2015/08/09 のログ
リビドー >  
「だが、人に物事を教える能力がある事は、現実だろう。
 キミには負い目となる側面があるのかもしれないし、其れを知れば
 『失望しました。シルト先生のファン辞めます。』と云う生徒も居るかもしれないな。
 それでも、……いや、この話は今度にしよう。失礼した。」

 振り絞った言葉と様相から、話題を切り上げるべき判断した。
 ふう、と、息を吐いて、二人を見た。

 少女は自分を持たざるものと云う。
 持つべきものとして誇るにはまだ、ピースが足りないのだと。

 青年は自分を優れているなど幻想だと云う。 
 自分のしている事を知れば、誰もが離れると。

「しかし、二人共似ているな。
 理想ではないと語り、謙虚な所とかそっくりだぜ。」 

シイン > 「ファンとはまた、妙な事を言うもので。
立派、あぁ、それでいいさ。そればかりは否定しないさ。」

目を細めながら声を低くして二人に伝える。
指導できる立場なのは誰もが出来る事ではない。
それが立派と言われれば、それだけは認めよう。
生き様は立派ではないが、一点においては立派と言えよう。


まるで演劇を終えた主役が一礼をしているかのような既視感を覚えながら、静歌へ横目を送り
似た者同士、その言葉に直ぐには何も言えなかった。
以前からソレは感じてたからだ。

「はてさて、どうでしょうか。
似ているというには失礼な気がしますが。」

四十万 静歌 > 「まぁ、確かに似てるところもあるかもしれませんね。」

不思議と、肯定をした。

「――いわれてみれば、確かに似ているといわれれば似ていますし。
 細かい事をいえば全く違いますけど。
 ふふ、シイン先生に失礼かもしれませんけど、ね。」

なんて微笑んで。

「――でも、それをいうなら――」

くすっと笑って、

「シイン先生とリビドー先生も似てますよね。」

なんていい始める。

リビドー > 「ほら、まただ。二人共相手に失礼だろうと語っている。
 細かく違う箇所を挙げればキリがないだろうが、ボクには兄妹にすら思えるぜ。」

 苦笑を浮かべて、ややオーバーなリアクションで肩を竦めてみせた。
 シインと自身、二人が似ていると聞けばふむ、と、唸り。

「ふむ。それには少々興味があるな。聞かせてくれるかい。」

シイン > "兄妹にすら思える"否定しきれない内容がまた一つ生まれた。
そんな私の言葉に合わせるようにして、失礼と言わなくてもいいだろう。
そして、無意識に苦笑を見せるのだった。
これもまた嫌ではないのだが、あぁ、ますます目的とは離れる。
この人達と居ると自分のペースは一生握れないのだと確信を持った。

似ているという言葉。
正直言えばリビドー同様に興味を惹かせる。
何処が似てるのかと単純に気になるからだ。

「私にも聞かせて欲しい、どうしてそう思ったのか。」

四十万 静歌 > 深呼吸をして静かに2人を見て――

「目と鼻と口がついています。
 というのは冗談ですが、
 2人ともちゃんと私という個人をみて、
 人を教え、
 そして――人に強い関心をもっている。」

ほら、似てる、と。

「――それは、私が持ちえていないもの、ですよ。」

リビドー >  
「ま、"先生"としての基礎技能だからな。
 人を見て、望みを嗅ぎ取り、言葉で教える。
 人間に置き換えれば、眼と鼻と口だ。そりゃ、似ているだろうな。」

 笑っていた。が、
 しかし、と区切り、静歌を見据えた。
 睨む程とまではいかないものの、鋭い目つきを向ける。

「だが、キミはそれを持っていないのかい?
 個人を見ず、人に伝える事はせず、人に関心を持っていない、と。」

 黒いにゃんこは何時の間にかいなくなっていた。

シイン > 「然り、それならば似てると言える。
人へ教え、道へと導き、言葉を持って伝えるのだから。
また生徒を生徒として一つに纏めず、個人個人を見て対話することも、先生としての基本。
私の場合はやり過ぎかもしれないが。」

リビドーと似たような言葉になってしまったが、致し方無い。
睨むリビドーとは対極的に優しい視線を向けた。

「はて、それはどうだろうか。
もし君が、個人を見てないのなら私と幾度と会話を交わした時すら見てないとなる。
私には、君が私自身をきちんと映してた瞳を見せてた、という認識だが。」

そんな問い掛け。

四十万 静歌 > 静かに瞳を閉じて

「――そうですね。
 確かに私は個人を見て、
 人に伝え、
 人に関心を持っているといえるかもしれません。
 ですが……」

少し深呼吸をして、じっと2人を見ながらいう。

「――手品と同じですよ。
 私にとってはあまりにも、
 欠けたピースが大きすぎるのです――」

と、それだけを告げる。

「まぁ、だからこそ、
 人のかかわりを誰よりも大切にしたいって思ってるんですけどね。」

とちょっと照れたように笑って。

リビドー >  
「それがキミの哲学か。全く、聖者にでもなるつもりかい。
 ――もう少しありのままの自分を、好きになっても良いかもしれないな。
 そうしないと、そのピースは埋まらないし、埋められない気もするよ。
 それに、弟が悲しむぜ。」

