2015/08/31 のログ
ご案内:「常世公園」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > ──夜の常世公園
七生はベンチに腰掛けて、虚ろな瞳で虚空を見上げていた。
柔らかく光る月も、瞬く星も、その瞳には映っていないかのようにただただ一点を見つめている。
昨夜。
浜辺から家まで何とか辿り着き、半ばベッドに倒れ込んで眠りに落ちた後。
夢を見た。
両親に手を引かれ、公園に遊びに来ていた幼子が。
ふとした拍子に癇癪を起こして泣き始める。
最初のうちこそありふれた光景だったが。
幼子の鳴き声が一際大きくなった瞬間だった。
──公園が、その様相を大きく変えた。
泣き続ける幼子の前で、巨大な球へと変わったのだ。
遊具も、地面も、その場に居た人たちも、全てをひっくるめて。
──そこで、夢は終わった。
目を覚ました体は寝汗が酷く、頭酷く重かった。
■東雲七生 > ──厭な夢だ。
最初に思ったのは、そんな感想だった。
夢は夢で、それ以上でも以下でも無い。
不安定な精神が、そんな夢を見せたのだろうと。
覚醒しきっていない頭で考えた後、シャワーを浴びて。
そこで更なる違和感に気付いた。
自分の記憶、常世島に来る以前の、本土での記憶が変質していた。
記憶の中の人の顔、その全てが黒く塗り潰された様になっていた。
それに気づいてから先の、今日一日の事は殆ど覚えていない。
半分夢の中に取り残されたような、そんな何もかもが覚束無い状態で過ごしたように思う。
そして気付いたら。
ココ
──常世公園に居た。
ご案内:「常世公園」に深雪さんが現れました。
■深雪 > 普段から、この公園にはよく足を運んでいた。
ベンチ脇の植木に住んでいる黒猫を撫でたり、ベンチで空を見たり。
どうしてそんなことをしているのかは分からなかったが、それが習慣になっていた。
「…………?」
こんな時間に公園を訪れる者など殆ど居ない。
だからこそ、ベンチに座る人影にはすぐに気が付いた。
良く知った顔。けれど、見たこともないような表情。
貴方が普段通りに笑っていれば、すぐに話しかけただろう。
けれど、少女は貴方の視界に入る前に、足を止めてしまった。
貴方がまるで、死人のような顔をしていたから。
■東雲七生 > 「──……。」
ほぅ、と僅かに開いた口から吐息が漏れる。
渇いた唇を気に留める事も無く。ただただ正面を見つめている。
その目に映るのは夜景などでは無く。
顔の消えた両親、親戚、友人、それらが浮かんでは消えていく。
──何故、そうなってしまったのか。
頭に物理的な衝撃を受けたことは無かった筈だ。
精神攻撃を受けたことも無かった筈だ。
異変は突然訪れ、そして今も続いている。
それだけが分かっている、解らざるを得ない事実。
まばたきすらしない半眼の瞳は、鮮血の様な紅色から、乾き切った赤褐色になっていた。
「──……。」
ぽつり、声にならない声が漏れる。
■深雪 > 様子が尋常でないことはすぐに分かった。
瞳は景色のどこを見ているともつかず、まるで乾いた血のように濁った色をしている。
美しい月の明かりに照らされても、その瞳が輝くことは無い。
「…………。」
疲れているのだろうか、声を掛けずに去るべきだろうか。
いや、すぐにでも声を掛けるべきなのだろう。
けれどそれを躊躇ってしまうくらいに、普段と別人のように見えた。
もしかしたら、自分のことも忘れてしまっているのではないかと思えるくらいに…。
しばらくそのまま貴方を見つめて、少女は思い付いた。
スマホを取り出し、貴方に教わったやり方で…電話を掛ける。
貴方が今、携帯端末をもっていてくれればきっと、“友人”からの着信があるはずだ。
■東雲七生 > 深雪のスマホからは呼び出し中のベルが流れる。
1度、2度、3度……
しかし、七生に何ら変化は無い。
静寂の中、着信音はおろか僅かなバイブレーションの音すらしない。
七生が普段使っている端末は、今頃自室のベッドの上で不在の主を呼び出しているのだろう。
そして少年の声の代わりに聞こえてくる無機質な合成音声のアナウンス──
「──……。」
ふらり、と七生がベンチから立ち上がる。
視点は相変わらず定まらないまま、幽鬼のようにふらふらと、僅かに揺れながら一歩、また一歩と歩き出す。
今にも掻き消えてしまいそうなほど、小柄な体躯は小さく、そして、儚く深雪の目には映るだろうか。
■深雪 > 試みは少女の思惑通りには行かず、貴方は立ち上がる。
スマホのスピーカーから聞こえた無機質な音声が、どこか不気味に響いた。
役に立たない道具だ、投げ捨てそうになる衝動を抑えて、それをしまい込む。
「仕方ないわね…。」
それから、意を決した。貴方に歩み寄る。
距離が近くなればそれだけ、貴方の表情や瞳の色がはっきりと見えるようになってきた。
「ねぇ…貴方!」
七生、という名前を呼ぶことを、躊躇った。
けれどその声は間違いなく、貴方の耳にも届くだろう。
■東雲七生 > 「──……」
唇がわずかに動き、視線が深雪へと向けられる。
その瞳はどこまでも昏く、紅く、静かだ。
表情に色は無く、最初に深雪が思った通りに死人のようであり。
