聞くなら、早鐘のように打つそれが聞こえるだろう。
元々、湖城惣一という男は古風な価値観を持っている。
倫理観に彩られたそれとはいえ。
人間誰しも持ちうる感情を捨て切っているわけでもない。
「……なに。それを言うならば、俺など汗顔の至りだろう」
座ったまま。
おそらく冷め切ったであろう唐揚げに視線を移し。
ついで転がった空き缶に視線を移す。
無様を晒すことなどよくあることだ。
「だから、いつでもここに来い」
どこからどこまでが友達の距離かは分からない。
けれど、君が踏み込む分には"そう"なのだ。
小さく微笑って。ただ受け入れた。
■桐竹 琴乃 > くくっと笑う。
声は努めて冷静だ。
だがさっきの鼓動は。
「そうする」
顔は向けない。
今の顔は乙女のひみつの一つである。
彼所か親にすら見せては行けない。
墓にまで持っていく所存である。
「じゃぁちょっと今日のトコは帰るよ。そこのは私のオゴリ」
有難く食べるといい。
なんて言いながら。
トントン、と軽く靴で地面を蹴る。
それはONの合図。
「まあ。割り切れたワケじゃないけどすっきりしたよ」
空いた手は髪を弄りながら。
まだまだワタシと私の対話は続く。
どちらも己である故に。
・・・・
「ありがと。じゃ、またねソーイチ」
そう言って、彼女は空を駈け出すだろう。
■湖城惣一 > 「ああ、ありがたくもらおうか。また会おう――」
名前で呼ばれ。またひとつ、何かが変わったのだろうかと。
「また会おう、琴乃」
だから、折角なので、こちらもそう言って見送った。
微笑みを浮かべたままに、空を駆ける友を見送る。
見送った後、ようやく立ち上が、ろうとして。
「む」
血の気が引いている。
考えてみれば、"危険域"から飲み物を半分飲んだだけ。
圧倒的にパワーが足りていない。
ふらり、と倒れ込みながら。なんとか唐揚げに手を伸ばした。
――そんな、最後まで締まらない男の話。
湖城惣一という男は、倒れながらしばらく唐揚げを食べ続けているだろう。
■桐竹 琴乃 > 空を少しだけゆっくりと、進みながら後ろを向く。
流石にここからなら顔も見えまい。
でそのから揚げを食べる様子を見ながら。
「あいっかわらず」
あはは、と笑う。
それでいい。
そんなのでいい。
名前で呼ばれた事をはっきりと胸に刻んで。
今度こそ琴乃は尞へと空を走って行く。
ご案内:「常世公園」から湖城惣一さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から桐竹 琴乃さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に深雪さんが現れました。
■深雪 > 小さな虫の鳴き声だけが響く、静かな夜の公園。
銀の髪を揺らす少女は今日もまた、この場所を訪れていた。
「………………。」
いつものベンチの近くへ歩み寄り,周囲を軽く見回す。
いつもここに居る黒猫が、今日はどこにもいない。
狩りにでも行っているのか、それとも今日は集会なのか。
■深雪 > ここで初めて、少しだけ期待していた自分が居ることに気付いた。
野良猫などどこにでも、掃いて捨てるほど居る…取るに足らない生き物だ。
嘗ての自分であれば、気付かぬうちに踏み潰しているだろう。
そんな取るに足らない生き物がここに居ないことを、残念だと思っている自分が居る。
「………………。」
複雑な表情のままベンチへと腰を下ろす。
■深雪 > この時間になっても、気温は下がらない。
高い湿度も相まって、非常に寝苦しく、暑い夜だ。
ハンカチで汗をぬぐい,肩に下げた小さなショルダーバッグからペットボトルの飲み物を取り出した。
アイスレモンティー、以前ネコメドリカフェでも注文していた。
冷たい液体が喉を潤し,優しい甘さが口いっぱいに広がっていく。
■深雪 > ペットボトルの半分くらいを一気に飲んでしまえば、ふぅ、と小さく息を吐いた。
身体の内側から、冷えていくのを感じる。
そうすると汗ばんだ肌が不快に思えて、ポケットから取り出したハンカチで汗を拭う。