 そう言って、シインを見るだろうか。
 言葉とは裏腹に、"兄"として、キミの意見はどうだい、と言わんばかりに。

シイン > 何故そこで今、私の方へ見るのか。
兄から弟に変わったのは何故なのか。

聞きたいことに突っ込み事案は他にも沢山あるが、今は聞かず見逃しておく。
飾った言葉は不要だろう。

「ま、弟として発言するなら、私の姉にはもう少し素直になって欲しいものです。
可愛い自慢の姉ですから、えぇ。
ただ、弟の私では残念ながらピースとして不十分な様子。
だから私は、弟として姉の成長を見届け、欠けたモノを埋めれる要素を不十分ながらも、探しましょう。」

それだけ伝えて、珈琲を一口。
こんな大きい弟が居てたまるか、そんな自分に突っ込む。

四十万 静歌 > 「そこはシイン先生が兄だと思うんですけどね……!」

いや、だって、どう考えても、
未熟なのは私の方だし――
私のかかえてるものなんて、
私以外にとっては、本当に些細なものである。

「――まぁ、ええ。
 ……之でも十分素直で、というと嘘になりますね。
 まぁ、ですが……
 そんなに気張られると逆に恥ずかしいです。
 本当に、些細なものですから。」

そういって、ええ、本当に、些細な事なのですよ。
と、空を見上げる。

「――だから、聖者になるつもりはない、
 というか、それくらいで聖者だなんて、
 本当におこがましいのですよ。」

にっこり笑って。

「――ま、だから気にしないで下さい。
 シイン先生、ありがとうございます。」

リビドー >  
「ははっ、そりゃ、シインは兄だろう。」

 悪戯げににやりと笑い、手を叩く。
 何を言っているんだ?と言わんばかりに二人を観る顔は、まさに悪戯っ子のそれだろう。

「さて、どうだかな。
 ま、その辺りはまたの機会に話そうじゃないか。」

 ベンチから立ち上がり、二人から離れて歩き出す。
 一度振り向き、二人を見た。
 
「……さて、ボクは行くよ。退屈な一日で終えてしまうと思ったが、キミ達に会えた事は実に僥倖だった。
 おかげで良い一日で終える事が出来た。楽しかったぜ、また会おう。」

 ベンチから立ち上がり、二人から離れて歩き出す。
 そのまま、公園から立ち去るだろう。

四十万 静歌 > 「ムムム?
 良くわかりませんがわかりました。
 それでは、またお会いしましょうね、
 リビドー先生。」

ふんわりと笑って見送るだろうか。

ご案内:「常世公園」からリビドーさんが去りました。
シイン > 去って行くリビドーに手を軽く静かに振って別れの挨拶。
そして兄やら弟やら、どっちなんだと深い溜息。
からかっているのか、よく分からない。
理解に苦しむのはこれで三度目である。
本来の目的とも外れてしまった、思った以上に時間を取られた。

まだ残っている静歌に真っ直ぐと振り向き

「まぁ、兄だか弟だか、よく正直分からないが。
私は私で応援しているよ、礼の言葉は要らないな。」

四十万 静歌 > 「それならよかったです。
 あ、そうだ、シイン先生、忘れないうちに。
 ええっと。はい。これ。」

封筒を差し出した。

前回奢って貰った時のおつりである。

ちゃんと1円たりとて誤魔化してない……!