──無感動にじぃっと貴女の顔を見つめて。
「──……み、……ゆき……?」
真冬の木枯らしの様に掠れた声が、僅かに口から漏れた。
■深雪 > 自分へと向けられた視線を真っ直ぐに見つめ返し…少しだけ、不機嫌そうな表情を見せた。
掠れた声は耳に届いたが、その声にも、不快そうに目を細める。
「……………。」
少女は無言のまま貴方のすぐそばまで歩み寄る。
まるで睨むような視線を、貴方の方へと向けて…
「そうよ……ほら、しっかりなさい。」
何があったのだろうかと勘繰るよりも先に、貴方に向けるのは叱咤の言葉。
少女は乱暴に手を伸ばして貴方の肩を掴み、ベンチまで引っ張って行こうとするだろう。
■東雲七生 > 「──ぇ、ぁ……。」
肩を掴まれ、それを認識する前に引っ張られる。
小さな体は体重が消えているのかと思うほど軽く、容易くベンチへと戻される。
その間も七生は、じぃっと貴女の顔を見つめていて。
まるで、本当に顔があるのかを確かめるように見つめ続けていて。
「──……み、ゆき。」
そしてその存在を確かめるように、もう一度、その名を口にした。
■深雪 > 自分が感じる不快感の正体は掴めなかった。
もしかしたら、この可愛らしい少年の、弱弱しい姿を見たくなかったのかも知れない。
もしかしたら、こういう時にどんな風に接したらいいのかが、分からなかったのかも知れない。
貴方を無理やりベンチに座らせれば、正面に立って…
「寝ぼけてるの?それとも、頭でも打ったのかしら?」
…まっすぐに貴方を見る。
貴方が再び、弱弱しい声で自分の名を呼べば…
「……一体どうしたの、七生。」
見下ろしたままだったが、少しだけ心配そうにその名を呼んだ。
■東雲七生 > ──深雪。
初めて会ったのは学生通りで。自分の前方不注意でぶつかった相手。
その後何度か邂逅を重ね、狼の姿を見たり、海に行ったりした少女。
特徴的な銀髪に、金色の瞳をした整った顔立ちは。
──確かに七生の記憶の中に在った。
「──……ぁ。」
渇き切った頬を、一滴の水が伝い落ちる。
それを皮切りに、文字通り堰を切った様に涙が止め処なく溢れ出し、ぼろぼろと零れ落ちはじめた。
「ふぁ、……ぃ、深雪ぃ……。」
どうしたの、と訊ねられた事にもまともに返答できず。
ただただ流れる涙を拭いもせず、その名を呼び、縋る様に手を伸ばした。
全部が崩れたわけじゃない。
それが分かっただけでも、救われた心地だった。
■深雪 > 七生が何に苦しみ、恐怖し、そしてもがいているのか。
それが分からない少女にとって、突然涙を流し出す貴方の姿は…
「な、何よ…どうしたのよ、貴方………。」
…動揺させるに十分すぎるものだった。
まるで赤子のように涙を流し、それを隠そうともしない。
想像するしかないが…きっと、恐ろしい目に遭ったのだろう。
「……大丈夫、大丈夫よ。」
貴方に話を聞くまでは、そう考えることしかできない。
伸ばされた手を取り、優しく握った。そのまま貴方の隣に座って…
「もう大丈夫よ……私が居れば、何も怖くないわ。」
優しく、出来るだけ優しく、貴方に声を掛ける。
■東雲七生 > 「──ぁ、ご、め……でも、勝手、に……っ」
嗚咽を交えながら懸命に言葉を紡ぐ。
その大半は吃音の上に鼻声で聞き取るのも苦労しそうだが。
零れる涙は未だ止まる気配は無く、座っている七生の膝を濡らしていく。
──大丈夫
使い慣れたその言葉は、自分の口から出るよりもずっと深く暖かく。
「うん……うんっ……!」
優しく握られた手を、ぎゅっと強く握り返して。
何度も何度も肯きながら、涙が止まるのを待つ。
──そのまま涙が枯れるまで泣き続けた。
■深雪 > 涙を流す人間を初めて見たわけではない。
それどころか…何人もの人間に涙を流させたこともある。
その1つ1つを何とも思わなかったはずの自分が今、こうして、少年の涙に動揺している。
「…大丈夫よ、ほら…私が守ってあげるわ。」
少年の手を引いて、そのまま、紅色の瞳を、涙に濡れた頬を、紅色の髪を、少年の全てを包み込むように…
…少女は、嗚咽を漏らす少年を、優しく抱きしめる。
少年の涙が枯れるまで、少年が落ち着くまで、ずっと、少女はそうしているだろう。
そして少女は、特に、自分のしていることを疑問に思わなかった。
「……少しは落ち着いた?」
やがて、少女は貴女に話しかける。
普段通りの声で、普段通りに、貴方を見つめて。
ご案内:「常世公園」に葵 桃花さんが現れました。
■葵 桃花 > (見るだけが間違えて入ってしまいました(ぺこり
ご案内:「常世公園」から葵 桃花さんが去りました。
■東雲七生 > 「……ぁ。」
ふわりと、優しく抱き締められても。
涙は止まらず、七生の顔を、そして深雪の服を濡らす。
繰り返し頭では止まれと念じてはいるものの、完全に制御を失った感情の発露は止まらず。
ようやく枯れた頃には、すっかり濡らしてしまっていた。
「ぁ……えっと、う、うん。おちつ、いた。」
まだ少し横隔膜が痙攣してつっかえつっかえだったが。
僅かに頷いて、深雪を見上げる瞳は普段の紅色に戻っていた。
しかしその手は、深雪の服をきゅっと握ったまま離そうとはせず。