ポケットでスマホが、初期設定のままのアラーム音を慣らした。
■深雪 > スマホを取り出す…正直、使い方はあまり分かっていない。
教えてくれるような相手も居なかったし、そもそも教わろうという気が無かった。
登録されている友人の数も非常に少ない。
……いや、友人、という表現は正しくないだろう。
正しくは社交辞令的にアドレスを交換した,どこかの人間のアドレスが入っている。
顔も名前も知らないのに、アドレスを教えろと言う。
やり方が分からないと言えば、操作を代行してまでアドレスを交換してくれる。
人間というのは不思議なものだ。
ご案内:「常世公園」に嶋野陽子さんが現れました。
■嶋野陽子 > 昼間は図書館で相模原君と宿題
(+α)していたので、夕食後に常世公園までのジョ
ギングに出た陽子。往復でハーフマラソンより長いそ
の距離を、通常は40分前後で走る。
(この公園で、人と出会う事が多いわね)と思いなが
ら走っていると、前方に一人でベンチに座ってスマホ
を弄っている女性を発見する。
通常のジョギングコースだと、彼女の目の前を通過す
るので、驚かさないように少し速度を落とす。
■深雪 > ベンチに座る少女は、スマホを弄っている、というよりも、見つめていた。
特に集中している様子も無い、そして貴女が近付けば、少女はすぐにスマホを仕舞い、貴方の方へ視線を向ける。
「…………。」
そして、僅かに目を見開いた。純粋に驚きの色が少女の表情に浮かぶ。
だがすぐに、平静を取り戻して…少女は貴女を観察している。
■嶋野陽子 > ベンチの少女がスマホから
顔をあげると、陽子の方を見て一瞬驚き、しかしす
ぐに平静を取り戻して陽子を観察する様子に、陽子
は走るのをやめて、歩いて彼女の方に近付く。
彼女の2mほど手前で立ち止まると、その場にしゃが
みこみ、少女に対して、
「驚かせてしまったかしら?」と問いかける。
■深雪 > 人間なのだろうか、などと考えながら見つめていれば、巨大な女性は足を止めた。
そしてこちらへ歩み寄り、しゃがみ込んで問いかけてくる。
……驚かせてしまった?確かに異様だとは思ったが、どうして驚く必要があるのだろう。
「…いいえ、大丈夫よ。
ただ、貴女、随分と大きな身体なのね?」
2mは超えているだろうか
■嶋野陽子 > 『・・・いいえ、大丈夫よ』
と答えた少女の口調はしっかりしていて、視線にも
純粋な好奇心と、未知の何かしか見て取れない。
「大きい・・・そうね。今は218cmあります。見ての
通りの体格なので、体重は勘弁してくださいね。」
と答える陽子。
「夜のこの公園で、私と遭遇して驚かない人は珍しい
です。」とコメントする。
■深雪 > 「私も結構,背が高い方だと思うけれど…」
すっと立ち上がって、見上げてみる。
50cm近く違うととてつもない威圧感だ。
……とは言え、この銀の髪を靡かす少女が、気押されている様子は無い。
むしろ、どこか楽しげにすら見えるだろう。
「ふふふ、結構苦労してるのね。
まぁ、もし貴女が真っ直ぐこっちに向かって走ってきたら、慌てなくちゃならなかったでしょうけれど。」
この巨大な女性はちゃんとスピードを落とし、配慮をしてくれていた。
「……トレーニングでもしてたのかしら?」
■嶋野陽子 > 少女が立ち上がるのに合わせて
陽子も立ち上がる。170cm近くある彼女よりも、陽子
はさらに50cm近く背が高い。
『トレーニングでもしてたのかしら?』との問いには
女子寮からこの公園まで、ランニングで往復している
途中だと説明する陽子。
「申し遅れたけれど、私は保健課一年生の、嶋野陽子と
言います。よろしくお願いします。」と、遅まきながら
名乗る陽子。
■深雪 > 見上げていたが、何かに納得したかのように、小さく頷いて、
「女子寮…って、貴女、ここから何キロ離れてると思って?」
嘘を吐いているようには見えなかったが、現実的な距離ではないとも思った。
いや、それはあくまでも生身の人間には、という条件付きだが。
「私は深雪……貴女と同じ、1年生よ。