誘惑にかられたけど。

シイン > 「…別にそれは私が君に渡したお金だから、返さなくていいんだぞ?」

別に後で返せなど一言も言ってないのだから。

四十万 静歌 > 「ダメです、こういう事はきちっとしませんと。」

と、にっこり笑って。

「奢って貰った分で十分です、
 それ以上は……
 心の贅肉なんです。」

甘えすぎてはいけないと自分を戒めるように

シイン > 「ふむ…最近の子にしては、君は出来すぎだよ。」

正直、本当に出来過ぎている。
お金には困ってない故に別に渡しても全然良いのだが。

「そうだな、ならそれは珈琲代でどうかな?
この珈琲にはそれだけの価値がある、私がそう決めた。」

少し考えて、勝手ながら先に渡された缶珈琲を利用するのだ。

四十万 静歌 > 「……」

揺れる、揺れる、このお金、このお金があればっ!
生活がどれほど楽になるか!
だがッ――

「や、いえ、大丈夫……です……」

ぎりぎりと封筒を握る力が強くなるが差し出して。

「なんというか、そう……」

じっと上目遣いで見上げ。

「受け取ったらダメになる気が、しますッ……!」

切実だった。

シイン > 「……偶には駄目になっても罰に当たらないだろう?受け取りなさい」

なんとなく彼女の心が揺れている気がした。
というか、あと一歩で押せそうな気がしたのだ。
封筒を握る手が強くなってるのが証拠でもあるが、変に頑固なのが面倒か。

「ならあれだ、先日『あーん』をしただろう?それのお礼代。
もうなんでもいいから受け取れって。」

な?な?と。はんばヤケである。

四十万 静歌 > 「うわぁぁぁぁぁ」

あーんについていうと、今更になって恥ずかしくなったらしく、
真っ赤になってぎゅっと封筒を抱きしめて――

「う、にゅにゅにゅ……!
 あ、後で返せとかいわれても、
 返しませんよっ!」

なんていって、受け取るだろう。
とどめはあーんである。

シイン > 「何度も言うけど、お釣りは返してくれとか言ってないのだから
素直に受け取りなさい。それで好きな物でも買うといい。」

おやつなり、文房具なり、食料なり、なんでも。
真っ赤に顔を染めている彼女に平然としながら伝えた。
その日の自分の中で最高の笑みを見せて。

四十万 静歌 > 「ないてもあやまっても、もう返しませんからー、
 私のもーのーでーすー。」

臨時収入により、家計簿が黒字になりました。

「?」

そして、笑顔を浮かべているのに気づいて。

「今のシイン先生の笑顔、
 最高ですね。」

なんて笑うのである。

シイン > 「はいはい、判りましたよ、姉上。」

先に言われた"弟"やらの発言を未だに引き摺りながら、姉と呼ぶ。
なんとなく、感覚としてだが、この呼び方は嫌いではない。
そう感じたのだ。

"最高"と笑顔を褒められて、彼は続け様に

「私も自覚してるよ、いい笑顔を見せてるって。」

四十万 静歌 > 「姉上が定着してる!?」

思わぬ事態に思わず驚いて大声をあげる。
仕方ないじゃない、
まさかその言葉を使うなんておもってなかったもの。
しかも、聞きましたか奥様、
今、シイン先生いい笑顔みせてるって認めましたよ、
全くもう!

「むー、シイン先生にはかないませんね。」

でも――

「いつかは超えるべきなのでしょうね。
 きっと。」

と、淡く微笑むだろう

シイン > 「そう言ったら私は静歌。君には敵わないよ。
超えるべき者ではないが、敵わない。」

似た者同士。
それもあるのだろう、だが一番の理由は。

「…ところで静歌。君は帰らなくて大丈夫かい。
最近は物騒と聞くからな、帰れる間にさっさと寮に帰るといい」
[3d6→1+2+4=7]
四十万 静歌 > 「そんなかなわないことなんてあったでしょうか?
 ――あ。」

帰らなくてと聞かれて、
長く話し込んでいたことに気づく。

「そういえば、そうでしたね。
 そろそろ帰ったほうがいいでしょうか。
 まぁ、大丈夫ですよ。
 どうにかなります。」

なんて、にっこり微笑んで上目遣いに目を覗き込むだろう。

シイン > 「さて、それはどうかな、悪い狼に捕まる前に帰るといいよ。
君は可愛い子だ。狙われても可笑しくないぞ。」

その上目遣い。微笑み。それが似ていることだろうか。

四十万 静歌 > 「それもそうですね。」

なんて、背を向けて伸びをして。

「それじゃ、帰る事にしますね。
 悪い狼さんに捕まらないよう気をつけないといけませんね」

くすっと笑って。

「シイン先生も気をつけてくださいね?」

シイン > 「私は狼側だから、心配はいらないよ。」

そう、狼なのだ。直ぐに捕食せずに、檻に閉じ込めて成長をするのを待ってから
捕食を行う、そんな質の悪い狼。

笑顔が素敵な彼女の顔を汚そうと思えば、手を伸ばせば叶うだろう。
だが拒む。身体が拒む。何故。

四十万 静歌 > 「シイン先生が狼さんですか。
 ふふ、毒牙にかかってしまいそうですね。」

なんて笑って――
何か様子がおかしいことに気づいて近づいて、
額に手をあてようとするだろうか。

「――どうかされました?
 体の具合悪いんですか?」

シイン > 「いいや、具合は良好だよ。」

額に触れやすいように背を下げながら受け入れるだろう。
触れれば分かるだろうか、彼から温かさを感じないのが。

気分は優れてる。機器に何の問題もない。
そう、何も問題はないのだ。

「静歌、一つだけ聞いてもいいかな。」

額に手を当てられながら問い掛けた。

四十万 静歌 > 「そうなんですか?
 ええと、別に構いませんよ?
 聞きたいことって、何でしょう?」

熱はないですよねぇ。
ううん?何がおかしいんだろう、
気のせいかななんて首を傾げつつ……

シイン > 「もし、君の眼の前に居る者が、狼に変貌したらどうする?」
四十万 静歌 > そうですねぇ。と少し首を傾げ――

「怖い狼からは、逃げないといけませんね。」

と淡く微笑むだろう

シイン > 「それなら」

逃げてみせろ。

それが合図となった。
一度引き金が引かれるとなんと簡単な事か。
拒んでた身体は素直になったのだ。
やはりこうでなくてはならない。
私は結局は歯車狂った機械。
狂った機械は、狂った姿を見せながら、狂ったままに地へ堕ちながら、道連れをするのだ。

徐ろに、赤黒い軍服の懐に手を入れる。
手を引けば、一つの銃器が握られていた。
一般的に言えば"デザートイーグル"と呼ばれる銃器。
少しでも手を伸ばせば、彼女に届いてしまう距離で、それを取り出すのだ。

四十万 静歌 > 「シイン先生?」

――誰をミテイルノデスカ?