■深雪 > 流れたばかりの涙は温かい。
服が濡れて肌に張り付いても、不快だとは思わなかった。
それどころか、そんな少年の姿を可愛らしいと感じるくらいには、動揺も収まって…
「…ふふふ、もうちょっとこうしててもいいのよ?」
…見上げる七生を優しく撫でて、紅色の瞳を黄金色の瞳がのぞき込む。
服を掴まれたままなので、そこから動くことはできない。
けれど元より動く気も無く、少年が満足するまで、抱きしめているだろう。
安心させるように、優しく撫でながら。
■東雲七生 > 「……ん。」
見上げた深雪の顔の、黄金色の瞳をじぃっと見つめたかと思えば。
少しぎこちなくも笑みを浮かべるように目を細めて。
じゃれ付く子供の様にその胸へと顔を埋めた。
自分の涙ですっかり濡れてしまった事に少しだけ申し訳なさを覚えたが、それ以上の安心感がそれを打ち消す。
「……ありが、とぅ。」
腕の中で小さく呟く、くぐもった声も。
静かな夜の公園ではハッキリと聞き取れるだろう。
泣き止んだ少年は。
撫でられるがままに、その身体を、全てを貴女に委ねていた。
■深雪 > 涙が濡らした胸だが、2人の体温が重なれば柔らかく…そして温かい。
「素直な子は好きよ…七生。」
優しく笑んで、少女は貴方をその胸に優しく抱き寄せる。
少年のくぐもった声が耳に届けば…小さく笑って、
「いいの、でも、聞かせて……何があったの?」
少女は、腕の中の少年に、問いかけた。
友人を苦しめた相手がいるのなら、制裁を加えなければならない。
見えない相手への怒りがこもったか、その声は少しだけ鋭く。
■東雲七生 > 「へへ……」
嬉しい。
普段なら照れてしまいそうな言葉も素直にそう思えた。
誰かが、知ってる誰かが傍にいる。
それだけでどれほど心強いか。それを改めて認識する。
「え、と……その。ちょっと、言いにくいん、だけど。」
深雪の声色から、その感情を少しだけ推測する。
勘違いしているかもしれないから、と前置きをして。
「あの、ね。
俺の記憶がさ、どんどん……崩れてってるって言うか。
この学園に来る前の事が、どんどんあやふやになってって。
俺がもっと、子供だった頃の事とか。両親の顔とか、昔の友達の顔とか……
塗り潰したみたいに、真っ黒で、思い出せなくて。それで。」
深雪の腕の中。
小さな体が、僅かに震える。
「──本当に、俺の記憶なのか、分からなくなって。
今までの俺が、どんどん、消えてく気がして。」
──考えれば考えるほど、思い出そうとすれば思い出そうとするほど。
穴あき、潰れ、崩れていく。
記憶が、過去の七生が。
それがどうしようもなく怖かったのだと、震える声で伝えた。
■深雪 > この可愛らしい友人を怖がらせるものは…容赦なく壊してやろう。
そう思っていただけに、少年の言葉は少しだけ期待外れで…
…けれど、少年の声が、身体の震えが、少年の感じた恐怖の全てを物語っていた。
「記憶喪失…ってことなのかしら。」
知っている言葉の中ではそれが一番近い気がした。
けれど、記憶喪失なら何かきっかけがあるはずだ。
それとも、いつかこの少年は…自分の事も忘れてしまうのだろうか。
「…そうね、それじゃ…私に話して。
貴方が生まれた時から、この学園に来るまでのこと。
話したら、何か思い出すかも知れないわ。」
七生の過去を何も知らない少女にとって、それは七生を元気づけるための提案だった。
それに…
「それに貴方…私の事は知ってるでしょう?今のままじゃ不公平よ。」
そんな思いも、確かにあったのだろう。
■東雲七生 > 「記憶、喪失……」
呟く。その単語は七生もよく知っている。
しかし、進行していく記憶喪失があるのだろうか、そこまでは分からなかった。
しかし、他に的確な表現も思いつかなかったし、何より、
深雪がそう言ってるのだから、とすんなり認める。
そして続く言葉に、微かに戸惑ったが、意を決した様に、頷く。
もう一度、向き合わなければ。
今も崩れていくこの記憶と。
「えっと、元々日本本土の地方都市で産まれ育って。
……普通の、子供だった、と思うよ。少なくとも、変なところは何も無かった、はず。
親父もお袋も、普通の人……かな。多分。
で、平平凡凡に中学3年まで育って、その夏。ちょうど一年前くらい。
交通事故に遭って、異能が、血を操る力が、暴走して。
病院に運ばれて、そのまま能力の制御を身に着けるため、に。研究所に行って。
その研究所の紹介で、この常世島に来て──」
語る間にも、記憶の細かいところは消えていく。
家の間取り、小学校の名前、近所の地名、担任の顔。
それらに気付くたびに小さく震え、言葉に詰まり、強く深雪の服を掴む。
それでも、最後まで、常世島に入学するまでのあらすじは、告げた。
■深雪 > それはまるで物語か何かの“あらすじ”だった。
それこそ、七生でなくては語れないはずの名前や、エピソード…そういったものが何もない。
誰にでも語ることができそうな、内容。
……その異常性に、少女も勘付き始めていた。
けれど少女は、あくまでも楽しげに笑い、肩を竦めた。
「駄目ねぇ…ほら、よーく思い出して…こうやって抱っこされたこと、無い?