貴女は陽子ね……何があっても貴方の事だけは、絶対に忘れない自信があるわ。」
小さく肩を竦めて、苦笑を浮かべた。
■嶋野陽子 > 「寮からここまでは、大体片道11.5km
なので、往復するとハーフマラソンよりちょっと長く
なるわ、深雪さん。3日前にもここまで来たのですが、
その時はここで迷子を保護したので、帰りは電車に
なっちゃいました」と説明する陽子。
『絶対忘れない自信があるわ』との深雪の言葉には、
「誰かに変身の魔法をかけられて、普通サイズになっ
たりしなければ、そうでしょうね」と返す。
■深雪 > 「あっさり言うけれど、かなり長いわよね。
何のために走ってるのか知らないけれど、すごいわね…貴女。」
帰りが電車になったと聞けば、くすっと笑って、
「…貴方の身体じゃ、電車も狭そうね。」
「そうかもしれないわね…でも、そんなに良い体なのに、普通サイズになっちゃったら勿体ないわ。」
くすくすと楽しげに笑ってから…ふと、空を見上げて…
「…そろそろ帰らないと。
ごめんなさい、また会いましょう?」
そうとだけ言って、少女はその場を後にした…艶のある銀の髪を、靡かせて、
ご案内:「常世公園」から深雪さんが去りました。
■嶋野陽子 > いつの間にか、ずいぶんと
話し込んでいた。
「話し込んでしまって、済みません。また今度、お話
する機会があれば」と、去り行く深雪に話しかける陽子。
深雪の姿が見えなくなると、再び時速30キロ超の
快速で走り出す陽子。寮に戻ったらゆっくりと風呂
に浸かりたい気分だ。
ご案内:「常世公園」から嶋野陽子さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に服部ローニャさんが現れました。
■服部ローニャ > 夜。
空は真っ暗で星が敷き詰められているそんな快晴夜空。
言わば梟の時間とも言えるようなそれなりに遅い時間帯なのだが、
梟の少女は何故か体の調子が悪そうにふらふらとあるベンチに座り込んでホゥ、とため息をつく
体調が悪いならば異邦人街にある自宅に帰ればいいのだが、ここからだと遠い為列車を利用しなければならない。
今、あの揺れる列車に乗れば更に体調が悪くなるのは分かりきっている事なのだ
梟の少女は呟く。
「この辺りの木は小さいのう…」
この梟は何を望んでいるのかといえば、高くて大きくて落ち着ける止り木を探しているだけであった
■服部ローニャ > そもそも異邦人街の自宅(?)とも言える《セカイジュ》は梟の少女にとっては高すぎず、低すぎず、
鳥人達の心を掴みとるような構造をしている。
ただし、屋根はその《セカイジュ》頂上にある葉だけで、雨風はあまり凌げる構造ではないため、雨の時は他の場所に移ったりする鳥人が多いとか。
そしてこの梟の少女はもしもそんな事があれば家に帰れない為、
今のうちに隠れ家ならず隠れ木を探すと言った事をしている。
しかしこの梟の少女、眼は良くても土地勘が良い訳ではない為、学園区にあるような隠れた大木を探すような事は出来ない。
それならば土地勘が無くても眼が良いなら時計塔なり高い所から探せばいいだろ、と言われそうだが、少女曰く
「夜の街って眩しいじゃろ…」
街灯程度なら良いのだろうが、どうも建物の眩しさは苦手のようだ
■服部ローニャ > そういう事で暗さも明るさも丁度良くて、学園区辺りで自然に溢れてるような場所といえばここしか知らない。
梟の少女は視界を周りに投げる。
夜型なだけあって、周りは良く見える。見えるのだが……
「ここの領主は何をしておるのじゃ…」
周りを見てみれば、あまり手入れされていない、子供が入り込めば体半分はその草むらに入り込みそうな程に草が成長している。
「こういう所に生えておるのは…別に刈ってしまっても構わんのじゃろうか」
すっと立ち上がり、本日授業で使ったカッターナイフを構える。
■服部ローニャ > 昨日、イヴェットと訪れた《SHINOBI》の知識が眠っていた電気製品店を訪れた際に見た《カマイタチの術》。
使っていたのは風を起こす機械、《センプウキ》。