そう、はっきりと口に出す。
違和感が増幅される。

果たして、それは四十万静歌をみていたのか、
他の誰かを見ていたのか。

トランプが舞う、
違和感に満ちたトランプが。

言葉によって作られた隙、
トランプによって作られた視線の隙、

隙間を縫うように手品は作られてゆく。

種も仕掛けもございません。

後はとくとごろうじろ。

姿が、掻き消える。

まるで最初から存在しなかったかのように、
幻の如く消えうせる。

四十万 静歌 > ――実の所、種も仕掛けもある。

種は魔術だ。

――妖精の外套ともよばれる、姿を消すだけの魔術。

仕掛けは異能だ。

違和感をつけたものを囮に、

違和感を消して魔術をより完全に。

シイン > 「…なるほど」

何も持ってないだ?よくまぁ、そんな言葉が吐けたものだ。
先程まで、目の前に居た少女は忽然と消えたのだ。
普段手品手品と言っている応用編と言った所か。
異能だとしたら探知は役に立たない。
既に逃げられただろうか、さてどうしたものか。

腹いせに一発、自分の手の甲に銃口を向けて銃弾を放つ。
大きな銃声が周囲を響かせて、手の甲に大きな穴に、地面には白い人口血液が撒き散らされた。
最も数秒後には、大きな穴は塞がり再生されるのだが。

子羊は逃げたのだ、その現実は変わらない。
さて、寮の部屋をぶち壊しに行ってもいいがスマートでない。
答えは何処へ。

四十万 静歌 > ――そして、私はここにいる。

「(自己破滅願望に、
  いわゆる無理心中、ですか。)」

声を殺し、音を消し、

静かに動向を見守る。

思わず出そうになる声と感情は、
引きずられそうになる己の意識を逸らして対応する。

さて、どうしたものか。
距離さえとればメールで連絡する事もできるだろう。

かといって、助けを呼んでどうなるかもわからない
なら。闘うか――?

シイン > 「早かったか、もう少し間を置くべきだったか。」

どうせならば不意討ちで脚なり撃ち抜いた方が良かっただろう。
動けなくした方が楽なのだから。五体満足が一番だが、致し方無い部分もある。

まだ付近にいるかもしれない、何処かに隠れている可能性も無いとはいえない。
例えば建物の裏や木の影。先程此処に居たのは間違いないのだ。

「作製者に感謝しながら、久々に使うとしよう。」

熱画像計測装置、戦争時代に世話になった機能だ。
それに加えて聴覚機能を活用する。
生物は誰しも温度を持つ、生きている限りは逃れられない。
また逃げていれば足音も激しくなる、なんせ走るはずだからだ。

瞳の色は赤から瞬時に緑に切り替わり、相も変わらず見難い視界へと。
手には拳銃を持ちながら、周囲を見渡し始めた。

四十万 静歌 > 「――」

熱計測に、聴覚。
音は誤魔化せても熱は誤魔化せない。
実際に何をしているか分からないが、

――まぁ、しかし。
迷ってる暇がない事は確かだ。
手を伸ばしてシインに触れようとするだろう。

触れたなら、触れられている違和感を消し、
己の視界への違和感を、
そして――

「“そうですね。先生は狼ですね。”」

言葉に違和感をつけてそう呟く。
酷い違和感だ。

それに付け加えて先生が狼である事への違和感を叩き込む。

誘導し、霍乱し、困惑させる。

――己が導き出した答えに、どう対処する?

シイン > 「そうだな、私は狼だよ。」

彼は素直に、直ぐに眼の前に居たそれに反応せずに。
言葉が聞こえたと同時に、声が聞こえた先に拳銃を向けていた。
触れられたはずが、触れられてなかった、だが声は聞こえた。
無意識か、狙った者の声が聞こえた時の本能か。

違和感は違和感でしか無い。
答えが出てる前では飾りでしかない、否、その飾りが強力なのだが。
引き金は引かれる。声の方向だけで姿は見ずに、弾丸は放たれた。

数ある違和感は全てが全てと違和感として処理されず、最も違和感として強い触れられた熱の痕があるのにもかかわらず、触れられたと認識しない違和感が一番強かった。
それ故に、直ぐに決断が出来たというべきか。
他の違和感であれば手を数秒止めてたかもしれない。

四十万 静歌 > 銃弾にあたれば人は死ぬ。
無論、同じ場所にい続けるほど命知らずではない、
が、
所詮は人だ、人の反応速度でしかない。

「――ッ」

灼熱の痛みが肩へと奔る。
――まだだ。
後一つ。
聴覚への違和感を付与し、
そのまま弾ける様に
違和感をこめたボールを投擲、

ボールへと意識を向けさせ、

――サイレント。
沈黙の、否、
音を消失する魔術にて、

音を消して
そのまま肩を抑えながら池へと飛び込むだろう。

四十万 静歌 > 違和感は長くとも、30分前後。

――それまでに 巻いて、病院まで逃げ込む。

勝利条件としてはそれで十分。

シイン > 以前の授業でも紹介したその銃は、堂々と改造を施してあるとまで言った拳銃だ。
一発掠るだけでさえ致命傷なデザートイーグル。
それが更に強化を施されているのだ、当たればタダでは済まない。
明白な事項であるが。