あったなら絶対、覚えてるはずよ……そうでしょ?」
優しい口調で、少年を落ち着かせるように。
けれどそこで、ふと、気付いた。
「そう言えば貴方、スマホ持ってるじゃない。
写真とか、アドレスとか、残ってないの?」
自分のスマホを取り出して七生に見せ、聞いてみた。
■東雲七生 > 「……。」
こうやって、と言われて今の自分の状況を再確認する。
今、深雪の腕の中に居て。そしてその経験が無いかと問われていて。
言われてみれば、母親なり抱き締められたという記憶があって然るべきで。
しかし、
「いや、その……深雪ほど大きくは、」
朝から何処かへと散っていた感情が俄かに渦巻き始める。
その中には羞恥心だとか、下心といったものも混ざっており。
てんで見当違いな事を口走ろうとしたところで、スマホの事を尋ねられた。
「ああ、あれか……。
言ったでしょ、事故に遭ったって。それまで使ってたのは、その時にお釈迦になってさ。
それじゃ不便だろうって、研究所で渡されたのがアレ。
一応、アドレスは引き継いだけど……
そのアドレスと一緒に書かれた名前の友人たちは、思い出せないんだ。」
悲痛そうな面持ちで、そう締め括った。
■深雪 > 七生の体温が急に上がったような気がする。
それから、その言葉の意味を理解するのに数秒かかった。
「もう…何の話をしてるのよ。」
ぐっ、と締め付けてやろう。本気を出したら抱き潰してしまうから加減はするが。
……結果的により強く押し付けられることになるわけで。
「そうじゃなくて…覚えてないの? 抱っこされたこととか。」
スマホの破損については、なるほど納得できる理由だった。
しかし、少年の表情やその言葉の内容は、やはり、異常だと感じる。
「思い出せないって…1人も?えっと…それじゃ、その事故の時に頭を打ったとか?
その友達に、電話かけてみたり…メール送ってみたり、しないの?」
古くからの友人と言えば、この島で再会した相手が思い当る。
彼女のことを忘れてしまう…それを思えば、七生の恐怖はある程度だが、想像することができた。
■東雲七生 > 「いやっ、その、あの……!」
何か弁解しようとは思うのだが、思ったより言葉が出て来ない。
押し付けられる感触は、これだけは絶対忘れないなどと密かに心に刻みつつ。
「覚えて……ない。」
僅かに呟かれた言葉通り、記憶にはそのようなものは無かった。
それが無くなったのか、元から無かったのかは今となっては分からない。
そして友人たちの、ことも同様だった。
「う、ん……名前は、書いてあるから、分かるんだけど。
顔も、声も……だから怖くて、送れなくて。
もし、何も返って来なかったらって、思ったら。」
声に再び恐怖の色が宿る。
きゅっ、と深雪の服を掴む力が強まる事でも、七生の感情は推し測れるだろう。
■深雪 > 「そう……。」
覚えてない。その言葉は確かに深雪の耳にも届いた。
七生はすべてを忘れてしまったのか、それとも…
「……………。」
…少女はもう、何も言葉をかけることができなくなってしまった。
だからもう一度、今度は優しく、七生を抱きしめる。
「もう…臆病ねぇ。世界で一番強い男の子になってくれるんじゃなかったの?」
咎めるような響きはなく、少女は…七生の背中を押そうとしていた。
「送ってみましょうよ。電話も、かけてみたらいいじゃない?