あの風に当たった時に感じたものは羽が抜けた痛みだけかと思いきや
、目の前でその惨事を見ただけあって術の構想は固まってきているようだ。
今、簡単に梟の少女が考えている事を言ってしまえば
【走りながら、周りにある草を全部刈り取る】
単純明快というより、物理である。
そこに忍術も忍法もない、ただのカマイタチがそこに存在する。
しかし、少女は梟の少女である。カマイタチではない
■服部ローニャ > 覚悟は決まったのか、ホゥと息を吐いてから駆け出す。
そこは梟の少女だけが感じ取れる時間、そしてカッターナイフといえど、少女の進行先を確保するぐらいの事は出来る。
進む、進んでいく。
行く先はひたすら前方へ。
変に進路を傾ければ後々刈っていない場所をしょうがなく斬る羽目になってしまう。
それだけを避ける為に自分の感覚を信じてひたすら前へ、前へ刈り取っていく
■服部ローニャ > 急に話は変わるが、車は急には止まれないという言葉がある。
そもそも常世島に車というものはあまり見かけない。どちらかといえばバイクの方が良く見かけるだろう。
車とバイク、どちらでもいいのだが、スピードを出す物は急には止まる事はできない。
急に止まる事が出来るのは未来予知が出来る人間のみ、梟の少女は―――
草むらの向こうにある木を視認出来ずに、衝突する
■服部ローニャ > 木に衝突した少女はそのまま仰向けに倒れ、そのまま気絶する。
梟の少女にとってこれは初めて地面で寝る事になる、言わば常世島に着て初めての体験であった。
※良い子は真似出来ないよね
ご案内:「常世公園」から服部ローニャさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に自販機さんが現れました。
■自販機 > (自販機が公園にあった。
しかし、デカイ。
今日はサイズが10mくらいはありそうで、ボタンからなにからなんまででかすぎるのだ。唯一お金を入れるところだけは普通サイズという匠の心憎い演出が光る)
「ドドドドドドドドドドドドドドド」
(音もおかしい。モノリスのような圧迫感があった)
ご案内:「常世公園」にコゼットさんが現れました。
■自販機 > (それどころかほかのものもおかしい。
滑り台は巨人が使うようなサイズだし、ジャングルジムはそり立つ壁でまいど弾かれるおっさんが登ってるような小高いものになっている。水のみ場のように思わせてジェットノズルのようなものが突き立っている。
公園というより異空間だった。
野生のカブトムシが木にいた。サイズは犬のようなサイズ。
今年の夏はでかいものが流行しているのだ。きっとそうだ)
■コゼット > 休憩時間に公園を歩く姿が一人。
今日も暑い日であるが、風が出てるのが唯一の救いだろうか。
しかし、やはり飲み物は欲しくなるようで。
何時もの公園を歩いている──筈だったのだが。
「…。…んん?」
常人には嫌でもそれを認識せざるを得ない風景。辺りをキョロキョロと見回す。
…何もかもおかしい。
■自販機 > (カブトムシが羽根を広げて逃げ出す。
最近流行のドローンのような威圧感である。ぶおおおおおんとすさまじい爆音を上げていく。
自販機が居た。
高さ10mというサイズであるためコゼットが前に来ればまさに見上げるような犯罪的なサイズ差である。
買うことは一応できるらしい。
お金をいれるところは普通サイズだし)
「ブウウウウウウウウウ」
■コゼット > あまりの暑さに頭がおかしくなった?いやいや、まだ意識ははっきりしている。
こんな場所がこの島にあったか?いやいや、私はいつもの公園に来た筈だ。方向音痴ではない。
…何者かの異能者仕業だろうか?
カブトムシの羽ばたく行為ですら、風が巻き起こる程だ。
自分が小さくなった……という訳でもないようだが。
そして今、目の前にはこれまた異常な大きさの自動販売機がある。
…が、投入口は普通のようだ。
「……。」
とはいえ、喉が渇いた事には変わりない。
コインを投入する前に何かないかと、陳列されている物を物色しようとする。
…しかし、ここから見えるのだろうか?