着弾はしたのだろう、血液が地面へ付着しているが、ふと視界内に入ったボールを目で追う。
"また"だろう。それが違和感と認識するものの、違和感であると判ってながらも、彼は追わずにいられなかった。
結果として子羊を逃してしまうという失態を犯すのだ。

四十万 静歌 > ――違和感により、強制的に痛みをかき消しての行軍――

逃げ切り――

ご案内:「常世公園」から四十万 静歌さんが去りました。
シイン > 露骨な舌打ちを一回鳴らす。
これで晴れて自分は狙われる身だ。面白い。
それもまた物語というのであれば受け入れるだけだ。

もう追っても無駄だ、彼は判断を下した。
自らに意図として付与された違和感とは別の"違和感"を抱えながら。

シイン > そしてまた一発。手の甲に銃弾を撃ちこむ。
その時の彼は笑顔だった。

ご案内:「常世公園」からシインさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にシインさんが現れました。
シイン > 自宅から出て数時間が経過した。
どうしても、徒歩の移動では時間が掛かってしまう。
彼女を撃ち抜いた場所に戻るまで、こんなにも時間が掛かるのは予想外だったが、ソレでも辿り着いた。
あの時は違和感の所為で見失ったが、冷静に考えれば、禄に動けないのは明白だった。

暫く眼を凝らして熱画像計測装置を起動させておけば、見付けられただろう。

彼女は何処に行ったのか。
恐らくは病院。もしくは知り合いや友人と呼べる者の部屋。
手がかりはないだろうか。

シイン > 血液の痕跡はないだろうか。
彼女がそんなシンプルなミスを引き起こして残しているとは思わないが。
腰を下ろし、しゃがみ込んで目を凝らす。
特にソレといった痕跡はない、既に島の者達に掃除されてる可能性もある。
地面を踏まれて痕跡が消えるという可能性も無きにしも非ず。

無駄足だったか。

シイン > 顔半分を黒いコートに隠しながら、公園内を彷徨く。
その姿は不審者と間違われても可笑しくはない。
寧ろ、不審者そのものではないだろうか。正解だ。

彼女の交友関係なども把握しておくべきだった、時期尚早と言うべきか。
あくまで彼女個人とだけ関わってたのは間違いだ。
本来ならば、以前ならば、全てを調べあげて計画を立ててから実行をした。
ソレがこのザマだ。
溜息を漏らすしかない。

ご案内:「常世公園」にやなぎさんが現れました。
シイン > さて、どうしたものか。
時間は夕方を過ぎた夜を迎える。
できれば夜の内に仕掛けたい。

此処の治療施設のことだ、技術相応に治しているだろう。
最も、それは治療が施されていたらの話。
そうでないなら、出血多量で死んでるか。
死骸には興味はない、意思を保有してなければ意味が無い。
壊れた機械は見飽きたのだ。

考えを巡らせながら夜の公園のベンチに一人座るのだ。

やなぎ > 「昨日といい今日といい散々な目にあったなぁ…」

軍服を着た青年は一人愚痴を零しながら公園を横切ろうとするのだが、
ふと園内を覗くと、ベンチに座っている見覚えのある赤髪が目に飛び込んできた。

「…?あれは…」

自分の知り合いに似ているが服装が全然違う。
しかし本物だったらと思うと見過ごせないものだ。

音を立てずにそろそろと近づいていく。

シイン > 「…静かに近付くなら、もう少し足音立てずに忍びながら来るといい。」

音の方向に向かずに、視線を送らずとも、確認などしなくても彼にはバレバレだった。
ソレはそうだ、聴覚機器の能力は伊達ではないということ。
人程度の聴力にできれば、獣や音に敏感な生物の聴力を持つことも可能な程に微調整は可能だ。

そして、声から察せるだろう。
自分の知り合いだと。

やなぎ > 「そんな、これ以上消せと言われても」

文句を言いつつ、今度は普通に歩いて近寄るだろう。
そしてやはり自分のよく知る声だったことに少し安堵した。

「少佐、公園で一人でどうされたのですか?しかもその恰好、軍服ではありませんよね?」

全身黒づくめの知り合いの姿は私服にしては不自然だ。なにせ季節は夏なのだから。

シイン > 「日々鍛錬して自身を鍛えろ。」

教官のように口酸っぱく言って来た言葉。
壊れたテープレコーダーのように、同じ言葉を口に出す。

「…これは私の"勝負服"だ。此処ぞという時に着込むのだよ。」

彼は私が戦争で戦ってた姿を拝見したことがなかったのか。
まぁ、ソレは今はどうでもいいことだが。

やなぎ > 「う、は、はい!」

開口一番説教か。だが素直に頷く他ないのである。

自分の見回った限りでは戦争はなかった。
しかもここは公園で、一体何を"勝負"するのか。ここへきた彼の目的から推測する。

「それはそうですけども…あ、もしかして大事な授業でもするのですか?是非わたしに補佐を!」

シイン > 「いや、授業は今日は行わないよ。もう遅いだろう?」

夜に授業を行うのはあまり好かない。
できれば昼前から昼頃、または昼過ぎが望ましい。

「補佐はまた『今度』やって貰うよ。あと君に頼み事をしたい。」

相も変わらずに彼に振り向いて顔を見せようとせずに。
彼は淡々と話す。

やなぎ > 相手の答えに首を小さく傾げた。
それならば何故、公園に、夜闇に溶け込むその勝負服で、たった一人でいるのだろうか?