怖いなら私が一緒に居てあげるわ…全員に送れば、全員に電話すれば、きっと、何か分かるはずよ。」
「それに、私なら…貴方が私の事を忘れてても、それでも…メール送ってくれたら、嬉しいわ。」
再び恐怖を宿した七生を優しく撫で…元気づけるように、声を掛ける。
■東雲七生 > 「……ふぁ。」
優しく抱き締められ、気の抜ける様な声が漏れる。
今まで何度も、仄かに香るだけだった香水のような匂いが浅く呼吸をするたびに鼻腔を満たす。
そして湿ったままの服越しに伝わる深雪の体温が、心臓の鼓動が、七生を恐怖から引き揚げる。
「ご、ごめん。約束、したのに……これじゃあ。」
強くならなくちゃいけないのに。
それなのに誓った相手にここまで気を使わせて。
改めて自分の現状、情けないほどに小さく弱い自分自身を認めざるを得ず。
謝罪の言葉を口に。
「……う、うん。かけて、みる、けど。
い、今、端末、家、だし……その、かける、から。」
僅かな言葉の震えは、撫でられるとともに鳴りを潜めて。
わずかな決意を芽生えさせ、そして同時に、
「……だから、その。
ちょっとだけじゃなくて、しばらく、深雪と、一緒に、居させ……て。」
独りになりたくない。誰かと共に居たい。
そんな願望が、“深雪”という明確な対象を持って意志と成った。
■深雪 > 恐怖を全て取り除いてやることはできない。
けれど、少しでもそれを和らげることができれば…。
「良いのよ…貴方が本気なら、いつまでも待つわ。」
謝罪の言葉にはそんな風に返して…優しく微笑んだ。
本気で信じているのかと言われれば、そうでない部分もある。
けれどこの少年は、きっと、本気になってくれている。
「しばらく?」
それがどのくらいの時間を指すのか、想像できなかった。
日が昇るまでか、家に帰るまでか、それとも、もっと長い時間なのか。
しかしいずれにしても……断る理由はどこにもない。
「良いわよ、いつまででも一緒に居てあげる。
だから大丈夫よ…だって、私のことは覚えていてくれるでしょ?」
■東雲七生 > 「うん……!」
向けられた優しい微笑に、少しくすぐったい気持ちになって目を細める。
その笑顔の為になら、どれだけでも強くなれる気がして。
待ってくれると言うのなら、必ず成果は出さないと、と。決意を新たにする。
「そ、しばらく。
……ほ、ホントにしばらくだよ?一日とか、二日とかじゃなくて。
その、俺が、怖くなくなるまで、というか。」
そう呟く七生の目は少し泳いでいる。
異性に対してこんな申し出をすること自体が、イレギュラーであり。
でも今は、そんなイレギュラーにさえ縋らなければならない程なのは自分でも分かっている。
無期限の居候。七生の言い分では、そういうこと、らしかった。
「うん、忘れない。絶対。ぜーったい。」
だから、と確認する様に上目で貴女を見つめる。
■深雪 > 七生の、弱弱しくも力強い不思議な返事を聞いて…少女は目を瞑った。
努めて平静を保とうとしているが、その表情には僅かな歪み。
「貴方の事……信じてもいいわよね?」
聞こえるか聞こえないか、そのくらいに小さな声で、少女は呟いた。
けれどすぐに、少女は普段通りに、意地悪な笑みを見せて…
「あら…貴方が怖くなくなるのって、10年後くらいかしら?」
流石にそれは冗談だったが、
「構わないわよ…毎晩子守唄でも歌ってあげましょうか?」
七生を居候させることは、何の抵抗も無いらしかった。
尤も、別の意味で怖い目に遭いそうな場所にあるのが難点ではあるが。
「…良い子ね。
忘れた時には思い出させてあげる…。」
もし、どうしても思い出さないなら……その時は優しく、壊してあげよう。
■東雲七生 > 「大丈夫、って言っても……口で言うだけじゃ、まだ頼りないと思うから。
信じるか信じないかは、深雪が。その目で見て、決めて。」
先日、海で。
あんなに偉そうなことを言ってこの体たらくで。
流石にその事を恥じているのか、少し困った様な奇妙な笑みを浮かべる。
同時にそれは、もう繰り返さないと不退転を誓うもの。
そして、判断は委ねる、と少女を心から信用するもの。
「うぐっ……す、すぐだよ。一ヶ月もかからないし!」
実際七生自身、それが数日か、数週間か、さっぱり分からなかったが。
そして子守唄という単語に、目に見えて狼狽える。
それはつまり、添い寝付きなのだろうか、とかそんな戸惑い。
改めて自分の申し出がどれだけ大それているか思い知るが。
──それでも、独りで過ごすよりは幾分もマシで。
「……えっと、あ、ありがとう?」
どうやって思い出させるのか、少し疑問だったが。
そも忘れなければよいのだ、と不安を振り払って笑みを浮かべる。
■深雪 > 少女の呟きに、七生の答えはあいまいなものだった。
けれど、信じろ、と言葉で言われても……
「……えぇ、そうするわ。」
……きっと、信じられなかっただろう。
いや、もしかしたら…もう、本当の意味では人を信じられないのかも知れない。
このリボンで力を封じ込めたあの男のことも…裏切られるその瞬間まで、信じていたのだから。
「あらあら…それじゃ、1ヶ月はかかるのね。」
くすくすと楽しげに、意地悪に笑って…静かに立ち上がる。
少なくとも前に見た限りでは深雪の家にベッドは1つしかないし、
ベッド代わりになりそうなソファも無かった。
冷たい床で寝るか、もしくは……まぁ、そういうことだ。
「いいのよ……けれど、七生って、意外と大胆なのね。」
これはいけない、この表情は完全に、玩具を得た意地悪な子供である。
七生にそんな意図は無いだろうと分かっていながら、そんな風に、しかも耳元で囁いた。
■東雲七生 > 「……う、うん。そうして。」
言っておいて緊張してきたのか、表情が強張る。
信じて貰えるかなんてものは、全て深雪次第。
自分に出来る事は、裏切らない、それだけだから。
改めて自分で置いた自分の立場に眩暈を覚える。
「いっ、や、それは……っ!」
言葉の綾、と言おうとしたのだが。実際のところ半々で。
もしかしたらそれ以上かかるかも、という弱気な部分も確かにあって。
言葉に窮しながら思い出した深雪の家は。
徹底した一人暮らしの為の部屋だったなと。
再び七生の内側で様々な感情が渦を巻く。
「ひゃっ!……いや、その、……それでも、居たいから……。」
前後不覚になるまで沈んだ心を引き揚げてくれたのは間違いなく目の前の銀髪の少女で。
まだ不安定な自分が縋るには、十分すぎるように見えたから。全部それが悪い、と責任を転嫁する。
頬を朱に染める姿は、一見すればいつも通りの少年だった。
■深雪 > 最初に見かけた時、七生はまるで死人のような目をしていた。
記憶が消えていく恐怖に心が壊れかけていたのだろう。
それが今はもう…
「…ねぇ、それ、口説いてるつもり?」
…普段通りの、可愛らしい少年の表情。
それも、一緒に居たいだなんて、本当に可愛らしいことを言う。
恥ずかしがりながらも、きっと、この少年は恐怖とも戦っているのだろう。
そんな少年に頼られるのは…縋られるのは、そう、悪い気はしないのだ。
「それじゃ…そろそろ帰りましょう?