■自販機 > (よく子供が乗ってびよんびよん遊ぶ乗り物遊具があるのだが、普通の乗用車が乗っている。しかもご丁寧に鍵までついている。乗り回せということだろうか。しかしここは公園速度Freeは申し訳ないがNGである。
速度Freeが許されるのは走り屋と豆腐屋くらいである。)
「ドドドドドドドドドド」
(見えるわけが無い。ディスプレイの位置は遥か上の方。見ようと思ったらジャングルジムに登っていくしかない。
憎いことに投入口だけは普通の目線の高さにあるのでいれることはできるだろう。
商品が出てくる口は、やはりデカイ。ドラム缶サイズを想定しているようだ。
砂場があった。蜃気楼で遠近感が崩れている。不思議なことにエジプトか何かの遺跡のような建築物が垣間見えている。
砂遊びとかそういうレベルじゃない)
■コゼット > 「むむ…。」
上を見上げるが、大き過ぎてこの位置からでは見る事が出来ない。
流石に確認せずにお金を投入する訳にはいかない。
他の自販機を探そうかとも考えたが……かえって気になってしまう。
仕方がないので、今度は距離をおいてディスプレイを確認しようとする。
見覚えのあるラベルであるなら、遠くからでも確認は出来る筈だ。
■自販機 > (ディスプレイには何も無かった。仮にあったとしても黒い缶やボトルが並んでいるだけである。
異様な公園に異様な自販機。
猫が通り過ぎた。猫というより虎のようなサイズである。
う゛にゃあ゛あ゛あ゛ん!
声が太すぎる)
(自販機はひたすら立っている。
なにもかもでかい公園。でかくないのは強いて言うなら植物くらいなものだが、ついている虫は古代に生息していたようなサイズである。)
■コゼット > 「んんー…。」
なるほど、お楽しみという事らしい。
しかし取り出し口も馬鹿に大きい。購入したとして、ちゃんと飲めるのだろうか?
おまけに通り掛る生物全ても大きい。やっぱり異能者の仕業だろうか。
素直に離れた方が良さそうだが…やっぱり気になる自動販売機。
仕方が無い。こうゆう場合、飲める物は案外普通である場合も…あるかもしれない。
或いは少しの好奇心か。
自販機の傍に戻ると、コインを入れようと財布を取り出し、飲み物の代金を支払う為、硬貨を投入する。
「……ええと。」
購入ボタンは何処だ?
■自販機 > (ボタンは上の方にある。凹凸に足をかけていけば登れるかも。あるいは魔術で押せるかもしれない。
よくあるアクションゲームのギミックを彷彿とさせる。
のはいいがボタンのサイズも尋常ではない。まるでテレビのモニタのようだ。
異能者の仕業? いいや、もしかすると天狗かもしれない!)
「ブオオオオオオオオオオオオオオ」
(うるせぇ)
■コゼット > 目の高さには見当たらない…というか、ここは排出口だ。
やはり、あの高い所にあるらしい。
自動販売機に登るのはちょっと勘弁したい。──故に
「アイスボール!」
魔力で氷の球を生成し、ボタンらしき部分を狙ってぶつけようとする。それは真っ直ぐに飛んでいく。
これだけ大きいのだ。ちょっとやそっとでは壊れないだろう。
そもそも、魔術でボタンを押すなんて事がもう常識から外れているのだが。
魔術師は騒音になんて負けない。
■自販機 > (ベキィ!
と音がしてボタンがぽろりした。
なんということでしょう。あんなに大きくて威圧感のあったボタンはコゼット女史の手によって開放感溢れる以下略。
とにかく買えたらしい。
ガコンと音がして飲料が出てくる。ゴロンゴロンと大きな音を響かせて、出てきたのは案の定ドラム缶サイズの飲料。
『猫缶』なるもの。
製造はしねしね団。嫉妬は醜いぞ諸君!
容量は知らない。浴槽半分くらいはありそうで、フードファイターでもさじを投げるレベルである。プルタブがあるにはあるがバールのようなものを差し込んでこじ開けないと無理であろう。
というより、商品口から女性の腕力で出すのは難しそうなサイズである。重量にして数十kgはありそうである)
「………」
(自販機静かになった。やったぜ!)