「…頼みごとですか?何なりとお申し付けください。」

不審には思ったが、やっと何か手助けができると思うと自然に笑顔が生まれてくる。

シインの表情はうかがえないが、無理に見ようとはせず答えをまった。

シイン > 「四十万 静歌 歳は17 常世学園の生徒で2年生。
種族は人間で、異能持ち。特徴は長い長髪に紫色の瞳。」

彼女の特徴をこれまた淡々と述べていく。
他な細かな情報まで伝える必要はない、あくまで彼に頼みたいことは。

「この生徒が今どこにいるかを探してきて欲しい。
もし見つかったら、何かしら情報を手に入れたら私に連絡を。」

いいかい?と言葉を付け足して。

やなぎ > メモとペンをホルダーから取出して彼の言ったことをくまなく書き留める。

「かしこまりました。四十万さんで、女学生ですね。…その生徒、何か問題でもおこしたんですか?それとも……」

"勝負服"と本人が言うのだから、何か怪しい想像をするのも無理はないはずだ。

シイン > 「どんな想象をしているか意図も簡単に取れるぞ。
あと私の名前は出すなよ、何処に居るか、ソレさえわかればいい。」

時間がない、もし彼女が生きていて尚且つ治療も受けてたとしたら、
事情を聞かれ素直に答えるだろう。
そうなれば、おめでとう。私は晴れて追われる身になるのだ。

「それとだ、やなぎ。
もし私が消えたりしたらだが、"灰色の部屋"に入って真っ直ぐ進み。
壁にぶち当たったらソコで『私のフルネーム』を声に出して言え。」

お前に渡すものがある、と。

やなぎ > 全て見透かされているのかと、どきりと表情を硬くした。

「へ、はぁ…、留意しましたけど。」

先生と生徒の関係など普通はあり得ないことなのだが。
という文句をおさえて短く答えるに留めた。

「少佐…消える予定があるのですか。」

目をふせ悲しそうに呟く。しかしこれも上官命令だろう。
はい、と小さく答えた。

シイン > 「…まぁ、消えると言っても一時的かもしれないがな。
何にせよ、今行った言葉は全部覚えておいてくれ。」

万が一の為の保険、使う機会がない方が当然良いのだが。
上手く事が運ぶとも思えないのだ。
だからこその保険。

「最初はこの島の病院施設を探るといい。
恐らくだが、どこかの病院に彼女は居るはず。」

確率としては50%未満か、屍を晒してる事も考えればだが。
再三と注意に言葉を繰り返して、やなぎに託す。

ご案内:「常世公園」に流布堂 乱子さんが現れました。
やなぎ > 気が沈んだまま、言ったこと全てをメモに書き留めた。
上官命令だ、忘れるわけにはいかない。

「病院ですか。アテは無いのですが、だいたいそのような施設は学園地区内にあってもおかしくはないですよね…」

広いぶん、方向音痴を炸裂させるわけにもいかない。

「…少佐は、病院で探さないのですか。」

流布堂 乱子 > ざり、と片足が砂を踏む音がすると、
次には砂をこするような奇怪な音が地面から響く。
それが足音のように繰り返されて、近づいてきたものの正体がやがて二人にも知れた。

「こんばんは。こんなところでどうかされました?」
赤い制服は特定の委員会に所属している証。
無表情に二人を見つめる目は何を考えているとも知れない。
「……その、残念ですけれども、有志による花火大会は中止ですよ。
連絡が来ていなかったのならご愁傷さまです」

やなぎ > 足音が聞こえてくる。
シインから視線を外し、音の正体を目で追った。

「あっ、こ、こんばんは。花火なんてあったのですか…」

少し吃驚しつつもそう出迎える。

シイン > ベンチに座った彼は、どこにも視線を向かせずに、ただ一点を見つめていた。
真っ直ぐに黒い夜空を。突然の来訪者に目もくれずに。
そして、ベンチの木材を人差し指で叩いた。

音は一定の間隔で、トン・トントン 何かを示すように信号を送る。

『-・-- ・・ ・-・-』 

それはやなぎに送られるもので、彼が会得していると信じて。

やなぎ > 「…っ」

彼の発する"信号"は自身の耳に届いていた。その意味は―――

「―それでは先生、奢りの約束絶対守ってくださいよ。」

シインと来たばかりの人物に軽く頭を下げると、足早に公園を立ち去ろうとする。

流布堂 乱子 > 「ええ、私も昨日誘われるまでは全く知りませんでしたから、
ご存じないならそれでいいんですけれども、ね」
やなぎへと向けていた視線をゆっくりと外す。

「それはそれとして。今朝、この公園に準備のために学生が来ていました。」
「学生は地面に不審な二種類の血痕を見つけ、風紀委員会へ通報。」
沈黙したままの男へと、交差することのない視線を向ける。
その沈黙を埋めるように、軍用通信を聞き逃すように、乱子が言葉を述べていく。
「……風紀委員会の優秀な鑑識が、初動捜査を行い。」
「学園にデータが残っている"改造銃"の二発の弾痕が発見されました。」