誰かの所為で服が濡れちゃったし、お風呂に入りたいわ。」
ベンチに座ったままの少年に、手を差し伸べる。
貴方もびっしょりね。なんて、楽しげに…意地悪に笑った。
■東雲七生 > 「うぐっ……ま、まさか!」
思ってもみなかった問いに、面食らう。
そんなつもりは更々無かったのだが、そう受け取れる言い回しだっただろうか、と真剣に考えて。
しかし、それもすぐに終わる。
「……百歩譲ってそうだとして、深雪がそう簡単に靡くと思えないんだけど。」
からかわれてるのだと、思い至って。
少しだけ意趣返しを、と悪戯っ子の笑みを浮かべる。
それでも内心ではまだ恐怖は抜け切っておらず。
笑みもどちらかと言えば、自分を鼓舞するためだった。
「うん……あ、えっと、その、ごめん。
あんなに泣いたこと無くて俺も驚いてんだけど。」
差し伸べられた手を取りながら、バツの悪そうに呟く。
洗濯なら俺がしとくから、と。俯きがちの七生には、深雪の笑みは幸か不幸か見えなかった。
■深雪 > 七生の反応が可愛らしくて、楽しかった。
逆に同じように笑って返されれば…
「えぇ…今の貴方じゃ、精々楽しい玩具か、お友達ね。
貴方が世界で一番強い男の子になったら、考えてあげるわ。」
…少しだけ、真剣な言葉を向ける。
それもきっと冗談だろう…冗談に交えた、本心なのかもしれないが。
手を握って…大丈夫よ、と優しく微笑む。けれど…
「でも、洗濯するって…私の服とか下着を、貴方が?」
親切心で言っているのは分かっているが、からかわずにはいられない。
俯く貴方とは対照的に、少女は楽しげに笑って…
…純情な少年をからかう深雪の企みに、七生は翻弄される事になるのだが、それはまた、別のお話。
■東雲七生 > 「そっか。
だったら、なおさら頑張らなきゃ。」
おどけた様に肩を竦めて、それでも笑みを浮かべて。
冗談でも、本心でも。こうして言葉を交わすことがとても楽しくて。
「そ、それは……えっと、目隠しとかするから!」
大体洗濯機がやってくれるのだから、そんな意味深に言わなくとも。
そんな表情のまま、深雪に手を引かれる。
きっとこの調子で一晩中からかわれ続けたのだろう──
少女の言葉通り、楽しい玩具なのだから。
ご案内:「常世公園」から深雪さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にリビドーさんが現れました。
■リビドー >
頭が痛い。機嫌が悪い。控えめに言えば最悪の一歩手前。それこそ粗雑に食い散らかしてしまいそうな気分だ。
切欠は語る程でもない。カフェテラスでの些細なものであったが――少し前からどうにも調子が乱れている。
「……全く。」
講義こそどうにかこなしているものの、調子は良くない。
気分に左右される自身の体調に苦いものを覚えながらも、ベンチへと座って休む事にする。
ご案内:「常世公園」に四十万 静歌さんが現れました。
■四十万 静歌 > 「まだまだ熱い……」
ふらふらと歩きながら、
どこかで休もうかな?