■コゼット > 「うわっ…。」
やっちゃった。思ったより繊細だった。やはり力技は良くないらしい。
しかし購入は出来たようで、ガコンガコンと出てきたのは、相応の大きさだった。…少しの希望は無残にも打ち砕かれたのだ。
しかし問題は更にあった。
「んんん~…!」
念の為頑張ってみたが、重過ぎて取り出せない。
ラベルを覗き込むが、飲み物ではないのか?しかし揺らすと何かの液体はあるように感じる。
途方に暮れる。
騒音はなくなったが、無常にもセミの鳴き声だけが響く。余計に暑い。
■自販機 > (ここで腕力担当が出てきて華麗に手助けしてくれると、非常に都合がいいのだが、現実は非情である。
缶のサイズはドラム缶サイズ。取り出すにはコゼットは非力であった。
男子や腕力に覚えのあるものがいればよかったのに。
よかったのに。
よかったのに。)
「……」
(カラン。何故かサイズの変わらないただひとつのパネルが開くと何かが投じられた。
バールのようなもの。諸事情によりバールとは記述できないのだ。ようなもの。物理学者が愛用しているそれならば、冒涜的物理学を使いドラム缶をはじき出せるに違いないよ。嘘つかないよ。)
■コゼット > 後から出てきたバールのようなもの。恐らく、それで開けろという事なのだろう。
…が、そもそもまだ取り出せていない。取り出し口に入ったまま開けるなんてそんな事考える筈も無く。
覚えている魔術を工夫して何とか取り出せないかと考えたが難しそうである。自販機壊しそうだし。
と、いうか。
この大きさを取り出して蓋を開ける事が出来たとしても、どうやって飲む?
まさか抱えて飲む訳にもいかないし。
「うー……。」
自販機の前で立ち尽くすコゼット。
まずい、問題点ばかりが増えていく。
ご案内:「常世公園」に頸城 陸さんが現れました。
■自販機 > (逆に考えて自販機を壊せばいいのではないか。
何せどこかの教師は腹いせよろしくストレートをぶち込んでいたくらいである。魔術師が魔術で自販機をラスベガスまで吹き飛ばしても誰も文句を言わないのではないか。
飲めずに困っているコゼットを哀れに思ったのか取り出し口がトランスフォーム!! した。
取り出し口からゴロンゴロンと転がってくると、奇跡的にもコゼットの目の前で缶が自立してくれる。ご都合主義を極めたような展開である。
さあ飲め……飲め……というささやき声まで聞こえるかもしれない。
『猫缶』。
どのような作用かは不明である。)
■コゼット > 「! 缶が出てきた!?」
この自販機、なんでもアリなのだろうか。
そのものが異常とはいえそこは自動販売機。流石に器物損壊という考えはコゼットの頭には無かった。魔術放ったけど。
ともあれ、今目の前には購入した飲み物…缶は缶でもドラム缶がある。
「…猫缶。」
…人が飲むようなものではない気がするが。
コゼットの手には、先程落ちてきたバールのような何かが握られている。
■頸城 陸 > ふらり、暇つぶしに公園にきてみたはいいものの。
「……公園って、こんな場所だったっけ……」
呟いて、辺りの異様な風景を見回す。
目についたのは、異様な自販機。
「……何か、前も変な自販機にあった覚えがあるけど」
ため息を吐いて、自販機の方へと向かっていく。
■自販機 > (見よ、あのシーソーを。
攻城兵器カタパルトのような巨大なものである。
自販機はひたすら立っている。
新しい人物が登場したが、とにかく立っている。買ってくれればいいのだ。資本主義万歳。金万歳。)
「……」
(外見は、普通の自販機である。ディスプレイの中身が空だったりいろいろおかしいところがあるのだが。
サイズが異様にデカくて10mはあることもプラスでおかしい。
ようするに全ておかしい。不審極まりない装置であった。
『猫缶』。
猫が毛並みをもふもふしている一場面を切り取ったイラストが描かれている。かわいい。)
■コゼット > よし、意を決して開けてみようか…と思った時に人の気配。
振り返ると、私服を来た青年がこちらに向かってくる。彼も不運にも迷い込んでしまったというのか。
この自販機からは"普通"は期待出来ないというのに。
自販機の目の前で、ドラム缶に向かって、バールのような何かを構える、学園の教師。
異様である。
■頸城 陸 > 異様な公園を自販機の方へ歩き歩いて、視界に入ったのは一つの人影。
魔法使いの様な帽子を被ったその女性には見覚えがあった気がしたが……どうも思い出せない。
ただ、バールをドラム缶に向かって構える様な女性の知り合いは少年にはいなかった。
「あ、どうも……、何を、なされてるんですか?」
何をしているのか気になって、質問してみる。