「……花火大会が中止に成った理由、御存知ですよね。バロム・ベルフォーゼ・シイン教員。」
焦げ茶色の瞳が、じっと、ベンチに座る男を見つめている。
立ち去ろうとするやなぎに目をくれることもなく。

左手をポーチに伸ばした乱子の、右手の袖の中でリンと何かが鳴った。

やなぎ > 「………。」

少佐、あなたは何をしたのですか。
これ以上は聞いてはいけない、そんな気がして。
薄暗く静かな夜道へと走り去っていった。

ご案内:「常世公園」からやなぎさんが去りました。
シイン > やなぎが立ち去り、それを追いかけようともせずに自分だけが目当てなのだと認識する。
後に私の関係者であることは知られるだろう。
彼には迷惑をかけるが、なに、致し方無い。
その為に保険だ。
ベンチから立ち上がり、深く顔を隠してたコートを下げて素顔を晒す。
既にバレバレなのだ、隠す意味など何もない。
赤い瞳が眼の前の者を映し出し、はて、どう切り抜けたものか。
そんな考えを浮かばせる。

「なるほど、怖いぐらいに優秀な風紀委員会だ。
それで、君は何故私の目の前に現れたのかな。」

流布堂 乱子 > 「…話には聞いていましたけれど、随分上司思いと部下思いが揃っているのですね。」
赤い瞳を見れば、まず似つかわしいという印象が有った。
立ち上がると共に滑り降りた紅い髪を見れば、ある意味では納得も行く。
私がああも赤かったら、きっと同じことをするだろう。
大事なものに手をかけることを躊躇いはしないだろう。
「あなたが教員を退職される前に、"軍"についての講義をお受けしたかったものです」

「それとも。貴方の組織では、憲兵が目の前に現れて他にすることが有りますか。
罪人を引っ立てて、法廷にかける以外にすることが。」
左手がポーチの裏、スカートから吊るされたホルスターを掴む。
右手の袖の中で、もう一度リンと何かが鳴った。

シイン > 「今からでも講義を行ってもいいぞ?
ま、その時は教師ではないのが残念だが」

晴れて犯罪者。殺人容疑か殺人未遂容疑か、そんな奴の指導など誰が受けるだろうか。
既に一人だけでなく戦争含めれば、数えきれないほどに殺害している機械が言える台詞ではない。
そんな自分に笑うのだ。あぁ、本当に情けない失敗をしたと。

「ないだろうな、残念ながら。」

断言すらできる、絶対にソレ以外ないと。
一つ付け加えるとしたら、その場での殺害も有り得る事か。
じっと瞳を逸らさずに、眼の前の彼女を視線に捕える。
観察をせずとも四肢が明らかに足りない彼女だが、先の話からして風紀委員なのは確定。

どんな恐ろしい異能を持っているのか。
掴むホルスターを眼に何も動かず、様子を見るのだ。

流布堂 乱子 > 「お言葉は嬉しいのですけれども」
ホルスターの留め具を外して、するりと拳銃を抜き出した。
風紀委員会の使うテーザーガンではない。
先日落第街で拾ったばかりで、アスファルトで削れた跡が未だに残っている。
小ぶりなそれを左手だけで構えると、シインに向けてポイントした。

「講義を待っている学生なら風紀委員会に山ほど居りますので、
そちらでじっくりとお願い致します。
何故こんなことをしたのか、凶器は何処に隠したか…
なんてことを話していただこうかなと。」
射撃姿勢としては下の下、拳銃を肩と肘で固定できていないし、
照準を覗きこんでも居ない。
構えた側の足の不在を尻尾で補っているものの、明らかに安定が弱い。

そして何より、安全装置をまだ外していない。
「両手を上げて、同行してもらえますか。抵抗は無意味です。」

シイン > 「それはそれは、私はそんな恐ろしい人外魔境に行きたくはない。
だから講義は遠慮させてもらうよ。本日の講義は終了さ。
主役は舞台に上がりたくない、残りは代わりの講師達に演じてもらおう。」

冗談と微笑みを交えながら言葉を返す。
捕まれば話は違うが、さらさらその気はない。

そして、抵抗は無意味、その言葉に思わず笑うのだ。
例え銃を向けられてる現状だとしても、笑う。
笑いは小さくと声を抑えるかのように。

「いやいや、抵抗は無意味か。そうかそうか。
無意味と誰が決めた?よろしい。」

ならば必死に抵抗をしよう、と低い声が告げた。

彼は歩みを始めた。ゆったりとゆっくりとした歩み。
武器も何も構えずに、ただただ歩いて。
無意味と告げる者に歩み寄るのだ。

流布堂 乱子 > 「講師たち、ですか。
上司思いの部下が大量に押しかけてきてくださったら、時間割の配分に困るでしょうね」
やなぎが歩き去った側に少し目をやった。ただ、それも一瞬だけ。
「まして人気教員の独占講義が中止ではタダでは収まらないでしょうから。
……あ、人気教員で合ってますでしょうか?他にも撃つ相手くらい居そうですもの」
朱に交わって染まったのか。滲むように、赤い瞳を見据える瞳もまた、紅く。
笑いながら歩くその姿が近づくほど赫々と。