なんて周囲を見渡すと、
見覚えがある人がベンチに座っているのをみかける。
特段何かあるわけでもなし、
相手は先生だ。
「どうも、リビドー先生。」
なんて挨拶をして、
「――大丈夫ですか?」
ちょっと調子悪そうな様子に首をかしげていうだろう。
■リビドー > 意味もなく暴れたい、喰らいたい。
本能的なそれ自体を糾弾する訳ではないが、自身にとっては無為にしかならぬその衝動に頭を悩ます。
動機が動機だけに、それは無為だと。ぐずりでしかないそれは、好ましくない。
……声が聞こえた。幻聴かとも思ったが、違うらしい。
「……ああ、キミか。」
頭を抑えたまま静歌を確かに見て、どうにか声を出す。
無為にしかならぬ欲望や衝動を抑えこみ、立ち上がろうとするだろうか。
「あまり良くはないが、生徒――
――特に交友のあるキミの前でみっともない所は見せていられないよ。どれ、気を引き締めるか。」
軽く自分の頬を両手で叩き、改めて静歌を見据えた。
■四十万 静歌 > 「はい、私ですよ?」
と人さし指を立ててちょっと横に傾け――
「気を引き締めていただけるのはありがたいですけど、
無理は禁物ですよ。」
といった所で、あ、そうだ。
と、パン、と手を合わせ、
ダンっと地面を踏み鳴らし、
視線誘導して、その隙にコーヒー缶を放り投げ――
「どうぞ。」
と声をかけるだろう。
■リビドー > 「気を引き締める理由が有れば、どうにかなるものだよ……とは言え、言葉には甘えとく。」
気がつけば飛んでくる缶コーヒー。
身体にぶつかり、落ちていくそれを寸でで掴んだ。
地を踏み鳴らす音が慣れど、音の先には気が向かない。
注視する余力があってこそ誘導されるものであり、その余力がなければ――ご覧の有様か。
「……ああ、悪いね。」
その言葉は、行動と珈琲、どちらに向けられたものか。
■四十万 静歌 > 「――本当に元気がないようですね。」
うん、と顎に人さし指をあてて、
「元気でろー?」
なんていいながら目を覗き込もうとしつつ。
「というのは冗談というか、お呪いみたいなものですが、
――本当に、どうなさったんですか?」
そういえば前に別れたときから調子悪かった気がする。
まだ取り戻せてないのだろうか?
■リビドー > 翠と紫の瞳が静歌を覗く。
覗きこめば、宝石と見紛う程に深く透き通った色を持つオッドアイが静歌を迎えるだろうか。
「……ただの癇癪だよ。稀に良くある事さ。
ま、後数日もすれば収まるだろう。いきものってのは、結構忘れっぽかったりするんだぜ。」
ベンチに座り直せば缶コーヒーを開け、呷る。
■四十万 静歌 > 「そうですか。」
と一つ頷き、ベンチに座れば、
横いいですか?
なんていって座ろうとするだろう。
「そういう気分になる事ってよくありますよね。
私の場合は、歌にして発散したりしてますけど、
発散する方法は人によって違うから大変です。」
ほんと、どうするのが一番なんでしょうね。
とひとりごちて――
「膝枕でもされてみます?」
なんていうだろう。
■リビドー > 「ああ。大体の奴には有ることだ。
とは言え、ボクみたいに露骨に表に出す奴は少ないぜ。大人なら尚更な。」
軽く自虐めいた冗句のような皮肉を叩く。
横に座る事は、止める事はない。問題はなさそうだ。
「適当に気を紛らわしてやり過ごす他あるまいよ。結局の所、それが一番の特効薬さ。
……その申し出は有り難いが、流石に意図を疑ってしまうな。寂しそうにでも見えたのかい。」
■四十万 静歌 > 横に座って、
「抱えるのは本当に大変そうですね。」
あはは、と苦笑して、
「でも、
普段から気を紛らわせる方法は一杯用意しておくと、
そういう意味でもいいかもしれませんね。」
なんてふんわり笑いなおして、寂しそうの言葉には、
「寂しそう……
というより、辛そうなので、
少し横になると気持ちいいかな?
なんて思っただけですよ?」
とウィンクして横のリビドーをみるだろう
■リビドー > 「そうだな。
……とは言え、気の紛らわしを探していない事など無いよ。
何時だって、気の紛らわしや退屈凌ぎを探しているとも。」
……静歌から視線が外れる。
何かを想起するような。記憶に意識が向けられているような。
所謂"遠い目"、を、してみせるだろう。
「それならキミが枕を貸す必要もないだろうに。
キミの膝は、値打ちのあるものに見えるからな。」
ウィンクを受ければ、困った様に苦笑した。
■四十万 静歌 > 「かといって欲しいときに見つかるものではなし、
ですか。」
遠い目をしてみせたら、
きっと過去にも何か色々あったのかな?
なんて思うのだけど、
それに触れるのはなんだか気が引けて――
じっと見つめるしか出来なかったが、
「まぁ、値打ちあるかどうかは分かりませんけど――」
次の発言と、
困ったような苦笑に、包み込むような笑みを浮かべて、
「今、膝を貸せるのは私しかいないですし、
私は別に構いませんから?」
なんて、いうだろう。
■リビドー > 「中々見つからずとも、探し尽くしたとも。鞄や机の中まで探したさ。
とは言え、最近は枯渇気味でね……」
ため息と共に、頬を掻く。
見つめられると、ややバツが悪い。
「……今、キミに甘えてしまうのは少々怖いな。癖になりそうだ。
これでも、ボクは『欲しがりさん』なものでね。ボクを表すには適した言葉だ。
そう言ってくれたのは誰で、何時の事だったか……」
■四十万 静歌 > 「――探しては零れ落ちる、
まるで一握の砂のように、ですか。
それにしても、甘えるのが怖くて癖になりそうですか……
癖になってもとおもいましたけど――
そういうのは恋人同士でなければ少し不味いですね。」
それにしても、と人さし指を口元に運び、
「またまた面白い事を言う人もいたものですね。」
なんていって、少し首を傾げ――
「じゃあ、何をしましょうか?
歌ってみます?