「……つまり同行してくださるんですね。
その間に何があろうと、結論としてはそうなるわけです。無意味なわけですから」
目をそらさないまま、拳銃を再びホルスターにしまった。
「早々に態度を決めて頂けてありがとうございます」

一連の動作はまるで自首するものを迎え入れるかのように。
少女は牙を剥くようにして笑っていた。
左手が。"まだ"鱗と爪をまとわない左手が、シインへと伸ばされた。

シイン > 「人気かどうかはさておいて、君はどうやら勘違いしてるようだ。」

どんな勘違いなのか、ソレのついて応えるつもりはさらさら無い。
義理もないのだから。

「ま、答えは言わないが…なるほど、どんな過程を得ても結果が同じだから無意味と、君はそう言うのか。」

だから諦めろと、私に対して眼の前の女は言うのだ。
そこから何も言わずに、何も告げずに、右手を差し伸ばして掴もうと。

流布堂 乱子 > 「講義が終われば生徒の間違いを正すつもりもない、でしょうか。
…それとも生徒の自主性を重んじる、ということでしょうか?」
呟きながら、伸ばされた手を掴む。
体格の上で勝る要素はない。四肢には二本ほど欠員がある。

「でしたら、こちらから手を取りましょう。貴方を結果までお連れしましょう。」
それでも尚、少女は表情を買えずに、『抵抗する』と言い切った男の手をとった。
「先生。無意味な過程については述べる必要がない、ということです。」
「そうでしょう?だって、こうして貴方を捕まえても花火大会は開かれませんし」
「怯える学生の過ごした夏季休暇は戻ってきませんもの。」

「…つまり、状況がもう終わってしまってるんですよ、先生。」
「貴方が有意義な過程を選べるのは、この先。捕まってからなんですから。」
「だから私が、結果までお連れします。抵抗は、無意味です。」

シイン > 「どうだろうな。私はもう教師ではないから、生徒のことなど、どうでもいいのだよ。」

手は掴まれた。
特に異能を発動している様子もない。
各腕にコートとスーツによって隠されている仕込みのナイフ。
それを相手の腕に突き刺そうと、仕掛けとなる手の甲を付き出そうとした。

が。

続いた会話に手を止めた。

「好き放題と言ってくれてるが、花火大会などまた今度開けばいいだけ。
怯えたならば、治療を施せばいい。簡単だろう。
そして、結果までお連れするといったか。その結果とはなんだ?」

それだけが気になった。
それだけだ。

流布堂 乱子 > 「ああ、ある意味奇遇ですね、
私も貴方の動機などについては正直に言えばどうでもいいんです」
手を引いて、顔を近づける。
赤い瞳と赤い瞳が交差する。

「……頼まれたんですよ。
みんなが不安に思っているから、花火大会がしたいと。
元二級学生が編入してきて、それまで知っていた友人の嘘が明らかになって、
落第街は変に活発になって、学園でも騒ぎが起こって。
風紀委員本部は二級学生に2日続けて襲われて。
それでも夏休みが終わってしまう前に、花火がしたいって言われたんです。」
「痴話喧嘩なら歓楽街でやればいい。
…この公園で、わざわざ昨晩に起こしたことを、私は許さない。」

握る手に力がこもる。人の限界に近づくほど強く。
「結果は一つだけ。風紀委員会にブチ込まれてください。
……武装解除でもなんでもされて、無害で何も為し得ないモノにされてしまえ。」

シイン > 「そんなそっちの事情など知ったことではないな。
風紀委員本部が襲われた?良かったじゃないか。
コレを機会に警備の見直しができるぞ。」

意地悪な微笑みを見せて。

「許さない?結構だ、大いに結構だ。
だがな、そっちの事情など知ったことではないのだよ。」

二度も同じ言葉を繰り返して。

「結局は君の私情ではないか、いいだろう。」

特に力を入れずに額をぶつける。
瞬きの一つすらせずに、赤い瞳は物語っている。

壊してみせろ。

握られてる手を逆に掴み返して、その力は化物すら越えて握り潰そうとする勢いで。

流布堂 乱子 > 「お互いに、これ以上知るべきことがないなら―」
赤い鱗が、骨を軋ませて砕ける寸前の、剥き出しの左手を覆う。
その左手の先に現れた鋭利な爪が、握りしめる意のままに食い込んだ。
「始めようじゃないですか、無意味な過程を。」

人体と違う感触に違和感など感じる暇もなく、
桁外れの握力と
刃物という概念を打ち砕くような天然の鋭利さを帯びた爪は、
その腕を引きちぎることも出来た…かもしれない。

だが、その可能性を放棄して、ついでに自分の手を握る相手の左手の存在も無視して、
少女は背に翼を生やした。
更に掴んだままの腕をひいて、右足と尻尾で確保したまま飛び立つ準備。
赤い瞳の語る意志には
「まさか。教員でもない方の指示に従うわけがないでしょう」
模範生ぶって答えてみせた。