歌いましょうか?」
■リビドー > 「ふむ。零れ落ちると言うよりは、消費し切っていると言った方が正しいかもしれないな。」
一つ相槌を打ち、軽く返す。
零れ落ちているだけなら、拾えば良いと。
「そう云う事だよ。安売りするもんじゃあないぜ。
……そうだな、キミが歌うとキミと話せなくなってしまうからな、今日の所は断っておくよ。」
■四十万 静歌 > 「でも、そういうものは、
思い出した時にまた拾える事もありますから――」
一度消費しきってなくしても、
またやりたくなる事もある。
――本当に良く出来たシステムだと思う。
「それにしても、私と話す方を選んでくれるなんて嬉しいですね。
大して面白い話はもってませんが――
あ、そうだ、
よかったら、リビドー先生のお話を聞かせてください。
それとも、私から何かはなしましょうか?」
なんて笑うだろうか。
■リビドー > 「……言われてみれば、そうだな。
確かに思い出した時に本を読み直してみると、意外と忘れていたり見通していた要素があったりするものだ。
そう云う風に、ふと思い出してまたやりたくなることもある、か。
そうだな。違いない。」
くつくつと笑い声を零す。
そういやそうだと言わんばかりに、気持ちの良い笑い声だろう。
「キミの歌も嫌いではないがね。……ボクの話し、な。
とは言え先程色々と弱音を語ってしまったような気がするよ。
キミの話も聞きたいが、無理強いさせるほどでもない。さてはて、どうしたものか。」
■四十万 静歌 > 「ええ、その通りですよ。」
と、気持ちの良い笑い声に釣られるように、
此方もえへへ、と嬉しそうに笑うだろう。
そして、無理強いさせるほどでもないというと、
静かに――
「それじゃあ、私が勝手にしゃべることにしますね。
ちょっと明るい話を、です。
あのですね。
――この間歓楽街で、そこまで大きくないですけど、
友達とマジックショーを開いたんです。」
と、何かを思い出すように静かな笑みを浮かべてしゃべり始めるだろうか
■リビドー > 「へぇ、マジックショーか。
キミの"技量"なら興味のあるものを沸かせるには十二分だろう。
そして、友達と来た。好い友達も居るものだ。羨ましいぐらいだぜ、と……それで、どうだったかい?」
眼を細め、静歌が楽しげに語る話を静かに聞く。
聞き終えれば、結果はどうだったのだろう。疑問をそのまま尋ねるだろう。
■四十万 静歌 > 「それがバッチリ大成功だったんですよ!」
やってやりました、と嬉しそうにサムズアップをして、
喜びの報告である。
「流石に自分の力だけじゃ無理で、
友人に一杯力を借りましたけど、
友人と一緒にやるのは楽しかったですし、
二人で作った手品も披露できました。」
うん、本当に楽しかった……と、
少し空を見上げた後、
リビドーをみて、
「それで、思ったんです。
私、やっぱり手品が好きなんだ、って。」
■リビドー > 「上手く行って、とても楽しめた。
ああ、それはとても好いことだ。」
ここまではしゃぐ彼女は見た事がない。
きっと、出来た事がとても嬉しく、楽しかったのだろう。
「そうかい。ああ、そうだね。今のキミの顔にもそう書いてあるとも。
それこそ、羨ましいぐらいにはバッチリ書いてあるぜ。」
■四十万 静歌 > 「はいっ!」
満面の笑顔で頷いて。
「でも、取り立てて
オチとかはないですし、
それで何がどうしたって事はないんですけど――」
そこで言葉を区切り、上目遣いに目を覗き込もうとしつつ――
「もし、もしもですよ?
大舞台に立つことがあったら――」
招待しますので、是非きてくださいね?
と笑うのである
■リビドー >
「予想を裏切ったものだけがオチではない。
大成功して、自分は手品が大好きだと気付いた。
――これをオチと、結と呼ばずにどうするんだい。」
十分だ。
十分に綺麗に纏まった好ましい話である。
予想外などなくても良い体験は良い体験であり、良いお話は良いお話なのだと言わんばかりに断言し、問い返す。
「勿論。何がなんでも見に行くとも。ああ、楽しみだ。
……さて、大分気が楽になったよ。もう少し話したい気もするが、最近はどうにも冷え込む。
長い時間拘束して風邪を惹かせてしまったら教師の名折れかもしれないな。
ああ、ボクはもう大丈夫だとも。」
■四十万 静歌 > 「ふふ、ありがとうございます。
そういってくれると本当に嬉しいです。」
満足していただけてよかったと微笑み、
招待したら受けてくれるようなので
小さく、やりました、というだろう。
「確かに夏でまだ暑いとはいえ、
秋の兆しが確かにありますもんね。」
それじゃあ、と少し人さし指を顎に当てて――
「リビドー先生の乾きが満たされますよう。」
なんて、両手を合わせて何かに祈り――
「それでは、また、お会いしましょう?」
と立ち上がって振り向きざまににっこりと微笑みかけるだろう
■リビドー > 「……ああ、また会おう。」
乾きが と 聞いた彼の顔は、大分困った具合の苦笑に見えたもしれない。
いずれにせよ、ゆっくりとその場を去るだろうか。
ご案内:「常世公園」からリビドーさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から四十万 静歌さんが去りました。